説明

車両用走行制御装置

【課題】運転者の操作フィーリングや車両操縦性を向上させた車両用走行制御装置を提供すること。
【解決手段】車両に搭載され、自車両の車速を制御する車両用走行制御装置が、自車両と先行車の車間距離が目標車間距離に維持されるように自車両の車速を制御する追従制御から、自車両の車速が目標車速に維持されるように自車両の車速を制御する定速制御へ移行するときに、目標車速として予め設定された設定速度Vが移行直前の追従制御時の車速Vより高く、且つ、設定速度Vと移行直前の追従制御時の車速Vとの速度差が所定値以上である場合、移行直前の追従制御時の車速Vよりも高く、設定速度Vよりも低い所定の速度Vを目標車速として自車両の車速を制御し、所定のユーザ操作が行われたときに目標車速を設定速度Vへ変更する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して、車両に搭載され、自車両の車速を制御する車両用走行制御装置に係り、特に、運転者の操作フィーリングや車両操縦性を向上させた車両用走行制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両に搭載され、自車両の車速を制御する車両用走行制御装置が知られている。
【0003】
具体的な車速制御としては、例えば、先行車との車間距離が目標車間距離に維持されるように自車両の車速を制御する追従制御(車間距離制御)や、先行車がいない場合に予め設定された目標車速が維持されるように自車両の車速を制御する定速制御などが知られている。
【0004】
これら追従制御と定速制御は、合わせてアダプティブ・クルーズ・コントロール(ACC)と呼ばれ、1つのシステムにより両制御が切り替えられながら実現されるように構成される場合が多い。
【0005】
すなわち、ACCシステムは、典型的には高速道路を高速走行中の運転者の運転負荷を軽減することを狙いとして、システム作動状態のとき、先行車が検出されている間は追従制御を行い、先行車が検出されていない間は設定車速で定速制御を行うように構成されるのが一般的である(例えば、特許文献1及び2参照)。
【0006】
特許文献1には、先行車がいなくなり、追従制御から定速制御へ移行する際に、走行環境が移行に適さないときには、所定時間が経過するまで移行直前の追従時の車速を維持する装置が開示されている。
【0007】
特許文献2には、先行車がいなくなり、追従制御から定速制御へ移行する際に、直ちに設定車速へ制御せず、運転者によってアクセルペダルが踏み込まれるまで移行直前の追従時の車速を維持する装置が開示されている。
【特許文献1】特開2001−30797号公報
【特許文献2】特開2003−231422号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記特許文献1及び2に開示された装置は、図1に示すように、単に、先行車がいなくなってから所定時間が経過するまで又は運転者がアクセルペダルを踏むまで、先行車がいなくなる直前の追従制御時の車速Vが維持されるようにしたものであって(実線)、所定時間の経過やアクセルペダルの踏み込みによって設定車速Vを目標車速とした定速制御が開始されると、車速が速度Vから速度Vへ向けて連続的に変化していくことになる。
【0009】
すなわち、上記特許文献1及び2に開示された装置は、先行車がいなくなったときに追従制御から定速制御へ直ちに移行する場合(破線)と比べて、単に、自車両の車速を速度Vから速度Vへ変化させるタイミング(時期)をずらしたものにすぎない。
【0010】
このように、上記特許文献1及び2に開示された装置によれば、所定の条件が成立したときに車速が速度Vから速度Vへ変化することになるため、運転者に急激な加速が発生したという違和感を与えてしまうおそれがある。
【0011】
これは、特に、速度Vが速度Vに比べて大幅に高い場合に顕著となる。今日では、上述のような高速走行中の(すなわち高速域での)追従制御のみならず、渋滞中のいわゆるノロノロ運転といった低速走行中の運転者の運転負荷を軽減することを狙いとした低速域での追従制御も実現されており、低速域追従制御時の車速Vが例えば時速30キロメートル程度、定速制御の設定車速Vが例えば時速100キロメートル程度、といった車速Vと車速Vの速度差が非常に大きい場面も発生する確率が高まってきている。
【0012】
速度Vから速度Vへの車速の変化速度が運転者にとって思いのほか高かった場合や周囲の交通状況等に照らして高すぎると判断される場合、運転者が設定車速を下げる又はブレーキ操作を行うといった対応をとる必要が生じ、車両操縦性を悪化させ得る。上記特許文献2では、運転者の意思を確認した上で設定車速Vを目標車速にするものとしているが、例えば運転者が時速何キロメートルを設定車速Vとしてセットしたか失念していた場合などには、やはり、車速変化が急激すぎるとの印象を運転者が抱く可能性はある。
【0013】
他方で、自車両の車速を速度Vから速度Vまで比較的長時間掛けて変化させるものとすると、運転者にシステム応答性が良好でない又は設定車速Vが達成されるまでに時間が掛かり過ぎる(平たく言えば「じれったい」)という印象を与えてしまうおそれがある。
【0014】
本発明はこのような課題を解決するためのものであり、運転者の操作フィーリングや車両操縦性を向上させた車両用走行制御装置を提供することを主たる目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記目的を達成するための本発明の一態様は、車両に搭載され、自車両の車速を制御する車両用走行制御装置であって、自車両と先行車の車間距離が目標車間距離に維持されるように自車両の車速を制御する追従制御から、自車両の車速が目標車速に維持されるように自車両の車速を制御する定速制御へ移行するときに、目標車速として予め設定された設定速度が移行直前の追従制御時の車速より高く、且つ、上記設定速度と上記移行直前の追従制御時の車速との速度差が所定値以上である場合、上記移行直前の追従制御時の車速よりも高く、上記設定速度よりも低い所定の速度を目標車速として自車両の車速を制御する、車両用走行制御装置である。
【0016】
上記一態様において、上記追従制御から上記定速制御へ移行するときに、上記設定速度が上記移行直前の追従制御時の車速より低い場合又は上記設定速度と上記移行直前の追従制御時の車速との速度差が所定値未満である場合、A)速やかに上記設定速度が実現されるように上記設定速度を目標車速として自車両の車速を制御してもよく、或いは、B)制御の統一性を図ることを狙いとして上記所定の速度を目標車速として自車両の車速を制御してもよい。
【0017】
上記一態様によれば、追従制御から定速制御に移行する際に、定速制御の設定車速が移行直前の追従制御時の車速よりも所定値以上高い場合、移行直前の追従制御時の車速から設定車速まで連続的に(一度に)車速が上昇することなく、一旦移行時車速と設定車速の間の速度が目標車速とされるため、たとえ周囲の交通状況からブレーキ操作などの操作が必要であったとしても、より高速である設定車速が目標車速とされている場合に比べて、運転者が対応しやすくなると共に、思わぬ高速域まで車速が上昇したとの違和感を運転者に与えることがなく、操作フィーリングが向上する。
【0018】
なお、上記一態様において、上記設定速度と上記移行直前の追従制御時の車速の大小関係及び両者の速度差に依らずいずれの場合においても、上記所定の速度が目標車速とされた後、上記設定速度を目標車速としたいという運転者意思を表すと考えられる所定のユーザ操作(例えば、所定のスイッチ操作(例えば、レジュームスイッチONなど)や、アクセルペダルの所定量以上の踏み込み、など)が行われたときには、目標車速を上記設定速度へ変更するようにしてもよい。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、運転者の操作フィーリングや車両操縦性を向上させた車両用走行制御装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明を実施するための最良の形態について、添付図面を参照しながら実施例を挙げて説明する。なお、追従制御及び定速制御を実施するACCシステムの基本概念、主要なハードウェア構成、作動原理、及び基本的な制御手法等については当業者には既知であるため、詳しい説明を省略する。
【実施例】
【0021】
以下、図2〜6を用いて、本発明の一実施例に係る車両用走行制御装置について説明する。本実施例に係る車両用走行制御装置は、追従制御及び定速制御を実現する機能を備えると共に、例えばメインスイッチがONされた作動状態において、先行車が検出されれば追従制御を行い、先行車が検出できないときには運転者によって予めセットされた設定速度で定速制御を行うように追従制御と定速制御を自動的に切り替えるいわゆるオートレジューム機能をも備えているものとする。
【0022】
加えて、本実施例に係る車両用走行制御装置は、低速域での追従制御にも対応し、全車速域でのACC制御が可能であるものとする。
【0023】
図2は、本実施例に係る車両用走行制御装置200の概略構成図である。
【0024】
走行制御装置200は、自車両の前方に位置し、自車両と同じ車線を同じ方向へ走行している先行車を検出し、先行車が存在する場合には自車両と先行車の車間距離及び先行車の相対速度を検出する先行車検出部201を有する。先行車検出部201は、例えば、レーザーレーダーセンサーを含み、レーザー光を自車両前方の空間領域に照射して、その反射光が戻ってくるまでの時間及びその入射角度から先行車の有無・車間距離・相対速度を検出する。
【0025】
走行制御装置200は、更に、自車両の車速を検出する車速検出部202を有する。本実施例において、車速検出部202は、例えば車輪速センサを利用して、自車両の車速を検出する。代替例として、自車両がナビゲーションシステムを搭載している場合、ナビゲーションシステムから自車両現在位置情報を取得し、その時間変化から自車両の車速を算出してもよい。
【0026】
走行制御装置200は、更に、走行中であっても運転者が比較的容易に操作可能となるように車室内に配置されたユーザ操作部203を有する。ユーザ操作部203は、少なくとも、1)ON/OFFスイッチであるACC制御メインスイッチ、2)メインスイッチON中のみ操作可能な自動復帰タイプの(操作中のみONとなり、手を離すとOFFとなる)ON/OFFスイッチである車速設定用スイッチ(セットスイッチ)、3)例えばメインスイッチON中のみ操作可能な自動復帰タイプのON/OFFスイッチである加速用スイッチ(レジュームスイッチ)、及び、4)メインスイッチON中のみ操作可能な自動復帰タイプのON/OFFスイッチであるACC制御停止用スイッチ(キャンセルスイッチ)、としての機能を含むものとする。ユーザ操作部203は、例えば、複数の方向(例えば前後上下)に傾倒させることが可能なレバー状のスイッチとしてステアリングホイール横に設けられる。
【0027】
走行制御装置200は、更に、ユーザによって予め設定された定速制御時の目標車速(以下、「設定車速」と呼ぶ)Vと、後に詳述する暫定車速Vと、追従制御時の目標車間距離とを記憶保持する記憶部204を有する。本実施例においては、記憶部204は任意の記憶媒体でよい。設定車速は、設定車速にセットしたい車速が現実に実現されているときに運転者がセットスイッチをONにすることによってセットされるものとする。すなわち、セットスイッチがONされたときの車速が記憶部204に設定車速として記憶されるものとする。
【0028】
走行制御装置200は、更に、例えばスロットルバルブ開度を制御するなどしてエンジン出力を制御するエンジン制御部205を有する。エンジン制御部205は、例えばエンジンECU(Electronic Control Unit;電子制御装置)である。
【0029】
走行制御装置200は、更に、ブレーキシステムにより発揮される制動力を制御するブレーキ制御部206を有する。ブレーキ制御部206は、例えばブレーキECUである。
【0030】
走行制御装置200は、更に、走行制御装置200の各構成要素を統括的に制御する主制御部207を有する。主制御部207は、例えば、ACC制御用ECUである。
【0031】
なお、当業者には明らかなように、エンジン制御部205、ブレーキ制御部206、及び主制御部207は、1つのECUとして実現されてもよい。
【0032】
次いで、このような構成の本実施例に係る車両用走行制御装置200の動作について、図3のフローチャートを参照しながら説明する。
【0033】
走行制御装置200は、その性質上、搭載された車両のイグニッションスイッチ(IG)がONにされたときに自動的に作動を開始するようには構成されず、運転者が走行制御装置200のメインスイッチをONにすることによって作動を開始するように構成される(S301)。
【0034】
メインスイッチがONにされると(S301の「YES」)、主制御部207は、先行車検出部201によって追従制御の対象として相応しい先行車が検出されたか否かを判断する(S302)。
【0035】
追従制御の対象となり得る先行車が検出されなかった場合(S302の「NO」)、主制御部207は、記憶部204に記憶された設定車速Vを目標車速とした定速制御を開始し、車速検出部202によって検出される自車両の車速が設定車速Vに近づき、維持されるようにエンジン制御部205にエンジン出力の調整を適宜動的に指示する(S311)。主制御部207は、必要に応じて、ブレーキ制御部206に制動力の調整も指示する。
【0036】
設定車速Vでの定速制御中、運転者によってキャンセルスイッチが操作されると(S312の「YES」)、走行制御装置200はACC制御を停止する。運転者によるキャンセルスイッチ操作が行われないとき(S312の「NO」)、先行車が現れない限り、S302、S311、及びS312が順に繰り返され、定速制御が継続される。
【0037】
他方、起動時に又は定速制御中に先行車検出部201によって追従制御の対象となり得る先行車が検出されたとき(S302の「YES」)、主制御部207は、検出された先行車に対する追従制御を開始し、先行車検出部201によって検出された当該先行車と自車両との車間距離が記憶部204に予め記憶された目標車間距離に維持されるように、先行車検出部201によって検出された先行車の相対速度と車速検出部202によって検出された自車両の車速とに基づいて、エンジン制御部205にエンジン出力の調整を適宜動的に指示する(S303)。主制御部207は、必要に応じて、ブレーキ制御部206に制動力の調整も指示する。
【0038】
ここで、目標車間距離は、固定値であってもよいが、好ましくは、自車両の車速に応じて適切な距離に適宜修正される方がよい。さらに、この車速ごとに異なる適切な目標車間距離に幅を持たせ、運転者がその距離幅の中から任意の車間距離を自由に選択できる(例えば、長、中、短の3段階から選べる)ようにしてもよい。
【0039】
先行車に対して追従制御中、運転者によってキャンセルスイッチが操作されると(S304の「YES」)、走行制御装置200はACC制御を停止する。また、先行車に対して追従制御中、先行車検出部201によって追従制御の対象としていた先行車が(例えば、車線変更、サービスエリア/パーキングエリアに入った、高速道路を降りるランプウェイに入った、などの理由により)いなくなったことが検出されたとき(S305の「YES」)、主制御部207は、追従制御を中止する(S306へ進む)。
【0040】
他方、追従制御の対象となる先行車が検出され続けているとき(S305の「NO」)、運転者によるキャンセルスイッチ操作が行われない限り、S303、S304、及びS305が順に繰り返され、追従制御が継続される。
【0041】
追従制御中に追従対象であった先行車がいなくなると(S305の「YES」)、主制御部207は、目標車速が実現されるように自車両の車速を制御する定速制御に移行する。
【0042】
追従制御から定速制御に移行する際、まず、主制御部207は、設定車速Vと移行直前の追従制御時の車速Vとの大小判定を行うと共に、設定車速Vが移行直前の追従制御時の車速Vより大きい(V>V)場合には両者の速度差(V−V)が所定の閾値TH以上であるか否かをも判定する(S306)。
【0043】
設定車速Vが移行直前の追従制御時の車速Vより大きくない(V≦V)場合、又は、両者の速度差(V−V)が所定の閾値TH未満である(V−V<TH)場合(S306の「NO」)、主制御部207は、定速制御への移行により急激な加速は生じないものと判断して、直ちに設定車速Vを目標車速とした定速制御を開始する(S311)。
【0044】
他方、設定車速Vが移行直前の追従制御時の車速Vより大きく(V>V)、且つ、両者の速度差(V−V)が所定の閾値TH以上である(V−V≧TH)場合(S306の「YES」)、主制御部207は、設定車速Vが移行時の車速Vに比べて大幅に高いため、その速度に起因して、直ちに設定車速Vを目標車速とした定速制御の実行を開始すると、移行時の車速Vから設定車速Vまで運転者に違和感を与えるほど及び/又は周囲の交通状況等に適合しないほど急激に車速が速度Vから速度Vまで急激に上昇してしまう可能性があると判断し、設定車速Vではなく、暫定車速V(V>V>V)を目標車速として定速制御を実行する(S307)。
【0045】
ここで、暫定車速Vは、例えば設定車速Vと同じようにして運転者によって予めセットされ、記憶部204に記憶された固定値であってもよいが、好ましくは、S307の時点での自車両の車速や周辺の道路状況などを考慮して主制御部207側で動的に決定される可変値である方がよい。暫定車速Vをユーザ設定可能とする場合には、たとえ周囲の交通状況からブレーキ操作などの操作が必要であったとしても運転者が対応しやすい速度となるように、設定可能な車速範囲(すなわち、上限・下限)が予め設定されていることが好ましい。
【0046】
暫定車速Vで定速制御中、先行車検出部201によって新たに追従制御の対象となり得る先行車が検出されたとき(S308の「YES」)、主制御部207は、S303へ戻って、検出された先行車に対する追従制御を開始する。
【0047】
また、暫定車速Vでの定速制御中、運転者によってキャンセルスイッチが操作されると(S309の「YES」)、走行制御装置200はACC制御を停止する。
【0048】
さらに、暫定車速Vでの定速制御中、運転者が設定車速Vでの定速制御を望む意思を表していると考えられる所定の操作(例えば、レジュームスイッチがONにされる、アクセルペダルが所定量以上踏み込まれる、など)が行われた場合(S310の「YES」)、主制御部207は、定速制御における目標車速を暫定車速Vから設定車速Vへ切り替え、設定車速Vを目標車速として定速制御を開始する(S311)。
【0049】
この設定車速Vを目標車速とした定速制御は、既述のように、先行車が現れるか、或いは、運転者によってキャンセルスイッチが操作されるまで、継続される。
【0050】
他方、先行車が現れず、運転者によるキャンセルスイッチ操作も上記のような設定車速Vへの切り替え意思を表す所定の運転者操作も行われない場合(S310の「NO」)、主制御部207は、S307〜S310を順に繰り返して暫定車速Vでの定速制御を継続する。
【0051】
このような制御による車速の変化の例を図4及び5に示す。図4は、移行後に一旦暫定車速Vを目標車速とした定速制御が実施される場合の車速の変化の一例であり、図5は、移行後に直ちに設定速度Vを目標車速とした定速制御が実施される場合であって特に設定車速Vが移行直前の追従制御時の車速Vより低い場合の車速の変化の一例である。
【0052】
図4では、先行車がいなくなった後、暫定車速Vを目標車速として定速制御が行われている。すなわち、車速は、速度Vから速度Vまでは自動的に上昇するものの、速度Vまでは上昇しない。これにより、速度Vと速度Vの差が比較的大きい場合であっても、車速は速度Vから速度Vへ一度に上昇しないため、急激な加速は生じない。
【0053】
そして、設定車速Vより小さい暫定車速Vで定速制御中に所定の運転者操作が行われた場合には、運転者が更なる加速及び/又は設定車速Vまで車速を上げることを所望していると判断し、実線で示すように目標車速が設定車速Vに切り替えられ、車速は更に速度Vから速度Vへ向けて上昇することになる。他方、所定の運転者操作がない場合には、破線で示すように暫定車速Vを目標車速とした定速制御が継続される。
【0054】
換言すれば、運転者は、追従制御中に先行車がいなくなり自動的に暫定車速Vでの定速制御へ移行した後、a)周辺の交通状況に照らして設定車速Vで走行することに支障はない及び/又は速やかに設定車速Vで走行したいと考えた場合には、加速のための所定の操作(例えばレジュームスイッチON又はアクセルペダルの所定量踏み込みなど)を行うことによって速やかに設定車速Vを目標車速とした定速制御を実現することができ、他方、b)周辺の交通状況に照らして設定車速Vで走行することは好ましくないと考えた場合には、加速のための所定の操作を行わずに、例えばブレーキペダルを踏むなどの周辺状況に応じた操作を行うことができる。この操作は車速Vの下で行われるため、速度Vで走行中又は速度Vへ向けて加速中に行うより周辺状況に対応しやすい。
【0055】
図5では、先行車がいなくなった後、直ちに設定車速Vを目標車速として定速制御が行われている。このように、移行直前の追従制御時の車速Vが設定車速Vよりも高い場合には、車速を一旦暫定車速Vに制御しなくても急激な加速が生じるおそれがないため、本実施例においては、直ちに設定車速Vを目標車速とした定速制御を開始する。
【0056】
このように、本実施例によれば、追従制御から定速制御に移行する際に、定速制御の設定車速Vが移行直前の追従制御時の車速Vよりも所定値TH以上高い場合、運転者の加速意思が所定の操作により確認されるまでは設定車速Vを目標車速とせず、車速が移行直前の追従制御時の車速Vから設定車速Vまで急激に上昇するのを回避し、代わりに運転者が対応しやすい暫定速度Vを目標車速とした定速制御を実施するため、たとえ周囲の交通状況からブレーキ操作などの操作が必要であったとしても運転者が対応しやすくなると共に、思わぬ高速域まで車速が上昇したとの違和感を運転者に与えることがなく、操作フィーリングが向上する。
【0057】
また、本実施例によれば、追従制御から定速制御に移行する際に、定速制御の設定車速Vが移行直前の追従制御時の車速Vよりも低い場合又は車速差が所定値TH未満のときには直ちに設定車速Vを目標車速とした定速制御が開始されるため、急激な加速が生じるおそれがないときには速やかに設定車速Vが実現される。
【0058】
なお、上記一実施例においては、一例として、設定車速Vが移行直前の追従制御時の車速Vより所定値TH以上高くない場合には暫定車速Vを用いずに直ちに設定車速Vを目標車速とした定速制御を実施するものとしたが、本発明はこれに限られず、上記一実施例の変形例として、例えば図6に示すように、設定車速Vが移行直前の追従制御時の車速Vより所定値TH以上高くない場合であっても一旦暫定車速Vを目標車速とした定速制御を実施し、所定の運転者操作が確認されてから、設定車速Vを目標車速とするものとしてもよい。この変形例によれば、移行直前の追従制御時の車速Vと設定車速Vとの大小関係及び速度差にかかわらず、追従制御から定速制御へ移行すると常に一旦は暫定車速Vでの定速制御が行われ、所定の運転者操作によって初めて設定車速Vが目標車速とされる点で制御全体で統一性を持たせることができる。
【0059】
また、上記一実施例においては、一例として、暫定車速Vは移行直前の追従制御時の車速Vより高い速度であるものとしたが、本発明はこれに限られず、暫定車速Vは運転者が対応しやすい速度であって且つ急激な速度上昇を生じさせない限り任意の大きさの速度でよく、例えば速度Vより低い速度であってもよい。
【0060】
さらに、上記一実施例においては、暫定車速Vを目標車速とした定速制御が開始されてから例えば所定時間が経過しても所定の運転者操作が検出されない場合に、運転者が暫定車速Vでの定速制御を望んでいると判断して、たとえセットスイッチの操作がなくても、暫定車速Vを新たな設定車速Vとして(V=V)記憶部204に上書き保存するように構成することも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0061】
本発明は、先行車が検出されれば追従制御を行い、先行車が検出できないときには運転者によって予めセットされた設定速度で定速制御を行うように追従制御と定速制御を自動的に切り替えるオートレジューム機能を備えたACCシステムに利用できる。搭載される車両の外観、重量、サイズ、走行性能等は問わない。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】従来装置による追従制御から定速制御への移行時の速度変化を示すグラフである。
【図2】本発明の一実施例に係る車両用走行制御装置の概略構成図である。
【図3】本発明の一実施例に係る車両用走行制御装置による車速制御の流れを示すフローチャートである。
【図4】追従制御から定速制御への移行後に一旦暫定車速を目標車速とした定速制御が実施される場合の本発明の一実施例に係る車両用走行制御装置による追従制御から定速制御への移行時の速度変化を示すグラフである。
【図5】追従制御から定速制御への移行後に直ちに設定速度を目標車速とした定速制御が実施される場合の本発明の一実施例に係る車両用走行制御装置による追従制御から定速制御への移行時の速度変化を示すグラフである。
【図6】設定速度が移行直前の追従制御時の車速より低い場合の本発明の別の一実施例に係る車両用走行制御装置による追従制御から定速制御への移行時の速度変化を示すグラフである。
【符号の説明】
【0063】
200 車両用走行制御装置
201 先行車検出部
202 車速検出部
203 ユーザ操作部
204 記憶部
205 エンジン制御部
206 ブレーキ制御部
207 主制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載され、自車両の車速を制御する車両用走行制御装置であって、
自車両と先行車の車間距離が目標車間距離に維持されるように自車両の車速を制御する追従制御から、自車両の車速が目標車速に維持されるように自車両の車速を制御する定速制御へ移行するときに、
目標車速として予め設定された設定速度が移行直前の追従制御時の車速より高く、且つ、前記設定速度と前記移行直前の追従制御時の車速との速度差が所定値以上である場合、
前記移行直前の追従制御時の車速よりも高く、前記設定速度よりも低い所定の速度を目標車速として自車両の車速を制御する、ことを特徴とする車両用走行制御装置。
【請求項2】
請求項1記載の車両用走行制御装置であって、
前記追従制御から前記定速制御へ移行するときに、前記設定速度が前記移行直前の追従制御時の車速より低い場合又は前記設定速度と前記移行直前の追従制御時の車速との速度差が所定値未満である場合、前記設定速度を目標車速として自車両の車速を制御する、ことを特徴とする車両用走行制御装置。
【請求項3】
請求項1記載の車両用走行制御装置であって、
前記追従制御から前記定速制御へ移行するときに、前記設定速度が前記移行直前の追従制御時の車速より低い場合又は前記設定速度と前記移行直前の追従制御時の車速との速度差が所定値未満である場合にも、前記所定の速度を目標車速として自車両の車速を制御する、ことを特徴とする車両用走行制御装置。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか一項記載の車両用走行制御装置であって、
前記所定の速度が目標車速とされた後、所定のユーザ操作が行われたとき、目標車速を前記設定速度へ変更する、ことを特徴とする車両用走行制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−186096(P2007−186096A)
【公開日】平成19年7月26日(2007.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−6006(P2006−6006)
【出願日】平成18年1月13日(2006.1.13)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】