説明

車両用運転制御装置

【課題】
車両が駐車上に位置する場合や高速道路上を走行中の場合などの運転状況に応じて、アクセルペダルを誤って踏み込んだ際に生じる車両の急加速を防止する技術を提供する。
【解決手段】
車両1に搭載されるボディECU2は、位置検出部3、運転操作検出部5から通知される情報に基づき、現在の車両の運転状況を判断する。そして、ボディECU2は、アクセルペダルポジションセンサ51から通知される情報に基づき、アクセルペダルが急激に踏み込まれたと検出された場合、運転状況に応じてスロットルモータ4を制御し急加速を防止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は車両用運転制御装置に関する。特に、アクセルペダルを誤って踏み込んだ際に生じる車両の急加速を防止する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
自動変速機仕様の車両では、運転者がブレーキペダルと誤ってアクセルペダルを踏み込み、意に反して車両を加速してしまう誤操作が発生しうる。この様な誤操作を防止するための機構が提案されている。
【0003】
例えば、ブレーキペダルの踏み込み操作を解除してからの、あるいはニュートラルからドライブあるいはリバースへのシフトポジションの変更操作を行ってからの経過時間を考慮して、アクセルペダルの踏み込み操作が誤操作かどうかを判別し、車両の運転を制御する技術が開示されている(特許文献1)。また、シフトポジションがリバースである場合に、アクセルペダルとブレーキペダルとが一定時間以上踏み込まれていない状態でアクセルペダルの踏み込み操作があったとき、車両の運転を制御する技術が開示されている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平6−299880号公報
【特許文献2】特許4172185号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記技術は、アクセルペダルやブレーキペダルの踏み込み操作の解除あるいはシフトポジションの変更操作からの時間経過に応じてアクセルペダルの踏み込み操作が誤操作であるか否かの判断を行なっているに過ぎず、車両の運転状況は何ら考慮されない。このため、車両の運転状況によっては、アクセルペダルの踏み込み操作を誤操作と判断して加速を制限することが危険であるという問題がある。
【0006】
例えば、高速道路のサービスエリア又はパーキングエリアの駐車場、もしくは高速道路の合流地点で駐車した際であっても、車両用運転制御装置は、一定時間車両の加速を防止する。この場合、加速が防止されている一定時間内に高速道路上において加速が必要となった場合であっても、アクセルペダルが踏み込まれると加速が強制的に制限されるため、危険である。
【0007】
また、例えば、車両の運転者が、信号待ち中にシフトレバーのポジションをニュートラル、またはパーキングに切り替えて、IG(Ignitionの略)電源をオフにし、エンジンを停止したとする。IG電源は、車両のエンジンが始動する際にオンになる電源である。そして、信号が青になり、運転者が車両を発車させようとする、いわゆるエコドライブを行う場合においても、加速が制限されており、車両の動作が運転者の意に反する虞がある。
【0008】
本発明は、斯かる実情に鑑み、アクセルペダルの踏み込み操作の可否の判断を、運転状況を考慮して行なうことにより、加速が必要であると判断される場合にはアクセルペダルの踏み込み操作により通常の加速が行なわれ、加速が危険であると判断される場合にはアクセルペダルの踏み込み操作は誤操作であるとして加速を防止する車両用運転制御装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
車両に搭載される車両用運転制御装置であって、車両の位置を検出する位置検出部と、車両の運転操作状態を検出する運転操作検出部と、運転操作検出部による検出結果又は位置検出部による検出結果に基づき、車両が駐車されようとしている駐車状態であるか否かを判断する駐車状態判断手段と、駐車状態判断手段により駐車状態であると判断されると、運転操作検出部により、一定量以上の踏み込み速度又は一定量以上の踏み込み加速度で車両の備えるアクセルペダルが踏み込まれた事が検出される場合、車両の動力機関の動作を制限する動力機関制限手段と、を備えることを特徴とする。
【0010】
位置検出部により検出される車両の位置及び運転操作検出部により検出される運転者の操作に基づき、駐車状態判断手段は車両が駐車状態であるか否かを判断する。駐車状態にある場合にのみ、アクセルペダルを監視し、動力機関の動作を制限することで、運転状況に応じた急加速の防止が可能となる。
【0011】
また、本発明に係る駐車状態判断手段は、運転操作検出部により前記車両の備える自動変速機のシフトポジションがリバースにある時間が一定時間以上継続することが検出される場合、前記駐車状態であると判断してもよい。
【0012】
運転者は、シフトポジションをリバースに入れ車両を後退させ、駐車する場合がある。よって、一定時間以上シフトポジションがリバースとなった場合に、駐車状態と判断する。また、シフトポジションがリバースにある時間が一定時間以上継続される場合にのみ、駐車状態と判断し、シフトポジションがドライブからパーキングに移動する際、瞬間的にリバースとなった場合は、駐車状態と判断しない。これにより、運転状況に応じた急加速の防止が可能となる。
【0013】
また、本発明に係る駐車状態判断手段は、位置検出部により車両が駐車場に存在するとの位置情報を取得する場合、駐車状態であると判断してもよい。
【0014】
車両が駐車場に位置する場合、運転者が車両を駐車させようとしていると判断可能である。よって、この様な場合に、車両が駐車状態にあると判断可能である。
【0015】
また、本発明に係る駐車状態判断手段は、位置検出部により車両が高速道路上に存在するとの位置情報を取得する場合、車両が駐車場に存在するとの位置情報の有無に関わらず、駐車状態でないと判断してもよい。
【0016】
車両が高速道路上に存在するか否かを判断し、車両が高速道路上にある場合、駐車状態判断手段は車両が駐車状態でないと判断する。これにより、車両が高速道路上にある場合、急加速防止機能の動作を抑止し、安全な運転を可能とする。
【0017】
また、本発明に係る車両用運転制御装置は、アクセルペダルが踏み込まれている状態又はブレーキペダルが踏み込まれており車両の移動速度が一定速度以上の状態が一定時間以上継続した場合、駐車状態判断手段は、車両が駐車状態でないと判断してもよい。
【0018】
駐車していた車両を発進させると、一定時間経過すれば、車両は駐車可能なエリアから離れる。このような場合、駐車状態でないと判断する。
【0019】
また、本発明に係る車両用運転制御装置は、運転操作検出部により、アクセルペダルが踏み込まれていないことが検出されると、動力機関制限手段による動力機関の動作の制限を解除するとしてもよい。
【0020】
アクセルペダルが踏み込まれていないことが検出されてから、動力機関の動作の制限を解除することで、運転者の意に反する加速の制限を防止することが可能となる。
【0021】
また、車両の運転者へ車両が駐車状態にあること及び動力機関制限手段が動作していることを報知する報知部を備えていてもよい。
【0022】
駐車状態にあること及び動力機関制限手段が動作していることを運転者へ報知し、動力機関制限手段による車両の急停止が車両の故障によるものでないことを運転者へ通知する。
【0023】
また、本発明に係る車両用運転制御装置は、動力機関制限手段の有効と無効とを切り替えることを可能としてもよい。
【0024】
動力機関制限手段の有効と無効とを切り替えることを可能とすることで、ドライバビリティの悪化を防止する。
【発明の効果】
【0025】
本発明の車両用運転制御装置によれば、運転状況に応じて、加速が必要であると判断される場合にはアクセルペダルの踏み込み操作により通常の加速が行なわれ、加速が危険であると判断される場合にはアクセルペダルの踏み込み操作は誤操作であるとして加速を防止することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】実施例の備える装置構成図
【図2】実施例の動作に係る状態遷移図
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、実施例について添付図面を参照して説明する。図1は実施例の備える装置構成図を示すものある。車両1は、ボディECU(Electronic Control Unitの略)2、位置検出部3、スロットルモータ4、運転操作検出部5、報知部6を備える。位置検出部3は、カーナビ(カーナビゲーションシステムの略)31と、ETC(Electronic Toll Collectionの略)端末32とを備える。運転操作検出部5は、アクセルペダルポジションセンサ51と、ブレーキペダルポジションセンサ52と、シフトポジションセンサ53と、IG(Ignitionの略)電源54と、車速センサ55とを備える。報知部6は、インジケータ61と警報機62を備える。
【0028】
ボディECU2は、車両1を制御する装置であり、車両用運転制御装置の一例である。ボディECU2は、位置検出部3、スロットルモータ4、運転操作検出部5、及び報知部6と、例えばCANやLINのような規格の有線ネットワーク又は無線ネットワークにより接続される。ボディECU2は、位置検出部3及び運転操作検出部5より車両1の位置及び動作状態を検出する。また、ボディECU2は、スロットルモータ4を制御することで車両1の備えるスロットル弁を制御し、エンジンの燃焼室へ供給される空気量を制御する。これにより、ボディECU2は、車両1の備えるエンジンの出力を制御する。また、ボディECU2は、報知部6を制御することで運転者へボディECU2の動作について報知する。
【0029】
カーナビ31は、グローバル・ポジショニング・システム (Global Positioning System)を用いて、車両1の現在の位置状態を検出し、検出された位置情報に基づいて周辺の地図などを車両1の運転者へ表示する装置である。カーナビ31は、車両1が、駐車場上又は高速道路上に存在するか否かに関する位置情報を取得して保持する。ボディECU2は、必要に応じてカーナビ31から位置情報を取得する。
【0030】
ETC端末32は、電子料金収受(Electronic Toll Collection)システムを利用するために用いられる端末である。電子料金収受システムは、有料道路を利用する際に料金所で停止することなく、料金の支払いを行うためのシステムである。電子料金収受システム利用時には、料金所に設置される装置と車両1に搭載されるETC端末32とが通信により情報を交換し、料金の支払いが自動的に行われる。ETC端末32は、車両1が、高速道路上で走行中であるか否かに関する位置情報を取得して保持する。ボディECU2は、必要に応じてETC端末32から位置情報を取得する。
【0031】
アクセルペダルポジションセンサ51は、アクセルペダルの位置を検出し、ボディECU2へ検出結果を通知する。ブレーキペダルポジションセンサ52は、ブレーキペダルの位置を検出し、ボディECU2へ検出結果を通知する。シフトポジションセンサ53は、シフトレバーの位置を検出し、ボディECU2へ検出結果を通知する。IG電源54は、ボディECU2へと接続され、ボディECU2は現在IG電源から電力が供給されているか否かを検出する。
【0032】
インジケータ61及び警報機62は、ボディECU2の制御に応じて、ボディECU2の動作状態を視覚的及び聴覚的手段により車両1の運転者へ通知する。
【0033】
図2に本実施例の動作に関する状態遷移図を示す。車両1が高速道路上に位置する場合、駐車動作中でない場合、又はIG電源がオフであり且つ後述する休止状態(S7)でない場合、ボディECU2は、通常状態(S1)である。通常状態(S1)において、ボディECU2により、車両1が駐車動作中であると判断され、且つ高速道路上でないと判断された場合(矢印A1)、第1駐車状態(S3)に移行する。ここで、シフトポジションセンサ53により、シフトポジションがリバースを1秒以上継続していると検出されたか、または、カーナビ31により通知された位置情報に基づき現在車両1が駐車場上に存在すると検出された場合、ボディECU2は、車両1が駐車動作中であると判断する。また、カーナビ31により取得され保持されている位置情報、または、ETC端末32により取得され保持されている位置情報に基づいて、ボディECU2は、その位置情報の通知を受け車両1が高速道路上であると判断する。
【0034】
第1駐車状態(S3)とは、運転者が駐車場において車両1を駐車させようとしていると判断される状態である。
【0035】
第1駐車状態(S3)において、一定時間以上第1駐車状態(S3)が継続した場合(矢印A3)、通常状態(S1)へと状態が移行する。ここで通常状態(S1)に移行するまでに必要な一定時間は、車両1が駐車場に侵入してから駐車が完了するまでの時間、または駐車中の車両1が移動を開始して駐車場を出るまでの時間を想定して設定する。また、カーナビ31より取得され保持されている位置情報により車両1が駐車場上でないと判断された場合(矢印A3)、第1駐車状態(S3)から通常状態(S1)へと状態が移行する。または、カーナビ31またはETC端末32により取得され保持されている位置情報に基づき車両1が高速道路上であると判断された場合(矢印A3)、第1駐車状態(S3)から通常状態(S1)へと状態が移行する。
【0036】
第1駐車状態(S3)において、ボディECU2は、アクセルペダルポジションセンサ51と、ブレーキペダルポジションセンサ52と、車速センサ55とを監視する。アクセルペダルとブレーキペダルが踏まれていない状態で一定時経過したと判断される場合(矢印A5)、第1駐車状態(S3)から第2駐車状態(S5)へと状態が移行する。また、ブレーキペダルが踏まれている状態で車速が略0m/sであり車両1が停止していると判断される場合(矢印A5)、第1駐車状態(S3)から第2駐車状態(S5)へと状態が移行する。
【0037】
第2駐車状態(S5)とは、車両1が駐車場において駐車されようとしており、且つ、アクセルペダル及びブレーキペダルから運転者の足が離れているか、ブレーキペダルが踏まれた上で車両1が停止している状態である。第2駐車状態(S5)は、運転者が誤操作し易い状態である。何故ならば、運転者の足とアクセルペダルやブレーキペダルとの離間状態が一定時間継続している場合において、咄嗟の判断でブレーキをかけなければならない場合、運転者は目視なく感覚でブレーキペダルを踏み込まなければならない。よって、運転者はペダル位置を誤ってアクセルペダルを踏み込んでしまう虞があるからである。また、ブレーキペダルが踏まれた上で車両1が停止している場合、同様にアクセルペダル踏み込みの誤操作が発生する虞がある。第2駐車状態(S5)において、ボディECU2は、報知部6の備えるインジケータ61を制御し、第2駐車状態であることを運転者へ通知する。運転者に対してアクセルペダルを急激に踏み込んでも加速が制限されている状態にあることを警告する旨を通知することを目的とする。
【0038】
なお、第2駐車状態(S5)において、ボディECU2は、アクセルペダルポジションセンサ51と、ブレーキペダルポジションセンサ52と、車速センサ55とを監視する。第2駐車状態(S5)において、アクセルペダルとブレーキペダルが踏まれていない状態で一定時間経過したと判断される場合、または、ブレーキペダルが踏まれている状態で車速が略0m/秒であり車両1が停止していると判断される場合(矢印A13)、第2駐車状態(S5)を継続する。
【0039】
第2駐車状態(S5)では、アクセルペダルポジションセンサ51がアクセルペダルの動きを検出し、ボディECU2へ通知する。ここで、ボディECU2は、アクセルペダルポジションセンサ51から通知された情報から、アクセルペダルの踏み込み速度を検知する。そして、検知された踏み込み速度が一定量以上であった場合、ボディECU2は、アクセルペダルが急激に踏み込まれたと判断し(矢印A15)、吸気カット状態(S9)へと状態が移行する。また、ボディECU2は、アクセルペダルの踏み込み速度に換えて、アクセルペダルの踏み込み加速度を検知しても良い。この場合、検知された踏み込み加速度が一定量以上であった場合、ボディECU2は、アクセルペダルが急激に踏み込まれたと判断する。
【0040】
吸気カット状態(S9)において、ボディECU2は、アクセルペダルが誤って踏み込まれたと判断する。ボディECU2は、スロットルモータ4を制御し、車両1の備えるスロットル弁を強制的に閉じ、車両1の備えるエンジンの燃焼室への吸気をカットする。以上の制御により、車両1の備えるエンジンはボディECU2により強制的に停止される。また、ボディECU2は、報知部6の備えるインジケータ61及び警報機62を制御し、車両1の運転者へ、吸気カット状態である旨を通知する。これは、アクセルペダルの踏み込みの誤操作を防止する機能が働いたためにエンジンが停止したのであって故障に依るものでない旨を運転者へ通知することを目的とする。
【0041】
吸気カット状態(S9)において、アクセルペダルポジションセンサ51からボディECU2に通知される情報に基づき、アクセルペダルが運転者により踏まれていないと判断される場合(矢印A17)、第2駐車状態(S5)へと状態が移行する。
【0042】
第2駐車状態(S5)において、IG電源54がオフにされた場合(矢印A9)、休止状態(S7)へとボディECU2の状態は移行する。また、休止状態(S7)において、IG電源54がオンにされた場合(矢印A10)、第2駐車状態(S5)へとボディECU2の状態は移行する。ここで、休止状態(S7)とは、駐車場に車両1が駐車され、IG電源がオフにされた状態である。
【0043】
第2駐車状態(S5)において、ボディECU2は、カーナビ31及びETC端末32を監視する。第2駐車状態(S5)において、アクセルペダルが踏み込まれているか、又は、車速が0m/秒でない状態で、一定時間経過した場合(矢印A7)、通常状態(S1)へと状態が移行する。ここで通常状態(S1)に移行するまでに必要な一定時間は、第1駐車状態(S3)と同様に、車両1が駐車場に侵入してから駐車が完了するまでの時間、または駐車中の車両1が移動を開始して駐車場を出るまでの時間を想定して設定する。この場合に第2駐車状態(S5)から通常状態(S1)へと移行するのは、既に駐車場から車両1が移動し、通常の走行状態へ移行していると判断されるからである。
【0044】
また、カーナビ31から通知される位置情報及び運転操作検出部3により通知される情報に基づき、駐車動作中でないと判断された場合、第2駐車状態(S5)から通常状態(S1)へと状態が移行する。また、カーナビ31またはETC端末32から通知される位置情報により高速道路上であると判断された場合(矢印A7)、第2駐車状態(S5)から通常状態(S1)へと状態が移行する。ここで、高速道路上である場合に通常状態に移行するのは、高速道路上での危険回避のためである。高速道路上では、アクセルペダルの踏み込み操作に対して加速が行なわれる。高速道路上では、危険回避のためにアクセルペダルの踏み込み誤操作の防止機能は動作しないようにする必要があるためである。
【0045】
次に、図2の状態遷移図に基づいて、高速道路以外の駐車場において車両1を駐車する際のボディECU2の動作、高速道路上でのボディECU2の動作、エコドライブ時のボディECU2の動作を説明する。
【0046】
サービスエリアやパーキングエリアなどの高速道路上の駐車場を除く駐車場において車両1を駐車する場合、カーナビ31により通知される位置情報からボディECU2は、現在車両1が駐車場に位置し、駐車動作中であると判断可能である。また、運転操作検出部5の備えるシフトポジションセンサ53により、シフトポジションが一定時間、例えば1秒以上リバースとされる場合、車両1は駐車動作中であると判断可能である。また、位置検出部3の備えるカーナビ31又はETC端末32から通知される位置情報により、車両1が高速道路上に位置しないと判断可能である。以上の判断により、ボディECU2は、通常状態(S1)から、第1駐車状態(S3)へと状態が移行する。
【0047】
また、高速道路上では、位置検出部3の備えるカーナビ31又はETC端末32から通知される位置情報により、車両1が高速道路上に位置すると判断可能であるため、ボディECU2は通常状態(S1)を維持する。
【0048】
また、エコドライブ時に、車両1を一時的に停止させる場合、シフトポジションは、ニュートラル、又は、パーキングであるため、シフトポジションセンサ53からボディECU2に通知される情報からは、駐車動作中であるとは判断されない。また、カーナビ31により通知される位置情報によっても、車両は駐車場上に位置しないため駐車動作中であるとは判断されない。よって、ボディECU2は通常状態(S1)を維持する。
【0049】
尚、本実施例に示したボディECU2による急加速防止機能は、運転者などの操作に応じて任意にオン・オフすることが可能なものとする。これによりドライバビリティの悪化を防止することが可能となる。
【0050】
以下に、本実施例の奏する作用効果について述べる。本実施例に係るボディECU2は、位置検出部3及び運転操作検出部5より得られる情報から車両1の運転状況を判断する。そして、車両1が高速道路上に位置せず、運転者が車両を駐車させようとしていると判断される場合にのみ、第1駐車状態(S3)へと移行する。これにより、車両1が高速道路上に存在する場合や、エコドライブを行っている場合において、吸気カット状態(S9)に移行することを防止する。以上の動作により、運転状況に応じた急加速防止を実現する。
【0051】
また、第2駐車状態(S5)及び吸気カット状態(S9)において、ボディECU2は、報知部6を制御し、現在第2駐車状態(S5)又は吸気カット状態(S9)であることを運転者へ通知する。これにより、第2駐車状態(S5)においては、運転者へアクセルペダルを急激に踏み込んでも加速が制限されている状態にあることを警告する旨を通知する。また、吸気カット状態(S9)においては、アクセルペダルの踏み込みの誤操作を防止する機能が働いたためにエンジンが停止したのであって故障に依るものでない旨を通知する。
【0052】
また、吸気カット状態(S9)から第2駐車状態(S5)への移行は、アクセルペダルを放した後とする。これにより、運転者がブレーキペダルのかわりに誤ってアクセルペダルを踏み込んだことを認識した後に、車両1のエンジンの動作を再開させることが可能となる。
【0053】
また、第2駐車状態(S5)から通常状態(S1)への移行は、アクセルペダルが踏み込まれているか、又は、ブレーキペダルが踏み込まれている状態で車速が0m/秒でない状態で一定時間以上経過した後とする。これにより、駐車場から発進した後、適切に通常状態(S1)に復帰させることが可能となる。
【0054】
尚、ボディECU2は、車両用運転制御装置の一例である。スロットルモータ4は動力機関制限手段の一例である。エンジンは動力機関の一例である。第1駐車状態及び第2駐車状態は駐車状態の一例である。また、図2に示す状態遷移図は、車両用運転制御装置の備える駐車状態判断手段の動作の一例である。
【0055】
尚、本発明は上記本実施例に限定されることはなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々の改良、変形が可能であることは勿論である。当然に、車両1がエンジンに換えて電気モーターを有する電気自動車やハイブリッド自動車であったとしても、本実施例と同等の動作は可能である。
【符号の説明】
【0056】
1 車両
2 ボディECU
3 位置検出部
4 スロットルモータ
5 運転操作検出部
6 報知部
31 カーナビ
32 ETC端末
51 アクセルペダルポジションセンサ
52 ブレーキペダルポジションセンサ
53 シフトポジションセンサ
54 IG電源
55 車速センサ
61 インジケータ
62 警報機

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載される車両用運転制御装置であって、
前記車両の位置を検出する位置検出部と、
前記車両の運転操作状態を検出する運転操作検出部と、
前記運転操作検出部による検出結果又は前記位置検出部による検出結果に基づき、前記車両が駐車されようとしている駐車状態であるか否かを判断する駐車状態判断手段と、
前記駐車状態判断手段により前記駐車状態であると判断されると、前記運転操作検出部により、一定量以上の踏み込み速度又は一定量以上の踏み込み加速度で前記車両の備えるアクセルペダルが踏み込まれた事が検出される場合、前記車両の動力機関の動作を制限する動力機関制限手段と、
を備えることを特徴とする車両用運転制御装置。
【請求項2】
前記駐車状態判断手段は、前記運転操作検出部により前記車両の備える自動変速機のシフトポジションがリバースにある時間が一定時間以上継続することが検出される場合、前記駐車状態であると判断することを特徴とする請求項1に記載の車両用運転制御装置。
【請求項3】
前記駐車状態判断手段は、前記位置検出部により前記車両が駐車場に存在するとの位置情報を取得する場合、前記駐車状態であると判断することを特徴とする請求項1または2に記載の車両用運転制御装置。
【請求項4】
前記駐車状態判断手段は、前記位置検出部により前記車両が高速道路上に存在するとの位置情報を取得する場合、前記車両が駐車場に存在するとの位置情報の有無に関わらず、前記駐車状態でないと判断することを特徴とする請求項3に記載の車両用運転制御装置。
【請求項5】
前記駐車状態判断手段は、前記運転操作検出部により前記アクセルペダルが踏み込まれている状態又はブレーキペダルが踏み込まれており前記車両の移動速度が一定速度以上の状態が一定時間以上継続する場合、前記駐車状態でないと判断することを特徴とする請求項1乃至4の何れか1項に記載の車両用運転制御装置。
【請求項6】
前記運転操作検出部により、前記アクセルペダルが踏み込まれていないことが検出されると、前記動力機関制限手段による前記動力機関の動作の制限を解除することを特徴とする請求項1乃至5の何れか1項に記載の車両用運転制御装置。
【請求項7】
前記車両の運転者へ前記車両が駐車状態にあること及び前記動力機関制限手段が動作していることを報知する報知部を備えることを特徴とする
請求項1乃至6に記載の車両用運転制御装置。
【請求項8】
前記動力機関制限手段の有効と無効とを切り替えることを可能とすることを特徴とする
請求項1乃至4に記載の車両用運転制御装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−107602(P2012−107602A)
【公開日】平成24年6月7日(2012.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−259054(P2010−259054)
【出願日】平成22年11月19日(2010.11.19)
【出願人】(395011665)株式会社オートネットワーク技術研究所 (2,668)
【出願人】(000183406)住友電装株式会社 (6,135)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】