説明

車両用駆動装置

【課題】外部からの衝撃に対してパワー制御ユニットが適切に保護される車両用駆動装置、を提供する。
【解決手段】車両用駆動装置は、駆動力を発生するモータジェネレータと、モータジェネレータと一体に設けられ、モータジェネレータの制御を行なうパワー制御ユニット(PCU)21とを備える。PCU21は、相対的に小さい電圧が印加する低電圧回路部71と、低電圧回路部71よりも車両後方に配置され、相対的に大きい電圧が印加する高電圧回路部75と、車両前後方向において低電圧回路部71と高電圧回路部75との間に配置され、高電圧回路部75を冷却する冷却プレート72とを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、一般的には、車両用駆動装置に関し、より特定的には、回転電機と、回転電機の制御を行なうパワー制御ユニットとが一体に設けられた車両用駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の車両用駆動装置に関して、たとえば、特開2005−333747号公報には、冷却水路内におけるエアを容易に除去することを目的としたインバータ一体型回転電機が開示されている(特許文献1)。特許文献1では、回転電機であるモータジェネレータに、パワー制御ユニット(PCU:Power Control Unit)が据え付けられ、モータジェネレータおよびパワー制御ユニットが一体的に形成されている。
【0003】
また、特開2001−119898号公報には、インバータケースを駆動装置ケースに対して一体化し、車両への搭載性を向上させることを目的とした駆動装置が開示されている(特許文献2)。特許文献2では、駆動装置ケースの上方にインバータケースが一体に設けられている。インバータケース内には、ヒートシンク、駆動モータ用/発電機モータ用インバータ、平滑用コンデンサおよび制御基板が収容されている。
【0004】
また、特開2004−343845号公報には、複数の電動機を個別のケース部分に内蔵する駆動装置において、各電動機に対応するインバータの駆動装置への一体化と、インバータの冷却とを両立させることを目的とした電動機内蔵駆動装置が開示されている(特許文献3)。特許文献3では、駆動装置ケースにインバータケースが取り付けられている。また、特開2007−99121号公報には、インバータを一体化し、小型化することを目的としたハイブリッド車両の駆動装置が開示されている(特許文献4)。特許文献4では、モータジェネレータ、動力分割機構およびパワー制御ユニットが、金属製のケースに収容されて一体化されている。
【0005】
また、特開2003−199363号公報には、優れたコンパクト性、組み立て性、製造性、耐振性を得ることを目的とした電動駆動装置制御ユニットが開示されている(特許文献5)。特許文献5では、制御ユニットが、駆動装置の前方に前傾姿勢で駆動装置ケースに取り付けられている。制御ユニットを構成するパワーモジュールは、ケースの底壁により構成されるヒートシンクに接して配置されている。パワーモジュールの上部には、インバータの平滑回路用のコンデンサが配置され、さらにその上方には制御基板が配置されている。
【0006】
また、特開2002−274201号公報には、発電機の回転軸および電動機の出力軸に直交する方向において、発電機および電動機の配置スペースを可及的に狭めることを目的とした動力伝達装置が開示されている(特許文献6)。特許文献6に開示される動力伝達装置では、第1のモータジェネレータの回転軸と第2のモータジェネレータの回転軸とが、その半径方向にオフセットされている。
【特許文献1】特開2005−333747号公報
【特許文献2】特開2001−119898号公報
【特許文献3】特開2004−343845号公報
【特許文献4】特開2007−99121号公報
【特許文献5】特開2003−199363号公報
【特許文献6】特開2002−274201号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述の特許文献1では、パワー制御ユニットが一体的に設けられたモータジェネレータが、車両前方のエンジンルームに収容されている。しかしながら、パワー制御ユニットは、バッテリおよびモータジェネレータ間で直流電圧と交流電圧とを相互に変換するインバータや、電圧の昇圧および降圧を行なうコンバータなどの高電圧回路部を含む。このため、車両前方からパワー制御ユニットに加わる衝撃に対して十分に考慮する必要がある。
【0008】
そこでこの発明の目的は、上記の課題を解決することであり、外部からの衝撃に対してパワー制御ユニットが適切に保護される車両用駆動装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明に従った車両用駆動装置は、駆動力を発生する回転電機と、回転電機と一体に設けられ、回転電機の制御を行なうパワー制御ユニットとを備える。パワー制御ユニットは、相対的に小さい電圧が印加する低電圧回路部と、低電圧回路部よりも車両後方に配置され、相対的に大きい電圧が印加する高電圧回路部と、車両前後方向において低電圧回路部と高電圧回路部との間に配置され、高電圧回路部を冷却する冷却プレートとを含む。
【0010】
このように構成された車両用駆動装置によれば、車両前方から車両用駆動装置に衝撃に加わった場合に、その衝撃を低電圧回路部で吸収するとともに、冷却プレートを利用して高電圧回路部の車両前方の強度を向上させることができる。これにより、高電圧が印加する高電圧回路部に到達する衝撃を緩和し、パワー制御ユニットを適切に保護することができる。
【0011】
また好ましくは、車両用駆動装置は、回転電機を収容するケース体をさらに備える。冷却プレートは、金属から形成され、ケース体に対して固定される。このように構成された車両用駆動装置によれば、ケース体によって強固に支持された冷却プレートを利用して、高電圧回路部の車両前方の強度を向上させることができる。
【0012】
また好ましくは、車両用駆動装置は、回転電機を収容し、金属から形成されるケース体をさらに備える。ケース体は、車両前後方向に筒状に延在し、その内側にパワー制御ユニットを収容する筒状部を含む。筒状部が車両前方に向けて開口する開口面よりも車両後方側に、冷却プレートおよび高電圧回路部が配置される。このように構成された車両用駆動装置によれば、パワー制御ユニットを収容する筒状部を利用して、高電圧回路部の車両前方の強度を向上させることができる。
【0013】
また好ましくは、回転電機として、パワー制御ユニットにより互いに異なる制御が行なわれる第1回転電機および第2回転電機が設けられる。第1回転電機および第2回転電機は、第2回転電機の回転軸が第1回転電機の回転軸よりも車両後方側にずれるように配置される。第2回転電機の車両前方側にパワー制御ユニットが配置される。このように構成された車両用駆動装置によれば、第2回転電機の回転軸を第1回転電機の回転軸よりも車両後方側にずらすことにより、第2回転電機の車両前方側に空間を確保することができる。この空間にパワー制御ユニットを配置することによって、車両用駆動装置をコンパクトに構成できる。また、車両前方からの衝撃を吸収する部分を第1回転電機に設けることができる。
【0014】
また好ましくは、車両用駆動装置は、第1回転電機を収容する第1ケース体と、第2回転電機およびパワー制御ユニットを収容する第2ケース体とをさらに備える。第2ケース体は、第1ケース体と車両幅方向に隣り合って配置され、第1ケース体に連結される。車両前後方向における第1ケース体の前端よりも車両後方側に、冷却プレートおよび高電圧回路部が配置される。このように構成された車両用駆動装置によれば、車両前方からの衝撃を第1ケース体によって吸収することができる。
【0015】
また好ましくは、高電圧回路部は、回転電機とバッテリとの間で、直流電圧および交流電圧を相互に変換するインバータと、電圧の昇圧および降圧を行なうコンバータとを含む。低電圧回路部は、インバータおよびコンバータに制御信号を送る制御装置を含む。このように構成された車両用駆動装置によれば、車両駆動用の高圧電流が流れる高電圧回路部を、車両外部から加わる衝撃から適切に保護することができる。
【0016】
また好ましくは、回転電機およびパワー制御ユニットは、車両前方に設けられたエンジンルームに搭載される。このように構成された車両用駆動装置によれば、車両衝突時にエンジンルームが変形する場合があっても、パワー制御ユニットを適切に保護することができる。
【発明の効果】
【0017】
以上説明したように、この発明に従えば、外部からの衝撃に対してパワー制御ユニットが適切に保護される車両用駆動装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
この発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。なお、以下で参照する図面では、同一またはそれに相当する部材には、同じ番号が付されている。
【0019】
図1は、ハイブリッド自動車のモータジェネレータ制御に関する構成を示す回路図である。ハイブリッド自動車は、ガソリンエンジンやディーゼルエンジン等の内燃機関と、充放電可能な2次電池(バッテリ)から電力供給されるモータとを動力源とする。
【0020】
図1を参照して、ハイブリッド自動車は、バッテリユニット40と、車両用駆動装置20と、図示しないエンジンとを含む。車両用駆動装置20は、電動機および発電機として機能するモータジェネレータMG1,MG2と、図示しないエンジンおよびモータジェネレータMG1,MG2の間で動力を分配する動力分割機構26と、モータジェネレータMG1,MG2の制御を行なうパワー制御ユニット(PCU:Power Control Unit)21とを含む。
【0021】
バッテリユニット40には端子41,42が設けられている。PCU21にはDC端子43,44が設けられている。端子41とDC端子43との間および端子42とDC端子44との間は、それぞれケーブル6およびケーブル8によって電気的に接続されている。PCU21にはMG端子46,47が設けられている。モータジェネレータMG1のU相,V相,W相コイルと、MG端子46との間がケーブル2によって電気的に接続され、モータジェネレータMG2のU相,V相,W相コイルと、MG端子47との間がケーブル4によって電気的に接続されている。
【0022】
バッテリユニット40は、バッテリBと、バッテリBの正極と端子41との間に接続されるシステムメインリレーSMR2と、バッテリBの負極と端子42との間に接続されるシステムメインリレーSMR3と、バッテリBの正極と端子41との間に直列に接続される、システムメインリレーSMR1および制限抵抗Rとを含む。システムメインリレーSMR1〜SMR3は、後述の制御装置30から与えられる制御信号SEに応じて導通/非導通状態が制御される。
【0023】
バッテリユニット40は、バッテリBの端子間の電圧VBを測定する電圧センサ10と、バッテリBに流れる電流IBを検知する電流センサ11とを含む。バッテリBとしては、ニッケル水素、リチウムイオン等の2次電池や、燃料電池などを用いることができる。バッテリBに代わる蓄電装置として、電気二重層コンデンサ等の大容量キャパシタを用いることもできる。
【0024】
PCU21は、モータジェネレータMG1,MG2にそれぞれ対応して設けられるインバータ22,14と、インバータ22,14に共通して設けられる昇圧コンバータ12と、制御装置30とを含む。
【0025】
昇圧コンバータ12は、DC端子43,44間の電圧を昇圧する。昇圧コンバータ12は、一方端が端子43に接続されるリアクトル32と、昇圧用IPM(Intelligent Power Module)13と、平滑用コンデンサ33とを含む。昇圧用IPM13は、昇圧後の電圧VHを出力する昇圧コンバータ12の出力端子間に直列に接続されるIGBT素子Q1,Q2と、IGBT素子Q1,Q2にそれぞれ並列に接続されるダイオードD1,D2とを含む。平滑用コンデンサ33は、昇圧コンバータ12によって昇圧された電圧を平滑化する。
【0026】
リアクトル32の他方端は、IGBT素子Q1のエミッタおよびIGBT素子Q2のコレクタに接続されている。ダイオードD1のカソードは、IGBT素子Q1のコレクタと接続され、ダイオードD1のアノードは、IGBT素子Q1のエミッタと接続されている。ダイオードD2のカソードは、IGBT素子Q2のコレクタと接続され、ダイオードD2のアノードは、IGBT素子Q2のエミッタと接続されている。
【0027】
インバータ14は、車輪を駆動するモータジェネレータMG2に対して昇圧コンバータ12の出力する直流電圧を三相交流に変換して出力する。インバータ14は、回生制動に伴い、モータジェネレータMG2において発電された電力を昇圧コンバータ12に戻す。このとき、昇圧コンバータ12は、降圧回路として動作するように制御装置30によって制御される。
【0028】
インバータ14は、走行用IPM18を構成するU相アーム15、V相アーム16およびW相アーム17を含む。U相アーム15,V相アーム16およびW相アーム17は、昇圧コンバータ12の出力ライン間に並列に接続されている。
【0029】
U相アーム15は、直列接続されたIGBT素子Q3,Q4と、IGBT素子Q3,Q4とそれぞれ並列に接続されるダイオードD3,D4とを含む。ダイオードD3のカソードは、IGBT素子Q3のコレクタと接続され、ダイオードD3のアノードは、IGBT素子Q3のエミッタと接続されている。ダイオードD4のカソードは、IGBT素子Q4のコレクタと接続され、ダイオードD4のアノードは、IGBT素子Q4のエミッタと接続されている。
【0030】
V相アーム16は、直列接続されたIGBT素子Q5,Q6と、IGBT素子Q5,Q6とそれぞれ並列に接続されるダイオードD5,D6とを含む。ダイオードD5のカソードは、IGBT素子Q5のコレクタと接続され、ダイオードD5のアノードは、IGBT素子Q5のエミッタと接続されている。ダイオードD6のカソードは、IGBT素子Q6のコレクタと接続され、ダイオードD6のアノードは、IGBT素子Q6のエミッタと接続されている。
【0031】
W相アーム17は、直列接続されたIGBT素子Q7,Q8と、IGBT素子Q7,Q8とそれぞれ並列に接続されるダイオードD7,D8とを含む。ダイオードD7のカソードは、IGBT素子Q7のコレクタと接続され、ダイオードD7のアノードは、IGBT素子Q7のエミッタと接続されている。ダイオードD8のカソードは、IGBT素子Q8のコレクタと接続され、ダイオードD8のアノードは、IGBT素子Q8のエミッタと接続されている。
【0032】
各相アームの中間点は、モータジェネレータMG2の各相コイルの各相端に接続されている。すなわち、モータジェネレータMG2は、三相の永久磁石同期モータであり、U,V,W相の3つのコイルは各々一方端が中性点に共に接続されている。U相コイルの他方端は、IGBT素子Q3,Q4の接続ノードに接続されている。V相コイルの他方端は、IGBT素子Q5,Q6の接続ノードに接続されている。W相コイルの他方端は、IGBT素子Q7,Q8の接続ノードに接続されている。
【0033】
電流センサ25は、モータジェネレータMG1に流れる電流をモータ電流値MCRT1として検出し、モータ電流値MCRT1を制御装置30に出力する。電流センサ24は、モータジェネレータMG2に流れる電流をモータ電流値MCRT2として検出し、モータ電流値MCRT2を制御装置30に出力する。
【0034】
インバータ22は、昇圧コンバータ12に対してインバータ14と並列的に接続される。インバータ22は、モータジェネレータMG1に対して昇圧コンバータ12の出力する直流電圧を三相交流に変換して出力する。インバータ22は、昇圧コンバータ12から昇圧された電圧を受けてたとえばエンジンを始動させるためにモータジェネレータMG1を駆動する。
【0035】
また、インバータ22は、エンジンのクランクシャフトから伝達される回転トルクによってモータジェネレータMG1で発電された電力を昇圧コンバータ12に戻す。このとき、昇圧コンバータ12は降圧回路として動作するように制御装置30によって制御される。なお、インバータ22の内部の構成はインバータ14と同様であるため、詳細な説明は繰返さない。
【0036】
制御装置30は、トルク指令値TR1,TR2、モータ回転数MRN1,MRN2、電圧VB,VL,VH、電流IBの各値、モータ電流値MCRT1,MCRT2および起動信号IGONを受ける。
【0037】
ここで、トルク指令値TR1,モータ回転数MRN1およびモータ電流値MCRT1は、モータジェネレータMG1に関するものであり、トルク指令値TR2,モータ回転数MRN2およびモータ電流値MCRT2は、モータジェネレータMG2に関するものである。電圧VBは、バッテリBの電圧であり、電流IBは、バッテリBに流れる電流である。電圧VLは、昇圧コンバータ12の昇圧前電圧であり、電圧VHは、昇圧コンバータ12の昇圧後電圧である。
【0038】
制御装置30は、昇圧コンバータ12に対して昇圧指示を行なう制御信号PWU,降圧指示を行なう制御信号PWDおよび動作禁止を指示する信号CSDNを出力する。
【0039】
制御装置30は、インバータ14に対して昇圧コンバータ12の出力である直流電圧をモータジェネレータMG2を駆動するための交流電圧に変換する駆動指示PWMI2と、モータジェネレータMG2で発電された交流電圧を直流電圧に変換して昇圧コンバータ12側に戻す回生指示PWMC2とを出力する。制御装置30は、インバータ22に対して直流電圧をモータジェネレータMG1を駆動するための交流電圧に変換する駆動指示PWMI1と、モータジェネレータMG1で発電された交流電圧を直流電圧に変換して昇圧コンバータ12側に戻す回生指示PWMC1とを出力する。
【0040】
続いて、図1中の車両用駆動装置20の構造について詳細に説明する。図2は、ハイブリッド自動車のエンジンルームを示す平面図である。
【0041】
図2を参照して、ハイブリッド自動車の車両前方には、エンジン52を搭載するエンジンルーム51が設けられている。エンジンルーム51は、フロントバンパ53とダッシュボードパネル54との間に形成されている。ダッシュボードパネル54は、エンジンルーム51と車両室内との間を区画するパネルである。
【0042】
車両用駆動装置20は、エンジンルーム51に収容されている。車両用駆動装置20は、エンジン52に対して車両幅方向に隣り合って設けられている。エンジン52に隣接する位置には、第1回転電機としてのモータジェネレータMG1が配置されている。モータジェネレータMG1に対してエンジン52の反対側には、第2回転電機としてのモータジェネレータMG2が配置されている。エンジン52、モータジェネレータMG1およびモータジェネレータMG2は、車両幅方向に並ぶ。モータジェネレータMG1とモータジェネレータMG2との間には、動力分割機構26が配置されている。
【0043】
モータジェネレータMG1およびモータジェネレータMG2の回転中心となる軸が、それぞれ回転軸101および回転軸102として表されている。回転軸101と回転軸102とは、互いに平行に車両幅方向に延びる。モータジェネレータMG1は、回転軸101とエンジン52のクランクシャフトとが同軸になるように配置されている。モータジェネレータMG2は、回転軸102が回転軸101よりも車両後方にオフセットされるようにモータジェネレータMG1に対して位置決めされている。
【0044】
このような構成により、モータジェネレータMG2の車両前方には空間が形成される。PCU21をこの空間に配置することによって、車両用駆動装置20の小型化を図ることができる。また、PCU21は、モータジェネレータMG2と水平方向に並んで配置されている。この場合、PCU21をモータジェネレータMG2の上方に配置する場合と比較して、車両用駆動装置20の重心を低くすることができる。これにより、ハイブリッド自動車の振動特性や乗り心地を改善することができる。
【0045】
図3は、図2中のパワー制御ユニットを示す斜視図である。図2および図3を参照して、車両用駆動装置20は、モータジェネレータMG1を収容するMG1ケース61と、モータジェネレータMG2およびPCU21を収容するMG2・インバータケース64とを含む。MG1ケース61およびMG2・インバータケース64は、アルミニウム等の金属から形成されている。
【0046】
MG1ケース61は、エンジン52から車両幅方向に筒状に延びる形状を有する。MG2・インバータケース64は、モータジェネレータMG2を収容するMG2収容部62と、PCU21を収容する筒状部63および蓋部65とを含む。MG2収容部62は、MG1ケース61から車両幅方向に筒状に延び、その延びる先で閉塞する形状を有する。MG2収容部62は、MG1ケース61と車両幅方向に隣り合って配置され、MG1ケース61に連結されている。筒状部63は、MG2収容部62から車両前方に向けて筒状に延びる形状を有する。筒状部63は、筒状に延びる先に車両前方に向けて開口する開口面63pを有する。蓋部65は、開口面63pを塞ぐように筒状部63に取り付けられている。
【0047】
なお、本実施の形態では、MG2収容部62と筒状部63とが一体に形成されているが、これに限られず、MG2収容部62と筒状部63とが別体に形成され、筒状部63がMG2収容部62に連結される構造としてもよい。
【0048】
図4は、図2中のIV−IV線上に沿ったパワー制御ユニットの断面図である。図1から図4を参照して、PCU21は、相対的に小さい電圧が印加する低電圧回路部71と、相対的に大きい電圧が印加する高電圧回路部75とを含む。
【0049】
低電圧回路部71は、制御装置30を構成する制御基板に対応する。ハイブリッド自動車には、第1バッテリとしてのバッテリBとは別に、バッテリBよりも小さい容量を有する第2バッテリとしての補機バッテリ(12V)が設けられている。低電圧回路部71は、この補機バッテリから供給される電圧により作動する。高電圧回路部75は、IPM76と、平滑用コンデンサ33と、リアクトル32とを含む。IPM76は、図1中のインバータ14,22および昇圧コンバータ12をそれぞれ構成する走行用IPM18および昇圧用IPM13から構成される。高電圧回路部75には、車両駆動用の電流が流れる。一例を挙げれば、昇圧コンバータ12による昇圧後の電流は、450V以上の電圧を有する。昇圧コンバータ12による昇圧後の電流は、650V以上の電圧を有してもよい。バッテリBから昇圧コンバータ12に供給される電流は、200V以上の電圧を有する。
【0050】
図4を参照して、PCU21は、冷却プレート72、ウォータジャケット74および連結部材73を含む。冷却プレート72は、板形状を有する。冷却プレート72は、車両前後方向に直交する平面内で板状に延在するように配置されている。冷却プレート72、ウォータジャケット74および連結部材73は、アルミニウム等の金属から形成されている。ウォータジャケット74は、冷却プレート72から車両後方に間隔を隔てた位置に配置されている。ウォータジャケット74は、MG2・インバータケース64に固定されている。連結部材73は、車両前後方向に延び、冷却プレート72とウォータジャケット74との間を連結している。このような構成により、冷却プレート72は、連結部材73およびウォータジャケット74を介在させてMG2・インバータケース64に対して固定されている。なお、冷却プレート72が直接、筒状部63に固定されてもよい。
【0051】
冷却プレート72よりも車両前方側には、低電圧回路部71が配置されている。低電圧回路部71は、筒状部63および蓋部65の内部に収まるように配置されている。冷却プレート72よりも車両後方側には、高電圧回路部75が配置されている。具体的には、冷却プレート72に接するようにIPM76が設けられている。IPM76に対して冷却プレート72の反対側には、平滑用コンデンサ33が設けられている。IPM76および平滑用コンデンサ33は、冷却プレート72とウォータジャケット74との間の空間に配置されている。車両前後方向においてウォータジャケット74と重なってリアクトル32が設けられている。IPM76、平滑用コンデンサ33およびリアクトル32は、車両前後方向において冷却プレート72の表面上に投影されるように配置されている。低電圧回路部71、冷却プレート72、IPM76、平滑用コンデンサ33およびリアクトル32は、水平方向に並んで配置されている。低電圧回路部71、冷却プレート72、IPM76、平滑用コンデンサ33およびリアクトル32は、車両前後方向に並んで配置されている。
【0052】
冷却プレート72および高電圧回路部75は、ケース体としてのMG2・インバータケース64の開口面63pよりも車両後方側に配置されている。第2ケース体としてのMG2・インバータケース64に収容される冷却プレート72および高電圧回路部75は、第1ケース体としてのMG1ケース61の前端61fよりも車両後方側に配置されている(図1を参照のこと)。
【0053】
冷却プレート72、ウォータジャケット74および連結部材73の内部には、冷却水路が形成されており、冷却水が各部材の内部を循環する。このような構成により、冷却プレート72は、高電圧回路部75を冷却する役割を果たし、ウォータジャケット74は、モータジェネレータMG2およびPCU21間を熱的に遮断する役割を果たす。
【0054】
図5は、図4中のPCUに設けられる各種端子を示す断面図である。図5(B)は、図4に対応する図であり、図5(A)は、図5(B)中の矢印Aに示す方向から見た図である。図1および図5を参照して、高電圧回路部75は、バッテリユニット40およびPCU21間を電気的に接続するためのDC端子43,44と、モータジェネレータMG1およびPCU21間を電気的に接続するためのMG端子46と、モータジェネレータMG2およびPCU21間を電気的に接続するためのMG端子47とを含む。DC端子43,44、MG端子46およびMG端子47は、冷却プレート72よりも車両後方側に配置されている。
【0055】
ハイブリッド自動車が衝突を起こした場合を想定すると、この場合、車両前方からの衝撃がエンジンルーム51に加わる。これに対して、本実施の形態では、車両前方から後方に向けて、低電圧回路部71、冷却プレート72および高電圧回路部75が順に配置されている。このような構成により、衝撃をまず低電圧回路部71によって吸収するとともに、冷却プレート72によって高電圧回路部75の車両前方の強度を向上させることができる。
【0056】
本実施の形態では、冷却プレート72がモータジェネレータMG2を収容するケース体としてのMG2・インバータケース64に対して固定されている。このため、冷却プレート72が強固に支持された剛体として設けられており、高電圧回路部75の車両前方の強度を格段に向上させることができる。また、冷却プレート72は、MG2・インバータケース64の開口面63pよりも車両後方側に配置されている。このような構成により、高電圧回路部75の周囲が、冷却プレート72と、MG2・インバータケース64の筒状部63とによって取り囲まれる構造が得られる。車両前方から加わった衝撃は、冷却プレート72に達するよりも前に筒状部63の前端に達するため、筒状部63の変形を通じて衝撃を吸収することができる。また、冷却プレート72は、MG1ケース61の前端61fよりも車両後方側に配置されている。このため、同様にMG1ケース61の変形を通じて衝撃を吸収することができる。
【0057】
この発明の実施の形態における車両用駆動装置20は、駆動力を発生する回転電機としてのモータジェネレータMG1,MG2と、モータジェネレータMG1,MG2と一体に設けられ、モータジェネレータMG1,MG2の制御を行なうパワー制御ユニット(PCU)21とを備える。PCU21は、相対的に小さい電圧が印加する低電圧回路部71と、低電圧回路部71よりも車両後方に配置され、相対的に大きい電圧が印加する高電圧回路部75と、車両前後方向において低電圧回路部71と高電圧回路部75との間に配置され、高電圧回路部75を冷却する冷却プレート72とを含む。
【0058】
このように構成された、この発明の実施の形態における車両用駆動装置20によれば、ハイブリッド自動車の衝突時、高電圧が印加する高電圧回路部75に到達する衝撃を緩和することができる。これにより、PCU21を適切に保護することができる。
【0059】
なお、本実施の形態では、内燃機関とバッテリとを動力源とするハイブリッド自動車に本発明を適用したが、これに限定されず、燃料電池とバッテリとを動力源とする燃料電池ハイブリッド自動車(FCHV:Fuel Cell Hybrid Vehicle)、または電気自動車(EV:Electric Vehicle)に本発明を適用することもできる。本実施の形態におけるハイブリッド自動車では、燃費最適動作点で内燃機関を駆動するのに対して、燃料電池ハイブリッド自動車では、発電効率最適動作点で燃料電池を駆動する。また、バッテリの使用に関しては、両方のハイブリッド自動車で基本的に変わらない。
【0060】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】ハイブリッド自動車のモータジェネレータ制御に関する構成を示す回路図である。
【図2】ハイブリッド自動車のエンジンルームを示す平面図である。
【図3】図2中のパワー制御ユニットを示す斜視図である。
【図4】図2中のIV−IV線上に沿ったパワー制御ユニットの断面図である。
【図5】図4中のPCUに設けられる各種端子を示す断面図である。
【符号の説明】
【0062】
20 車両用駆動装置、21 パワー制御ユニット(PCU)、51 エンジンルーム、61 MG1ケース、61f 前端、63 筒状部、63p 開口面、64 MG2・インバータケース、71 低電圧回路部、72 冷却プレート、75 高電圧回路部、101,102 回転軸、MG1,MG2 モータジェネレータ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動力を発生する回転電機と、
前記回転電機と一体に設けられ、前記回転電機の制御を行なうパワー制御ユニットとを備え、
前記パワー制御ユニットは、
相対的に小さい電圧が印加する低電圧回路部と、
前記低電圧回路部よりも車両後方に配置され、相対的に大きい電圧が印加する高電圧回路部と、
車両前後方向において前記低電圧回路部と前記高電圧回路部との間に配置され、前記高電圧回路部を冷却する冷却プレートとを含む、車両用駆動装置。
【請求項2】
前記回転電機を収容するケース体をさらに備え、
前記冷却プレートは、金属から形成され、前記ケース体に対して固定される、請求項1に記載の車両用駆動装置。
【請求項3】
前記回転電機を収容し、金属から形成されるケース体をさらに備え、
前記ケース体は、車両前後方向に筒状に延在し、その内側に前記パワー制御ユニットを収容する筒状部を含み、
前記筒状部が車両前方に向けて開口する開口面よりも車両後方側に、前記冷却プレートおよび前記高電圧回路部が配置される、請求項1または2に記載の車両用駆動装置。
【請求項4】
前記回転電機として、前記パワー制御ユニットにより互いに異なる制御が行なわれる第1回転電機および第2回転電機が設けられ、
前記第1回転電機および前記第2回転電機は、前記第2回転電機の回転軸が前記第1回転電機の回転軸よりも車両後方側にずれるように配置され、
前記第2回転電機の車両前方側に前記パワー制御ユニットが配置される、請求項1から3のいずれか1項に記載の車両用駆動装置。
【請求項5】
前記第1回転電機を収容する第1ケース体と、
前記第2回転電機および前記パワー制御ユニットを収容し、前記第1ケース体と車両幅方向に隣り合って配置され、前記第1ケース体に連結される第2ケース体とをさらに備え、
車両前後方向における前記第1ケース体の前端よりも車両後方側に、前記冷却プレートおよび前記高電圧回路部が配置される、請求項4に記載の車両用駆動装置。
【請求項6】
前記高電圧回路部は、前記回転電機とバッテリとの間で、直流電圧および交流電圧を相互に変換するインバータと、電圧の昇圧および降圧を行なうコンバータとを含み、
前記低電圧回路部は、前記インバータおよび前記コンバータに制御信号を送る制御装置を含む、請求項1から5のいずれか1項に記載の車両用駆動装置。
【請求項7】
前記回転電機および前記パワー制御ユニットは、車両前方に設けられたエンジンルームに搭載される、請求項1から6のいずれか1項に記載の車両用駆動装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−137404(P2009−137404A)
【公開日】平成21年6月25日(2009.6.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−314845(P2007−314845)
【出願日】平成19年12月5日(2007.12.5)
【特許番号】特許第4253684号(P4253684)
【特許公報発行日】平成21年4月15日(2009.4.15)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【出願人】(000100768)アイシン・エィ・ダブリュ株式会社 (3,717)
【Fターム(参考)】