説明

車両走行制御装置

【課題】 主要道路を走行中にナビゲーション装置などの自車両が走行環境を取得する手段によって主要道路を退出しようとしたと判断された場合に、運転者に与える違和感を少なくすることができる車両走行制御装置を提供する。
【解決手段】 走行制御ECU1は、目標車速設定部12で設定された車速に基づいて、ACC制御部13によって車速を制御する。加速意思取得部11では、運転者の加速意思を取得している。目標車速設定部12において、車両が高速道路の本線を走行中であるにも係わらず、誤って退出路を走行していると判定することがある。この場合、目標車速を低く設定して加速を抑制するが、このときに加速意思取得部11が運転者の加速意思を取得した場合には、目標車速を低くせず、加速の抑制をキャンセルする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の走行制御を行う車両走行制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、運転者の運転操作を軽減するために、クルーズコントロールを行う車両が知られている。このクルーズコントロールでは、たとえば、自車両に先行する先行車両が存在する場合には、先行車両との車間距離を一定に保つ追従走行制御が行われる。また、自車両に先行する先行車両が存在しない場合には、自車両の車速を所定の目標車速で一定に保つ定速走行制御が行われる。このような追従走行制御は、たとえば高速道路などの主要道路を走行する車両についても行われる。
【0003】
また、クルーズコントロールを行う際に自車両の目標車速を決定するにあたり、走行環境を考慮することがある。たとえば、主要道路から退出して側道を走行する場合には、主要道路を走行する場合よりも目標車速を低く設定する。このような車両の走行制御を行う際には、走行環境を取得する手段として、たとえば自車両が走行する位置を検出するナビゲーション装置が用いられている。この種のナビゲーション装置として、従来、自車両が高速道路などの主要道路から退出したことを検出する退出検出手段を備えるものが知られている(たとえば、特許文献1)。
【0004】
上記特許文献1に記載されたナビゲーション装置を用いてクルーズコントロールによる自車両の走行制御を行う際、先行車両が存在しない状態で自車両が主要道路から退出したと検出された場合には、高速道路を走行している場合よりも遅い目標車速が設定される。そして、この制御速度で走行を行うための減速制御が行われる。
【特許文献1】特開2006−64440号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記特許文献1に開示されたナビゲーション装置を用いてクルーズコントロールを行うにあたり、ナビゲーション装置による自車両の走行位置の検出精度が高くないと、主要道路の走行を継続しようとした場合でも、主要道路から退出しようとしていると判断することが考えられる。このような場合、主要道路の走行を継続するにもかかわらず、目標車速を低く設定することになり、不意に自車両が減速するなど、運転者が違和感を覚える可能性があるという問題があった。
【0006】
そこで、本発明の課題は、主要道路を走行中にナビゲーション装置などの自車両が走行環境を取得する手段によって主要道路を退出しようとしたと判断された場合に、運転者に与える違和感を少なくすることができる車両走行制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決した本発明に係る車両走行制御装置は、自車両の走行環境を取得する走行環境取得手段と、走行環境取得手段によって取得された走行環境が加速不適環境である際に、自車両の加速を抑制する加速抑制手段と、ドライバの加速意思を取得する加速意思取得手段と、加速意思取得手段によって加速意思を取得した際、加速抑制手段による加速の抑制をキャンセルする加速抑制キャンセル手段と、を備えることを特徴とするものである。
【0008】
本発明に係る車両走行制御装置は、ナビゲーション装置などの走行環境取得手段によって取得された走行環境が主要道路の退出路などの加速不適環境である際に、原則的には加速抑制手段によって自車両の加速を抑制する。しかしながら、走行環境取得手段によって取得された走行環境が誤っている場合には、退出路ではなく主要道路の本線を走行している場合に加速が抑制されることがあり、この場合には運転者に違和感を与えることになる。この点、本発明に係る車両走行制御装置では、環境取得手段によって取得された走行環境が加速不適環境である際に、加速意思取得手段によって加速意思を取得した際、加速抑制手段による加速の抑制をキャンセルするようにしている。このため、主要道路を走行中にナビゲーション装置などの自車両が走行環境を取得する手段によって主要道路を退出しようとしたと判断された場合に、運転者に与える違和感を少なくすることができる。
【0009】
ここで、自車両の走行状態を取得する走行状態取得手段と、自車両に対する先行車両の情報を取得する先行車両情報取得手段と、走行状態および先行車両情報に基づいて、先行車両に自車両を追従させる追従制御を行う追従走行制御手段と、先行車両が非検出のときには自車両を所定の設定車速まで加速させる加速制御手段と、をさらに備える態様とすることができる。
【0010】
走行環境取得手段によって取得された走行環境が加速不適環境である際に、自車両の加速を抑制する加速抑制手段は、このような走行状態および先行車両情報に基づいて、先行車両に自車両を追従させる追従制御を行う追従走行制御手段と、先行車両が非検出のときには自車両を所定の設定車速まで加速させる加速制御手段と、をさらに備えるいわゆるクルーズコントロールを行う車両走行制御装置に用いて好適なものとなる。したがって、本発明では、クルーズコントロールを行う車両走行制御装置において、主要道路を走行中にナビゲーション装置などの自車両が走行環境を取得する手段によって主要道路を退出しようとしたと判断された場合に、運転者に与える違和感を少なくすることができる。
【0011】
また、加速不適環境が、主要道路における退出路である態様とすることができる。このように、加速不適環境としては、主要道路における退出路が好適に対応する。
【0012】
さらに、走行環境取得手段が、ナビゲーション装置である態様とすることができる。このように、走行環境取得手段としては、ナビゲーション装置が好適に対応する。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る車両走行制御装置によれば、主要道路を走行中にナビゲーション装置などの自車両が走行環境を取得する手段によって主要道路を退出しようとしたと判断された場合に、運転者に与える違和感を少なくすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、添付図面を参照して本発明の実施形態について説明する。なお、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。また、図示の便宜上、図面の寸法比率は説明のものと必ずしも一致しない。
【0015】
図1は、本発明の実施形態に係る車両走行制御装置のブロック構成図である。図1に示すように、本実施形態に係る車両走行制御装置である走行制御ECU1は、加速意思取得部11、目標車速設定部12、およびアダプティブクルーズコントロール(以下「ACC」という)制御部13を備えている。走行制御ECU1は、電子制御する自動車デバイスのコンピュータであり、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、および入出力インターフェイスなどを備えて構成されている。
【0016】
また、走行制御ECU1には、ミリ波レーダセンサ2、ナビゲーション装置3、ウィンカースイッチ4、アクセルペダルセンサ5、クルーズレバー6、車速センサ7、および操舵角センサ8が接続されている。さらに、走行制御ECU1には、制動装置9および駆動装置10が接続されている。
【0017】
ミリ波レーダセンサ2は、たとえば車両のフロントグリルに設けられており、自車両に先行する先行車両と自車両との距離に関する先行車両情報や自車両と自車両の周囲における障害物との距離に関する周囲環境情報を検出して取得する。ミリ波レーダセンサ2は、取得した先行車両情報および周囲環境情報を含むミリ波情報を走行制御ECU1に送信する。
【0018】
ナビゲーション装置3は、全地球測位システム(GPS、Global Positioning System)等を利用して自車両の現在の走行位置を検出するとともに、走行目的地までの各種案内を行う。また、ナビゲーション装置3は、自車両の現在位置周辺に関する地図情報を保持している。このナビゲーション装置3は、保持している地図情報に基づいて、自車両の現在の走行位置における道路の種類や車線数などの走行環境を取得する。ナビゲーション装置3は、取得した自車両の現在の走行位置における走行環境に関する走行環境情報を含むナビ情報を走行制御ECU1に送信する。
【0019】
ウィンカースイッチ4は、たとえば運転者が操作可能なステアリングコラムに設けられている。ウィンカースイッチ4を運転者が操作することにより、ウィンカー指示信号がウィンカースイッチ4から走行制御ECU1に出力される。
【0020】
アクセルペダルセンサ5は、自車両のアクセルペダルに設けられており、アクセルペダルの操作量を検出して取得している。アクセルペダルセンサ5は、取得したアクセルペダルの操作量に関するアクセルペダル操作量情報を走行制御ECU1に送信する。
【0021】
クルーズレバー6は、車室内における運転者が操作可能な位置であるインパネに設けられている。運転者がクルーズレバー6をONにすることによりACC開始信号が走行制御ECU1に送信される。
【0022】
車速センサ7は、自車両の車輪に取り付けられており、自車両の車速を検出する。車速センサ7は、検出した車速に関する車速信号を走行制御ECU1に送信する。
【0023】
操舵角センサ8は、運転者によって入力されるステアリングホイールの操舵角を検出するセンサである。操舵角センサ8では、検出した操舵角を操舵角信号としてECU7に送信する。この操舵角信号に示される操舵角には、大きさの情報と操舵方向の情報が含まれる。
【0024】
走行制御ECU1における加速意思取得部11は、ミリ波レーダセンサ2から送信されるミリ波情報、ナビゲーション装置3から送信されるナビ情報、アクセルペダルセンサ5から送信されるアクセルペダル操作量情報、クルーズレバー6から送信されるACC開始信号、操舵角センサ8から送信される操舵角信号等に基づいて、自車両の運転者の加速意思を取得する。加速意思取得部11は、自車両の運転者の加速意思を取得した場合に、加速意思信号を目標車速設定部12に出力する。
【0025】
目標車速設定部12は、ミリ波レーダセンサ2から送信されるミリ波情報、ナビゲーション装置3から送信されるナビ情報、車速センサ7から送信される車速信号、加速意思取得部11から出力される加速意思信号等に基づいて、ACCを行う際の目標車速を設定する。ここで、走行環境として、自車両が高速道路の退出路を走行している際には、自車両の加速を抑制する目標車速を設定する。また、目標車速設定部12は加速意思取得部11から加速意思信号出力された際には、自車両の加速の抑制をキャンセルした目標車速、たとえば高速道路の走行を継続する際の車速を目標車速として設定する。目標車速設定部12は、設定した目標車速に関する目標車速信号をACC制御部13に出力する。
【0026】
ACC制御部13は、クルーズレバー6から送信されるACC開始信号に基づいて、ACCを開始する。ACCを行う際には、目標車速設定部12から出力された目標車速信号に応じた目標車速と、車速センサ7から送信された車速信号に応じた車速とを比較し、車速が目標車速に近づくように、制動装置9および駆動装置10に対してそれぞれ制動信号および駆動信号を送信する。
【0027】
制動装置9は、自車両車輪に設けられたブレーキ装置からなり、走行制御ECU1から送信される制動信号に基づいて車輪に対して制動操作を行う。駆動装置10は、自車両のエンジンに設けられており、走行制御ECU1から送信される駆動信号に基づいて、スロットル開度を制御する。
【0028】
次に、本実施形態に係る走行制御ECU1における第一の制御手順について説明する。この例では、高速道路の退出路を走行している環境を加速不適環境と判断して制御を行う。図2は、本実施形態に係る走行制御ECUの制御手順を示すフローチャートである。
【0029】
図2に示すように、本実施形態に係る走行制御ECU1では、まず、ナビゲーション装置3から送信されるナビ情報、ミリ波レーダセンサ2から送信されるミリ波情報、ウィンカースイッチ4から送信されるウィンカー指示信号やアクセルペダルセンサ5から送信されるアクセルペダル操作量信号などの車両情報を読み込む(S1)。
【0030】
続いて、読み込んだナビ情報に基づいて、自車両の走行位置が高速道路の退出路であるか否かを判断する(S2)。その結果、高速道路の退出路でないと判断した場合には、加速不適環境にはないので、既に設定されている目標車速に応じたACCを実行する(S10)。
【0031】
また、高速道路の退出路であると判断した場合には、加速不適環境にあると判断できるので、この場合には目標車速を変更し(S3)、加速を抑制する目標車速を設定する。具体的な例としては、高速道路を走行時の目標車速を100km/hに設定し、現在の車速が80km/hである場合に、加速を抑制する目標車速として40km/hを設定する。
【0032】
たとえば図3に示すように、高速道路の本線L1を走行する自車両M1が先行車両M2に追従するACCを行っていたときに、その後退出路L2に進入する場合にACCを継続すると、通常目標車速が高くなっていることから、そのままACCを継続すると、自車両M1の運転者が恐怖感を覚えることがある。このような恐怖感を与えないようにするために、退出路に進入する際には、目標車速を低くする。
【0033】
ここで、一般に、ナビゲーション装置では、いわゆるマップマッチング方式等によって自車両の走行位置を検出することから、高速道路を走行する自車両が退出路近辺に到達した際には、自車両の走行位置が高速道路の本線であるか退出路であるかの検出精度が低くなってしまう傾向にある。このため、ナビゲーション装置3によって高速道路の退出路に進入したと判断されたとしても、実際には自車両が高速道路の本線を継続して走行している場合がある。この場合には、自車両の運転者は急に目標車速が低くなることから、そのままACCを継続すると、急制動が行われることになり、運転者に違和感を与えることになる。この問題に対して、本実施形態では、目標車速を設定したら、加速意思取得部11において、運転者の加速意思の有無を判断し、加速意思があると判断した場合には、高速道路の本線の走行を継続していると判断して制御を行う。
【0034】
加速意思の判断として、最初に運転者がクルーズレバー6をONにしたか否かを判断する(S4)。クルーズレバー6をONにしたか否かの判断は、クルーズレバー6からACC開始信号が送信されたか否かによって行う。その結果、ACC開始信号が送信され、運転者がクルーズレバー6をONにしたと判断した場合には、運転者が加速意思を有していると判断できる。この場合には、目標車速をステップS3で変更した目標車速とする前の目標車速に戻し(S9)、この目標車速に応じたACCを実行する(S10)。
【0035】
また、クルーズレバー6をONにしていないと判断した場合には、運転者がアクセルペダルを踏んだか否かを判断する(S5)。運転者がアクセルペダルを踏んだか否かの判断は、アクセルペダルセンサ5から送信されたアクセルペダル操作量信号に基づくアクセルペダル操作量が所定量以上であるかによって行う。その結果、運転者がアクセルペダルを踏んでおらず、運転者が加速意思を有していないと判断した場合には、運転者に加速意思はないと判断できるので、ステップS3で変更された目標車速に応じたACCを実行する(S10)。
【0036】
一方、運転者がアクセルペダルを踏んでいると判断した場合には、ステップS2における高速道路の退出路を走行しているか否かの判断を行った後に、退出路方向へのウィンカーの操作があり、かつ高速道路の車線数が1車線であるか否かを判断する(S6)。退出路方向へのウィンカーの操作があったか否かの判断は、ウィンカースイッチ4から退出路方向へのウィンカー指示信号が送信されたか否かによって行われる。また、高速道路の車線数は、ナビ情報に含まれる走行環境情報に基づいて判断される。
【0037】
その結果、退出路方向へのウィンカーの操作があり、かつ高速道路の車線数が1車線であると判断した場合には、実際に退出路を走行しており、運転者に加速意思はないと判断できる。この場合には、ステップS3で変更された目標車速に応じたACCを実行する(S10)。
【0038】
さらに、退出路方向へのウィンカーの操作があり、かつ高速道路の車線数が1車線であるという条件を満たしていないと判断した場合には、ミリ波情報に含まれる周囲環境情報に基づいて、自車両の周囲の道路形状を推定する。続いて、ここで推定された自車両の周囲の道路形状が退出路に相当するか高速道路の本線に相当するかを判断する(S7)。自車両の周囲の道路形状が退出路に相当するか高速道路の本線に相当するかは、自車両の前方における道路形状等によって判断される。たとえば、図4に示すように、ミリ波情報に基づいて、自車両M1の前方における障害物のある方向を検出する。ここで、自車両M1の走行位置が退出路L2である場合には、障害物H1〜H3が高速道路の本線L1から遠ざかる方向に移動していく。このような障害物H1〜H3の配置が検出された際に、退出路L2にいると判断することができる。
【0039】
その結果、自車両の周囲の道路形状が退出路に相当すると判断した場合には、実際に退出路を走行しており、運転者に加速意思はないと判断できる。この場合には、ステップS3で変更された目標車速に応じたACCを実行する(S10)。
【0040】
また、自車両の周囲の道路形状が高速道路の本線に相当すると判断した場合には、自車両の走行するカーブRを算出し、カーブRが退出路に相当するか高速道路の本線に相当するかを判断する(S8)。自車両の走行するカーブRが退出路に相当するか高速道路の本線に相当するかは、操舵角センサ8から送信される操舵角情報に基づくステアリングの操舵角が、所定のしきい値以上となっているか否かによって判断する。ここで、ステアリングの操舵角がしきい値以上となっている場合にはカーブRが退出路に相当すると判断し、しきい値より小さい場合には高速道路の本線に相当すると判断する。
【0041】
その結果、自車両の走行するカーブRが退出路に相当すると判断した場合には、実際に退出路を走行しており、運転者に加速意思はないと判断できる。この場合には、ステップS3で変更された目標車速に応じたACCを実行する(S10)。一方、自車両の走行するカーブRが高速道路の本線に相当すると判断した場合には、自車両は高速道路の本線を走行しており、運転者には加速意思を有していると判断できる。このため、目標車速をステップS3で変更した目標車速とする前の目標車速に戻し(S9)、この目標車速に応じたACCを実行する(S10)。こうして、走行制御ECU1による制御を終了する。
【0042】
このように、本実施形態に係る車両走行制御装置では、ナビゲーション装置3によって自車両の走行位置が高速道路の退出路であると判断した場合でも、運転者の加速意思を取得することにより、加速の抑制をキャンセルする制御を行う。一般に、ナビゲーション装置では、いわゆるマップマッチング方式等によって自車両の走行位置を検出することから、高速道路を走行する自車両が退出路近辺に到達した際には、自車両の走行位置が高速道路の本線であるか退出路であるかの検出精度が低くなってしまう傾向にある。
【0043】
この点、一般に、自車両の走行位置が高速道路の退出路である場合には、運転者における加速意思は大きくなく、逆に自車両の走行位置が高速道路の本線である場合には、運転者の加速意思は失われない。そこで、本実施形態に係る車両走行制御装置においては、自車両の走行位置が高速道路の退出路であることが検出された場合に、さらに運転者の加速意思を検出している。この運転者の加速意思を検出し、加速意思が検出された場合には、高速道路の退出路を走行する場合の加速抑制をキャンセルした目標速度を設定している。したがって、高速道路を走行中にナビゲーション装置3によって主要道路を退出しようとしたと判断された場合に、運転者に与える違和感を少なくすることができる。
【0044】
次に、本実施形態に係る走行制御ECU1における第二の制御手順について説明する。この例では、上記の第一の制御手順と同様、高速道路の退出路を走行している環境を加速不適環境と判断して制御を行う。図5は、本実施形態に係る走行制御ECUの制御手順を示すフローチャートである。
【0045】
図5に示すように、本制御手順では、上記第一の制御手順と同様、ナビゲーション装置3から送信されるナビ情報等を読み込み(S11)、読み込んだナビ情報に基づいて、自車両の走行位置が高速道路の退出路であるか否かを判断する(S12)。その結果、高速道路の退出路でないと判断した場合には、既に設定されている目標車速に応じたACCを実行する(S19)。また、高速道路の退出路であると判断した場合には目標車速を変更し(S13)、加速を抑制する目標車速を設定する。
【0046】
続いて運転者がクルーズレバー6をONにしたか否かを判断し(S14)クルーズレバー6をONにしたと判断した場合には、目標車速をステップS3で変更した目標車速とする前の目標車速に戻し(S18)、この目標車速に応じたACCを実行する(S19)。また、クルーズレバー6をONにしていないと判断した場合には、運転者がアクセルペダルを踏んだか否かを判断する(S15)。その結果、運転者がアクセルペダルを踏んでおらず、運転者が加速意思を有していないと判断した場合には、ステップS13で変更された目標車速に応じたACCを実行する(S19)。ここまでは、上記第一の制御手順と同様である。
【0047】
続いて、アクセルペダルを踏んだと判断した場合には、アクセルペダルの操作時間が所定の継続時間α以上であるか否かを判断する(S16)。アクセルペダルの操作時間は、アクセルペダルセンサ5からアクセルペダル操作量信号が送信されている時間を計測することによって検出される。その結果、アクセルペダルの操作時間が所定の継続時間α以下である場合には、アクセルペダルを離したときに設定されている目標車速を、そのまま目標車速として設定する(S17)。
【0048】
高速道路の退出路を走行する際、運転者は自車両を大きく加速させようとすることはないが、車速を微調整するために自車両を加速することが考えられる。このような加速を行う際にも、アクセルペダルを操作することとなるが、車速の微調整のためにアクセルペダルを操作した場合にまで目標車速を変更前の車速に戻すと、運転者に対して違和感を与えることとなる。また、車速を微調整する際には、アクセルペダルを長時間操作することは考えにくい。
【0049】
そこで、この制御手順では、アクセルペダルを踏んだと判断した場合には、アクセルペダルの操作時間を計測し、その操作時間が継続時間αよりも短い場合には、高速道路の退出路を走行していると判断する。そして、アクセルペダルを離したときの目標車速をそのまま目標車速とする。その後、目標車速に応じたACCを実行する(S19)。こうして、自車両の走行位置が高速道路の退出路である際に、運転者が車速を微調整するためにアクセルペダルを操作した際に、目標車速を維持することにより、運転者に与える違和感を小さくすることができる。
【0050】
また、アクセルペダルの操作時間が所定の継続時間α以上である場合には、自車両の走行位置は高速道路の本線であると考えられる。この場合には、目標車速をステップS3で変更した目標車速とする前の目標車速に戻し(S18)、この目標車速に応じたACCを実行する(S19)。こうして、運転者に与える違和感をさらに小さなものとすることができる。
【0051】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。たとえば、上記実施形態では、クルーズコントロールを行う走行制御装置について説明したが、走行不適環境を走行していると判定した場合に、単に加速を抑制する走行制御装置について適用することもできる。また、上記実施形態では、加速不適環境として主要道路の退出路を例示しているが、たとえば舗装路に対する未舗装の悪路や、車両の走行車線を有する道路に対する歩行者が多く道幅が狭い道路などを例示することもできる。さらに、上記実施形態では、上記実施形態では、走行環境取得手段としてナビゲーション装置を用いているが、たとえば、道路交通情報をリアルタイムで提供するVICS(VehicleInformation and Communication Systems)等の道路交通情報システムなどを用いることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本発明の実施形態に係る車両走行制御装置のブロック構成図である。
【図2】本実施形態に係る走行制御ECUの第一の制御手順を示すフローチャートである。
【図3】高速道路から退出路に進入する自車両の状態を示す説明図である。
【図4】退出路における障害物の態様を示す説明図である。
【図5】本実施形態に係る走行制御ECUの第二の制御手順を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0053】
1…走行制御ECU、2…ミリ波レーダセンサ、3…ナビゲーション装置、4…ウィンカースイッチ、5…アクセルペダルセンサ、6…クルーズレバー、7…車速センサ、8…操舵角センサ、9…制動装置、10…駆動装置、11…加速意思取得部、12…目標車速設定部、13…ACC制御部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
前記自車両の走行環境を取得する走行環境取得手段と、
前記走行環境取得手段によって取得された走行環境が加速不適環境である際に、前記自車両の加速を抑制する加速抑制手段と、
ドライバの加速意思を取得する加速意思取得手段と、
前記加速意思取得手段によって加速意思を取得した際、前記加速抑制手段による加速の抑制をキャンセルする加速抑制キャンセル手段と、
を備えることを特徴とする車両走行制御装置。
【請求項2】
自車両の走行状態を取得する走行状態取得手段と、
前記自車両に対する先行車両の情報を取得する先行車両情報取得手段と、
前記走行状態および前記先行車両情報に基づいて、前記先行車両に前記自車両を追従させる追従制御を行う追従走行制御手段と、前記先行車両が非検出のときには前記自車両を所定の設定車速まで加速させる加速制御手段と、
をさらに備える請求項1に記載の車両走行制御装置。
【請求項3】
前記加速不適環境が、主要道路における退出路である請求項1または請求項2に記載の車両走行制御装置。
【請求項4】
前記走行環境取得手段が、ナビゲーション装置である請求項1〜請求項3のうちのいずれか1項に記載の車両走行制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−107451(P2009−107451A)
【公開日】平成21年5月21日(2009.5.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−280859(P2007−280859)
【出願日】平成19年10月29日(2007.10.29)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.VICS
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】