説明

車両駆動用アクチュエータ

【課題】車輪駆動用の電動モータの動力を利用した簡単な構成により、操舵、駆動が実現可能な、小型化、軽量化、低コスト化に適した車両駆動用アクチュエータを提供する。
【解決手段】車両駆動用アクチュエータA1は、電動モータ10と、電動モータ10の回転を車軸26に伝達して車輪を回転駆動する車輪駆動ユニット20と、車輪を操舵制動する舵角制御機構40とを備え、車両駆動ユニット20は、電動モータ10の回転を減速して車軸26へ伝達すると共に動力を分配可能な遊星ギア機構21を備え、遊星ギア機構21によって分配された動力によって舵角制御機構40を作動させるように構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動モータによって車輪を回転駆動するインホール式の車両駆動用アクチュエータに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、インホイール式の駆動機構を備える構造として、例えば、各輪に2つの独立した駆動輪を並列に設置した特開2004−90903号公報(特許文献1)が知られている。また、特開2007−145071号公報(特許文献2)には、車輪回転軸を中心軸として回転可能に設置された車輪取付け部材と、車体側に各々固定され、独立に制御可能な2つの車輪駆動用モータとを備えた車両用駆動輪構造が知られている。
【特許文献1】特開2004−90903号公報
【特許文献2】特開2007−145071号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、特許文献1に記載された駆動機構では、各輪に独立して並設された2つの駆動輪をモータ制御することにより、駆動輪間に生じる回転差によって駆動のみならず操舵をも制御可能とする利点はあるものの、各輪毎に、2つのタイヤ、ホイール等を必要とするため部品点数の増加、製造コストの増加が避けられず、低コスト化、軽量化、小型化等の観点からは改善の余地がある。また、特許文献2に記載された駆動機構では、やはり、各輪毎に独立に制御可能な2つの車輪駆動用モータを配置するため、比較的高価である、モータやインバータ等を2組ずつ必要とし、依然として部品点数の増加、製造コストの増加が避けられず低コスト化、軽量化、小型化等の実現には一層の改善を必要とする。
【0004】
本発明は、このような事情に鑑みて為されたものであり、小型化、軽量化、低コスト化に適した車両駆動用アクチュエータを提供することであり、車輪駆動用の電動モータの動力を利用した簡単な構成により、操舵、駆動が実現可能な車両駆動用アクチュエータを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の車両駆動用アクチュエータは、電動モータと、前記電動モータの回転を車軸に伝達して車輪を回転駆動する車輪駆動ユニットと、前記車輪を操舵制動する舵角制御機構とを備えた車両駆動用アクチュエータであって、前記車両駆動ユニットは、前記電動モータの回転を減速して前記車軸へ伝達すると共に動力を分配可能な遊星ギア機構を備え、前記遊星ギア機構によって分配された動力によって前記舵角制御機構を作動させるように構成される、ことを特徴とする。
【0006】
このような構成を備えることにより、車輪駆動ユニットに設けられた遊星ギア機構が、電動モータの回転を減速して車軸へ伝達すると共に動力を分配することが可能となり、遊星ギア機構によって分配された動力に基づいて、舵角制御機構を作動させることが実現できこととなる。すなわち、車輪駆動用の電動モータの動力を利用した簡単な構造で舵角制御を行うことが可能であり、しかも単一の電動モータによる簡単な構造であるため、部品点数は少なくて済み、構成部品の増加による重量増加を抑制できる。そして、このような構成は、電動モータの動力伝達軸に近接させて構築できるため、所謂バネ下重量の軽減を可能とした、小型化、軽量化、低コスト化に適した車両駆動用アクチュエータが提供できる。
【0007】
本発明の好適な態様として、前記遊星ギア機構は、サンギアに前記電動モータの回転を入力し、プラネタリキャリアから前記車軸へ回転を出力すると共に、リングギアから出力される動力によって前記舵角制御機構を作動させるように構成される、ことを特徴とするものであっても良い。このような構成を備えることにより、サンギアに入力された電動モータの回転はプラネタリキャリアを介して車軸に伝達されると共に、遊星ギアによって分配された動力はリングギアを介して舵角制御機構に出力され、この動力に基づいて舵角制御機構を駆動することが可能となる。
【0008】
本発明の好適な態様として、前記舵角制御機構は、前記リングギアと共に回転可能に軸支された第1のかさ歯車と、前記第1のかさ歯車に噛合して回動する第2のかさ歯車と、前記第2のかさ歯車を固定状態と解放状態とに切換える第2の切換え機構と、前記第2のかさ歯車に対して前記第1のかさ歯車を挟んで対向して配設された第3のかさ歯車と、前記第3のかさ歯車を固定状態と解放状態とに切換える第3の切換え機構とを備え、前記第2のかさ歯車は、一端が前記車体側に連結された第1の連結材の他端に回転可能に軸支されると共に、一端が前記車輪駆動ユニット側に連結され且つ前記第1の連結材と軸支点を共有する第2の連結材の他端に回転可能に軸支され、前記第3のかさ歯車は、一端が前記車体側に連結された第3の連結材の他端に回転可能に軸支されると共に、一端が前記車輪駆動ユニット側に連結され且つ前記第3の連結材と軸支点を共有する第4の連結材の他端に回転可能に軸支される、ことを特徴とするものであっても良い。
【0009】
このような構成を備えることにより、リングギアを介して分配・伝達された電動モータの動力に基づいて走行状態に合わせた適切な操舵トルクが得られることとなり、車両走行時においても駆動力に合わせた操舵制御が実現できる。
【0010】
本発明の好適な態様として、前記舵角制御機構は、前記リングギアと共に回転可能に軸支された第1のかさ歯車と、前記第1のかさ歯車に噛合して回動する第2のかさ歯車とを備え、前記第2のかさ歯車は、一端が前記車体側に連結された第1の連結材の他端に固定されると共に、一端が前記車輪駆動ユニット側に連結され且つ前記第1の連結材と軸支点を共有する第2の連結材の他端に回転可能に軸支され、前記軸支点の鉛直上には、一端が前記車体側に連結された第3の連結材と、一端が前記車輪駆動ユニット側に連結された第4の連結材との共有する軸支点が回転可能に支持されている、ことを特徴とするものであっても良い。
【0011】
このような構成を備えることにより、リングギアを介して分配・伝達された電動モータの動力に基づいて、車両停止時にのみ作動可能な車両駆動用アクチュエータが構築でき、しかもより簡単な舵角制御構造であるため、さらに部品点数は少なくて済み、重量増加を抑制できる。
【0012】
本発明の好適な態様として、前記舵角制御機構は、前記リングギアと共に回転可能に軸支されたウォームギアと、前記ウォームギアに噛合して回動可能とするウォームホイールと、前記ウォームホイールの径方向に回動可能に支持された第1の連結材とを備え、前記ウォームホイールは、一端が前記車体側に回動可能に連結されると共に、他端は前記車輪駆動ユニット側に連結された第2の連結材に軸支されており、前記ウォームホイールの径方向に回動可能に支持された前記第1の連結材の他端は、前記車体側に回動可能に支持されている、ことを特徴とするものであっても良い。
【0013】
このような構成を備えることにより、リングギアを介して分配・伝達された電動モータの動力に基づいて、車両停止時にのみ作動可能な車両駆動用アクチュエータが構築でき、しかもより簡単な舵角制御構造であるため、さらに部品点数は少なくて済み、重量増加を抑制できる。
【0014】
本発明の好適な態様として、車両駆動用アクチュエータは、電動モータと、前記電動モータの回転を車軸に伝達して車輪を回転駆動する車輪駆動ユニットと、前記車輪を操舵制動する舵角制御機構とを備えた車両駆動用アクチュエータであって、前記車両駆動ユニットは、前記電動モータからの動力を複数に分配可能な動力分配機構を備え、前記舵角制御機構は、前記動力分配機構によって分配された動力によって回転駆動される第1のかさ歯車と、前記第1のかさ歯車に噛合して回動する第2のかさ歯車と、前記第2のかさ歯車を固定状態と解放状態とに切換える第2の切換え機構と、前記第2のかさ歯車に対して前記第1のかさ歯車を挟んで対向して配設された第3のかさ歯車と、前記第3のかさ歯車を固定状態と解放状態とに切換える第3の切換え機構とを備え、前記第2のかさ歯車は、一端が前記車体側に連結された第1の連結材の他端に回転可能に軸支されると共に、一端が前記車輪駆動ユニット側に連結され且つ前記第1の連結材と軸支点を共有する第2の連結材の他端に回転可能に軸支され、前記第3のかさ歯車は、一端が前記車体側に連結された第3の連結材の他端に回転可能に軸支されると共に、一端が前記車輪駆動ユニット側に連結され且つ前記第3の連結材と軸支点を共有する第4の連結材の他端に回転可能に軸支される、ことを特徴とするものであっても良い。
【0015】
このような構成を備えることにより、動力分配機構によって分配された電動モータからの動力に基づいて確実に舵角制御機構を作動させることが可能な車両駆動用アクチュエータが実現できる。しかも、単一の電動モータの動力に基づいて走行状態に合わせた適切な操舵トルクが得られることとなり、車両走行時においても駆動力に合わせた操舵制御が実現できる。
【0016】
本発明の好適な態様として、前記舵角制御機構は、前記動力分配機構によって分配された動力によって回転駆動される第1のかさ歯車と、前記第1のかさ歯車に噛合して回動する第2のかさ歯車とを備え、前記第2のかさ歯車は、一端が前記車体側に連結された第1の連結材の他端に固定されると共に、一端が前記車輪駆動ユニット側に連結され且つ前記第1の連結材と軸支点を共有する第2の連結材の他端に回転可能に軸支され、前記軸支点の鉛直上には、一端が前記車体側に連結された第3の連結材と、一端が前記車輪駆動ユニット側に連結された第4の連結材との共有する軸支点が回転可能に支持されている、ことを特徴とするものであっても良い。
【0017】
このような構成を備えることにより、動力分配機構を介して分配・伝達された電動モータの動力に基づいて、車両停止時にのみ作動可能な車両駆動用アクチュエータが構築でき、しかもより簡単な舵角制御構造であるため、さらに部品点数は少なくて済み、重量増加を抑制できる。
【0018】
本発明の好適な態様として、前記舵角制御機構は、前記動力分配機構によって分配された動力によって回転駆動されるウォームギアと、前記ウォームギアに噛合して回動可能とするウォームホイールと、前記ウォームホイールの径方向に回動可能に支持された第1の連結材とを備え、前記ウォームホイールは、一端が前記車体側に回動可能に連結されると共に、他端は前記車輪駆動ユニット側に連結された第2の連結材に軸支されており、前記ウォームホイールの径方向に回動可能に支持された前記第1の連結材の他端は、前記車体側に回動可能に支持されている、ことを特徴とするものであっても良い。
【0019】
このような構成を備えることにより、動力分配機構によって分配された動力によって回転駆動されるウォームギアを介し、伝達された電動モータの動力に基づいて、車両停止時にのみ作動可能な車両駆動用アクチュエータが構築でき、しかもより簡単な舵角制御構造であるため、さらに部品点数は少なくて済み、重量増加を抑制できる。
【0020】
本発明の好適な態様として、前記動力分配機構は、前記電動モータの回転を減速して前記車軸へ伝達すると共に動力を分配可能な遊星ギア機構によって構成される、ことを特徴とするものであっても良い。このような構成を備えることにより、電動モータの回転を減速して車軸に伝達すると共に分配された動力によって舵角制御機構を駆動することが可能となる。
【0021】
本発明の好適な態様として、前記舵角制御機構は、前記電動モータの力行時と回生時との駆動状態に合わせ、前記第2の切換え機構の固定または解放状態と、前記第3の切換え機構の固定または解放状態とを、反転させる、ことを特徴とするものであっても良い。
【0022】
第2の切換え機構と第3の切換え機構との固定または解放状態を、車両走行時の駆動状態(力行/回生状態)に合わせ、連動して制御することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明の車両駆動用アクチュエータを具体化した実施形態について図面を参照にしつつ説明する。
【0024】
<第1実施形態>
図1には、第1実施形態における車両駆動用アクチュエータA1を示す概略構成図が示されており、車両に搭乗した運転者側から視て右側後輪に搭載した状態を、車両前方(車両進行方向)から視た図面である。図2(a)には、図1中、一点鎖線B−B´で指示された上視図が示されている。
【0025】
図1及び図2(a)に示されるように、車両駆動用アクチュエータA1は、電動モータ10と車輪駆動ユニット20と操舵ユニット30と舵角制御機構40とを備えて構成されている。
【0026】
車輪駆動ユニット20のハウジング2内に配設された電動モータ10は、インホイール型のモータとして機能する。そして、車両駆動の動力源としての機能と発電機としての機能とを併せ持ち、径方向外側に三相電機子巻線を有する電機子としてのモータステータ11を、径方向内側に界磁磁石型の回転子としてのモータロータ12を有する内転型(インナーロータ型)回転電機として機能している。
【0027】
ハウジング2内部に収納配置された車輪駆動ユニット20は、サンギア22と、複数個のプラネタリギア23と、リングギア24と、プラネタリキャリア25とを構成に含んだ遊星ギア減速機構21を備えている。
【0028】
遊星ギア減速機構21は、サンギア22とリングギア24とに噛み合う複数個のプラネタリギア23をプラネタリキャリア25によって保持するものであり、電動モータ10が備えるモータシャフト(図示せず)の回転を減速して車両駆動軸26に伝達すると共に、動力を複数段に分配可能とする機能を有している。ここで、遊星ギア減速機構21の中心に位置するサンギア22は、電動モータ10の備えるモータシャフト(図示せず)の端部に連結・固定されている。
【0029】
各プラネタリギア23は、サンギア22の外周に噛合するように配設されており、各プラネタリギア23を軸支している各遊星軸(図示せず)によって、プラネタリキャリア25の径方向の両端部は、さらに軸支されている。プラネタリキャリア25の中心位置には、伝達された動力によって車輪を駆動するための車両駆動軸26が固定されている。そして、この車両駆動軸26は、ハウジング2内部に設けられた軸受け(図示せず)によって回転可能に支持されている。
【0030】
リングギア24は、内周部のギア歯面(内歯)が、複数個の各プラネタリギア23の外周に設けられたギア歯面(外歯)と噛合するように配設されている。リングギア24の外周部の中心には連結シャフト24aが突設されており、リングギア24の回転に伴ってハウジング2内部に設けられた軸受け(図示せず)によって回転可能に支持されている。
【0031】
リングギア24の径方向外側には、図1及び図2(a)に示されるように、クラッチ27がハウジング2内部に配設されている。クラッチ27は、リングギア24の固定状態及び解放状態を切換える切換え機構としての機能を有すると共に、クラッチを滑らすことにより、リングギア24の回転を制御する機能を備えている。
【0032】
操舵ユニット30は、図1及び図2(a)に示されるように、一端が車体1側に連結固定された連結材(31a、31b)と、一端が車両駆動ユニット20のハウジング2に連結固定された連結材(32a、32b)と、舵角制御機構40とを備えている。
【0033】
舵角制御機構40は、リングギア24の外周部の中心に突設された連結シャフト24aの端部に回転可能に軸支された第1のかさ歯車41と、第1のかさ歯車41に噛合して回動可能な第2、第3のかさ歯車(42、43)とを備えており、遊星ギア減速機構21を介して分配・伝達された電動モータ10の動力を、さらに、第1のかさ歯車41を介することにより、連結シャフト24a方向に対して垂直な軸方向への動力に変換して伝達する機能を有する。
【0034】
第2のかさ歯車42は、図1に示されるように、シャフト42aの端部に固定されている。そして、一端が車体1側に連結固定された連結材31aと、一端が車両駆動ユニット20のハウジング2に連結固定された連結材32aとは、シャフト42aを共有軸として回動可能に軸支されている。
【0035】
同様に、第3のかさ歯車43も、図1に示されるように、シャフト43aの端部に固定されており、そして、一端が車体1側に連結固定された連結材31bと、一端が車両駆動ユニット20のハウジング2に連結固定された連結材32bとは、シャフト43aを共有軸として回動可能に軸支されている。
【0036】
第2のかさ歯車42と第3のかさ歯車43とは、第1のかさ歯車41を挟んで対向するように配置されており、第1のかさ歯車41と第2のかさ歯車42との噛合いによって伝達された動力方向は、第1のかさ歯車41と第3のかさ歯車43との噛合いによって伝達された動力方向とは、互いに逆向きとなる。つまり第1のかさ歯車41の回転に伴って噛合する第2のかさ歯車42の回転方向と、第3のかさ歯車43の回転方向とは互いに逆向きに回転することとなる。
【0037】
尚、各シャフト(42a、43a)の端部に配設されたクラッチ(44、45)は、各シャフト(42a、43a)の固定状態及び解放状態を各々に独立して切換える切換え機構として機能すると共に、各クラッチを滑らすことにより、各シャフト(42a、43a)に伝達された回転を制御する機能を有する。換言すれば、クラッチ(44、45)は、第2のかさ歯車42と第3のかさ歯車43とをそれぞれに固定状態と解放状態とに切換えるものである。 次に、以上の構成を備える第1実施形態での車両駆動用アクチュエータA1について、舵角制御時の各部の作動につき、図2(b)及び図3を参照にしつつ説明する。図2(b)は、図2(a)中、一点鎖線A−A´で指示された側面図が示されており、図3は舵角制御時の説明図が示されている。尚、車両走行時においては、当然に、運転者がステアリング操作を行っており、この操舵入力に基づいて(図示しない)制御装置(ECU)から各クラッチ(27、44、45)に対してクラッチ状態を司る開閉信号が出力されている。以下の説明において、特に断らない限り、この開閉信号に基づいてクラッチ操作が為されるものとして説明する。
【0038】
図2(b)では、第1実施形態における舵角制御機構40の作動を簡便に理解する為に、第1のかさ歯車41の回転方向に基づく作動が示されている。すなわち、矢印X方向の第1のかさ歯車41の回転(時計回り)は、連結シャフト24aを介して動力が伝達されるリングギア24の回転方向であり、遊星ギア減速機構21によって分配・伝達された動力である。そして、矢印X方向の回転は、車両駆動軸26を介して車両を進行方向に駆動させる所謂力行時におけるサンギア22およびプラネタリギア23の反力を受けての回転方向を示している。
【0039】
第1のかさ歯車41がX方向に回転すると、図中上側に位置する第2のかさ歯車42は、右側→左側へ向かう方向に回転する。同様に、図中下側に位置する第3のかさ歯車43は、左側→右側へ向かう方向に回転し、すなわち、第2の歯車42と第3の歯車43は、互いに逆向きに回転することとなる。
【0040】
従って、本実施形態においては、第2のかさ歯車42の回転をクラッチ44で、第3のかさ歯車43の回転をクラッチ45で、各々独立に固定及び解放状態となるように制御してやれば、操舵トルクが制御できることとなる。
【0041】
図3(a)に示されるように、左舵角への操舵トルクを得る場合には、第2のかさ歯車42と車体1側に連結される連結材31aとをクラッチ44で固定状態とするとともに、車両駆動ユニット20のハウジング2内に配置されたリングギア24に対するクラッチ27を滑らせることにより、減速されたリングギア24の伝達動力に基づいて所望の操舵トルクが得られることとなり、操舵制御が実現できる。
【0042】
一方、図3(b)に示されるように、右舵角への操舵トルクを得る場合には、第3のかさ歯車43と車体1側に連結される連結材31bとをクラッチ45で固定状態とすると共に、車両駆動ユニット20のハウジング2内に配置されたリングギア24に対するクラッチ27を滑らせることにより、減速されたリングギア24の伝達動力に基づいて所望の操舵トルクが得られることとなり、操舵制御が実現できる。
【0043】
図2(b)に戻り、第1のかさ歯車41の回転方向が矢印Y方向(反時計回り)では、車両駆動軸26を介して運動エネルギーを回収する、所謂回生時におけるサンギア22およびプラネタリギア23の反力を受けての回転方向を示している。
【0044】
ここで、第1のかさ歯車41がY方向に回転すると、図中上側に位置する第2のかさ歯車42は、左側→右側へ向かう方向に回転し、図中下側に位置する第3のかさ歯車43は、右側→左側へ向かう方向に回転することとなり、やはり、力行時と同様に第2の歯車42と第3の歯車43は、互いに逆向きに回転することとなる。
【0045】
従って、回生時であっても本実施形態においては同様に、第2のかさ歯車42の回転をクラッチ44で、第3のかさ歯車43の回転をクラッチ45で、各々独立に固定及び解放状態となるように制御してやれば、操舵トルクが制御できることとなる。
【0046】
すなわち、図3(a)に示されるように、左舵角への操舵トルクを得る場合には、力行時の右舵角制御時と同様に、第3のかさ歯車43と車体1側に連結される連結材31bとをクラッチ45で固定状態とするとともに、車両駆動ユニット20のハウジング2内に配置されたリングギア24に対するクラッチ27を滑らせる。すると、減速されたリングギア24の伝達動力に基づいて所望の操舵トルクが得られることとなり、操舵制御が実現できる。
【0047】
図3(b)に示されるように、右舵角への操舵トルクを得る場合には、力行時の左舵角制御時と同様に、第2のかさ歯車42と車体1側に連結される連結材31aをクラッチ44で固定状態とするとともに、車両駆動ユニット20のハウジング2内に配置されたリングギア24に対するクラッチ27を滑らせれば、減速されたリングギア24の伝達動力に基づいて所望の操舵トルクが得られることとなり、操舵制御が実現できる。
【0048】
また、蛇角を維持する場合には、クラッチ44とクラッチ45の両方を固定状態にしてやればよい。なお、クラッチ44および45は、無通電時に固定状態となるようにすれば、固定のためのエネルギー消費を最低限に抑えることができる。
【0049】
このように、車輪駆動ユニット20に設けられた遊星ギア減速機構21が、電動モータ10からの動力を複数に分配し、この分配された動力によって操舵ユニット30が備える舵角制御機構40を駆動することにより、車輪駆動用の電動モータの動力を利用した簡単な構造で舵角制御が実現できる。そして、単一の電動モータによる簡単な構造であるため、部品点数は少なくて済み、構成部品の増加による重量増加を抑制できる。また、このような構成は電動モータ10の動力伝達軸に近接させて構築できるため、所謂バネ下重量の軽減を可能とした、小型化、軽量化、低コスト化に適した車両駆動用アクチュエータA1が提供できる。
【0050】
さらに、本発明は上述した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲で種々の変更を施すことが可能であることは云うまでもない。次に、本実施形態の変形例について説明する。
【0051】
<第1実施形態の変形例>
第1実施形態の変形例として、例えば、車両駆動ユニット20内に配設されたクラッチ27を省略しても、同様の効果を奏することが実現できる。
【0052】
すなわち、図1及び図2(a)に記載のクラッチ27を備えない場合には、リングギア24に遊星ギア減速機構21を介して分配・伝達された動力を第1実施形態のように減速させることはできない。しかしながら、第2のかさ歯車42の回転をクラッチ44で、第3のかさ歯車43の回転をクラッチ45で、各々独立に固定及び解放状態となるように制御してやれば、操舵トルクが制御できることとなる。
【0053】
例えば、力行時においては、第2のかさ歯車42と車体1側に連結される連結材31aとをクラッチ44で滑らせてやれば、第3のかさ歯車43との間に差動力が生じることとなり、この差動力によって、図3(a)に示される左舵角への操舵トルクを得ることが可能である。回生時には、第3のかさ歯車43と車体1側に連結される連結材31bとをクラッチ45で滑らせてやれば、第2のかさ歯車42との間に差動力が生じることとなり、この差動力によって、図3(a)に示される左舵角への操舵トルクを得ることが可能である。
【0054】
右舵角への操舵トルクを得たい場合には、力行時においては、第3のかさ歯車43と車体1側に連結される連結材31bとをクラッチ45で滑らせてやれば、第2のかさ歯車42との間に差動力が生じることとなり、この差動力によって、図3(b)に示される右舵角への操舵トルクを得ることが可能である。回生時には、第2のかさ歯車42と車体1側に連結される連結材31aとをクラッチ44で滑らせてやれば良い。第3のかさ歯車43との間に差動力が生じることとなり、この差動力によって、図3(b)に示される右舵角への操舵トルクを得ることが可能である。
【0055】
このように、車両駆動ユニット20内に配設されたクラッチ27を省略しても、同様の効果を奏することができ、第1実施形態よりも部品点数が軽減できるため、より一層の重量軽減、低コスト化が期待できる。
【0056】
<第2実施形態>
次に、図4及び図5に記載された図面を参照にしつつ、本発明の第2実施形態について説明する。第2実施形態は、車両停止時のみに作動可能な車両駆動用アクチュエータA1であり、操舵ユニット30の構成形態と、舵角制御機構40の構成形態とが第1実施形態と相違し、他は同様であるため、この相違点を主に説明する。
【0057】
図4には、第2実施形態における車両駆動用アクチュエータA1を示す概略構成図が示されており、車両に搭乗した運転者側から視て右側後輪に搭載した状態を、車両前方(車両進行方向)から視た図面である。図5(a)には、図4中、一点鎖線C−C´で指示された上視図が示されている。
【0058】
図4及び図5(a)に示されるように、操舵ユニット30は、一端が車体1側に連結固定された連結材(31a、31b)と、一端が車両駆動ユニット20のハウジング2に連結固定された連結材(32a、32b)と、舵角制御機構40とを備えている。
【0059】
舵角制御機構40は、リングギア24の外周部の中心に突設された連結シャフト24aの端部に回転可能に軸支された第1のかさ歯車41と、第1のかさ歯車41に噛合して回動可能な第2のかさ歯車43とを備えており、遊星ギア減速機構21を介して分配・伝達された電動モータ10の動力を、さらに、第1のかさ歯車41を介して、連結シャフト24a方向に対して垂直な軸方向への動力に変換して伝達する機能を有している。
【0060】
第2のかさ歯車43は、図4に示されるように、シャフト43aの端部に固定されている。そして、一端が車体1側に連結固定された連結材31bと、一端が車両駆動ユニット20のハウジング2に連結固定された連結材32bとは、シャフト43aを共有軸として回動可能に軸支されている。
【0061】
一端が車体1側に連結固定された連結材31aと一端が車両駆動ユニット20のハウジング2に連結固定された連結材32aとは、シャフト46を共有軸として回動可能に支持されている。そして、図4から明らかなように、第2のかさ歯車43を軸支するシャフト43aの軸方向(鉛直方向)には、連結材31aと連結材32aとを軸支するシャフト46が配置されている。
【0062】
次に、このような構成を備える第2実施形態での車両駆動用アクチュエータA1について、舵角制御時の各部の作動につき、図5(b)及び第1実施形態の舵角制御時の説明図である図3を参照にしつつ説明する。図5(b)は、図5(a)中、一点鎖線A−A´で指示された側面図(車体1側から車両駆動ユニット20側を見た側面図)が示されている。
【0063】
図5(b)中、矢印X方向は、右舵角時における第1のかさ歯車41の回転(時計回り)方向を示しており、この回転に伴って噛合する第2のかさ歯車43上を上視で時計回りの方向に移動していく。
【0064】
すると、図3(b)に示されるように、車体1側に連結固定された連結材31bと車両駆動ユニット20のハウジング2に連結固定された連結材32bとには、第2のかさ歯車43が軸支されるシャフト43aを中心として、右舵角方向に操舵トルクが発生する。そして、シャフト43aの鉛直方向には、車体1側に連結固定された連結材31aと車両駆動ユニット20のハウジング2に連結固定された連結材32aとを回動可能に軸支するシャフト46が位置しているため、車両駆動ユニット20を収容するハウジング2には、車体1に対して右舵角方向に操舵トルクが得られることとなる。
【0065】
同様に、図5(b)中、矢印Y方向は、左舵角時における第1のかさ歯車41の回転(反時計回り)方向を示しており、この回転に伴って噛合する第2のかさ歯車43上を上視で反時計回りの方向に移動していく。
【0066】
その結果、車体1側に連結固定された連結材31bと車両駆動ユニット20のハウジング2に連結固定された連結材32bとには、図3(a)に示されるように、第2のかさ歯車43が軸支されるシャフト43aを中心として、左舵角方向に操舵トルクが発生し、シャフト43aの鉛直方向には、車体1側に連結固定された連結材31aと車両駆動ユニット20のハウジング2に連結固定された連結材32aとを回動可能に軸支するシャフト46が位置しているため、車両駆動ユニット20を収容するハウジング2には、車体1に対して左舵角方向に操舵トルクが得られることとなる。
【0067】
このように、車輪駆動ユニット20に設けられた遊星ギア減速機構21が、電動モータ10からの動力を複数に分配し、この分配された動力によって操舵ユニット30が備える舵角制御機構40を駆動することにより、車輪駆動用の電動モータ10の動力を利用した簡単な構造で車両停止時のみに作動可能な車両駆動用アクチュエータA1が実現できる。
【0068】
本操舵動作を行う間は、プラネタリキャリア25を固定するために、図示しない車軸に設置した制動機構で回転を拘束し、モータのサンギア22からリングギア24に効率よく動力を伝達させる。そして、第1実施形態と同様に単一の電動モータによる簡単な舵角制御構造であるため、さらに部品点数は少なくて済み、構成部品の増加による重量増加を抑制できる。
【0069】
<第3実施形態>
次に、図6〜図8に記載された図面を参照にしつつ、本発明の第3実施形態について説明する。第3実施形態も、車両停止時のみに作動可能な車両駆動用アクチュエータA1であり、操舵ユニット30の構成形態と、舵角制御機構40の構成形態とが第2実施形態と相違し、他は同様であるため、この相違点を主に説明する。
【0070】
図6には、第3実施形態における車両駆動用アクチュエータA1を示す概略構成図が示されており、車両に搭乗した運転者側から視て右側後輪に搭載した状態を、車両前方(車両進行方向)から視た図面である。図7(a)には、図6中、一点鎖線D−D´で指示された上視図が示されている。図7(b)には、図7(a)中、一点鎖線A−A´で指示された側面図(車体1側から車両駆動ユニット20側を見た側面図)が示されている。図8には、本実施形態による舵角制御時の説明図が示されている。
【0071】
図6及び図7(a)に示されるように、操舵ユニット30は、一端が車体1側に回動可能に軸支(34a、34b)され、他端は車両駆動ユニット20のハウジング2側に連結固定された連結材(33、34)と、舵角制御機構40とを備えている。
【0072】
舵角制御機構40は、リングギア24の外周部の中心に突設された連結シャフト24aの端部に回転可能に軸支されたウォームギア47と、ウォームギア47に噛合して回動可能なウォームホイール48とを備えており、遊星ギア減速機構21を介して分配・伝達された電動モータ10の動力を、さらに、ウォームギア47を介して、連結シャフト24a方向に対する動力に変換して伝達する機能を有している。
【0073】
ウォームホイール48は、図6に示されるように、共有軸であるシャフト46aによって、連結材(33、34)に対して回転可能なように軸支されている。そして、図7(a)に示されるように、ウォームホイール48の径方向の端部には連結材35の一端が35aを支持点として回動可能に支持されている。連結材35の他端は、車体1側に35bを支持点として回動可能に支持されている。ここで、連結材(33、34)の車体1側への各軸支(34a、34b)位置と、連結材35の車体1側への支持点35bとは所定の距離をおいて離隔されている。
【0074】
次に、このような構成を備える第3実施形態での車両駆動用アクチュエータA1について舵角制御時の各部の作動を説明する。
【0075】
図7(b)中、矢印X方向は、左舵角時におけるウォームギア47の回転(時計回り)方向を示しており、この回転に伴って噛合するウォームホイール48は、右側→左側へ向かう方向に回転する。
【0076】
すると、図8(a)に示されるように、ウォームホイール48の径方向の端部に35aを支持点として回動可能に支持された連結材35には、車体1側の支持点35bに対して車両駆動ユニット20側に向かう作用力が働く。そして、一端が車体1側に回動可能に軸支(34a、34b)され、他端は車両駆動ユニット20のハウジング2側に連結固定された連結材(33、34)とシャフト46aを共有軸とするウォームホイール48は、連結材(33、34)と共に、軸支(34a、34b)点を中心に連結材35方向に回動することとなる。つまり、車両駆動ユニット20を収容するハウジング2には、車体1に対して左舵角方向に操舵トルクが得られることとなる。
【0077】
一方、図7(b)中、矢印Y方向は、右舵角時におけるウォームギア47の回転(反時計回り)方向を示しており、この回転に伴って噛合するウォームホイール48は、左側→右側へ向かう方向に回転する。
【0078】
すると、図8(b)に示されるように、ウォームホイール48の径方向の端部に35aを支持点として回動可能に支持された連結材35には、車体1側の支持点35bに対して車体1側に向かう作用力が働く。そして、一端が車体1側に回動可能に軸支(34a、34b)され、他端は車両駆動ユニット20のハウジング2側に連結固定された連結材(33、34)とシャフト46aを共有軸とするウォームホイール48は、連結材(33、34)と共に、軸支(34a、34b)点を中心に連結材35と反対方向に回動することとなる。つまり、車両駆動ユニット20を収容するハウジング2には、車体1に対して右舵角方向に操舵トルクが得られることとなる。
【0079】
本操舵動作を行う間は、プラネタリキャリア25を固定するために、図示しない車軸に設置した制動機構で回転を拘束し、モータのサンギア22からリングギア24に効率よく動力を伝達させる。
【0080】
このように、第3実施形態においても、車輪駆動用の電動モータ10の動力を利用した簡単な構造で車両停止時のみに作動可能な車両駆動用アクチュエータA1が実現できる。そして、第1実施形態と同様に単一の電動モータによる簡単な舵角制御構造であるため、さらに部品点数は少なくて済み、構成部品の増加による重量増加を抑制できる。
【0081】
本発明は上述した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲で種々の変更を施すことが可能であることは云うまでもない。例えば、動力分配機構は遊星ギア減速機構21の動作に基づいて舵角制御機構40の各部の作動を記述したが、第1のかさ歯車41やウォームギア47に対して分配された動力を伝達できる手段であれば、動力分配機構の構成には因らずに同様の効果を得ることができる。
【0082】
さらに、第2のかさ歯車42や第3のかさ歯車43を固定状態/解放状態に切換える第2の切換え機構(クラッチ44)、第3の切換え機構(クラッチ45)は、独立して制御可能なものであるが、例えば、車両走行時の駆動状態(力行時/回生時)に合わせて各状態を連動して反転させて制御する形態でも良い。車両内の配線数を減らすことが可能な上、構成部品の耐用年数等を延ばすことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0083】
【図1】第1実施形態における車両駆動用アクチュエータA1を示す概略構成図が示されており、車両に搭乗した運転者側から視て右側後輪に搭載した状態を、車両前方(車両進行方向)から視た図面である。
【図2】(a)には、図1中、一点鎖線B−B´で指示された上視図が示されており、(b)は、(a)中、一点鎖線A−A´で指示された側面図である。
【図3】第1実施形態における車両駆動用アクチュエータA1の舵角制御時の説明図である。
【図4】第2実施形態における車両駆動用アクチュエータA1を示す概略構成図が示されており、車両に搭乗した運転者側から視て右側後輪に搭載した状態を、車両前方(車両進行方向)から視た図面である。
【図5】(a)には、図4中、一点鎖線C−C´で指示された上視図が示されており、(b)は、(a)中、一点鎖線A−A´で指示された側面図である。
【図6】第3実施形態における車両駆動用アクチュエータA1を示す概略構成図が示されており、車両に搭乗した運転者側から視て右側後輪に搭載した状態を、車両前方(車両進行方向)から視た図面である。
【図7】(a)には、図6中、一点鎖線D−D´で指示された上視図が示されており、(b)は、(a)中、一点鎖線A−A´で指示された側面図である。
【図8】第3実施形態における車両駆動用アクチュエータA1の舵角制御時の説明図である。
【符号の説明】
【0084】
A1:車両駆動用アクチュエータ
1:車体、 10:電動モータ、 11:モータステータ、 12:モータロータ
2:ハウジング、 20:車輪駆動ユニット、 21:遊星ギア減速機構、 22:サンギア、23:プラネタリギア、 24:リングギア、 24a:連結シャフト 25:プラネタリキャリア、26:車両駆動軸、 27:クラッチ
30:操舵ユニット、 31a、b:連結材、 32a、b:連結材、 33〜35:連結材、 34a、b:軸支点、 35a、b:軸支点
40:舵角制御機構、 41〜43:かさ歯車、 42a、43a:シャフト
44、45:クラッチ 46:シャフト、 46a:共有シャフト、 47:ウォームギア、 48:ウォームホイール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電動モータと、前記電動モータの回転を車軸に伝達して車輪を回転駆動する車輪駆動ユニットと、前記車輪を操舵制動する舵角制御機構とを備えた車両駆動用アクチュエータであって、
前記車両駆動ユニットは、前記電動モータの回転を減速して前記車軸へ伝達すると共に動力を分配可能な遊星ギア機構を備え、
前記遊星ギア機構によって分配された動力によって前記舵角制御機構を作動させるように構成される、
ことを特徴とする車両駆動用アクチュエータ。
【請求項2】
前記遊星ギア機構は、サンギアに前記電動モータの回転を入力し、プラネタリキャリアから前記車軸へ回転を出力すると共に、リングギアから出力される動力によって前記舵角制御機構を作動させるように構成される、
ことを特徴とする請求項1に記載の車両駆動用アクチュエータ。
【請求項3】
前記舵角制御機構は、
前記リングギアと共に回転可能に軸支された第1のかさ歯車と、
前記第1のかさ歯車に噛合して回動する第2のかさ歯車と、
前記第2のかさ歯車を固定状態と解放状態とに切換える第2の切換え機構と、
前記第2のかさ歯車に対して前記第1のかさ歯車を挟んで対向して配設された第3のかさ歯車と、
前記第3のかさ歯車を固定状態と解放状態とに切換える第3の切換え機構とを備え、
前記第2のかさ歯車は、一端が前記車体側に連結された第1の連結材の他端に回転可能に軸支されると共に、一端が前記車輪駆動ユニット側に連結され且つ前記第1の連結材と軸支点を共有する第2の連結材の他端に回転可能に軸支され、
前記第3のかさ歯車は、一端が前記車体側に連結された第3の連結材の他端に回転可能に軸支されると共に、一端が前記車輪駆動ユニット側に連結され且つ前記第3の連結材と軸支点を共有する第4の連結材の他端に回転可能に軸支される、
ことを特徴とする請求項2に記載の車両駆動用アクチュエータ。
【請求項4】
前記舵角制御機構は、
前記リングギアと共に回転可能に軸支された第1のかさ歯車と、
前記第1のかさ歯車に噛合して回動する第2のかさ歯車とを備え、
前記第2のかさ歯車は、一端が前記車体側に連結された第1の連結材の他端に固定されると共に、一端が前記車輪駆動ユニット側に連結され且つ前記第1の連結材と軸支点を共有する第2の連結材の他端に回転可能に軸支され、
前記軸支点の鉛直上には、
一端が前記車体側に連結された第3の連結材と、一端が前記車輪駆動ユニット側に連結された第4の連結材との共有する軸支点が回転可能に支持されている、
ことを特徴とする請求項2に記載の車両駆動用アクチュエータ。
【請求項5】
前記舵角制御機構は、
前記リングギアと共に回転可能に軸支されたウォームギアと、
前記ウォームギアに噛合して回動可能とするウォームホイールと、
前記ウォームホイールの径方向に回動可能に支持された第1の連結材とを備え、
前記ウォームホイールは、一端が前記車体側に回動可能に連結されると共に、他端は前記車輪駆動ユニット側に連結された第2の連結材に軸支されており、
前記ウォームホイールの径方向に回動可能に支持された前記第1の連結材の他端は、前記車体側に回動可能に支持されている、
ことを特徴とする請求項2に記載の車両駆動用アクチュエータ。
【請求項6】
電動モータと、前記電動モータの回転を車軸に伝達して車輪を回転駆動する車輪駆動ユニットと、前記車輪を操舵制動する舵角制御機構とを備えた車両駆動用アクチュエータであって、
前記車両駆動ユニットは、前記電動モータからの動力を複数に分配可能な動力分配機構を備え、
前記舵角制御機構は、
前記動力分配機構によって分配された動力によって回転駆動される第1のかさ歯車と、
前記第1のかさ歯車に噛合して回動する第2のかさ歯車と、
前記第2のかさ歯車を固定状態と解放状態とに切換える第2の切換え機構と、
前記第2のかさ歯車に対して前記第1のかさ歯車を挟んで対向して配設された第3のかさ歯車と、
前記第3のかさ歯車を固定状態と解放状態とに切換える第3の切換え機構とを備え、
前記第2のかさ歯車は、一端が前記車体側に連結された第1の連結材の他端に回転可能に軸支されると共に、一端が前記車輪駆動ユニット側に連結され且つ前記第1の連結材と軸支点を共有する第2の連結材の他端に回転可能に軸支され、
前記第3のかさ歯車は、一端が前記車体側に連結された第3の連結材の他端に回転可能に軸支されると共に、一端が前記車輪駆動ユニット側に連結され且つ前記第3の連結材と軸支点を共有する第4の連結材の他端に回転可能に軸支される、
ことを特徴とする車両駆動用アクチュエータ。
【請求項7】
前記舵角制御機構は、
前記動力分配機構によって分配された動力によって回転駆動される第1のかさ歯車と、
前記第1のかさ歯車に噛合して回動する第2のかさ歯車とを備え、
前記第2のかさ歯車は、一端が前記車体側に連結された第1の連結材の他端に固定されると共に、一端が前記車輪駆動ユニット側に連結され且つ前記第1の連結材と軸支点を共有する第2の連結材の他端に回転可能に軸支され、
前記軸支点の鉛直上には、
一端が前記車体側に連結された第3の連結材と、一端が前記車輪駆動ユニット側に連結された第4の連結材との共有する軸支点が回転可能に支持されている、
ことを特徴とする請求項5に記載の車両駆動用アクチュエータ。
【請求項8】
前記舵角制御機構は、
前記動力分配機構によって分配された動力によって回転駆動されるウォームギアと、
前記ウォームギアに噛合して回動可能とするウォームホイールと、
前記ウォームホイールの径方向に回動可能に支持された第1の連結材とを備え、
前記ウォームホイールは、一端が前記車体側に回動可能に連結されると共に、他端は前記車輪駆動ユニット側に連結された第2の連結材に軸支されており、
前記ウォームホイールの径方向に回動可能に支持された前記第1の連結材の他端は、前記車体側に回動可能に支持されている、
ことを特徴とする請求項5に記載の車両駆動用アクチュエータ。
【請求項9】
前記動力分配機構は、前記電動モータの回転を減速して前記車軸へ伝達すると共に動力を分配可能な遊星ギア機構によって構成される、
ことを特徴とする請求項6乃至8の何れか一項に記載の車両駆動用アクチュエータ。
【請求項10】
前記舵角制御機構は、
前記電動モータの力行時と回生時との駆動状態に合わせ、
前記第2の切換え機構の固定または解放状態と、前記第3の切換え機構の固定または解放状態とを、反転させる、
ことを特徴とする請求項3または6に記載の車両駆動用アクチュエータ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−23809(P2010−23809A)
【公開日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−191197(P2008−191197)
【出願日】平成20年7月24日(2008.7.24)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】