説明

車載ナビゲーション装置

【課題】より正確に運転者の操作を検出して走行中における運転者の操作を禁止する。
【解決手段】サーモグラフィ19によって検出された車両内の各乗員の体の温度分布から走行中における運転者による操作部への操作と運転者以外の操作部への操作の有無を推定し(S100、S104、S106、S108、S110)、運転者による操作部への操作があることが推定された場合には操作禁止モードに遷移させ(S112)、運転者以外の操作部への操作があることが推定された場合には運転者以外操作許可モードに遷移させる(S114)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乗員の操作を許可する操作許可モードと乗員の操作を禁止する操作禁止モードを有する車載ナビゲーション装置に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の装置は、安全を期すため、道路地図を拡大する等のナビゲーションに最低限必要な入力操作を除き、走行中は目的地を設定する等の所定の入力が自動的に禁止されるようになっている。
【0003】
しかし、このような装置は、走行中、運転者はもちろんのこと、車両の運転に直接関与しない助手席車がスイッチ操作を行った場合においても、目的地を設定する等の所定の入力の受け付けが禁止されるため、このような入力を行う場合には、その都度車両を一時停止させて入力する必要があった。
【0004】
そこで、ナビゲーション情報を表示する表示装置の前面の運転席側にセンサを配設するとともに、車両が走行中で、かつ、表示装置の前方を物体が横切ったことがセンサを介して検知されると、タッチスイッチ、パネルスイッチおよびリモコン操作スイッチからの所定入力を禁止するようにした装置がある(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
この装置は、走行中、助手席からタッチスイッチ、パネルスイッチを操作した際、全ての入力が受け付けられる。一方、運転席側から操作を行おうとして手を伸ばすと、この動きがセンサにより検出され、運転者のタッチスイッチ、パネルスイッチの操作による所定入力が禁止される。
【特許文献1】特開平9−292261号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の装置は、運転者の手をセンサが検出するだけでなく、例えば、外部機器を接続するためのケーブル類やお守りなど、何らかの物体が表示装置の前方を横切った場合にも、この物体をセンサが運転者の手として誤認識して所定の入力が禁止されてしまうといった不具合が生じる。
【0007】
本発明は上記点に鑑みたもので、より正確に運転者の操作を検出して走行中における運転者の操作を禁止することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1の特徴は、車両内の乗員の操作を受け付ける操作部と、車両内の各乗員の体の温度分布を検出する温度分布検出手段と、温度分布検出手段によって検出された車両内の各乗員の体の温度分布から走行中における運転者による操作部への操作と運転者以外の操作部への操作の有無を推定する推定手段と、推定手段によって運転者による操作部への操作があることが推定された場合、車両の走行中における操作を禁止する操作禁止モードに遷移させる操作禁止モード遷移手段と、推定手段によって運転者以外の操作部への操作があることが推定された場合、車両の走行中における運転者以外の乗員の操作を許可する運転者以外操作許可モードに遷移する運転者以外操作許可モード遷移手段と、を備えたことである。
【0009】
このような構成では、温度分布検出手段によって検出された車両内の各乗員の体の温度分布から走行中における運転者による操作部への操作と運転者以外の操作部への操作の有無が推定され、運転者による操作部への操作があることが推定された場合には操作禁止モードに遷移し、運転者以外の操作部への操作があることが推定された場合には運転者以外操作許可モードに遷移する。したがって、何らかの物体が操作部の手前を横切っても、運転者の操作として誤認識されることがなく、より正確に運転者の操作を検出して走行中における運転者の操作を禁止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明の一実施形態に係る車載ナビゲーション装置の構成を図1に示す。本車載ナビゲーション装置1は、位置検出器11、地図データ入力器16、操作スイッチ群17、リモコンセンサ18、サーモグラフィ19、外部メモリ20、表示装置21、音声認識ユニット22、スピーカ23、送受信機24およびナビECU25を備えている。
【0011】
位置検出器11は、地磁気センサ12、ジャイロスコープ13、車速センサ14およびGPS受信機15から入力される各種信号に基づいて自車位置の検出を行う。
【0012】
地図データ入力器16は、DVDやHDD等の記録媒体に記憶された情報を読み取る装置で構成されており、そのDVDやHDDに記憶された地図データ、マップマッチング用データ、施設情報等を、ナビECU25からの読み出し要求に応じてナビECU25に出力するようになっている。
【0013】
操作スイッチ群17は、表示装置21の表示画面の周囲に設けられた複数の押しボタンスイッチ(メカニカルスイッチ)および該表示画面に重ねて設けられたタッチスイッチ等を備え、ユーザによる押しボタンスイッチへの操作、タッチスイッチへの操作に応じた信号をナビECU25に出力する。
【0014】
リモコンセンサ18は、ユーザの操作に基づいて赤外線等による無線信号を送信するリモコン18aから受信した信号をナビECU25へ出力する。
【0015】
サーモグラフィ19は、 物体から放射される熱エネルギー(赤外線放射エネルギー)を温度に換算し、温度分布として画像出力する装置である。本実施形態におけるサーモグラフィ19は、運転席と助手席の間の天井に取り付けられており、運転席と助手席の各乗員の体を含む範囲の温度分布を示すカラー画像データ(サーモグラフ)を出力する。なお、サーモグラフィ19から出力される画像データ(サーモグラフ)に示される温度分布は、運転席の乗員(運転者)と助手席の乗員の体の動きに応じてリアルタイムで変化する。
【0016】
外部メモリ20は、ナビECU25の内部とは別に設けられる記憶部で、ROMあるいはRAMなどから構成され、各種のデータやプログラムなどが記憶されるようになっている。
【0017】
表示装置21は、液晶ディスプレイ等の表示画面を有し、ナビECU25から入力される映像信号に応じた映像を表示画面に表示させる。
【0018】
音声認識ユニット22は、乗員の発声した音声をマイク(図示せず)から取り込んで音声認識を行うための装置である。乗員は、この音声認識を用いて音声による各種動作を指示することが可能となっている。
【0019】
スピーカ23は、ナビECU25から入力される音声信号に応じた音声を出力する。
【0020】
送受信機24は、VICSセンタ3と無線通信を行うためのもので、ナビECU25から入力されるデータをVICSセンタ3へ送信するとともに、VICSセンタ3から送信される信号を受信してナビECU25へ出力する。
【0021】
ナビECU25は、CPU、メモリ等を備えたコンピュータとして構成されており、ナビECU25のCPUは、メモリに記憶されたプログラムに従って各種処理を行う。ナビECU25の処理としては、位置検出器11から入力される信号に基づいて車両の位置を算出する現在位置算出処理、現在位置周辺の地図上に現在位置マークを重ねて表示させる地図表示処理、ユーザの操作に応じて特定した目的地に至る案内経路を探索する経路探索処理、案内経路に従って走行案内を行う走行案内処理等がある。
【0022】
また、本車載ナビゲーション装置1は、安全のため、道路地図を拡大する等のナビゲーションに最低限必要な入力操作を除き、走行中は目的地を設定する等の所定の入力が自動的に禁止されるようになっている。すなわち、車両の走行中に運転者による操作があった場合には、ナビゲーションに最低限必要な入力操作を除く運転者の操作スイッチ群17への入力操作の受け付けを禁止する操作禁止モードに遷移し、車両の走行中に運転者以外の乗員の操作があった場合には、運転者以外の操作を許可する運転者以外操作許可モードに遷移する。また、車両が停車中の場合には、全乗員の操作を許可する全操作許可モードに遷移するようになっている。
【0023】
次に、図2に従って、これらの各モードに遷移する処理について説明する。ユーザの操作に応じてイグニッションスイッチがオンすると、車載ナビゲーション装置1は動作状態となり、ナビECU25は、現在位置算出処理、地図表示処理等の処理とともに、図2に示す処理を周期的に実施する。
【0024】
まず、車両が走行中か否かを判定する(S100)。車両が走行中か否かの判定は、距離センサ14から入力される信号に基づいて判定することができる。
【0025】
車両が停車中の場合、S100の判定はNOとなり、次に、全乗員の操作を許可する全操作許可モードに遷移する。
【0026】
これにより、車両内の全ての乗員による操作スイッチ群17に対する操作が可能な状態となる。
【0027】
また、車両が走行中の場合、S100の判定はYESとなり、次に、サーモグラフを取得する(S104)。具体的には、サーモグラフィ19から運転席と助手席の各乗員の体を含む範囲の温度分布を示す画像データ(サーモグラフ)を取得する。
【0028】
次に、人体抽出を行う(S106)。具体的には、先のS104にて取得した運転席と助手席の各乗員の体を含む範囲の温度分布を示す画像データ(サーモグラフ)から運転席と助手席の各乗員の体の輪郭を画像認識によってパターン認識して、各乗員の体の部分を抽出する。
【0029】
次のS108では、操作傾向があるか否かを判定する。具体的には、本車載ナビゲーション装置1の操作スイッチ群17の位置に手(腕)が伸びてきているか否かに基づいて操作する傾向があるか否かを判定する。すなわち、先のS106にて抽出された運転席と助手席の各乗員の体の部分の動きから各乗員による操作部としての操作スイッチ群17への操作の有無を判定する。
【0030】
また、S110では、操作者が運転者であるか運転者以外であるかを判定する。具体的には、運転席と助手席の各乗員から操作スイッチ群17へ伸びる手(腕)の動きから操作者が運転手であるか運転者以外であるかを判定する。すなわち、運転席の乗員の手(腕)が操作スイッチ群17の位置へ伸びてきた場合には、操作者が運転手であると判定し、助手席の乗員の手(腕)が操作スイッチ群17の位置へ伸びてきた場合には、操作者が運転手以外の乗員であると判定する。
【0031】
操作者による操作がない場合、S108の判定はNOとなり、操作禁止モードに遷移する(S112)。
【0032】
また、運転者が操作のために操作スイッチ群17の位置へ手を伸ばすと、S108の判定はYES、S110の判定はYESとなり、車両の走行中における操作を禁止する操作禁止モードに遷移させる(S112)。
【0033】
これにより、車両の走行中における運転者による操作スイッチ群17に対する操作が不可能な状態となる。
【0034】
また、助手席の乗員が操作のために操作スイッチ群17の位置へ手を伸ばすと、S108の判定はYES、S110の判定はNOとなり、車両の走行中における運転者以外の乗員の操作を許可する運転者以外操作許可モードに遷移させる(S114)。
【0035】
これにより、車両の走行中における運転者以外の乗員による操作スイッチ群17に対する操作が可能な状態となる。
【0036】
上記した構成によれば、サーモグラフィ19によって検出された車両内の各乗員の体の温度分布から走行中における運転者による操作部への操作と運転者以外の操作部への操作の有無が推定され、運転者による操作部への操作があることが推定された場合には操作禁止モードに遷移し、運転者以外の操作部への操作があることが推定された場合には運転者以外操作許可モードに遷移する。したがって、何らかの物体が操作部の手前を横切っても、運転者による操作部への操作として誤認識されることがなく、より正確に運転者の操作を検出して走行中における運転者の操作を禁止することができる。
【0037】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨に基づいて種々なる形態で実施することができる。
【0038】
例えば、上記実施形態では、S112において、ナビゲーションに最低限必要な入力操作を除く運転者の操作スイッチ群17への入力操作を禁止する操作禁止モードに遷移する例を示したが、運転者の操作スイッチ群17への全ての入力操作を禁止するようにしてもよい。
【0039】
また、上記実施形態では、運転席と助手席の間の天井にサーモグラフィ19が取り付けられた場合の例を示したが、この例に限定されるものではなく、例えば、車載ナビゲーション装置1の表示装置21の表示画面の周囲に設けるようにしてもよい。
【0040】
また、例えば、車両用エアコンの空調制御用としてサーモグラフィが設けられている場合、車両用エアコン用に設けられたサーモグラフィから出力される画像データを利用して走行中における運転者による操作部への操作と運転者以外の操作部への操作の有無を推定するようにしてもよい。
【0041】
なお、上記実施形態における構成と特許請求の範囲の構成との対応関係について説明すると、温度分布検出手段に相当し、S100、S104、S106、S108、S110が推定手段に相当し、S112が操作禁止モード遷移手段に相当し、S114が運転者以外操作許可モード遷移手段に相当し、S100が走行状態判定手段に相当し、S106が人体抽出手段に相当し、S108が操作判定手段に相当し、S110が操作者判定手段に相当する。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明の一実施形態に係る車載ナビゲーション装置の構成を示す図である。
【図2】ナビECUの処理を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0043】
1…車載ナビゲーション装置、11…位置検出器、12…地磁気センサ、
13…ジャイロスコープ、14…車速センサ、15…GPS受信機、
16…地図データ入力器、17…操作スイッチ群、18…リモコンセンサ、
19…サーモグラフィ、20…外部メモリ、21…表示装置、
22…音声認識ユニット、23…スピーカ、24…送受信機、25…ナビECU。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両内の乗員の操作を受け付ける操作部と、
前記車両内の各乗員の体の温度分布を検出する温度分布検出手段と、
前記温度分布検出手段によって検出された前記車両内の各乗員の体の温度分布から走行中における運転者による前記操作部への操作と運転者以外の前記操作部への操作の有無を推定する推定手段と、
前記推定手段によって運転者による前記操作部への操作があることが推定された場合、前記車両の走行中における操作を禁止する操作禁止モードに遷移させる操作禁止モード遷移手段と、
前記推定手段によって前記運転者以外の前記操作部への操作があることが推定された場合、前記車両の走行中における運転者以外の乗員の操作を許可する運転者以外操作許可モードに遷移する運転者以外操作許可モード遷移手段と、を備えたことを特徴とする車載ナビゲーション装置。
【請求項2】
前記推定手段は、前記車両が走行中か否かを判定する走行状態判定手段と、前記車両内の各乗員の体の温度分布から前記車両内の各乗員の体の部分を抽出する人体抽出手段と、前記人体抽出手段によって抽出された前記車両内の各乗員の体の部分の動きから前記乗員の操作の有無を判定する操作判定手段と、前記人体抽出手段によって抽出された前記車両内の乗員毎の体の部分の動きから操作者が運転者であるか運転者以外であるかを判定する操作者判定手段と、を備え、
前記走行状態判定手段によって前記車両が走行中であると判定され、かつ、前記操作判定手段によって前記乗員の操作があると判定され、かつ、前記操作者判定手段によって前記操作者が運転者であると判定された場合、走行中における運転者による操作があると推定し、
前記走行状態判定手段によって前記車両が走行中であると判定され、かつ、前記操作判定手段によって前記乗員の操作があると判定され、かつ、前記操作者判定手段によって前記操作者が運転者以外であると判定された場合、走行中における運転者以外による操作があると推定することを特徴とする請求項1に記載の車載ナビゲーション装置。
【請求項3】
前記操作者判定手段は、前記人体抽出手段によって抽出された前記車両内の各乗員から前記操作部へ伸びる手の動きから前記操作者が運転者であるか運転者以外であるかを判定することを特徴とする請求項2に記載の車載ナビゲーション装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2007−292535(P2007−292535A)
【公開日】平成19年11月8日(2007.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−118966(P2006−118966)
【出願日】平成18年4月24日(2006.4.24)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.VICS
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】