説明

車載情報装置、車載情報装置の温度制御方法

【課題】ナビゲーション装置などの車載情報装置において、その装置内の温度を適切に制御する。
【解決手段】処理A〜Eを実行したら、それぞれの処理負荷に応じた加算値Ia〜Ieを実行命令カウンタ値に加算する。スリープモードで動作したときは、そのスリープ時間に応じた減算値Dsを実行命令カウンタ値から減算する。こうして増減される実行命令カウンタ値に基づいて、装置内の温度を推定し、装置内の温度制御を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ナビゲーション装置などの車載情報装置における温度制御の方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ナビゲーション装置内に搭載されたスイッチング電源装置の発熱温度を検出し、その検出結果に応じてスイッチング周波数を変化させることにより、所定の範囲内に発熱温度を制御するナビゲーション装置が知られている(特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特開2003−88109号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、ナビゲーション装置の高性能化および高機能化を実現するために、ナビゲーション装置に搭載されるマイクロプロセッサの高速化が進められている。それに伴って、マイクロプロセッサからの発熱量が増大している。しかし、特許文献1に開示されるナビゲーション装置では、スイッチング電源装置の発熱温度を制御することはできるが、マイクロプロセッサの発熱温度を制御することはできない。したがって、装置内の温度を適切に制御することができない。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1の発明による車載情報装置は、車載情報装置の制御部において実行される各種の信号処理を実行する処理手段と、処理手段が実行した信号処理の履歴に基づいて、装置内の温度を推定する温度推定手段と、温度推定手段による温度の推定結果に基づいて、装置内の温度を制御する温度制御手段とを備えるものである。
請求項2の発明は、請求項1の車載情報装置において、処理手段が実行した信号処理の履歴に応じて実行命令カウンタ値を増加または減少させるカウンタ増減手段をさらに備え、温度推定手段は、その実行命令カウンタ値に基づいて装置内の温度を推定するものである。
請求項3の発明は、請求項2の車載情報装置において、カウンタ増減手段は、処理手段が所定の信号処理を実行したとき、その処理の負荷に応じて実行命令カウンタ値を増加させるものである。
請求項4の発明は、請求項2または3の車載情報装置において、カウンタ増減手段は、処理手段がスリープモードで動作したとき、その動作時間に応じて実行命令カウンタ値を減少させるものである。
請求項5の発明は、請求項2〜4いずれか一項の車載情報装置において、その車載情報装置の電源が投入されたときに、実行命令カウンタ値の初期値を算出する初期カウンタ値算出手段をさらに備えるものである。
請求項6の発明は、請求項5の車載情報装置において、その車載情報装置の電源が切断されるときの実行命令カウンタ値および時刻を記録する記録手段をさらに備え、初期カウンタ値算出手段は、前回の電源切断時に記録手段により記録された実行命令カウンタ値および時刻に基づいて、実行命令カウンタ値の初期値を算出するものである。
請求項7の発明は、請求項6の車載情報装置において、初期カウンタ値算出手段は、前回の電源切断時に記録手段により記録された時刻に基づいて電源切断時間を算出し、その電源切断時間に応じた減算値を前回の電源切断時に記録手段により記録された実行命令カウンタ値から減少させることにより、実行命令カウンタ値の初期値を算出するものである。
請求項8の発明は、請求項1〜7いずれか一項の車載情報装置において、温度制御手段は、温度推定手段により推定された装置内の温度が所定のしきい値を超えたときに、処理手段の処理負荷を軽減するための所定の処理負荷軽減措置を実行することにより、装置内の温度を制御するものである。
請求項9の発明による車載情報装置の温度制御方法は、各種の信号処理を実行するための処理手段を備えた車載情報装置の装置内の温度を制御する方法であって、処理手段が実行した信号処理の履歴に基づいて装置内の温度を推定し、その推定結果に基づいて装置内の温度を制御するものである。
請求項10の発明は、請求項9に記載の車載情報装置の温度制御方法において、処理手段が実行した信号処理の履歴に応じて実行命令カウンタ値を増加または減少させ、その実行命令カウンタ値に基づいて装置内の温度を推定するものである。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、ナビゲーション装置などの車載情報装置において、その装置内の温度を適切に制御することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明の一実施の形態によるナビゲーション装置1の構成を図1に示す。ナビゲーション装置1は車両に搭載されており、車両を目的地まで案内するための様々な信号処理を制御部10において実行する。さらに、制御部10において実行された信号処理の履歴に基づいて装置内の温度を推定し、その推定結果に基づいて装置内の温度を適切に制御するものである。ナビゲーション装置1は、制御部10、振動ジャイロ11、車速センサ12、ハードディスク(HDD)13、GPS受信部14、表示モニタ15および入力装置16を備えている。
【0008】
制御部10は、マイクロプロセッサや各種周辺回路、RAM、ROM等によって構成されており、HDD13に記録されている制御プログラムや地図データに基づいて、各種の信号処理を実行する。この制御部10が行う信号処理により、車両を目的地まで案内するための様々な処理がナビゲーション装置1において実行される。たとえば、目的地を設定する際の目的地の探索処理、設定された目的地までの推奨経路の探索処理、車両の現在位置の検出処理、各種の画像表示処理、ルート案内時の音声出力処理などが実行される。また、装置内の温度を制御するために、後述するような処理も制御部10において実行される。
【0009】
振動ジャイロ11は、自車両の角速度を検出するためのセンサである。車速センサ12は、車速を検出するためのセンサである。これらのセンサを用いて車両の運動状態を所定の時間間隔ごとに検出することにより、車両位置の移動量が求められ、それによって現在の車両位置が検出される。
【0010】
HDD13は不揮発性の記録媒体であり、地図データを含む各種のデータが記録されている。HDD13に記録されている地図データは、必要に応じて制御部10の制御により読み出され、制御部10が実行する様々な処理や制御に利用される。この地図データには、経路計算データと、経路誘導データと、道路データと、背景データとが含まれている。経路計算データは、目的地までのルート探索に用いられる。経路誘導データは、設定された経路に従って自車両を目的地まで誘導するために用いられ、交差点名称や道路名称などを表す。道路データは、道路の形状を表す。背景データは、河川や鉄道、地図上の各種施設等(ランドマーク)など、道路以外の地図形状を表す。
【0011】
HDD13に記録された道路データにおいて、道路区間を表す最小単位はリンクと呼ばれており、各道路は複数のリンクによって構成されている。リンク同士を接続している点はノードと呼ばれ、このノードはそれぞれに位置情報(座標情報)を有している。このノードの位置情報によって、リンク形状、すなわち道路の形状が決定される。
【0012】
なお、上記の例では、HDD13に記録された地図データをナビゲーション装置1において用いることとしているが、HDD以外の記録媒体に地図データを記録してもよい。たとえば、CD−ROMやDVD−ROM、メモリーカードなどに地図データを記録することができる。あるいは、外部より携帯電話回線などを介して送信される地図データを受信し、その地図データを用いることとしてもよい。すなわち、地図データの取得にはどのような方法を用いてもよい。
【0013】
GPS受信部14は、GPS衛星から送信されるGPS信号を受信して制御部10へ出力する。GPS信号には、車両の位置と現在時刻を求めるための情報として、そのGPS信号を送信したGPS衛星の位置と送信時刻が含まれている。したがって、所定数以上のGPS衛星からGPS信号を受信することにより、これらの情報に基づいて車両の現在位置と現在時刻を算出することができる。
【0014】
表示モニタ15は、ナビゲーション装置1において様々な画面表示を行うための装置であり、液晶ディスプレイ等を用いて構成される。この表示モニタ15には、たとえば地図画面などが表示される。表示モニタ15に表示される画面の内容は、制御部10が行う画面表示制御によって決定される。表示モニタ15は、たとえばダッシュボード上やインストルメントパネル内など、運転者から見やすいような位置に設置されている。
【0015】
入力装置16は、ナビゲーション装置1を動作させるための様々な入力操作を運転者が行うための装置であり、各種の入力スイッチ類を有している。運転者は入力装置16を操作することにより、たとえば、目的地に設定したい施設や地点の名称等を入力したり、予め登録された登録地の中から目的地を選択したり、地図を任意の方向にスクロールしたりすることができる。この入力装置16は、操作パネルやリモコンなどによって実現することができる。あるいは、表示モニタ15と一体化されたタッチパネルにより入力装置16を実現してもよい。
【0016】
ユーザが入力装置16を操作して目的地を設定すると、ナビゲーション装置1は、前述の経路計算データに基づいて所定のアルゴリズムの演算を行うことにより、目的地までの推奨経路を探索する。そして、車両の現在位置を検出し、その周辺の道路地図を表示しながら、探索された推奨経路に従って車両を目的地まで誘導する。
【0017】
次に、ナビゲーション装置1における温度制御の方法について説明する。前述したようにナビゲーション装置1は、制御部10において実行された信号処理の履歴に基づいて装置内の温度を推定し、その推定結果に基づいて、装置内の温度を適切に制御する。このとき制御部10は、予め設定されたカウンタ値を実行した処理の履歴に応じて増減させることで、装置内の温度推定を行う。このカウンタ値は、実行命令カウンタ値と呼ばれている。
【0018】
実行命令カウンタ値は、制御部10が何らかの信号処理を実行すると、その処理内容に応じた分だけ増加される。このときの増加量は、制御部10が実行した処理の負荷に応じて定められる。すなわち、負荷が高い(計算量が多い)処理を実行したときには、それに応じて、実行命令カウンタ値の増加量を大きく設定する。反対に、負荷が低い(計算量が少ない)処理を実行したときには、それに応じて、実行命令カウンタ値の増加量を小さく設定する。また、制御部10がスリープモードで動作したときや、ナビゲーション装置1の電源が切断されて制御部10が動作していなかったときは、その時間の長さに応じて実行命令カウンタ値を減少させる。このようにして、制御部10において実行された信号処理の履歴に応じて、実行命令カウンタ値を増加または減少させる。
【0019】
図2は、実行命令カウンタ値が増減される様子の具体例を示した図である。この具体例について、以下に時間経過に沿って説明を行う。初めに、ナビゲーション装置1の電源が投入されて制御回路10が動作を開始すると、制御回路10は、動作開始時の最初の実行命令カウンタ値を算出する。この実行命令カウンタ値は、初期カウンタ値と呼ばれる。
【0020】
制御回路10は、初期カウンタ値を次のようにして算出する。後述のように、ナビゲーション装置1の電源を切断する際に、制御部10は、その時点の実行命令カウンタ値と時刻をHDD13に記録する。こうして前回の電源切断時に記録された時刻と、今回の電源投入時刻との差を求めることにより、ナビゲーション装置1の電源切断時間を算出する。この電源切断時間に対して所定の減少率Koを乗算することにより、前回の電源切断時に記録された実行命令カウンタ値からの減算値Doを求める。なお、減少率Koは、制御部10の放熱効率や、季節や時刻から推定される周囲温度環境、車両に備え付けられた温度計の測定結果などに基づいて決定される。このようにして求めた減算値Doを、前回の電源切断時の実行命令カウンタ値から減算することにより、初期カウンタ値を求める。なお、減算値Doが前回の電源切断時の実行命令カウンタ値を上回っている場合は、初期カウンタ値を0とする。
【0021】
上記のようにして初期カウンタ値を決定した後、制御部10が処理Aを実行すると、そのときの実行命令カウンタ値である初期カウンタ値に対して、加算値Iaを加算する。この加算値Iaは、処理Aの負荷に応じて決定される。たとえば、予め制御部10において実行される各処理についての加算値をテーブル化しておき、そのテーブルを参照することにより、処理Aに対応する加算値Iaを決定することができる。あるいは、処理Aを実行したときの計算量やステップ数などに基づいて、加算値Iaを決定してもよい。
【0022】
その後、制御部10が処理Bおよび処理Cを実行すると、処理Aを実行したときと同様に、それぞれの処理に応じた加算値Ibおよび加算値Icを実行命令カウンタ値に対して加算する。このときの加算値Ibおよび加算値Icについても、加算値Iaと同様にして決定される。図2の例では、加算値Iaよりも加算値Icが大きく図示され、また加算値Icよりも加算値Ibが大きく図示されている。したがって、処理B、処理C、処理Aの順に負荷が高いことが分かる。
【0023】
処理Cの実行後、制御部10において実行すべき処理がない状態(アイドル状態)になると、制御部10はスリープモードによる動作を開始する。このとき、スリープ開始時刻をHDD13に記録してからスリープモードへと移行する。こうして制御部10がスリープモードで動作しているときに、制御部10において実行すべき処理が発生すると、制御部10はスリープモードを終了してウェイクアップ状態となる。このとき、実行命令カウンタ値からスリープモードの減算値Dsを減算する。
【0024】
制御回路10は、スリープモードの減算値Dsを次のようにして算出する。初めに、スリープモードへの移行時に記録されたスリープ開始時刻と、スリープ終了時刻との差を求めることにより、スリープモードの動作時間(スリープ時間)を算出する。このスリープ時間に対して所定の減少率Ksを乗算することにより、スリープモードの減算値Dsを求める。このときの減少率Ksも、前述の電源切断時の減少率Koと同様に、制御部10の放熱効率などに基づいて決定される。このようにして求めた減算値Dsを実行命令カウンタ値から減算する。なお、減算値Dsがその時点の実行命令カウンタ値を上回っている場合は、減算後の実行命令カウンタ値を0とする。
【0025】
その後は、制御部10が処理Dおよび処理Eを実行すると、処理A、BおよびCを実行したときと同様に、それぞれの処理に応じた加算値Idおよび加算値Ieを実行命令カウンタ値に対して加算する。このときの加算値Idおよび加算値Ieについても、前述の加算値Ia、IbおよびIcと同様にして決定される。
【0026】
処理Eの実行後、電源スイッチの操作や車両のエンジン停止などに応じてナビゲーション装置1の電源を切断する際に、制御部10は、その時点の実行命令カウンタ値と時刻をHDD13に記録してからその動作を停止する。こうして記録された電源切断時の実行命令カウンタ値および時刻は、前述したように、次回の初期カウンタ値の算出に用いられる。以上説明したようにして、制御部10において実行された信号処理の履歴に応じて実行命令カウンタ値が増減される。
【0027】
上記の実行命令カウンタ値は、ナビゲーション装置1が動作しているときには、制御部10内のRAMによって記憶されており、そこから所定時間ごとに読み出されて、ナビゲーション装置1内の温度推定に用いられる。すなわち制御部10は、読み出した実行命令カウンタ値に所定の変換率を乗算することにより、制御部10の温度上昇推定値を算出する。この温度上昇推定値を周囲温度に加えることで、ナビゲーション装置1内の温度推定値を求める。
【0028】
こうして求められた温度推定値が所定のしきい値を超えた場合、制御部10は、自身の処理負荷を軽減するための処理負荷軽減措置を実行する。たとえば、地図画面の表示内容を更新するときの描画更新間隔を、通常の状態のときよりも長くする。これにより、ナビゲーション装置1を動作させたままで、その装置内の温度を適切に制御する。なお、処理負荷軽減措置を実行しているときは、それに応じて実行命令カウンタ値を減少させる。
【0029】
以上説明したようにしてナビゲーション装置1の温度制御を行うときに、制御部10によって実行される処理のフローチャートを図3および図4に示す。図3のフローチャートは、実行命令カウンタ値の算出時に実行される実行命令カウンタ処理のフローチャートである。図4のフローチャートは、図3の実行命令カウンタ処理によって算出された実行命令カウンタ値に基づいて装置内の温度を監視し、その監視結果にしたがって温度制御を行うときに実行される温度監視処理のフローチャートである。以下、先に図3のフローチャートから説明する。
【0030】
ステップS10では、前回の電源切断時に記録された実行命令カウンタ値と時刻をHDD13から読み出す。なお、ここで読み出される実行命令カウンタ値と時刻は、後で説明するステップS180において前回の電源切断時に記録されたものである。次のステップS20では、ステップS10で読み出した時刻と現在時刻の差により、前回の電源切断から今回の電源投入までの電源切断時間を算出する。
【0031】
ステップS30では、初期カウンタ値を算出する。ここでは前述のように、ステップS20で算出された電源切断時間に所定の減少率Koを乗算することで減算値Doを求め、その減算値DoをステップS10で読み出した前回の電源切断時の実行命令カウンタ値から減算することにより、初期カウンタ値を算出する。
【0032】
ステップS40では、制御部10が何らかの信号処理を実行したか否かを判定する。何らかの信号処理を実行した場合、ステップS50へ進む。ステップS50では、ステップS40において実行された信号処理の負荷に応じた加算値を前述のようにして決定する。次のステップS60では、ステップS50で決定された加算値を実行命令カウンタ値へ加算する。これにより、実行した処理の負荷に応じて実行命令カウンタ値を増加させる。ステップS60を実行したらステップS70へ進む。一方、制御部10が何の信号処理も実行していないとステップS40において判定した場合は、ステップS50およびS60を実行せずに、ステップS70へと進む。
【0033】
ステップS70では、スリープモードを開始するか否かを判定する。制御部10において実行すべき処理がない場合、スリープモードを開始すると判定して次のステップS80へ進む。一方、スリープモードを開始しない場合は、以下に説明するステップS80〜S130の処理を実行せずに、ステップS140へと進む。
【0034】
ステップS80では、その時点の現在時刻をスリープ開始時刻としてHDD13に記録する。その後、制御部10はスリープモードに移行する。次のステップS90では、スリープモードが解除されたか否かを判定する。制御部10において実行すべき処理が発生した場合、スリープモードが解除されたと判定してステップS100へ進む。このとき、制御部10はスリープモードを終了してウェイクアップ状態となる。
【0035】
ステップS100では、ステップS80において記録されたスリープ開始時刻をHDD13から読み出す。次のステップS110では、ステップS100で読み出したスリープ開始時刻と現在時刻の差により、スリープ時間を算出する。次のステップS120では、ステップS110において算出されたスリープ時間に基づいて減算値を算出する。ここでは前述のように、スリープ時間に所定の減少率Ksを乗算することで、スリープモードの減算値Dsを求める。ステップS130では、ステップS120において算出された減算値Dsを実行命令カウンタ値から減算する。これにより、スリープ時間に応じて実行命令カウンタ値を減少させる。ステップS130を実行したらステップS140へ進む。
【0036】
ステップS140では、制御部10において処理負荷軽減措置を実行中であるか否かを判定する。前述のように、たとえば地図画面の表示内容を更新するときの描画更新間隔を通常よりも長くするなどの処理負荷軽減措置を実行中である場合は、ステップS150へ進む。なお、この処理負荷軽減措置は、後述する図4のステップS240において実行される。一方、このような処理負荷軽減措置を実行中でない場合は、以下に説明するステップS150およびS160の処理を実行せずに、ステップS170へと進む。
【0037】
ステップS150では、実行中の処理負荷軽減措置に応じた減算値を決定する。ここでは、たとえば予め設定された値を用いて、減算値を決定することができる。次のステップS160では、ステップS150で決定された減算値を実行命令カウンタ値から減算する。これにより、実行中の処理負荷軽減措置に応じて実行命令カウンタ値を減少させる。ステップS160を実行したらステップS170へ進む。
【0038】
ステップS170では、ナビゲーション装置1の電源を切断するか否かを判定する。電源スイッチの操作や車両のエンジン停止などによって電源の切断を指示された場合、ステップS180へ進む。ステップS180では、その時点の実行命令カウンタ値と時刻をHDD13に記録する。ステップS180を実行したら、図3のフローチャートを終了する。その後、制御部10の動作を停止してナビゲーション装置1の電源を切断する。一方、ステップS170において電源を切断しないと判定した場合は、ステップS40へ戻って上記のような処理を繰り返す。実行命令カウンタ処理では、以上説明したような処理を実行する。
【0039】
次に、図4のフローチャートについて説明する。ステップS210では、現在の実行命令カウンタ値を制御部10内のRAMから読み出す。なお、ここで読み出される実行命令カウンタ値は、図3のフローチャートに示す実行命令カウンタ処理によって求められたものである。次のステップS220では、ステップS210で読み出した実行命令カウンタ値に基づいて、ナビゲーション装置1内の温度推定値を算出する。ここでは前述のように、読み出した実行命令カウンタ値に所定の変換率を乗算することにより、制御部10の温度上昇推定値を算出する。この温度上昇推定値を周囲温度に加えることで、温度推定値を算出する。
【0040】
ステップS230では、ステップS220で算出された温度推定値が所定のしきい値を超えたか否かを判定する。しきい値を超えた場合はステップS240へ進む。ステップS240では、制御部10の処理負荷を軽減するための処理負荷軽減措置を実行する。ここでは前述のように、たとえば地図画面の表示内容を更新するときの描画更新間隔を通常よりも長くして、制御部10の処理負荷を軽減する。このような処理負荷軽減措置をステップS240において実行したら、ステップS210へ戻って上記のような処理を繰り返す。一方、ステップS230で温度推定値がしきい値を超えていないと判定した場合は、ステップS240を実行せずにステップS210へ戻る。温度監視処理では、以上説明したような処理を実行する。
【0041】
以上説明した実施の形態によれば、次の作用効果が得られる。
(1)制御部10が実行した信号処理の履歴に基づいて装置内の温度を推定し(ステップS220)、その推定結果に基づいて、装置内の温度を制御することとした。このようにしたので、ナビゲーション装置などの車載情報装置において、その装置内の温度を適切に制御することができる。
【0042】
(2)制御部10が実行した信号処理の履歴に応じて実行命令カウンタ値を増加または減少させる(ステップS60、S130、S160)。ステップS220では、この実行命令カウンタ値に基づいて、装置内の温度を推定することとした。このようにしたので、温度センサを使用することなく、装置内の温度を推定することができる。
【0043】
(3)制御部10が何らかの信号処理を実行したか否かを判定し(ステップS40)、信号処理を実行したと判定した場合、その処理内容に応じて加算値を決定し(ステップS50)、決定された加算値を実行命令カウンタ値へ加算する(ステップS60)。これにより、制御部10が所定の信号処理を実行したとき、その処理の負荷に応じて実行命令カウンタ値を増加させることとした。このようにしたので、制御部10における信号処理の実行による装置内の温度上昇に応じて、実行命令カウンタ値を適切に増加させることができる。
【0044】
(4)スリープモードを開始するか否かを判定し(ステップS70)、スリープモードを開始すると判定した場合、スリープ開始時刻をHDD13に記録する(ステップS80)。その後、スリープモードが解除されたときに(ステップS90)、記録されたスリープ開始時刻を読み出し(ステップS100)、そのスリープ開始時刻に基づいてスリープ時間を算出する(ステップS110)。こうして算出されたスリープ時間に基づいて減算値を決定し(ステップS120)、決定された減算値を実行命令カウンタ値から減算する(ステップS130)。これにより、制御部10がスリープモードで動作したとき、その動作時間に応じて実行命令カウンタ値を減少させることとした。このようにしたので、制御部10のスリープモード動作による装置内の温度低下に応じて、実行命令カウンタ値を適切に減少させることができる。
【0045】
(5)装置の電源が投入されたときに、実行命令カウンタ値の初期値を算出する(ステップS30)こととしたので、装置内の温度を推定するのに適した実行命令カウンタ値とすることができる。
【0046】
(6)装置の電源が切断されるときの実行命令カウンタ値および時刻をHDD13に記録する(ステップS180)。装置の電源が投入されると、前回の電源切断時に記録された実行命令カウンタ値および時刻をHDD13から読み出す(ステップS10)。そして、読み出された前回の電源切断時の時刻に基づいて、電源切断時間を算出し(ステップS20)、その電源切断時間に応じた減算値を、読み出された前回の電源切断時の実行命令カウンタ値から減少させることにより、実行命令カウンタ値の初期値を算出する(ステップS30)。これにより、前回の電源切断時に記録された実行命令カウンタ値および時刻に基づいて、実行命令カウンタ値の初期値を算出することとした。このようにしたので、前回の結果を反映して、実行命令カウンタ値の初期値を正確に算出することができる。
【0047】
(7)ステップS220で推定された装置内の温度が所定のしきい値を超えたか否かを判定し(ステップS230)、しきい値を超えたときに、制御部10の処理負荷を軽減するための処理負荷軽減措置を実行する(ステップS240)。これにより、装置内の温度を制御することとした。このようにしたので、装置を動作させたままでその装置内の温度を適切に制御することができる。
【0048】
なお、上記の実施の形態ではナビゲーション装置の適用例を説明したが、本発明はナビゲーション装置以外にも、各種の信号処理を実行する制御回路を備えた様々な車載情報装置について適用可能である。たとえば、ナビゲーション装置によって検出される自車位置に基づいて、カーブ走行時などに車両の走行制御を行う車両走行制御装置や、各種の画像情報や音声情報を車両の乗員に対して提供する車載情報端末などについても、本発明は適用可能である。
【0049】
以上説明した実施の形態や変形例はあくまで一例であり、発明の特徴が損なわれない限り、本発明はこれらの内容に限定されない。
【0050】
上記の実施の形態では、記録手段をHDD13により実現し、特許請求の範囲に記載されたそれ以外の各手段を、制御部10が行う処理によってそれぞれ実現することとした。しかし、これらはあくまで一例であり、発明を解釈する際、上記の実施の形態の記載事項と特許請求の範囲の記載事項の対応関係には何ら限定も拘束もされない。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】本発明の一実施形態によるナビゲーション装置の構成図である。
【図2】実行命令カウンタ値が増減される様子の具体例を示した図である。
【図3】実行命令カウンタ値の算出時に実行される実行命令カウンタ処理のフローチャートである。
【図4】実行命令カウンタ値に基づいて装置内の温度を監視し、その監視結果にしたがって温度制御を行うときに実行される温度監視処理のフローチャートである。
【符号の説明】
【0052】
1:ナビゲーション装置 10:制御部
11:振動ジャイロ 12:車速センサ
13:HDD 14:GPS受信部
15:表示モニタ 16:入力装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車載情報装置の制御部において実行される各種の信号処理を実行する処理手段と、
前記処理手段が実行した信号処理の履歴に基づいて、装置内の温度を推定する温度推定手段と、
前記温度推定手段による温度の推定結果に基づいて、装置内の温度を制御する温度制御手段とを備えることを特徴とする車載情報装置。
【請求項2】
請求項1の車載情報装置において、
前記処理手段が実行した信号処理の履歴に応じて実行命令カウンタ値を増加または減少させるカウンタ増減手段をさらに備え、
前記温度推定手段は、前記実行命令カウンタ値に基づいて装置内の温度を推定することを特徴とする車載情報装置。
【請求項3】
請求項2の車載情報装置において、
前記カウンタ増減手段は、前記処理手段が所定の信号処理を実行したとき、その処理の負荷に応じて前記実行命令カウンタ値を増加させることを特徴とする車載情報装置。
【請求項4】
請求項2または3の車載情報装置において、
前記カウンタ増減手段は、前記処理手段がスリープモードで動作したとき、その動作時間に応じて前記実行命令カウンタ値を減少させることを特徴とする車載情報装置。
【請求項5】
請求項2〜4いずれか一項の車載情報装置において、
その車載情報装置の電源が投入されたときに、前記実行命令カウンタ値の初期値を算出する初期カウンタ値算出手段をさらに備えることを特徴とする車載情報装置。
【請求項6】
請求項5の車載情報装置において、
その車載情報装置の電源が切断されるときの実行命令カウンタ値および時刻を記録する記録手段をさらに備え、
前記初期カウンタ値算出手段は、前回の電源切断時に前記記録手段により記録された実行命令カウンタ値および時刻に基づいて、前記実行命令カウンタ値の初期値を算出することを特徴とする車載情報装置。
【請求項7】
請求項6の車載情報装置において、
前記初期カウンタ値算出手段は、前回の電源切断時に前記記録手段により記録された時刻に基づいて電源切断時間を算出し、その電源切断時間に応じた減算値を前回の電源切断時に前記記録手段により記録された実行命令カウンタ値から減少させることにより、前記実行命令カウンタ値の初期値を算出することを特徴とする車載情報装置。
【請求項8】
請求項1〜7いずれか一項の車載情報装置において、
前記温度制御手段は、前記温度推定手段により推定された装置内の温度が所定のしきい値を超えたときに、前記処理手段の処理負荷を軽減するための所定の処理負荷軽減措置を実行することにより、装置内の温度を制御することを特徴とする車載情報端末。
【請求項9】
各種の信号処理を実行するための処理手段を備えた車載情報装置の装置内の温度を制御する方法であって、
前記処理手段が実行した信号処理の履歴に基づいて装置内の温度を推定し、
その推定結果に基づいて装置内の温度を制御することを特徴とする車載情報装置の温度制御方法。
【請求項10】
請求項9に記載の車載情報装置の温度制御方法において、
前記処理手段が実行した信号処理の履歴に応じて実行命令カウンタ値を増加または減少させ、
その実行命令カウンタ値に基づいて装置内の温度を推定することを特徴とする車載情報装置の温度制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−117224(P2008−117224A)
【公開日】平成20年5月22日(2008.5.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−300692(P2006−300692)
【出願日】平成18年11月6日(2006.11.6)
【出願人】(591132335)株式会社ザナヴィ・インフォマティクス (745)
【Fターム(参考)】