説明

車載用情報端末装置

【課題】 渋滞による自車両の走行に対する影響の程度によって、渋滞回避情報を案内するか否かを決定することにより、適切な渋滞回避対策を提案するとともに、渋滞区間を回避する車両の集中による新たな渋滞の発生を防ぐことができる車載用情報端末装置を提供すること。
【解決手段】 ナビゲーション手段により算出される経路誘導情報と残り走行距離、及び道路情報受信手段を介して取得される道路の渋滞情報に基づいて、渋滞区間と車両との位置関係を判断し、渋滞により発生する遅れ時間を予測する遅れ時間算出手段と、該遅れ時間算出手段により算出された遅れ時間と残り走行距離とに基づいて、渋滞を回避するための迂回ルートの推奨を行うか否かを決定する渋滞回避手段とを装備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は車載用情報端末装置に関し、より詳細には、道路交通情報の受信が可能な車載用情報端末装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ナビゲーション装置などの車載用情報端末装置を介してVICS(Vehicle Information and Communication System)から、道路の渋滞情報を含んだ道路交通情報をリアルタイムで受信することが可能となってきている。
【0003】
VICSとは、道路交通情報通信システムセンターで編集、処理された渋滞や交通規制などの道路交通情報を、高速道に設置された電波ビーコン、一般道に設置された光ビーコン、又はFM多重放送局を介してリアルタイムに送信し、車両に搭載されたナビゲーション装置などの車載用情報端末装置に表示させる情報通信システムである。高速道に設置された電波ビーコンは、前方200km程度の高速道の交通情報を提供することが可能であり、一般道に設置された光ビーコンは、前方30km程度までの一般道の交通情報を提供することが可能であり、FM多重放送は全国に設置されたVICSFM多重放送局を介して、県単位の広域情報を提供することが可能である。
【0004】
FM多重放送局からの放送波信号、電波ビーコンからの電波信号及び光ビーコンからの光信号を受信する受信手段を備えた車載用情報端末装置であれば、VICSからの道路交通情報を受信することができる。
また、VICS以外にも、RDS(Radio Data System)などを介して道路交通情報を獲得することができる。
【0005】
これに伴って、外部から受信した道路交通情報に基づいて、渋滞区間を回避するように経路探索を行う様々なナビゲーション装置が提案されている。例えば、下記の特許文献1には、渋滞情報と複数の走行ルートのデータから各走行ルートにおける走行時間を求め、最短時間ルートを選択する経路誘導方法が開示されている。また、下記の特許文献2には、渋滞情報の有無に基づいて、一般道優先モードと有料道路優先モードとのモード切換を決定する自車両用ナビゲーション装置が開示されている。また、下記の特許文献3には、予定経路上の渋滞情報が外部から取得された時に、別経路の探索を開始するナビゲーション装置が開示されている。
【0006】
しかしながら、特許文献1〜3に開示されているナビゲーション装置はいずれも、渋滞情報を受信すると、渋滞区間を回避するように経路誘導を行うため、同一区間の中で走行している多数の自車両が同じ渋滞情報を受信した場合、渋滞区間を回避するための経路の中に、同じルートが含まれることが多くなり、渋滞を避ける車両の集中による新たな渋滞が引き起こされる可能性が高いといった課題があった。
【特許文献1】特開平04−371990号公報
【特許文献2】特開平2002−116038号公報
【特許文献3】特開平2002−90163号公報
【発明の開示】
【課題を解決するための手段及びその効果】
【0007】
本発明は上記課題に鑑みなされたものであって、渋滞による自車両の走行に対する影響の程度によって、渋滞回避情報を案内するか否かを決定することにより、適切な渋滞回避対策を提案するとともに、渋滞区間を回避する車両の集中による新たな渋滞の発生を防ぐことができる車載用情報端末装置を提供することを目的としている。
【0008】
上記目的を達成するために本発明に係る車載用情報端末装置(1)は、ナビゲーション手段により算出される経路誘導情報と残り走行距離、及び道路情報受信手段を介して取得される道路の渋滞情報に基づいて、渋滞区間と車両との位置関係を判断し、渋滞により発生する遅れ時間を予測する遅れ時間算出手段と、該遅れ時間算出手段により算出された遅れ時間と前記残り走行距離とに基づいて、渋滞を回避するための迂回ルートの推奨を行うか否かを決定する渋滞回避手段とを備えていることを特徴としている。
【0009】
上記車載用情報端末装置(1)によれば、渋滞区間と車両との位置関係を判断し、渋滞により発生する遅れ時間と車両の残り走行距離とに基づいて、渋滞を回避するための迂回ルートの推奨を行うか否かを決定するため、渋滞による車両の走行に対する影響が大きい場合にのみ渋滞回避情報を案内することができる。また、同じ渋滞情報を受信した各車両が、渋滞による遅れ時間又は残り走行距離の違いによって迂回ルートを利用して渋滞を回避する車両と渋滞区間の走行を継続する車両とに振り分けられることができるので、渋滞を回避する車両の集中による新たな渋滞の発生を防ぐことができる。
【0010】
また、本発明に係る車載用情報端末装置(2)は、上記車載用情報端末装置(1)において、前記渋滞回避手段が、前記渋滞区間が高速道の走行予定経路上にあり、且つ、前記車両の現在位置から目的地までの距離が第1の残り走行距離判断基準値以下であり、前記渋滞により発生する遅れ時間の値が第1の遅れ時間判断基準値よりも大きいと判断した場合、又は前記渋滞区間が一般道の走行予定経路上にあり、且つ、前記車両の現在位置から目的地までの距離が第2の残り走行距離判断基準値以上であり、前記渋滞により発生する遅れ時間の値が第2の遅れ時間判断基準値よりも大きいと判断した場合、迂回ルートの推奨を行うものであることを特徴としている。
【0011】
一般的に、高速道の残り走行距離が長い場合、渋滞が発生するたびに高速道から降りるようにすると時間の節約にならないだけではなく、道路使用料金も高くなる。他方、高速道の残り走行距離が短い場合、渋滞を回避するために早めに高速道から降りる方が時間と道路使用料金の節約になる。また、一般道の残り走行距離が短い場合、迂回ルートの選択岐が少なくなり、遠回り道、又は狭い道を含んだ迂回ルートしか存在しないことが多いので、迂回ルートを利用しても時間の節約にならない可能性が高い。他方、一般道の残り走行距離が長い場合、迂回ルートの選択岐が比較的に多いので、迂回ルートを利用した方が時間の節約になる可能性が高い。
【0012】
上記車載用情報端末装置(2)によれば、前記渋滞区間が高速道の走行予定経路上にあり、且つ、前記車両の現在位置から目的地までの距離が第1の残り走行距離判断基準値以下であり、前記渋滞により発生する遅れ時間の値が第1の遅れ時間判断基準値より大きい場合、又は前記渋滞区間が一般道の走行予定経路上にあり、且つ、前記車両の現在位置から目的地までの距離が第2の残り走行距離判断基準値以上であり、前記渋滞により発生する遅れ時間の値が第2の遅れ時間判断基準値より大きい場合、迂回ルートの推奨を行うため、走行道路に合わせた適切な渋滞回避対策をユーザに提案することができる。
【0013】
また、本発明に係る車載用情報端末装置(3)は、上記車載用情報端末装置(2)において、前記渋滞回避手段が、前記迂回ルートへ回るための高速道の出口付近も渋滞しているとの情報を前記道路情報受信手段を介して取得した場合、車両の現在位置から次の高速道の出口までに要する走行時間と車両の現在位置から前記渋滞している高速道の出口付近の渋滞区間を抜けるまでに要する走行時間との時間差を計算し、前記時間差が時間差判断基準値よりも小さいと判断した場合、前記迂回ルートの推奨を取り消すものであることを特徴としている。
通常、高速道に渋滞が発生した場合、高速道の出口から一般道へ出る車両の集中により、出口付近にも渋滞が発生してしまうことが多い。この場合、渋滞している高速道をそのまま走行するか、出口から一般道へ出るかを決めるのが難しい。
【0014】
上記車載用情報端末装置(3)によれば、車両の現在位置から次の高速道の出口までに要する走行時間と車両の現在位置から前記渋滞している高速道の出口付近の渋滞区間を抜けるまでに要する走行時間との時間差が時間差判断基準値より小さい場合、前記迂回ルートの推奨を取り消すため、ユーザに適切な渋滞回避対策を提案することができる。
【0015】
また、本発明に係る車載用情報端末装置(4)は、上記車載用情報端末装置(1)〜(3)のいずれかにおいて、出力手段が、前記ナビゲーション手段により探索された迂回ルートが推奨されなかった場合、前記迂回ルート、迂回する必要がない理由及び前記渋滞により発生する遅れ時間を含んだ情報を告知する告知手段を備えていることを特徴としている。
【0016】
上記車載用情報端末装置(4)によれば、前記ナビゲーション手段により探索された迂回ルートが推奨されなかった場合、前記迂回ルート、迂回する必要がない理由及び前記渋滞により発生する遅れ時間を含んだ情報を告知するため、ユーザは、前記迂回ルート、迂回しない理由及び前記渋滞により発生する遅れ時間などの情報に基づいて、車両に置かれた状況によって、迂回ルートを利用するか否かを決めることができる。
【0017】
また、本発明に係る車載用情報端末装置(5)は、上記車載用情報端末装置(2)において、前記第1の遅れ時間判断基準値、前記第2の遅れ時間判断基準値、前記第1の残り走行距離判断基準値、前記第2の残り走行距離判断基準値のうちの少なくとも一つを、ユーザ設定可能とする外部設定手段を備えていることを特徴としている。
【0018】
上記車載用情報端末装置(5)によれば、ユーザは自分の状況に合わせて、前記外部設定手段を介して、前記第1の遅れ時間判断基準値、前記第2の遅れ時間判断基準値、前記第1の残り走行距離判断基準値、または前記第2の残り走行距離判断基準値を設定することができる。また、各車両における設定がそれぞれ異なるようになれば、渋滞を回避する車両の集中による新たな渋滞をより効果的に防ぐ結果となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
図1は、本発明の実施の形態に係る車載用情報端末装置の要部を概略的に示したブロック図である。図中1は車載用情報端末装置を示しており、車載用情報端末装置1は、GPS(Global Positioning System)受信機11、マイクロコンピュータ(マイコン)16、操作&表示手段17を含んで構成されており、車速センサ12、ジャイロセンサ13、記憶装置14、送受信装置15、及び音声出力手段18がそれぞれ接続されている。
【0020】
また、図中2はVICSセンターを示しており、VICSセンター2は、主に高速道に設置されて電波信号を発信する電波ビーコン2a、一般道に設置されて光信号を発信する光ビーコン2b、及び全国に存在してFM多重放送波を発信するFM多重放送局2cを介して、車載用情報端末装置1に渋滞情報を含む道路交通情報などをリアルタイムに発信するように構成されている。
【0021】
GPS受信機11はアンテナ11aを介してGPS衛星から車両の位置に関する情報を受信する。
記憶装置14は、ハードディスク(HD)、CDまたはDVDに記憶されているデータの読み取りと書き込みが可能な再生装置と、地図情報などのデータベースが格納されているHD、CDまたはDVDを含んで構成されている。
【0022】
送受信装置15は、アンテナ15aを介して、外部へデータを送信し、電波ビーコン2aからの電波信号、光ビーコン2bからの光信号、及びFM多重放送局2cからの放送波信号を受信することにより、VICSセンター2から道路交通情報などをリアルタイムで受信することができるように構成されている。
【0023】
操作&表示手段17は、タッチパネル17a、操作ボタン17b、液晶ディスプレイ17c、画像処理手段17d及びリモコン17eを含んで構成されており、地図情報、経路誘導情報、渋滞回避情報の案内などを表示し、渋滞回避対策に関する設定条件(即ち、各判断基準値)などをユーザに入力させるための操作画面などを表示することができるように構成されている。
音声出力手段18は、マイコン16からの指示信号を受け、渋滞案内情報を含んだ音声情報を出力するようになっている。
【0024】
マイコン16は、処理データを一時的に記憶するRAM(図示せず)、目的地までの走行経路探索及び誘導処理、渋滞回避情報の案内に関する処理などを含んだ各機能を実現するプログラムを記憶するROM(図示せず)、及びこれらのプログラムを実行させるCPU(図示せず)を含んで構成されており、GPS受信機11、車速センサ12、ジャイロセンサ13、記憶装置14、送受信装置15、操作&表示手段17、音声出力手段18とそれぞれ接続されている。
【0025】
マイコン16は、送受信装置15を介してVICSセンター2から渋滞情報を取得すると、GPS受信機11、車速センサ12及びジャイロセンサ13からの測定信号に基づいて、自車両の現在位置を特定し、受信した渋滞情報に基づく渋滞区間が自車両の走行予定経路上の所定範囲内にあると判断した場合、さらに比較対象値(例えば、渋滞により発生する遅れ時間と残り走行距離)を算出し、算出された比較対象値をそれぞれの判断基準値(遅れ時間判断基準値と残り走行距離判断基準値)と比較することにより、渋滞区間を回避するための迂回ルートを推奨するか否かを決定する。
【0026】
即ち、マイコン16は、渋滞区間が自車両の走行予定経路上にあり、しかも自車両の現在位置から渋滞区間の始端までの距離が予め設定された距離の範囲内にあると判断した場合で、渋滞により発生する遅れ時間を計算し、算出された渋滞により発生する遅れ時間の値が予め設定された遅れ時間判断基準値より大きいと判断したら、渋滞を回避するための迂回ルートを探索する。さらに、自車両の走行予定経路における残り走行距離が予め設定された残り走行距離判断基準値より大きいと判断したら、探索された迂回ルートを推奨する旨の渋滞回避対策案内をディスプレイ17c上に表示させ、他方、自車両の走行予定経路における残り走行距離が予め設定された残り走行距離判断基準値を超えていないと判断したら、探索された迂回ルートを推奨しない旨の渋滞回避対策案内をディスプレイ17c上に表示させるようになっている。
【0027】
図2と図3は、本発明の実施の形態に係る車載用情報端末装置1による渋滞回避対策案内画面の例を示す図である。図2と図3に示したように、渋滞回避対策案内画面には、渋滞区間、渋滞により発生する遅れ時間といった渋滞情報、渋滞回避対策、及び迂回ルートが表示されている。
【0028】
図2では、「高速道残り走行距離(30km)が短いため、以下の迂回ルートの利用を推奨します」という迂回ルートを推奨する渋滞回避対策画面が表示されているのに対して、図3では、「高速道残り走行距離(150km)が長いため、迂回を推奨しないが、以下の迂回ルートを参照ください」という迂回ルートを推奨しない渋滞回避対策画面が表示されている。
【0029】
また、渋滞回避対策案内画面には、「迂回ルートへ切換」、「条件設定」、「閉じる」の操作ボタンが形成されている。「迂回ルートへ切換」の操作ボタンがクリックされると、画面に表示されている迂回ルート(例えば、芦屋出口から43号線→道意で右折→道意公園)の経路誘導画面(図示せず)が表示され、「条件設定」の操作ボタンがクリックされると、下記の図4に示す渋滞回避対策に関する条件設定の画面が表示され、「閉じる」の操作ボタンがクリックされると、渋滞回避対策案内表示画面が閉じられるようになっている。
【0030】
図4は、渋滞回避対策を決定するための条件(即ち、判断基準値)をユーザに設定させるための画面を示す図である。図4に示した設定画面において、距離判断基準値R1(高速道の場合)、R2(一般道の場合)は、渋滞区間との距離が近い(即ち、渋滞が自車両の走行に影響を与え得る)と判断される自車両の現在位置から自車両の走行予定経路上における渋滞区間の始端までの距離の上限値である。遅れ時間判断基準値Tc1(高速道の場合)、Tc2(一般道の場合)は、渋滞により発生する遅れ時間が長い(即ち、渋滞が自車両の走行に影響を与え得る)と判断される渋滞により発生する遅れ時間の下限値である。
【0031】
残り走行距離判断基準値Dc1(高速道の場合)、Dc2(一般道の場合)は、渋滞区間を回避すべき残り走行距離の上限値(高速道の場合)、下限値(一般道の場合)である。出口渋滞の時間差判断基準値Tcは、走行中の高速道が渋滞し、一般道への迂回ルートへ切り換えるための高速道の直近出口付近も渋滞している場合に、該直近出口を抜けることが選択される走行時間差(即ち、直近出口の次の出口までに要する走行時間と直近出口を抜けるのに要する走行時間との差)の下限値である。
【0032】
これらの判断基準値をユーザが、設定画面上に設けられた入力欄からそれぞれ入力できるようになっている。また、設定画面には「設定」操作ボタンと「閉じる」操作ボタンが形成されており、「設定」操作ボタンがクリックされると、入力された各判断基準値がマイコン16のROMに記憶され、「閉じる」操作ボタンがクリックされるに設定画面が閉じられるようになっている。
【0033】
次に、本発明の実施の形態に係る車載用情報端末装置1におけるマイコン16が行う渋滞回避の処理動作を図5〜9に示したフローチャートに基づいて説明する。
渋滞回避情報の案内に関する処理動作は、車載用情報端末装置1が送受信装置15を介して道路交通情報を受信することができる状態になった時に開示される。
【0034】
まず、図5に示したフローチャートにおけるステップS1では、送受信装置15を介してVICSセンター2から渋滞情報を取得したか否かを判断し、取得したと判断したら、ステップS2に進む。他方、取得していないと判断したら、ステップS1に戻る。ステップS2では、図4に示した渋滞回避対策に関する条件設定画面に表示された各判断基準値(R1、R2、Tc1、Tc2、Dc1、Dc2、Tc)を読み込み、その後ステップS3に進む。ステップS3では、フラグFLの値を0とし、その後ステップS4に進む。ステップS4では、自車両の現在位置を特定し、その後ステップS5に進む。ステップS5では、自車両が高速道を走行しているか否かを判断し、自車両が高速道を走行していない(即ち、一般道を走行している)と判断した場合、ステップS10へ進み、他方、自車両が高速道を走行していると判断した場合、ステップS6に進む。
【0035】
ステップS6では、渋滞区間が自車両の走行予定経路上にあるか否かを判断し、渋滞区間が自車両の走行予定経路上にないと判断した場合、ステップS1へ戻り、他方、渋滞区間が自車両の走行予定経路上にあると判断した場合、ステップS7に進む。
【0036】
ステップS7では、渋滞区間の始端と自車両の現在位置との距離の値が距離判断基準値R1より小さいか否かを判断し、渋滞区間の始端と自車両の現在位置との距離の値が距離判断基準値R1より小さくはないと判断した場合、ステップS1へ戻り、他方、渋滞区間の始端と自車両の現在位置との距離の値が距離判断基準値R1より小さいと判断した場合、ステップS8に進む。
【0037】
ステップS8では、高速道の渋滞により発生する遅れ時間T1(即ち、渋滞区間を渋滞速度で走行する時間と渋滞区間を法定速度で走行する時間との差)を計算し、その後、ステップS9に進む。ステップS9では、渋滞により発生する遅れ時間T1が遅れ時間判断基準値Tc1より大きいか否かを判断し、渋滞により発生する遅れ時間T1が遅れ時間判断基準値Tc1より大きくはないと判断した場合、ステップS1へ戻り、他方、渋滞により発生する遅れ時間T1が遅れ時間判断基準値Tc1より大きいと判断した場合、処理Aに進む。
【0038】
一方、ステップS10では、渋滞区間が自車両の走行予定経路上にあるか否かを判断し、渋滞区間が自車両の走行予定経路上にないと判断した場合、ステップS1へ戻り、他方、渋滞区間が自車両の走行予定経路上にあると判断した場合、ステップS11に進む。
【0039】
ステップS11では、渋滞区間の始端と自車両の現在位置との距離の値が距離判断基準値R2より小さいか否かを判断し、渋滞区間の始端と自車両の現在位置との距離の値が判断基準値R2より小さくはないと判断した場合、ステップS1へ戻り、他方、渋滞区間の始端と自車両の現在位置との距離の値が判断基準値R2より小さいと判断した場合、ステップS12に進む。
【0040】
ステップS12では、一般道の渋滞により発生する遅れ時間T2(即ち、渋滞区間を渋滞速度で走行する時間と渋滞区間を法定速度で走行する時間との差)を計算し、その後、ステップS13に進む。ステップS13では、渋滞により発生する遅れ時間T2が遅れ時間判断基準値Tc2より大きいか否かを判断し、渋滞により発生する遅れ時間T2が遅れ時間判断基準値Tc2より大きくはないと判断した場合、ステップS1へ戻り、他方、渋滞により発生する遅れ時間T2が遅れ時間判断基準値Tc2より大きいと判断した場合、処理Bに進む。
【0041】
上記処理動作においては、自車両の現在位置が渋滞区間外にある場合(即ち、渋滞区間の始端と車両の現在位置との距離の値が正である場合)について説明してきたが、車両が渋滞区間内を走行している(即ち、渋滞区間の始端と車両の現在位置との距離の値が負である場合)であっても、上記処理動作が適用される。この場合、ステップS8又はステップS12において、渋滞区間を継続走行する場合の渋滞により発生する遅れ時間T1又はT2を計算し、ステップS9又はステップS13において、算出された遅れ時間T1又はT2が遅れ時間判断基準値Tc1又はTc2よりも大きいと判断した場合に処理A又は処理Bに進む。
【0042】
次に、図6に示したフローチャートに基づいて処理Aにおける処理動作を説明する。図6におけるステップS20では、渋滞区間を回避するための自車両の現在位置から目的地までの最短経路L1を探索し、見つけた経路L1を迂回ルートとし、その後、ステップS21に進む。ステップS21では、走行予定経路における走行中の高速道の残り走行距離D1を計算し、その後、ステップS22に進む。
【0043】
ステップS22では、残り走行距離D1が残り走行距離判定基準値Dc1より小さいか否かを判断し、残り走行距離D1が残り走行距離判定基準値Dc1より小さくはないと判断した場合、ステップS27へ進み、他方、残り走行距離D1が残り走行距離判定基準値Dc1より小さいと判断した場合、ステップS23に進む。
【0044】
ステップS23では、迂回ルートL1へ切り換えるための高速道の出口付近における渋滞情報を受信したか否かを判断し、高速道の出口付近における渋滞情報を受信していないと判断した場合、ステップS26へ進み、他方、高速道の出口付近における渋滞情報を受信したと判断した場合、ステップS24に進む。
【0045】
ステップS24では、自車両の現在位置から高速道の次の出口から出るのに要する時間と自車両の現在位置から迂回ルートL1へ切り換えるために直近の高速道の出口を出るのに要する時間との時間差Tsを計算し、その後、ステップS25に進む。
【0046】
ステップS25では、時間差Tsが時間差判断基準値Tcより大きいか否かを判断し、時間差Tsが時間差判断基準値Tcより大きいと判断した場合、ステップS26に進み、他方、時間差Tsが時間差判断基準値Tcより大きくはないと判断した場合、ステップS27に進む。
【0047】
ステップS26では、迂回ルートL1を推奨することを示すように、フラグFLの値を1に設定し、その後、処理Cに進む。一方、ステップS27では、迂回ルートL1を推奨しないことを示すように、フラグFLの値を2に設定し、その後、処理Cに進む。
【0048】
次に、図7に示したフローチャートに基づいて、処理Bにおける処理動作を説明する。図7におけるステップS31では、渋滞区間を回避するための自車両の現在位置から目的地までの最短経路L2を探索し、見つけた経路L2を迂回ルートとし、その後、ステップS32に進む。ステップS32では、走行予定経路における走行中の一般道の残り走行距離D2を計算し、その後、ステップS33に進む。
【0049】
ステップS33では、残り走行距離D2が残り走行距離判定基準値Dc2より大きいか否かを判断し、残り走行距離D2が残り走行距離判定基準値Dc2より大きくはないと判断した場合、ステップS35へ進み、他方、残り走行距離D2が残り走行距離判定基準値Dc2より大きいと判断した場合、ステップS34に進む。
【0050】
ステップS34では、迂回ルートL2を推奨することを示すように、フラグFLの値を1に設定し、その後、処理Cに進む。一方、ステップS35では、迂回ルートL2を推奨しないことを示すように、フラグFLの値を2に設定し、その後、処理Cに進む。
【0051】
次に、図8に示したフローチャートに基づいて処理Cにおける処理動作を説明する。図8におけるステップS41では、図2と図3に示したような渋滞回避対策案内表示画面Hをディスプレイ17c上に表示させ、その後、ステップS42に進む。ステップS42では、渋滞区間を示す情報(例えば、図2に示した「阪神高速西宮IC→尼崎IC 事故渋滞」)を画面Hに表示させ、その後、ステップS43に進む。
【0052】
ステップS43では、渋滞により発生する遅れ時間(T1又はT2)(例えば、図2に示した「15分」)を画面Hに表示させ、その後、ステップS44に進む。ステップS44では、渋滞を回避するための迂回ルート(L1又はL2)(例えば、図2に示した「芦屋出口から43号線→道意で右折→道意公園」)を画面Hに表示させ、その後、ステップS45に進む。
【0053】
ステップS45では、フラグFLの値が1か否かを判断し、フラグFLの値が1ではないと判断した場合、ステップS47へ進み、他方、フラグFLの値が1であると判断した場合、ステップS46に進む。ステップS46では、図2に示したような迂回ルート(L1又はL2)を推奨する渋滞回避対策(例えば、「高速道残り走行距離(30km)が短いため、次の迂回ルートの利用を推奨します」)を表示させ、その後、ステップS49へ進む。
【0054】
一方、ステップS47では、フラグFLの値が2か否かを判断し、フラグFLの値が2ではないと判断した場合、ステップS1へ戻り、他方、フラグFLの値が2であると判断した場合、ステップS48に進む。ステップS48では、図3に示したような迂回ルート(L1又はL2)を推奨しない渋滞回避対策(例えば、「高速道残り走行距離(150km)が長いため、迂回を推奨しないが、以下の迂回ルートを参照ください」)を表示させ、その後、ステップS49に進む。
【0055】
ステップS49では、表示画面Hにおける「迂回ルートへ切換」が選択されたか否かを判断し、「迂回ルートへ切換」が選択されなかったと判断した場合、ステップS51へ進み、他方、「迂回ルートへ切換」が選択されたと判断した場合、ステップS50に進む。ステップS50では、表示画面Hを迂回ルート(L1又はL2)の経路誘導画面に切り換え、その後、渋滞回避処理を終了させる。
【0056】
一方、ステップS51では、表示画面Hにおける「条件設定」が選択されたか否かを判断し、「条件設定」が選択されたと判断した場合、処理Dに進み、他方、「条件設定」が選択されなかったと判断した場合、ステップS52に進む。ステップS52では、表示画面Hにおける「閉じる」が選択されたか否かを判断し、「閉じる」が選択されなかったと判断した場合、ステップS49へ戻り、他方、「閉じる」が選択されたと判断した場合、ステップS53に進む。ステップS53では、表示画面Hを閉じて、渋滞回避処理を終了させる。
【0057】
次に、図9に示したフローチャートに基づいて、処理Dにおける処理動作を説明する。図9におけるステップS61では、図4に示した渋滞回避対策に関する条件設定画面Gをディスプレイ17c上に表示させ、その後、ステップS62に進む。ステップS62では、設定画面Gにおける「設定」が選択されたか否かを判断し、「設定」が選択されていないと判断した場合、ステップS64へ進み、他方、「設定」が選択されたと判断した場合、ステップS63に進む。
【0058】
ステップS63では、図4に示したような設定画面を介して設定された各判断基準値(R1、R2、Tc1、Tc2、Dc1、Dc2、Tc)をマイコン16のROMに上書保存させ、その後、ステップS65に進む。一方、ステップS64では、設定画面Gにおける「閉じる」が選択されたか否かを判断し、「閉じる」が選択されなかったと判断した場合、ステップS62へ戻り、他方、「閉じる」が選択されたと判断した場合、ステップS65に進む。ステップS65では、条件設定画面Gを表示画面Hへ切り換え、その後ステップS49へ戻る。
【0059】
上記実施の形態に係る車載用情報端末装置によれば、渋滞情報を受信した場合、渋滞区間が自車両の走行予定経路における所定範囲内にあるか否か、渋滞により発生する遅れ時間が自車両の走行時間に与える影響が大きいか否か、及び残り走行距離が所定の判断条件を満たしているか否かを判断した上で、渋滞を回避するための迂回ルートの探索及び探索した迂回ルートの推奨を行うか否かを決定する。そのため、ユーザに適切な渋滞回避対策を提案することができると共に、同じ渋滞情報を受信した多くの自車両を各自車両の置かれた状況によって、渋滞を回避するルートを取る自車両と渋滞を回避しないルートを取る自車両に振り分けることができ、渋滞を回避する自車両の集中による新たな渋滞の発生を防ぐことができる。
なお、上記実施の形態に係る車載用情報端末装置1には、記憶装置14と送受信装置15が接続されているが、別の実施の形態では、記憶装置14と送受信装置15とが車載用情報端末装置1に内蔵されてもよい。
【0060】
また、上記実施の形態に係る車載用情報端末装置1は、画面表示により渋滞回避案内情報を出力するようにしているが、別の実施の形態では、画面表示と音声案内との両方により渋滞回避案内情報を出力するようにしてもよい。
また、上記実施の形態に係る車載用情報端末装置1は、比較対象値を渋滞により発生する遅れ時間と残り走行距離としているが、別の実施の形態では、比較対象値を渋滞区間における法定速度と渋滞速度との差又は渋滞区間の距離としてもよい。
また、上記実施の形態に係る車載用情報端末装置1は、比較対象値を計算するようにしているが、別の実施の形態では、比較対象値を受信情報から直接取得してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】本発明の実施の形態に係る車載用情報端末装置の要部を概略的に示したブロック図である。
【図2】実施の形態に係る車載用情報端末装置による渋滞回避対策案内表示画面の例を示す図である。
【図3】実施の形態に係る車載用情報端末装置による渋滞回避対策案内表示画面の例を示す図である。
【図4】実施の形態に係る車載用情報端末装置による渋滞回避対策に関する条件設定画面の例を示す図である。
【図5】実施の形態に係る車載用情報端末装置におけるマイコンが行う一部の処理動作を示すフローチャートである。
【図6】実施の形態に係る車載用情報端末装置におけるマイコンが行う一部の処理動作を示すフローチャートである。
【図7】実施の形態に係る車載用情報端末装置におけるマイコンが行う一部の処理動作を示すフローチャートである。
【図8】実施の形態に係る車載用情報端末装置におけるマイコンが行う一部の処理動作を示すフローチャートである。
【図9】実施の形態に係る車載用情報端末装置におけるマイコンが行う一部の処理動作を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0062】
1 車載用情報端末装置
11 GPS受信機
11a アンテナ
12 車速センサ
13 ジャイロセンサ
14 記憶装置
15 送受信装置
15a アンテナ
16 マイクロコンピュータ
17 操作&表示手段
17a タッチパネル
17b 操作ボタン
17c ディスプレイ
17d 画像処理手段
17e リモコン
18 音声出力手段
19 マイクロコンピュータ
2 VICSセンター
2a 電波ビーコン
2b 光ビーコン
2c FM多重放送局

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ナビゲーション手段により算出される経路誘導情報と残り走行距離、及び道路情報受信手段を介して取得される道路の渋滞情報に基づいて、渋滞区間と車両との位置関係を判断し、渋滞により発生する遅れ時間を予測する遅れ時間算出手段と、
該遅れ時間算出手段により算出された遅れ時間と前記残り走行距離とに基づいて、渋滞を回避するための迂回ルートの推奨を行うか否かを決定する渋滞回避手段とを備えていることを特徴とする車載用情報端末装置。
【請求項2】
前記渋滞回避手段が、前記渋滞区間が高速道の走行予定経路上にあり、且つ、前記車両の現在位置から目的地までの距離が第1の残り走行距離判断基準値以下であり、前記渋滞により発生する遅れ時間の値が第1の遅れ時間判断基準値よりも大きいと判断した場合、又は前記渋滞区間が一般道の走行予定経路上にあり、且つ、前記車両の現在位置から目的地までの距離が第2の残り走行距離判断基準値以上であり、前記渋滞により発生する遅れ時間の値が第2の遅れ時間判断基準値よりも大きいと判断した場合、迂回ルートの推奨を行うものであることを特徴とする請求項1記載の車載用情報端末装置。
【請求項3】
前記渋滞回避手段が、前記迂回ルートへ回るための高速道の出口付近も渋滞しているとの情報を前記道路情報受信手段を介して取得した場合、車両の現在位置から次の高速道の出口までに要する走行時間と車両の現在位置から前記渋滞している高速道の出口付近の渋滞区間を抜けるまでに要する走行時間との時間差を計算し、前記時間差が時間差判断基準値よりも小さいと判断した場合、前記迂回ルートの推奨を取り消すものであることを特徴とする請求項2記載の車載用情報端末装置。
【請求項4】
前記ナビゲーション手段により探索された迂回ルートが推奨されなかった場合、前記迂回ルート、迂回する必要がない理由及び前記渋滞により発生する遅れ時間を含んだ情報を告知する告知手段を備えていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかの項に記載の車載用情報端末装置。
【請求項5】
前記第1の遅れ時間判断基準値、前記第2の遅れ時間判断基準値、前記第1の残り走行距離判断基準値、前記第2の残り走行距離判断基準値のうちの少なくとも一つを、ユーザ設定可能とする外部設定手段を備えていることを特徴とする請求項2記載の車載用情報端末装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2007−240229(P2007−240229A)
【公開日】平成19年9月20日(2007.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−60506(P2006−60506)
【出願日】平成18年3月7日(2006.3.7)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.VICS
【出願人】(000237592)富士通テン株式会社 (3,383)
【Fターム(参考)】