説明

車載装置及びコンテンツ再生方法

【課題】ITS車載器において、マルチメディアコンテンツを含むコンテンツが、有効期限の終了後に再生できなくなるのを防止する。
【解決手段】路側装置から有効期限が設定可能で所定のマルチメディアコンテンツを含むことができるコンテンツの配信を受ける車載装置であって、路側装置から配信を受けたコンテンツを蓄積するための記憶手段を備えたものにおいて、記憶手段において蓄積されているコンテンツのうち、有効期限が終了しており、かつ前記所定のマルチメディアコンテンツを含むものについて、削除されるのを禁止する削除禁止手段(ステップS5〜S9)と、削除禁止手段により削除が禁止されたコンテンツに含まれる前記所定のマルチメディアコンテンツに関するキーワードを、該コンテンツを特定する識別情報とともに登録する登録手段(S10〜S13)とを設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、路側装置からコンテンツの配信を受ける車載装置、及び該車載装置におけるコンテンツ再生方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、通信メディアとしてDSRC(Dedicated Short Range Communication)を利用したタウンカーライフナビという情報提供サービスが提案されている。この情報提供サービスにおいては、社団法人電子情報技術産業協会発行のITS車載器標準規格書で規定されているITS車載器に対し、タウンカーライフナビマルチコンテンツデータ形式というデータ形式に従って構成されるコンテンツが、DSRCシステムに対応した路側機を介して配信される。
【0003】
従来、前記車載器では、DSRC等を利用して路上に設置された路側無線装置と狭域無線通信を行い、当該路側無線装置を介してセンター装置から情報提供を受けることが可能となっている。すなわち、車両が路側無線装置の通信範囲内にある間のみ、車両の車載器と路側無線装置との双方向通信が可能となり、この間にセンター装置が路側無線装置を介して、地域情報(例えば周辺の店舗や医療機関の情報)や広告情報等の各種コンテンツ情報を配信するのである。
【0004】
また、前記車載器では、路側無線装置から配信された各種コンテンツ情報を記憶することにより、路側無線装置と通信できない環境においても当該各種コンテンツ情報を再生することが可能になっている(特許文献1参照)。従来の前記車載器においては、配信されたコンテンツはすべて同一の音響設定のもとで再生されるようになっている。
【0005】
なお、特許文献1には、DSRCに関連した技術として、路側機から受信した情報の格納方法を運転者が設定することができるようにすることによって、受信した情報のうちの所望のものを運転者が後で再確認できるようにした車載器に関する技術が記載されている。
【0006】
【特許文献1】特開2007−109032号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上述従来のITS車載器によれば、配信を受けたコンテンツを有効期限が終了した後も保持しておくかどうかはITS車載器側の任意であるため、配信を受けて蓄積されたコンテンツのうちの有効期限が終了したものついては、削除されたり、非表示とされたりする場合がある。この場合、削除や非表示とされたコンテンツに含まれる音楽や動画等のマルチメディアコンテンツも再生することができくなくなる。また、削除や非表示とされたコンテンツからリンクされているコンテンツも、リンクが途切れるので再生することができなくなる。
【0008】
本発明の目的は、かかる従来技術の問題点に鑑み、ITS車載器において、マルチメディアコンテンツを含むコンテンツが、有効期限の終了後に再生できなくなるのを防止することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この目的を達成するため、第1の発明に係る車載装置は、路側装置から、マルチメディアコンテンツを含むことができるコンテンツの配信を受ける車載装置であって、前記路側装置から配信を受けたコンテンツを蓄積するための記憶手段と、前記記憶手段において蓄積されているコンテンツのうち、有効期限が終了しており、かつ前記マルチメディアコンテンツを含むものについて、削除されるのを禁止する削除禁止手段と、前記削除禁止手段により削除が禁止されたコンテンツに含まれる前記マルチメディアコンテンツに関するキーワードを、該コンテンツを特定する識別情報とともに登録する登録手段とを具備することを特徴とする。マルチメディアコンテンツとしては、たとえば画像ファイルや、オーディオファイル、ビデオファイルにより構成されるものが該当する。
【0010】
第2の発明に係る車載装置は、第1発明において、前記登録手段により登録されているキーワードを表示して、いずれかのキーワードの選択を受け入れる選択手段と、前記選択手段により選択されたキーワードに対応する前記識別情報により特定されるコンテンツを再生する再生手段とを有することを特徴とする。
【0011】
第3の発明に係るコンテンツ再生方法は、路側装置から、マルチメディアコンテンツを含むことができるコンテンツの配信を受ける車載装置におけるコンテンツ再生方法であって、前記路側装置から配信を受けたコンテンツを記憶装置において蓄積する蓄積工程と、前記記憶装置において蓄積されているコンテンツのうち、有効期限が終了しており、かつ前記マルチメディアコンテンツを含むものについて、削除されるのを禁止するための処理を行う削除禁止工程と、前記削禁止工程による処理が行われたコンテンツに含まれる前記マルチメディアコンテンツに関するキーワードを、該コンテンツを特定する識別情報とともに登録する登録工程と、前記登録工程により登録されたキーワードのうち、選択されたものに対応する識別情報により特定されるコンテンツを再生する再生工程とを具備することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、マルチメディアコンテンツを含むコンテンツが、有効期限の終了後に再生できなくなるのを防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
図1は本発明の一実施形態に係る路車間DSRCシステム10の概略図である。路車間DSRCシステム10は、タウンカーライフナビによる情報提供サービスに利用され、そのサービスにおいては、タウンカーライフナビマルチコンテンツ形式のデータが用いられる。路側機11は、サーバ12と共に路側装置15を構成し、有線又は無線でサーバ12へ接続されている。サーバ12は、さらに、インターネット等のネットワークを介して別のサーバとデータを送受自在になっている。路側機11は、直径がほぼ数m〜30mのエリアに存在する自動車13に搭載されているITS車載器17とは5.8GHz帯の電波を使ってデータを送受する。ITS車載器17はDSRC部18及びナビ部19を有している。
【0014】
図2はデータ伝送態様の説明図である。マルチコンテンツ形式のダウンリンクでは、データをその種類に応じて分類し、分類ごとにIDコード(大区分ID)「00」、「01」、「02」、・・・を割り振っている。マルチコンテンツ形式のデータ伝送では、データが情報グループを単位に括られ、各情報グループは先頭にIDコードが「00」(以下、「ID=00」のように記す。)の分類データをもつ。ID=00の分類データは、その情報グループに含まれているIDにはどのようなものがあるかを示す構成情報となっている。
【0015】
図3は情報グループの構成について各IDが必須か任意かを示す図である。ID=0、1、2は、各情報グループに必ず含めなければならない。ID=3、4、5は、ID=60のみの情報提供の場合には情報グループに含める必要はないが、その他の情報提供の場合には、情報グループに必ず含める必要がある。その他のIDは情報グループに含めるか否かは任意である。
【0016】
図4〜図7はダウンリンクで使用する各IDに割り当てる分類表である。ID=00は構成ID情報(各情報グループがどのようなIDを格納しているかを記述する領域)の分類となっている。ID=01は、事業者の分類となっており、サービス事業者コード(サービス事業者を特定できる事業者コード)、サービス事業者表示テキスト(ナビ表示用サービス事業社名(サービス名)テキスト情報)、及びサービス事業者表音文字列(ナビ発話用サービス事業社名(サービス名)表音文字列情報)を含む。
【0017】
ID=02はコンテンツの分類となっており、企業コード(コンテンツの情報提供元を特定できるコード)、企業表示テキスト(ナビ表示用情報提供企業名テキスト情報)、企業表音文字列(ナビ発話用情報提供企業名表音文字列情報)、情報コード(コンテンツを特定できる情報コード)、情報表示テキスト(ナビ表示用コンテンツ内容テキスト情報)、情報表音文字列(ナビ発話用コンテンツ内容表音文字列情報)、及び嗜好データカテゴリー(情報が該当する情報カテゴリーを示すカテゴリーコード)を含む。
【0018】
ID=03は、ID=02と同様に、コンテンツの分類となっており、即時再生/蓄積コード(受信後のコンテンツ再生動作を表すコード)、及び再生条件コード(情報提供エリアでのコンテンツ再生条件を示すコード)を含む。
【0019】
ID=04は、有効期限の分類となっており、開始年月日時分秒(コンテンツの有効期限)、及び終了年月日時分秒(コンテンツの有効期限)を含む。ID=05は、提供時間の分類となっており、営業時間(コンテンツ提供元の営業時間)、及び情報提供時間(コンテンツ提供時間)を含む。
【0020】
ID=10は、対象地点の分類となっており、対象地点座標(サービス提供可能な地点の緯度経度情報)、対象地点表示用テキスト(サービス名称(店舗名称等))、提携駐車場情報(対象地点以外の提携駐車場情報)、アイコン表示画像データ(サービス提供可能な場所を表すアイコンのデータ)、表示用文字データ(サービスの説明用テキスト情報)、表示画像データ(サービスを表す静止画情報)、表音文字列データ(サービスを表す表音文字列情報)、圧縮音声データ(圧縮音声データ情報)、音声再生順(表音文字列と圧縮音声の再生順序を表す)、ビデオデータ(ビデオデータ情報)、及びURL(サービスを表すURL情報)を含む。
【0021】
ID=20は、情報提供地点の分類となっており、計5個の情報提供地点について、情報提供中心座標(ポップアップ情報を再生する緯度経度情報)、情報提供エリア(ポップアップ情報を再生するエリアを定義する中心座標からの半径情報)、情報提供方向コード(ポップアップ情報を再生する情報提供方向情報)、情報提供道路種別(ポップアップ情報を再生する道路種別情報)、表示画像データ(ポップアップ再生する静止画のデータ)、表音文字列データ(ポップアップ再生する表音文字列情報、圧縮音声データポップアップ再生する圧縮音声のデータ)、及び音声再生順(ポップアップ再生する音声データの再生順番を表すコード)を含む。
【0022】
ID=30は、遷移情報の分類となっており、計8個の次再生情報コード(画面遷移情報)を含む。ID=40は、詳細情報の分類となっており、計8個の各詳細情報について、表示用文字データ(ナビ表示用詳細情報テキスト情報)、及び発話用表音文字列(ナビ発話用詳細情報表音文字列情報)を含む。
【0023】
ID=50は、駐車場情報の分類となっており、最大15個の各駐車場について、駐車場ID(駐車場を特定できるID)、詳細情報(駐車場の動的詳細情報)、及び特記事項(駐車場の特記事項)を含む。
【0024】
ID=51は、ナビ部19に格納されている駐車場の静的情報を3次メッシュ単位で最大4メッシュ分更新することが可能になる。ID=51は、3次メッシュ数(更新する駐車場静的情報を含む3次メッシュ数を通知するもの)、1〜4の各メッシュについて、3次メッシュコード(更新する駐車場静的情報を含む3次メッシュコード)、3次メッシュバージョン情報(更新する駐車場静的情報が含まれる3次メッシュのバージョン情報)、3次メッシュ駐車場数(更新するメッシュに含まれる駐車場静的情報数)、3次メッシュ駐車場静的情報(更新する駐車場の静的情報)を含む。
【0025】
ID=60は、運転支援の分類であり、運転支援画像データ(運転支援画像情報)、運転支援表音文字列(データ運転支援表音文字列情報)、運転支援圧縮音声(データ運転支援圧縮音声情報)、及び音声再生順(表音文字列と圧縮音声の再生順序を表す)が含まれる。
【0026】
ID=80は、嗜好データの分類であり、計127個の各嗜好データのテーブルについて、嗜好データバージョン(嗜好データのテーブルのバージョン情報)、嗜好データテーブル(
嗜好データのテーブルの表示用テキスト情報)、表音文字列(嗜好データのテーブルの発話用表音文字列情報)、及び詳細情報(嗜好データのテーブルの詳細情報)が含まれる。
【0027】
図8は路側装置15−ITS車載器17間のトランザクションで実施される各機器間の通信及び処理を示している。路側機11及びサーバ12は路側装置15を構成する。ITS車載器17はDSRC部18及びナビ部19を有している。時間順に説明する。なお、路側機11−DSRC部18間の通信はDSRCの電波で行われ、路側機11−サーバ12間及びDSRC部18−ナビ部19間の通信は通常、ケーブルで行われる。
【0028】
ITS車載器17において電源が投入されるのに伴い、S10では、ナビ部19からDSRC部18へクライアントインフォメーションデータが書き込まれる。ITS車載器17を搭載する自動車13が路側機11との通信可能な距離(例:約30m)の電波到達エリアに進入(エリアイン)するのに伴い、S11では、路側機11−DSRC部18間でDSRC接続処理が実施される。
【0029】
S11のDSRC接続処理が終了すると、S12、S13でDSRC接続通知が行われる。S12の接続通知は路側機11からサーバ12へのものであり、S13の接続通知はDSRC部18からナビ部19へのものである。S14では、クライアントインフォメーションがDSRC部18から路側機11を経てサーバ12へ通知される。
【0030】
サーバ12は、DSRC部18からのクライアントインフォメーション通知に基づきITS車載器17のユーザが会員か非会員かを判別したり、ITS車載器17でコンテンツを適正に再生するためのITS車載器17のハードウェア情報を知得する。S18では、サーバ12から路側機11及びDSRC部18を経てナビ部19へWelcome画面等のコンテンツを送信する。該コンテンツはマルチコンテンツフォーマットで編成されている。ナビ部19は、マルチコンテンツフォーマットからサービス事業者を判断する。
【0031】
サーバ12は、S18後、ナビ部19がアップリンク情報をDSRC部18に書き込むまで、S19でDSRC部18に対して定期的にポーリングを行う。S20では、ナビ部19は、該サービス事業者の会員であれば、アップリンク情報をDSRC部18に書き込むのに対し、会員でなければ、何もしない。
【0032】
S24では、サーバ12は、路側機11及びDSRC部18を経由してデフォルトのコンテンツ(例:Welcome画面)をナビ部19へ送る。S29では、サーバ12は、DSRC部18に対してメモリアクセスポーリングを実施する。これに対して、S30では、DSRC部18は、ユーザが会員であれば、アップリンク情報をサーバ12へ通知する。
【0033】
S33では、サーバ12は、アップリンク情報から取得した会員情報に基づき会員趣向に適した蓄積型コンテンツをマルチコンテンツフォーマット(図2)で編成してITS車載器17へ配信する。後述するように、路側装置15は、S33の期間中、蓄積型コンテンツの配信を1回以上、中断して、即時再生型コンテンツの配信を割込ませる。S34では、蓄積型コンテンツの配信終了を通知する。ITS車載器17を搭載する自動車13は、配信終了に伴い路側機11との通信エリアから退出する。
【0034】
図9はITS車載器17から路側装置15へ送られるアップリンク情報のデータ説明図である。アップリンク情報は、複数のタグで送られる。タグ1には、サービス事業者コード、目的地(緯度経度)、経由地(緯度経度)1〜5、累計走行距離、嗜好ジャンルデータバージョン、嗜好ジャンルデータ、会員情報1〜8が含められる。タグ2には、サービス事業者コード、過去立寄り地(緯度経度)1〜41が含められる。タグ3には、サービス事業者コード、過去立寄り地(緯度経度)42〜82が含められる。
【0035】
タグ4には、サービス事業者コード、受信/再生履歴(受信情報コード及び再生識別フラグ)1〜123が含められる。タグ5には、サービス事業者コード、受信/再生履歴(受信情報コード及び再生識別フラグ)124〜246が含められる。
【0036】
図10はID=80の嗜好データの一例をテーブル表現した説明図である。嗜好データは、嗜好データ番号、嗜好データ表示用テキスト、嗜好データ表示用ネスト、嗜好データ対象識別子、嗜好データデフォルト値、表音文字列により構成される。嗜好データ番号は、0〜127の最大、計128個存在し、サービス業者が各データ番号の項目を自由に設定することができる。128の項目の内、最大96項目がS30(図4)でITS車載器17から路側装置15へアップリンク情報として通知される。
【0037】
アップリンク情報として通知される96項目中、12項目は、公共情報提供サービス目的に利用され、DSRC通信において情報提供を行う際にはデフォルトで配信する情報項目となっている。図10の嗜好データテーブルにおいて、表示用ネストは、各項目(図10のデータ番号に対応する。)の階層を意味し、大きい数値ほど、下の階層を意味している。対象識別子は、それが「0」となっている項目は、ナビ部19における嗜好データのチェック付け画面(後述の図11)においてチェック対象となっていないことを意味し、それが「1」となっている項目は、該チェック付け画面においてチェック対象となっていることを意味する。デフォルト値は、それが「0」となっている項目は、チェック付けの初期画面にチェック無しで表示することを意味し、それが「1」となっている項目は、チェック付けの初期画面にチェック有りで表示することを意味する。
【0038】
図11は路側装置15から嗜好データを受信したITS車載器17がナビ部19の表示器に表示するチェック付けの画面の一例である。ユーザはスクロールバー23をドラッグすることにより画面を上下方向へスクロールすることができる。図11において、ユーザがオンボタンをクリックすると、チェックを付けたことになり、オフボタンをクリックすると、チェックを外したことになる。各項目において、「オン」及び「オフ」の内、字体が斜体になっている方をユーザが選択したことを意味している。受信した嗜好データのデフォルト値が「0」(例:図10のバーゲン情報及びクーポン情報)である項目はオフ(チェック無し)となっており、また、受信した嗜好データのデフォルト値が「1」(例:図10の駐車場情報)である項目はオン(チェック有り)となっている。
【0039】
図12は路側機11の構成を示すブロック図である。同図に示すように、路側機11は必要な処理を行い、路側機11の各部を制御する制御部111、制御部111が実行するプログラム等を記憶するROM112、制御部111が使用するRAM113、制御部111が補助記憶装置として使用する記憶装置114、制御部111がITS車載器17との間でDSRC通信を行うための無線通信部115、及び制御部111がサーバ12との間でITS通信網(高度道路交通システム通信網)20を介して通信を行うための通信制御部116を備える。
【0040】
図13はITS車載器17の構成を示すブロック図である。同図に示すように、ITS車載器17は、必要な処理を行い、ITS車載器17の各部を制御する制御部171、制御部171が実行するプログラム等を記憶するROM172、制御部171が処理に際して使用するRAM173、制御部171が補助記憶装置として使用する記憶装置174、制御部171が無線通信を行うための通信部175、制御部171に対して操作入力により指示を与えるための操作部176、制御部171がユーザに対して通知する情報を表示するための表示部177、ユーザが制御部171に対して音声入力により指示を与えるためのマイク178、制御部171がユーザに対し音声出力により情報を通知するためのスピーカ179、マイク178及びスピーカ179と、制御部171との間に介在し、音声認識や音声合成等の処理を行う音声処理部180、並びに制御部171と、センサ群181との間に介在し、センサ群181からの出力を制御部171に受け渡す入出力装置182を備える。
【0041】
通信部175は、GPS衛星から送出される電波を受信して測位演算を実行し、測位情報を出力するGPSモジュール175a、及び路側機111との間でDSRC通信を行うためのDSRCモジュールを備える。センサ群181は車速センサ、ジャイロセンサ、パーキングセンサ等により構成される。制御部171は記憶装置174に記憶されている地図データベースを参照し、GPSモジュール175aやセンサ群181からの情報に基づき、ナビゲーション機能も営む。
【0042】
図14はITS車載器17が配信を受けるコンテンツの「対象地点情報」(ID=10)に含まれる「項目有無情報」のフォーマットを示す。「項目有無情報」は、「対象地点情報」おいて設定可能な各項目についての設定の有無を示す情報である。同図に示すように、「対象地点情報」には「提携駐車場」、「URL」、「ビデオ」、「圧縮音声」、「表音文字列」、「表示用画像」、「表示用文字」、「対象地点」、及び「アイコン」の各データが設定可能であり、「項目有無情報」はこれらの項目についての設定の有無を表している。つまり、各データについて、「有無フラグ」が「0」であれば、そのデータは設定されておらず、「1」であれば設定されていることを示す。
【0043】
「マルチメディア」の項目についての「有無フラグ」(以下、「マルチメディアフラグ」という。)が「1」の場合、その「対象地点情報」はマルチメディアファイルを含んでいることを意味する。ただし、ID=10に限り、マルチメディアフラグが「1」の場合、「表示用画像」は音楽CDのジャケット写真であり、「圧縮音声」はその楽曲であり、「表示用文字」はアーティスト名及び楽曲名であることを表す。あるいは「表示用画像」は「ビデオ」のサムネイルであり、「ビデオ」はPV(プロモーションビデオ)などの動画であり、「表示用文字」はアーティスト名及び楽曲名であることを表す。マルチメディアファイルとしては、この場合、「表示用画像」のデータにより構成される画像ファイルや、「圧縮音声」のデータにより構成されるオーディオファイルや、「ビデオ」のデータにより構成されるビデオファイルが該当する。
【0044】
「表示用画像」のデータ形式としてはJPGや、GIF、PNG、BMPが該当する。「圧縮音声」のデータ形式としてはIMA−ADPCMや、MP3、AAC、CELP、PCMが該当する。「ビデオ」のデータ形式としてはMPEG−4や、WMV,MOV、Flashが該当する。
【0045】
図15はITS車載器17の表示部177において表示されるコンテンツの画面の一例を示す。図中の141は当該コンテンツの「対象地点情報」(ID=10)中の「表示画像データ」に基づいて表示された部分、142は該コンテンツの「遷移情報」(ID=30)における「次再生情報コード1」〜「次再生情報コード8」に基づいて生成された遷移ボタンである。「次再生情報コード1」〜「次再生情報コード8」には当該コンテンツの次に再生可能なコンテンツの「情報コード」(ID=02)が8つまで設定可能となっている。つまり、「情報コード」毎にコンテンツが存在するので、次に再生されるコンテンツも「情報コード」により特定される。遷移ボタン142は「情報コード」が設定されており、かつその「情報コード」により特定されるコンテンツが記憶装置174内に存在する「次再生情報コード1」〜「次再生情報コード8」の数だけ、順に「1」、「2」、・・・の番号を付随させながら表示される。図15の例では、「次再生情報コード1」から「次再生情報コード4」までに「情報コード」が設定され、かつ対応するコンテンツが存在するので、「1」〜「4」の番号が付された4つの遷移ボタン142が表示されている。
【0046】
上述の表示部分141において表示されている「1.くらし情報」、「2.お店の情報」、「3.ロードサイドサービス」、及び「4.駐車場案内」はそれぞれ上述の「1」〜「4」の番号が付された各遷移ボタン142を押下した場合に再生される次のコンテンツの概要を示すものとなっている。つまり、このように表示部分141の表示内容と各遷移ボタン142とが対応するように、「表示画像データ」(ID=10)及び「次再生情報コード1」〜「次再生情報コード8」(ID=30)が、当該コンテンツにおいて設定されている。
【0047】
遷移ボタン142のいずれかが押下されると、ITS車載器17は、当該遷移ボタン142に対応する「次再生情報コード1」〜「次再生情報コード4」のいずれかの設定内容と同一の「情報コード」(ID=02)を有するコンテンツを検索し、そのコンテンツを再生する。つまり、検索されたコンテンツの「対象地点情報」(ID=10)中の「表示画像データ」及び「遷移情報」(ID=30)が設定されていれば、これらの設定内容に基づく画面に遷移する。このようにして「遷移情報」(ID=30)の設定内容に従い、コンテンツの画面を順次遷移させながら、各コンテンツを再生させることができるようになっている。その際、再生されるコンテンツのマルチメディアフラグが「1」であれば、「圧縮音声データ」(ID=10)に基づき、楽音が再生されたり、「ビデオデータ」(ID=10)に基づき、ビデオが再生されたりすることになる。
【0048】
ITS車載器17においては、配信を受け、記憶装置174において蓄積されているコンテンツについて、有効期限が終了しているものであっても、マルチメディアフラグが「1」であるものについては削除することなく保存しておくようにしている。その際、そのコンテンツの再生が可能となるように、そのコンテンツの「対象地点情報」(ID=10)における「表示用文字データ」として設定されているアーティスト名及び楽曲名をキーワードとして登録するとともに、これに対応付けて、「情報提供企業情報」(ID=02)における「情報コード」を、当該コンテンツを特定するための識別情報として登録するようにしている。登録は、記憶装置174に設けられた串刺し検索用キーワードテーブルにおいて行われる。
【0049】
図16はこの串刺し検索用キーワードテーブルを示す。このテーブルの各レコードは、同図のように、「情報コード」及び対応する「キーワード」の項目により構成される。上述のように「情報コード」にはそのレコードに対応するコンテンツを特定する情報コードが記録され、「キーワード」にはそのコンテンツに設定されているアーティスト名及び楽曲名が記録される。
【0050】
図17はITS車載器17における串刺し検索用キーワードテーブルへの登録処理を示すフローチャートである。この処理は所定のタイミングにおいて定期的に行われる。処理を開始すると、ITS車載器17はまず、ステップS1において、変数Cに対し、記憶装置174に保存されているコンテンツの数を設定する。次に、ステップS2においてカウンタNに対し「1」をセットする。次に、ステップS3において、現在時刻を取得する。次に、ステップS4において、カウンタNが変数C以下であるか否かを判定する。
【0051】
変数C以下であると判定した場合には、ステップS5へ進み、N番目のコンテンツの有効期限を取得する。次に、ステップS6において、該有効期限を現在時刻と比較し、N番目のコンテンツの有効期限が終了しているか否かを判定する。有効期限が終了していないと判定した場合にはステップS14へ進む。有効期限が終了していると判定した場合にはステップS7に進み、N番目のコンテンツにおける「対象地点情報」(ID=10)における「項目有無情報」(図14)を抽出する。
【0052】
次に、ステップS8において、該「項目有無情報」におけるマルチメディアフラグが「1」であるか否かを判定する。「1」ではないと判定した場合には、ステップS14へ進む。「1」であると判定した場合には、ステップS9へ進み、N番目のコンテンツの削除禁止管理フラグを「1」に設定する。削除禁止管理フラグは、そのフラグが設けられたコンテンツについての削除が禁止されているかどうかを示すものであり、「1」であれば削除が禁止されており、「0」であれば削除が禁止されていないことを意味する。削除禁止管理フラグが「1」に設定された場合、そのコンテンツはその後、ユーザによる指示が無い限り、削除されることはない。このフラグはそのコンテンツにおける所定の空き領域に設けることができる。
【0053】
次に、ステップS10において、N番目のコンテンツの「情報提供企業情報」(ID=02)における「情報コード」を抽出する。次に、ステップS11において、N番目のコンテンツの「対象地点情報」(ID=10)における「表示用文字データ」を抽出する。次に、ステップS12において、該「表示用文字データ」からアーティスト名、及び楽曲名を抽出する。次に、ステップS13において、抽出した「情報コード」の内容、並びにアーティスト名及び楽曲名をそれぞれ、串刺し検索用キーワードテーブルにおける「情報コード」及び「キーワード」の項目として登録し、ステップS14へ進む。
【0054】
ステップS14では、カウンタNをインクリメントし、ステップS4に戻る。ステップS4において、カウンタNが変数C以下ではないと判定した場合には、図17の処理を終了する。以上の処理を定期的に行うことにより、各処理時点において、新たに有効期限が終了していると判定された、マルチメディアフラグが「1」であるコンテンツについて、削除が禁止され、串刺し検索用キーワードテーブルへの追加登録がなされることになる。
【0055】
図18はITS車載器17における串刺し検索によるコンテンツ再生処理を示すフローチャートである。ユーザからの所定の指示に応じて処理を開始すると、ITS車載器17は、まず、ステップS21において、串刺し検索用のキーワードの数、すなわち串刺し検索用キーワードテーブルに登録されているレコード数を変数Dに設定する。次に、ステップS22において、カウンタNに「1」をセットする。次に、ステップS23〜S25において、串刺し検索用のコンテンツ選択画面を表示部177において表示する。すなわちステップS23においてカウンタNが変数Dを超えるまでステップS25においてカウンタNをインクリメントしながら、ステップS24において、串刺し検索用キーワードテーブルにおけるN番目のレコード内のキーワード及び対応する選択ボタンを表示する。
【0056】
図19はこのようにして表示されるコンテンツ選択画面を示す。図中の、191は選択ボタン、192は各選択ボタン191の押下により再生されるコンテンツの内容を示すキーワードである。選択ボタン191及びキーワード192はステップS24において表示されたものである。キーワード192は上述のようにアーティスト名及び楽曲名により構成される。ユーザがいずれかの選択ボタン191を押下することにより所望のキーワード192を選択し、対応するコンテンツを再生させることができるようになっている。
【0057】
図18へ戻り、次に、ステップS26において、いずれかの選択ボタン191の押下によりキーワードの選択がなされるのを待機する。キーワードの選択がなされるとステップS27へ進み、コンテンツ選択画面を消去する。次に、ステップS28において、選択されたキーワードに対応する串刺し検索用キーワードテーブル中の情報コードにより特定されるコンテンツの再生を行う。このコンテンツにはマルチメディアコンテンツが含まれており、対応する楽音やビデオの再生が行われることになる。この後、図18の処理を終了する。
【0058】
本実施形態によれば、有効期限が終了したマルチメディアフラグが「1」であるコンテンツについては、削除せずに保持しておき、串刺し検索用キーワードテーブルへの登録を行い、串刺し検索用のコンテンツ選択画面から選択して再生を行ううことができるようにしたため、かかるコンテンツが再生できなくなるのを防止することができる。
【0059】
なお、本発明は上述実施形態に限定されることなく、適宜変形して実施することができる。たとえば、上述においては、図17のステップS9において、マルチメディアコンテンツを含むコンテンツが削除されるのを禁止する措置として、当該コンテンツの削除禁止管理フラグを「1」に設定するようにしているが、この代わりに、コンテンツのデータ領域以外の領域において各コンテンツの削除の可否を登録するテーブルを設け、このテーブルにより各コンテンツの削除の可否を管理するようにしてもよい。あるいは、図16のテーブルを用い、このテーブルに登録されているコンテンツは削除が禁止されているとみなすようにしてもよい。
【0060】
また、上述においては、マルチメディアフラグが「1」であるコンテンツについて、「対象地点情報」(ID=10)における「表示用文字データ」に含まれるアーティスト名及び楽曲名をキーワードとして登録するようにしているが、この代わりに、該コンテンツから抽出することができるマルチメディアファイルのタグ情報に含まれるアーティスト名や楽曲名、ジャンル名をキーワードとして登録するようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】本発明の一実施形態に係る路車間DSRCシステムの概略図である。
【図2】タウンカーライフナビマルチコンテンツ形式のデータ伝送態様の説明図である。
【図3】タウンカーライフナビマルチコンテンツデータにおける情報グループの構成について各IDが必須か任意かを示す図である。
【図4】タウンカーライフナビマルチコンテンツデータの各IDに割り当てられた内容を示す分類表である。
【図5】図4の表の続きを示す図である。
【図6】図5の表の続きを示す図である。
【図7】図6の表の続きを示す図である。
【図8】路側装置及びITS車載器間のトランザクションで実施される各機器間の通信及び処理を示す図である。
【図9】ITS車載器から路側装置へ送られるアップリンク情報のデータ説明図である。
【図10】タウンカーライフナビマルチコンテンツデータにおけるID=80の嗜好データの一例をテーブル表現した説明図である。
【図11】路側装置から嗜好データを受信したITS車載器がナビ部の表示器に表示するチェック付けの画面の一例を示す図である。
【図12】図1のシステムにおける路側機の構成を示すブロック図である。
【図13】図1のシステムにおけるITS車載器の構成を示すブロック図である。
【図14】タウンカーライフナビマルチコンテンツデータにおける「対象地点情報」(ID=10)に含まれる「項目有無情報」のフォーマットを示す図である。
【図15】図13のITS車載器において表示されるコンテンツ画面の一例を示す図である。
【図16】図13のITS車載器における串刺し検索用キーワードテーブルを示す図である。
【図17】図13のITS車載器における串刺し検索用キーワードテーブルへの登録処理を示すフローチャートである。
【図18】図13のITS車載器における串刺し検索によるコンテンツ再生処理を示すフローチャートである。
【図19】図18の処理において表示されるコンテンツ選択画面を示す図である。
【符号の説明】
【0062】
10:路車間DSRCシステム、11:路側機、12:サーバ、13:自動車、17:ITS車載器、18:DSRC部、19:ナビ部、20:ITS通信網、23:スクロールバー、111:制御部、112:ROM、113:RAM、114:記憶装置、115:無線通信部、116:通信制御部、141:表示部分、142:遷移ボタン、171:制御部、172:ROM、173:RAM、174:記憶装置、175:通信部、175a:GPSモジュール、175b:DSRCモジュール、176:操作部、177:表示部、178:マイク、179:スピーカ、180:音声処理部、181:センサ群、182:入出力装置,191:選択ボタン、192:キーワード。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
路側装置から、マルチメディアコンテンツを含むことができるコンテンツの配信を受ける車載装置であって、
前記路側装置から配信を受けたコンテンツを蓄積するための記憶手段と、
前記記憶手段において蓄積されているコンテンツのうち、有効期限が終了しており、かつ前記マルチメディアコンテンツを含むものについて、削除されるのを禁止する削除禁止手段と、
前記削除禁止手段により削除が禁止されたコンテンツに含まれる前記マルチメディアコンテンツに関するキーワードを、該コンテンツを特定する識別情報とともに登録する登録手段とを具備することを特徴とする車載装置。
【請求項2】
前記登録手段により登録されているキーワードを表示して、いずれかのキーワードの選択を受け入れる選択手段と、
前記選択手段により選択されたキーワードに対応する前記識別情報により特定されるコンテンツを再生する再生手段とを有することを特徴とする請求項1に記載の車載装置。
【請求項3】
路側装置から、マルチメディアコンテンツを含むことができるコンテンツの配信を受ける車載装置におけるコンテンツ再生方法であって、
前記路側装置から配信を受けたコンテンツを記憶装置において蓄積する蓄積工程と、
前記記憶装置において蓄積されているコンテンツのうち、有効期限が終了しており、かつ前記マルチメディアコンテンツを含むものについて、削除されるのを禁止するための処理を行う削除禁止工程と、
前記削禁止工程による処理が行われたコンテンツに含まれる前記マルチメディアコンテンツに関するキーワードを、該コンテンツを特定する識別情報とともに登録する登録工程と、
前記登録工程により登録されたキーワードのうち、選択されたものに対応する識別情報により特定されるコンテンツを再生する再生工程とを具備することを特徴とするコンテンツ再生方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate

【図19】
image rotate


【公開番号】特開2010−108184(P2010−108184A)
【公開日】平成22年5月13日(2010.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−278756(P2008−278756)
【出願日】平成20年10月29日(2008.10.29)
【出願人】(000003595)株式会社ケンウッド (1,981)
【Fターム(参考)】