説明

軸方向の大きい塑性歪みに適応する炭素鋼構造およびパイプライン中の耐食合金溶接部

主にフェライト特性を有する材料を接合するための方法および装置について記述される。その方法には、主にオーステナイトミクロ組織を含む溶接材料および溶接プロセスを使用してフェライト系材料を接合することが含まれる。結果として得られる溶接物は、優れた歪み許容性を生成する降伏比、均一伸び、靭性、および引き裂き抵抗特性を高める。高い歪み許容性は、軸方向の大きい荷重に適応する構造を生成する。溶接物は、十分な強度、引き裂き抵抗および破壊靭性を維持しながら、従来の溶接欠陥よりも大きな溶接欠陥に適応する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、2007年2月27日に出願された米国特許仮出願第60/903,765号の利益を主張する。
【0002】
(発明の背景)
本発明は二片の金属を接合する方法に関する。さらに詳しくは、炭化水素などの流体の製造または輸送、または、他の歪みベースの用途に利用してもよい二つのフェライト材料を接合するためのオーステナイト系溶接材料の使用に関する。
【背景技術】
【0003】
(従来技術の説明)
一般に、普通炭素鋼および低合金鋼溶接材料はフェライトミクロ組織に支配される溶接部を生成する。これらのフェライト溶接金属中の一般的なミクロ組織成分には、フェライト、パーライト、ベイナイト、マルテンサイトまたはそれらの派生物またはこれら成分の混合物が含まれる。一般的に、これらのフェライト溶接では、特に低温における靭性および引き裂き抵抗に限界がある。これらの限界によって、構造設計において適応でき、許容溶接欠陥サイズを制限する歪み量が制限される。一般的なフェライト溶接の限界の許容歪みでは、溶接確認検査、調査、および、溶接の生成を行うための時間/労力も増加する。
【0004】
パイプラインなどの鋼構造のための設計は、材料が主に弾性を持ったままの従来の応力ベースの設計から、材料が可塑的に機能するように設計される歪みベースの設計へと推し進められてきた。パイプライン中の塑性歪みは、パイプラインの巻き取り、地震活動、凍結融解の気候サイクル、土の液状化、熱サイクル、および他の荷重条件などの事象によって受ける。これらの環境および動作条件ではパイプラインに強烈な荷重がかかり得るので、これらの荷重の研究に基づいて、パイプライン材料に要求される許容歪みを達成することは設計技術者の責任である。したがって、歪みベースの設計では、構造上の欠陥を避けるために、特に溶接部において、弾力性がある材料を使用しなければならない。
【0005】
従来の応力ベースの設計では、一般に、材料の降伏強度の何分の1かの値に荷重を制限して塑性変形を避ける。一般的な何分の1かの値は約0.3から約0.8まで変化する。一方、歪みベースの設計では、適用される歪みの観点から適用される荷重を定量化し、限界の荷重は発生する所定量の塑性歪みを許容する歪み限界の観点から表現される。歪みベースの設計に対する一般的な歪みの大きさは、通常、0.5%を超える全体塑性歪みとして定義される。全体塑性歪みは、構造体の溶接部のごく近傍の歪みの問題定義を避けるためには十分に大きい、ベース材料の長さに沿って(問題となっている溶接(単数または複数)をまたいで)測定される歪みによって定義される。たとえば、油パイプラインまたはガスパイプラインでは、全体塑性歪みを定義するためには他の同様の定義が使用されるかもしれないが、歪みベースの設計目的のための全体塑性歪みは、長さで約二つのパイプ直径であるパイプラインの切断面に関連して定義することができる。
【0006】
欠陥が存在する場合を含んだ、鋼および溶接の荷重を支持する能力の実際の測定は、英国ケンブリッジの溶接研究所で長年働いたA.A.Wellsによって、19世紀半ばに開発された方法である切欠き引張試験を使用して実施することができる。切欠き引張試験は、応力ベースの設計で使用される鋼および溶接の耐破壊性を評価するために広く使用されてきた。平たい構造用鋼プレートのための試験として最初は設計されたが、1990年代までに、この試験の関連バージョンが、大きな直径を持つ鋼パイプから切断された試験片などの曲げられた部分のために開発された。該試験のこのバージョンは、一般に曲げ切欠き引張試験(CWPT)と称する。歪みベースの設計に関しては、パイプ材料またはパイプ中のガース溶接の許容歪みの実際の測定は、CWPTを用いてしばしば行われる。この試験は全体塑性許容歪み測定として使用することができる。
【0007】
図1に示すように、CWPT試験片12はパイプガース溶接10から切断してもよい。一般に、ノッチ14などの表面破損欠陥は、溶接金属部または熱影響部へと機械加工される。これらの欠陥は、それらのサイズ(たとえばそれらの深さおよび幅は、それぞれ3mm×50mmまたは3mm×50mmである)でしばしば言及される。全欠陥領域は実験者にとって便利であるときがある。たとえば、欠陥サイズが3×50mmである場合には、欠陥の領域は約150平方ミリメータ(mm2)である。関心のある欠陥領域は1000mm2を超えることはめったにない。この実施例では、CWPT試験片12のくびれ部分16の溶接長さは550mmであり、くびれ部分14の溶接長15は300mmである。肩領域とも呼ばれる広がった端17の幅は450mmであり、全長18は900mmである。矢印26で示される方向の引張り力で引っ張られる場合のCWPT試験片12の伸びを測定するために、CWPT試験片12には欠陥の両側の様々な位置19に線形可変変位トランスデューサ(LVDT)ゲージを一般に備える。歪みゲージなどの他の計測器またはLVDTゲージのための他の接続点も使用することができる。
【0008】
図2に示すように、CWPT試験片12に引っ張り破壊まで荷重が一旦かかると、試験から得られる出力はy軸22の引張荷重、および、LVDTからのデータを使用して測定されるx軸24の歪みのプロット20によって示される。応力に対する歪みなどのデータ出力の他の変形形態をプロットしてもよい。プロット20上のレスポンス23は構造用鋼の日常的な引張試験から得られる応力歪み曲線と似ている。レスポンス23には、一般的に約0.5%の歪みである弾性限界27まで広がる初期の線形部分26とその後に続くCWPT試験片12の塑性変形能を表現する非線形部分28が含まれる。最大荷重位置29のポイントにおいて得られる歪みは、許容歪み(たとえば全体塑性変形)の測定値としてしばしば使用される。大きな直径の炭素マンガンパイプ鋼では、一般的にCWPTによって測定される歪み許容は、降伏点の約0.3%から約0.5%の歪みよりいくぶん小さい値から約8%の歪みまでの範囲であってもよく、場合によっては10%の歪みまで、まれなケースでは約15%または20%の歪みまでの範囲である。歪み許容は、鋼および/またはガース溶接の品質および欠陥サイズに依存する。
【0009】
CWPTに対するいくつかの技法の詳細は以下の論文で提供される:R.M.Denys、「Wide Plate Testing of Weldments:Part1−Wide Plate Testing in Perspective、」Fatigue and Fracture Testing of Weldments、ASTM STP 1058、H.I.McHenryおよびJ.M.Potter、Eds、ASTM Philadelphia、1990、pp.160−174;R.M.Denys、「Wide−Plate Testing of Weldments: Part2−Wide Plate Evaluation of Notch Toughness、」FatigueおよびFracture Testing of Weldments、ASTM STP 1058、H.I.McHenryおよびJ.M.Potter、Eds、ASTM Philadelphia、1990、pp.175−203;R.M.Denys、「Wide−Plate Testing of Weldments:Part3−Heat Affected Zone Wide Plate Studies、」FatigueおよびFracture Testing of Weldments、ASTM STP 1058、H.I.McHenryおよびJ.M.Potter、Eds、ASTM Philadelphia、1990、pp.204−228;およびM.W.Hukle、A.M.Horn、D.S.Hoyt、J.B.LeBleu、「Girth Weld Qualification for High Strain Pipeline Applications」、Proc.of 24th Int’l Conf. on Offshore MechanicsおよびArctic Eng.、(OMAE2005)、June 12−17、Halkidiki、Greece。
【0010】
歪みベースの設計および歪みベースの設計が提供する利点を採用するために、構造体の完全性および安全操業のための境界条件を検証するための広範囲な材料試験が利用される。フェライト鋼溶接要素の従来の歪みベースの設計では、性能を決定する主な特性は、パイプ機械特性および溶接金属機械特性に加えて、パイプ降伏強度に対して溶接金属部が何パーセントか大きいこと(percent overmatch)であるということが実験的に決定されてきた。パイプ特性および溶接金属特性には、引張強度に対する降伏強度の比(YR)、均一伸び(最大荷重で発現する伸び)、靭性、および引き裂き抵抗が含まれる。低YR、高均一伸び、並びに、良好な靭性、および、引き裂き抵抗は歪みベースのロバスト設計にとって望まれる特性である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
残念ながら、フェライト溶接金属材料には、限界の引き裂き抵抗、破壊靭性、および、歪み硬化能がある。これらの材料が歪みベースの設計に使用されると、溶接の中の許容欠陥サイズおよび溶融境界部(fusion line)はこれらの特性によって著しく制限される。その上、フェライト溶接金属材料の使用には適切な溶接性能を提供するために精密な溶接パラメータ制御を伴う複雑な溶接検査および分析が含まれる。
【0012】
したがって、かなり大きな塑性歪みに適応できる溶接を生成し、より大きな溶接欠陥を許容し、溶接検査および確認を簡素化するフェライト構造用鋼のための接合方法に対する必要性がある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
(発明の概要)
本発明では、フェライト構造用鋼の要素間に弾力のある溶接接合部を生成ための手法を提供し、これによって溶接部は歪みベースの設計に役に立つ。歪みベースの設計は、予測される全体塑性歪みを稼働中に吸収することができる構造要素の設計に関する。本発明によって提供される溶接金属は、歪みベースの設計のために、従来のフェライト溶接よりも優れている。それらの溶接金属は大きい歪みを吸収することができ、補修をしないでより大きい溶接欠陥を受け入れることができ、一般的な建設プロジェクトの溶接検査および品質管理を簡素化することができる。本発明によって提供される溶接部は、ミクロ組織が公称オーステナイトである溶接材料を使用して製造される、歪みベース用途に固有のものである。耐食合金(CRA)溶接材料は、この溶接材料群を参照するために本発明において使用される名称である。この群には、これに限定されるものではないが、ニッケルベースの合金、ステンレス鋼、および二重のステンレス鋼、または同等物が含まれる。該材料の例には、限定されるものではないが、米国溶接学会(AWS)ENiCrMo−4、ENiCrMo−6、ENiCrMo−14、ENiMo−3、E310、E308、E316、E2209およびE2553、それらの派生物およびこれらの合金が含まれる。
【0014】
一つ以上の本発明の実施形態では、一般的なAPI(米国石油協会)パイプ仕様5Lパイプグレード(X52からX80まで、またはX52からX100まで、またはX52からX120までなど)のいずれもがCRA材料を用いて溶接することができる。結果として得られるガース溶接は、0.5%を超える全体塑性歪み、好ましくは1%を超える全体塑性歪み、一層好ましくは1.5%を超える全体塑性歪み、さらに一層好ましくは2%を超える全体塑性歪みに持ちこたえることができる。要求の厳しい用途では、CRA材料は4%を超える全体塑性歪みを実現するために利用することができる。パイプラインが持ちこたえることができる全体塑性歪みは、これは全体許容歪みと称してもよいが、ガース溶接およびパイプライン鋼の特性によって制限される。たとえば、ガース溶接によって結合した大きな直径の炭素マンガン鋼パイプを含むパイプラインの場合には、鋼パイプラインの全体許容歪みの実用的な上限を示す、一般的な全体歪み許容の範囲は、降伏点の約0.3%の歪みから約0.5%の歪み未満の値から、約8%の歪みまで、または場合によっては10%の歪みまで、または約15%または20%の歪みまでであってもよい。ガース溶接および結合材料に対する全体許容歪みは、実験データから決定されてもよいし、経験から予測されてもよい。さらに、フェライト構造用鋼要素およびCRA溶接材料の組み合わせによって、優れた機械特性の組み合わせを有することによって弾力のある歪み特性を達成する溶接を実現する。これらの特性には、引張強度に対する降伏強度の比が小さく、高均一伸び、および良好な靭性および引き裂き抵抗が含まれる。これらの溶接ではベース金属に比べて10%まで、または場合により20%まで、またはさらに場合によっては30%もの大きな値までにアンダーマッチ(undermatched)する降伏強度を生成することが状況次第で可能であるが、これらの特性の組み合わせによって、これらの溶接は高塑性歪みを達成することができる。歪みベースの設計が要求される大きな直径の油およびガス輸送パイプラインを組み立てる場合に使用される、ガース溶接部分を生成することに、これらの溶接は理想的に適している。
【0015】
多くの普通の溶接プロセスの何れも、CRA溶接材料を使用して溶接されるフェライトベース金属の組み合わせを、歪みベースの設計で使用される建造物に適用するために使用することができる。ベース金属を接合するための好適な溶接プロセスには、これに限定されるものではないが、シールドメタルアーク溶接(SMAW)、ガスメタルアーク溶接(GMAW)またはメタルイナートガス(MIG)溶接、ガスタングステンアーク溶接(GTAW)またはタングステンイナートガス(TIG)溶接、フラックス入りアーク溶接(FCAW)、サブマージアーク溶接(SAW)、ダブルサブマージアーク溶接(DSAW)、パルスガスメタルアーク溶接(PGMAW)、パルスガスタングステンアーク溶接(PGTAW)、レーザー溶接、電子ビーム溶接などまたはこれらの組み合わせが含まれる。
【0016】
別の実施形態では、肉厚12.5ミリメートル(mm)で外径(OD)24インチ(in)の寸法である二片のAPI5LグレードX70パイプが、溶接金属としてのENiCrMo−6を使用して溶接された。溶接はGTAWプロセスとSMAWプロセスとの組み合わせを使用して生成した。ガース溶接は、溶接金属または熱影響部のいずれかに3×50mmおよび4×50mmのノッチを設置したCWPTを用いて検査される。検査結果から、0.5%の塑性変形を超える、好ましくは1%の塑性変形を超える、一層好ましくは1.5%の塑性変形を超える、またはさらに一層好ましくは2%の塑性変形を超える全体塑性歪みに溶接部が耐えられることが実証された。要求の厳しい用途では、CRA材料は4%を超える歪みを実現するために利用することができる。ガース溶接および結合材料に対する全体塑性歪みも、最大の全体許容歪み、または、実験データまたは個人的な経験によって定義される他の特定の歪み限界によって制限されてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】図1はパイプガース溶接から取り出した典型的なCWPT試験片である。
【図2】図2は、CWPT試験片における引張荷重に対する歪みをプロットした典型的な図である。
【図3】図3は、本発明の一実施形態に従って接合される二片の金属の使用および溶接に関連する典型的なフローチャートである。
【図4】図4は、本発明の一実施形態に従った流体輸送システムの図である。
【図5】図5は、本発明の一実施形態に従った接合方法の概要を示す図である。
【図6】図6は、本発明の一実施形態に従ったガース溶接の横断面図である。
【図7】図7は、本発明の一実施形態に従ったもう一つのガース溶接の横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
(詳細な説明)
(概要および定義)
本発明の実施形態では、オーステナイト系溶接材料を使用した二つのフェライト金属を接合するために使用される方法および装置を提供する。
【0019】
主にフェライトミクロ組織を示す材料から製造されるパイプラインの管状部分の接合は、これに限定されないが、本発明の実施形態に従った技法が有利に使用される用途の特定の例である。しかしながら、当業者ならばさまざまな他の用途、たとえば、軸方向の大きな荷重および塑性歪みが予測される用途にも類似の技法が使用されてもよいことを理解するであろう。
【0020】
本明細書で使用する場合、歪みベースの設計という用語は、環境による荷重および運用中の荷重が適用される歪みの観点から定量化され、荷重の限界が所定量の塑性歪みの発生を許容する歪み限界の観点から表現されるような構造設計として参照される。
【0021】
本明細書で使用する場合、耐食合金(CRA)という用語は、通常、不利な物理的条件による劣化に耐えることができる金属を参照する。本明細書に記載されている使用に好適である種々のタイプのCRA溶接材料には、これらに限定されるものではないが、米国溶接学会(AWS)ENiCrMo−4、ENiCrMo−6、ENiCrMo−14、ENiMo−3、E310、E308、E316、E2209およびE2553、これらの派生物およびこれらの合金が含有される。CRA材料はステンレス鋼合金を含有してもよい。二重のステンレス鋼金属は二相フェライト/オーステナイトミクロ組織を含むが、CRAおよびステンレス鋼金属は主にオーステナイトミクロ組織を含む。任意の特定の合金用にそれぞれの元素の特定の組成または割合が所与の用途に対する所望の特性に基づいて選択されてもよい。
【0022】
本明細書で使用する場合、フェライト金属という用語は、通常、主として一つ以上の以下の成分:フェライト、パーライト、ベイナイト、マルテンサイトまたは同様の派生物から成る鉄ベースの合金を意味する。本明細書に記載されている使用に好適な種々のタイプのフェライト金属は、これに限定されるものではないが、炭素鋼、合金鋼、構造用鋼、鋳鉄、独自の鉄ベースの合金、これらの派生物およびこれらの合金を含有する。フェライト金属は、これに限定されるものではないが、管状形状、パイプ、バー、ロッド、ビーム、プレートまたはホイルを含む任意の構造形状でよい。フェライト鋼は、これに限定されるものではないが、パイプライン、圧力容器、海洋構造物、建築物、乗り物、船舶、橋、塔および他の構造物を含む多くの用途で使用されてもよい。
【0023】
本明細書で使用する場合、軸方向の荷重は、通常、溶接部または接合部に対して直角方向の荷重を意味する。該軸方向の荷重の例にはパイプラインの縦軸に平行な荷重があり、より具体的には、パイプライン中の円周溶接またはガース溶接に対して直角方向の荷重がある。
【0024】
本明細書に記載される実施形態では、鋼構造および鋼パイプラインを溶接するために、CRA材料、ステンレス鋼および二重のステンレス鋼溶接材料の使用を提供する。これらの構造およびパイプラインは主にフェライト材料から製造されてもよく、軸方向の大きな荷重および塑性歪みを受けてもよい。二重のステンレス鋼溶接金属は二相フェライト/オーステナイトミクロ組織を示してもよく、使用されるCRAおよびステンレス鋼溶接金属は主にオーステナイトミクロ組織を有してもよい。これらの溶接金属には、これに限定されるものではないが、米国溶接学会(AWS)ENiCrMo−4、ENiCrMo−6、ENiCrMo−14、ENiMo−3、E310、E308、E316、E2209およびE2553が含有されてもよい。これらのCRA溶接材料は引張強度に対する降伏強度の比(降伏比、YRと称する)が小さく、約0.75未満、好ましくは約0.65未満、一層好ましくは0.60未満、およびさらに一層好ましくは約0.55未満である。フェライトパイプライン鋼のYRは製造プロセス、グレード、化学的性質などに応じて変化する。時効状態(すなわち、耐食性のための加熱コーティング後)の炭素または低合金鋼パイプの一般的なYRは、およそ次の通りである:API5LグレードX52は0.70よりも大きい;グレードX60は0.80よりも大きい;グレードX70は0.85よりも大きい;グレードX80は0.90よりも大きい;グレードX100は0.95よりも大きい。フェライト溶接金属は、それらの降伏強度に基づいて、同様のYR範囲を持つが、しかしながらそのYRは、時効パイプのYRよりもいくらか小さい傾向がある。
【0025】
本明細書で使用する場合、単層フェライト材料という用語は鉄ベースの合金を意味する。単層フェライト材料は、鋼パイプなどの均一な材料を含有する管状物を含んでもよい。
【0026】
本明細書で使用する場合、クラッド材料という用語は、CRA材料の層を含む鉄ベースの合金を意味する。クラッド材料は、ベースパイプの内側または外側上に比較的薄い層のオーステナイト系クラッド材料を含むフェライトを主とする鋼パイプなどのクラッド管状物を含んでもよい。
【0027】
(典型的な実施形態)
まず、図3は、本発明の一実施形態に従った二片の金属を使用した溶接に関する、参照番号30で参照される、典型的なフローチャートである。図3において、歪みベースの設計は、流体輸送システムまたはパイプラインの中を通る二つの位置の間の流体の輸送に利用され形成されてもよい。ブロック32では、特定の歪みベースの設計が特定の位置に対して決定される。本出願は、二つ以上の位置間で、炭化水素または他の同様の流体等の流体を輸送するために使用されるパイプラインの部分を含んでもよい。パイプラインは、さらに以下に論じる管材または管状部材で製造されてもよい。歪みベースの設計ではパイプラインが受けることが予測される範囲の歪みを含んでもよい。予測される範囲の歪みは、パイプラインモデルまたは経験に基づいてもよい。すなわち、歪みベースの設計では、ある用途で予測される環境要因に基づく変形または歪みを含んでもよい。
【0028】
ブロック34では、管材および溶接材料は特定の歪みベースの設計に基づいて選択されてもよい。管材は、主にフェライト特性を有する材料(例えば均一な鋼パイプなどの単層フェライト材料)またはクラッド材料(例えばベースパイプの内側または外側上に比較的薄い層のオーステナイト系クラッド材料を含むフェライトを主とする鋼パイプ)を含有してもよい。さらに、溶接材料には歪みベースの設計に基づく溶接接合部を形成するために、オーステナイト特性を主に含んでもよい。このように、溶接接合部は、かなり大きな塑性歪みに適応し、大きな溶接欠陥を許容し、溶接検査および確認を簡素化するように構成されてもよい。特に、溶接接合部は、0.5%を超えるが溶接接合部の歪み限界未満の全体塑性歪みに持ちこたえるように構成されてもよい。さらに、150mm2を超えるが、その使用目的に不適当な溶接接合部となる、溶接欠陥に満たない欠陥領域を含む溶接欠陥が存在する場合にも、溶接接合部は全体塑性歪みに持ちこたえるように構成されることができる。管材および溶接材料に要求される全体塑性歪みに持ちこたえる能力は物理試験によって決定されてもよく、又は分析的方法または過去の経験を使用して評価されてもよい。
【0029】
ブロック36では、管材は溶接接合部で接合してもよい。溶接接合部を形成するこれらの管材部分の接合について、さらに以下の図4から図7において論じる。次に、ブロック38では、接合した管材は特定の用途に使用されてもよい。本出願は、特定の環境内での第1の位置から第2の位置への流体の輸送を含んでもよい。
【0030】
図4は、様々な管状部分110が溶接接合部120で接合される、流体輸送システム100を図解する。流体輸送システムは、地面の下に埋設され、または地表につるされても適するように様々な大きさおよび構成であってもよい。流体輸送システムは、さまざまな用途で、たとえば炭化水素輸送のために使用されるパイプラインとして使用されてもよい。
【0031】
溶接接合部120は、接合部120で、ガース溶接130とも呼ばれる円周溶接で接合されてもよい。一実施形態では、管状部分110は主にフェライト特性を有する炭素鋼材料を含む。その例には、米国石油協会(API)の様々なグレード、API5LX52、API5LX56、API5LX60、API5LX65、API5LX70、API5LX80、X100、好適なISOグレード、好適なCSAグレード、好適なEUグレードまたは同等物またはこれらの組み合わせなどが含まれる。ガース溶接130には、CRA材料、主にオーステナイトミクロ組織を含むステンレス鋼、および/または二相フェライト/オーステナイトミクロ組織を含む二重のステンレス鋼が含まれる。
【0032】
図5は、パイプラインの二つ以上の管状部分の接合方法200の一実施形態の概要を示す図である。方法200には、ブロック210に示すように、フェライトミクロ組織を主に有する二つの管材部分を提供することが含まれる。二つの管材部分は、図4の管状部分110と類似していてもよい。二つの管材部分の例は、API5LX52、API5LX56、API5LX60、API5LX65、API5LX70、API5LX80、X100、X120、ISOグレード、CSAグレード、EUグレードおよび/または任意のこれらの組み合わせであってもよい。たとえば、CSAグレードはグレード359、414、448、483、550、690、および827を含んでもよい。当然のことだが、上記のグレードと類似する他の好適なISOグレードおよびEUグレードが、特定の用途に利用されてもよい。ブロック220には、オーステナイト系材料を用いた溶接プロセスによって、それぞれの部分の一端が接合されることが含まれる。様々なオーステナイト系材料は、CRA材料である、二重のステンレス鋼を含むステンレス鋼合金であってもよい。
【0033】
管材部分の端が接合に好適でない場合にはブロック215に示すように、それぞれの管材部分の一端を接合用に準備するために、接合する前にすり合わせおよび/または予熱などの中間の加工を利用してもよい。たとえば、管状部分が四角形でない場合、または管状部分が四角形であっても意図される接合部分が曲がっている場合である。溶接に備えた所望の接触面および表面を形成するために、この加工には、管材の一端の切削、研削、切断およびそのたぐいの機械加工が含まれてもよい。所望の表面は、溶接を容易にするために斜めになっている/面取りされていてもよい。CRA溶接材料で溶接する場合には、CRA溶接はフェライト溶接よりも不純物に対して敏感なので、接合部の清浄度を確保するべきである。
【0034】
二つの管材部分を接合するための好適な溶接プロセスには、これに限定されるものではないが、シールドメタルアーク溶接(SMAW)、ガスメタルアーク溶接(GMAW)またはメタルイナートガス(MIG)溶接、ガスタングステンアーク溶接(GTAW)またはタングステンイナートガス(TIG)溶接、フラックス入りアーク溶接(FCAW)、サブマージアーク溶接(SAW)、ダブルサブマージアーク溶接(DSAW)、パルスガスメタルアーク溶接(PGMAW)、パルスガスタングステンアーク溶接(PGTAW)、レーザー溶接、電子ビーム溶接、および同等のものまたはこれらの組み合わせが含まれる。好適な溶接材料にはAWSENiCrMo−4、ENiCrMo−6、ENiCrMo−14、ENiMo−3、E310、E308、E316、E2209、E2553、またはこれらの組み合わせまたは他のCRA材料が含まれる。
【0035】
図6は、たとえば図5の方法200に従って製造されてもよい、二つの管状部分110間のガース溶接130の一実施形態の横断面図である。この実施形態では、管状部分110はフェライトミクロ組織を主に有する炭素鋼材料である。ガース溶接130には、完全溶け込み接合を提供するために、ルート溶接310、一つ以上のホットパスまたはフィラ−パス320、およびキャップ溶接330が含まれる。あるいは、ガース溶接130は、キャップ溶接330を形成するための複数のフィラ−パス320がその後に続くルート溶接310を使用して形成されてもよく、このようにして完全溶け込み接合を提供する。一実施形態では、ルート溶接310にはGTAW溶接プロセスに適用されるCRA材料が含まれ、その後のフィラ−パス320およびキャップ溶接330にはSMAWプロセスに適用されるCRA材料が含まれる。図6では、管状部分110の溶融界面における、または、その近辺における熱影響部(HAZ)340およびガース溶接130をも示す。
【0036】
図7はガース溶接130のもう一つの実施形態の横断面図であり、欠陥400を除いて図6に示される実施形態と類似している。この実施形態では、キャップ溶接330またはルート溶接310においてまたはその近傍においてかを問わず、任意の露出した溶融界面であってもよい溶接止端410も示し、もう一つの溶接パスによってその後に覆われてもよい任意の溶接止端410を含む。フィラ−パス320とキャップ溶接330との間にある欠陥400を一例として示したが、欠陥400は、ガース溶接130の中または隣接する任意の位置にあってもよい。欠陥400は、ピンホール、溶接止端410クラック、オフシーム溶接(off seam weld)、アンダーカッティング、不完全溶融、ポロシティ、スラグ巻き込み、他の切れ目、または、これらの組み合わせであってもよい。
【0037】
欠陥400は、ガース溶接130の完了後に、X線試験、超音波試験(UT)、目視検査、磁粉探傷試験、渦流探傷試験、および/または染色浸透探傷試験などの非破壊試験(NDT)手順によって発見してもよい。欠陥400がサイズ、深さ、および/または溶接の割合などの所定の大きさを超える場合には、欠陥を補修しなければならないかもしれない。予め定められた大きさは、一般に、構造の詳細設計中に設定され、靭性、溶接強度オーバマッチ、降伏比、パイプの肉厚、および印加歪みなどの溶接およびパイプ特性によってしばしば異なる。欠陥位置(単数または複数)における削り取りおよび/または研削などによってガース溶接130が掘られるので、溶接欠陥の補修によって労務費が増加する。掘られた部分は次に再溶接され、補修およびガース溶接130を保証するために第2回目のNDTが遂行される。欠陥の補修および第2のNDT手順のコストによって溶接を製作するコストがより高くなり、プロジェクトの採算性が悪化する。
【0038】
本明細書に記載される実施形態は、パイプラインの管状部分の接合に一般に使用されるフェライト材料を置き換えるように設計されている。フェライト材料のコストに比べてCRA材料では材料コストが増加してもよいが、より詳細に以下に記述されるように、フェライト溶接部に比べてCRA溶接部はより大きい欠陥に適応できる。その結果、CRA溶接部中のより大きな欠陥(もし溶接部に存在するならば)の補修をする必要がないので、労務費は減少する。労務費の減少に加えて、第2のNDT手順を要求しなくともよい。さらに、許容歪みおよび補修割合は同一であるので、鋼および溶接手順に対するコストを削減するために薄いパイプ使用をしてもよい。
【0039】
(CRA材料と接合されたフェライト金属の試験)
本明細書に記載される技法に従ってもたらされる実際の溶接の最初の試験は、外形直径ODが24で肉厚が12.5mmのAPI5LグレードX70の管状物の二つの部分を使用して遂行された。該部分はCRA溶接材料を用いたガース溶接で接合された。AWSENiCrMo−6は、その材料特性(低YR、高均一伸び、高靭性および高引き裂き抵抗など)に基づいてCRA溶接材料として使用された。溶接プロセスには、ルート溶接のためのGTAWおよび隅肉溶接およびキャップ溶接のためのSMAWが含まれる。
【0040】
この実施例の試験結果によってCRA溶接金属の降伏強度はパイプの実際の降伏強度(79.8ksi)未満である事が示された。実際、塑性歪みを受けると、比較的弱い(降伏強度の観点から)CRA溶接加工物はパイプ(より低いYR)よりも硬化し、最終的にはパイプよりも強くなり、従って構造の完全性を維持することは、本発明の技法の意図された観点である。その上、CRA溶接金属の高靭性のために、塑性変形および加工硬化の間は破壊に耐えることができる。したがって、CRA溶接金属がパイプ降伏強度にアンダーマッチする場合であっても、その機械特性は歪みベースの用途には差し支えない。従来の炭素鋼溶接部と比べると、歪みベースの設計によるパイプライン溶接に対する本発明のアプローチによって溶接欠陥の許容範囲が増加し、パイプラインは所与の欠陥サイズに対して大きい塑性歪みに対応することが可能になる。下の表1中の最初の実施例に示すように、パイプ部分とCRAガース溶接部分との間の実際の降伏強度の差異によって約20%のアンダーマッチが発生した。これらの溶接が曲げ切欠き引張試験を受けた場合には、1.4%および4.8%のリモート(remote)塑性変形が測定された。これらの切欠きには、溶接中心線の寸法が4×50mmおよび3×50mmの表面破損が含まれた。言い換えれば、これらの欠陥はそれぞれが150mm2および200mm2の欠陥領域で示され、これらの最初のCWPTは−2℃で行われた。
【0041】
溶接金属としてENiCrMo−6を使用して、外径ODが24でパイプ肉厚が12.5mmのAPI5LグレードX70のサンプル管状物を接合させるために追加のCWPTが実行された。ENiCrMo−6ガース溶接は、ルート溶接に対するGTAWおよび隅肉溶接およびキャップ溶接のためのSMAWを使用して形成された。もう一度3×50mmおよび4×50mmのノッチが使用された。これらの欠陥は、溶接金属の何れかの中心にあるそれぞれのサンプルのルート側で、または欠陥の先端部が粗粒HAZ中の溶融境界部またはその近傍にあるように機械加工された。これらの試験結果は下の表1に示される。すべてのCWPTが純断面積(すなわち、欠陥を上回る材料の体積中)の塑性破壊によって失敗した。
【0042】
【表1】

【0043】
表2は表1で参照されたCRA溶接の全溶接金属の引張特性を示す。
【表2】

【0044】
これらのCRA溶接の許容歪みの性能は、同様のアンダーマッチレベルのフェライト材料が許容できる許容歪みよりもはるかに優れている。パイプと約16%から約20%のアンダーマッチが発生する溶接との間の実際の降伏強度は異なる。これらの結果は従来の炭素鋼材料を使用して発生したCWPTデータと比べた。同一のパイプグレードおよび試験片形状に対して、同一の試験片形状およびパイプグレードを使用した従来の結果では4×50mmの欠陥に対しては約0.5%の許容歪みを示し、3×50mmの欠陥に対しては約2.0%の許容歪みを示す。
【0045】
上記のデータに示されるように、ステンレス鋼および二重のステンレス鋼などのオーステナイト特性を有するおよびオーステナイト特性を主に有するCRA溶接金属を使用することで、フェライト特性を有する溶接に比べて、全体歪み(すなわち、パイプガース溶接許容歪み)が増加した。従って、本発明の溶接技法を使用することで、パイプラインガース溶接の歪み性能は非常によくなる。溶接のこの改良は、破壊靭性、引き裂き抵抗、および加工硬化能力を向上させた溶接金属を生成することで達成される。本明細書に記載される実施形態では、フェライト溶接よりも大きな溶接欠陥および/またはフェライト溶接よりも大きな塑性歪みに失敗なく適応できる。その上、ロバスト機械特性および破壊特性のために、CRA、ステンレス鋼または二重のステンレス鋼溶接材料の使用によって、溶接検査および確認を、減らしおよび/または簡易化させることができる。
【0046】
いくつかの用途では、CRAの低YR、高均一伸びおよび良好な靭性並びに引き裂き抵抗によって、いくつかの溶接確認標準および/またはパイプライン仕様を緩和することさえできる。したがって、溶接パラメータおよび/または試験の減少および簡素化によって全体的なコストを減らすことができる。凍結融解および土の液状化が起こるかもしれない寒冷な環境などの非常に厳しい環境および/または地震が発生する地域でもCRA溶接部および接合部は好都合である。CRA材料を使用する他の用途には、圧力容器の製造、および、軸方向の高荷重がよく起こるまたは予測される地域における他の構造物が含まれてもよい。
【0047】
本発明の実施形態を対象にして記述してきたが、続く特許請求の範囲によって決定される本発明の要旨および範囲から逸脱することなく他のおよびさらなる本発明の実施形態を考え出すことができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭化水素を輸送するためのパイプラインを構築する方法であって、
前記パイプラインに加わると予測される荷重に基づいて、前記パイプラインのための歪みベースの設計を行うステップと、
前記歪みベースの設計に基づいて、前記パイプラインの全体塑性歪みを予測するステップと、
主にフェライト特性を含む材料から製造される二つの管材部分を供給するステップと、
前記予測される全体塑性歪みに持ちこたえるように設計される溶接接合部を形成するために、主にオーステナイト特性を有する材料によって前記二つの管材部分を接合するステップと、
前記溶接接合部、および、炭化水素を輸送するための前記二つの管材部分を使用するステップとを含む方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法において、前記溶接接合部は、0.5%を超える全体塑性歪みに持ちこたえるように構成される方法。
【請求項3】
請求項1に記載の方法において、前記溶接接合部は全体塑性歪みに持ちこたえるように構成され、150mm2を超える欠陥領域を含む溶接欠陥が存在する方法。
【請求項4】
請求項1に記載の方法において、前記二つの管材部分および前記溶接接合部によって形成される流路の中を通して、炭化水素または他の流体を輸送するステップをさらに含む方法。
【請求項5】
請求項1に記載の方法において、前記接合には溶接プロセスが含まれる方法。
【請求項6】
請求項5に記載の方法において、前記溶接プロセスはシールドメタルアーク溶接、ガスメタルアーク溶接、ガスタングステンアーク溶接、フラックス入りアーク溶接、サブマージアーク溶接、ダブルサブマージアーク溶接、パルスガスメタルアーク溶接、パルスガスタングステンアーク溶接、レーザー溶接、電子ビーム溶接、またはこれらの任意の組み合わせからなる群から選択される方法。
【請求項7】
請求項1に記載の方法において、前記主にオーステナイト特性を有する材料は耐食合金(CRA)を含有する方法。
【請求項8】
請求項1に記載の方法において、前記主にオーステナイト特性を有する材料は、ENiCrMo−4、ENiCrMo−6、ENiCrMo−14、ENiMo−3、E310、E308、E316、E2209、E2553、またはこれらの任意の組み合わせからなる群から選択される材料を使用して作製される溶接材料を含む方法。
【請求項9】
請求項1に記載の方法において、前記二つの管材部分は、API5LグレードX52、X56、X60、X65、X70、X80、X100、X120およびこれらの任意の組み合わせからなる群から選択される材料を含む方法。
【請求項10】
請求項1に記載の方法において、最終的な接合をする前に二つの部分の一方の用意された表面上にCRA溶接材料の層をバターリングすることで溶接品質を高めるために、接合する前に前記二つの管材部分の一方の少なくとも一端を用意するステップをさらに含む方法。
【請求項11】
請求項1に記載の方法において、主にオーステナイト特性を有する材料によって前記二つの管材部分を接合する前に、さらに主にフェライト特性を有する材料によって前記二つの管材部分を事前に接合するステップを含む方法。
【請求項12】
請求項1に記載の方法において、前記二つの管材部分は、クラッド材料から形成される管状部材を含む方法。
【請求項13】
請求項1に記載の方法において、前記二つの管材部分は、単層フェライト材料から形成される管状部材を含む方法。
【請求項14】
管状部分間の溶接接合部を形成する方法であって、前記管状部分のそれぞれは主にフェライト特性を有し、引張強度に対する降伏強度の比が0.75未満である主にオーステナイト系溶接材料を使用する溶接プロセスを用いて、前記管状部分の端を接合するステップを含む方法。
【請求項15】
請求項14に記載の方法において、前記主にオーステナイト系溶接材料の前記降伏強度は、前記管状部分の前記降伏強度の少なくとも10%未満である方法。
【請求項16】
請求項14に記載の方法において、前記主にオーステナイト特性を有する材料は耐食合金を含有する方法。
【請求項17】
請求項14に記載の方法において、前記溶接プロセスはアーク溶接プロセスを含む方法。
【請求項18】
請求項14に記載の方法において、前記主にオーステナイト系溶接材料は、ENiCrMo−4、ENiCrMo−6、ENiCrMo−14、ENiMo−3、E310、E308、E316、E2209、E2553またはこれらの任意の組み合わせからなる群から選択される材料を使用して作製される溶接材料を含有する方法。
【請求項19】
請求項14に記載の方法において、溶接接合部のために使用される前記主にオーステナイト系溶接材料が歪みベースの設計に基づいて選択される方法。
【請求項20】
請求項14に記載の方法において、前記管状部分は、クラッド材料から形成される管状部分を含む方法。
【請求項21】
請求項14に記載の方法において、前記管状部分は、単層フェライト材料から形成される管状部分を含む方法。
【請求項22】
炭化水素または他の流体を輸送するために使用されるパイプラインの配置に好適なパイプ部分であって、主にフェライト特性を有する材料を含む二つの管状部材と、
主に溶接オーステナイト特性を有する溶接材料を使用して形成される前記二つの管状部材を接合する溶接接合部とを含み、
前記溶接接合部は全体塑性歪みに持ちこたえるように設計されるパイプ部分。
【請求項23】
請求項22に記載のパイプ部分において、前記溶接接合部のために使用される溶接材料は、歪みベースの設計に基づいて選択されるパイプ部分。
【請求項24】
請求項22に記載のパイプ部分において、前記管状部材には、クラッド材料から形成される管状部分が含まれるパイプ部分。
【請求項25】
請求項22に記載のパイプ部分において、前記管状部材には、単層フェライト材料から形成される管状部分が含まれるパイプ部分。
【請求項26】
請求項22に記載のパイプ部分において、溶接材料は引張強度に対する降伏強度の比が0.75未満であるパイプ部分。
【請求項27】
請求項22に記載のパイプ部分において、溶接材料は耐食合金を含有するパイプ部分。
【請求項28】
請求項22に記載のパイプ部分において、溶接材料は、ENiCrMo−4、ENiCrMo−6、ENiCrMo−14、ENiMo−3、E310、E308、E316、E2209、E2553およびこれらの任意の組み合わせからなる群から選択される材料を含有するパイプ部分。
【請求項29】
請求項22に記載のパイプ部分において、前記二つの管状部材は、API5LX52、API5LX56、API5LX60、API5LX65、API5LX70、X80、X100、X120およびこれらの任意の組み合わせからなる群から選択される材料を含有するパイプ部分。
【請求項30】
請求項22に記載のパイプ部分において、前記溶接接合部は、0.5%を超える全体塑性歪みに持ちこたえるように構成されるパイプ部分。
【請求項31】
請求項22に記載のパイプ部分において、前記溶接接合部は全体塑性歪みに持ちこたえるように構成され、150mm2を超える欠陥領域を含む溶接欠陥が存在するパイプ部分。
【請求項32】
炭化水素を輸送するためのパイプラインであって、主にフェライト特性を有する材料を含む複数の管状部分と、
主にオーステナイト系溶接材料を用いて形成される複数の管状部分の少なくともいくつかを接合する溶接接合部とを含み、
前記溶接接合部は、歪みベースの設計に基づいて、全体塑性歪みに持ちこたえるように構成されるパイプライン。
【請求項33】
請求項32に記載のパイプラインおいて、前記溶接接合部は0.5%を超える全体塑性歪みに持ちこたえるように構成されるパイプライン。
【請求項34】
請求項32に記載のパイプラインおいて、前記溶接接合部は全体塑性歪みに持ちこたえるように構成され、150mm2を超える欠陥領域を含む溶接欠陥が存在するパイプライン。
【請求項35】
請求項32に記載のパイプラインおいて、前記主にオーステナイト系溶接材料は耐食合金を含有するパイプライン。
【請求項36】
請求項32に記載のパイプラインおいて、前記溶接材料は、ENiCrMo−4、ENiCrMo−6、ENiCrMo−14、ENiMo−3、E310、E308、E316、E2209、E2553、およびこれらの任意の組み合わせからなる群から選択される溶接材料を含有するパイプライン。
【請求項37】
請求項32に記載のパイプラインおいて、前記主にオーステナイト系溶接材料は引張強度に対する降伏強度の比が0.75未満であるパイプライン。
【請求項38】
請求項32に記載のパイプラインおいて、前記複数の管状部分の少なくともいくつかはAPI5LX52、API5LX56、API5LX60、API5LX65、API5LX70、X80、X100、X120およびこれらの任意の組み合わせからなる群から選択される材料を含有するパイプライン。
【請求項39】
請求項32に記載のパイプラインおいて、前記管状部分には、クラッド材料から形成される管状部分が含まれるパイプライン。
【請求項40】
請求項32に記載のパイプラインおいて、前記管状部分には、単層フェライト材料から形成される管状部分が含まれるパイプライン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2010−519053(P2010−519053A)
【公表日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−550876(P2009−550876)
【出願日】平成20年1月31日(2008.1.31)
【国際出願番号】PCT/US2008/001409
【国際公開番号】WO2008/105990
【国際公開日】平成20年9月4日(2008.9.4)
【出願人】(500450727)エクソンモービル アップストリーム リサーチ カンパニー (46)
【Fターム(参考)】