説明

載置台構造及びプラズマ成膜装置

【課題】処理容器内の脱気処理を十分に行って高真空にできると共に、高温に耐え得る載置台構造を提供する。
【解決手段】被処理体Wに対して金属を含む薄膜を形成するために被処理体を載置する載置台構造32において、内部にチャック用電極34と加熱ヒータ36とが埋め込まれたセラミック製の載置台38と、載置台の周辺部の下面に接続された金属製のフランジ部100と、フランジ部とネジ126により接合されると共に内部に冷媒を流すための冷媒通路40が形成された金属製の基台部42と、フランジ部と基台部との間に介在された金属シール部材130とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体ウエハ等の被処理体に対して金属を含む薄膜をプラズマを用いて形成するプラズマ成膜装置及びこれに用いる載置台構造に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、半導体デバイスを製造するには、半導体ウエハに成膜処理やパターンエッチング処理等の各種の処理を繰り返し行って所望のデバイスを製造するが、半導体デバイスの更なる高集積化及び高微細化の要請より、線幅やホール径が益々微細化されている。そして、配線材料や埋め込み材料としては、従来は主としてアルミニウム合金が用いられていたが、最近は線幅やホール径が益々微細化されて、且つ動作速度の高速化が望まれていることからタングステン(W)や銅(Cu)等も用いられる傾向にある。
【0003】
また、上記Al、W、Cu等の金属材料を配線材料やコンタクトのためのホールの埋め込み材料として用いる場合には、例えばシリコン酸化膜(SiO )等の絶縁材料と上記金属材料との間で例えばシリコンの拡散が生ずることを防止したり、膜の密着性を向上させる目的で、上記絶縁層や下層の導電層との間の境界部分にバリヤ層を介在させることが行われており、このバリヤ層としてはTa膜、TaN膜、Ti膜、TiN膜等が広く知られている。そして、上記Cu、Ti、Ta等の金属を含む薄膜の形成は一般的にはプラズマ成膜装置を用いてプラズマスパッタ法により行われる(例えば特許文献1又は2)。
【0004】
このプラズマ成膜装置では、例えば真空引き可能になされた処理容器内に、チャック用電極と加熱ヒータを内蔵する載置台が設けられており、この載置台上に半導体ウエハを載置してこれをチャック用電極に印加した高電圧により発生する静電力で吸着保持し、この状態でプラズマにより金属ターゲットから発生した金属イオンを高周波のバイアス電力によって載置台側へ引き寄せることによって上記半導体ウエハ上に例えば金属の薄膜を形成するようになっている。そして、上記載置台には、上記した加熱ヒータと冷却ジャケットが設けられており、上記プラズマ側より半導体ウエハに対して供給される熱量の大小に応じて上記加熱ヒータと冷却ジャケットとをそれぞれ調整し、半導体ウエハが常に成膜に最適な温度を維持するようにコントロールされる。
【0005】
この場合、図10に示す従来の載置台構造のように、上記載置台2は上記冷却ジャケット4を有する金属製の基台部6と、この基台部6上に設置される薄いセラミックヒータ8とよりなり、このセラミックヒータ8内にチャック用電極10と加熱ヒータ12とが埋め込まれており、この上に半導体ウエハWを載置して静電力により吸着保持する。そして、上記セラミックヒータ8は、上記基台部6の上面に接着剤14により強固に取り付けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2001−250816号公報
【特許文献2】特開2007−214387号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、上述のような装置例にあっては、設計基準がそれ程厳しくない従来にあっては特に問題は生じなかったが、微細化及び高集積化がより進んで設計基準がより厳しくなると、形成される金属膜に対する品質乃至特性についてもより高いものが求められる。例えば成膜される金属膜に対しては、異種の金属や元素が混入する汚染を防止するために、処理容器内の表面や内部構造物の表面等に付着している不純物を、成膜処理に先立って処理容器内を高真空に真空引きすることによってアウトガスとして排出するようにしているが、上記接着剤14からは常にシリコン化合物であるシロキサン等の不純物ガスがアウトガスとして脱気していので、処理容器内を高真空状態にすることができず、従って、処理容器内を清浄な状態にすることが困難であった。
【0008】
また、上述したように薄膜の品質や特性を高めるために、例えば400℃程度の高いプロセス温度下で成膜処理を行うことも要請されるが、上記接着剤の耐熱温度はかなり低くて例えば80℃程度であるので、この接着剤を用いることができない、といった問題もあった。
【0009】
また、載置台の上面に、溶射によってチャック電極や加熱ヒータを埋め込むようにした載置台構造も知られてはいるが、この場合にも、この容射部分の耐熱温度はせいぜい80℃程度であり、上述したような高温に耐えることはできない。
【0010】
本発明は、以上のような問題点に着目し、これを有効に解決すべく創案されたものである。本発明の目的は、処理容器内の脱気処理を十分に行って高真空にできると共に、高温に耐え得る載置台構造及びプラズマ成膜装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
請求項1に係る発明は、被処理体に対して金属を含む薄膜を形成するために前記被処理体を載置する載置台構造において、内部にチャック用電極と加熱ヒータとが埋め込まれたセラミック製の載置台と、前記載置台の周辺部の下面に接続された金属製のフランジ部と、前記フランジ部とネジにより接合されると共に内部に冷媒を流すための冷媒通路が形成された金属製の基台部と、前記フランジ部と前記基台部との間に介在された金属シール部材と、を備えたことを特徴とする載置台構造である。
【0012】
このように、金属を含む薄膜を形成するための被処理体を載置する載置台構造を、内部にチャック用電極と加熱ヒータとが埋め込まれたセラミック製の載置台と、載置台の周辺部の下面に接続された金属製のフランジ部と、フランジ部とネジにより接合されると共に内部に冷媒を流すための冷媒通路が形成された金属製の基台部と、フランジ部と基台部との間に介在された金属シール部材とにより構成するようにしたので、処理容器内の脱気処理を十分に行って高真空にできると共に、高温に耐え得ることが可能となる。
【0013】
請求項2の発明は、請求項1の発明において、前記フランジ部は、前記載置台の下面より下方へ延在させて設けられていることを特徴とする。
請求項3の発明は、請求項2の発明において、前記基台部は、円板状のベース板と、前記ベース板上に設けられて内部に前記冷媒通路が形成されると共に前記フランジ部の内側に位置された冷却ジャケット部と、よりなることを特徴とする。
請求項4の発明は、請求項3の発明において、前記冷却ジャケット部は、水平方向に沿って上下に2分割された2つのブロック体よりなることを特徴とする。
【0014】
請求項5の発明は、請求項4の発明において、前記2つのブロック体の内、上方に位置する上ブロック体は、下方に位置する下ブロック体側から弾発部材により上方へ付勢されていることを特徴とする。
請求項6の発明は、請求項5の発明において、前記弾発部材には、断熱材料よりなる押し上げピンが介在されていることを特徴とする。
請求項7の発明は、請求項5又は6の発明において、前記上ブロック体と前記下ブロック体との対向面には、互いに嵌め合わされる凹凸部が形成されていることを特徴とする。
【0015】
請求項8の発明は、請求項7の発明において、前記上ブロック体と前記下ブロック体との対向面間の隙間は、熱伝達を緩和するための気体熱伝導緩和層として形成されていることを特徴とする。
請求項9の発明は、請求項1乃至8のいずれか一項に記載の前記載置台は、中空状になされた金属製の支柱により支持されていることを特徴とする。
請求項10の発明は、請求項9の発明において、前記支柱内には、前記冷媒通路に接続された冷媒管が設けられていることを特徴とする。
【0016】
請求項11の発明は、請求項9又は10の発明において、前記基台部の中央部には、前記中空状の支柱内に連通される貫通孔が形成されていることを特徴とする。
請求項12の発明は、請求項11の発明において、前記支柱内及び貫通孔内には、前記チャック用電極に接続される電極ライン、前記加熱ヒータに接続される給電ライン、前記載置台の温度を測定する熱電対ライン及び前記載置台の上面と前記被処理体の下面との間に気体を供給する裏面ガスラインの内のいずれか1以上のラインが挿通させて設けられていることを特徴とする。
【0017】
請求項13の発明は、請求項12の発明において、前記電極ラインは、導電性材料である金属パイプよりなり、前記金属パイプは前記裏面ガスラインとして兼用されていることを特徴とする。
請求項14の発明は、請求項12又は13の発明において、前記載置台の下面の中央部には、絶縁材料よりなる中空状のキャップ部が接合されており、前記キャップ部内に前記電極ラインの上端部が挿通されていると共に前記キャップ部の外側に前記給電ラインの上端部及び前記熱電対ラインの上端部が位置されていることを特徴とする。
【0018】
請求項15に係る発明は、被処理体に対して金属を含む薄膜を形成するプラズマ成膜装置において、真空引き可能になされた処理容器と、被処理体を載置するため請求項1乃至14のいずれか一項に記載された載置台構造と、前記処理容器内へ所定のガスを導入するガス導入手段と、前記処理容器内へプラズマを発生させるためのプラズマ発生源と、前記金属を含む金属ターゲットと、前記金属ターゲットへ前記ガスのイオンを引きつけるための電圧を供給するターゲット電源と、前記載置台構造のチャック電極に対してバイアス電力を供給するバイアス電源と、前記載置台構造のチャック電極に対してチャック用の電圧を印加するチャック用電源と、を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
本発明に係る載置台構造及びプラズマ処理装置によれば、次にように優れた作用効果を発揮することができる。
金属を含む薄膜を形成するための被処理体を載置する載置台構造を、内部にチャック用電極と加熱ヒータとが埋め込まれたセラミック製の載置台と、載置台の周辺部の下面に接続された金属製のフランジ部と、フランジ部とネジにより接合されると共に内部に冷媒を流すための冷媒通路が形成された金属製の基台部と、フランジ部と基台部との間に介在された金属シール部材とにより構成するようにしたので、処理容器内の脱気処理を十分に行って高真空にできると共に、高温に耐え得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の載置台構造を有するプラズマ成膜装置の一例を示す断面図である。
【図2】載置台構造の第1実施例の主要部を示す拡大断面図である。
【図3】載置台構造の第1実施例の主要部を示す組立分解図である。
【図4】図3中のA部を示す部分断面図である。
【図5】載置台の凹凸部の断面形状の変形例を示す図である。
【図6】載置台構造の載置台の加熱後の経過時間と温度との関係を示すグラフである。
【図7】本発明の載置台構造の第2実施例の主要部を示す拡大断面図である。
【図8】本発明の載置台構造の第3実施例の主要部を示す拡大断面図である。
【図9】沿面放電の電圧と沿面放電の距離との関係を示すグラフである。
【図10】従来の載置台構造を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下に、本発明に係る載置台構造及びプラズマ成膜装置の一実施態様を添付図面に基づいて詳述する。
図1は本発明の載置台構造を有するプラズマ成膜装置の一例を示す断面図、図2は載置台構造の第1実施例の主要部を示す拡大断面図、図3は載置台構造の第1実施例の主要部を示す組立分解図、図4は図3中のA部を示す部分断面図である。ここではプラズマ成膜装置としてICP(Inductively Coupled Plasma)型プラズマスパッタ装置を例にとって説明する。
【0022】
まず、このプラズマ成膜装置20は、図1に示すように例えばアルミニウム等により筒体状に成形された処理容器22を有している。この処理容器22は接地され、この底部24には排気口26が設けられて、圧力調整を行うスロットルバルブ28を介して真空ポンプ30により真空引き可能になされている。
【0023】
この処理容器22内には、その上に被処理体としての半導体ウエハWを載置するために本発明に係る載置台構造32が設けられる。この載置台構造32は、内部にチャック用電極34と加熱ヒータ36とが埋め込まれたセラミック製の載置台38と、この載置台38を支持して内部に冷媒を流すための冷媒通路40が形成された金属製の基台部42とにより主に構成されている。この載置台構造32の詳細については後述する。
【0024】
この基台部42は、この下面の中心部より下方へ延びる中空状になされた支柱44により支持されており、この支柱44の下部は、上記容器底部24を貫通している。この支柱44は金属、例えばステンレススチール、アルミニウム、或いはアルミニウム合金等により形成されている。そして、この支柱44は、図示しない昇降機構により上下移動可能になされており、上記載置台38自体を昇降できるようにしている。上記支柱44を囲むようにして伸縮可能になされた蛇腹状の金属ベローズ46が設けられており、この金属ベローズ46は、その上端が上記基台部42の下面に気密に接合され、また下端が上記容器底部24の上面に気密に接合されており、処理容器22内の気密性を維持しつつ上記載置台構造32の全体の昇降移動を許容できるようになっている。
【0025】
また容器底部24には、これより上方に向けて例えば3本(図示例では2本のみ記す)の支持ピン48が起立させて設けられており、また、この支持ピン48に対応させて上記載置台構造32には上下動可能になされたリフタピン50が設けられている。従って、上記載置台構造32を降下させた際に、上記支持ピン48によりリフタピン50を押し上げてその上端を載置台38の上面より上方へ突出させ、このリフタピン50の上端部で半導体ウエハWを受けて、この半導体ウエハWを外部より侵入する搬送アーム(図示せず)との間で移載ができるようになっている。このため、処理容器22の下部側壁には、搬出入口52が設けられると共にこの搬出入口52には、搬送アームを侵入させるために開閉可能になされたゲートバルブ54が設けられており、このゲートバルブ54の反対側には、例えば真空になされた搬送室55が連結されている。
【0026】
また上記載置台38に設けた上記チャック用電極34には、支柱44内に挿通された電極ライン56を介して高圧直流のチャック用電源58及び例えば13.56MHzの高周波を発生する高周波電源よりなるバイアス電源60がそれぞれ接続されており、半導体ウエハWを静電力により吸着保持すると共に、上記載置台38に対してイオン引き込み用の所定のバイアス電力を印加できるようになっている。ここでは上記電極ライン56は、導電性材料よりなる金属パイプ、例えばステンレススチール製パイプにより構成されている。
【0027】
また、載置台38に設けた加熱ヒータ36には、支柱44内に挿通された給電ライン62の一端が接続され、この給電ライン62の他端は供給電力が制御可能になされたヒータ電源64に接続されている。また、上記基台部42の冷媒通路40には、上記支柱44内に挿通された2本の冷媒管66A、66Bが入口側と出力側とにそれぞれ接続されており、上記冷媒通路40に冷媒、例えばガルデン(登録商標)をコントロールしつつ流すことができるようになっている。
【0028】
また、上記金属パイプよりなる電極ライン56は、載置台38の上面と半導体ウエハWの下面との間に伝熱性の気体を供給する裏面ガスライン68と兼用されており、この電極ライン56の中に流量制御されたガス(気体)を、バックサイドガスとして流すことができるようになっている。このガスとしては、例えばAr等の希ガスを用いることができる。尚、この裏面ガスライン68を電極ライン56とは別体で設けるようにしてもよい。更に、この支柱44内には、載置台38の温度を測定する熱電対ライン70が挿通されている。
【0029】
一方、上記処理容器22の天井部には、例えば酸化アルミニウム等の誘電体よりなる高周波に対して透過性のある透過板72がOリング等のシール部材74を介して気密に設けられている。そして、この透過板72の上部に、処理容器22内の処理空間Sに例えばプラズマ励起用ガスとしてのArガスをプラズマ化してプラズマを発生するためのプラズマ発生源76が設けられる。
【0030】
尚、このプラズマ励起用ガスとして、Arに代えて他の不活性ガス、例えばHe、Ne等の希ガスを用いてもよい。具体的には、上記プラズマ発生源76は、上記透過板72に対応させて設けた誘導コイル部78を有しており、この誘導コイル部78には、プラズマ発生用の例えば13.56MHzの高周波電源80が接続されて、上記透過板72を介して処理空間Sに高周波を導入できるようになっている。
【0031】
また上記透過板72の直下には、導入される高周波を拡散させる例えばアルミニウムよりなるバッフルプレート82が設けられる。そして、このバッフルプレート82の下部には、上記処理空間Sの上部側方を囲むようにして例えば断面が内側に向けて傾斜されて環状(截頭円錐殻状)になされた金属ターゲット84が設けられており、この金属ターゲット84にはArイオンを引きつけるための電圧を供給するターゲット用の可変になされた直流電源よりなるターゲット用電源86が接続されている。尚、この直流電源に代えて交流電源を用いてもよい。
【0032】
また、金属ターゲット84の外周側には、これに磁界を付与するための磁石88が設けられている。ここでは金属ターゲット84として高融点金属である例えばTi(チタン)が用いられ、このTiはプラズマ中のArイオンにより金属原子、或いは金属原子団としてスパッタされると共に、プラズマ中を通過する際に多くはイオン化される。尚、上記金属ターゲット84としては、Ti、Zr(ジルコニウム)、Hf(ハフニウム)、Nb(ニオブ)、Mn(マンガン)、Ta(タンタル)よりなる群より選択される1の材料を用いることができる。
【0033】
またこの金属ターゲット84の下部には、上記処理空間Sを囲むようにして例えばアルミニウムよりなる円筒状の保護カバー90が設けられており、この保護カバー90は接地されると共に、この下部は内側へ屈曲されて上記載置台38の側部近傍に位置されている。また処理容器22の底部24には、この処理容器22内へ必要とされる所定のガスを導入するガス導入手段91が設けられる。具体的には、このガス導入手段91は、ガス導入口92を有し、このガス導入口92からは、プラズマ励起用ガスとして例えばArガスや他の必要なガス例えばN ガス等が、ガス流量制御器、バルブ等よりなるガス制御部94を通して供給される。
【0034】
ここでプラズマ成膜装置20の各構成部は、例えばコンピュータ等よりなる装置制御部96に接続されて制御される構成となっている。具体的には装置制御部96は、バイアス電源60、プラズマ発生用の高周波電源80、可変直流電源よりなるターゲット用電源86、ガス制御部94、スロットルバルブ28、真空ポンプ30等の動作を制御するようになっている。そして、上記装置制御部96は、上記制御に必要なコンピュータに読み取り可能なプログラムを記憶する記憶媒体98を有している。この記憶媒体98は、フレキシブルディスク、CD(Compact Disc)、ハードディスク、フラッシュメモリ或いはDVD等よりなる。
【0035】
次に、本発明の載置台構造32について詳述する。前述したように、この載置台構造32は、セラミック製の載置台38と、これを上面側で支持する金属製の基台部42とを主に有している。図2及び図3にも示すように、上記載置台38は全体が薄い円板状のセラミック材により形成され、その内部の上側に上記チャック用電極34が埋め込まれ、その下部に上記加熱ヒータ36が埋め込まれており、共に載置台38の全面に亘って形成されている。このセラミック材としては、AlN、Al 、SiC等を用いることができる。
【0036】
そして、この載置台38の周辺部の下面には金属製のフランジ部100が接続されている。このフランジ部100は、上記下面より下方へ延在されており、このフランジ部100は、円形のリング状に形成されたフランジ本体100Aと、このフランジ本体100Aの内周側に接続される高さの低い円筒状の接続リング100Bとにより構成されている。また、このフランジ本体100Aと載置台38の周辺部との間には、吸熱性を高めるために黒アルマイト処理されたアルミニウム材料の円形リング状のプレート101が挿入されている。この円形リング状のプレート101は、周方向に沿って所定の長さで複数、例えば3分割されており、フランジ部100にネジ(図示せず)により固定されている。この場合、このプレート101と載置台38との間に僅かな隙間が設けられている。尚、上記分割数は3つに限定されず、また一体形状でもよい。そして、図3中のA部を拡大して記す図4にも示すように、上記接続リング100Bの上端部が、上記載置台38の周辺部の下面に、例えばろう付け材102により接続固定されている。またこの接続リング100Bの下端部と上記フランジ本体100Aの内周端とは例えば溶接材104により接続固定されていると共に、その外周端は上記載置台38の外周端より半径方向外方へ位置するように長く設定されている。
【0037】
従って、上記載置台38と上記フランジ部100とは一体的に接続固定されていることになる。ここで上記フランジ本体100Aの材料は、金属として例えばステンレススチール、アルミニウム、アルミニウム合金等が用いられ、上記接続リング100Bの材料は金属として例えばコバール(登録商標)を用いることができる。
【0038】
そして、上記載置台38及びフランジ本体100Aの周辺部には、前記リフタピン50を挿通するためのリフタピン孔106がそれぞれ形成されると共に、フランジ本体100Aの更に外周側にはネジ孔107が形成されている。また、フランジ本体100Aの下面の内周側には、その周方向に沿ってリング状にシール溝108が形成されている。
【0039】
また載置台38の中央部においては、上下方向に貫通させてガス孔110が形成されており、このガス孔110に対応させて、載置台38の下面には前記金属パイプよりなる電極ライン56の上端部が例えばろう付けにより接続され、バックサイドガスを上記ガス孔110より放出できるようになっている。そして、この電極ライン56の上端部からは接続端子112が分岐させて設けられると共に、この接続端子112の上端は上記チャック用電極34に接続されており、上記チャック用電極34にバイアス電圧とチャック用の直流高電圧を必要に応じて印加できるようになっている。
【0040】
また、この載置台38の中央部の下面においては、上記給電ライン62の上端が接続端子114を介して上記加熱ヒータ36に接続されると共に、この下面に前記熱電対ライン70の上端部である熱電対の測温接点116が取り付けられている。尚、上記給電ライン62は、図示例では1本しか記載していないが、実際には電気を流すために複数本設けられている。
【0041】
また、上記載置台38の下方に取り付けられる上記基台部42は、金属製の円板状のベース板118と、このベース板118の上に設けられる円板状の冷却ジャケット部120とにより主に構成されており、これらのベース板118と冷却ジャケット部120とは図示しないボルトにより一体的に接続固定されている。上記ベース板118及び冷却ジャケット部120を構成する金属としては、ステンレススチール、アルミニウム或いはアルミニウム合金等を用いることができる。
【0042】
上記冷却ジャケット部120の直径は、ベース板118の直径よりも少し小さく設定され、且つ上記フランジ部100の内側に密接して納まるような大きさに設定されている。また、この冷却ジャケット部120の厚さは、これらを組み付けた時に上記載置台38の下面に略接することができるような厚さに設定されている。
【0043】
上記ベース板118の中央部の下面には、上記中空状の支柱44及びこれを囲むベローズ46の各上端部がそれぞれ溶接等により気密に接合されている。更に、このベース板118及び冷却ジャケット部120の中央部には、上記各ライン56、62、70を挿通するための貫通孔122が上記中空状の支柱44内に連通させて形成されている。
【0044】
また、ベース板118の周辺部には、前記リフタピン50が上下方向へ出没可能に設けられると共に、このリフタピン50の外周側には上記フランジ本体100Aのネジ孔107に連通するネジ穴124が形成されており、ネジ126により上記フランジ本体110Aとベース板118とを接続固定して一体的に組み付けることができるようになっている。このネジ126は、フランジ本体100Aの周方向に沿って例えば15本程度設けられている。そして、上記リフタピン50の内周側には、上記フランジ本体100Aのシール溝108に対向するようにしてシール溝128が周方向に沿ってリング状に設けられている。そして、このシール溝108、128に沿って本発明の特徴とするリング状の金属シール部材130が嵌装されており、上記フランジ本体100Aとベース板118との間を気密にシールできるようになっている。
【0045】
このようにフランジ部100と基台部38の間に介在された金属シール部材130により、上記支柱44内が大気圧になされても、高温に耐え且つ高真空に耐え得るシール性を実現することが可能となる。この金属シール部材130としては、例えばアルミニウムの被覆をもったステンレススチール製のメタルシールを用いることができる。
【0046】
また上記冷却ジャケット部120には、前述したように、冷媒通路40がその全面に亘って形成されており、この冷媒通路40の入口及び出口には、支柱44内を挿通された前記冷媒管66A、66Bがそれぞれ接続されて冷却用の冷媒を流すようになっている。そして、この冷却ジャケット部120は、水平方向に沿って上下に2分割されて2つのブロック体、すなわち上ブロック体132Aと下ブロック体132Bとに分けられており、下ブロック体132Bに上記冷却通路40が設けられている。
【0047】
ここで上記冷却ジャケット部120の分割面、すなわち上ブロック体132Aと下ブロック体132Bの両対向面には、互いに遊嵌状態で嵌め合わされる凹凸部134A、134Bがその周方向に沿って例えば同心円状に形成されており、その伝熱面積(対向面積)が大きくなるように設計されている。尚、これらの凹凸部134A、134Bは同心円状でなく、例えば直線状に並列させて設けるようにしてもよいし、その配列方向は特に限定されない。またここでは上記凹凸部134A、134Bは断面方形状に形成されているが、これに限定されず、この凹凸部134A、134Bの断面形状を図5(A)に示すように断面三角形のジグザグ形状や図5(B)に示すようにサイン曲線のような蛇行形状としてもよく、いずれにしても伝達面積を広くし得るならば、その断面形状は問わない。
【0048】
そして、上記下ブロック体132Bの上面の周辺部にはバネ凹部136が形成されている。このバネ凹部136は、下ブロック体132Bの周方向に沿って複数個、例えば4個程度等間隔で設けられている。そして、各バネ凹部136内には弾発部材として例えばコイルバネ138が収容されると共に、このコイルバネ138には押し上げピン140が嵌装されており、この押し上げピン140により上ブロック体132Aを上方へ付勢して押し上げ、この上ブロック体132Aの上面を上記載置台38の下面へ密接状態で接触させ得るようになっている。尚、上記弾発部材としてはコイルバネに限定されず、板バネ、皿バネ等を用いてもよい。ここで上記押し上げピン140は、断熱材料、例えばZrO により形成されており、押し上げピン140の接触部分の熱伝導性が局部的に高くなることを防止している。
【0049】
このように、押し上げピン140で上記上ブロック体132Aを上方へ押し上げた結果、上記上ブロック体132Aと下ブロック体132Bとの対向面間には僅かな隙間が生じ、この隙間部分には大気圧の空気が中空状の支柱44内を介して侵入してくるので、上記隙間は上下方向への熱伝達を緩和するための気体熱伝導緩和層142として機能することになる。この気体熱伝導緩和層142により、半導体ウエハWの裏面側を面内均一に熱伝導して均一に冷却することが可能となり、半導体ウエハWが局所的に冷却されることを防止することができるようになっている。
【0050】
そして、上記載置台38の周辺部の外側には、例えばアルミナ等よりなる断面四角形の断熱材144がリング状に設けられており、更にこの断熱材144とこの下方の基台部38の側面を囲むようにして、例えばアルミニウム等よりなるシールド146がリング状に設けられている。
【0051】
次に、以上のように構成されたプラズマ成膜装置20を用いて行われる成膜方法の一例について説明する。まず装置制御部96の支配下で、真空ポンプ30を動作させることにより真空にされた処理容器22内に何らガスを流すことなくこの処理容器22内の雰囲気を排気して高真空度になるまで真空引きし、この状態をある程度の期間だけ保持する。これにより、処理容器22の内壁や内部構造物の表面に付着しているガスや水分等を排出してデガス処理が行われる。この時の処理容器22内の圧力は、後述するように例えば10−8Torr程度の高真空まで真空引きすることができる。
【0052】
このようにして、デガス処理を完了したならば、この処理容器22内に搬送室55側から図示しない搬送アームを用いて半導体ウエハWを搬入して、これを下方へ降下されている載置台構造32の載置台38上に載置し、この載置台構造32を成膜ポジションまで上昇させる。これと同時に、チャック用電源58から電極ライン56を介して載置台38のチャック用電極34に直流の高電圧、例えば4000ボルト程度を印加し、これにより発生する静電力により上記半導体ウエハWを載置台38に吸着保持し、半導体ウエハWの脱落を防止すると共に両者間の熱伝導を良好にして温度コントールを行い易くする。
【0053】
次に、ガス制御部94を動作させてArガスを流し、スロットルバルブ28を制御して処理容器22内を所定の成膜用の真空度に維持する。その後、ターゲット用電源86から直流電力を金属ターゲット84に印加し、更に高周波電源80より誘導コイル部78に高周波電力(プラズマ電力)を印加する。これと同時に、ヒータ電源64も制御されて加熱手段である加熱ヒータ36に電力を印加することによって半導体ウエハWを所定の温度に加熱し、例えばこの温度を維持する。
【0054】
一方、装置制御部96はバイアス電源60にも指令を出し、載置台38のチャック用電極34に対して所定の高周波、例えば13.56MHzのバイアス電力を印加する。このように制御された処理容器22内においては、誘導コイル部78に印加されたプラズマ電力によりアルゴンプラズマが形成されてアルゴンイオンが生成され、これらイオンは金属ターゲット84に印加された電圧に引き寄せられて金属ターゲット84に衝突し、この金属ターゲット84がスパッタされて金属粒子が放出される。
【0055】
また、スパッタされた金属ターゲット84からの金属粒子である金属原子、金属原子団はプラズマ中を通る際に多くはイオン化される。ここで金属粒子は、イオン化された金属イオンと電気的に中性な中性金属原子とが混在する状態となって下方向へ飛散して行く。特に、この処理容器22内の成膜時の圧力は、例えば5mTorr程度になされており、これによりプラズマ密度を高めて、金属粒子を高効率でイオン化できるようになっている。
【0056】
そして、金属イオンは、載置台38のチャック用電極34に印加されたバイアス電力により発生した半導体ウエハW面上の厚さ数mm程度のイオンシースの領域に入ると、強い指向性をもって半導体ウエハW側に加速するように引き付けられて半導体ウエハWに堆積することになる。そして、成膜中においては、プラズマ中から半導体ウエハWの表面に衝突するイオンにより半導体ウエハW自体は加熱されるので、半導体ウエハWの温度を均一に保つために、プラズマから半導体ウエハWに入る熱量と、この半導体ウエハWがこれより下方へ出て行く熱が均衝するように加熱ヒータ36からの熱供給量を制御する。
【0057】
例えば半導体ウエハWの温度を一定に保つためにプラズマから半導体ウエハWへの入熱量が少なくなれば、その分、加熱ヒータ32から供給する熱量を増大させ、逆にプラズマからの入熱量が多過ぎれば、その分、加熱ヒータ32から供給する熱量を減少させる。また基台部42の冷却ジャケット部120の冷媒通路40には常に冷媒を流して冷却ジャケット部120自体を冷却しており、上記加熱ヒータ36側に発生している余分な熱を取り除いて半導体ウエハWの温度のコントロールを行い易くしている。
【0058】
ここで、載置台38を支持する中空状の支柱44の下端は大気に開放されているので、この支柱44内及び載置台38の下方の領域は大気圧状態になされており、冷却ジャケット部120を構成する上下ブロック体132A、132Bの隙間も大気圧雰囲気になって、この隙間が気体熱伝導緩和層142となっている。従って、上方に位置する上ブロック体132Aを局部的に冷却することがなく、この上ブロック体132Aから面内方向に亘って均等に、或いは均一に熱を奪って冷却することができる。
【0059】
この結果、上ブロック体132Aは面内方向において温度が均一になされているので、この上方に位置する載置台38の面内方向の温度を均一にでき、更に、この載置台36の上面に載置されている半導体ウエハWの温度の面内温度を均一に維持することができる。そして、上記上ブロック体132Aは、断熱性材料よりなる押し上げピン140により上方へ付勢されているので、この上記上ブロック体132Aの上面と載置台38の下面とが面で接触するので、両者間の熱伝導は非常に良好な状態となっている。
【0060】
この場合、上ブロック体132Aの温度はプロセス温度である例えば400℃程度の高温になるが、上記気体熱伝導緩和層142を間に挟んで位置する下ブロック体132Bの温度は、例えば50〜60℃程度である。また、上記気体熱伝導緩和層142を区画する上下ブロック体132A、132Bの対向面は凹凸状になされて伝熱面積が広くなされているので、上述のように温度の面内均一性を維持しつつ両者間の効率的な熱伝導及び熱伝達を行うことができる。
【0061】
また、上述のように気体熱伝導緩和層142の機能により、上ブロック体132Aが局部的に冷却されることがないので、この上のセラミック製の載置台38も局部的に冷却されることがなくなり、これにより破損を防止することができる。また、このように載置台38の破損を防止できるので、載置台38の急速な昇温が可能となり、その分、半導体ウエハ処理のスループットを向上させることができる。
【0062】
更には、上述のように上ブロック体132Aや載置台38及びこれに接続されるフランジ部100も400℃程度の高温になるが、このフランジ部100とこの下部のベース板118との間は耐熱性の金属シール部材130によりシールされているので、Oリングを用いた場合とは異なって耐熱性があり、処理容器22内の気密性を高く維持することができる。
【0063】
また、この金属シール部材130を用いていることから、成膜処理の前に行われる前述したようなデガス処理の場合にも処理容器22内を高真空、例えば10−8Torr程度まで真空引きすることができる。従って、デガス処理(脱気処理)を十分に行うことができるので、コンタミ(汚染)のない純粋な金属膜を形成することができる。この点に関して、実験の結果、シール部材としてOリングを用いた従来のプラズマ処理装置ではせいぜい10−4Torr程度までしか真空引きできなかったが、本発明装置のように金属シール部材(メタルシール)130を用いた場合には略10−8Torr程度の高真空を達成することができた。
【0064】
このように、本発明によれば、金属を含む薄膜を形成するための被処理体、例えば半導体ウエハWを載置する載置台構造を、内部にチャック用電極34と加熱ヒータ36とが埋め込まれたセラミック製の載置台38と、載置台38の周辺部の下面に接続された金属製のフランジ部100と、フランジ部100とネジ126により接合されると共に内部に冷媒を流すための冷媒通路40が形成された金属製の基台部42と、フランジ部100と基台部42との間に介在された金属シール部材130とにより構成するようにしたので、処理容器22内の脱気処理を十分に行って高真空にできると共に、高温に耐え得ることができる。
【0065】
<本発明の載置台構造の昇温実験>
ここで本発明に係る載置台構造の昇温実験を行ったので、その評価結果について説明する。図6は載置台構造の載置台の加熱後の経過時間と温度との関係を示すグラフである。ここでは載置台の加熱ヒータ36の電流は、上限値である15A以下を維持した。
【0066】
図6に示すグラフによれば、載置台38の温度を載置台38の加熱の開始から略65分程度で常温から350℃まで昇温することができ、略5℃/minの昇温レートを達成できた。従って、この載置台構造によれば、半導体ウエハ処理のスループットを大幅に向上できることが判った。ちなみに、従来のプラズマ成膜装置の場合には、載置台を急速昇温するとセラミック製の載置台に割れが生じたので、昇温レートはせいぜい2〜3℃/min程度であり、上記したように本発明の優位性が判った。
【0067】
<第2実施例>
次に本発明の載置台構造の第2実施例について説明する。図7は本発明の載置台構造の第2実施例の主要部を示す拡大断面図である。尚、図7において図2に示す構成部分と同一構成部分については同一参照符号を付して、その説明を省略する。
【0068】
先の第1実施例の場合には、冷却ジャケット部120を上下に上ブロック体132Aと下ブロック体132Bとに2分割したが、これに限定されず、図7に示すように、冷却ジャケット部120を分割されていない一体構造としてもよい。この場合には、上記冷却ジャケット部120の上面と載置台38の下面との間に僅かな隙間を設け、ここに平面状に気体熱伝導緩和層142を形成するようにする。
【0069】
この場合には、上記冷却ジャケット部120の上面と載置台38の下面との間の伝熱面積は、先の第1実施例の場合よりは少なくなるが、第1実施例と略同様な作用効果を発揮することができる。
【0070】
<第3実施例>
次に本発明の載置台構造の第3実施例について説明する。図8は本発明の載置台構造の第3実施例の主要部を示す拡大断面図、図9は沿面放電の電圧と沿面放電の距離との関係を示すグラフである。尚、図8において図2に示す構成部分と同一構成部分については同一参照符号を付して、その説明を省略する。
【0071】
先の実施例1、2の場合には、例えば4000ボルトもの直流高圧が印加される電極ライン56と略ゼロ電位に近い熱電対ライン70や給電ライン62との間で、これらの各ラインの上端と載置台38の下面との接続部において、載置台38の下面に沿って放電が発生する沿面放電が生ずる恐れがある。このため、先の第1及び第2実施例においては、冷却ジャケット部120の中央部に設けた貫通孔122の直径H1(図2参照)を比較的大きく設定し、上記電極ライン56と他のライン、すなわち熱電対ライン70や給電ライン62との間の距離を、上記沿面放電が生じないような距離まで離間させて設けなければならなかった。
【0072】
そのため、直径H1が大きくなるので、その分、冷却ジャケット部120の有効面積が少なくなって熱的に不感帯となる部分が増大し、この上側に位置する載置台38の中心部に対する冷却効果が低下し、半導体ウエハWに対する面内温度の均一性を劣化させる危惧がある。この場合、図9に示すグラフより、沿面放電を防止するためには、例えば4000ボルトが印加される電極ライン56と他のラインとの間を16mm以上離間させる必要があることが判る。
【0073】
そこで、この第3実施例では、図8に示すように、上記載置台38の下面の中央部に、絶縁材料よりなる中空状のキャップ部150が接着剤等により接合させて設けられている。そして、このキャップ部150内に上記電極ライン56の上端部を挿通して沿面放電が生ずることを防止するようになっている。このキャップ部150を構成する絶縁材料としては、例えばAlN等のセラミック材を用いることができ、この直径は例えば5cm程度である。そして、このキャップ部150の外側に上記給電ライン62の上端部や熱電対ライン70の上端部を位置させている。
【0074】
この結果、上記電極ライン56の上端と、他のライン、すなわち給電ライン62や熱電対ライン70の上端との間の距離を小さくすることができるので、その分、貫通孔122の直径H2の大きさを小さくできる。従って、冷却ジャケット部120の有効面積を増加させることができるので熱的に不感帯となる部分が少なくなり、半導体ウエハWの面内温度の均一性を高めることができる。
【0075】
尚、この場合にも、他の点においては第1実施例と同様な作用効果を発揮することができるのは勿論であり、この第3実施例の内容を第2実施例にも適用することができる。また、上記各実施例においては、金属を含む薄膜として金属膜であるTi膜を成膜する場合を例にとって説明したが、これに限定されず、Cu膜、Ta膜等の他の金属膜、これらの金属の窒化膜や酸化膜等の薄膜を形成する場合にも本発明を適用することができるのは勿論である。
【0076】
また、ここでは載置台構造として、ここでは支柱を設けた場合を例にとって説明したが、これに限定されず、支柱を設けないで基台部を直接的に容器底部に設置するようにした載置台構造にも本発明を適用することができる。
【0077】
また、ここでは被処理体として半導体ウエハを例にとって説明したが、この半導体ウエハにはシリコン基板やGaAs、SiC、GaNなどの化合物半導体基板も含まれ、更にはこれらの基板に限定されず、液晶表示装置に用いるガラス基板やセラミック基板等にも本発明を適用することができる。
【符号の説明】
【0078】
20 プラズマ成膜装置
22 処理容器
32 載置台構造
34 チャック用電極
36 加熱ヒータ
38 載置台
40 冷媒通路
42 基台部
44 支柱
56 電極ライン
58 チャック用電源
60 バイアス電源
62 給電ライン
68 裏面ガスライン
74 シール部材
76 プラズマ発生源
84 金属ターゲット
86 ターゲット用電源
91 ガス導入手段
100 フランジ部
118 ベース板
120 冷却ジャケット部
130 金属シール部材
132A 上ブロック体
132B 下ブロック体
134A,134B 凹凸部
138 コイルバネ(弾発部材)
140 押し上げピン
142 気体熱伝導緩和層
150 キャップ部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
被処理体に対して金属を含む薄膜を形成するために前記被処理体を載置する載置台構造において、
内部にチャック用電極と加熱ヒータとが埋め込まれたセラミック製の載置台と、
前記載置台の周辺部の下面に接続された金属製のフランジ部と、
前記フランジ部とネジにより接合されると共に内部に冷媒を流すための冷媒通路が形成された金属製の基台部と、
前記フランジ部と前記基台部との間に介在された金属シール部材と、
を備えたことを特徴とする載置台構造。
【請求項2】
前記フランジ部は、前記載置台の下面より下方へ延在させて設けられていることを特徴とする請求項1記載の載置台構造。
【請求項3】
前記基台部は、
円板状のベース板と、
前記ベース板上に設けられて内部に前記冷媒通路が形成されると共に前記フランジ部の内側に位置された冷却ジャケット部と、
よりなることを特徴とする請求項2記載の載置台構造。
【請求項4】
前記冷却ジャケット部は、水平方向に沿って上下に2分割された2つのブロック体よりなることを特徴とする請求項3記載の載置台構造。
【請求項5】
前記2つのブロック体の内、上方に位置する上ブロック体は、下方に位置する下ブロック体側から弾発部材により上方へ付勢されていることを特徴とする請求項4記載の載置台構造。
【請求項6】
前記弾発部材には、断熱材料よりなる押し上げピンが介在されていることを特徴とする請求項5記載の載置台構造。
【請求項7】
前記上ブロック体と前記下ブロック体との対向面には、互いに嵌め合わされる凹凸部が形成されていることを特徴とする請求項5又は6記載の載置台構造。
【請求項8】
前記上ブロック体と前記下ブロック体との対向面間の隙間は、熱伝達を緩和するための気体熱伝導緩和層として形成されていることを特徴とする請求項7記載の載置台構造。
【請求項9】
前記載置台は、中空状になされた金属製の支柱により支持されていることを特徴とする請求項1乃至8のいずれか一項に記載の載置台構造。
【請求項10】
前記支柱内には、前記冷媒通路に接続された冷媒管が設けられていることを特徴とする請求項9記載の載置台構造。
【請求項11】
前記基台部の中央部には、前記中空状の支柱内に連通される貫通孔が形成されていることを特徴とする請求項9又は10記載の載置台構造。
【請求項12】
前記支柱内及び貫通孔内には、前記チャック用電極に接続される電極ライン、前記加熱ヒータに接続される給電ライン、前記載置台の温度を測定する熱電対ライン及び前記載置台の上面と前記被処理体の下面との間に気体を供給する裏面ガスラインの内のいずれか1以上のラインが挿通させて設けられていることを特徴とする請求項11記載の載置台構造。
【請求項13】
前記電極ラインは、導電性材料である金属パイプよりなり、前記金属パイプは前記裏面ガスラインとして兼用されていることを特徴とする請求項12記載の載置台構造。
【請求項14】
前記載置台の下面の中央部には、絶縁材料よりなる中空状のキャップ部が接合されており、前記キャップ部内に前記電極ラインの上端部が挿通されていると共に前記キャップ部の外側に前記給電ラインの上端部及び前記熱電対ラインの上端部が位置されていることを特徴とする請求項12又は13記載の載置台構造。
【請求項15】
被処理体に対して金属を含む薄膜を形成するプラズマ成膜装置において、
真空引き可能になされた処理容器と、
被処理体を載置するため請求項1乃至14のいずれか一項に記載された載置台構造と、
前記処理容器内へ所定のガスを導入するガス導入手段と、
前記処理容器内へプラズマを発生させるためのプラズマ発生源と、
前記金属を含む金属ターゲットと、
前記金属ターゲットへ前記ガスのイオンを引きつけるための電圧を供給するターゲット電源と、
前記載置台構造のチャック電極に対してバイアス電力を供給するバイアス電源と、
前記載置台構造のチャック電極に対してチャック用の電圧を印加するチャック用電源と、
を備えたことを特徴とするプラズマ成膜装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−219354(P2010−219354A)
【公開日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−65236(P2009−65236)
【出願日】平成21年3月17日(2009.3.17)
【出願人】(000219967)東京エレクトロン株式会社 (5,184)
【Fターム(参考)】