説明

遅延回路

【課題】電荷蓄積用キャパシタに蓄積された情報を破壊することなく読み出すことのできるスイッチト・キャパシタ型の遅延回路を提供する。
【解決手段】遅延セル11〜13は、書き込み信号Wが入力されたときに入力端子INへ入力される電流を取り込み、その取り込んだ電流の大きさに応じた電荷をキャパシタC1に蓄積し、そのキャパシタC1の出力電圧で電流源のNMOSトランジスタM1の出力電流の大きさを制御し、読み出し信号Rが入力されたときにその出力電流を出力する。書き込み制御用のシフトレジスタ2は、遅延セル11〜13へ入力する書き込み信号W1〜W3を制御し、遅延セル11〜13への電流の取り込みタイミングを1個ずつ遅延させる。読み出し制御用のシフトレジスタ3は、遅延セル11〜13へ入力する読み出し信号R1〜R3を制御し、電流の取り込み終了後の遅延セル11〜13からの電流の出力タイミングを制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、遅延回路に関する。
【背景技術】
【0002】
テレビ受像装置やビデオ信号処理装置などにおいては、Y/C分離フィルタなどの映像処理に、映像信号を遅延させる遅延回路が用いられる。
【0003】
このような用途に用いられる遅延回路の1つに、スイッチト・キャパシタを用いて構成される遅延回路がある(例えば、特許文献1参照。)。
【0004】
スイッチト・キャパシタを用いて構成される遅延回路では、入力信号を、所定数の書き込み用スイッチ素子にて順にサンプリングして所定数の電荷蓄積用キャパシタにホールドさせ、このキャパシタのホールド電荷を所定数の読み出し用スイッチに順に読み出すことにより遅延出力信号が得られる。
【0005】
このような従来のスイッチト・キャパシタを用いて構成される遅延回路では、電荷蓄積用キャパシタに蓄積された電荷が読み出し用スイッチの導通により移動する。すなわち、この電荷の移動により、電荷蓄積用キャパシタに保持された情報は破壊される。したがって、電荷蓄積用キャパシタに保持された情報の読み出しは1回しか行えない。
【0006】
これに対して、フィルタなどの用途では、同じ遅れ時間の信号を繰り返し使用することが必要になる。しかし、従来のスイッチト・キャパシタを用いて構成される遅延回路では、電荷蓄積用キャパシタに蓄積された情報を繰り返し読み出すことができないため、この要求に応えることができなかった。
【特許文献1】特開平10−126803号公報 (第3ページ、図2)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで、本発明の目的は、電荷蓄積用キャパシタに蓄積された情報を破壊することなく読み出すことのできるスイッチト・キャパシタ型の遅延回路を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様によれば、書き込み信号が入力されたときに入力電流を取り込み、その取り込んだ電流の大きさに応じた電荷をキャパシタに蓄積し、前記電荷を蓄積した前記キャパシタの出力電圧で電流源の出力電流の大きさを制御し、前記電流源の出力電流を読み出し信号が入力されたときに出力する複数個の遅延セルと、前記複数個の遅延セルへ入力する前記書き込み信号を制御し、前記複数個の遅延セルへの電流の取り込みタイミングを1個ずつ遅延させる書き込み制御手段と、前記複数個の遅延セルへ入力する前記読み出し信号を制御し、電流の取り込み終了後の前記複数個の遅延セルからの電流の出力タイミングを制御する読み出し制御手段と、を備えることを特徴とする遅延回路が提供される。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、電荷蓄積用キャパシタに蓄積された情報を破壊することなく読み出すことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の実施例を図面を参照して説明する。
【実施例1】
【0011】
図1は、実施例1に係る遅延回路の構成の例を示すブロック図である。本実施例の遅延回路は、クロックCKの1周期を単位として、入力信号を所望のクロック数の周期分遅延させて出力する回路である。そのために、クロックCKに同期して動作する遅延セルを所望の遅延時間に応じた個数使用する。本実施例では、遅延セルを3個使用する例を示すが、本発明における遅延セルの使用個数は3個に限られるものではない。
【0012】
本実施例の遅延回路は、書き込み信号Wが入力されたときに入力端子INへ入力される電流を取り込み、その取り込んだ電流の大きさに応じた電荷をキャパシタC1に蓄積し、そのキャパシタC1の出力電圧で電流源のNMOSトランジスタM1の出力電流の大きさを制御し、読み出し信号Rが入力されたときにその出力電流を出力する遅延セル11〜13と、遅延セル11〜13へ入力する書き込み信号W1〜W3を制御し、遅延セル11〜13への電流の取り込みタイミングを1個ずつ遅延させる書き込み制御用のシフトレジスタ2と、遅延セル11〜13へ入力する読み出し信号R1〜R3を制御し、電流の取り込み終了後の遅延セル11〜13からの電流の出力タイミングを制御する読み出し制御用のシフトレジスタ3と、を備える。
【0013】
ここで、遅延セル11〜13へ入力する電流は、入力信号の電圧を電圧/電流変換器100により電流に変換して与えるものとし、遅延セル11〜13から出力する電流は、電流/電圧変換器200により電圧に変換して出力するものとする。
【0014】
遅延セル11〜13のそれぞれは、入力端子INとキャパシタC1との間に接続され、書き込み信号W(W1〜W3)により入力電流のキャパシタC1への注入が制御される入力制御用スイッチS1と、キャパシタC1の出力電圧がゲート電極に印加されてドレイン電極から出力電流を出力するNMOSトランジスタM1と、NMOSトランジスタM1のドレイン電極と入力端子INとの間に接続され、書き込み信号W(W1〜W3)により出力電流のキャパシタC1への帰還が制御される帰還制御用スイッチS2と、NMOSトランジスタM1のドレイン電極と出力端子OUTとの間に接続され、読み出し信号R(R1〜R3)により出力電流の外部への出力が制御される出力制御用スイッチS3とを有する。
【0015】
この遅延セル11〜13のそれぞれは、次のように動作する。
【0016】
書き込み信号Wにより入力制御用スイッチS1が導通すると、キャパシタC1への電流の注入が開始される。注入された電流によりキャパシタC1は充電され、電荷が蓄積される。電荷が蓄積されてキャパシタC1の出力電圧が上昇すると、その電圧がNMOSトランジスタM1のしきい値電圧を越えたあたりで、NMOSトランジスタM1は飽和領域に入り、電流源として動作する。
【0017】
NMOSトランジスタM1が電流源として働き始めると、その電流は、書き込み信号Wにより導通状態となっている帰還制御用スイッチS2により、キャパシタC1へ帰還される。この帰還電流の大きさが入力電流の大きさと等しくなると、キャパシタC1への入力電流の注入は停止する。
【0018】
書き込み信号Wが変化して、入力制御用スイッチS1が非導通となると、キャパシタC1に蓄積された電荷は、そのまま保持される。この保持された電荷により、キャパシタC1の出力電圧も一定となり、NMOSトランジスタM1のゲート電圧も一定電圧が保持される。
【0019】
この状態で、読み出し信号Rにより出力制御用スイッチS3が導通すると、電流源として動作するNMOSトランジスタM1からの出力電流が出力端子OUTから出力される。
【0020】
このように、NMOSトランジスタM1から出力電流を出力しても、キャパシタC1の出力電圧はそのまま保持されている。すなわち、出力電流を出力しても、キャパシタC1に蓄積された入力の情報は破壊されない。
【0021】
シフトレジスタ2は、3段のフリップフロップ(F/F)21〜23で構成され、書き込み開始信号WRをクロックCKの1クロックずつシフトさせ、各F/Fの出力から、遅延セル11〜13に対する書き込み信号W1〜W3を出力する。すなわち、F/F21から遅延セル11へ書き込み信号W1を出力し、F/F22から遅延セル12へ書き込み信号W2を出力し、F/F23から遅延セル13へ書き込み信号W3を出力する。
【0022】
このシフトレジスタ2の動作により、遅延セル11〜13への電流の取り込みタイミングが1クロックずつ遅延する。
【0023】
また、書き込み開始信号WRをF/Fの段数分(これは、遅延セルの段数分にも相当する)ごとに繰り返し入力すると、遅延セル11〜13へは、この書き込み開始信号WRの入力周期ごとに書き込み信号W1〜W3が入力され、遅延セル11〜13への入力電流の取り込みが継続して実行される。このとき、遅延セル11〜13のキャパシタC1には、前の書き込み信号W1〜W3の入力終了から次の書き込み信号W1〜W3の入力開始までの間、前の書き込み信号W1〜W3の入力で取り込んだ電流に応じた電荷が保持される。
【0024】
シフトレジスタ3は、3段のF/F31〜33で構成され、読み出し開始信号RDをクロックCKの1クロックずつシフトさせ、各F/Fの出力から、遅延セル11〜13に対する読み出し信号R1〜R3を出力する。すなわち、F/F31から遅延セル11へ読み出し信号R1を出力し、F/F32から遅延セル12へ読み出し信号R2を出力し、F/F33から遅延セル13へ読み出し信号R3を出力する。
【0025】
このシフトレジスタ3の動作により、遅延セル11〜13から電流を出力するタイミングが1クロックずつ遅延する。
【0026】
ここで、読み出し開始信号RDを入力するタイミングは、初段の遅延セル11のキャパシタC1に最初に入力電流が取り込まれ、その電流に応じた電荷が保持されている期間であれば、任意に設定することができる。
【0027】
図2に、図1に示した遅延回路の動作の例を波形図で示す。
【0028】
書き込み開始信号WRをシフトレジスタ2の段数3に合わせて、3クロックごとに周期的に入力すると、シフトレジスタ2から書き込み信号W1〜W3が繰り返し出力される。
【0029】
この書き込み信号W1〜W3の入力により、入力信号の電圧v1〜v6が電圧/電流変換器100により電流に変換されて、遅延セル11〜13の各キャパシタC1に順次取り込まれる。遅延セル11〜13の各キャパシタC1には、取り込まれた電流に応じた電荷が保持されるので、その出力電圧は、入力信号の電圧v1〜v6に相当する。
【0030】
ここで、遅延セル11に最初に入力電流を取り込んで、そのキャパシタC1に出力電圧v1を保持しているときに、読み出し開始信号RDを入力する。ここでは、書き込み開始信号WRの入力の2クロック後に、読み出し開始信号RDを入力するものとする。
【0031】
この読み出し開始信号RDの入力を受けて、シフトレジスタ3から読み出し信号R1〜R3が出力される。この読み出し信号R1〜R3の入力により、遅延セル11〜13からそれぞれのキャパシタC1が保持している出力電圧に応じた電流が出力され、電流/電圧変換器200により電圧に変換されて、遅延回路の出力として出力電圧v1〜v6が順次出力される。
【0032】
このように、図1に示した遅延回路では、入力信号に対して2クロック遅延した出力信号を得ることができる。
【0033】
ここまで、遅延セルが3個である場合を例にとって説明してきたが、次に、遅延セルの個数をn個として、本実施例の構成による遅延回路の遅延時間の設定について説明する。
【0034】
遅延セルの個数をn個とした場合、シフトレジスタ2およびシフトレジスタ3のF/Fの段数もそれぞれn段となる。したがって、書き込み開始信号WRの入力周期もシフトレジスタ2のF/Fの段数に合わせてnクロックとなる。
【0035】
また、シフトレジスタ2のF/Fの段数がnであった場合、n個の遅延セルの各キャパシタC1には、(n−1)クロック期間の間、前の書き込み信号Wの入力で取り込んだ電流に応じた電荷が保持される。
【0036】
ここで、読み出し開始信号RDを入力するタイミングは、初段の遅延セルのキャパシタC1に最初に入力電流が取り込まれ、その電流に応じた電荷が保持されている期間であれば、任意に設定することができる。
【0037】
この読み出し開始信号RDの入力タイミングを、書き込み開始信号WRとの関係で見れば、読み出し開始信号RDは、書き込み開始信号WRの入力の1クロック後から(n−1)クロック後の間の、任意のタイミングで入力することができる、と言える。
【0038】
この書き込み開始信号WRと読み出し開始信号RDとの時間間隔が、本実施例の構成による遅延回路の遅延時間である。したがって、本実施例の構成によるn段構成の遅延回路では、遅延時間を1クロックから(n−1)クロックの間で任意に設定することができる。
【0039】
このような本実施例によれば、遅延セルの電荷蓄積用キャパシタに蓄積された情報を破壊することなく、そのキャパシタに蓄積された情報を読み出すことができる。また、遅延回路の遅延時間を所定の範囲内で任意に設定することができる。
【実施例2】
【0040】
実施例1では遅延時間を任意に設定できる遅延回路の例を示したが、本実施例では、遅延時間が固定である用途に適した遅延回路の例を示す。遅延時間が固定である場合、書き込み信号Wと読み出し信号Rの位相関係が固定であるので、書き込み制御用のシフトレジスタと読み出し制御用のシフトレジスタとを共用することができる。
【0041】
図3は、実施例2に係る遅延回路の構成の例を示すブロック図である。図3において、実施例1と同一の機能を有するブロックには図1と同一の符号を付し、ここではその詳細な説明を省略する。
【0042】
図3の遅延回路は、遅延時間が2クロックと固定されている例である。また、この例では、書き込み制御用のシフトレジスタを読み出し制御用のシフトレジスタ3と共用し、書き込み信号W1〜W3をシフトレジスタ3から出力するものとする。
【0043】
すなわち、シフトレジスタ3の各F/Fは、F/F32から書き込み信号W1を出力し、F/F33から書き込み信号W2を出力し、F/F31から書き込み信号W3を出力する。
【0044】
図4に、図3に示した遅延回路の動作の例を波形図で示す。
【0045】
本実施例では、最初の読み出し開始信号RDが入力され、その2クロック後にシフトレジスタ3のF/F32から書き込み信号W1が出力されたときに、遅延セル11〜13への入力電流の取り込み動作が開始される。その後、2回目の読み出し開始信号RDが入力され、シフトレジスタ3のF/F31から読み出し信号R1が出力されたときに、遅延セル11〜13からの出力電流の出力動作が開始される。
【0046】
この書き込み動作の開始から出力動作の開始までに2クロック分の位相差があるので、本実施例の遅延回路は、遅延時間が2クロックである遅延回路となる。
【0047】
なお、本実施例の構成をとる遅延回路では、書き込み信号Wを取り出すF/Fを変更すれば、別の遅延時間の遅延回路を形成することもできる。例えば、図3に示した回路に対して、書き込み信号W1をF/F33から取り出し、書き込み信号W2をF/F31から取り出し、書き込み信号W3をF/F32から取り出せば、遅延時間が1クロックである遅延回路を形成することができる。
【0048】
このような本実施例によれば、書き込み信号Wと読み出し信号Rを出力するシフトレジスタを共用することができ、使用するフリップフロップの個数を少なくすることができる。特に、遅延セルの個数が多く、シフトレジスタの段数が多い場合には、回路規模を格段に小さくするができる。
【実施例3】
【0049】
フィルタなどに用いる遅延回路では、複数のタップから異なる遅れ時間の信号を同時に出力する必要がある。これを時系列的に見れば、ある時刻の入力信号が、異なる出力タイミングで別のタップに出力される、と言うことができる。そこで、本実施例では、このような用途に適した遅延セル、およびその遅延セルを使用した遅延回路の例を示す。なお、本実施例ではタップ数が3の場合を例にとって示す。ただし、タップ数は3に限るものではなく、タップ数に応じて、それに適した回路を実現することができる。
【0050】
図5は、タップ数が3である遅延セルの構成の例を示す回路図である。
【0051】
図5に示す遅延セル4は、図1で遅延セル11〜13として示した遅延セルに対して、タップ数に応じて出力端子を3つに増やし、それぞれの出力端子をO1、O2、O3としたものである。この出力端子O1、O2、O3とNMOSトランジスタM1のドレイン電極との間に、それぞれスイッチS3、S4、S5を設け、このスイッチS3、S4、S5の導通を読み出し信号Ra、Rb、Rcでそれぞれに制御するようにしたものである。
【0052】
この遅延セル4への電流の取り込み動作、およびキャパシタC1への電荷の蓄積動作は、図1で遅延セル11〜13として示した遅延セルと同じであるので、ここではその説明を省略する。
【0053】
遅延セル4から電流を出力するときは、読み出し信号Ra、Rb、Rcを異なるタイミングで入力することにより、ある時刻で取り込んだ入力信号を、異なるタイミングで出力端子O1、O2、O3に出力させる。
【0054】
図6は、実施例3に係る遅延回路の構成の例を示すブロック図である。図6に示す回路は、あるタイミングの入力信号P1に、2クロック遅延した入力信号P3を2倍化して減算し、4クロック遅れた入力信号P5を加算し、出力信号として(P1−2×P3+P5)を出力する回路の例である。
【0055】
本実施例の遅延回路は、6個の遅延セル4(41〜46)と、6段構成のシフトレジスタ3Aを備える。
【0056】
シフトレジスタ3Aは、読み出し開始信号RDの入力を受けて、クロックCKで1クロックずつシフトした読み出し信号R1〜R6を出力する。この読み出し信号R1〜R6は、遅延セル41〜46の読み出し信号となるとともに、遅延セル41〜46の書き込み信号としても使用する。
【0057】
読み出し信号R1は、遅延セル41の読み出し信号Ra、遅延セル43の読み出し信号Rb、遅延セル45の読み出し信号Rcとなり、遅延セル46の書き込み信号W6となる。
【0058】
読み出し信号R2は、遅延セル42の読み出し信号Ra、遅延セル44の読み出し信号Rb、遅延セル46の読み出し信号Rcとなり、遅延セル41の書き込み信号W1となる。
【0059】
読み出し信号R3は、遅延セル43の読み出し信号Ra、遅延セル45の読み出し信号Rb、遅延セル41の読み出し信号Rcとなり、遅延セル42の書き込み信号W2となる。
【0060】
読み出し信号R4は、遅延セル44の読み出し信号Ra、遅延セル46の読み出し信号Rb、遅延セル42の読み出し信号Rcとなり、遅延セル43の書き込み信号W3となる。
【0061】
読み出し信号R5は、遅延セル45の読み出し信号Ra、遅延セル41の読み出し制御Rb、遅延セル43の読み出し信号Rcとなり、遅延セル44の書き込み信号W4となる。
【0062】
読み出し信号R6は、遅延セル46の読み出し信号Ra、遅延セル42の読み出し信号Rb、遅延セル44の読み出し信号Rcとなり、遅延セル45の書き込み信号W5となる。
【0063】
遅延セル41〜46の出力端子O1〜O3からの出力信号は、電流加減算部300へ入力する。
【0064】
電流加減算部300は、遅延セル41〜46の出力端子O1〜O3から同時に出力される出力信号に対して、出力端子O1からの出力電流と出力端子O3からの出力信号に対しては加算を行い、出力端子O2からの出力電流に対しては、カレントミラー回路などにより電流量を2倍化した上で、減算を行う。
【0065】
電流加減算部300の出力電流は電流/電圧変換器200により電圧に変換され、電圧信号として出力される。
【0066】
図7に、図6に示した回路の動作の様子をタイミング図で示す。
【0067】
読み出し開始信号RDが入力されると、その1クロック後に書き込み信号W1が発生し、遅延セル41への入力電流の取り込み動作が開始する。そのとき入力信号の電圧がv1であったとすると、遅延セル41のキャパシタC1の出力電圧もv1となる。
【0068】
その後、書き込み信号W2〜W6が順次発生すると、遅延セル42〜46への入力電流の取り込みが順次行われ、それぞれのキャパシタC1に出力電圧v2〜v6がそれぞれ保持される。
【0069】
書き込み信号W6が発生しているときに、次の読み出し開始信号RDが入力され、読み出し信号R1が出力されると、遅延セル41の出力端子O1、遅延セル43の出力端子O2、遅延セル45の出力端子O3への出力が行われ、これらの出力の加減算が電流加減算部300で行われ、その演算結果が電流/電圧変換器200で電圧に変換されて出力される。このときの出力電圧は、(v1−2v3+v5)となる。
【0070】
次のクロックが入力されると、書き込み信号W1が発生し、遅延セル41への次の入力電流の取り込みが行われ、遅延セル41のキャパシタC1の出力電圧はv7に変化する。
【0071】
その後、書き込み信号W2〜W6が順次発生すると、遅延セル42〜46への入力電流の再取り込みが順次行われ、それぞれのキャパシタC1の出力電圧がv8〜v12に、それぞれ変化する。
【0072】
それと同時に、遅延セル41〜46へ読み出し信号R2〜R6が順次入力され、キャパシタC1に保持された電圧に応じた出力電流が、読み出し信号R2〜R6に対応する出力端子O1〜O3から順次出力される。
【0073】
これにより、電流/電圧変換器200からは、(v2−2v4+v6)、(v3−2v5+v7)、(v4−2v6+v8)、(v5−2v7+v9)、(v6−2v8+v10)、(v7−2v9+v11)、・・・という電圧が順次出力される。
【0074】
この出力電圧を見てわかるように、本実施例では、遅延セル41〜46の各キャパシタC1に保持されている電圧が、異なるタイミングで3回読み出されて出力されている。
【0075】
このような本実施例によれば、遅延セルに出力端子を複数設け、それぞれの出力のタイミングを個別に制御することにより、遅延セルのキャパシタに保持された情報を繰り返し読み出すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0076】
【図1】本発明の実施例1に係る遅延回路の構成の例を示すブロック図。
【図2】本発明の実施例1に係る遅延回路の動作の例を示す波形図。
【図3】本発明の実施例2に係る遅延回路の構成の例を示すブロック図。
【図4】本発明の実施例2に係る遅延回路の動作の例を示す波形図。
【図5】本発明の実施例3に係る遅延セルの構成の例を示す回路図。
【図6】本発明の実施例3に係る遅延回路の構成の例を示すブロック図。
【図7】本発明の実施例3に係る遅延回路の動作の例を示すタイミング図。
【符号の説明】
【0077】
11〜13、4、41〜46 遅延セル
2、3、3A シフトレジスタ
21〜23、31〜33 フリップフロップ
S1〜S5 スイッチ
C1 キャパシタ
M1 NMOSトランジスタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
書き込み信号が入力されたときに入力電流を取り込み、その取り込んだ電流の大きさに応じた電荷をキャパシタに蓄積し、前記電荷を蓄積した前記キャパシタの出力電圧で電流源の出力電流の大きさを制御し、前記電流源の出力電流を読み出し信号が入力されたときに出力する複数個の遅延セルと、
前記複数個の遅延セルへ入力する前記書き込み信号を制御し、前記複数個の遅延セルへの電流の取り込みタイミングを1個ずつ遅延させる書き込み制御手段と、
前記複数個の遅延セルへ入力する前記読み出し信号を制御し、電流の取り込み終了後の前記複数個の遅延セルからの電流の出力タイミングを制御する読み出し制御手段と
を備えることを特徴とする遅延回路。
【請求項2】
前記遅延セルが、
入力端子と前記キャパシタとの間に接続され、前記書き込み信号により前記入力電流の前記キャパシタへの注入が制御される入力制御用スイッチと、
前記キャパシタの出力電圧がゲート電極に印加されてドレイン電極から前記出力電流を出力する、前記電流源としてのNMOSトランジスタと、
前記NMOSトランジスタの前記ドレイン電極と前記入力端子との間に接続され、前記書き込み信号により前記出力電流の前記キャパシタへの帰還が制御される帰還制御用スイッチと、
前記NMOSトランジスタの前記ドレイン電極と出力端子との間に接続され、前記読み出し信号により前記出力電流の外部への出力が制御される出力制御用スイッチと
を有することを特徴とする請求項1に記載の遅延回路。
【請求項3】
前記遅延セルが、
入力端子と前記キャパシタとの間に接続され、前記書き込み信号により前記入力電流の前記キャパシタへの注入が制御される入力制御用スイッチと、
前記キャパシタの出力電圧がゲート電極に印加されてドレイン電極から前記出力電流を出力する、前記電流源としてのNMOSトランジスタと、
前記NMOSトランジスタの前記ドレイン電極と前記入力端子との間に接続され、前記書き込み信号により前記出力電流の前記キャパシタへの帰還が制御される帰還制御用スイッチと、
前記NMOSトランジスタの前記ドレイン電極と複数の出力端子との間にそれぞれ接続され、それぞれに入力される前記読み出し信号により前記出力電流の外部への出力が制御される複数の出力制御用スイッチと
を有することを特徴とする請求項1に記載の遅延回路。
【請求項4】
前記書き込み制御手段は、
書き込み開始信号を順次シフトさせるシフトレジスタを有し、
前記シフトレジスタの各段の出力信号が、前記複数個の遅延セルのそれぞれへ入力される前記書き込み信号である
ことを特徴とする請求項1に記載の遅延回路。
【請求項5】
前記読み出し制御手段は、
読み出し信号を順次シフトさせるシフトレジスタを有し、
前記シフトレジスタの各段の出力信号が、前記複数個の遅延セルへ入力される前記読み出し信号である
ことを特徴とする請求項1に記載の遅延回路。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−160686(P2008−160686A)
【公開日】平成20年7月10日(2008.7.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−349542(P2006−349542)
【出願日】平成18年12月26日(2006.12.26)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】