説明

運転支援装置及びナビゲーション装置及びコンピュータプログラム

【課題】蓄電部の蓄電電力を利用して走行する車両において、車両の走行速度を考慮して運転者の運転を適切且つ正確に支援することができる運転支援技術を実現する。
【解決手段】蓄電部31の蓄電電力を利用して走行する車両において、運転者の運転を支援する運転支援装置1であって、互いに制限速度が異なる複数のレーンを有する特定道路を走行するにあたり、当該複数のレーンの夫々の制限速度に関するレーン制限速度情報を取得する手段21と、複数のレーンの夫々の制限速度と、消費電力量と走行距離との関係を表す走行効率の車両の走行速度に対する相関関係を示す速度効率関数Kとに基づいて、蓄電部31の蓄電残量で走行可能な走行可能距離が適切なものとなるレーンを推奨レーンとして決定する手段22と、車両を推奨レーンに誘導するための推奨レーン誘導情報を運転者に通知する手段23とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蓄電部の蓄電電力を利用して走行する車両において、運転者の運転を支援する運転支援装置及びそれを備えたナビゲーション装置、更には、運転者の運転を支援するようにコンピュータを動作させるためのコンピュータプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
蓄電部の蓄電電力を利用して走行する車両として、家庭や充電ステーション等で充電可能なバッテリー等の蓄電部と、当該バッテリーの蓄電電力を消費して走行動力を出力するモータ等の駆動部とを備えた電気自動車がある。
このような電気自動車において、蓄電部の蓄電残量によって目的地への到達が困難となることを抑制するために、運転者の運転を適切に支援するための運転支援技術が知られている(例えば特許文献1を参照。)。
【0003】
この特許文献1に記載の運転支援技術では、運転者の意思通りの走行を許容する通常走行モードとは別に、当該通常走行モードに比して目的地への到達を最優先とする走行モード、つまり運転者の意思に拘わらず走行特性の上限を規制するエコノミー走行モードが予め設定されている。そして、蓄電部の蓄電残量によって目的地まで到達が困難であると判断した場合に、車両の走行状態を上記通常走行モードから自動的に上記エコノミー走行モードに切り換えて、上記走行可能距離の拡大を図る形態で、運転者の運転を支援している。尚、このエコノミー走行モードは、電力消費を抑えるために、アクセル開度に応じてモータへ供給する電流量を減少させ、更に回生ブレーキを強く効かせて回生エネルギを蓄電電力としてバッテリーに回収させる走行モードである。
【0004】
【特許文献1】特開2001−112121号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
蓄電部の蓄電電力を利用して走行する車両は、モータの特性に起因して、その走行速度の変化に伴って走行効率が変化する。
また、上記車両が走行する道路として、例えば、右レーンの制限速度が100km/h、中央レーンの制限速度が80km/h、左レーンの制限速度が60km/hに規制されている片側3車線の高速道路等のように、互いに制限速度が異なる複数のレーン(車線)を有する特定道路がある。このような特定道路を走行する車両は、運転者の意思通りのレーンを走行し、そのレーンの制限速度に合わせた走行速度を比較的長距離において保つことになる。
よって、上記特許文献1に記載の運転支援技術のように、目的地への到達が困難であるか否かを、車両走行速度に関係なく一律の走行効率を用いて判断すると、誤判断を招き、結果、運転者の運転を適切に支援できない場合がある。
例えば、実際には目的地に到達できないのにも拘わらず、到達できると誤判断してしまったり、実際には目的地に到達できるのにも拘わらず、到達できないと誤判断して例えば自動的にエコノミー走行モードに切り換えて、無用に運転者の運転を制限してしまう場合がある。
【0006】
また、従来の運転支援技術では、上記走行速度を考慮して運転者の運転を適切に支援するための有効なものはなかった。特に、上述したような互いに制限速度が異なる複数のレーンを有する特定道路を走行するにあたり、車両を適切な推奨レーンに誘導して、蓄電部の蓄電電力による走行可能距離を適切に拡大するような運転支援技術は従来実現されていなかった。
【0007】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、蓄電部の蓄電電力を利用して走行する車両において、車両の走行速度を考慮して運転者の運転を適切且つ正確に支援することができる運転支援技術を実現する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するための本発明に係る運転支援装置は、蓄電部の蓄電電力を利用して走行する車両において、運転者の運転を支援する運転支援装置であって、その特徴構成は、互いに制限速度が異なる複数のレーンを有する特定道路を走行するにあたり、当該複数のレーンの夫々の制限速度に関するレーン制限速度情報を取得するレーン制限速度情報取得手段と、前記複数のレーンの夫々の制限速度と、消費電力量と走行距離との関係を表す走行効率の前記車両の走行速度に対する相関関係を示す速度効率関数とに基づいて、前記蓄電部の蓄電残量で走行可能な走行可能距離が適切なものとなる前記レーンを推奨レーンとして決定する推奨レーン決定手段と、前記車両を前記推奨レーンに誘導するための推奨レーン誘導情報を前記運転者に通知する通知手段と、を備えた点にある。
【0009】
上記特徴構成によれば、蓄電部の蓄電電力を利用して走行する車両が、互いに制限速度が異なる複数のレーンを有する特定道路を走行するにあたり、蓄電部の蓄電残量で走行可能な走行可能距離が最長又は目標距離以上等の適切なものとなるような上記推奨レーンを正確に決定することができる。
即ち、上記特定道路を走行する車両は、走行しているレーンの制限速度に応じた走行速度で走行すると認識することができる。また、電力を利用し走行する車両は、走行動力を出力するモータの特性に起因して、その走行速度の変化に伴って、単位消費電力量あたりの走行距離や単位走行距離あたりの消費電力量等の消費電力量と走行距離との関係を表す走行効率が変化するものとなる。要するに、走行速度に対する走行効率の相関関係を示す速度効率関数を予め求めておくことで、例えばナビゲーション装置から取得した上記複数のレーンの夫々の制限速度から、当該複数のレーンの夫々における車両が走行した場合の走行効率を夫々正確に認識することができる。よって、上記走行可能距離が適切なものとなる走行効率で走行可能な一又は二以上のレーンを、上記推奨レーンとして正確に決定することができる。
そして、車両を上記推奨レーンに誘導するための上記推奨レーン誘導情報を運転者に通知して、車両を上記推奨レーンに誘導するという形態で、運転者の運転を適切に支援して、蓄電部の蓄電電力による走行可能距離を適切に拡大することができる。
【0010】
本発明に係る運転支援装置の更なる特徴構成は、現在地から目的地までの走行経路の距離に関する走行経路情報を取得する走行経路情報取得手段を備え、前記推奨レーン決定手段が、前記走行可能距離が前記走行経路の距離以上となる前記レーンを前記推奨レーンとして決定する点にある。
【0011】
上記特徴構成によれば、運転者が登録した目的地までの走行経路の距離を、例えばナビゲーション装置から上記走行経路情報として取得することができる。また、蓄電部の蓄電残量で走行可能な走行可能距離が上記目的地までの走行経路の距離以上となるレーンが推奨レーンとして決定される。よって、一層確実に目的地に到達するように、その推奨レーンに車両を誘導して、運転者の運転を支援することができる。
【0012】
また、このような推奨レーン決定手段は、前記車両が前記レーンの制限速度で走行する場合の前記走行可能距離が前記走行経路の距離以上となる前記レーンを前記推奨レーンとして決定したり、前記走行可能距離が前記走行経路の距離以上となる走行速度の範囲を推奨速度範囲として求め、前記制限速度が当該推奨速度範囲内であるレーンを推奨レーンとして決定するように構成することができる。
【0013】
本発明に係る運転支援装置の更なる特徴構成は、前記走行経路情報取得手段で取得した前記走行経路の距離と、標準的な前記走行効率である標準走行効率とに基づいて、前記目的地に到達するまでの必要電力量を予測する必要電力量予測手段を備え、前記通知手段が、前記必要電力量予測手段で予測した必要電力量が前記蓄電部の蓄電残量以下である場合に、前記推奨レーン誘導情報の通知を停止する点にある。
【0014】
上記特徴構成によれば、例えばナビゲーション装置から取得した走行経路における距離から、当該走行経路における標準的な走行効率である標準走行効率を用いて、目的地に到達するまでの必要電力量を予測することができる。そして、予測した必要電力量が上記蓄電部の蓄電残量以下である場合、言い換えれば蓄電残量によって目的地に到達できると予測される場合においては、運転者の運転の邪魔をしないように、無用な上記推奨レーン誘導情報の通知を停止することができる。
また、予測した必要電力量が上記蓄電部の蓄電残量を上回る場合、言い換えれば蓄電残量では目的地への到達が困難であると予測される場合においては、上記推奨レーン誘導情報の通知を適宜行って、運転者の運転を適切に支援することができる。
【0015】
本発明に係る運転支援装置の更なる特徴構成は、前記走行経路情報取得手段が、前記走行経路における道路属性毎の距離を前記走行経路情報として取得し、前記標準走行効率を前記道路属性毎に規定した標準走行効率データテーブルを備え、前記必要電力量予測手段が、前記走行経路情報取得手段で取得した前記走行経路における道路属性毎の距離と、前記標準走行効率データテーブルとに基づいて、前記必要電力量を予測する点にある。
【0016】
上記特徴構成によれば、目的地までの走行経路において高速道路、山間道路、市街道路等の道路属性毎の距離を、例えばナビゲーション装置から上記走行経路情報として取得することができる。また、このような道路属性毎に、当該道路を走行した場合の標準走行効率を、上記標準走行効率データテーブルとして予め規定しておくことができる。
よって、目的地までの走行経路における道路属性毎に、上記のように取得した当該道路属性での距離と、上記標準走行効率データテーブルから認識した当該道路属性での標準走行効率とから、当該道路属性の道路を走行するのに必要な個別の必要電力量を道路属性に合わせて正確に求めることができる。そして、上記走行経路において、このように求めた道路属性毎の個別の必要電力量を集計したものを、目的地に到達するまでの必要電力量として正確に予測することができる。
【0017】
本発明に係る運転支援装置の更なる特徴構成は、実際に走行している道路についての前記道路属性と前記標準走行効率とを取得して前記標準走行効率データテーブルを更新する更新手段を備えた点にある。
【0018】
上記特徴構成によれば、例えばナビゲーション装置から実際に走行している道路の道路属性を取得しながら、例えばそのときの走行速度をそのときの単位時間あたりの消費電力量で除算することで、消費電力量と走行距離との関係を表す走行効率を取得することができる。そして、それら実際の道路属性と走行効率とを用いて、標準走行効率データテーブルを逐次更新することで、運転者の運転特性等に合った正確な標準走行効率データテーブルを構築することができる。
【0019】
本発明に係る運転支援装置の更なる特徴構成は、複数の運転者の夫々についての前記標準走行効率データテーブルを登録可能な運転者登録手段を備えた点にある。
【0020】
上記特徴構成によれば、標準走行効率データテーブルを複数の運転者の夫々について登録可能であるので、運転者を変更した場合においても、その運転者に合った標準走行効率データテーブルを利用して、目的地に到達するまでの必要電力量を正確に予測することができる。
【0021】
本発明に係る運転支援装置の更なる特徴構成は、前記通知手段が、前記車両が現在走行しているレーンが前記推奨レーンである場合に、前記推奨レーン誘導情報の通知を停止する点にある。
【0022】
上記特徴構成によれば、例えばナビゲーション装置で認識されている現在走行しているレーンが推奨レーンである場合、言い換えれば車両が既に推奨レーンを走行している場合においては、運転者の運転の邪魔をしないように、無用な上記推奨レーン誘導情報の通知を停止することができる。
また、現在走行しているレーンが推奨レーンでない場合、言い換えれば車両が推奨レーン以外のレーンを走行している場合においては、上記推奨レーン誘導情報の通知を適宜行って、車両を推奨レーンに誘導することができる。
【0023】
また、上記目的を達成するための本発明に係るナビゲーション装置の特徴構成は、これまで説明してきた運転支援装置を備えることで、同様の作用効果を発揮すると共に、目的地が設定された際に、当該目的地までの経路案内を行うと共に、前記推奨レーン誘導情報の通知を行うように構成することができる。
【0024】
また、上記目的を達成するための本発明に係るコンピュータプログラムは、蓄電部の蓄電電力を利用して走行する車両において、運転者の運転を支援するであって、その特徴構成は、前記コンピュータに、互いに制限速度が異なる複数のレーンを有する特定道路を走行するにあたり、当該複数のレーンの夫々の制限速度に関するレーン制限速度情報を取得するレーン制限速度情報取得ステップと、前記複数のレーンの夫々の制限速度と、消費電力量と走行距離との関係を表す走行効率の前記車両の走行速度に対する相関関係を示す速度効率関数とに基づいて、前記蓄電部の蓄電残量で走行可能な走行可能距離が適切なものとなる前記レーンを推奨レーンとして決定する推奨レーン決定ステップと、前記車両を前記推奨レーンに誘導するための推奨レーン誘導情報を前記運転者に通知する通知ステップと、を実行させる点にある。
【0025】
本発明に係るコンピュータプログラムの特徴構成によれば、コンピュータに上記レーン制限速度情報取得ステップ、上記推奨レーン決定ステップ、及び、上記通知ステップを実行させることで、当該コンピュータを、上述したような本発明に係る運転支援装置が備える上記レーン制限速度情報取得手段、上記推奨レーン決定手段、及び、上記通知手段として機能させて、本発明に係る運転支援装置と同様の作用効果を発揮させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
本発明の実施形態について図1〜図5に基づいて説明する。本実施形態では、本発明に係る運転支援装置を、道路を走行する車両30に搭載されたナビゲーション装置1に適用した場合を例として説明する。
図1は、運転支援装置として機能するナビゲーション装置1の概略構成を示すブロック図であり、図2は、当該ナビゲーション装置1を搭載した車両30の概略構成図である。また、図3(a)は、車両30が走行している現在地NPから目的地OPまでの走行経路を示す図であり、図3(b)は、特定道路A’における複数のレーンL(y)(y=1〜m)の夫々の制限速度S(y)の説明図である。また、図4は、後述する速度効率関数Kの説明図であり、図5は、後述する標準走行効率データテーブルTの説明図である。
【0027】
車両30は、図2に示すように、バッテリー31(蓄電部の一例)の蓄電電力を利用して走行する電力走行可能な所謂電気自動車として構成されている。即ち、車両30には、家庭や充電ステーション等において充電されたバッテリー31の蓄電電力を消費して走行動力を出力可能、且つ、ブレーキ時などの回生エネルギ等を電力に換えてバッテリー31に充電可能なモータ/ジェネレータ32が設けられている。
更に、この車両30には、エンジン33が設けられており、例えば、バッテリー31の蓄電残量が下限値以下と少なくなった場合などにおいて、走行動力の不足分を適宜エンジン33の軸動力で補うハイブリッド走行可能な所謂ハイブリッドカーとして構成されている。
【0028】
このような車両30に搭載されているナビゲーション装置1は、コンピュータにより所定のコンピュータプログラムを実行することにより、通常のナビゲーション装置の各種機能部に加え、所定の運転支援装置として機能するように構成されている。そして、この運転支援装置が、上記のようにバッテリー31の蓄電電力を利用する電気走行で所定の特定道路A’を走行するにあたり、できるだけ確実に目的地OPに到達するようにバッテリー31の蓄電電力による走行可能距離を適切に拡大するために、車両30の走行速度を考慮して運転者の運転を適切且つ正確に支援するものとして構成されている。
尚、本実施形態において、図3(a)(b)に示すように、上記特定道路A’とは、高速道路Aのうち、例えば左レーンの制限速度が60(km/h)であり、中央レーンの制限速度が80(km/h)であり、右レーンの制限速度が100(km/h)であるような3車線道路のように、複数(m本)のレーンL(y)(y=1〜m)を有し、夫々のレーンL(y)の制限速度S(y)が互いに異なる道路を示す。ここで、yは、1からレーンの総本数であるm(例えば3)までの整数であり、例えば左レーンから右レーンにかけて順に付されるレーンの番号を表す。
また、本実施形態では、車両30は、現在地NPから、高速道路AをDa(km)、山間道路BをDb(km)、市街道路CをDc(km)順次走行して、目的地OPに到達する全長D(km)の走行経路を走行するものとする。また、現在地NPからDa’(km)先までの高速道路Aが、上記特定道路A’となっている。
【0029】
図1に示すように、詳細については後述するが、運転支援部2、道路判定部3、現在地情報取得部4、ナビゲーション用演算部5等の、ナビゲーション装置1が有する各機能部は、CPU等の演算処理装置を中核部材として、入力されたデータに対して種々の処理を行うための機能部がハードウェア又はソフトウェア(コンピュータプログラム)或いはその両方により実装されて構成されている。
また、詳細については後述するが、地図データベース6や走行効率データベース7等の、ナビゲーション装置1が有するデータベースは、例えば、ハードディスクドライブ、DVD−ROMを備えたDVDドライブ、CD−ROMを備えたCDドライブ等のように、情報を記憶可能な記録媒体とその駆動手段とを有する装置をハードウェア構成として備えている。以下、本実施形態に係るナビゲーション装置1の各部の構成について詳細に説明する。
【0030】
(地図データベース)
地図データベース6には、所定の領域毎に分けられた地図情報M及びこの地図情報Mに関連付けられた複数の地物情報Fとが格納されている。
尚、地図情報Mには、道路間の接続情報を示す道路ネットワークレイヤや、道路の形状を示す道路形状レイヤが含まれている。更に、この道路ネットワークレイヤ及び道路形状レイヤには、緯度及び経度で表現された地図上の位置情報を有する多数のノード及び2つのノードを連結して道路を構成する多数のリンクの情報を含む他、道路の属性(例えば、図3(a)に示す高速道路A、特定道路A’、山間道路B、市街道路C等)や、リンク長さ等の情報を含む。
また、地図情報Mには、道路の属性がm本のレーンL(y)を有する特定道路A’である場合については、それら夫々のレーンL(y)の制限速度S(y)に関する情報が含まれており、更に、地物情報Fには、それら夫々のレーンL(y)に設けられた地物の情報、具体的には進行方向別通行区分を表す矢印状の道路標示等を示す地物の形状等の情報が含まれている。
【0031】
(走行効率データベース)
走行効率データベース7には、以下に説明する速度効率関数K及び標準走行効率データテーブルTが格納されている。
上記速度効率関数Kは、図4に示すように、単位消費電力量あたりの走行距離に相当する走行効率kについて、車両30の走行速度s(km/h)に対する相関関係を示すk=K(s)で表す関数である。尚、この走行効率kは、消費電力量と走行距離との関係を表すものであればよく、当然、単位走行距離あたりの消費電力量に相当する走行効率としても構わない。
尚、この速度効率関数Kは、通常、モータ/ジェネレータ32(図2参照)の特性によるものであり、実験などにより予め求めることができる。また、この速度効率関数Kは、通常、ある走行速度s(例えば80km/h程度)で最高の走行効率k(km/kWh)を示し、当該走行速度sがそれよりも高くなる又は低くなるほど低下する状態のものとなる。
【0032】
上記標準走行効率データテーブルTは、図5に示すように、標準的な前記走行効率である標準走行効率knを、上述した高速道路A、山間道路B、市街道路Cのような道路属性毎に規定したデータテーブルである。
更に、この標準走行効率データテーブルTは、複数(n人)の運転者X(x)(x=1〜n)の夫々について、高速道路Aでの標準走行効率ka(x)、山間道路Bでの標準走行効率kb(x)、市街道路Cでの標準走行効率kc(x)を記憶したテーブルとして構成されている。尚、xは、1から運転者の総人数であるn(例えば3)までの整数であり、例えば登録順毎の運転者番号を表す。
尚、実際に運転者X(x)が運転を開始するときには、表示入力装置13において自らの運転者番号xやそれに関連付けられた運転者氏名を選択又は入力することにより、この標準走行効率データテーブルTにおいてxが特定されて、その特定された標準走行効率ka(x)、kb(x)、kc(x)が後述する各種演算処理等に利用されることになる。
【0033】
(現在地情報取得部)
現在地情報取得部4は、車両30の現在地NPを示す現在地情報を取得する。この現在地情報取得部4は、GPS受信機10、方位センサ11、及び距離センサ12と接続されている。ここで、GPS受信機10は、GPS(Global Positioning System)衛星からのGPS信号を受信する装置である。このGPS信号は、通常1秒おきに受信され、現在地情報取得部4へ出力される。現在地情報取得部4では、GPS受信機10で受信されたGPS衛星からの信号を解析し、車両30の現在地NP(緯度及び経度)、進行方位、移動速度等の情報を取得することができる。方位センサ11は、車両30の進行方位又はその進行方位の変化を検出するセンサである。この方位センサ11は、例えば、ジャイロセンサ、地磁気センサ、ハンドルの回転部に取り付けた光学的な回転センサや回転型の抵抗ボリューム、車輪部に取り付ける角度センサ等により構成される。そして、方位センサ11は、その検出結果を現在地情報取得部4へ出力する。距離センサ12は、車両30の走行速度や走行距離を検出するセンサである。この距離センサ12は、例えば、車両のドライブシャフトやホイール等が一定量回転する毎にパルス信号を出力する走行速度パルスセンサ、車両30の加速度を検知するヨー・Gセンサ及び検知された加速度を積分する回路等により構成される。そして、距離センサ12は、その検出結果としての走行速度及び走行距離の情報を現在地情報取得部4へ出力する。
【0034】
そして、現在地情報取得部4は、これらのGPS受信機10、方位センサ11及び距離センサ12からの出力に基づいて、公知の方法により現在地NPを特定する演算を行う。また、現在地情報取得部4は、地図データベース6から現在地NP周辺の地図情報Mを取得し、それに基づいて公知のマップマッチングを行うことにより現在地NPを地図情報Mに示される道路上に合わせる補正も行う。このようにして、現在地情報取得部4は、緯度及び経度で表された車両30の現在地NPの情報、及び車両30の進行方位の情報を含む現在地情報を取得する。
尚、このようにして取得される現在地情報は、車両30が進行中の道路がm本のレーンL(y)を有する特定道路A’である場合に、車両30が現在走行中のレーンである現走行レーンまでをも特定できる情報とはなっていない。そこで、後述する道路判定部3により、別途、現走行レーンの判定も行えるように構成されている。
そして、現在地情報取得部4により取得された現在地情報は、道路判定部3、及び、ナビゲーション用演算部5へ出力される。
【0035】
(道路判定部)
道路判定部3は、車両30が走行中の道路がm本のレーンL(y)を有する特定道路A’である場合に、それらm本のレーンL(y)の制限速度S(y)に関するレーン制限速度情報を地図データベース6から抽出して運転支援部2に出力する。
更に、道路判定部3は、それらm本のレーンL(y)の中から車両30が現在走行中のレーンである現走行レーンを判定する。
即ち、この道路判定部3は、地図データベース6から取得した現在走行している特定道路A’の夫々のレーンL(y)に設けられた地物の情報を参照し、車両30に搭載した撮像装置(図示省略)により撮像した現走行レーンに設けられた地物を含む撮像画像から、現走行レーンを判定し、その判定結果を現走行道路情報として運転支援部2へ出力する。これにより、運転支援部2は、現走行道路情報を参照した推奨レーンの案内機能の動作を行うことができる。
更に、上記道路判定部3は、車両30が走行中の道路が特定道路A’であるか否かに拘わらず、その走行中の道路の道路属性(高速道路A、山間道路B,市街道路C)を上記現走行道路情報として運転支援部2へ出力する。
【0036】
(ナビゲーション用演算部)
ナビゲーション用演算部5は、主にナビゲーション装置1としての案内機能を実行するためのアプリケーションプログラムAPに従って動作する演算処理手段である。ここで、アプリケーションプログラムAPは、現在地情報取得部4により取得された現在地情報、地図データベース6から取得した地図情報M、及び道路判定部3により生成された現走行道路情報等を参照して動作する。
そして、ナビゲーション用演算部9は、例えば、地図データベース6から車両30の周辺の地図情報Mを取得して表示入力装置13に地図の画像を表示すると共に、当該地図の画像上に、現在地情報に基づいて現在地マークを重ね合わせて表示する処理を行う。また、ナビゲーション用演算部9は、出発地から目的地OPまでの経路の探索を行い、更に、このように探索された経路と現在地情報とに基づいて、表示入力装置13及び音声出力装置14の一方又は双方を用いて経路案内を行う。
また、本実施形態においては、ナビゲーション用演算部5は、表示入力装置13及び音声出力装置14に接続されている。表示入力装置13は、液晶表示装置等の表示装置とタッチパネル等の入力装置が一体となったものである。また音声出力装置は、スピーカ等を有して構成されている。本実施形態においては、ナビゲーション用演算部5、表示入力装置13、及び音声出力装置14が、後述する運転支援部2のための通知手段23として機能する。
【0037】
このナビゲーション用演算部5は、現在地NPから目的地OPまでの走行経路の距離に関する走行経路情報として、当該走行経路における道路属性毎の距離を運転支援部2に出力する。
具体的には、図3(a)に示すような現在地NPから目的地OPまでの走行経路においては、高速道路AがDa(km)、山間道路BがDb(km)、市街道路CがDc(km)であるとの情報に加え、高速道路Aのうちの特定道路A’がDa’(km)であるとの情報を、運転支援部2に出力する。
【0038】
(運転支援部)
運転支援部2は、上述したナビゲーション用演算部5と同様に、運転者の運転を適切且つ正確に支援するためのアプリケーションプログラムに従って所定のコンピュータプログラムを実行する演算処理手段として構成されている。具体的には、運転支援部2は、上記アプリケーションプログラムを実行することで、後述するレーン速度情報取得手段21、推奨レーン決定手段22、通知手段23、走行経路情報取得手段24、必要電力量予測手段25、更新手段26、運転者登録手段27として機能して、所定のコンピュータプログラムを実行するように構成されおり、以下に各手段の構成について説明する。
【0039】
(レーン速度情報取得手段)
上記レーン速度情報取得手段21は、車両30がm本のレーンL(y)を有する特定道路A’を走行するにあたり、上述した道路判定部3から出力された、当該m本のレーンL(y)の夫々の制限速度S(y)に関するレーン制限速度情報を取得するレーン速度情報ステップを実行するように構成されている。
尚、運転支援部2は、上述した道路判定部3からレーン制限速度情報が出力されたときに、車両Cが特定道路A’を現在走行していることを認識することになる。
【0040】
(推奨レーン決定手段)
上記推奨レーン決定手段22は、上記レーン速度情報取得手段21で取得したm本のレーンL(y)の夫々の制限速度S(y)と、走行効率データベース7から抽出した速度効率関数Kとに基づいて、蓄電残量計測部16で計測されたバッテリー31の蓄電残量Et(kWh)で走行可能な走行可能距離が適切なものとなる一又は二以上のレーンを推奨レーンとして決定する推奨レーン決定ステップを実行するように構成されている。
【0041】
以下、推奨レーンを決定する方法の具体例として、第1乃至第2の推奨レーン決定方法について、説明を加える。
尚、車両30は、図3(a)に示すように、現在地NPから、特定道路A’(距離:Da’(km))、当該特定道路A’以外の高速道路A(距離:Da−Da’(km))、山間道路B(距離:Db(km))、及び、市街道路C(距離:Dc(km))を記載順に走行して、目的地OPに到達するまでの、全長D(km)の走行経路を走行するものとする。また、これらの走行経路の距離に関する走行経路情報、具体的には、これらの走行経路における道路属性毎の距離に関する走行経路情報は、詳細については後述するが、走行経路情報取得手段24によりナビゲーション用演算部5から取得されたものを利用する。
また、上記特定道路A’以外の高速道路A、山間道路B、市街道路Cを走行するときの車両30の標準的な走行効率kn(km/kWh)は、図5に示す標準走行効率データテーブルTにおける標準走行効率ka(x)、kb(x)、kc(x)の値を利用するものとする。
【0042】
〔第1の推奨レーン決定方法〕
第1の推奨レーン決定方法では、推奨レーン決定手段22は、車両30がレーンL(y)の制限速度S(y)で走行する場合のバッテリー31の蓄電残量Et(kWh)で走行可能な走行可能距離が、走行経路の距離D以上となるレーンを推奨レーンとして決定する。
即ち、下記の[数1]の式に示すように、特定道路A’において車両30が上記m本のレーンL(y)(y=1〜m)の夫々をその制限速度S(y)で走行する場合を想定して、特定道路A’、特定道路以外の高速道路A、山間道路B、市街道路Cを走行する際に使用する電力量の合計を、目的地OPまでに到達するまでに必要な必要電力量Ea(y)(kWh)として夫々計算する。
尚、本実施形態では、特定道路A’を走行する車両30の走行速度s(km/h)は、レーンL(y)の制限速度S(y)と仮定しているが、例えば、制限速度S(y)よりも若干遅めの速度としても構わない。
そして、そのレーンL(y)を走行した場合の車両30の走行効率k(km/kWh)は、図4に示す速度効率関数K即ちk=K(s)に、s=S(y)を代入して、K(S(y))として求める。
【0043】
[数1]
Ea(y)=Da’/K(S(y))+(Da−Da’)/ka(x)+Db/kb(x)+Dc/kb(x)
【0044】
そして、このようにして求めた上記m本のレーンL(y)の夫々についての必要電力量Ea(y)(kWh)が現在の蓄電残量Et(kWh)以下となる一又は二以上のレーンを推奨レーンとして決定する。
即ち、そのように決定した推奨レーンが、特定道路A’においてその推奨レーンを走行した場合に、バッテリー31の蓄電残量Et以下の必要電力量で目的地OPに到達できるレーン、言い換えればバッテリー31の蓄電残量Et(kWh)で走行可能な走行可能距離が目的地OPまでの距離D(km)以上の適切なものとなるレーンとなる。
【0045】
〔第2の推奨レーン決定方法〕
第2の推奨レーン決定方法では、推奨レーン決定手段22は、バッテリー31の蓄電残量Et(kWh)で走行可能な走行可能距離が走行経路の距離D以上となる走行速度の範囲を推奨速度範囲Srとして求め、制限速度S(y)が当該推奨速度範囲Sr内であるレーンを推奨レーンとして決定する。
即ち、下記の[数2]の式に示すように、バッテリー31の蓄電残量Et(kWh)から、特定道路以外の高速道路A、山間道路B、市街道路Cを走行する際に使用する電力量の合計を差し引いて、車両30が特定道路A’を走行するときに使用できる電力量を、使用電力量上限値Emax(kWh)として計算する。尚、この使用電力量上限値Emaxについては、若干の余裕を見込んで下記の数2による計算値よりも少なめに設定しても構わない。
【0046】
[数2]
Emax=Et−〔(Da−Da’)/ka(x)+Db/kb(x)+Dc/kb(x)〕
【0047】
また、車両30が上記使用電力量上限値Emax以下の電力量で特定道路A’を走行するために必要となる走行効率kは、下記の[数3]に示す式で求められる走行効率下限値kmin以上である必要がある。
【0048】
[数3]
kmin=Da’/Emax
【0049】
次に、図4に示す速度効率関数Kを参照し、走行速度sから求められる走行効率K(s)が、上記[数2]及び[数3]で求めた走行効率下限値kmin以上となるときの走行速度sの範囲を、推奨速度範囲Srとして導出する。
そして、特定道路A’におけるm本のレーンL(y)(y=1〜m)の夫々の制限速度S(y)を参照し、当該制限速度S(y)が上記推奨速度範囲Sr内である一又は二以上のレーンを推奨レーンとして決定する。
即ち、そのように決定した推奨レーンが、特定道路A’においてその推奨レーンを走行した場合に、当該特定道路A’を走行するのに必要な電力量が蓄電残量Etから目的地OPに到達するまでの他の道路を走行するのに必要な電力量を差し引いた使用電力量上限値Emax以下となるレーン、言い換えればバッテリー31の蓄電残量Et(kWh)で走行可能な走行可能距離が目的地OPまでの距離D(km)以上の適切なものとなるレーンとなる。
【0050】
(走行経路情報取得手段)
上記走行経路情報取得手段24は、現在地NPから目的地OPまでの走行経路の距離に関する走行経路情報を取得する走行経路情報取得ステップを実行するように構成されている。
具体的には、図3(a)に示すように、現在地NPから目的地OPまでの走行経路において、その全行程距離D(km)に加え、特定道路A’の距離Da’(km)、当該特定道路A’を含む高速道路Aの距離Da、山間道路Bの距離Db(km)、市街道路Cの距離Dc(km)のように、走行経路における道路属性毎の距離を上記走行経路情報として取得する。
【0051】
(必要電力量予測手段)
上記必要電力量予測手段25は、上記走行経路情報取得手段24で取得した走行経路の距離D(km)と、標準的な走行効率である標準走行効率kn(km/kWh)とに基づいて、目的地OPに到達するまでの必要電力量En(kWh)を予測する必要電力量予測ステップを実行するように構成されている。
具体的には、下記の[数4]の式に示すように、標準走行効率knを道路属性毎に規定した標準走行効率データテーブルT(図5参照)から抽出した運転者X(x)の高速道路Aでの標準走行効率ka(x)、山間道路Bでの標準走行効率kb(x)、市街道路Cでの標準走行効率kc(x)と、高速道路Aの距離Da、山間道路Bの距離Db(km)、市街道路Cの距離Dc(km)とから、この高速道路A、山間道路B、市街道路Cからなる走行経路を走行して目的地OPに到達するまでに必要な必要電力量Enを求める。
【0052】
[数4]
En=Da/ka(x)+Db/kb(x)+Dc/kb(x)
【0053】
(通知手段)
そして、ナビゲーション用演算部5が機能する上記通知手段23は、道路判定部3からレーン制限速度情報が入力された運転支援部2の推奨レーン決定手段22で推奨レーンが決定された場合に、車両30を上記のように決定した推奨レーンに誘導するための推奨レーン誘導情報を運転者X(x)に通知する通知ステップを実行するように構成されている。
具体的に、通知手段23は、音声出力装置14により、運転者X(x)に対して推奨レーンの走行を促すような音声案内を出力する。
例えば、推奨レーンが中央レーンである場合には、上記音声出力装置14により、「目的地までの蓄電残量が不足しております。中央レーンを時速80km(制限速度)で巡航してください。」等の音声案内を出力することで、車両30を推奨レーンである中央レーンに誘導することができる。
【0054】
また、通知手段23は、上記必要電力量予測手段25により予測された目的地OPに到達するまでに必要な必要電力量Enが、バッテリー31の蓄電残量Et以下である場合には、運転者の運転の邪魔をしないように、無用な上記推奨レーン誘導情報の通知を停止することもできる。
【0055】
また、上記推奨レーン決定手段22で推奨レーンを決定できなかった場合、言い換えれば、特定道路A’においてどのレーンL(y)を走行したとしてもバッテリー31の蓄電残量Et(kWh)で目的地OPに到達することは困難である場合には、下記に示すような適切な処理を行うことで、運転者X(x)の運転を支援することもできる。
即ち、蓄電残量Et(kWh)が下限界値を下回るまでの距離を計算し、通知手段23が音声出力装置14により、「あと○○kmで蓄電残量がなくなります。」などの音声案内などを行うことにより、運転者X(x)に対してバッテリー31の充電を促すことができる。
また、蓄電残量Et(kWh)が下限界値を下回った時点で、自動的にエンジン33(図2参照)を作動させてハイブリッド走行を行うように構成されている場合には、通知手段23が音声出力装置14により、「あと○○kmでハイブリッド走行に切り換えます。」などの音声案内を行うことにより、運転者X(x)に対してハイブリッド走行に切り替わるまでの走行距離を認識させることができる。
【0056】
(更新手段)
上記更新手段26は、実際に走行している道路についての道路属性A,B,Cと走行効率kn’とを取得して、走行効率データベース7に記憶している標準走行効率データテーブルTを更新する更新ステップを実行するように構成されている。
具体的に、上記更新手段26は、現在における車両30の走行効率kn’(km/kWh)を逐次求め、これを上述した道路判定部3から取得した現在走行中の道路属性に関連付けて複数記憶する。
尚、この走行効率kn’は、距離センサ12により逐次検出される車両30の走行速度s(km/h)を、蓄電残量計測部16で逐次計測されるバッテリー31の蓄電残量Etの減少速度(kWh/h)で除算することで求めることができる。
【0057】
そして、上記更新手段26は、このように求めた道路属性毎の複数の走行効率kn’を用いて、例えば道路属性毎にこれら複数の走行効率kn’の数ヶ月間の移動平均を運転者X(x)の標準走行効率knと置き換えるなどして、走行効率データベース7に記憶されている標準走行効率データテーブルT(図5参照)を更新する。
【0058】
(運転者登録手段)
上記運転者登録手段27は、複数の運転者X(x)の夫々についての標準走行効率データテーブルTを登録可能な運転者登録ステップを実行するように構成されている。
具体的に、上記運転者登録手段27は、新規の運転者X(n+1)が表示入力装置13において氏名等の登録処理を実行することで、図5に示す標準走行効率データテーブルTにおいて、運転者総数nをn+1に増加させて、その運転者X(n+1)に対応する高速道路Aでの標準走行効率ka(x)、山間道路Bでの標準走行効率kb(x)、市街道路Cでの標準走行効率kc(x)の初期値を登録する。尚、この初期値は、例えば一般的な運転者の標準走行効率として予め設定された値を利用することができる。また、運転者X(x)の標準走行効率データテーブルTにおける標準運転効率knは、当然この初期値のまま利用することもできるが、上述した更新手段26により、運転中の運転者X(x)固有の標準走行効率knが当該運転者X(x)に合った適切なものに更新されることになる。
【0059】
(その他の実施形態)
(1)上記の実施の形態では、推奨レーン決定手段22において、速度効率関数Kに加え、走行経路情報取得手段24によりナビゲーション用演算部5から取得した走行経路における道路属性毎の距離に関する走行経路情報を用いて推奨レーンを決定したが、このような走行経路情報を用いることなく推奨レーンを決定しても構わない。
例えば、図3(a)(b)に示すように、特定道路A’において車両30が上記m本のレーンL(y)(y=1〜m)の夫々をその制限速度S(y)で走行する場合を想定する。そして、図4に示す速度効率関数K即ちk=K(s)の走行速度sに、上記制限速度S(y)を代入し、夫々のレーンL(y)を走行するときの車両30の走行効率K(S(y))を夫々求める。そして、この走行効率K(S(y))が最も高くなるときのレーンを、推奨レーンとして決定することができる。
即ち、そのように決定した推奨レーンが、特定道路A’においてその推奨レーンを走行した場合に、最も電力消費が少ないレーン、言い換えればバッテリー31の蓄電残量Et(kWh)で走行可能な走行可能距離が最も長い適切なものとなるレーンとなる。
【0060】
(2)上記の実施の形態では、推奨レーン誘導情報を運転者X(x)に通知する通知手段23を、推奨レーン誘導情報として、音声出力装置14により運転者X(x)に対して現走行レーンから推奨レーンへの車線変更を促すような音声案内を出力するように構成したが、表示入力装置を用いた表示案内など、別の方法で運転者に通知するように構成しても構わない。
例えば、通知手段は、表示入力装置を用いた表示案内で推奨レーン情報を通知する場合には、その表示入力装置において、特定道路における複数のレーンの状態を描画すると共に、その複数のレーンLの内の現走行レーンに現在地マークを重ね合わせて表示することで、車両が現在走行しているレーンを運転者に通知する。そして、その現走行レーンから推奨レーンへ向けて車線変更を促すための矢印を表示することで、運転者に対して現走行レーンから推奨レーンへの車線変更を促すことができる。
【0061】
(3)上記の実施の形態では、通知手段23は、車両30が現在走行している現走行レーンがどのレーンであるかに拘わらず、推奨レーン誘導情報を出力するように構成したが、例えば、道路判定部3で判定した上記現走行レーンが推奨レーンである場合、言い換えれば車両30が既に推奨レーンを走行している場合において、運転者の運転の邪魔をしないように、無用な上記推奨レーン誘導情報の通知を停止するように構成しても構わない。
この場合、通知手段23は、道路判定部3で判定した車両30が現在走行している現走行レーンが上記推奨レーンでない場合に、音声出力装置14により、運転者X(x)に対して現走行レーンから推奨レーンへの車線変更を促すような音声案内を出力する。例えば、現走行レーンが右レーンであり推奨レーンが中央レーンである場合には、上記音声出力装置14により、「目的地までの蓄電残量が不足しております。右レーンから中央レーンへ車線変更をして、時速80km(制限速度)で巡航してください。」等の音声案内を出力することで、車両30を推奨レーンである中央レーンに誘導することができる。
【0062】
(4)上記実施の形態では、標準走行効率データテーブルTを複数(n人)の運転者X(x)(x=1〜n)の夫々の道路属性A,B,C毎の標準走行効率ka(x),kb(x),kc(x)を記憶したものとし、更に、運転者登録手段27により、複数の運転者X(x)の夫々についての標準走行効率データテーブルTを登録可能としたが、当然、複数の運転者への対応の必要がない場合には、これらの構成を適宜省略しても構わない。
【0063】
(5)上記実施の形態では、車両30に、バッテリー31とモータ/ジェネレータ32とに加えて、エンジン33を設けることで、当該車両30を、電気走行とハイブリッド走行とを択一的に選択可能なハイブリッドカーとして構成したが、本発明の運転支援装置は、このようなハイブリッドカーに限らず、バッテリーの蓄電電力を消費して走行動力を出力する電気走行を行う車両であれば適用可能である。
【0064】
(6)上記実施の形態では、運転支援部2を含むナビゲーション装置1の全ての構成が車両に搭載される場合を例として説明した。しかし、本発明の適用範囲はこのような構成に限定されるものではない。例えば、運転支援部2に含まれる各種機能部の一部又は全部を、上記ナビゲーション装置1と別体に構成しても構わない。
【産業上の利用可能性】
【0065】
本発明は、蓄電部の蓄電電力を利用して走行する車両において、車両の走行速度を考慮して運転者の運転を適切且つ正確に支援することができる運転支援装置及び方法として好適に利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】運転支援装置として機能するナビゲーション装置の概略構成図
【図2】車両の概略構成図
【図3】現在地から目的地までの走行経路を示す図(a)及び特定道路における複数のレーンの夫々の制限速度の説明図(b)
【図4】速度効率関数の説明図
【図5】標準走行効率データテーブルの説明図
【符号の説明】
【0067】
1:ナビゲーション装置(運転支援装置)
21:レーン速度情報取得手段
22:推奨レーン決定手段
23:通知手段
24:走行経路情報取得手段
25:必要電力量予測手段
26:更新手段
27:運転者登録手段
30:車両
31:バッテリー(蓄電部)
A’:特定道路
L(y):レーン
NP:現在地
OP:目的地
S(y):制限速度
T:標準走行効率データテーブル
X(x):運転者

【特許請求の範囲】
【請求項1】
蓄電部の蓄電電力を利用して走行する車両において、運転者の運転を支援する運転支援装置であって、
互いに制限速度が異なる複数のレーンを有する特定道路を走行するにあたり、当該複数のレーンの夫々の制限速度に関するレーン制限速度情報を取得するレーン制限速度情報取得手段と、
前記複数のレーンの夫々の制限速度と、消費電力量と走行距離との関係を表す走行効率の前記車両の走行速度に対する相関関係を示す速度効率関数とに基づいて、前記蓄電部の蓄電残量で走行可能な走行可能距離が適切なものとなる前記レーンを推奨レーンとして決定する推奨レーン決定手段と、
前記車両を前記推奨レーンに誘導するための推奨レーン誘導情報を前記運転者に通知する通知手段と、を備えた運転支援装置。
【請求項2】
現在地から目的地までの走行経路の距離に関する走行経路情報を取得する走行経路情報取得手段を備え、
前記推奨レーン決定手段が、前記走行可能距離が前記走行経路の距離以上となる前記レーンを前記推奨レーンとして決定する請求項1に記載の運転支援装置。
【請求項3】
前記推奨レーン決定手段が、前記車両が前記レーンの制限速度で走行する場合の前記走行可能距離が前記走行経路の距離以上となる前記レーンを前記推奨レーンとして決定する請求項2に記載の運転支援装置。
【請求項4】
前記推奨レーン決定手段が、前記走行可能距離が前記走行経路の距離以上となる走行速度の範囲を推奨速度範囲として求め、前記制限速度が当該推奨速度範囲内であるレーンを推奨レーンとして決定する請求項2に記載の運転支援装置。
【請求項5】
前記走行経路情報取得手段で取得した前記走行経路の距離と、標準的な前記走行効率である標準走行効率とに基づいて、前記目的地に到達するまでの必要電力量を予測する必要電力量予測手段を備え、
前記通知手段が、前記必要電力量予測手段で予測した必要電力量が前記蓄電部の蓄電残量以下である場合に、前記推奨レーン誘導情報の通知を停止する請求項2〜4の何れか一項に記載の運転支援装置。
【請求項6】
前記走行経路情報取得手段が、前記走行経路における道路属性毎の距離を前記走行経路情報として取得し、
前記標準走行効率を前記道路属性毎に規定した標準走行効率データテーブルを備え、
前記必要電力量予測手段が、前記走行経路情報取得手段で取得した前記走行経路における道路属性毎の距離と、前記標準走行効率データテーブルとに基づいて、前記必要電力量を予測する請求項5に記載の運転支援装置。
【請求項7】
実際に走行している道路についての前記道路属性と前記標準走行効率とを取得して前記標準走行効率データテーブルを更新する更新手段を備えた請求項6に記載の運転支援装置。
【請求項8】
複数の運転者の夫々についての前記標準走行効率データテーブルを登録可能な運転者登録手段を備えた請求項6又は7に記載の運転支援装置。
【請求項9】
前記通知手段が、前記車両が現在走行しているレーンが前記推奨レーンである場合に、前記推奨レーン誘導情報の通知を停止する請求項1〜8の何れか一項に記載の運転支援装置。
【請求項10】
請求項1〜9の何れか一項に記載の運転支援装置を備え、
目的地が設定された際に、当該目的地までの経路案内を行うと共に、前記推奨レーン誘導情報の通知を行うナビゲーション装置。
【請求項11】
蓄電部の蓄電電力を利用して走行する車両において、運転者の運転を支援するようにコンピュータを動作させるためのコンピュータプログラムであって、
前記コンピュータに、
互いに制限速度が異なる複数のレーンを有する特定道路を走行するにあたり、当該複数のレーンの夫々の制限速度に関するレーン制限速度情報を取得するレーン制限速度情報取得ステップと、
前記複数のレーンの夫々の制限速度と、消費電力量と走行距離との関係を表す走行効率の前記車両の走行速度に対する相関関係を示す速度効率関数とに基づいて、前記蓄電部の蓄電残量で走行可能な走行可能距離が適切なものとなる前記レーンを推奨レーンとして決定する推奨レーン決定ステップと、
前記車両を前記推奨レーンに誘導するための推奨レーン誘導情報を前記運転者に通知する通知ステップと、を実行させるコンピュータプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−8565(P2009−8565A)
【公開日】平成21年1月15日(2009.1.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−170921(P2007−170921)
【出願日】平成19年6月28日(2007.6.28)
【出願人】(000100768)アイシン・エィ・ダブリュ株式会社 (3,717)
【Fターム(参考)】