説明

運転支援装置

【課題】鮮度の高いインフラ情報を取得できるように複数の車両を配置させることができる運転支援装置を提供することを課題とする。
【解決手段】路側の所定の位置に配設された装置から提供されるインフラ情報に基づいて運転支援を行う運転支援装置であって、車両に搭載されるインフラ情報取得装置の性能情報を受信する受信手段と、複数の車両についてのインフラ情報取得装置の性能情報を比較する性能比較手段と、性能比較手段での比較結果に基づいて複数の車両の配置を決定する配置決定手段とを備えることを特徴とし、複数の車両の中でインフラ情報取得装置の性能が高い車両を後方に配置すると好適である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、路側の所定の位置に配設された装置から提供されるインフラ情報に基づいて運転支援を行う運転支援装置に関する。
【背景技術】
【0002】
運転支援装置には、信号機が存在する交差点に車両が進入するときに赤信号(あるいは、黄信号)と予測した場合に、交差点に進入する前に運転者に対する警報出力などを行うものがある。このような運転支援装置では、例えば、路側に設置された光ビーコンからの信号をナビゲーションシステムの光ビーコン受信装置で受信し、この受信した信号に含まれるインフラ情報(特に、信号機のサイクル情報)から何秒後に赤信号に切り替わるかの情報を得ている。
【0003】
また、運転支援装置には、複数の車両を目的に応じて最適に配置し、複数の車両を車群で走行させるものがある。例えば、特許文献1に記載の装置は、プローブカーを先頭として車群制御を行うものであり、道路地図データベース又は交通データに基づいてプローブカーの制御戦略又は車群戦略の少なくとも一方を入力し、当該戦略の妥当性を評価して妥当な戦略をプローブカーに送信することによってプローブカーを制御する。
【特許文献1】特開2002−123894号公報
【特許文献2】特開平10−293899号公報
【特許文献3】特開2008−204094号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
インフラ情報中でも信号機のサイクル情報などの時々刻々と変化する情報(鮮度が必要となる情報)を用いて上記のようなサービスを実施する場合、最新の情報を用いたほうがより適切なサービスを提供できる。しかし、ナビゲーションシステムが低機能の場合、光ビーコン受信装置自体の性能が低かったり、ナビECUと光ビーコン受信装置との接続線の性能が低い(シリアル接続など)ため、光ビーコンからの信号受信時に遅延や誤差が大きくなる。このように受信時の遅延や誤差が大きくなると、サービスを実施する最適なタイミングから外れたタイミングでサービスが実施されたり、インフラ情報の情報量が多いと全てのインフラ情報を受信できないので、実施できるサービスが限られる。特に、許容される遅延のレベルを超える場合には、サービス自体を実施できないこともある。
【0005】
このような低機能のナビゲーションシステムを搭載した車両でも、インフラ情報を用いて適切なサービスを実施するために、他車両から鮮度の高いインフラ情報を提供してもらうことが考えられる。その場合、光ビーコン周辺に存在する複数の車両の中で、より鮮度の高いインフラ情報を取得できように複数の車両を配置させる必要がある。しかし、上記した車群制御では、そのようなことを考慮して車両を配置させていない。
【0006】
そこで、本発明は、鮮度の高いインフラ情報を取得できるように複数の車両を配置させることができる運転支援装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る運転支援装置は、路側の所定の位置に配設された装置から提供されるインフラ情報に基づいて運転支援を行う運転支援装置であって、車両に搭載されるインフラ情報取得装置の性能情報を受信する受信手段と、複数の車両についてのインフラ情報取得装置の性能情報を比較する性能比較手段と、性能比較手段での比較結果に基づいて複数の車両の配置を決定する配置決定手段とを備えることを特徴とする。
【0008】
この運転支援装置では、車両毎に、受信手段により路側装置周辺に存在する各車両に搭載されるインフラ情報取得装置の性能情報を受信する。そして、運転支援装置では、性能比較手段により路側装置周辺に存在する複数の車両についてのインフラ情報取得装置の性能情報を比較する。さらに、運転支援装置では、配置決定手段により複数の車両のインフラ情報取得装置の性能の比較結果に基づいて複数の車両の配置を決定する。このように、運転支援装置では、路側装置周辺に存在する複数の車両についてのインフラ情報取得装置の性能を考慮して車両を配置させることにより、複数の車両の中でインフラ情報取得装置の性能の高い車両でより鮮度の高いインフラ情報を取得できる。その結果、複数の車両の中のインフラ情報取得装置の性能の高い車両以外の車両でも、鮮度の高いインフラ情報を取得した車両からその鮮度の高い情報を取得することができる。
【0009】
なお、インフラ情報取得装置の性能としては、インフラ情報の受信装置自体の受信性能の他に、インフラ情報を受信後の車両内での通信性能も含むものとする。
【0010】
本発明の上記運転支援装置では、配置決定手段は、複数の車両の中でインフラ情報取得装置の性能が高い車両を後方に配置すると好適である。
【0011】
路側装置は所定の位置に固定されているので、その路側装置を通過するのが遅い車両ほど、最新(鮮度が高い)のインフラ情報を受信することができる。そこで、この運転支援装置では、配置決定手段により複数の車両の中でインフラ情報取得装置の性能が高い車両を後方に配置することにより、性能の高いインフラ情報取得装置で鮮度の高いインフラ情報を受信の遅延や誤差を極力抑えて取得することができ、その鮮度の高いインフラ情報を他車両に提供できる。
【0012】
本発明の上記運転支援装置では、インフラ情報に基づく運転支援のタイミングとインフラ情報を取得するタイミングとを比較するタイミング比較手段を備え、配置決定手段は、タイミング比較手段での比較結果も考慮して複数の車両の配置を決定すると好適である。
【0013】
インフラ情報に基づく運転支援を行う場合にはインフラ情報を取得してから運転支援を行うので、鮮度の高いインフラ情報を取得できるように複数の車両を配置させるためにはインフラ情報に基づく運転支援のタイミングを考慮する必要がある。そこで、この運転支援装置では、タイミング比較手段によりインフラ情報に基づく運転支援のタイミング(例えば、運転者に対して警報出力などを行う位置)とインフラ情報を取得するタイミング(例えば、路側装置からの信号を受信する位置)とを比較する。そして、運転支援装置では、配置決定手段によりその比較結果も考慮して複数の車両の配置を決定する。
【0014】
本発明の上記運転支援装置では、インフラ情報に基づく運転支援のタイミングは、車両の前方の交差点の信号機情報に基づいて車両が交差点に進入するときの信号機の状態が赤信号と予測した場合に車両停止させるための運転支援のタイミングとしてもよい。
【0015】
さらに、本発明の上記運転支援装置では、配置決定手段は、タイミング比較手段で赤信号と予測した場合に車両停止させるための運転支援のタイミングがインフラ情報を取得するタイミングよりも遅いと判定した場合に複数の車両の中でインフラ情報取得装置の性能が高い車両を後方に配置する。これによって、その後方に配置された車両においてより鮮度の高いインフラ情報を取得でき、それ以外の前方の各車両において赤信号と予測した場合に車両停止させるための運転支援を行う際に用いるインフラ情報としてその後方の車両で取得された鮮度の高いインフラ情報を用いることができる。
【0016】
また、本発明の上記運転支援装置では、配置決定手段は、タイミング比較手段で赤信号と予測した場合に車両停止させるための運転支援のタイミングがインフラ情報を取得するタイミングよりも早いと判定した場合に複数の車両の中でインフラ情報取得装置の性能が高い車両を前方に配置する。これによって、その前方に配置された車両においてより鮮度の高いインフラ情報を取得でき、それ以外の後方の各車両において赤信号と予測した場合に車両停止させるための運転支援を行う際に用いるインフラ情報としてその前方の車両で取得された鮮度の高いインフラ情報を用いることができる。
【0017】
本発明の上記運転支援装置では、複数の車両は、一体で走行する車群を形成していてもよい。
【発明の効果】
【0018】
本発明は、路側装置周辺に存在する複数の車両についてのインフラ情報取得装置の性能を考慮して車両を配置させることにより、複数の車両の中でインフラ情報取得装置の性能の高い車両でより鮮度の高いインフラ情報を取得できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、図面を参照して、本発明に係る運転支援装置の実施の形態を説明する。
【0020】
本実施の形態では、本発明に係る運転支援装置を、車両に搭載される赤信号進入警報装置に適用する。本実施の形態に係る赤信号進入警報装置は、インフラ協調制御により自車両が赤信号(停止信号)のときに交差点に進入することを防止するために、光ビーコンからのインフラ情報を利用して自車両が交差点に進入するときに赤信号と予測した場合には運転者に対して警報を実施する。特に、本実施の形態に係る赤信号進入警報装置は、鮮度の高いインフラ情報を取得するために、光ビーコン周辺に存在する車車間通信可能な複数の車両(車群)の配置を決定する機能を有している。ここでは、複数の車両が一体となって走行する車群を形成していてもよいし、少なくとも車車間通信が可能な複数の車両であればよい。この複数の各車両には、本実施の形態に係る赤信号進入警報装置がそれぞれ搭載されているものとする。なお、本実施の形態では、赤信号(停止信号)は赤信号点灯(但し、矢灯信号がある信号機の場合には全消灯)であり、この赤信号以外の信号状態が進行許可信号である。
【0021】
図1〜図4を参照して、本実施の形態に係る赤信号進入警報装置1について説明する。図1は、本実施の形態に係る赤信号進入警報装置の構成図である。図2は、本実施の形態に係る停止可能曲線の一例を示す図である。図3は、インフラ情報受信時に警報タイミングを超過していない場合の警報タイミングとインフラ情報受信位置との関係を示す図である。図4は、インフラ情報受信時に警報タイミングを超過している場合の警報タイミングとインフラ情報受信位置との関係を示す図である。
【0022】
赤信号進入警報装置1は、自車両が交差点に進入するときに赤信号と予測した場合に警報開始条件を満たしたときに運転者に対して前方の信号機が赤信号になることを通知し、停止を促す。特に、赤信号進入警報装置1では、光ビーコン周辺に存在する複数の車両についてのインフラ情報を取得するために必要な装備の性能を考慮して、車両配置を決定する。
【0023】
赤信号進入警報装置1は、路車間通信装置10、車車間通信装置11、車速センサ12、GPS[Global Positioning System]受信装置13、地図データベース14、ディスプレイ20、スピーカ21及びECU[Electronic Control Unit]30を備えている。
【0024】
なお、本実施の形態では、車車間通信装置11が特許請求の範囲に記載する受信手段に相当し、ECU30における各処理が特許請求の範囲に記載する性能比較手段、タイミング比較手段及び配置決定手段に相当する。
【0025】
路車間通信装置10は、インフラ側(路側)からの情報を提供する装置と通信を行うための装置であり、光ビーコン用の通信装置である。路車間通信装置10は、光ビーコンアンテナや処理装置などを備えており、交差点の手前の所定の位置に設置される光ビーコンから近赤外線によって情報を送受信する。特に、受信する場合、路車間通信装置10では、光ビーコンアンテナでダウンリンクエリア内で光ビーコンからの信号を受信する。そして、路車間通信装置10では、処理装置でその受信した信号を復調してダウンリンク情報を取り出し、そのダウンリンク情報をECU30に送信する。なお、路側装置が光ビーコンでない場合、路車間通信装置は、路側装置に応じた通信装置となる。
【0026】
ナビゲーションシステムが搭載される車両ではナビゲーションシステムに路車間通信装置10が組み込まれ、ナビゲーションシステムが搭載されない車両では路車間通信装置10単体で配備される。インフラ情報を取得するために必要な装備の性能としては、路車間通信装置10自体の受信性能(例えば、受信精度、受信遅延、受信誤差)と光ビーコンからの受信した信号の車両内での通信性能(例えば、通信方式(パラレル通信、シリアル通信など)、通信速度、通信誤差)がある。路車間通信装置10がナビゲーションシステムに組み込まれる場合、基本的には、低機能なナビゲーションシステムほどインフラ情報を取得するために必要な装備の性能も低くなる。インフラ情報を取得するために必要な装備の性能が高いほど、インフラ情報を取得する際の遅延や誤差が少なく、大容量の情報でも取得できる。
【0027】
ダウンリンク情報としては、VICS[Vehicle Information CommunicationSystem]情報やインフラ情報がある。VICS情報は、全車線で共通の道路交通情報である。道路交通情報は、渋滞情報、交通規制情報、駐車場情報などがある。インフラ情報は、道路形状状況、交差点情報、車線毎の信号サイクル情報などがある。
【0028】
信号サイクル情報は、青信号、黄信号、赤信号の点灯サイクル(矢灯信号を備える信号機の場合には矢灯信号も含めた点灯サイクル)、各信号の点灯時間(秒数)、現在点灯している信号とその信号が点灯してからの経過時間などである。光ビーコンから取得できる信号サイクル情報は、信号サイクルの2サイクル目までの情報を含む。ただし、感応式信号の場合には1サイクル目までが確定している情報であり、2サイクル目が未確定な情報であり、通常の信号の場合には2サイクル目までが確定している情報である。
【0029】
車車間通信装置11は、自車両周辺の他車両と通信を行うための装置である。車車間通信装置11では、ECU30から車車間送信信号を受信すると、その車車間送信信号に含まれる情報を変調し、所定距離以内に存在する車両に対してその変調した信号を送信する。また、車車間通信装置11では、所定距離以内に存在する車両から信号を受信すると、その受信した信号を復調して情報を取り出し、その情報を車車間受信信号としてECU30に送信する。なお、各車両では、車車間通信により、少なくともインフラ情報を取得するために必要な装備の性能情報を送信し、必要に応じて光ビーコンから受信したインフラ情報などを送信する。
【0030】
車速センサ12は、自車両の車速を検出するセンサである。車速センサ12では、車速を検出し、検出した車速を車速信号としてECU30に送信する。
【0031】
GPS受信装置13は、GPSアンテナや処理装置などを備えており、自車両の現在位置などを検出する。GPS受信装置13では、GPSアンテナでGPS衛星からのGPS信号を受信する。そして、GPS受信装置13では、処理装置でそのGPS信号を復調し、その復調された各GPS衛星からの情報に基づいて自車両の現在位置(緯度、経度)などを算出する。そして、GPS受信装置13では、自車両の現在位置などを現在位置信号としてECU30に送信する。なお、車両にナビゲーションシステムが搭載される場合、ナビゲーションシステムのGPS受信装置を共有するか、あるいは、ナビゲーションシステムから現在位置を取得する。
【0032】
地図データベース14は、記憶装置の所定の領域に構成され、道路情報、交差点情報などが格納される。地図データベース14には、光ビーコンのダウンリンクエリアも格納されていてもよい。なお、車両にナビゲーションシステムが搭載される場合、ナビゲーションシステムの地図データベースを利用する。
【0033】
ディスプレイ20は、他のシステムと共用される車載ディスプレイである。ディスプレイ20では、ECU30からの警報画像信号を受信すると、その警報画像信号に示される画像を表示する。
【0034】
スピーカ21は、他のシステムと共用される車載スピーカである。スピーカ21では、ECU30から警報音声信号を受信すると、その警報音声信号に応じて音声を出力する。
【0035】
ECU30は、CPU[Central ProcessingUnit]、ROM[Read Only Memory]、RAM[Random Access Memory]などからなる電子制御ユニットであり、赤信号進入警報装置1を統括制御する。ECU30では、ダウンリンクエリア通過時に路車間通信装置10から信号を受信し、自車両周辺に通信可能な車両が存在するときには車車間通信装置11から車車間受信信号を受信し、所定時間毎に車速センサ12、GPS受信装置13から各信号をそれぞれ受信する。そして、ECU30では、これら各信号や地図データベース14の情報に基づいて赤信号進入警報処理、車群配置処理、インフラ情報提供処理などを実行し、警報通知する場合にはディスプレイ20やスピーカ21に各警報信号をそれぞれ送信するとともに必要に応じて車車間通信装置11に車車間送信信号を送信する。
【0036】
赤信号進入警報処理について説明する。ECU30では、路車間通信装置10からのインフラ情報(特に、信号サイクル情報)を取得すると、信号情報利用サービス(ここでは、赤信号予測での警報通知サービス)を提供できるか否かを判定する。この判定方法としては、インフラ情報(信号サイクル情報など)や各センサによる自車両情報(車速情報など)が正常な情報であるか否か、停止線までの距離が十分か、信号時間が十分に残っているか、経路案内情報に基づいて前方の交差点を通過するか否か、自車両が正常な状態か否かなどで判定する。例えば、信号サイクル情報の場合、感応式信号の場合には上記したように1サイクルの情報しか得られないが、この1サイクルの情報の赤信号の情報しか得られないなど不完全な場合には交差点進入時の点灯色を予測できないので、信号情報利用サービスを提供できない。
【0037】
信号情報利用サービスを提供できる場合、ECU30では、路車間通信装置10からの停止線位置情報と信号サイクル情報、車速センサ12からの車速情報、GPS受信装置13からの現在位置情報に基づいて、自車両が現在車速を維持したと仮定した場合に自車両が交差点に進入するとき(特に、停止線に到達するとき)の信号機の点灯色を予測する。具体的には、ECU30では、自車両の現在位置と停止線位置に基づいて停止線までの残距離を算出し、その残距離と自車両の現在車速に基づいて停止線に到達するまでの残時間を算出する。そして、ECU30では、その残時間と信号サイクル情報に基づいて、停止線に到達するときの点灯色を予測する。なお、自車両の加速度などの他の情報を考慮して予測してもよい。
【0038】
自車両が交差点に進入するときに赤信号と予測した場合、ECU30では、路車間通信装置10からの停止線位置情報、車速センサ12からの車速情報、GPS受信装置13からの現在位置情報に基づいて、警報タイミングを算出する。具体的には、ECU30では、自車両の現在位置と停止線位置に基づいて、停止線までの残距離を算出する。そして、ECU30では、その残距離と現在車速に基づいて、自車両が現在車速を維持したと仮定した場合の停止可能曲線C上の警報タイミングを算出する(図2参照)。なお、自車両の加速度などの他の情報を考慮して警報タイミングを算出してもよい。
【0039】
警報タイミングを算出すると、ECU30では、その警報タイミングと停止線までの現在の残距離に基づいて、警報開始条件(自車両の現在の残距離が警報タイミングで示される残距離になったか否か)を満たすか否かを判定する。
【0040】
図2には、横軸を交差点の停止線までの残距離とし、縦軸を車速とし、停止可能曲線Cを示している。停止可能曲線Cは、安全に停止線で停止することが可能な所定の減速度で減速した場合の残距離と車速との関係を示す曲線であり、警報が必要か否かの境界線でもある。停止可能曲線Cの下側の領域は、自車両が停止線で安全に止まることができる領域であり、警報が必要ない領域である。停止可能曲線Cの上側の領域は、停止線で停止するためには非常に高い減速度が必要であり、自車両が停止線で安全に止まることができない領域であり、警報が必要な領域である。したがって、この停止可能曲線Cの上側の領域に入る前に減速を開始する必要があるので、この停止可能曲線C上に警報タイミングを設定する。例えば、図2に示す点Pが自車両の現在の残距離と車速の場合、その車速を維持したとすると停止可能曲線C上の点Wが警報タイミングとして算出され、その点Wにおける残距離に自車両が実際に到達したときに警報開始条件を満たすことになる。
【0041】
なお、警報開始条件の判定では、アクセル状況やブレーキ状況などを加味して判定を行ってもよい。また、警報開始条件の判定方法としては、停止線に到達するまでの予測時間であるTTC[Time To Collison]を算出し、TTCに基づいて判定してもよい。
【0042】
警報開始条件を満たす場合、ECU30では、交差点進入時の赤信号に対する警報音声や警報画像を生成し、警報画像信号をディスプレイ20に送信するとともに警報音声信号をスピーカ21に送信する。
【0043】
車群配置処理について説明する。ECU30では、光ビーコンからの信号を受信可能なダウンリンクエリア(すなわち、インフラ協調用の信号サービスエリア)付近か否かを判定する。この判定としては、例えば、過去に通過した光ビーコンからの受信エリアを記録しておくことにより、その受信履歴から判定を行ってもよいし、あるいは、地図データベース14に光ビーコンのダウンリンクエリアが格納されている場合にはその情報を利用して判定を行ってもよい。
【0044】
インフラ協調用信号サービスエリア付近の場合、ECU30では、自車両の走行ルート上に信号情報利用サービスを行う対象の交差点(信号機)があるか否かを判定する。この判定としては、例えば、ナビゲーションシステムが搭載されている場合には経路案内の走行ルートに基づいて判定を行ってもよいし、あるいは、過去の走行ルート(帰宅ルート、通勤ルートなど)を記録しておくことにより、その過去の走行ルートから判定を行ってもよい。
【0045】
自車両の走行ルート上に対象の交差点がある場合、ECU30では、自車両の周辺に車車間通信可能な車両が存在するか否かを判定する。この判定としては、例えば、他車両に車車間通信装置が搭載されており、その車車間通信装置との間で通信を行うことができる範囲内か否か(車車間通信装置11で信号を受信できるか否か)で判定する。自車両の周辺に車車間通信可能な車両が存在しない場合、ECU30では、車群配置処理を終了する。この場合、自車両の路車間通信装置10で受信したインフラ情報を用いて赤信号進入警報処理を行う。
【0046】
自車両の周辺に車車間通信可能な車両が存在する場合、ECU30では、車車間通信装置11からの自車両周辺の車両(特に、前方車両)の情報(特に、インフラ情報を取得するために必要な装備の性能情報)を取得する。そして、ECU30では、自車両と前方車両とのインフラ情報を取得するために必要な装備の性能情報を比較する。この判定では、上記したようなインフラ情報を取得するために必要な装備の性能情報を比較する。特に、ナビゲーションシステムに組み込まれている路車間通信装置の場合、ナビゲーションシステムが低機能なものか高機能なものかによって装備の性能も決まる場合があるので、ナビゲーションシステムの機能の高低あるいは製造年度などを比較してもよい。なお、自車両の情報(インフラ情報を取得するために必要な装備の性能情報など)を周辺の他車両に送信するために、ECU30では、自車両の情報を車車間送信信号として車車間通信装置11に送信する。
【0047】
前方に自車両の装備より性能の高い装備の車両が存在しない場合、自車両でインフラ情報を遅延や誤差を最も抑えて取得(受信)できるので、現状の車両配置(自車両が後方)を維持する。この場合、自車両の路車間通信装置10で受信したインフラ情報を用いて赤信号進入警報処理を行うことになる。また、前方の他車両でも自車両の路車間通信装置10で受信したインフラ情報(鮮度の高い情報)を用いて赤信号進入警報処理を行うために、そのインフラ情報を前方の他車両に送信する必要があるので、ECU30では、受信したインフラ情報を車車間送信信号として車車間通信装置11に送信する。
【0048】
前方に自車両の装備より性能の高い装備の車両が存在する場合、性能の最も高い他車両でインフラ情報を遅延や誤差を最も抑えて取得(受信)できるので、ECU30では、自車両とその前方車両との配置を変更するための指令を行う。この指令としては、例えば、自車両の直前の車両が性能の高い車両の場合にはディスプレイ20やスピーカ21を利用して自車両の運転者に対して前方車両を追い越すための指令を行ったり、前方車両に対して車車間通信を利用して車線変更や減速などをしてもらう指令を行ったりする。この際、前方車両に対して、車車間通信を利用して、配置を変更することを通知する。ここでは、車車間通信可能な各車両において上記のような配置変更を行うので、最終的には、車車間通信が可能な複数の車両の中で性能の最も高い車両が最後方に配置される。この場合、性能の最も高い他車両の路車間通信装置で受信したインフラ情報(鮮度の高い情報)を用いて赤信号進入警報処理を行うことになる。
【0049】
ECU30では、路車間通信装置10から自車両で受信したインフラ情報を取得するとともに、車車間通信装置11から性能の最も高い他車両で受信したインフラ情報を取得する。そして、ECU30では、車車間通信が可能な複数の車両の中で最後方に配置された車両(性能の最も高い車両)で受信したインフラ情報を用いて赤信号進入警報処理を行う。
【0050】
なお、車両の配置変更を行う際に以下の条件を考慮するとよい。この条件としては、車間距離が十分であるか否か、車線変更をし易いか否か(車線数、無関係な車両の有無、車速など)、停止線までの距離が十分か否か、急激な加減速が必要か否かがある。また、既にインフラ情報を受信している車両(光ビーコンのダウンリンクエリアを通過した車両)を除く。したがって、車両配置変更は、基本的には、光ビーコンのダウンリンクエリアの通過前に行われる。
【0051】
さらに、警報タイミングと受信遅延を考慮して車両の配置変更を行う場合について説明する。後方の他車両のインフラ情報を利用して赤信号進入警報処理を行う場合、他車両でインフラ情報を受信してからそのインフラ情報を自車両で受信する前に、自車両が警報タイミングに基づく警報開始条件を満たした場合(すなわち、後方の他車両からのインフラ情報を受信する前に警報タイミングで示される残距離より実際の残距離が短くなる場合)、自車両では、他車両のインフラ情報を利用して適切な赤信号進入警報処理をできない(例えば、警報タイミングが遅れる)。したがって、後方の他車両からのインフラ情報を自車両で受信する前に警報タイミングに基づく警報開始条件を満たさないと予測される場合には上記のように車両配置変更を行い、後方の他車両からのインフラ情報を自車両で受信する前に警報タイミングに基づく警報開始条件を満たすと予測される場合には下記の特別処理を行う。
【0052】
具体的には、ECU30では、上記した同様の処理により、停止線位置情報、車速情報、現在位置情報に基づいて警報タイミングを算出する。この際、インフラ情報受信前の場合、インフラ情報に含まれる停止線位置情報が得られないが、地図データベース14に格納されている情報あるいは前方カメラ(図示せず)で撮像された画像情報から検出した停止線位置情報などを利用する。そして、ECU30では、地図データベース14に格納されている光ビーコンのダウンリンクリンクの位置(停止線からの残距離に換算)D(m)から警報タイミングの残距離L(m)を減算し、差X(m)を算出する(図3参照)。
【0053】
さらに、ECU30では、他車両と自車両との車間距離(m)+(他車両がインフラ情報を受信する際の路車間通信の受信遅延時間(s)+他車両と自車両との車車間通信の受信遅延時間(s))×自車両の現車速(m/s)の算出式により、自車両が現車速を維持したと仮定した場合に他車両で受信したインフラ情報を自車両で受信するまでに自車両が進む距離Y(m)を算出する。他車両と自車両との車間距離は、実験などで求められた車速に応じた一般的な車間距離でもよいし、ミリ波レーダなどで検出された実際の車間距離でもよい。他車両がインフラ情報を受信する際の路車間通信の受信遅延時間は、車車間通信によって他車両から装備の性能情報で得られる。他車両と自車両との車車間通信の受信遅延時間は、車車間通信による他車両から装備の性能情報と自車両の装備の性能情報から得られる。そして、ECU30では、自車両が進む距離Yが差Xより小さいか否かを判定する。
【0054】
図3に示すように、自車両が進む距離Y1が差Xより小さい場合、後方の他車両で受信したインフラ情報を自車両で受信したときに、警報タイミングに基づく警報開始条件を満たさないと予測できる。この場合、後方の他車両から取得したインフラ情報によって通常の警報タイミングでの警報出力を行うことができる。そこで、ECU30では、上記したように、装備の性能の高い他車両を後方に配置を変更する。
【0055】
一方、図3に示すように、自車両が進む距離Y2が差Xより大きい場合、後方の他車両で受信したインフラ情報を自車両で受信したときに、警報タイミングに基づく警報開始条件を既に満たすと予測できる。この場合、後方の他車両から取得したインフラ情報によって通常の警報タイミングでの警報出力を行うことができない。そこで、ECU30では、まず、自車両が進む距離Yが差Xより小さくなるように、自車両の車速を低下させる(すなわち、自車両が進む距離Yを少なくする)。自車両の車速低下によって自車両が進む距離Yを差Xより小さくできる場合、ECU30では、上記したように、装備の性能の高い他車両を後方に配置を変更する。しかし、自車両の車速を低下させることができない場合あるいは車速を低下させても距離Yが差Xより小さくならない場合、ECU30では、自車両で受信したインフラ情報を用いて赤信号進入警報処理を行う。しかし、自車両でインフラ情報を受信できなかった場合、ECU30では、車車間通信によって後方の他車両からインフラ情報を受信し、そのインフラ情報を用いて赤信号進入警報処理を行う。この後方の他車両は、警報開始条件を満たす前にインフラ情報を受信可能な位置に存在する他車両であることが望ましい。
【0056】
インフラ情報提供処理について説明する。光ビーコンは、交差点から決まった距離に設置されておらず、交差点によって様々な位置に設置されている。そのため、光ビーコンが、交差点からかなり近い位置に設置されている場合もある。このような場合や自車両の車速が高い場合など、図4に示すように、光ビーコンのダウンリンクリンクの位置Dが警報タイミングWの残距離Lよりも停止線寄りになる場合(光ビーコンのダウンリンクリンクの位置Dと警報タイミングの残距離Lとの差Xがマイナス値)がある。このような場合、複数の車両のうちの前方の車両(特に、先頭車両)では通常の警報タイミングで警報出力を行うことができないが、後方の他車両では車車間通信によって前方の車両(特に、先頭車両)からインフラ情報を取得することによって通常の警報タイミングでの警報出力を行うことができる。そこで、このような場合、後方の車両だけでも通常の警報タイミングで警報出力を行わせるために、先頭車両から車車間通信によって後方の車両にインフラ情報を送信する。
【0057】
具体的には、ECU30では、路車間通信装置10で光ビーコンからの信号(特に、インフラ情報)を受信したか否かを判定する。受信した場合、ECU30では、警報タイミング(残距離)と停止線までの現在の残距離に基づいて、既に警報タイミングの残距離を超過しているか否か(警報開始条件を満たしたか否か)を判定する。
【0058】
既に警報タイミングの残距離を超過している場合、ECU30では、自車両の後方に車車間通信可能な車両が存在するか否かを判定する。後方に車車間通信可能な車両が存在する場合、ECU30では、車車間通信装置11からの自車両後方の車両の情報を取得する。この後方車両から取得する情報としては、後方車両でインフラ情報を受信したときに警報タイミングを超過するか否かを判断するための情報であり、後方車両の現在車速、現在位置などである。停止位置情報については、自車両で受信した情報を用いる。なお、後方車両においてインフラ情報を受信したときに警報タイミングを超過するか否かの判断を行っている場合、その判断結果を送信依頼し、その判断結果を後方車両から取得するようにしてもよい。
【0059】
そして、ECU30では、後方車両においてインフラ情報を受信したときに警報タイミングを超過するか否かを判定する。超過する場合、ECU30では、自車両で受信したインフラ情報をその後方車両に提供するために、インフラ情報を車車間送信信号として車車間通信装置11に送信する。ちなみに、超過しない場合、後方車両では、その後方車両自身で受信したインフラ情報を利用して通常の警報タイミングで警報出力をできるので、自車両からはインフラ情報を提供しない。なお、自車両が後方の車両の場合、先頭車両からインフラ情報を受信し、ECU30では、そのインフラ情報を用いて赤信号進入警報処理を行う。
【0060】
なお、光ビーコンのダウンリンクリンクの位置が警報タイミングの残距離よりも停止線寄りになる場合、車車間通信が可能な複数の車両の中で性能の最も高い車両を先頭に配置を変更するようにするとよい。このような条件になる光ビーコンの位置が交差点に近い交差点については、最初にその交差点を通過するときに学習をしておき、2回目以降にその交差点を通過するときには車車間通信が可能な複数の車両の中で性能の最も高い車両を先頭にする配置変更を予め行っておけばよい。
【0061】
図1〜図4を参照して、赤信号進入警報装置1における動作について説明する。特に、ECU30における車群配置処理については図5のフローチャートに沿って説明し、インフラ情報提供処理については図6のフローチャートに沿って説明する。図5は、図1のECUにおける車群配置処理の流れを示すフローチャートである。図6は、図1のECUにおけるインフラ情報提供処理の流れを示すフローチャートである。
【0062】
自車両が交差点手前のダウンリンクエリアに入ると、路車間通信装置10では、光ビーコンからインフラ情報などを受信し、そのインフラ情報をECU30に送信している。また、所定距離以内に存在する他車両から信号が送信されると、車車間通信装置11では、その他車両からの各種情報を受信し、その各種情報をECU30に送信している。
【0063】
一定時間毎に、車速センサ12では、自車両の車速を検出し、車速信号をECU30に送信している。GPS受信装置13では、各GPS衛星からGPS情報をそれぞれ受信し、各GPS情報に基づいて現在位置などを算出し、現在位置信号をECU30に送信している。ECU30では、これらの各信号を受信し、自車両の情報を取得する。
【0064】
車群配置処理を実行すると、ECU30では、光ビーコンのダウンリンクエリアの位置情報に基づいて、インフラ協調用の信号サービスエリア付近か否かを判定する(S10)。S10にてインフラ協調用信号サービスエリア付近でないと判定した場合、ECU30では、車群配置処理を終了する。
【0065】
S10にてインフラ協調用信号サービスエリア付近と判定した場合、ECU30では、ナビの経路案内用の走行ルートなどを利用し、自車両の走行ルート上に対象の交差点があるか否かを判定する(S11)。S11にて対象の交差点がないと判定した場合、ECU30では、車群配置処理を終了する。
【0066】
S11にて対象の交差点があると判定した場合、ECU30では、自車両周辺に車車間通信可能な車両が存在するか否かを判定する(S12)。S12にて車車間通信可能な車両が存在しないと判定した場合、ECU30では、路車間通信装置10での路車間通信によってインフラ情報を取得し(S13)、そのインフラ情報を利用して赤信号進入警報処理を行う(S21)。
【0067】
S12にて車車間通信可能な車両が存在すると判定した場合、ECU30では、車車間通信装置11での車車間通信によって前方に存在する各車両(複数台の場合あり)のインフラ情報を取得するために必要な装備の性能情報を取得する(S14)。そして、ECU30では、自車両と前方の各車両(複数台の場合あり)におけるインフラ情報を取得するために必要な装備の性能を比較する(S15)。
【0068】
ECU30では、前方車両(自車両の直前の車両)の装備の性能が自車両の装備の性能より高いか否かを判定する(S16)。S16にて前方車両の装備の性能が自車両の装備の性能より高いと判定した場合、ECU30では、自車両と前方車両との配置を変更するための指令を行う(S17)。これによって、自車両が、その前方車両を追い越したりする。車車間通信可能な各車両において同様の車両の配置変更が行われ、車車間通信可能な複数の車両の中で最も性能の高い装備の車両が最後方に配置されるようになる。
【0069】
S16にて前方車両の装備の性能が自車両の装備の性能より低いと判定した場合又はS17の処理を行った場合、ECU30では、前方に最も性能の高い装備の車両が存在しないか否かを判定する(S18)。S18にて前方に最も性能の高い装備の車両がまだ存在すると判定した場合、ECU30では、S16の処理に戻る。
【0070】
S18にて前方に最も性能の高い装備の車両が存在しないと判定した場合、ECU30では、路車間通信装置10での路車間通信によってインフラ情報を取得するとともに(S19)、車車間通信装置11での車車間通信によって最後方車両(装備性能の最も高い車両)で受信したインフラ情報を取得する(S20)。この際、各車両(少なくとも最後方に配置された車両)では、光ビーコンのダウンリンクエリアに入ると光ビーコンからインフラ情報を受信すると、その受信したインフラ情報を車車間通信によって周辺車両に送信している。そして、ECU30では、装備性能の最も高い車両で受信したインフラ情報(鮮度の高いインフラ情報)を利用して赤信号進入警報処理を行う(S21)。
【0071】
なお、S16、S17の処理を行う際に、以下の処理を行ってもよい。S16の処理を行った後、ECU30では、警報タイミングを算出し、光ビーコンのダウンリンクリンクの位置と警報タイミングの位置との差Xを算出する。また、ECU30では、自車両が現車速を維持したと仮定した場合に他車両で受信したインフラ情報を自車両で受信するまでに自車両が進む距離Yを算出する。そして、ECU30では、自車両が進む距離Yが差Xより小さいか否かを判定する。自車両が進む距離Yが差Xより小さいと判定した場合、ECU30では、S17の処理を行う。自車両が進む距離Yが差Xより大きいと判定した場合、ECU30では、自車両の車速を低下させることによって自車両が進む距離Yを差Xより小さくできるか否かを判定する。自車両の車速を低下させることによって自車両が進む距離Yを差Xより小さくできる場合、ECU30では、S17の処理を行い、自車両の車速を低下させる。自車両の車速を低下させることによって自車両が進む距離Yを差Xより小さくできない場合、ECU30では、S19の処理で自車両で取得したインフラ情報を利用してS21の処理を行うかあるいはS20の処理で後方の車両から取得したインフラ情報を利用してS21の処理を行う。この場合、S17の処理については行わない。
【0072】
インフラ情報提供処理を実行すると、ECU30では、インフラ情報を受信済みか否かを判定する(S30)。S30にてインフラ情報を受信済みでないと判定した場合、ECU30では、インフラ情報提供処理を終了する。
【0073】
S30にてインフラ情報を受信済みと判定した場合、ECU30では、現在の残距離に基づいて、警報タイミング(残距離)を既に超過しているか否かを判定する(S31)。S31にて超過していないと判定した場合、ECU30では、インフラ情報提供処理を終了する。
【0074】
S31にて既に超過していると判定した場合、ECU30では、自車両後方に車車間通信可能な車両が存在するか否かを判定する(S32)。S32にて車車間通信可能な車両が存在しないと判定した場合、ECU30では、インフラ情報提供処理を終了する。
【0075】
S32にて車車間通信可能な車両が存在すると判定した場合、ECU30では、車車間通信装置11での車車間通信によって後方に存在する各車両(複数台の場合あり)のインフラ情報受信時に警報タイミングを超過するか否かを判定するために必要な情報を取得する(S33)。そして、ECU30では、後方車両(複数台の場合あり)がインフラ情報受信時に警報タイミングを超過するか否かを判定する(S34)。S34にて警報タイミングを超過する後方車両が存在しないと判定した場合、ECU30では、インフラ情報提供処理を終了する。
【0076】
S34にて警報タイミングを超過する後方車両が存在すると判定した場合、ECU30では、車車間通信によって自車両で取得したインフラ情報を後方車両に提供するために、インフラ情報を車車間送信信号として車車間通信装置11に送信する(S35)。この車車間送信信号を受信すると、車車間通信装置11では、その車車間送信信号に含まれるインフラ情報を変調し、所定距離以内に存在する車両(特に、後方車両)に対して信号を送信する。この信号を車車間通信によって受信すると、後方車両では、この信号からインフラ情報を取り出し、このインフラ情報を用いて赤信号進入警報処理を行う。これによって、後方車両では、通常の警報タイミングで警報出力を行うことができる。
【0077】
赤信号進入警報処理を実行すると、ECU30では、取得したインフラ情報などに基づいて、信号サイクル情報利用サービスが可能か否かを判定する。信号情報利用サービスが不可と判定した場合、ECU30では、前方の信号機に対する処理を終了する。
【0078】
信号情報利用サービスが可能と判定した場合、ECU30では、インフラ情報(停止線位置情報、信号サイクル情報)、車速情報、現在位置情報に基づいて、自車両が交差点に進入するときの点灯色を予測し、交差点進入時に赤信号か否かを判定する。交差点進入時の点灯色が赤信号でないと判定した場合、ECU30では、前方の信号機に対する処理を終了する。
【0079】
交差点進入時の点灯色が赤信号と判定した場合、ECU30では、インフラ情報(停止線位置情報)、車速情報、現在位置情報に基づいて、警報タイミングを算出する。そして、ECU30では、警報タイミングに基づいて警報開始条件が成立したか否かを判定する。警報開始条件が成立と判定した場合、ECU30では、警報音声や警報画像を生成し、警報画像信号をディスプレイ20に送信するとともに警報音声信号をスピーカ21に送信する。この警報画像信号を受信すると、ディスプレイ20では、警報画像を表示する。また、この警報音声信号を受信すると、スピーカ21では、警報音声を出力する。
【0080】
この赤信号進入警報装置1によれば、光ビーコン周辺で自車両の周辺に存在する車車間通信可能な複数の車両についてのインフラ情報を取得するための装備の性能を考慮して、その複数の車両に対する適切な車両配置ができる。その結果、複数の車両の中で装備の性能の高い車両で、受信遅延や誤差を抑えつつ鮮度の高いインフラ情報を取得できる。さらに、複数の車両の中の装備の性能の高い車両以外の車両でも、鮮度の高いインフラ情報を取得した車両からその鮮度の高い情報を取得することができ、鮮度の高いインフラ情報を利用することによって赤信号進入警報処理を高精度に行うことができる(適切なタイミングで警報出力を行うことができる)。低性能な装備の車両でも、インフラ情報の受信遅延や誤差によるサービス品質の低下を抑えることができる(サービス自体ができないことも削減できる)。
【0081】
また、赤信号進入警報装置1によれば、複数の車両の中で装備の性能が最も高い車両を最後方に配置することにより、装備の性能の最も高い車両で受信遅延や誤差を極力抑えて最も鮮度の高いインフラ情報を取得することができ、その鮮度の高いインフラ情報を他車両に提供できる。
【0082】
また、赤信号進入警報装置1によれば、警報タイミングの位置と光ビーコンの位置(ダウンリンクエリアの位置)とを比較し、その比較結果を考慮して車両配置を行うことにより、より適切な車両配置を行うことができる。さらに、赤信号進入警報装置1によれば、警報タイミングの位置と光ビーコンの位置との差と他車両が受信したインフラ情報を自車両が受信するまでに進む距離とを比較し、その比較結果を考慮して車両配置を行うことにより、更に適切な車両配置を行うことができる。
【0083】
また、赤信号進入警報装置1によれば、警報タイミングの位置が光ビーコンの位置より停止線寄りの場合(インフラ情報受信時に既に警報タイミングを満たしている場合)でも、複数の車両の中で先頭車両が後方車両にインフラ情報を提供することにより、その提供されたインフラ情報を利用することによって後方車両では赤信号進入警報処理を適切に行うことができる。その結果、複数の車両の中で、警報タイミングが遅れる車両を極力少なくできる。
【0084】
以上、本発明に係る実施の形態について説明したが、本発明は上記実施の形態に限定されることなく様々な形態で実施される。
【0085】
例えば、本実施の形態では車両に搭載される赤信号進入警報装置における車群配置機能に適用したが、インフラ情報を利用する他の運転支援装置あるいは車群制御装置に適用してもよいし、あるいは、インフラ側(路側)の装置に適用してもよい。本実施の形態では車群を形成する複数の各車両に車群配置機能を有する赤信号進入警報装置がそれぞれ搭載される構成としたが、車群を形成する複数の車両の中の一台だけが車群配置機能を有する装置が搭載され、その車両から他の車両に指令を出すようにしてもよい。
【0086】
また、本実施の形態ではインフラ情報として信号情報を利用する運転支援に適用したが、鮮度が要求される時々刻々と変化する他のインフラ情報(例えば、歩行者情報)を利用する運転支援に適用してもよい。
【0087】
また、本実施の形態では赤信号進入警報装置の専用のECUとしたが、ナビゲーション用のECUなどに1つの機能として赤信号進入警報機能を組み込んでもよい。
【0088】
また、本実施の形態では車両の前後方向だけの配置を変更する構成としたが、左右方向も考慮して配置を変更してもよい。
【0089】
また、本実施の形態では車両配置変更を行う場合には運転者に指令を出して運転者による操作で追い越しなどを行う構成としたが、自動運転などの他の手法で車両配置変更を行ってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0090】
【図1】本実施の形態に係る赤信号進入警報装置の構成図である。
【図2】本実施の形態に係る停止可能曲線の一例を示す図である。
【図3】インフラ情報受信時に警報タイミングを超過していない場合の警報タイミングとインフラ情報受信位置との関係を示す図である。
【図4】インフラ情報受信時に警報タイミングを超過している場合の警報タイミングとインフラ情報受信位置との関係を示す図である。
【図5】図1のECUにおける車群配置処理の流れを示すフローチャートである。
【図6】図1のECUにおけるインフラ情報提供処理の流れを示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0091】
1…赤信号進入警報装置、10…路車間通信装置、11…車車間通信装置、12…車速センサ、13…GPS受信装置、14…地図データベース、20…ディスプレイ、21…スピーカ、30…ECU

【特許請求の範囲】
【請求項1】
路側の所定の位置に配設された装置から提供されるインフラ情報に基づいて運転支援を行う運転支援装置であって、
車両に搭載されるインフラ情報取得装置の性能情報を受信する受信手段と、
複数の車両についてのインフラ情報取得装置の性能情報を比較する性能比較手段と、
前記性能比較手段での比較結果に基づいて複数の車両の配置を決定する配置決定手段と
を備えることを特徴とする運転支援装置。
【請求項2】
前記配置決定手段は、前記複数の車両の中で前記インフラ情報取得装置の性能が高い車両を後方に配置することを特徴とする請求項1に記載の運転支援装置。
【請求項3】
インフラ情報に基づく運転支援のタイミングとインフラ情報を取得するタイミングとを比較するタイミング比較手段を備え、
前記配置決定手段は、前記タイミング比較手段での比較結果も考慮して複数の車両の配置を決定することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の運転支援装置。
【請求項4】
前記インフラ情報に基づく運転支援のタイミングは、車両の前方の交差点の信号機情報に基づいて車両が交差点に進入するときの信号機の状態が赤信号と予測した場合に車両停止させるための運転支援のタイミングであることを特徴とする請求項3に記載の運転支援装置。
【請求項5】
前記配置決定手段は、前記タイミング比較手段で赤信号と予測した場合に車両停止させるための運転支援のタイミングがインフラ情報を取得するタイミングよりも遅いと判定した場合に前記複数の車両の中で前記インフラ情報取得装置の性能が高い車両を後方に配置することを特徴とする請求項4に記載の運転支援装置。
【請求項6】
前記配置決定手段は、前記タイミング比較手段で赤信号と予測した場合に車両停止させるための運転支援のタイミングがインフラ情報を取得するタイミングよりも早いと判定した場合に前記複数の車両の中で前記インフラ情報取得装置の性能が高い車両を前方に配置することを特徴とする請求項4又は請求項5に記載の運転支援装置。
【請求項7】
前記複数の車両は、一体で走行する車群を形成していることを特徴とする請求項1〜請求項6のいずれか1項に記載の運転支援装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−134865(P2010−134865A)
【公開日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−312585(P2008−312585)
【出願日】平成20年12月8日(2008.12.8)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.VICS
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】