説明

運転支援装置

【課題】運転支援の機能を運転者が適切に利用することができる運転支援装置を提供すること。
【解決手段】本発明に係る車両の制御により運転者の運転を支援する運転支援装置は、運転支援制御中における運転者の操作介入に基づいて、運転支援制御を制限する運転支援制限手段と、運転支援制御の信頼度を検出する信頼度検出手段と、信頼度に応じて運転支援制限手段の作動条件を変更する作動条件変更手段と、を備えることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の制御により運転者の運転を支援する運転支援装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、自動運転、ACC(Adaptive Cruise Control)システム、LKA(Lane Keeping Assist)システムなどの車両運転支援技術が開発されている。自動運転とは、予め決められたルールで運転を制御することをいう。ACCシステムとは、前方を走る先行車の速度に合わせ一定の車間を確保して追従するシステムのことをいう。LKAシステムとは、車両が走行車線を逸脱しないようにアシストするシステムのことをいう(例えば、特許文献1〜3参照)。
【0003】
特許文献1には、運転者による操舵量が予め設定された閾値以上である場合に、運転者操舵介入ありと判断され、車線追従制御が解除または禁止される車線追従制御装置が記載されている。
【0004】
また、特許文献2には、走行する道路の曲率が第1の閾値以下であって、かつ車両の発生する横加速度が第2の閾値以上である場合に、運転者操舵介入ありと判断され、操舵トルク制御の解除等が行われる車線追従制御装置が記載されている。
【0005】
また、特許文献3には、操舵トルクの大きさが予め設定された閾値以上である場合に、運転支援制御よりも運転者による操舵を優先させる運転支援装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002−29438号公報
【特許文献2】特開2002−193126号公報
【特許文献3】特開2005−343184号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に記載の車線追従制御装置では、運転者による操舵量が予め設定された一定の閾値以上である場合であっても、運転支援制御を実行することが望ましい場合がある。しかしながら、特許文献1に記載の車線追従制御装置では、運転者による操舵量が予め設定された一定の閾値以上である場合に、運転者が運転操作を行う必要性が生じてしまう。このため、運転支援制御を実行することが望ましい場合であるにもかかわらず、運転者が運転操作を行う必要性が生ずることとなる。このように、運転支援の機能を運転者が状況に応じて適切に利用できないといった問題があった。
【0008】
本発明は、運転支援の機能を運転者が適切に利用することができる運転支援装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述の課題を解決するため、本発明に係る運転支援装置は、運転支援制御中における運転者の操作介入に基づいて、運転支援制御を制限する運転支援制限手段と、運転支援制御の信頼度を検出する信頼度検出手段と、信頼度に応じて運転支援制限手段の作動条件を変更する作動条件変更手段と、を備えることを特徴とする。
【0010】
本発明によれば、運転支援制御の信頼度を予め検出しておき、検出された信頼度に応じて、運転支援制限手段による運転支援制御の作動条件を変更することができる。これにより、検出された信頼度から、運転支援制御を実行することが望ましいと判断された場合には、運転支援制御を作動させることができる。この場合、運転者が運転操作を行う必要性が少なくなる。一方、検出された信頼度から、運転支援制御を実行することが望ましくないと判断された場合には、運転支援制御を作動させないことができる。この場合、運転者の望む走行をすることができる。従って、運転支援の機能を運転者が適切に利用することができる運転支援装置を提供することができる。
【0011】
また、作動条件変更手段は、信頼度が低い場合よりも高い場合の方が運転支援制限手段を作動させにくくすることが好ましい。
【0012】
車両制御の信頼度が高い場合、運転支援装置が正常に作動する可能性が高いため、運転支援制御を制限する必要性が低くなると考えられる。そこで、本発明では、車両制御の信頼度が低い場合よりも高い場合の方が、運転支援制限手段を作動させにくくしている。このため、運転支援制御を制限する必要性が低いときに、運転支援制御の制限がされにくくなる。従って、運転者の負担を低減することができる。
【0013】
また、信頼度は、運転支援制御の制御精度の変動要因に関する情報であることが好ましい。このように、刻々と変化する情報に基づいて、運転支援制限手段の作動条件を変更することにより、より運転者の意思に沿って、運転者が運転支援の機能を適切に利用することができる。
【0014】
変動要因は、車両の状況や車両の周辺状況を検出するセンサの検出精度、または車両の周辺状況を撮影するカメラの検出精度であることが好ましい。センサやカメラの検出精度が高い場合には、車両制御の信頼度が高くなる。このように、センサやカメラの検出精度によって、車両制御の信頼度を検出することができる。
【0015】
変動要因は、車両の走行状態であることが好ましい。車両の走行状態が安定している場合には、車両制御の信頼度が高くなる。このように、車両の走行状態によって、車両制御の信頼度を検出することができる。
【0016】
変動要因は、車両の外部環境であることが好ましい。車両の外部環境が安定している場合には、車両制御の信頼度が高くなる。このように、車両の外部環境によって、車両制御の信頼度を検出することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、運転支援制御の信頼度に応じて運転支援の機能を運転者が適切に利用することができる運転支援装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】第1実施形態に係る運転支援装置のブロック構成図である。
【図2】第1実施形態に係る運転支援装置の動作を示すフローチャートである。
【図3】第2実施形態に係る運転支援装置のブロック構成図である。
【図4】第2実施形態に係る運転支援装置の動作を示すフローチャートである。
【図5】第3実施形態に係る運転支援装置のブロック構成図である。
【図6】第3実施形態に係る運転支援装置の動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、添付図面を参照しながら本発明の実施形態を詳細に説明する。なお、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0020】
(第1実施形態)
【0021】
本実施形態に係る運転支援装置Kは、自動運転機能を備えた車両に好適に採用されるものである。
【0022】
図1に示すように、運転支援装置Kは自動運転ECU(ElectronicControl Unit)1を備えている。自動運転ECU1には、自動運転スイッチ30、通信装置6、GPS(Global Positioning System)受信機7、及び自動運転情報DB(データベース)8がそれぞれ接続されている。また、自動運転ECU1には、車速センサ9、ヨーレートセンサ10、カメラ11、及びミリ波センサ12がそれぞれ接続されている。また、自動運転ECU1には、アクセルペダルセンサ15、ブレーキペダルセンサ16、及び操舵角センサ17がそれぞれ接続されている。また、自動運転ECU1には、スロットルアクチュエータ20、ブレーキアクチュエータ21、及びステアリングアクチュエータ22がそれぞれ接続されている。
【0023】
自動運転ECU1は、電子制御する自動車デバイスのコンピュータである。自動運転ECU1は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random AccessMemory)、及び入出力インターフェイスを有している。また、図1に示すように、自動運転ECU1は、制御量算出部1A、検出部(信頼度検出手段)1B、変更部(作動条件変更手段)1C、及び制限部(運転支援制限手段)1Dを有している。
【0024】
自動運転スイッチ30は、運転者が自動運転を行うか否かの指示入力を行うためのスイッチである。自動運転スイッチ30は、指示入力に基づく自動運転操作信号を自動運転ECU1へ出力する。
【0025】
通信装置6は、自車両以外に設けられた他の通信装置にアンテナを通じて自車両の情報を送信する送信手段として機能するとともに、当該他の通信装置からの情報をアンテナを通じて受信する受信手段として機能するものである。この通信装置6は、例えば自動運転ECU1から送られる送信情報に応じて搬送波を変調して送信信号を生成し、その送信信号をアンテナから送信する。一方、通信装置6は、例えば受信信号を復調して当該他の通信装置の情報を抽出する。通信装置6は、当該他の通信装置から抽出した情報に関する通信信号を自動運転ECU1へ出力する。
【0026】
GPS受信機7は、自車両の位置情報を受信する機能を有している。GPS受信機7は、受信した位置情報に関するGPS信号を自動運転ECU1へ出力する。
【0027】
自動運転情報DB8には、自動運転情報、例えば、GPS受信機7によって取得される現在位置情報と参照される情報が保存されている。
【0028】
車速センサ9は、車輪の回転速度を検出する車輪速センサである。車速センサ9は、検出した車輪の回転速度を車速信号として自動運転ECU1へ出力する。
【0029】
ヨーレートセンサ10は、車両に作用しているヨーレートを検出するセンサである。ヨーレートセンサ10は、検出したヨーレートをヨーレート信号として自動運転ECU1へ出力する。
【0030】
カメラ11は、車両の前方等を撮像し、その撮像した画像を取得する機能を有する。例えば、カメラ11として、CCD(Charge Coupled Device)カメラが用いられる。カメラ11は、取得した撮像画像を撮像信号として自動運転ECU1へ出力する。
【0031】
ミリ波センサ12は、自車両の前方にミリ波を照射し、その反射波を利用して自車両前方の物体との距離を検出するセンサである。ミリ波センサ12は、ミリ波を水平面内でスキャンしながら自車両から前方に向けて送信し、反射してきたミリ波を受信する。ミリ波センサ12は、受信したミリ波をミリ波信号として自動運転ECU1へ出力する。
【0032】
アクセルペダルセンサ15は、自車両のアクセルペダルに設けられており、アクセルペダルの操作量を検出するセンサである。アクセルペダルセンサ15は、検出したアクセルペダルの操作量に関するアクセルペダル操作信号を、自動運転ECU1へ出力する。
【0033】
ブレーキペダルセンサ16は、自車両のブレーキペダルに設けられており、ブレーキペダルの操作量を検出するセンサである。ブレーキペダルセンサ16は、検出したブレーキペダルの操作量に関するブレーキペダル操作信号を、自動運転ECU1へ出力する。
【0034】
操舵角センサ17は、ハンドルの操舵角θを検出するセンサである。操舵角センサ17は、検出したハンドルの操舵角θに関するハンドル操舵角信号を、自動運転ECU1へ出力する。
【0035】
スロットルアクチュエータ20は、スロットルバルブの開度を調整するアクチュエータである。スロットルアクチュエータ20は、自動運転ECU1の制御量算出部1Aからの目標スロットル開度信号に応じて作動し、スロットルバルブの開度を調整する。
【0036】
ブレーキアクチュエータ21は、ホイールシリンダのブレーキ油圧を調整するアクチュエータである。ブレーキアクチュエータ21は、自動運転ECU1の制御量算出部1Aからの目標油圧信号に応じて作動し、ホイールシリンダのブレーキ油圧を調整する。
【0037】
ステアリングアクチュエータ22は、自動運転ECU1の制御量算出部1Aからの目標操舵トルク信号に応じて作動することにより、運転者の操舵操作に応じた所要の操舵トルクを車両の操舵系に付加して運転者の操舵操作をアシストする。
【0038】
自動運転ECU1における制御量算出部1Aは、ミリ波センサ12などのセンサ等からの各種信号に基づいて、運転支援制御を行うための制御信号を算出する機能を有する。制御量算出部1Aは、算出した制御信号をスロットルアクチュエータ20、ブレーキアクチュエータ21、及びステアリングアクチュエータ22へ送信する機能を有する。具体的には、制御量算出部1Aは、スロットルアクチュエータ20へ目標スロットル開度信号を送信する。また、制御量算出部1Aは、ブレーキアクチュエータ21へ目標油圧信号を送信する。また、制御量算出部1Aは、ステアリングアクチュエータ22へ目標操舵トルク信号を送信する。
【0039】
検出部1Bは、ミリ波センサ12などのセンサ等からの各種信号に基づいて、運転支援制御の信頼度を検出する機能を有する。変更部1Cは、検出部1Bにおいて検出された運転支援制御の信頼度に応じて、制限部1Dの作動条件を変更する機能を有する。制限部1Dは、運転支援制御中における運転者の操作介入に基づいて、運転支援制御を制限する機能を有する。ここでいう「運転支援制御を制限する」こととは、運転支援制御を解除、禁止、又は抑制することをいう。また、制限部1Dの作動条件の変更により、制御量算出部1Aの制御量が変更される。
【0040】
次に、本実施形態に係る運転支援装置Kの動作について説明する。図2は、運転支援装置Kの動作を示すフローチャートである。この図2の制御処理は、例えば自動運転ECU1により実行される。
【0041】
まず、図2に示すように、自動運転中であるか否かを判断する(S1)。本実施形態では、図1に示す自動運転スイッチ30がON状態であり、なおかつGPS受信機7によって取得される自車両の位置情報と自動運転情報DB8内の自動運転情報とを参照して、自動運転可能な条件を満たす場合、自動運転中と判断する。当該条件を満たさない場合、自動運転中と判断されず、動作のスタートに戻る。
【0042】
次いで、自動運転ECU1の検出部1Bによって、第1信頼度B1〜第3信頼度B3の検出処理を行う(S2〜S4)。第1信頼度B1〜第3信頼度B3は、運転支援制御の制御精度の変動要因に関する情報である。
【0043】
まず、自動運転ECU1の検出部1Bによって第1信頼度B1の検出処理を行う(S2)。ここで第1信頼度B1とは、センサやカメラ等の検出精度に関する変動要因である。センサとは、自車両の状況や自車両の周辺状況を検出するセンサである。また、カメラとは、自車両の周辺状況を撮影するカメラである。具体的には、第1信頼度B1は、ミリ波センサ12からのミリ波信号の入力誤差、増減状態、又は検出絶対値等から取得される。また、第1信頼度B1は、カメラ11からの撮像信号の入力誤差、増減状態、又は検出絶対値等から取得される。ミリ波信号や撮像信号等の入力誤差、増減状態、又は検出絶対値が大きい場合の方が小さい場合よりも、第1信頼度B1は低くなる。
【0044】
そして、自動運転ECU1の検出部1Bによって第2信頼度B2の検出処理を行う(S3)。ここで第2信頼度B2とは、車両の走行状態に関する信頼度であり、走行状態による検出し易さを含む。具体的には、第2信頼度B2は、車速センサ9で検出された回転速度に対応する車速信号や、ヨーレートセンサ10で検出された自車両に作用しているヨーレートに対応するヨーレート信号から取得される。車速信号やヨーレート信号等が大きい場合の方が小さい場合よりも、第2信頼度B2は低くなる。
【0045】
続いて、自動運転ECU1の検出部1Bによって第3信頼度B3の検出処理を行う(S4)。ここで第3信頼度B3とは、車両の動的な外乱(外部環境)に関する信頼度であり、外部環境による検出し易さを含む。具体的には、外乱とは、例えば、天候、路面状況(ぬかるみ等)、駐車車両、先行車両、及び対向車両などの周辺車両の走行状態などをいう。第3信頼度B3は、GPS受信機7で検出された自車両の位置情報、通信装置6で検出された他の移動体の情報、各種センサで検出された情報などから取得される。天候、路面状況、周辺車両の走行状態等が悪い場合の方が良い場合よりも、第3信頼度B3は低くなる。
【0046】
次に、自動運転制御を中断するための閾値Tの取得処理を行う(S5)。信頼度に応じて制限部1Dの作動条件を、変更部1Cによって変更する。変更部1Cは、信頼度が低い場合よりも高い場合の方が、制限部1Dを作動させにくくする。ここで、第1信頼度B1、第2信頼度B2、及び第3信頼度B3が大きい場合、閾値Tは大きく設定され、運転支援制御が解除し難くなる。一方、第1信頼度B1、第2信頼度B2、及び第3信頼度B3が小さい場合、閾値Tは小さく設定され、運転支援制御が解除し易くなる。このように、本発明では、自動運転制御を中断するための閾値Tそのものが動的に変更される。
【0047】
具体的には、閾値Tは、例えば、第1信頼度B1、第2信頼度B2、及び第3信頼度B3の各要素に重みを付けて算出することができる。この場合、次式(1)から閾値Tは算出される。式(1)において、y、Z1〜Z3は重み付けの係数である。
【0048】
T=y(Z1×B1+Z2×B2+Z3×B3)・・・(1)
【0049】
続いて、運転者操舵角θdの検出処理を行う(S6)。具体的には、次式(2)に示すように、運転者操舵角θdは、操舵角センサ17で検出されたハンドルの操舵角θから自動運転による操舵角θautoの影響を取り除いたものである。
【0050】
θd=θ−θauto・・・(2)
【0051】
次に、運転者操舵角θdが、信頼度に応じて設定された閾値Tよりも大きいと判断された場合(S7)、制限部1Dによる運転支援制御の制限動作が実行される。この場合、制御量算出部1Aによる自動運転をキャンセルする(S8)。具体的には、制御量算出部1Aからスロットルアクチュエータ20、ブレーキアクチュエータ21、及びステアリングアクチュエータ22への自動運転を行うための制御信号の送信をキャンセルする。一方、運転者操舵角θdが、信頼度に応じて設定された閾値Tよりも小さいと判断された場合(S7)、制限部1Dによる運転支援制御の制限動作は実行されない。この場合、制御量算出部1Aによる自動運転が実行される。
【0052】
本実施形態に係る運転支援装置Kによれば、運転支援制御の信頼度に応じて運転支援の機能を運転者が適切に利用することができる運転支援装置を提供することができる。より詳しくは、運転者の感覚により適合するように、閾値そのものを動的に変更する。例えば、車両制御の信頼度が高い場合には、閾値は大きく設定され、運転支援制御の解除をし難くすることができ、運転者の負担を大きく軽減することが可能となる。一方、車両制御の信頼度が低い場合には、閾値は小さく設定され、運転者の運転操作を活かすことにより、運転者の望む走行を実現し易くすることができる。
【0053】
本実施形態では、閾値Tを運転者による操舵入力角度の閾値とする例を示したが、閾値Tは、アクセルやブレーキ等の運転者が操作するもので段階的な操作が行えるものであれば良く、例えば、操舵速度、操舵加速度、アクセルペダルもしくはブレーキペダル入力の大きさ、速度、または加速度などの閾値Tを用いても良い。
【0054】
また、本発明は、ハンドルの操舵角θを用いて判定しても実施可能であり、ハンドルの操舵角θの閾値Tを設定しても良い。
【0055】
(第2実施形態)
本実施形態に係る運転支援装置Lは、LKAシステムを搭載した車両に好適に採用されるものである。
【0056】
図3に、第2実施形態に係る運転支援装置Lのブロック構成図を示す。第2実施形態に係る運転支援装置Lは、第1実施形態に係る運転支援装置Kにおける自動運転ECU1の代わりにLKAECU2を有している。
【0057】
第1実施形態と同様に、第2実施形態に係るLKAECU2は、制御量算出部2A、検出部(信頼度検出手段)2B、変更部(作動条件変更手段)2C、及び制限部(運転支援制限手段)2Dを有している。
【0058】
また、第2実施形態に係る運転支援装置Lは、第1実施形態に係る運転支援装置Kにおける自動運転スイッチ30の代わりにLKAスイッチ40を有しており、自動運転情報DB8、ミリ波センサ12、アクセルペダルセンサ15、及びブレーキペダルセンサ16を有していない。
【0059】
LKAスイッチ40は、運転者がLKAシステムを利用するか否かの指示入力を行うためのスイッチである。LKAスイッチ40は、指示入力に基づくLKAシステム操作信号をLKAECU2へ出力する。第2実施形態に係る運転支援装置Lにおけるその他の構成は、第1実施形態に係る運転支援装置Kと同様の構成である。
【0060】
次に、本実施形態に係る運転支援装置Lの動作について、図4を用いて説明する。図4は、運転支援装置Lの動作を示すフローチャートである。この図4の制御処理は、例えばLKAECU2により実行される。
【0061】
まず、図4に示すように、LKAシステム作動中であるか否かを判断する(S11)。LKAスイッチ40がON状態である場合、LKAシステム作動中と判断される。一方、LKAスイッチ40がOFF状態である場合、動作のスタートに戻って信号の読み込みを繰り返す。
【0062】
LKAスイッチ40がON状態であると判断された後、第1実施形態と同様に、LKAECU2の検出部2Bによって第1信頼度B1、第2信頼度B2、及び第3信頼度B3の検出処理を行う(S12〜S14)。
【0063】
次に、LKAシステムの作動を中断するための閾値Tの取得処理を行う(S15)。信頼度に応じて制限部2Dの作動条件を、LKAECU2の変更部2Cによって変更する。変更部2Cは、信頼度が低い場合よりも高い場合の方が制限部2Dを作動させにくくする。第1信頼度B1、第2信頼度B2、及び第3信頼度B3が大きい場合、閾値Tは大きく設定され、LKAシステムの作動が解除し難くなる。一方、第1信頼度B1〜B3が小さいと閾値Tは小さく設定され、LKAシステムの作動が解除し易くなる。第1実施形態と同様に、閾値Tは、上記式(1)から算出する。
【0064】
続いて、第1実施形態と同様に、運転者操舵角θdの検出処理を行う(S16)。
【0065】
次に、運転者操舵角θdが、信頼度に応じて設定された閾値Tよりも大きいと判断された場合(S17)、制限部2Dによる運転支援制御の制限動作が実行される。この場合、制御量算出部2AによるLKAシステムの作動をキャンセルする(S18)。具体的には、制御量算出部2Aからスロットルアクチュエータ20、ブレーキアクチュエータ21、及びステアリングアクチュエータ22へのLKAシステムを行うための信号の送信をキャンセルする。一方、運転者操舵角θdが、信頼度に応じて設定された閾値Tよりも小さいと判断された場合(S17)、制限部2Dによる運転支援制御の制限動作は実行されない。この場合、制御量算出部2AによるLKAシステムの作動が実行される。
【0066】
このような本実施形態に係る運転支援装置Lによれば、運転支援制御の信頼度に応じて運転支援の機能を運転者が適切に利用することができる運転支援装置を提供することができる。より詳しくは、運転者の感覚により適合するように、閾値そのものを動的に変更する。例えば、車両制御の信頼度が高い場合には、閾値は大きく設定され、運転支援制御の解除をし難くすることができ、運転者の負担を大きく軽減することが可能となる。一方、車両制御の信頼度が低い場合には、閾値は小さく設定され、運転者の運転操作を活かすことにより、運転者の望む走行を実現し易くすることができる。
【0067】
本実施形態に係る運転支援装置Lでは、閾値Tを運転者による操舵入力角の大きさに設定する例を示したが、この他に、運転者による操舵速度または操舵加速度としても良い。
【0068】
また、本発明は、ハンドルの操舵角θを用いて判定しても実施可能であり、ハンドルの操舵角θの閾値Tを設定しても良い。
【0069】
(第3実施形態)
本実施形態に係る運転支援装置Mは、ACCシステムを搭載した車両に好適に採用されるものである。
【0070】
図5に、第3実施形態に係る運転支援装置Mのブロック構成図を示す。第3実施形態に係る運転支援装置Mは、第1実施形態に係る運転支援装置Kにおける自動運転ECU1の代わりにACCECU3を有している。
【0071】
第1実施形態と同様に、第3実施形態に係るACCECU3は、制御量算出部3A、検出部(信頼度検出手段)3B、変更部(作動条件変更手段)3C、及び制限部(運転支援制限手段)3Dを有している。
【0072】
第3実施形態に係る運転支援装置Mは、第1実施形態に係る運転支援装置Kにおける自動運転スイッチ30の代わりにACCスイッチ50を有しており、自動運転情報DB8、ヨーレートセンサ10、及びステアリングアクチュエータ22を有していない。
【0073】
ACCスイッチ50は、運転者がACCシステムを利用するか否かの指示入力を行うためのスイッチである。ACCスイッチ50は、指示入力に基づくACCシステム操作信号をACCECU2へ出力する。
【0074】
次に、本実施形態に係る運転支援装置Mの動作について、図6を用いて説明する。図6は、運転支援装置Mの動作を示すフローチャートである。この図6の制御処理は、例えばACCECU3により実行される。
【0075】
まず、図6に示すように、ACCシステム作動中であるか否かを判断する(S21)。ACCスイッチ50がON状態である場合、ACCシステム作動中と判断される。一方、ACCスイッチ50がOFF状態である場合、動作のスタートに戻って信号の読み込みを繰り返す。
【0076】
ACCスイッチ50がON状態であると判断された後、第1実施形態と同様に、ACCECU3の検出部3Bによって第1信頼度B1、第2信頼度B2、及び第3信頼度B3の検出処理を行う(S22〜S24)。
【0077】
次に、ACCシステムの作動を中断するための閾値Tの取得処理を行う(S25)。信頼度に応じて制限部3Dの作動条件を、ACCECU3の変更部3Cによって変更する。変更部3Cは、信頼度が低い場合よりも高い場合の方が制限部3Dを作動させにくくする。第1信頼度B1、第2信頼度B2、及び第3信頼度B3が大きい場合、閾値Tは大きく設定され、ACCシステムの作動が解除し難くなる。一方、第1信頼度B1〜B3が小さいと閾値Tは小さく設定され、ACCシステムの作動が解除し易くなる。第1実施形態と同様に、閾値Tは、上記式(1)から算出する。
【0078】
続いて、運転者によるブレーキペダル入力の大きさNの検出処理を行う(S26)。
【0079】
次に、当該ブレーキペダル入力の大きさNが、信頼度に応じて設定された閾値Tよりも大きいと判断された場合(S27)、制限部3Dによる運転支援制御の制限動作が実行される。この場合、制御量算出部3AによるACCシステムの作動をキャンセルする(S28)。具体的には、制御量算出部3Aからスロットルアクチュエータ20及びブレーキアクチュエータ21へのACCシステムを行うための信号の送信をキャンセルする。一方、当該ブレーキペダル入力の大きさNが、信頼度に応じて設定された閾値Tよりも小さいと判断された場合(S27)、制限部3Dによる運転支援制御の制限動作は実行されない。この場合、制御量算出部3AによるACCシステムの作動が実行される。
【0080】
このような本実施形態に係る運転支援装置Mによれば、運転支援制御の信頼度に応じて運転支援の機能を運転者が適切に利用することができる運転支援装置を提供することができる。より詳しくは、運転者の感覚により適合するように、閾値そのものを動的に変更する。例えば、車両制御の信頼度が高い場合には、閾値は大きく設定され、運転支援制御の解除をし難くすることができ、運転者の負担を大きく軽減することが可能となる。一方、車両制御の信頼度が低い場合には、閾値は小さく設定され、運転者の運転操作を活かすことにより、運転者の望む走行を実現し易くすることができる。
【0081】
本実施形態に係る運転支援装置Mでは、閾値Tを運転者によるブレーキペダル入力の大きさNに設定する例を示したが、この他にも、閾値Tを運転者によるアクセルペダル入力の大きさとすることができる。また、閾値Tを運転者によるブレーキペダルもしくはアクセルペダルの速度または加速度とすることもできる。
【0082】
以上、本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。
【0083】
例えば、本発明の運転支援装置は、車両の加速度を検出する加速度センサ、車両のロールを検出するロールセンサ、車両のピッチを検出するピッチセンサなどを備えていても良い。この場合、加速度センサ、ロールセンサ、ピッチセンサで検出された各データは、それぞれ加速度信号、ロール信号、ピッチ信号としてECU(自動運転ECU1、LKAECU2、又はACCECU3)へ出力される。この場合、第2信頼度B2は、加速度センサで検出された加速度に対応する加速度信号、ロールセンサで検出された車両のロールに対応するロール信号、ピッチセンサで検出された車両のピッチに対応するピッチ信号などから取得することができる。
【0084】
また、本発明は、運転支援制御の信頼度として、上述した第1信頼度B1、第2信頼度B2、及び第3信頼度B3のうち少なくともいずれか一つを利用しても実施可能である。更に、本発明は、第1信頼度B1、第2信頼度B2、及び第3信頼度B3を構成する上述した個々の要素の少なくともいずれか一つを利用するだけでも実施可能である。また、本発明は、第1信頼度B1〜B3を構成する要素の一つでも、閾値Tから外れた場合には、信頼度をゼロに(低く)しても実施可能である。
【0085】
また、本発明は、閾値Tをマップ等から算出しても実施可能である。
【0086】
各実施形態において、車両制御の制限の態様としてキャンセル(解除)しているが、車両制御を禁止したり、車両制御を抑制して制御値を小さくしたりする態様とすることもできる。
【0087】
また、信頼度の大きさに応じて、制限の態様を変更する態様とすることもできる。例えば、第1実施形態において、閾値として、小さい閾値である小閾値と、大きい閾値である大閾値とを設定する。そして、運転者操舵角θdが小閾値を超えたときに、運転支援制御を抑制し、運転者操舵角θdが大閾値を超えたときに、運転支援制御をキャンセルする態様とすることができる。
【符号の説明】
【0088】
K,L,M…運転支援装置、1…自動運転ECU、2…LKAECU、3…ACCECU、1A,2A,3A…制御量算出部、1B,2B,3B…検出部、1C,2C,3C…変更部、1D,2D,3D…制限部、6…通信装置、7…GPS受信機、8…自動運転情報DB、9…車速センサ、10…ヨーレートセンサ、11…カメラ、12…ミリ波センサ、15…アクセルペダルセンサ、16…ブレーキペダルセンサ、17…操舵角センサ、20…スロットルアクチュエータ、21…ブレーキアクチュエータ、22…ステアリングアクチュエータ、30…自動運転スイッチ、40…LKAスイッチ、50…ACCスイッチ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の制御により運転者の運転を支援する運転支援装置であって、
運転支援制御中における運転者の操作介入に基づいて、前記運転支援制御を制限する運転支援制限手段と、
前記運転支援制御の信頼度を検出する信頼度検出手段と、
前記信頼度に応じて前記運転支援制限手段の作動条件を変更する作動条件変更手段と、を備える運転支援装置。
【請求項2】
前記変更手段は、前記信頼度が低い場合よりも高い場合の方が前記運転支援制限手段を作動させにくくする、請求項1に記載の運転支援装置。
【請求項3】
前記信頼度は、前記運転支援制御の制御精度の変動要因に関する情報である、請求項1又は2に記載の運転支援装置。
【請求項4】
前記変動要因は、前記車両の状況や前記車両の周辺状況を検出するセンサの検出精度、または前記車両の周辺状況を撮影するカメラの検出精度である、請求項3に記載の運転支援装置。
【請求項5】
前記変動要因は前記車両の走行状態である、請求項3に記載の運転支援装置。
【請求項6】
前記変動要因は前記車両の外部環境である、請求項3に記載の運転支援装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2010−173601(P2010−173601A)
【公開日】平成22年8月12日(2010.8.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−21467(P2009−21467)
【出願日】平成21年2月2日(2009.2.2)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】