説明

道路形状取得装置

【課題】高精度な道路形状を低コストに取得できる道路形状取得装置を提供すること。
【解決手段】道路を構成するリンクに基づき生成したリンク平面をグリッドに分割して、所定以上の白線存在確率P(m)のグリッドから道路形状を取得する道路形状取得装置10であって、道路のリンク情報を記憶した地図データ記憶手段17と、車両の位置を検出する位置検出手段11,12、13と、道路の白線を検出する白線検出手段14,15と、検出された白線に対応するグリッドから所定範囲のグリッドの白線存在確率、及び、予め定めた更新用白線存在確率P(Z|m)をベイズの更新式に適用して白線存在確率を更新する白線存在確率設定手段16と、を有することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両が走行する道路の形状を取得する道路形状取得装置に関し、特に、白線の検出結果に基づき道路形状を取得する道路形状取得装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ナビゲーションシステムでは、電波測位手段による測位等により自車両の位置を検出すると共に、その位置に対応する道路地図を表示装置に表示することで、運転者に車両が走行している位置をビジュアルに提供することができる。
【0003】
しかしながら、道路地図を表示するための道路地図データは精度が十分でない。例えば、道路は交差点(ノード)を結ぶリンクにより表現されるが、リンクは直線で構成されているため実際の道路の形状と一致しない場合がある。このため、自車両の位置をある程度精度よく検出しても道路地図データに対し自車両の位置が異なって表示されることがある。
【0004】
また、道路地図データはDVDやハードディスクドライブなどの記憶装置に記憶されて車載されるが、工事等により道路網が変化しても道路地図が更新されるまでにはタイムラグがあり、また、ユーザが更新を忘れているような場合にはいつまでも正確な道路地図データを利用できないという問題がある。
【0005】
一方で、高精度な道路地図データを得るためには、道路の正確な測量やリンクの高精細化が必要であるため全ての道路でこれを実現するのは困難である。また、高精度な道路地図データが得られても、工事等による道路網の変化にはやはり対応できない。
【0006】
ところで、自立型移動型ロボットではSLAM(Simultaneous Localization and Mapping)という未知環境における自己位置推定とマップ作成を同時に行う手法が提案されている。SLAMではレーザレンジファインダを使用して障害物の存在及び距離を演算して、ロボットの行動生成に有用な進入可能な領域と進入不能な領域の双方の情報を持つマップを作成するが、かかるシステムは高価である。また、道路には路側帯やガードレールを除き障害物は存在しないので、レーザでは道路地図データを取得することは困難である。
【0007】
これに対し、カメラを車載したプローブカーにより道路地図データを取得する方法が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。特許文献1では、車両前方を撮影した画像から白線を認識して、白線に基づき道路幅、車線数、交差点の位置等を検出する。そして、検出した道路幅等を予め格納してある道路地図データと照合して、不一致の場合には検出した道路幅等の情報により道路地図データを書き換える。
【特許文献1】特開2000−230834号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1記載の方法は、道路地図データに変化があるか否かを検出し、変化がある場合にそれを更新するものであるため、道路幅や車線数の変化を更新することができるが、道路地図データの精度を向上させるものではない。したがって、実際の道路形状と測位された車両の位置とを高精度に対応づけることができない。
【0009】
本発明は、上記課題に鑑み、高精度な道路形状を低コストに取得できる道路形状取得装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するため、本発明は、道路を構成するリンクに基づき生成したリンク平面をグリッドに分割して、所定以上の白線存在確率のグリッドから道路形状を取得する道路形状取得装置であって、道路のリンク情報を記憶した地図データ記憶手段と、車両の位置を検出する位置検出手段(例えば、GPS受信機11、車速センサ12,ジャイロセンサ13)と、道路の白線を検出する白線検出手段(例えば、カメラ14,画像処理装置15)と、検出された白線に対応するグリッドから所定範囲のグリッドの白線存在確率、及び、予め定めた更新用白線存在確率(例えば、図4のP(Z|m)をベイズの更新式に適用して白線存在確率を更新する白線存在確率設定手段と、を有することを特徴とする。
【0011】
本発明によれば、カメラを使用することで低コストにシステムを構成でき、検出誤差を考慮して白線存在確率を導入しベイズの更新式により更新するので、走行する回数が多いほど精度のよい道路形状を取得できる道路形状取得装置を提供することができる。
【発明の効果】
【0012】
高精度な道路形状を低コストに取得できる道路形状取得装置を提供することができる。
得装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明を実施するための最良の形態について、図面を参照しながら説明する。
図1は、道路形状取得装置10の構成図を示す。本実施形態の道路形状取得装置10は、車両に搭載され又はサーバから配信される地図データに、検出された白線を利用して詳細な道路形状を取得する。
【0014】
道路形状取得装置10は、車両が走行する各地点の緯度・経度の位置情報を格納する地図データベース(以下、単に地図DBという)17を有している。地図DB17は、車両に搭載されたナビゲーション装置と共有して利用される。
【0015】
道路形状取得装置10は、車両に搭載された地図データECU(Electronic Control Unit)16により制御される。地図データECU16は、プログラムを実行するCPU、プログラムを記憶したROM、プログラムやファイルを記憶する記憶装置(例えば、Hard Disk Drive)、データやプログラムを一時的に記憶するRAM、NV−RAM(Non Volatile RAM)、データを入力及び出力する入出力装置がバスを介して接続されたコンピュータとして構成される。CPUがプログラムを実行することで白線存在確率設定手段が実現される。
【0016】
地図データECU16には、GPS(Global Positioning System)衛星からの電波を受信するGPS受信機11、車速を検出する車速センサ12、車両のヨー、ロール、ピッチ等による進行方向に応じた信号(INS(Inertial Navigation Sensor)データ)を出力するジャイロセンサ13が接続されている。
【0017】
地図データECU16は、GPS受信機11により受信された電波に基づいて自車両の現在位置(具体的には、緯度,経度,高度)を測位し、車速センサ12の車速による走行距離及びジャイロセンサ13の出力するINSデータによる走行方向を累積して、自車両の正確な現在位置を検出する。
【0018】
地図データECU16は、車室内に設けられた表示装置に、検出した現在位置周辺の道路地図や車両乗員により指定された地域の道路地図を地図DB17から抽出し、指定された縮尺に合わせて表示装置に表示する。地図データECU16は、必要に応じて道路地図に重畳して車両の現在位置を表示する。
【0019】
また、地図データECU16にはカメラ14により撮影された画像データが入力される画像処理装置15が接続されている。カメラ14は前部バンパや室内ルームミラーに搭載されており車両前方を撮影する。
【0020】
カメラ14はCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)やCCD(Charge Coupled Device)の光電変換素子を有し、所定の輝度階調(例えば、256階調)の画像データを出力する。カメラ14は搭載位置から車両前方へ向けて水平下向きに所定角範囲で広がる領域を撮影する。
【0021】
画像処理装置15は、カメラ14から供給された車両前方周辺の画像データを画像処理し、その画像に映し出されている、道路上に描かれた走行レーンを区切る白線を検出する。白線の検出は、例えば、画像データの輝度に基づき、所定の閾値以上の輝度を有する領域を画像データの底部から上方に向けて探索する。白線は両端に高周波成分たるエッジを有するので、車両前方の画像データを水平方向に微分すると、白線の両端にピークが得られ、そのピークは白線の線内に、白線外から白線と白線から白線外とで正負逆に得られるため、白線部分が推定できる。このような処理を行う白線強調フィルタを画像データに施すことで白線部分を強調でき、白線が強調された画像データから、白線の特徴である、輝度が高い、線状の形状である等の特徴のある領域に、マッチングなどの手法を適用すれば白線を検出できる。
【0022】
地図データECU16には取得した道路形状情報を記憶するための道路形状情報記憶部18が接続されている。上述した地図DB17に記憶された地図データは、実際の道路網をノード(例えば、道路と道路が交差する点、交差点から所定間隔毎に区切った点、等)及びリンク(ノードとノードを接続する道路)に対応づけて、テーブル状のデータベースとして構成される。
【0023】
地図データECU16は、地図DB17から抽出した地図データのリンク情報を道路形状情報記憶部18に記憶する。すなわち、道路形状情報記憶部18には、緯度・経度に対応づけてリンク情報が記憶される。なお、道路形状取得装置18を地図DB17と一体に設けてもよい。
【0024】
地図データECU16はリンク情報を道路形状情報記憶部18に記憶する際、各リンクに基づく矩形領域のリンク平面を生成し、該矩形領域を配列に区切る。図2はリンク平面の一例を示す。リンク平面は、リンクの始端(ノード)と終端(ノード)を結ぶリンク長と道路の幅員に対応するものである。地図データに幅員が登録されていればその幅員に対応したリンク平面を生成し、不明であれば、例えば、片側4車線程度の幅員を想定してリンク平面を形成する。
【0025】
配列を構成する各グリッドには、後述するように、そのグリッドにおける白線存在確率が記憶される。したがって、幅員方向のグリッドの長さは白線の幅以下(1/1〜1/10程度)である。白線はリンク長方向に連続して存在するため、一度検出された白線は連続して検出されると予想される。このため、白線存在確率を記憶するグリッドのリンク長方向の長さは、幅員方向よりも長くてよい。
【0026】
道路形状情報記憶部18の各リンク平面は、このような基準で設定されたグリッドの大きさに基づき、幅員に応じた数のグリッドに区切られている。グリッドの大きさは全てのリンク平面で均一であっても可変であってもよい。なお、道路形状情報記憶部18では、各グリッドの位置を幅員方向とリンク長方向で指定したグリッド番号(n,m)で指定すると共に、グリッド番号に白線存在確率を対応づけたテーブルとして扱うことができる。
【0027】
地図データECU16は、後に詳細説明するように、検出位置の誤差を考慮してグリッドに更新用の白線存在確率を設定し、繰り返し走行するたびに各グリッドの白線存在確率をベイズの更新式により更新することで、走行回数が多くなるほど高い精度で白線の位置を検出して道路形状を取得する。
【0028】
図2では複数回の走行により得られた道路形状情報の一例として、車両の進行方向に対して左側の左白線、右側の右白線が記されている。グリッド毎に白線存在確率を設定するため、リンク平面が略長方形であっても湾曲した道路形状を取得することができ、精度よい道路形状が得られる。
【0029】
白線存在確率について説明する。はじめに、レーダにより立体物を検出した場合の立体物の存在確率の考え方を図3(a)に基づき説明する。本実施形態では、次述するベイズの更新式を利用して検出対象物の存在確率を更新していく。
【0030】
図3(a)では、原点がレーダの位置でありそこから所定距離離れた位置で立体物が検出されている。レーダの場合、立体物が検出されると立体物までは物体がないと判断できる一方、立体物の後方には立体物があるのかないのか不明である。そこで、レーダによる立体物検出では、例えば、ある方向において所定距離に立体物が観測された場合、観測された位置、その手前、その後ろ、の3つに領域を分割し,対応するグリッドに対する観測結果を、それぞれ,事象Zが生じた,事象Z’が生じた,情報が得られなかった、と解釈する。図3(a)では点線で観測結果を示した。すなわち、立体物が検出されたグリッドの付近は確率が1に近く、手前のグリッドの確率は0に近く、その後ろは0〜1の間(0.5)である。
【0031】
レーダによる検出も誤差を含むので、1回の観測で立体物の有無を確定するのでなく、過去の観測結果を最新の観測結果に反映させることで、立体物の有無の判定精度を向上することができる。
【0032】
立体物が存在するという事象をm と表し,あるグリッドの立体物の存在確率をP(m) で表現すると、各グリッドの立体物の存在確率は以下の条件付き確率を計算することで更新できる。
・事象Z が生じたグリッドに対して:P(m|Z)
・事象Z’ が生じたグリッドに対して:P(m|Z’)
P(m|Z) = P(Z|m)・P(m)/{P(Z|m)・P(m) + P(Z|m’)・P(m’)} …(1)
P(m|Z’) = P(Z’|m)・P(m)/{P(Z’|m)・P(m) + P(Z’|m’)・P(m’)} …(2)
となる。
【0033】
式(1)が本実施形態で利用するベイズの更新式である。P(m) は事前確率で、初期値は0.5 とする。その他の項は,P(Z’|m) = 1 − P(Z|m)、P(Z’|m’) = 1 − P(Z|m’)、P(m’) = 1 − P(m) で求められる。
【0034】
また、ベイズの更新式を計算するためにP(Z|m)を決定する必要があるが、これらはレーダセンサの不確かさのモデルである。すなわち、図3(a)の実線で示すような分散を有する白線存在確率P(Z|m)を設定する。そして、対応する各グリッドに白線存在確率P(Z|m)を適用する。
【0035】
算出されたP(m|Z)、 P(m|Z’)は、そのグリッドで次回に立体物が検出された場合のP(m)となる。このようにして、あるグリッドでレーダを走査して立体物が検出されるたびに、式(1)及び式(2)により事象Zが生じたグリッドの検出対象物の存在確率を高め、事象Z’ が生じたグリッド(手前のグリッド)の存在確率を低減するように更新することができる。
【0036】
本実施形態では、P(Z|m)が白線検出の位置の不確かさのモデルである。自車位置及び白線の検出位置に誤差がなければ、1回の白線検出により道路形状を取得しうるが、実際には誤差が不可避である。
【0037】
そこで、本実施形態の道路形状取得装置10は、
a)時刻t(最新)の白線検出結果における白線存在確率 P(Z|m)
b)時刻0〜t−1(前回)までの検出結果における白線存在確率 P(m)
をベイズの更新式に適用して、
c)時刻0〜tの検出結果に対する白線存在確率 P(m|Z)
によりP(m)を更新するものである。
【0038】
図3(b)はリンク平面に適用される白線存在確率の概念を説明するための図である。白線はリンク平面の長手方向に連続して存在するため、白線が検出された位置を中心にリンクの長手方向に垂直に所定の分散を有する白線存在確率P(Z|m)を対応する各グリッドに適用する。また、リンクの長手方向の手前側については図3(a)の実線と同様に所定の分散を有する白線存在確率P(Z|m)を設定する。
【0039】
しかしながら、例えば白線存在確率の分散を単純な正規分布とした場合、白線の幅方向のエッジが不明確になったり、エッジの検出までに相当数の走行回数が必要になるなど好ましくない。
【0040】
そこで、本実施形態では図4のような白線存在確率P(Z|m)を適用する。図4は本実施形態の道路形状取得装置がベイズの更新式に適用する白線存在確率P(Z|m)を示す。図4ではX方向がリンクの長手方向に垂直な方向を、Y方向がリンクの長手方向を示す。また、白線が検出された位置を原点に取った。
【0041】
図4の白線存在確率P(Z|m)は、白線の検出位置を中心にした正規分布を有すると共に、両側に凹部がある確率分布となっている。正規分布の部分は、標準偏差±dnの幅を有し、凹部の幅は所定長ds(例えば、dn×定数)である。凹部は一定の存在確率を有し、その値は0.5未満に設定される。また、正規分布の部分の白線存在確率P(Z|m)は、凹部の白線存在確率P(Z|m)に0.5をプラスしている。また、凹部より遠い側の白線存在確率P(Z|m)は0.5(初期値)である。
【0042】
なお、白線存在確率P(Z|m)は白線の検出位置を中心にした正規分布でなくてもよく、また、dnやdsは設計可能な値である。とくに白線存在確率P(Z|m)の分布は走行回数(更新回数)に応じて可変とすることで、白線の検出精度を向上させることができる。
【0043】
また、検出された白線はリンクの長手方向に連続していると予測してよいので、Y方向に例えば10m一定の白線存在確率P(Z|m)を適用する。これは、図2に示したように、車両から所定距離離れた領域(Far領域)では白線が精度よく白線が検出され、白線はそこから連続していると予測してよいからである。なお、Far領域を10mとしたが、これはカメラ14や画像処理装置15の性能により可変である。
【0044】
地図データECU16は、白線が検出されると図4のような白線存在確率P(Z|m)を式(1)に適用する。すなわち、図4の白線存在確率P(Z|m)を各グリッドに対応づけて式(1)の P(Z|m)に代入する。
【0045】
式(1)では、P(Z|m)に0.5より大きい値を代入すればP(m|Z)が0.5より大きくなり、P(Z|m)に0.5より小さい値を代入すればP(m|Z)が0.5より小さい値になる。また、P(Z|m)に0.5を代入すればP(m|Z)が0.5になる(変化しない)。
【0046】
図4のように、例えば、正規分布の両側に凹部を設け、凹部の白線存在確率P(Z|m)を0.5未満とすることでレーダが検出できるがカメラが検出できない情報(手前には立体物が存在しない)を補うことができる。
【0047】
したがって、白線が検出された位置から標準偏差±dnの範囲では白線存在確率P(m)を増大し、白線が検出された位置から標準偏差±dn〜dsの範囲(凹部)では白線存在確率P(m)を減少させることができる。また、それ以外の領域は白線存在確率P(m)を変化させず、初期値のままにしておくことができる。
【0048】
図5は、地図データECU16が道路形状を取得する処理手順を示すフローチャート図である。図5のフローチャート図は、例えば車両のイグニッションがオンなるとスタートする。なお、図5の処理は白線の認識結果をいったん記録しておくバッチ処理であるが、リアルタイムに道路形状を取得してもよい。
【0049】
地図データECU16は、走行中、GPSやINSによる車両の位置、ジャイロセンサ13による走行方向を取得しながら、それらに対応づけて白線の検出結果を記録しておく(S1)。白線の検出結果は、車両の位置からの相対距離を検出する。白線は車両の両側に存在するので、左右のそれぞれの白線について検出結果を記録する。
【0050】
次いで、地図データECU16は、車両位置に対応するリンクを道路形状情報記憶部18から抽出する(S2)。また、リンク長等に応じてリンク平面を生成すると共に、グリッドを形成し、各グリッドに白線存在確率P(m)の初期値を設定する(S3)。
【0051】
続いて、地図データECU16は、白線の検出結果に基づき図4の白線存在確率P(Z|m)を対応する各グリッドに設定する(S4)。
【0052】
そして、ベイズの公式を利用して、各グリッドの白線存在確率P(m)を更新する(S5)。
【0053】
図6(a)は初めて走行したリンクについて得られた白線存在確率P(m)のイメージを示す図である。図4の白線存在確率P(Z|m)を適用することで、0.5より大きい白線存在確率P(Z|m)が適用されるグリッドの白線存在確率P(m)を大きくし、0.5より小さい白線存在確率P(Z|m)が適用されるグリッドの白線存在確率P(m)を小さくすることができる。図6(a)では細長い楕円部分が、白線存在確率が0.5より大きいグリッドを示す。一度の走行で全ての白線を検出することは困難であるし、どのような走行軌跡を描くかまた白線が正常に認識されるかは不定であるため、白線存在確率P(m)が0.5より大きいグリッドも縞状に不作為に分布する。
【0054】
続いて、図6(a)のような状態で、次回、同じリンクを走行して白線が検出されると、地図データECU16はステップS4、S5を繰り返す。
【0055】
次回、同じリンクを走行する場合、前回と同じ位置の白線を検出することもあるし、前回は検出されなかった白線を検出することもある。前回と同じ位置の白線に対応するグリッドの白線存在確率P(m)は、図4の白線存在確率P(Z|m)により、0.5より大きい白線存在確率が適用されるグリッドの白線存在確率が更に大きくなり、0.5より小さい白線存在確率が適用されるグリッドの白線存在確率が更に小さくなる。したがって、走行回数が増えるほど、白線が存在するグリッドの周辺では、実際に白線が存在するであろうグリッドのみ、白線存在確率P(m)を際だたせることができるので、白線のエッジが明確になる。
【0056】
図6(b)は複数回の走行したリンクについて得られた白線存在確率P(m)のイメージを示す図である。複数回の走行により白線存在確率P(m)が0.5より大きいグリッドが連続して得られるほどになると、連続したグリッドに基づき道路形状が取得できる。
【0057】
地図データECU16は白線存在確率P(m)が所定以上のグリッドを白線位置として道路形状を取得する(S6)。
【0058】
図7は本実施形態の道路形状取得装置が実際に取得した道路形状を示す図である。図7では、道路形状取得装置を搭載した車両が同じ一般道路を計4回走行して、白線の検出結果に基づき道路形状を取得している。図7(a)〜(d)はそれぞれ走行回数1〜4の場合に取得される道路形状を示す。図7(a)〜(b)では白線存在確率が0.7以上のグリッドを白線として検出した。また、検出した白線を所定距離右にオフセットした箇所に道路の中央線を設定した。なお、図7の手前側はカメラ14により撮影されない範囲が含まれているため、白線が検出されない範囲がある。
【0059】
図7(a)に示すように、走行回数が1回では、白線があるとして検出されるグリッドがまばらである(s1〜s6)が、走行回数が増えるにつれて連続したグリッドが得られることが示されている。
【0060】
なお、図7の検出結果は、走行回数が増えるにつれて徐々に幅員方向の分散(正規分布でなくより分布の狭い分布を使用)を小さくしている。このように、白線存在確率が大きくなるにつれ、分散を小さくすることで白線の位置を精度よく検出することができる。
【0061】
以上のように、本実施形態の道路形状取得装置10によれば、白線検出結果から道路形状を取得することができるので、運転者に適切なタイミングで信号前に注意を促したり経路案内することができる。また、工事等により道路網が変わった場合にも数回の走行で新しい道路形状に地図DB17を更新することができる。なお、新たに道路が建設された場合も、リンクを追加することで同様に道路形状を取得できる。
【0062】
本実施形態の道路形状取得装置10は、検出位置の誤差を考慮して白線存在確率を導入し、繰り返し走行するたびに白線存在確率をベイズの更新式により更新することで、走行回数が多くなるほど高い精度で白線位置を検出できる。
【0063】
また、白線の検出結果は、レーダによる立体物検出よりも情報量が少ないことを補うため、ベイズの更新式に適用する白線存在確率P(Z|m)を考案することで、白線部を精度よく検出することが可能となった。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】道路形状取得装置の構成図である。
【図2】リンク平面の一例を示す図である。
【図3】検出された白線に適用する白線存在確率の概念を説明するための図である。
【図4】道路形状取得装置がベイズの更新式に適用する白線存在確率である。
【図5】地図データECUが道路形状を取得する処理手順を示すフローチャート図である。
【図6】走行したリンクについて得られた白線存在確率のイメージを示す図である。
【図7】道路形状取得装置が実際に取得した道路形状を示す図である。
【符号の説明】
【0065】
10 道路形状取得装置
11 GPS受信機
12 車速センサ
13 ジャイロセンサ
14 カメラ
15 画像処理装置
16 地図データECU
17 地図DB
18 道路形状情報記憶部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
道路を構成するリンクに基づき生成したリンク平面をグリッドに分割して、所定以上の白線存在確率の前記グリッドから道路形状を取得する道路形状取得装置であって、
前期道路のリンク情報を記憶した地図データ記憶手段と、
車両の位置を検出する位置検出手段と、
前記道路の白線を検出する白線検出手段と、
検出された前記白線に対応する前記グリッドから所定範囲のグリッドの前記白線存在確率、及び、予め定めた更新用白線存在確率をベイズの更新式に適用して前記白線存在確率を更新する白線存在確率設定手段と、
を有することを特徴とする道路形状取得装置。
【請求項2】
前記白線の幅方向をXとした場合、
前記更新用白線存在確率は、
a)前記白線が検出されたグリッド位置X1からX方向にdn以内では、前記白線存在確率の初期値より大きく、
b)グリッド位置X1からX方向にdnより離れds以内のグリッドでは前記初期値より小さく、
c)グリッド位置X1からX方向にdsより離れたグリッドでは前記初期値と同じ、
であることを特徴とする請求項1記載の道路形状取得装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−3253(P2008−3253A)
【公開日】平成20年1月10日(2008.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−171754(P2006−171754)
【出願日】平成18年6月21日(2006.6.21)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】