説明

道路形状算出装置及び車両センサ補正装置

【課題】車両の走行環境や走行状態に関わらず最適に道路形状を算出することが可能な道路形状算出装置を提供する。
【解決手段】道路の形状(θ)を算出する道路形状算出装置であって、車両の前後方向に働く実際の前後加速度と前記車両の前後方向に働く加速度を検出する前後加速度検出手段の検出値との間の第1関係式と、前記車両の横方向に働く実際の横加速度と前記車両の横方向に働く加速度を検出する横加速度検出手段の検出値との間の第2関係式と、前記車両の前後方向に働く実際の前後加速度及び前記車両の横方向に働く実際の横加速度と前記車両の前後方向に働く加速度を検出する前後加速度検出手段の検出値及び車両の横方向に働く加速度を検出する横加速度検出手段の検出値との間の第3関係式とから導かれる前記道路の形状(θ)に相当する加速度を算出するアルゴリズムに基づいて、前記道路の形状(θ)を算出する(S104)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、道路形状算出装置及び車両センサ補正装置に関し、特に、車両の走行環境や走行状態に関わらず最適に道路形状を算出することの可能な道路形状算出装置及びその算出結果を用いた車両センサ補正装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両に働く加速度等の車両情報に基づいて、道路形状が算出されることがある。この場合、その情報は、例えば加速度センサ等の車両に設けられた各種センサにより検出される。
【0003】
車両において、道路形状(路面勾配)を算出する場合に、前後加速度センサ値と実加速度の差に基づいて道路形状を算出することができることは、通常良く知られている(特開平5−272974号公報、特許文献2)。
【0004】
ここで、前後加速度センサ値は、車両旋回中のスリップ角の影響を受ける。このスリップ角の影響を補正する手法が特開平11−230742号公報(特許文献1)に開示されている([1]旋回補正)。
【0005】
また、加減速時は車両自体が傾くために道路形状を誤推定してしまう。この車両のピッチング成分を補正する手法も特開2005−35333号公報(特許文献3)等に開示されている([2]ピッチ補正)。
【0006】
さらに、車両の横方向の傾き(ロール)による影響を計算し、横断勾配(カント)算出値を補正する手法が上記特許文献1に提案されている([3]ロール補正)。
【0007】
また、加速度センサの出力を補正する装置として、路面勾配推定手段を用いる方法が特開平11−281672号公報(特許文献4)に提案されている。
【0008】
【特許文献1】特開平11−230742号公報
【特許文献2】特開平5−272974号公報
【特許文献3】特開2005−35333号公報
【特許文献4】特開平11−281672号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
前後加速度センサ値と実加速度の差から路面勾配(縦断勾配)を算出する際には、上記[1]旋回補正、[2]ピッチ補正、[3]ロール補正を実施する必要があり、各々の提案で各補正を実施して路面勾配の算出精度を向上させている。
【0010】
上記方法で全走行において路面勾配を正確に推定するためには、各補正が全て適用されなければならない。走行環境や走行状態により各影響度合いが異なるためである。例えば、[1]の旋回補正のみでは、急加速等の車両ピッチングが生じている場合には、正確な路面勾配の推定ができない。
【0011】
上記のことから上記補正を総合的に行う必要があるが、[3]ロール補正の影響は、[1]旋回補正に使用する横加速度にも適用されなければならず、単純に[1][2][3]を組合わせることはできない。
【0012】
また、勾配算出演算手段(コンピュータ)の演算能力や負荷を考慮し、各補正の影響度を考慮して適切に補正される必要がある。従来は、[1][2][3]に関して全ての補正を統合的に行った上で路面勾配を算出手法が提供されていない。
【0013】
本発明の目的は、車両の走行環境や走行状態に関わらず最適に道路形状を算出することの可能な道路形状算出装置、及びその算出結果を用いた車両センサ補正装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の道路形状算出装置は、道路の形状を算出する道路形状算出装置であって、車両の前後方向に働く実際の前後加速度と前記車両の前後方向に働く加速度を検出する前後加速度検出手段の検出値との間の第1関係式と、前記車両の横方向に働く実際の横加速度と前記車両の横方向に働く加速度を検出する横加速度検出手段の検出値との間の第2関係式と、前記車両の前後方向に働く実際の前後加速度及び前記車両の横方向に働く実際の横加速度と前記車両の前後方向に働く加速度を検出する前後加速度検出手段の検出値及び車両の横方向に働く加速度を検出する横加速度検出手段の検出値との間の第3関係式とから導かれる前記道路の形状に相当する加速度を算出するアルゴリズムに基づいて、前記道路の形状を算出することを特徴としている。
【0015】
本発明の道路形状算出装置において、前記第1関係式には、前記車両のピッチ角と路面勾配の影響が含まれ、前記第2関係式には、前記車両のロール角とカント角の影響が含まれ、前記第3関係式には、前記車両のスリップ角の影響が含まれていることを特徴としている。
【0016】
本発明の道路形状算出装置において、前記道路の形状の算出には、前記車両に設けられた前後加速度センサと、前記車両に設けられた横加速度センサと、前記車両に設けられた車両傾斜角センサと、前記車両に設けられたヨーレートセンサと、前記車両に設けられた車輪速度センサ及び出力軸回転数センサのいずれか一方とが用いられることを特徴としている。
【0017】
本発明の道路形状算出装置において、前記アルゴリズムは、下記数式32に対応している
【数32】

ことを特徴とする。
【0018】
本発明の道路形状算出装置は、道路の形状を算出する道路形状算出装置であって、前記車両の上下方向に働く加速度を検出する上下加速度センサの出力値に基づいて、カントによる影響が補正された前記道路の形状を算出することを特徴としている。
【0019】
本発明の道路形状算出装置において、前記道路の形状は、下記数式33から数式36に基づいて算出される
【数33】

【数34】

【数35】

【数36】

ことを特徴としている。
【0020】
上記本発明の道路形状算出装置により算出された第1の前記道路の形状と、前記車両の駆動力と実加速度から算出される第2の前記道路の形状とに基づいて、前記車両のセンサを補正することを特徴としている。
【0021】
本発明の車両センサ補正装置において、前記車両のセンサは、前後加速度センサ及び車両傾斜角センサの少なくともいずれか一方であることを特徴としている。
【発明の効果】
【0022】
本発明の道路形状算出装置によれば、車両の走行環境や走行状態に関わらず最適に道路形状を算出することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明の道路形状算出装置の一実施形態につき図面を参照しつつ詳細に説明する。
【0024】
(第1実施形態)
図1から図5を参照して、第1実施形態について説明する。
【0025】
第1実施形態は、道路の形状(θ)を算出する道路形状算出装置であって、後述するように以下の構成を備えている。
【0026】
本実施形態の道路形状算出装置は、車両の前後方向に働く実際の前後加速度(Gba)と前記車両の前後方向に働く加速度を検出する前後加速度検出手段の検出値(gsensba)との間の第1関係式(数式1)と、前記車両の横方向に働く実際の横加速度(Grl)と前記車両の横方向に働く加速度を検出する横加速度検出手段の検出値(gsensrl)との間の第2関係式(数式2)と、前記車両の前後方向に働く実際の前後加速度(Gba)及び前記車両の横方向に働く実際の横加速度(Grl)と前記車両の前後方向に働く加速度を検出する前後加速度検出手段の検出値(gsensba)及び車両の横方向に働く加速度を検出する横加速度検出手段の検出値(gsensrl)との間の第3関係式(数式3〜数式5)とから導かれる前記道路の形状(θ)に相当する加速度を算出するアルゴリズム(数式11)に基づいて、前記道路の形状(θ)を算出するものである。
【0027】
本実施形態の道路形状算出装置において、前記第1関係式には、前記車両のピッチ角(α)と路面勾配(θ)の影響が含まれ、前記第2関係式には、前記車両のロール角(γ)とカント角(δ)の影響が含まれ、前記第3関係式には、前記車両のスリップ角(β)の影響が含まれている。
【0028】
本実施形態の道路形状算出装置において、前記道路の形状の算出には、前記車両に設けられた前後加速度センサ(38)と、前記車両に設けられた横加速度センサ(37)と、前記車両に設けられた車両傾斜角センサ(36)と、前記車両に設けられたヨーレートセンサ40と、前記車両に設けられた車輪速度センサ(31)及び出力軸回転数センサ(41)のいずれか一方とが用いられる。
【0029】
なお、第1実施形態は、上下Gセンサを使用しないシステムにおいて路面勾配を算出する方法である。本実施形態では、路面のカント(横断勾配)による影響が小さいと仮定した条件の下で路面勾配が推定される(後述するロール・カント補正(図4)においてカント成分も考慮するが、カント角を検出できないため、カント角=0として計算する)。
【0030】
図1は、本実施形態に係る装置の概略構成図である。車両(図示せず)には、エンジン11が設けられている。エンジン11には、トルクコンバータ12を有する自動変速機13が連結されている。エンジン11の駆動力は、トルクコンバータ12を介して自動変速機13に入力され、デファレンシャルギヤ14及びドライブシャフト15を介して駆動輪16に伝達される。自動変速機13は、A/T油圧制御装置17により車両の運転状態に応じて変速比が自動的に制御される。ブレーキ装置18は、ブレーキ油圧制御装置19によって制御されて、車両を制動する。
【0031】
車両には、エンジン11や自動変速機13やブレーキ装置18などを制御する電子制御ユニット(ECU)20が設けられている。ECU20は、エンジン11、自動変速機13(A/T油圧制御装置17)及びブレーキ装置18(ブレーキ油圧制御装置19)の総合的な制御を行う。
【0032】
車両には、アクセルペダルの操作量(アクセル開度)を検出するアクセルポジションセンサ21が設けられている。アクセルポジションセンサ21により検出されたアクセル開度を示す信号は、ECU20に出力される。エンジン11の吸気管22には、スロットルコントロールバルブ23が設けられている。スロットルコントロールバルブ23は、スロットルアクチュエータ24により開閉可能とされている。ECU20は、スロットルアクチュエータ24にスロットルコントロールバルブ23を動作させる。ECU20は、スロットルコントロールバルブ23によるスロットル開度が、アクセル開度に応じたものとなるようにスロットルアクチュエータ24を制御する。
【0033】
吸気管22には、スロットルコントロールバルブ23をバイパスするバイパス通路25が設けられている。バイパス通路25には、エンジン11のアイドル回転数を制御するためにスロットルコントロールバルブ23の全閉時の吸気量を制御するアイドルスピードコントロールバルブ(ISCバルブ)26が設けられている。スロットルコントロールバルブ23の全閉状態(アイドル状態)及びスロットル開度を検出するアイドルスイッチ付スロットル開度センサ27が設けられている。アイドルスイッチ付スロットル開度センサ27によって検出されたアイドル状態及びスロットル開度のそれぞれを示す信号は、ECU20に出力される。
【0034】
エンジン11には、エンジン回転数(エンジン回転速度)を検出するエンジン回転数センサ28が設けられている。エンジン回転数センサ28により検出されたエンジン回転数を示す信号は、ECU20に出力される。車速センサ29は、車両の車速を検出する。車速センサ29により検出された車速を示す信号は、ECU20に出力される。
【0035】
シフトポジションセンサ30は、運転者が操作するシフトレバーの位置(シフトポジション)を検出する。シフトポジションセンサ30により検出されたシフトポジションを示す信号は、ECU20に出力される。車輪速度センサ31は、車輪の速度を検出する。その検出された車輪の速度を示す信号がECU20に出力される。
【0036】
ブレーキ操作量センサ32は、ブレーキ装置18の操作量を検出する。ブレーキ操作量センサ32により検出されたブレーキ装置18の操作量を示す信号は、ECU20に出力される。ステアリング舵角センサ33は、運転者により操作されるステアリングの舵角を検出する。ステアリング舵角センサ33により検出されたステアリングの舵角を示す信号は、ECU20に出力される。方向指示器スイッチ34は、運転者により操作され、方向指示器(図示せず)により指示される方向を特定するための操作が行われる。方向指示器により指示される方向を示す信号は、ECU20に出力される。
【0037】
運転モード設定スイッチ35は、運転者により操作され、運転モードを設定するための操作が行われる。運転者により、運転モード設定スイッチ35が操作されることで、スポーツ走行指向又は通常走行指向の運転モードが設定され、その設定された運転モードを示す信号がECU20に出力される。車両傾斜角センサ36は、車両の路面に対する傾斜角を検出する。その検出された車両の路面に対する傾斜角を示す信号がECU20に出力される。車両傾斜角センサ36は、例えば、車両のサスペンションのストロークを検出するストロークセンサであることができる。
【0038】
横Gセンサ37は、車両の横Gを検出し、前後Gセンサ38は、車両の前後Gを検出し、上下Gセンサ39は、車両の上下Gを検出する。横Gセンサ37により検出された横Gを示す信号、前後Gセンサ38により検出された前後Gを示す信号、及び上下Gセンサ39により検出された上下Gを示す信号のそれぞれは、ECU20に出力される。
【0039】
ヨーレートセンサ40は、車両のヨーレートを検出する。ヨーレートセンサ40により検出されたヨーレートを示す信号は、ECU20に出力される。出力軸回転数センサ41は、自動変速機13の出力軸の回転数を検出する。出力軸回転数センサ41により検出された出力軸の回転数を示す信号は、ECU20に出力される。
【0040】
ECU20は、変速マップを有しており、スロットル開度、車速などに基づいて、自動変速機13の変速段を決定し、この決定された変速段を成立させるようにA/T油圧制御装置17を制御することができる。
【0041】
ナビゲーション装置(道路情報記憶装置)50は、自車両を所定の目的地に誘導することを基本的な機能としており、ECU60と、操作部51と、表示部52と、スピーカ53と、位置検出部54と、地図データベース55と、運転履歴記録部56とを備えている。ナビゲーション装置50のECU60は、ECU20と双方向の通信が可能である。
【0042】
ナビゲーション装置50は、運転者に車両の現在地周りの道路情報を知らせて、車両の目的地までの走行経路を誘導する。操作部51には、目的地などの指示データが入力される。表示部52には、現在地周辺の地図情報、現在位置、目的位置、経路などの情報が表示される。スピーカ53からは、案内音声が出力される。
【0043】
ECU60のCPU61は、入力された情報に基づいて、ナビゲーション処理等の各種演算処理を行う。ECU60のROM62には、目的地までの経路の検索、経路中の走行案内、特定区間の決定等を行うための各種プログラムが格納されている。
【0044】
位置検出部54は、GPSレシーバ、地磁気センサ、距離センサ、ビーコンセンサ、及びジャイロセンサを備えている。位置検出部54は、自車の位置を検出し、その検出した自車の位置を示すデータをECU60に出力する。
【0045】
地図データベース55には、車両の走行に必要な情報(地図、直線路、コーナー、登降坂、高速道路など)が記憶されている。地図データベース55は、地図データファイル、交差点データファイル、ノードデータファイル、道路データファイルを備えている。これら各ファイルには、経路探索を行うとともに、探索した経路に沿って案内図を表示するための各種データが格納されている。ECU60は、地図データベース55を参照して、必要な情報を読み出す。
【0046】
運転履歴記録部56には、車両が走行した走行路、及び車両が走行路を走行した日時などの情報が記録される。ECU60は、必要に応じて、運転履歴記録部56から運転履歴のデータを読み出す。
【0047】
ECU60は、操作部51から入力された目的地などの指示データ及び位置検出部54により検出された自車位置に基づいて、地図データベース55から必要な地図情報を検索し、その検索により得られた経路の情報を表示部52に表示させる。ECU60は、操作部51から入力された目的地などの指示データが入力されていない場合には、自車位置の周辺の道路情報を表示部52に表示する。
【0048】
車両には、カメラ71と、道路状況検出部72が設けられている。カメラ71は、車両の前方の道路状況を撮像する。道路状況検出部72は、カメラ71により撮像されたデータに基づいて、車両の前方の道路状況を検出する。道路状況検出部72による検出結果は、ECU20に出力される。
【0049】
ここで、本実施形態における路面勾配の算出方法について説明する。本実施形態では、ピッチングによる影響を補正するためのピッチ補正式(後述の数式1)、及びロールによる影響を補正するためのロール補正式(後述の数式2)、及び車両旋回中のスリップ角による影響を補正するための旋回補正式(後述の数式3)の3つの式から導出される勾配相当加速度算出式(後述の数式9)に基づいて路面勾配の値が算出される。
【0050】
まず、ピッチ補正式(数式1)について、図2を参照して説明する。図2は、登坂路走行中においてピッチングが生じている状態の車両の側面図である。図2において、符号100は、車両を示す。前後Gセンサ38は、図示しないサスペンションに支持されたボディに設けられている。x軸は、車両100の前後方向を示す。x軸は、路面Rと平行に設定されている。符号θは、路面勾配を示す。符号αは、車両100のピッチ角を示す。符号S1は、前後Gセンサ38の検出方向を示す。符号gは重力加速度を、符号gsensbaは前後Gセンサ38により検出される加速度を、符号Gbaは車両100の前後方向(x軸方向)の加速度(前後加速度)をそれぞれ示す。路面勾配、ピッチがある場合、路面水平方向の車両100の前後加速度Gbaは、下記数式1により表される。
【0051】
【数1】

【0052】
上記のように、数式1は、車両の前後方向に働く実際の前後加速度Gbaと、車両の前後方向に働く加速度を検出する前後加速度検出手段の検出値gsensbaとの間の関係式である。その関係式には、車両のピッチ角αと路面勾配θの影響が含まれている。
【0053】
次に、ロール補正式(数式2)について図3を参照して説明する。図3は、カント(路面の横断勾配)が設けられた路面Rを走行中にロールが発生した状態の車両100の正面図である。図3において、符号δは、路面Rのカント角を示す。符号γは、車両100のロール角を示す。横Gセンサ37は、図示しないサスペンションに支持されたボディに設けられている。y軸は、車両100の横方向を示す。y軸は、路面Rと平行に設定されている。符号S2は、横Gセンサ37の検出方向を示す。符号Grlは、車両100のy軸方向の加速度(横加速度)を示す。符号gsensrlは、横Gセンサ37により検出される加速度を示す。カント路面走行中、またはロールしているときの実際の車両100に生じる横加速度Grlは、下記数式2により表される。
【0054】
【数2】

【0055】
上記のように、数式2は、車両の横方向に働く実際の横加速度Grlと、車両の横方向に働く加速度を検出する横加速度検出手段の検出値gsensrlとの間の関係式である。その関係式には、車両のロール角γ(とカント角δ)の影響が含まれている。
【0056】
旋回補正式(数式3)について、図4を参照して説明する。図4は、旋回中の車両100の平面図(上方から見た図)である。図4において、符号C2は、車両100の進行方向を示す。符号C3は、車両100の進行方向C2と直交する方向を示す。符号βは、車両100の進行方向C2と車両100の前後方向xとのなす角(スリップ角)を示す。符号dvwは、車両100の進行方向C2の実加速度を示す。符号GYRは、車両100の進行方向と直交する方向C3の加速度(横力)を示す。旋回中はスリップ角の影響を受けるため、実際に車両100に生じる前後力(車両100の進行方向C2の実加速度)dvw、横力GYRからx軸(番線上)、y軸(番線垂直方向)の力が下記数式3及び数式4から求められる。
【0057】
【数3】

【数4】

【0058】
上記数式3及び数式4から横力GYRを消去すると、実加速度dvwが、下記数式5に求められる。
【数5】

【0059】
上記のように、数式3〜数式5は、車両の前後方向に働く実際の前後加速度Gba及び車両の横方向に働く実際の横加速度Grlと、車両の前後方向に働く加速度を検出する前後加速度検出手段の検出値gsensba及び車両の横方向に働く加速度を検出する横加速度検出手段の検出値gsensrlとの間の関係を示している。それらの式には、車両のスリップ角βの影響が含まれている。
【0060】
次に、勾配相当加速度算出式(勾配相当加速度g・sinθを求める)について説明する。数式1及び数式2を数式5に代入すると下記数式6が得られる。
【数6】

【0061】
数式6から、勾配相当加速度g・sinθは下記数式7により表される。
【数7】

【0062】
勾配相当加速度g・sinθの算出式(数式7)が下記数式8の条件で近似されることにより下記数式9が得られる。これは、前述したように、本実施形態では路面Rのカント角δによる影響が小さいと仮定されていること、及び、通常ピッチ角α及びロール角γは小さな値であることによる。
【数8】

【数9】

【0063】
また、下記数式10に示す近似式を用いて数式9の右辺第4項を近似すると、下記数式11が得られる。
【数10】

【数11】

【0064】
本実施形態では、数式11に基づいて路面勾配θが求められる。数式11において、前後加速度センサ値gsensbaは、前後Gセンサ38により検出される。同様に、横加速度センサ値gsensrlは、横Gセンサ37により検出され、ピッチ角α及びロール角γは、それぞれ車両傾斜角センサ36により検出され、スリップ角βは、ヨーレートセンサ40の検出値に基づいて求められ、実加速度dvwは、車輪速度センサ31(または出力軸回転数センサ41)の検出結果に基づいて算出されることができる。
【0065】
図5は、本実施形態の動作を示すフローチャートである。
【0066】
[ステップS101]
まず、ステップS101では、路面勾配θを算出する条件が成立しているか否かが判定される。
【0067】
本実施形態では、数式11に基づいて路面勾配θが求められる際に、後述するように、実加速度dvwは車輪速度(または出力軸回転数)に基づいて算出される。車速がある一定の値(予め定められた所定車速)以上の値とならないと、車輪速度センサ31(出力軸回転数センサ41)から車輪速度(出力軸回転数)を示す信号が出力されないことがある。このため、実加速度dvwに基づいて路面勾配θが算出可能となるのは、車両100の車速が車輪速度センサ31(出力軸回転数センサ41)から車輪速度(出力軸回転数)を示す信号が出力される速度範囲にある場合となる。従って、路面勾配θが算出される条件には、車速が上記所定車速以上であるという条件が含まれることができる。
【0068】
また、路面勾配θの算出には、加速度センサ(37、38)等の各センサの検出値が用いられる。このため、上記各センサの0点補正がまだ行われていない場合には、路面勾配θが精度良く求められないことがある。そこで、路面勾配θが算出される条件には、上記各センサの0点補正が既に行われているという条件が含まれることができる。
【0069】
ステップS101における判定の結果、路面勾配θを算出する条件が成立していると判定された(ステップS101肯定)場合、ステップS102へ移行し、そうでない場合には、本制御フローはリターンされる。
【0070】
[ステップS102]
ステップS102では、路面勾配θの算出に用いられる信号(検出値)が各センサから読み込まれる。具体的には、車輪速度センサ31(または出力軸回転数センサ41)、前後Gセンサ38、横Gセンサ37、ヨーレートセンサ40、及び車両傾斜角センサ(例えばサスペンションのストロークセンサ)36から出力される信号がそれぞれ読み込まれる。ステップS102の次にステップS103が行われる。
【0071】
[ステップS103]
ステップS103では、ステップS102で読み込まれた情報に基づいて、実加速度dvw、スリップ角β、ピッチ角α、及びロール角γがそれぞれ算出される。実加速度dvwは、車輪速度センサ31(または出力軸回転数センサ41)の検出結果に基づいて算出されることができる。スリップ角βの算出は、公知の方法によって行われる。スリップ角βは、例えば、下記数式12の両辺の積分計算により求められることができる。
【数12】

【0072】
ピッチ角α及びロール角γは、それぞれ車両傾斜角センサ36の検出値に基づいて算出されることができる。ステップS103の次に、ステップS104が行われる。
【0073】
[ステップS104]
次に、ステップS104では、ステップS102で読み込まれた前後Gセンサ38及び横Gセンサ37のそれぞれの検出結果と、ステップS103で算出されたスリップ角β、ピッチ角α、ロール角γ、及び実加速度dvwの値とに基づいて、数式11により勾配相当加速度g・sinθが求められる。これにより、旋回補正、ピッチ補正、及びロール補正が統合的に行われて勾配相当加速度g・sinθが求められる。求められた勾配相当加速度g・sinθから、路面勾配θが算出される。ステップS104の次に、ステップS105が行われる。
【0074】
[ステップS105]
次にステップS105では、ステップS104で算出された路面勾配θに基づいて、車両制御パラメータが設定される。路面勾配θに基づく車両制御は、例えば、駆動力(制動力)の制御であることができる。この場合、例えば、目標とする駆動力の算出に路面勾配θが用いられる。車両100の駆動力制御には、例えば、自動変速機13のダウンシフト、自動ブレーキ、回生ブレーキ、電子制御スロットルの制御などが含まれることができる。ステップS105の次に、ステップS106が行われる。
【0075】
[ステップS106]
次に、ステップS106では、路面勾配θに基づく車両100の制御を開始する条件が成立しているか否かが判定される。例えば、路面勾配θに基づいて車両100の駆動力の制御が行われる場合には、走行中の路面の路面μ(路面の凹凸を含む)に基づいて上記判定が行われることができる。この場合、例えば、路面μの値が小さい(低μ路走行の)場合に、車両100の駆動力が制御により変更されることは好ましくない場合がある。このため、例えば路面μが予め定められたしきい値よりも大きな値である場合に、路面勾配θに基づく車両100の駆動力の制御を開始する条件が成立していると判定されることができる。
【0076】
ステップS106における判定の結果、路面勾配θに基づく車両100の制御を開始する条件が成立していると判定された(ステップS106肯定)場合には、ステップS107へ移行し、そうでない場合には、本制御フローはリセットされる。
【0077】
[ステップS107]
ステップS107では、路面勾配θに基づく車両100の制御が実行される。ステップS107の次に、本制御フローはリセットされる。
【0078】
本実施形態によれば、車両旋回中のスリップ角による影響を抑制するための旋回補正、ピッチングによる影響を抑制するためのピッチ補正、及びロールによる影響を抑制するためのロール補正が統合的に行われて路面勾配θが算出される(ステップS103、S104)。
【0079】
(第2実施形態)
図6から図8を参照して第2実施形態について説明する。第2実施形態については、上記第1実施形態と異なる点についてのみ説明する。
【0080】
上記第1実施形態は、カント角δによる影響が小さいとの前提の下に路面勾配θが算出された。これに代えて、本実施形態では、路面のカントによる影響が補正されて路面勾配θが算出される。具体的には、以下に説明するように、上下Gセンサ39の検出値gvsctbに基づいてカントによる影響が補正される。
【0081】
本実施形態における路面勾配θの算出方法について以下に説明する。上記第1実施形態と異なり、本実施形態では、車両100に働く垂直方向の加速度として、重力加速度gに代えて、垂直方向重力加速度成分g’が用いられる。垂直方向重力加速度成分g’は、下記数式13で表される。
【0082】
【数13】

【0083】
ここで、重力加速度を除く垂直方向の加速度gzは、上下Gセンサ39により検出される値gvsctbとして求めることができることから、その重力加速度を除く垂直方向の加速度gz(=gvsctb)を用いて、垂直方向重力加速度成分g’が求められる。
【0084】
ピッチングによる影響を補正するためのピッチ補正式(後述の数式14)について、図6を参照して説明する。図6は、登坂路走行中においてピッチングが生じた状態の車両100の側面図である。上下Gセンサ39は、前後Gセンサ38と実質的に同じ位置に設けられている。符号S3は、上下Gセンサ39の検出方向を示す。上記第1実施形態(図2)の重力加速度gに代えて、垂直方向重力加速度成分g’が用いられている。車両100の前後加速度Gbaは、路面と平行に働くので、下記数式14により表される。
【0085】
【数14】

【0086】
次に、ロールによる影響を補正するためのロール補正式(後述の数式15)について、図7を参照して説明する。図7は、カントが設けられた路面Rを走行中にロールが発生した状態の車両100の正面図である。上記第1実施形態(図3)の重力加速度gに代えて、垂直方向重力加速度成分g’が用いられている。カント路面走行中あるいはロールしているときの実際の車両100に生じる横加速度Grlは、路面水平方向で考えると、下記数式15により表される。
【0087】
【数15】

【0088】
ここで、上下Gセンサ39により検出される加速度gvsctbと、垂直方向重力加速度成分g’との関係について説明する。図6に示すように、車両100の前後方向の垂直断面で見た場合、上下Gセンサ39の検出方向S3は、垂直軸Vに対して路面勾配θ及びピッチ角αを合計した角度だけの傾きを有している。一方、図8に示すように、車両100の横方向の垂直断面で見た場合、上下Gセンサ39の検出方向S3は、垂直軸Vに対してロール角γ及びカント角δを合計した角度だけの傾きを有している。よって、上下Gセンサ39により検出される加速度gvsctb(上下方向の重力加速度変化量)は、下記数式16により表される。
【0089】
【数16】

数式16に示すように、上下Gセンサ39により検出される加速度gvsctbには、ロール角γ及びカント角δの影響が共に含まれる。従って、カント及びロールの影響が合わせて上下Gセンサ39により検出され、補正されることができる。
【0090】
次に、旋回による影響を補正するための旋回補正式(後述の数式17〜数式20)について説明する。上記第1実施形態と同様に、前後加速度Gba及び横加速度Grlは、それぞれ下記数式17及び数式18により表される。
【0091】
【数17】

【数18】

【0092】
横力GYRは、ヨーレートYrとスリップ角を用い、下記数式19より求まる。
【数19】

【0093】
上記数式19より下記数式20が求められる。
【数20】

【0094】
次に、勾配相当加速度算出式(勾配相当加速度g・sinθを求める)を求める。
数式14及び数式17から下記数式21が得られる。
【数21】

【0095】
下記数式22とおくと、下記数式23が得られる。
【数22】

【数23】

【0096】
数式15及び数式18から下記数式24が得られる。
【数24】

【0097】
下記数式25とおくと、下記数式26が得られる。
【数25】

【数26】

【0098】
数式23及び数式26を数式16に代入して、下記数式27が得られる。これにより、下記数式28、数式29となる。
【数27】

【数28】

【数29】

【0099】
よって、勾配相当加速度算出式は下記数式30となる。
【数30】

【0100】
路面勾配θは、数式30に基づいて算出される。これにより、旋回補正、ピッチ補正、ロール補正、及びカント補正が統合的に行われて路面勾配θが算出される。
【0101】
第2実施形態の制御フローは、上記第1実施形態(図5)と同様であることができる。この場合、ステップS102では、上記第1実施形態の各センサからの出力信号に加えて、上下Gセンサ39から出力される信号が読み込まれる。
【0102】
ステップS103では、上記第1実施形態に加えて、横力GYRが、数式20に基づいて算出される。
【0103】
ステップS104では、ステップS102で読み込まれた前後Gセンサ38、横Gセンサ37、及び上下Gセンサ39のそれぞれの検出結果と、ステップS103で算出されたスリップ角β(の推定値)、ピッチ角α、ロール角γ、横力GYR、及び実加速度dvwの値とに基づいて、数式30により勾配相当加速度g・sinθが求められる。求められた勾配相当加速度g・sinθから、路面勾配θが算出される。その他の動作については、上記第1実施形態と同様であることができる。
【0104】
本実施形態によれば、上記第1実施形態の補正に加えて、カント角δに基づいて路面勾配θが補正される。これにより、カントの設けられた路面においても精度良く路面勾配θが算出されることができる。通常、カントによる影響を考慮することは困難であるが、上下Gセンサを用いることでカントの影響を含めて路面勾配の算出が可能となる。
【0105】
(第3実施形態)
図9を参照して第3実施形態について説明する。第3実施形態については、上記各実施形態と異なる点についてのみ説明する。
【0106】
上記各実施形態では、各センサの検出値に基づいて、ピッチ補正、ロール補正、及び旋回補正(上記第2実施形態ではさらにカント補正)が行われることで、路面勾配θが精度良く算出された。ここで、上記各センサの検出値には、例えば製品ばらつきや経時劣化等による誤差が含まれている場合がある。そこで、本実施形態では、センサの検出値の補正(0点補正)が行われる。
【0107】
より具体的には、定常走行中かつ旋回中ではない条件下において、上記各実施形態により算出された路面勾配相当加速度(図9の路面勾配相当加速度A(ステップS203)参照)と、従来公知の路面勾配算出方法により算出される路面勾配相当加速度(図9の路面勾配相当加速度B(ステップS207)参照)とが比較される。
【0108】
定常走行中かつ旋回中ではない条件下であれば、従来公知の路面勾配算出方法であっても、路面勾配相当加速度が精度良く算出されることができる。よって、その条件下で、路面勾配相当加速度Aと路面勾配相当加速度Bとの間に値の差が生じる場合には、その差は、センサの検出値に含まれる誤差により生じる路面勾配相当加速度Aの算出誤差であると考えられる。そこで、本実施形態では、路面勾配相当加速度Aと路面勾配相当加速度Bとの差に基づいて、センサ(の検出値)が補正される。ここで、補正が行われるセンサは、前後Gセンサ38及び車両傾斜角センサ(例えばサスペンションのストロークセンサ)36である。
【0109】
図9は、本実施形態の車両センサ補正装置の動作を示すフローチャートである。ここでは、本実施形態のセンサの検出値の補正が上記第1実施形態の制御に適用される場合について説明する。本実施形態では、まず、図9に示す制御フローの1サイクル目で、センサの検出値に対する補正値が算出される。次に、制御フローの2サイクル目で、再度、センサの検出値の読み込みが行われ、その読み込まれた検出値に上記補正値が適用された上で路面勾配θが算出される。
【0110】
[ステップS201]
まず、ステップS201では、加速度(路面勾配相当加速度A)の算出に必要とされる各センサの検出結果が読み込まれる。検出結果が読み込まれる対象のセンサは、上記第1実施形態の図5のステップS102と同様であることができる。また、ステップS201では、各センサの検出結果の読み込みに加えて、センサの検出値に対する補正値の値が読み込まれる。前のサイクルの本制御フローにおいてセンサ値に対する補正値が記憶されている(後述するステップS208参照)場合には、記憶されている補正値が読み込まれる。読み込まれた補正値に基づいて、読み込まれたセンサの検出値が補正される。ステップS201の次に、ステップS202に進む。
【0111】
[ステップS202]
次に、ステップS202では、ステップS201で読み込まれ情報に基づいて、スリップ角β(の推定値)、ピッチ角α、ロール角γ、及び実加速度dvwの値がそれぞれ算出される(上記図5のステップS103と同様)。上記ステップS201にて上記補正値に基づく上記センサの検出値の補正が行われた場合には、その補正されたセンサの検出値を用いてステップS202の算出が行われる。ステップS202の次に、ステップS203が行われる。
【0112】
[ステップS203]
次に、ステップS203では、上記ステップS201で読み込まれ補正された各センサの検出値と、上記ステップS202で算出された各値とに基づいて、数式11により路面勾配相当加速度A(上記第1実施形態のg・sinθに相当)が算出される。ステップS203の次に、ステップS204が行われる。
【0113】
[ステップS204]
次にステップS204では、車両100が現在定常走行中であるか否かが判定される。ここで、定常走行中であるとは、例えば、変速中、急加速、急減速、及びブレーキペダル踏込みを除く走行状態が含まれることができる。定常走行中であるか否かの判定は、公知の方法(例えば特開平11−281672号参照)によることができる。
【0114】
ステップS204における判定の結果、定常走行中であると判定された(ステップS204肯定)場合には、ステップS205へ移行し、そうでない(ステップS204否定)場合には本制御フローはリターンされる。
【0115】
[ステップS205]
ステップS205では、車両100にロールが生じていないか否かが判定されるために、車両100が旋回中であるか否かが判定される。上記判定は、例えば、横加速度及び操舵角の少なくともいずれか一方に基づいて判定されることができる。この場合、例えば、横Gセンサ37の検出値gsensrlが予め定められた所定の加速度の範囲内である条件、及び操舵角が予め定められた所定の操舵角の範囲内である条件の少なくともいずれか一方に基づいて、車両100が旋回中であるか否かが判定されることができる。
【0116】
ステップS205における判定の結果、車両100が旋回中ではないと判定された(ステップS205否定)場合には、ステップS206へ移行し、そうでない(ステップS205肯定)場合には、本制御フローはリターンされる。
【0117】
[ステップS206]
ステップS206では、公知の方法による路面勾配相当加速度B(後述するステップS207)の算出に必要な値が求められる。路面勾配相当加速度Bの算出は、例えば、車両100の駆動力と走行抵抗とに基づいて算出されることができるため、この場合、ステップS206では、車両100の駆動力と走行抵抗が求められる。
【0118】
車両100の駆動力は、例えば自動変速機13の入力トルク(例えばエンジン回転数及びスロットル開度から求められる車両100の駆動トルク)、ギア比、及び伝達効率に基づいて算出されることができる。車両100の走行抵抗は、例えば、車両100の設計値と車速に基づいて算出されることができる。ステップS206の次に、ステップS207が行われる。
【0119】
[ステップS207]
次に、ステップS207では、路面勾配相当加速度Bが求められる。路面勾配相当加速度Bは、下記数式31に示すように、基準加速度及び実車両加速度が算出され、算出結果に基づいて求められる。基準加速度は、ステップS206で算出された車両100の駆動力及び走行抵抗、及び車両重量に基づいて求められる。一方、実車両加速度は、例えば出力軸回転数センサ41(車輪速度センサ31)により検出される出力軸回転数(車輪速度)の変化量に基づいて求められる。ステップS207の次に、ステップS208が行われる。
【数31】

【0120】
[ステップS208]
次に、ステップS208では、センサ(本例では、車両傾斜角センサ36及び前後Gセンサ38)の検出値に対する補正値が算出される。まず、車両傾斜角センサ36の検出値に対する補正値が算出される。次に、前後Gセンサ38の検出値に対する補正値が求められる。
【0121】
まず、車両傾斜角センサ36の補正について説明する。車両傾斜角センサ36は、例えばサスペンションのストロークセンサであることができる。車両100が定常走行中であり、かつ旋回中ではないので(ステップS204肯定、ステップS205否定)、車両100にピッチ、ダイブ及びロールは生じていない。即ち、サスペンションが中立状態であるとみなすことができる。この場合に、ストロークセンサの経時劣化等により、車高を求めるためのストロークセンサの出力値がゼロとならない場合がある。そこで、現在の状態におけるストロークセンサの出力値をゼロとする0点補正が行われる。次に、ピッチ及びロールによる補正量が0に設定される。その上で、再度、路面勾配相当加速度Aが算出される。
【0122】
その再度算出された再度路面勾配相当加速度Aでは、既にストロークセンサの出力値の補正が行われている。このため、再算出された路面勾配相当加速度Aと路面勾配相当加速度Bの間にずれが存在する場合には、そのずれは、前後Gセンサ38の検出値に含まれる誤差(例えば製品ばらつきや経時劣化等によるドリフト誤差)と考えられる。そこで、路面勾配相当加速度Aと路面勾配相当加速度Bとの差が、前後Gセンサ38の検出結果に含まれる誤差に相当する補正値として記憶される。
【0123】
ステップS208で車両傾斜角センサ(ストロークセンサ)36及び前後Gセンサ38のそれぞれの検出値に対する補正値が求められ、記憶されると、本制御フローはリターンされる。そして、その補正内容が反映された上で次サイクルの本制御フローが実行され、ステップS203で路面勾配θが算出される。
【0124】
本実施形態によれば、センサ(本例では車両傾斜角センサ36及び前後Gセンサ38)の検出値に対する補正値が算出及び記憶され(ステップS208)、その記憶された補正値に基づいて上記センサの検出値の0点補正が行われる(ステップS201)。路面勾配θの算出精度は、各センサの精度に依存する。本実施形態では、適切に各センサの0点補正が行われて各センサの検出精度が向上するため、路面勾配θの算出精度が向上する。また、本実施形態の補正が適宜行われることにより、上記センサの経時劣化による路面勾配θの算出精度の低下が抑制される。
【0125】
上記各実施形態では、加速度を検出するセンサ(37、38、39)によりサスペンションに支持されたボディに働く加速度が検出される場合について説明したが、加速度を検出するセンサ(37、38、39)によりサスペンションに支持されたボディ以外の部分(サスペンションよりも下の部分)に働く加速度が検出される場合についても上記各実施形態が適用されることができる。この場合、加速度を検出するセンサ(37、38、39)の検出値には、ピッチ及びロールによる影響が実質的にないとみなすことができる。従って、ピッチ補正及びロール補正を省略して、旋回補正とカント補正を行うことにより路面勾配θが算出されることができる。
【図面の簡単な説明】
【0126】
【図1】本発明の道路形状算出装置の第1実施形態に係る装置の概略構成図である。
【図2】本発明の道路形状算出装置の第1実施形態におけるピッチ補正の方法を説明するための図である。
【図3】本発明の道路形状算出装置の第1実施形態におけるロール補正の方法を説明するための図である。
【図4】本発明の道路形状算出装置の第1実施形態における旋回補正の方法を説明するための図である。
【図5】本発明の道路形状算出装置の第1実施形態の動作を示すフローチャートである。
【図6】本発明の道路形状算出装置の第2実施形態におけるピッチ補正の方法を説明するための図である。
【図7】本発明の道路形状算出装置の第2実施形態におけるロール補正及びカント補正の方法を説明するための図である。
【図8】本発明の道路形状算出装置の第2実施形態におけるロール補正及びカント補正の方法を説明するための他の図である。
【図9】本発明の車両センサ補正装置の第3実施形態の動作を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0127】
11 エンジン
12 トルクコンバータ
13 自動変速機
14 デファレンシャルギヤ
15 ドライブシャフト
16 駆動輪
17 A/T油圧制御装置
18 ブレーキ装置
19 ブレーキ油圧制御装置
20 ECU
21 アクセルポジションセンサ
22 吸気管
23 スロットルコントロールバルブ
24 スロットルアクチュエータ
25 バイパス通路
26 アイドルスピードコントロールバルブ
27 アイドルスイッチ付スロットル開度センサ
28 エンジン回転数センサ
29 車速センサ
30 シフトポジションセンサ
31 車輪速度センサ
32 ブレーキ操作量センサ
33 ステアリング舵角センサ
34 方向指示器スイッチ
35 運転モード設定スイッチ
36 車両傾斜角センサ
37 横Gセンサ
38 前後Gセンサ
39 上下Gセンサ
40 ヨーレートセンサ
41 出力軸回転数センサ
50 ナビゲーション装置
51 操作部
52 表示部
53 スピーカ
54 位置検出部
55 地図データベース
56 運転履歴記録部
60 ECU
61 CPU
62 ROM
α ピッチ角
θ 路面勾配
g 重力加速度
gsensba 前後Gセンサにより検出された前後加速度
Gba 前後加速度
γ ロール角
δ カント角
gsensrl 横Gセンサにより検出された横加速度
gvsctb 上下Gセンサにより検出された上下加速度
Grl 横加速度
β スリップ角
dvw 実加速度
GYR 横力

【特許請求の範囲】
【請求項1】
道路の形状を算出する道路形状算出装置であって、
車両の前後方向に働く実際の前後加速度と前記車両の前後方向に働く加速度を検出する前後加速度検出手段の検出値との間の第1関係式と、前記車両の横方向に働く実際の横加速度と前記車両の横方向に働く加速度を検出する横加速度検出手段の検出値との間の第2関係式と、前記車両の前後方向に働く実際の前後加速度及び前記車両の横方向に働く実際の横加速度と前記車両の前後方向に働く加速度を検出する前後加速度検出手段の検出値及び車両の横方向に働く加速度を検出する横加速度検出手段の検出値との間の第3関係式とから導かれる前記道路の形状に相当する加速度を算出するアルゴリズムに基づいて、前記道路の形状を算出する
ことを特徴とする道路形状算出装置。
【請求項2】
請求項1記載の道路形状算出装置において、
前記第1関係式には、前記車両のピッチ角と路面勾配の影響が含まれ、
前記第2関係式には、前記車両のロール角とカント角の影響が含まれ、
前記第3関係式には、前記車両のスリップ角の影響が含まれている
ことを特徴とする道路形状算出装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の道路形状算出装置において、
前記道路の形状の算出には、
前記車両に設けられた前後加速度センサと、
前記車両に設けられた横加速度センサと、
前記車両に設けられた車両傾斜角センサと、
前記車両に設けられたヨーレートセンサと、
前記車両に設けられた車輪速度センサ及び出力軸回転数センサのいずれか一方と
が用いられる
ことを特徴とする道路形状算出装置。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項に記載の道路形状算出装置において、
前記アルゴリズムは、下記数式32に対応している
【数32】

ことを特徴とする道路形状算出装置。
【請求項5】
道路の形状を算出する道路形状算出装置であって、
前記車両の上下方向に働く加速度を検出する上下加速度センサの出力値に基づいて、カントによる影響が補正された前記道路の形状を算出する
ことを特徴とする道路形状算出装置。
【請求項6】
請求項5記載の道路形状算出装置において、
前記道路の形状は、下記数式33から数式36に基づいて算出される
【数33】

【数34】

【数35】

【数36】

ことを特徴とする道路形状算出装置。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか1項に記載の道路形状算出装置により算出された第1の前記道路の形状と、前記車両の駆動力と実加速度から算出される第2の前記道路の形状とに基づいて、前記車両のセンサを補正する
ことを特徴とする車両センサ補正装置。
【請求項8】
請求項7記載の車両センサ補正装置において、
前記車両のセンサは、前後加速度センサ及び車両傾斜角センサの少なくともいずれか一方である
ことを特徴とする車両センサ補正装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−185418(P2008−185418A)
【公開日】平成20年8月14日(2008.8.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−18315(P2007−18315)
【出願日】平成19年1月29日(2007.1.29)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】