説明

部品の表面上におけるアルミナ層の存在を確認する装置および方法

【課題】部品の表面上におけるアルミナ層の存在を確認する方法を提供する。
【解決手段】部品の表面を適切な波長における放射線で照明し、該部品の該表面上にある任意のアルミナにおける電子を通常エネルギー状態から高エネルギー状態に励起する工程と、該部品の該表面上にある任意のアルミナにおける該高エネルギー状態から該通常エネルギー状態に戻る電子により特定の波長で放射される放射線を検出、分析し、該部品の該表面上にある少なくとも一点における該アルミナの厚さを測定する工程と、該部品の該表面上にある該少なくとも一点で測定した該アルミナの厚さを、該部品の該表面上にある該点で予め決められたアルミナの厚さと比較し、該部品の該表面上における該少なくとも一点における該アルミナの厚さが十分であるか否かを決定する工程を含んでなる、方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、部品の表面上におけるアルミナ層の存在を確認する装置および方法に関するものであり、より詳しくは、ガスタービンエンジン部品、例えばタービンブレード、タービン翼または燃焼器部品、の表面上におけるアルミナ層の存在を確認する装置および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ガスタービンエンジンの、腐食性条件にさらされる部品には、部品の腐食を阻止するための保護被覆を施す。保護被覆の一群は、アルミナイジングを使用して部品の表面上にアルミニウム濃度が高い被覆を形成するが、そのような被覆は、単純なアルミナイド被覆、白金アルミナイド被覆、クロムアルミナイド被覆またはケイ素アルミナイド被覆、等でよい。これらのアルミニウム濃度が高い被覆は、アルミナの保護層を形成する。
【0003】
ガスタービンエンジンのアルミニウムおよびアルミナ被覆された部品を検査し、これらの部品が、アルミニウム濃度が高い被覆およびアルミナ層を必要とする全ての表面上にアルミニウム濃度が高い被覆およびアルミナ層が施されていることを確認する。ガスタービンエンジンのアルミニウムおよびアルミナ被覆された部品を検査する現在の方法は、「熱変色」(heat tint)を使用する。「熱変色」は、部品を洗浄すること、部品を脱脂すること、部品を洗浄すること、部品をグリット噴射加工(grit blasting)すること、部品を洗浄すること、部品を炉中に1時間入れること、および部品を目視で検査することを含んでなる。
【0004】
「熱変色」の問題は、時間を浪費すること、検査を行う前に多くの処理を必要とすること、および「熱変色」を行った各部品を検査員が個別に検査するので、検査処理が非常に主観的になることである。
【発明の概要】
【0005】
そこで、本発明は、部品の表面上におけるアルミナ層の存在を確認するための、上記の問題を軽減、好ましくは克服する新規な装置および方法を提供する。
【0006】
従って、本発明は、アルミニウム含有層が部品の表面上に配置されており、アルミナ層が該アルミニウム含有層上に配置されている部品の表面上における該アルミナ層の存在を確認するための装置であって、該装置が、部品の表面を適切な波長における放射線で直接照明して、該部品の該表面上にある任意のアルミナにおける電子を通常エネルギー状態から高エネルギー状態に励起する手段と、該部品の該表面上にある任意のアルミナにおける該高エネルギー状態から該通常エネルギー状態に戻る電子により特定の波長で放射される放射線を検出する手段と、該部品の該表面上にある任意のアルミナにおける該高エネルギー状態から該通常エネルギー状態に戻る電子により放射される該放射線を分析して、該部品の該表面上にある少なくとも一点における該アルミナの厚さを測定する手段と、および該部品の該表面上にある該少なくとも一点で測定した該アルミナの厚さを、該部品の該表面上にある該点で予め決められたアルミナの厚さと比較して、該部品の該表面上における該少なくとも一点におけるアルミナの厚さが十分であるか否かを決定する手段とを備えた装置を提供する。
【0007】
好ましくは、該部品の該表面上にある任意のアルミナにおける該高エネルギー状態から該通常エネルギー状態に戻る電子により放射される該放射線を分析する該手段は、該部品の該表面上にある複数の点で該アルミナの厚さを測定するように配置し、該アルミナの該測定された厚さを比較する該手段は、該部品の該表面上にある該複数の点のそれぞれで測定された厚さを、該部品の該表面上にある該複数の点のそれぞれで予め決められたアルミナの厚さと比較し、該部品の該表面上における該複数の点のそれぞれにおける該アルミナの厚さが十分であるか否かを決定するように配置する。
【0008】
好ましくは、該部品の該表面上にある任意のアルミナにおける該高エネルギー状態から該通常エネルギー状態に戻る電子により放射される該放射線を分析する該手段は、該部品の該表面上にある各点で該アルミナの厚さを測定するように配置し、該アルミナの該測定された厚さを比較する該手段は、該部品の該表面上にある各点で測定された該厚さを、該部品の該表面上にある該点における予め決められたアルミナの厚さと比較し、該部品の該表面上にある各点における該アルミナの厚さが十分であるか否かを決定するように配置する。
【0009】
好ましくは、該部品の該表面を照明する該手段は、該部品の該表面を、紫外放射線、放射線スペクトルの青色領域における放射線および/または緑色領域における放射線で照明するように配置する。好ましくは、該部品の該表面を照明する該手段は、該部品の該表面を、488nm、505nm、514nmまたは530nmの波長における放射線で照明するように配置する。好ましくは、放射線を検出する該手段は、692nm〜696nmの波長で放射線を検出するように配置する。好ましくは、該部品の該表面を放射線で照明する該手段は、少なくとも一個の発光ダイオードまたは少なくとも一個のレーザーを含んでなる。好ましくは、放射線を検出する該手段は、カメラを含んでなる。好ましくは、該カメラはCCDカメラまたはCMOSカメラである。好ましくは、分析および比較する該手段は、パーソナルコンピュータを含んでなる。好ましくは、該部品の該表面を照明する該手段は、該カメラの周りに一列に配置した複数の発光ダイオードを含んでなる。好ましくは、該カメラは、赤色帯域フィルタを有する。好ましくは、該少なくとも一個の発光ダイオードは、緑色ショートパスフィルタ、青色フィルタ、紫外フィルタ、または赤色光を遮断するショートパスフィルタを有する。
【0010】
好ましくは、本装置は、放射線を通さないケースを含んでなり、該部品の該表面を照明する該手段は、該部品の外側表面を照明するように配置し、該部品の該表面を照明する該手段および放射線を検出する該手段は、光を通さないケースの中に配置する。あるいは、本装置は、部品の内側表面を照明するボロスコープを含んでなる。
【0011】
本発明は、アルミニウム含有層が部品の表面上に配置されており、アルミナ層が該アルミニウム含有層上に配置されている部品の表面上におけるアルミナ層の存在を確認するための方法であって、該方法が、
a)部品の表面を適切な波長における放射線で直接照明して、該部品の該表面上にある任意のアルミナにおける電子を通常エネルギー状態から高エネルギー状態に励起する工程、
b)該部品の該表面上にある任意のアルミナにおける該高エネルギー状態から該通常エネルギー状態に戻る電子により特定の波長で放射される放射線を検出する工程、
c)該部品の該表面上にある任意のアルミナにおける該高エネルギー状態から該通常エネルギー状態に戻る電子により放射される該放射線を分析して、該部品の該表面上にある少なくとも一点における該アルミナの厚さを測定する工程、
d)該部品の該表面上にある該少なくとも一点で測定した該アルミナの厚さを、該部品の該表面上にある該点で予め決められたアルミナの厚さと比較して、該部品の該表面上における該少なくとも一点における該アルミナの厚さが十分であるか否かを決定する工程
を含んでなる、方法も提供する。
【0012】
好ましくは、工程c)が、該部品の該表面上にある任意のアルミナにおける該高エネルギー状態から該通常エネルギー状態に戻る電子により放射される該放射線を分析して、該部品の該表面上にある複数の点で該アルミナの厚さを測定することを含んでなり、工程d)が、該部品の該表面上にある該複数の点のそれぞれで測定された該アルミナの厚さを、該部品の該表面上にある該複数の点のそれぞれで予め決められたアルミナの厚さと比較し、該部品の該表面上における該複数の点のそれぞれにおける該アルミナの厚さが十分であるか否かを決定することを含んでなる。
【0013】
好ましくは、工程c)が、該部品の該表面上にある任意のアルミナにおける該高エネルギー状態から該通常エネルギー状態に戻る電子により放射される該放射線を分析して、該部品の該表面上にある各点で該アルミナの厚さを測定することを含んでなり、工程d)が、該部品の該表面上にある各点で測定された該アルミナの厚さを、該部品の該表面上にある該点における予め決められたアルミナの厚さと比較して、該部品の該表面上にある各点における該アルミナの厚さが十分であるか否かを決定することを含んでなる。
【0014】
好ましくは、適切な波長は、紫外放射線、放射線スペクトルの青色領域における放射線および/または緑色領域における放射線である。好ましくは、適切な波長は、488nm、505nm、514nmまたは530nmである。好ましくは、特定の波長は692nm〜696nmである。好ましくは、工程a)は、該部品の該表面を、少なくとも一個の発光ダイオードからの放射線または少なくとも一個のレーザーからの放射線で照明することを含んでなる。好ましくは、工程b)は、カメラで放射線を検出することを含んでなる。好ましくは、該カメラはCCDカメラまたはCMOSカメラである。好ましくは、工程c)および工程d)は、パーソナルコンピュータを使用して分析および比較することを含んでなる。好ましくは、複数の発光ダイオードを該カメラの周りに一列に配置する。好ましくは、該カメラは、赤色帯域フィルタを有する。好ましくは、該少なくとも一個の発光ダイオードは、緑色ショートパスフィルタ、青色フィルタ、紫外フィルタ、または赤色光を遮断するショートパスフィルタを有する。
【0015】
好ましくは、本方法は、該部品を、放射線を通さないケースの中に配置し、該部品の外側表面を照明することを含んでなる。あるいは、本方法は、ボロスコープを部品の中に挿入し、該部品の内側表面を照明することを含んでなる。
【0016】
好ましくは、部品は、ガスタービンエンジンの部品である。
【0017】
好ましくは、部品は、タービンブレードまたはタービン翼である。
【0018】
好ましくは、アルミナ層は、部品上のアルミニウム含有層の上に配置される。
【0019】
好ましくは、アルミニウム含有層は、アルミナイド層、白金アルミナイド層、ケイ素アルミナイド層、クロムアルミナイド層またはMCrAlY層、であり、ここでMはニッケル、コバルトまたはニッケルとコバルトの組合せであり、Crはクロムであり、Alはアルミニウムであり、Yはイットリウムである。
【図面の簡単な説明】
【0020】
本発明を、添付の図面を参照しながら例としてより詳細に説明する。
【図1】ターボファンガスタービンエンジンの、アルミナ層を有する部品を示す部分的に切り取った図である。
【図2】本発明による、部品上におけるアルミナ層の存在を確認する装置を通した断面図である。
【図3】図2における矢印Aの方向で見た図である。
【図4】図2における矢印Bの方向で見た図である。
【図5】部品の、アルミナ層を示す部分を通した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図1に示すターボファンガスタービンエンジン10は、流れの順で、入口12、ファン部分14、コンプレッサー部分16、燃焼部分18、タービン部分20および排気口22を含んでなる。ファン部分14は、ファン(図には示していない)を含んでなる。コンプレッサー部分16は、流れの順で中−圧コンプレッサー(図には示していない)および高−圧コンプレッサー(図には示していない)を含んでなる。タービン部分20は、流れの順で、高−圧タービン25、中−圧タービン(図には示していない)および低−圧タービン(図には示していない)を含んでなる。低−圧タービンは、第一シャフトを経由してファンを駆動するように配置され、中−圧タービンは、第二シャフトを経由して中−圧コンプレッサーを駆動するように配置され、高−圧タービン25は、第三シャフト30を経由して高−圧コンプレッサーを駆動するように配置されている。高−圧タービン25は、タービンディスク26を含んでなり、タービンディスク26は、複数の、周方向で間隔を置いて配置され、半径方向で外向きに伸びるタービンローターブレード28を支持している。タービンローターブレード28の上流には、複数のノズルガイドベーン24が配置され、燃焼部分18から来る高温ガスをタービンローターブレード28の上に向ける。タービンの周りには、外側タービンケーシング32が備えられている。
【0022】
タービンローターブレード28には、図5に示すように、タービンローターブレード28の腐食を抑えるための保護被覆34が施されている。保護被覆34は、単純なアルミナイド被覆、白金アルミナイド被覆、クロムアルミナイド被覆またはケイ素アルミナイド被覆もしくはMCrAlY被覆でよく、式中、Mはニッケル、コバルト、鉄、またはこれらの元素のいずれか2種類以上の組合せであり、Crはクロムであり、Alはアルミニウムであり、Yはイットリウムである。これらのアルミニウム含有被覆、またはアルミニウム濃度が高い被覆は、アルミナの保護層36を形成する。保護被覆34は、タービンローターブレード28の、腐食を受ける表面にのみ施すことができ、例えば保護被覆34は、翼部分29、プラットホーム部分31、シャンク部分33およびタービンローターブレード28中の冷却通路の一つ以上の表面に施すことができる。保護被覆34は、タービンローターブレード28の表面の様々な区域で異なっていてよく、例えば翼部分29およびプラットホーム部分31の表面上の保護被覆34は、冷却通路およびシャンク部分33の表面上の保護被覆34とは異なっていてよい。ルート部分35には、保護被覆が無い。
【0023】
部品28の表面上におけるアルミナ36、従ってアルミニウム濃度が高い被覆34の存在を確認するために、図2〜4に示すような装置40を使用する。部品28、例えばタービンローターブレード、上のアルミナ層36の存在を確認するための装置40は、部品28の表面を適切な波長における放射線で照明し、部品28の該表面上にある任意のアルミナ36における電子を通常エネルギー状態から高エネルギー状態に励起する手段42を含んでなる。装置40は、部品28の表面上にある任意のアルミナ36における、高エネルギー状態から通常エネルギー状態に戻る電子により特定の波長で放射される放射線を検出する手段44を含んでなる。装置40は、部品28の表面上にある任意のアルミナ36における、高エネルギー状態から通常エネルギー状態に戻る電子により放射された放射線を分析し、部品28の表面上にある少なくとも一点におけるアルミナ36の厚さを測定する手段46を含んでなり、装置40は、部品28の表面上にある該少なくとも一点で測定したアルミナ36の厚さを、部品28の表面上にある該点で予め決められたアルミナ36の厚さと比較し、部品28の表面上における該少なくとも一点におけるアルミナ36の厚さが十分であるか否かを決定する手段46も含んでなる。
【0024】
部品28の表面上にある任意のアルミナ36における高エネルギー状態から通常エネルギー状態に戻る電子により放射される放射線を分析する手段46は、部品の表面上にある複数の点でアルミナ36の厚さを測定するように配置し、アルミナ36の測定された厚さを比較する手段46は、部品28の表面上にある複数の点のそれぞれで測定された厚さを、部品28の表面上にある該複数の点のそれぞれで予め決められたアルミナ36の厚さと比較し、部品の表面上における該複数の点のそれぞれにおけるアルミナ36の厚さが十分であるか否かを決定するように配置する。
【0025】
部品28の表面上にある任意のアルミナ36における高エネルギー状態から通常エネルギー状態に戻る電子により放射される放射線を分析する手段46は、部品28の表面上にある各点でアルミナ36の厚さを測定するように配置し、アルミナ36の測定された厚さを比較する手段46は、部品28の表面上にある各点で測定された厚さを、部品28の表面上にある該点における予め決められたアルミナ36の厚さと比較し、部品28の表面上にある各点におけるアルミナ36の厚さが十分であるか否かを決定するように配置する。
【0026】
図2および3に示すように、部品28の表面を照明する手段42は、部品28の表面を、波長505nmの放射線で照明する。部品28の表面を放射線で照明する手段42は、少なくとも一個の発光ダイオードを含んでなる。少なくとも一個の発光ダイオードは、シアン高強度発光ダイオードでよい。シアン発光ダイオードは、緑および青色領域の全体にわたって大量の放射線を放射し、505nmにピークがあるが、赤色領域では放射線をほとんど放射しない。励起源として、発光ダイオードの代わりに、適切な波長で放射線を放射する少なくとも一個のレーザーを使用することができる。放射線を検出する手段44は、692nm〜696nmの波長で放射線を検出するように配置する。放射線を検出する手段44は、カメラを含んでなり、そのカメラはCCDカメラまたはCMOSカメラである。図2および3に示すように、複数の発光ダイオード48を一列に配置する。発光ダイオード48の列は、カメラ44の周りに配置する。発光ダイオード48の特定列は、カメラ44を取り巻く外側リング中に配置された12個のLED48、およびカメラを取り巻く内側リング中に配置された6、8個以上のLED48を含んでなる。他の適切なLED列も使用できる。カメラ44は、カメラ44のレンズの上に配置された赤色帯域フィルタを有し、蛍光波長695nm±5nmの放射線を通過させる。少なくとも一個の発光ダイオード48は、放射線源の上に配置された緑色ショートパスフィルタを有し、蛍光波長の残りの成分を全て除去する。
【0027】
装置40は、放射線を通さないケース50を含んでなり、部品28の表面を照明する手段42は、部品28の外側表面を照明するように配置し、部品28の表面を照明する手段42および放射線を検出する手段44は、光を通さないケース50の中に配置する。装置40は、光を通さないケース50の中に配置された作業テーブル52を含んでなり、検査すべき部品28およびグラチクルおよび一片の蛍光材料54、例えばサファイア、をその作業テーブル52の上に置き、標準的な目盛付き中性濃度フィルタを、放射線により照明される蛍光材料の表面上に配置する。あるいは、タービンローターブレード内にある冷却通路の内側表面上にあるアルミナ層およびアルミニウム含有層を検査できるように、装置は、ボロスコープを含んでなり、部品の内側表面を照明することができる。
【0028】
好ましくは、分析および比較する手段46は、パーソナルコンピュータ、PCを含んでなる。
【0029】
操作の際、部品28が、十分な厚さのアルミナ層36を有し、従って、十分な厚さの保護被覆34を有するか、否かを確認するために、部品28を、光を通さないケース50の中にある作業テーブル52の上に置く。発光ダイオード48が、部品28の表面を波長約505nmの放射線で照明し、カメラ44が、692nm〜696nmの波長にある放射線を検出する。アルミナ中で、高エネルギー状態から通常エネルギー状態に戻る電子が694nmのピーク波長で放射線を放射するが、ピーク波長は、実際には、692nm〜696nmの領域をカバーする。カメラ44は、発光ダイオード48による照明の前後に部品28の表面の静止画像を撮影し、PC46が、画像解析ソフトウエアを使用して部品28の表面の静止画像を解析する。蛍光材料54も発光ダイオード48により照明され、目盛付き中性濃度フィルタが、2種類の異なった成分間の直接比較、または異なったレベルの照明下で撮影された露出間の直接比較を行うための校正を行う。PC46は、カメラ44が撮影した画像から、部品28の表面上にある全ての点におけるアルミナ36の厚さを決定し、次いで、部品28の表面上にある全ての点で決定されたアルミナ36の厚さを、部品28の表面上にある全ての点で予め決められたアルミナ36の厚さと比較し、部品28の表面上にある全ての点におけるアルミナ36の厚さが十分であるか否かを決定する。従って、PCは、カメラ44が撮影した部品28の画像の各画素を解析し、部品28の画像の各画素における蛍光の強度を測定し、部品28の画像の各画素における蛍光の強度を部品28の該点におけるアルミナ層36の厚さに相関させる。部品28の各画素/点で測定されたアルミナ36の厚さは、部品28の表面上の該点で予め決められた、必要とされるアルミナ36の厚さと比較される。次いで、部品28を反転させ、部品28の反対側を検査する。
【0030】
保護被覆34、すなわちアルミニウム含有被覆、上のアルミナ36の上には、介在する被覆または層が存在しないので、部品28の表面上にある保護被覆34、すなわちアルミニウム含有被覆、上のアルミナ36を、手段42により放射される放射線により直接照明することにより、部品28の表面が照明される。
【0031】
アルミナ36の厚さ、従って、保護被覆34、アルミニウム含有被覆の厚さが不十分であると決定された場合、より多くのアルミニウム含有被覆で部品28を被覆し、保護被覆34の厚さ、従って、アルミナ36の厚さを増加させることができる。
【0032】
本発明を、部品の表面を波長505nmの放射線で照明することに関して説明したが、実際には、アルミナ中で高エネルギー状態から通常エネルギー状態に落ちる電子により放射される放射線の波長より短い全ての波長、例えば690nm〜700nm未満の波長、を使用することができる。従って、紫外波長で放射線を放射する発光ダイオードを使用することも可能である。一種以上のレーザーを使用する場合、例えばボロスコープと併用する場合、波長514nmおよび488nmのアルゴンイオンレーザーを使用することができ、波長530nmのダイオードレーザーを使用することができ、良好な強度を有する紫外、青色または緑色レーザーを使用することができる。従って、適切な波長は、紫外放射線、放射線スペクトルの青色領域における放射線、および/または緑色領域における放射線である。
【0033】
本発明を、カメラの前の固定帯域フィルタに関して説明したが、カメラの前の可変波長フィルタを使用することもできる。可変波長フィルタを使用することの利点は、これによって、アルミナの放射のピーク波長におけるシフトを探すためにハイパースペクトル画像形成が可能になることである。アルミナの放射のピーク波長におけるシフトは、アルミナにおけるひずみまたはひずみの変化によるものである。アルミナの放射のピーク波長における変化を検出することにより、アルミナ被覆における様々な位置におけるひずみを検出し、地図に描くことができる。
【0034】
本発明を、発光ダイオードの前に緑色ショートパスフィルタを使用することに関して説明したが、検出する放射線の波長より低い波長でできるだけ多くの放射線を通過させ、検出する波長で放射線をできるだけ多く遮断する全てのフィルタを使用することができる。従って、フィルタは、青色および紫外を通過させるべきである。従って、赤色光を遮断するショートパスフィルタを使用することができる。
【0035】
本発明の利点は、定量的データが部品から迅速に、容易に導かれることであり、本発明により、アルミナ被覆、従って、アルミニウム含有被覆が、アルミニウム含有被覆、またはアルミニウム濃度が高い被覆、およびアルミナ層を必要とする全ての表面上に存在するか、否かを示すことができる。本発明は、部品の最小限の洗浄だけを必要とし、部品のグリット噴射加工または部品を炉中に入れることを必要としない。本発明により、放射線に一回露出するだけで、部品の表面全体を検査することができる。蛍光材料上の目盛付き中性濃度フィルタにより、各露出毎に基準を得ることができ、これによって、異なった露出パラメータ、例えば照明レベル、を使用して撮影した画像を直接比較することができる。
【0036】
本発明を、部品をタービンブレードとして説明したが、部品は、ガスタービンエンジンのどの部品でも、例えばタービン翼、燃焼器部品または他の、アルミナ層を有する部品でもよい。
【0037】
アルミナ層は、部品表面上のアルミニウム含有被覆の上に配置することができる。アルミニウム含有被覆は、アルミナイド層、白金アルミナイド層、ケイ素アルミナイド層、クロムアルミナイド層、またはMCrAlY層、でよく、ここでMはニッケル、コバルトまたはニッケルとコバルトの組合せであり、Crはクロムであり、Alはアルミニウムであり、Yはイットリウムである。従って、保護被覆、アルミニウム含有被覆は、部品の表面上にあって一つの層を形成し、アルミナは、保護被覆、アルミニウム含有被覆の表面上にあって一つの層を形成する。
【0038】
本発明を、部品表面全体を検査することに関して説明したが、部品の特定区域の表面全体を検査することに使用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルミニウム含有層が部品の表面上に配置されており、アルミナ層が前記アルミニウム含有層上に配置されている部品の表面上におけるアルミナ層の存在を確認するための方法であって、前記方法が、
a)部品の表面を適切な波長における放射線で直接照明して、前記部品の前記表面上にある任意のアルミナにおける電子を通常エネルギー状態から高エネルギー状態に励起する工程、
b)前記部品の前記表面上にある任意のアルミナにおける前記高エネルギー状態から前記通常エネルギー状態に戻る電子により特定の波長で放射される放射線を検出する工程、
c)前記部品の前記表面上にある任意のアルミナにおける前記高エネルギー状態から前記通常エネルギー状態に戻る電子により放射される前記放射線を分析して、前記部品の前記表面上にある少なくとも一点における前記アルミナの厚さを測定する工程、
d)前記部品の前記表面上にある前記少なくとも一点で測定した前記アルミナの厚さを、前記部品の前記表面上にある前記点で予め決められたアルミナの厚さと比較して、前記部品の前記表面上における前記少なくとも一点における前記アルミナの厚さが十分であるか否かを決定する工程
を含んでなる、方法。
【請求項2】
工程c)が、前記部品の前記表面上にある任意のアルミナにおける前記高エネルギー状態から前記通常エネルギー状態に戻る電子により放射される前記放射線を分析して、前記部品の前記表面上にある複数の点で前記アルミナの厚さを測定することを含んでなり、工程d)が、前記部品の前記表面上にある前記複数の点のそれぞれで測定された前記アルミナの厚さを、前記部品の前記表面上にある前記複数の点のそれぞれで予め決められたアルミナの厚さと比較し、前記部品の前記表面上における前記複数の点のそれぞれにおける前記アルミナの厚さが十分であるか否かを決定することを含んでなる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
工程c)が、前記部品の前記表面上にある任意のアルミナにおける前記高エネルギー状態から前記通常エネルギー状態に戻る電子により放射される前記放射線を分析して、前記部品の前記表面上にある各点で前記アルミナの厚さを測定することを含んでなり、工程d)が、前記部品の前記表面上にある各点で測定された前記アルミナの厚さを、前記部品の前記表面上にある前記点における予め決められたアルミナの厚さと比較して、前記部品の前記表面上にある各点における前記アルミナの厚さが十分であるか否かを決定することを含んでなる、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記適切な波長が、紫外放射線、放射線スペクトルの青色領域における放射線または放射線スペクトルの緑色領域における放射線である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記適切な波長が488nm、505nm、514nmまたは530nmである、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記特定の波長が692nm〜696nmである、請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
工程a)が、前記部品の前記表面を、少なくとも一個の発光ダイオードからの放射線または少なくとも一個のレーザーからの放射線で照明することを含んでなる、請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
工程b)が、カメラで放射線を検出することを含んでなる、請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
工程a)が、前記部品の前記表面を、カメラの周りに一列に配置した複数の発光ダイオードからの放射線で照明することを含んでなる、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
前記方法が、前記部品を、放射線を通さないケースの中に配置し、前記部品の外側表面を照明することを含んでなる、請求項1〜9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記方法が、ボロスコープを前記部品の中に挿入し、前記部品の内側表面を照明することを含んでなる、請求項1〜9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記部品が、ガスタービンエンジンの部品である、請求項1〜11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記部品が、タービンブレードまたはタービン翼である、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記アルミニウム含有層が、アルミナイド層、白金アルミナイド層、ケイ素アルミナイド層、クロムアルミナイド層またはMCrAlY層であり、式中、Mがニッケル、コバルトまたはニッケルとコバルトの組合せであり、Crがクロムであり、Alがアルミニウムであり、Yがイットリウムである、請求項1〜13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
アルミニウム含有層が部品の表面上に配置されており、アルミナ層が前記アルミニウム含有層上に配置されている部品の表面上における前記アルミナ層の存在を確認するための装置であって、前記装置が、部品の表面を適切な波長における放射線で直接照明して、前記部品の前記表面上にある任意のアルミナにおける電子を通常エネルギー状態から高エネルギー状態に励起する手段と、前記部品の前記表面上にある任意のアルミナにおける前記高エネルギー状態から前記通常エネルギー状態に戻る電子により特定の波長で放射される放射線を検出する手段と、前記部品の前記表面上にある任意のアルミナにおける前記高エネルギー状態から前記通常エネルギー状態に戻る電子により放射される前記放射線を分析して、前記部品の前記表面上にある少なくとも一点における前記アルミナの厚さを測定する手段と、前記部品の前記表面上にある前記少なくとも一点で測定した前記アルミナの厚さを、前記部品の前記表面上にある前記点で予め決められたアルミナの厚さと比較して、前記部品の前記表面上における前記少なくとも一点におけるアルミナの厚さが十分であるか否かを決定する手段とを備えた装置。
【請求項16】
前記部品の前記表面を照明する前記手段が、前記部品の前記表面を、紫外放射線、放射線スペクトルの青色領域における放射線および/または緑色領域における放射線で照明するように配置される、請求項15に記載の装置。
【請求項17】
前記部品の前記表面を照明する前記手段が、前記部品の前記表面を、488nm、505nm、514nmまたは530nmの波長における放射線で照明するように配置される、請求項15または16に記載の装置。
【請求項18】
前記放射線を検出する前記手段が、692nm〜696nmの波長で放射線を検出するように配置される、請求項15〜17のいずれか一項に記載の装置。
【請求項19】
前記部品の前記表面を放射線で照明する前記手段が、少なくとも一個の発光ダイオードまたは少なくとも一個のレーザーを備えた、請求項15〜18のいずれか一項に記載の装置。
【請求項20】
放射線を検出する前記手段が、カメラを備えた、請求項15〜19のいずれか一項に記載の装置。
【請求項21】
前記部品の前記表面を照明する前記手段が、カメラの周りに一列に配置した複数の発光ダイオードを備えた、請求項19に記載の装置。
【請求項22】
前記カメラが、赤色帯域フィルタを有する、請求項20に記載の装置。
【請求項23】
前記少なくとも一個の発光ダイオードが、緑色ショートパスフィルタ、青色フィルタ、紫外フィルタ、または赤色光を遮断するショートパスフィルタを有する、請求項19に記載の装置。
【請求項24】
前記装置が、放射線を通さないケースを備え、前記部品の前記表面を照明する前記手段が、前記部品の外側表面を照明するように配置され、前記部品の前記表面を照明する手段および前記放射線を検出する手段が、光を通さないケースの中に配置される、請求項15〜23のいずれか一項に記載の装置。
【請求項25】
前記装置が、前記部品の内側表面を照明するボロスコープを備えた、請求項15〜23のいずれか一項に記載の装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2011−158474(P2011−158474A)
【公開日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−15030(P2011−15030)
【出願日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【出願人】(590005438)ロールス‐ロイス、パブリック、リミテッド、カンパニー (21)
【氏名又は名称原語表記】ROLLS−ROYCE PUBLIC LIMITED COMPANY
【Fターム(参考)】