説明

配線用基板及び配線基板

【課題】製造工程を大幅に削減することができ、導電層の製膜時間を短縮することができるほか、容易に大面積化をはかることが可能で、かつ、様々な基板に関して導電層を具備することができる配線用基板及び配線基板の提供。
【解決手段】湿式無電解メッキ法を用いて基板上に導電層を形成し、部分的に導電層を除去する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は配線用基板及び配線基板に関する。本発明の配線用基板は湿式メッキ法を用いて、ガラス等の基板に直接に導電層を形成するため、製造工程を大幅に削減することができ、導電層の製膜時間を短縮することができるほか、容易に大面積化を図ることが可能で、かつ、様々な基板に関して導電層を具備することができる。また、種々の金属種を選択できるため、抵抗値、溶融温度等の金属種由来の様々な性能を付与することができる。さらに配線用基板が透明であるガラス、プラスチックを用いた場合、該配線用基板の導電層を部分的に除去することにより透明な配線基板を得ることができる。
【背景技術】
【0002】
近年、透明導電膜の需要がディスプレイ等を中心に伸びており、高透明で、かつ、低抵抗の透明導電膜を安価に製膜することが急務となっている。透明導電膜の導電材料としての観点からは、金属は電気をよく通すが光(可視光)を反射し、また黒鉛も電気を通すが可視光を吸収して透明性を示さないので、導電性は満たすことができるが、透明性を確保することは困難である。通常、透明で電気をよく通す膜を作製するためにはワイドギャップ半導体を利用する。ワイドギャップ半導体では、エネルギーギャップが紫外域に対応するため可視光を吸収することなく、透明で、かつ、導電性を発揮することが可能となる。ワイドギャップ半導体の導電機構はキャリア電子の移動によるものであり、キャリア電子の密度が金属よりかなり低いため可視光を反射しない。このためワイドギャップ半導体からなる膜は可視光をよく透過するが、キャリア電子の密度の高い膜は、キャリア電子が赤外光を反射するため赤外領域の透過率は減少する傾向がある。
【0003】
この様に得られた透明導電膜は、透明かつ電気をよく通すという特異な性質を利用して、透明ヒーター、ノートパソコンや携帯電話の表示素子用電極、太陽電池用電極、プラズマディスプレイパネル用電極などに用いられ、今後さらなる需要増加が期待されている。透明導電膜用材料としてよく用いられている物質は酸化インジウム・スズ(ITO)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化スズ(SnO)等であり、現時点ではITO膜が低抵抗の材料である。
【0004】
一般的にITO透明導電膜は、スパッタリング法、真空蒸着法、ゾル・ゲル法、クラスタービーム蒸着法、PLD法等様々な方法でプラスチックやガラス上に製膜され、市場に投入されている。
【0005】
しかしながら、このような透明導電膜は、その製膜のために真空環境を用いるものが多く、真空環境の作成とその維持に様々な煩雑な作業が必要となる。また、大きな透明導電膜を作成するために大きな真空環境が必要となるが、その大きな真空環境を安定して高真空条件を維持するのは大変困難である。
【0006】
例えば、特開2001−11642号公報(特許文献1)には、酸化亜鉛を湿式メッキ法により製膜して得られる、高い可視光透過率と低い比抵抗値を有する透明導電性酸化亜鉛皮膜が開示されている。
【0007】
この透明導電性酸化亜鉛皮膜は、湿式メッキ法により製膜されるため、従来の真空環境を必要とせず容易に大面積で製膜できる点が優れている。
【0008】
また、特開2006−310401号公報(特許文献2)にはポリイミド樹脂フィルムからなるプリント配線基板の片面又は両面に乾式製膜法で形成された金属層と、その金属層上に電気メッキ又は無電解メッキで形成された導電性を有する第2の金属層とを有する金属皮膜ポリイミド樹脂フィルムからなるプリント配線に、エッチングパターンを形成するというプリント配線基板の製造方法が開示されている。
【0009】
このプリント配線基板は、ポリイミド樹脂フィルム上にメタライズ法によって銅を被覆し、その上にメッキ法を用いて合計約8ミクロン程度の銅の金属層を形成し、その金属層からアルカリ性のエッチング溶液を用いてピッチ間が50μmの櫛型パターンを形成している。この方法では、ポリイミド樹脂フィルムに、乾式製膜法で形成された金属層と、その金属層上に電気メッキ又は無電解メッキで形成された導電性を有する第2の金属層とを設けることにより、プラスチックフィルム上に導電性を確保し、エッチングの際、アルカリ金属水酸化物を用いることで、従来のパターン処理で問題になっていた金属成分の残留問題や近年の微細加工パターンにおける信頼性の消失を解決できる点で優れている。
【0010】
【特許文献1】特開2001−11642号公報
【特許文献2】特開2006−310401号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
特開2001−11642号公報に開示されている金属酸化物の湿式メッキでは、得られる皮膜は透明であるが湿式メッキに数時間という長時間を要し、製膜作業効率が悪いという問題が残されている。また、特開2006−310401号公報に開示されているポリイミド樹脂フィルムに金属層を乾式方法及び湿式方法の両方を駆使して導電層を担う金属層を製膜する方法では、乾式方法及び湿式方法の両方を使用しているが、乾式方法では真空環境を作成し、蒸着法やスパッタ法で金属層を製膜するため、真空環境の作成及びその維持に煩雑な作業や手間がかかるほか、大面積化の問題が残されている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、上記課題を達成するために鋭意検討した結果、本発明の目的を達成する配線用基板及び配線基板を発明するに至った。
【0013】
すなわち、本発明は下記の通りである。
(1) 基材及び湿式メッキ法を用いて形成された、導電層を該基材上に含むことを特徴とする配線用基板。
(2) 前記基材がガラス、プラスチック、及びシリコンウェハからなる群から選ばれる基材であり、該基材上にほぼ全面に導電層が形成されている(1)記載の配線用基板。
(3) 前記湿式メッキ法が無電解メッキ法である(1)又は(2)の配線用基板。
(4) 前記導電層に用いられる金属種が、金、銀、銅、亜鉛、ニッケル、錫、及びクロムからなる群から選ばれる少なくとも1種である(1)〜(3)のいずれか一項記載の配線用基板。
(5) 前記基材が透明である(1)〜(4)のいずれか一項記載の配線用基板。
(6) (1)〜(5)のいずれか一項記載の配線用基板から導電層を部分的に除去することにより作成された配線を有する配線基板。
(7) (6)記載の配線基板を有することを特徴とする集電電極。
(8) 太陽電池の集電電極である(7)記載の集電電極。
【0014】
本発明の配線用基板は、湿式メッキ法を用いて、ガラス等の基板に直接に導電層を形成するため、製造工程を大幅に削減することができ、導電層の製膜時間を短縮することができるほか、容易に大面積化を図ることが可能で、かつ、様々な基板に関して導電層を具備することができる。また、種々の金属種を選択できるため、抵抗値、溶融温度等の金属種由来の様々な性能を付与することができる。さらに配線用基板が透明であるガラス、プラスチックを用いた場合、該配線用基板の導電層を部分的に除去することで透明な配線基板を得ることができる。本発明はこのようなメリットを有する配線用基板及び配線基板を提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下本発明を詳細に説明する。
<配線用基板、配線基板>
本発明でいう配線用基板とは配線を描画するために導電層を基材の表面に具備したものを示し、表面とは基材の片面又は両面でもよい。また、配線を自由に描画するために導電層は表面ほぼ全面に具備していることが好ましい。本発明の配線基板とは本発明の配線用基板から部分的に導電層を除去して配線を描画したものを示す。
<除去>
本発明の配線用基板から導電層を部分的に除去することとは、配線を描画するために、ほぼ全面に具備された導電層を公知の方法によって部分的に除去することを言う。公知の方法とは、酸やアルカリ物質による化学的エッチングやレーザーやメカニカル手法による物理的エッチング等が挙げられるが、いかなる方法であっても湿式メッキ法で作成された導電層を除去することができれば支障はない。
<基材>
本発明で用いられる基材としては、ガラス、プラスチック、シリコンウェハ等が挙げられる。ガラスは、主成分となる二酸化珪素と副成分となる種々の金属化合物を粉末として混合し、高温で溶融して液体状態としたものを急冷することにより製造されるものであり、白板ガラス、青板ガラス、耐熱ガラス等々が挙げられる。また、プラスチックとして、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、ユリア樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、ポリウレタン樹脂、熱硬化性ポリイミド樹脂等の熱硬化性樹脂や、高密度、中密度、低密度等の各種ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂、アクリロニトリルブタジエンスチレン樹脂、アクリル系樹脂、ナイロン等のポリアミド樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、環状ポリオレフィン (COP) 等の熱可塑性樹脂が挙げられる。さらに高純度な珪素の薄円盤であるシリコンウェハ等が挙げられる。
<透明基材>
特に上記基材の中で、厚さに関わらず透明である基材、又は厚さ10mm程度で透過率50%以上の透明性を有する基材からは、湿式メッキ法を用いて、上記記載の基材上にほぼ全面に導電層を形成して配線用基板を作成し、該配線用基板の導電層を部分的に除去することにより、透明性を有し、かつ、導電性を有する配線基板が得られる。この様に得られた配線基板は透明導電膜付基板としても使用できる。通常、透明導電膜の導電材料として金属は電気をよく通すが光(可視光)を反射し、黒鉛も電気を通すが可視光を吸収して透明性を示さないので、導電性は満たすことができるが、透明性を確保することは困難である。通常、透明で電気をよく通す膜を作製するためにはワイドギャップ半導体を利用する。ワイドギャップ半導体では、エネルギーギャップが紫外域に対応するため可視光を吸収することなく、透明で、かつ、導電性を発揮することが可能となる。ワイドギャップ半導体の導電機構はキャリア電子の移動によるものであり、キャリア電子の密度が金属よりかなり低いため可視光を反射しない。このためワイドギャップ半導体からなる膜は可視光をよく透過するが、キャリア電子の密度の高い膜は、キャリア電子が赤外光を反射するため赤外領域の透過率は減少する傾向がある。
【0016】
本発明の透明導電膜付基板は、光を透過する部分と導電性を示す配線部分とが別々に存在するため、透過する光の波長分布を変えることがない。そのため、ワイドギャップ半導体を用いた透明導電膜では困難であった近赤外領域での高い透過率を示すことができる。
<湿式メッキ>
本発明においては、容易に大面積化ができることや均一に金属の薄膜を被覆するという観点から、湿式メッキ法が好ましい。湿式メッキ法には大きく分けて、電解メッキ法と無電解メッキ法がある。本発明ではどちらの方法を用いてもよいが、無電解メッキ法が電気を通さないガラス、プラスチック等に金属の薄膜を被覆した表面処理を施すことができるため好ましい。本発明でいう湿式メッキとは液中で基材表面を金属の薄膜で被覆する表面処理のことを言い、湿式メッキ法とはそのための方法を言う。本発明では公知の湿式メッキを用いて基材表面を金属の薄膜で被覆する表面処理を施し、導電層を設ける。無電解メッキ法は通常、パラジウム等の核を定着させて、その核から各種金属を生長させる方法であり、 無電解ニッケルメッキ、無電解ニッケル-タングステン合金めっき 無電解銅めっき、無電解スズめっき、無電解金めっき等が挙げられる。本発明で使用される無電解メッキの核としては通常、パラジウムが使用されるが、公知の方法であれば支障がなく、他の金属を使用してもよい。
【0017】
本発明の湿式メッキ法に用いられる金属種が金、銀、銅、亜鉛、ニッケル、錫、及びクロムからなる群から選ばれる少なくとも1種の金属を含むことが好ましく、これらの金属種の複合又はタングステン等の他金属との複合でもよい。例えば、低抵抗を必要とする配線基板の場合、金、銀、銅等の抵抗が低い金属を使用したり、硬さを必要とする配線基板の場合、クロム等の金属を使用したり、所望の物性を金属種によって種々変化させることができる。本発明の湿式メッキのメッキ厚さは導電機能が発現できればいかなる厚みであっても支障はないが、配線用基板の導電層を部分的に除去する観点から、あまり厚いメッキ層では導電層が厚くなり、除去時の作業性が悪くなる。湿式メッキによる導電層の厚みは好ましくは500nm〜1mm、より好ましくは550nm〜0.8mmである。
<用途>
本発明の配線用基板及び配線基板は通常用いられる配線基板や集電電極として用いることができるほか、基板が透明である場合、LCDなどのフラットパネルディスプレイ、太陽電池、タッチパネルなどの透明電極(集電電極)や、帯電防止膜、電磁波シールド材などに用いることができる。
【実施例】
【0018】
以下に、実施例に基づき、本発明を詳細に説明する。なお、本発明で用いる評価方法も各実施例中に示す通りである。
<無電解銀メッキ作成>
実施例1
帝人デュポン社製ポリエチレンテレフタレートO3グレード(厚さ125μm)を基材として用いて、以下の手法を用いて該基材に湿式無電解銀メッキを行った。
【0019】
奥野製薬工業株式会社社製エースクリーンA−220(建浴濃度50g/L、温度50℃、浸漬時間5分)にて基材の脱脂を行い、水洗後水酸化ナトリウム(濃度200g/L、温度70〜75℃)及び奥野製薬工業株式会社社製PBTエンチャントTR(濃度200ml/L、浸漬時間20分)にてエッチングを行った。その後、温度60℃、浸漬時間3分で基材を湯洗後、濃塩酸(濃度100ml/L、室温)及び奥野製薬工業株式会社社製TMP中和用添加剤(濃度20ml/L、浸漬時間2分)にて中和し、奥野製薬工業株式会社社製キャタリストC(濃度40ml/L、室温)及び濃塩酸(濃度150ml/L、浸漬時間5分)で核付けしたのち、奥野製薬工業株式会社社製ムデンシルバーMGS(MGS−1:100ml/L、MGS−2:400ml/L、MGS−3:10ml/L 室温で10分)で無電解銀メッキをポリエチレンテレフタレート基材上に施し、配線用基板を得た。無電解銀メッキの厚さは600nmであった。
実施例2〜3
実施例2は基材としてスライドガラスを用い、実施例3は基材としてシリコンウェハ(250μm)を用いて、実施例1と同等の方法によって無電解銀メッキを各基材上に施し、配線用基板を得た。導電性評価として四端子四探針方式ロレスタ-GP(ダイヤインストロメンツ社製)を用いてJIS K 7194に準拠して測定した。
【0020】
実施例1〜3の導電性評価結果はシート抵抗でいずれも0.1〜0.2Ω/□であり、良好な低抵抗を示した。
<エッチング>
実施例1〜3で作成した配線用基板の無電解銀メッキ面に、1mm角の窓を切り取ったメッシュ状テフロン(登録商標)テープを貼付してマスキングをしたのち、30%塩酸中に浸漬してマスキングを施していない部分の無電解銀メッキを除去し、水洗後、マスキングテープを剥し、配線基板としての格子状の無電解銀メッキ基板を得た。
<導電性評価及び透明性評価>
導電性評価は四端子四探針方式JIS−K−7194に準拠して測定した。
【0021】
実施例1、実施例2、及び実施例3の導電性評価結果は、シート抵抗でそれぞれ0.5Ω/□、2Ω/□、1.3Ω/□であり、良好な低抵抗を示した。
【0022】
また、透明性評価は全光線透過率をASTM D−1003に準拠して測定した。
【0023】
実施例1、実施例2、及び実施例3の全光透過率は、それぞれ85%、88%、90%と、いずれも80%以上であり、良好な透明性を示した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材及び湿式メッキ法を用いて形成された導電層を該基材上に含むことを特徴とする配線用基板。
【請求項2】
前記基材がガラス、プラスチック、及びシリコンウェハからなる群から選ばれる基材であり、該基材上にほぼ全面に導電層が形成されている請求項1記載の配線用基板。
【請求項3】
前記湿式メッキ法が無電解メッキ法である請求項1又は2の配線用基板。
【請求項4】
前記導電層に用いられる金属種が、金、銀、銅、亜鉛、ニッケル、錫、及びクロムからなる群から選ばれる少なくとも1種である請求項1〜3のいずれか一項記載の配線用基板。
【請求項5】
前記基材が透明である請求項1〜4のいずれか一項記載の配線用基板。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか一項記載の配線用基板から導電層を部分的に除去することにより作成された配線を有する配線基板。
【請求項7】
請求項6記載の配線基板を有することを特徴とする集電電極。
【請求項8】
太陽電池の集電電極である請求項7記載の集電電極。

【公開番号】特開2009−277793(P2009−277793A)
【公開日】平成21年11月26日(2009.11.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−126196(P2008−126196)
【出願日】平成20年5月13日(2008.5.13)
【出願人】(309002329)旭化成イーマテリアルズ株式会社 (771)
【Fターム(参考)】