説明

酸化物半導体膜、及び半導体装置

【課題】電気伝導度の安定した酸化物半導体膜を提供する。また、当該酸化物半導体膜を用いることにより、半導体装置に安定した電気的特性を付与し、信頼性の高い半導体装置を提供する。
【解決手段】インジウム(In)、ガリウム(Ga)、及び亜鉛(Zn)を含む酸化物半導体膜において、酸化物半導体膜は、酸化物半導体膜の被形成面の法線ベクトルに平行な方向に揃うc軸配向した結晶領域を有し、c軸配向した結晶領域の組成が、In1+δGa1−δ(ZnO)(ただし、0<δ<1、m=1〜3)で表され、c軸配向した結晶領域を含む全体の酸化物半導体膜の組成が、InGa(ZnO)(ただし、0<x<2、0<y<2、m=1〜3)である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
酸化物半導体膜と、該酸化物半導体膜を用いる半導体装置に関する。
【0002】
なお、本明細書中において半導体装置とは、半導体特性を利用することで機能しうる装置全般を指し、電気光学装置、半導体回路及び電子機器は全て半導体装置である。
【背景技術】
【0003】
液晶表示装置に代表されるように、ガラス基板等に形成されるトランジスタはアモルファスシリコン、多結晶シリコンなどによって構成されている。アモルファスシリコンを用いたトランジスタは、ガラス基板の大面積化に容易に対応することができる。しかし、アモルファスシリコンを用いたトランジスタは、電界効果移動度が低いという欠点を有している。また、多結晶シリコンを用いたトランジスタは電界効果移動度が高いが、ガラス基板の大面積化には適していないという欠点を有している。
【0004】
このような欠点を有するシリコンを用いたトランジスタに対して、酸化物半導体を用いてトランジスタを作製し、電子デバイスや光デバイスに応用する技術が注目されている。例えば酸化物半導体として、In、Zn、Ga、Snなどを含む非晶質酸化物を用いてトランジスタを作製する技術が特許文献1で開示されている。また、同様のトランジスタを作製して表示装置の画素のスイッチング素子などに用いる技術が特許文献2で開示されている。
【0005】
また、このようなトランジスタに用いる酸化物半導体について、「酸化物半導体は不純物に対して鈍感であり、膜中にはかなりの金属不純物が含まれていても問題がなく、ナトリウムのようなアルカリ金属が多量に含まれる廉価なソーダ石灰ガラスも使える」といったことも述べられている(非特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−165529号公報
【特許文献2】特開2006−165528号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】神谷、野村、細野、「アモルファス酸化物半導体の物性とデバイス開発の現状」、固体物理、2009年9月号、Vol.44、p.621−633
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、酸化物半導体膜がアモルファスのままであると、酸化物半導体膜に酸素欠損やダングリングボンドが生じやすく、これら単独あるいは水素等と結合することにより膜中にキャリアを発生させてしまう。そのため、酸化物半導体膜の電気伝導度等の電気的特性が変化する恐れがある。また、酸化物半導体膜を用いたトランジスタにとって電気的特性の変動の要因となり、半導体装置の信頼性を低下させることになる。
【0009】
このような問題に鑑み、電気的特性の安定した酸化物半導体膜を提供することを課題の一とする。また、当該酸化物半導体膜を用いることにより、半導体装置に安定した電気的特性を付与し、信頼性の高い半導体装置を提供することを課題の一とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
開示する発明の一態様は、インジウム、ガリウム、及び亜鉛を含む酸化物半導体膜において、c軸に配向した結晶領域を有した酸化物半導体膜である。また、全体が非晶質構造の酸化物半導体膜と比較してc軸に配向した結晶領域を有するので、酸素欠損やダングリングボンド、あるいはダングリングボンドなどに結合する水素、ボロン、窒素、リンなどの不純物が低減され、高純度化された酸化物半導体膜である。また、c軸配向した結晶領域の組成と、c軸配向した結晶領域を含む半導体膜全体の組成を決めることで、安定な結晶構造を有する酸化物半導体膜とすることができる。より詳細には以下の通りである。
【0011】
開示する発明の一態様は、インジウム(In)、ガリウム(Ga)、及び亜鉛(Zn)を含む酸化物半導体膜において、酸化物半導体膜は、酸化物半導体膜の被形成面の法線ベクトルに平行な方向に揃うc軸配向した結晶領域を有し、c軸配向した結晶領域の組成が、In1+δGa1−δ(ZnO)(ただし、0<δ<1、m=1〜3)で表され、c軸配向した結晶領域を含む全体の酸化物半導体膜の組成が、InGa(ZnO)(ただし、0<x<2、0<y<2、m=1〜3)で表される酸化物半導体膜である。
【0012】
開示する発明の他の一態様は、ゲート電極と、ゲート電極と接する第1の絶縁膜と、第1の絶縁膜に接する酸化物半導体膜と、酸化物半導体膜に接する第2の絶縁膜と、を有し、酸化物半導体膜は、インジウム(In)、ガリウム(Ga)、及び亜鉛(Zn)を含み、且つ酸化物半導体膜の被形成面の法線ベクトルに平行な方向に揃うc軸配向した結晶領域を有し、c軸配向した結晶領域の組成が、In1+δGa1−δ(ZnO)(ただし、0<δ<1、m=1〜3)で表され、c軸配向した結晶領域を含む全体の酸化物半導体膜の組成が、InGa(ZnO)(ただし、0<x<2、0<y<2、m=1〜3)で表される半導体装置である。
【0013】
上記各構成において、酸化物半導体膜は、ボロン(B)濃度、リン濃度(P)、及び窒素(N)濃度の合計が、5×1019atoms/cm以下、ボロン(B)濃度、リン濃度(P)、及び窒素(N)濃度のいずれか一の元素が、1×1019atoms/cm以下、リチウム(Li)濃度、及びカリウム(K)濃度が5×1015atoms/cm以下、ナトリウム(Na)濃度が5×1016atoms/cm以下であることが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明の一態様で開示するインジウム、ガリウム、及び亜鉛を含む酸化物半導体膜は、安定した電気的特性を有することができる。このようなインジウム、ガリウム、及び亜鉛を含む酸化物半導体膜をトランジスタに用いることによって、安定した電気的特性を有する、信頼性の高い半導体装置とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の一態様に係る断面TEM像。
【図2】本発明の一態様に係る結晶構造を説明する図。
【図3】本発明の一態様に係る模式図、及び本発明の一態様に係る断面TEM像。
【図4】本発明の一態様に係る半導体装置の作製工程を説明する断面図。
【図5】製造装置を説明する模式図である。
【図6】本発明の一態様に係る半導体装置の断面図。
【図7】本発明の一態様を示すブロック図及び等価回路図。
【図8】本発明の一態様を示す電子機器の外観図。
【図9】実施例におけるスピン密度の結果を示す図。
【図10】実施例におけるスピン密度の結果を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の実施の形態について、図面を用いて詳細に説明する。但し、本発明は以下の説明に限定されず、本発明の趣旨及びその範囲から逸脱することなくその形態及び詳細を様々に変更し得ることは当業者であれば容易に理解される。従って、本発明は以下に示す実施の形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。なお、以下に説明する本発明の構成において、同一部分または同様な機能を有する部分には同一の符号を異なる図面間で共通して用い、その繰り返しの説明は省略する。
【0017】
なお、本明細書で説明する各図において、各構成の大きさ、層の厚さ、または領域は、明瞭化のために誇張されている場合がある。よって、必ずしもそのスケールに限定されない。
【0018】
また、本明細書にて用いる第1、第2、第3などの用語は、構成要素の混同を避けるために付したものであり、数的に限定するものではない。そのため、例えば、「第1の」を「第2の」または「第3の」などと適宜置き換えて説明することができる。
【0019】
(実施の形態1)
本実施の形態では、インジウム(In)、ガリウム(Ga)、及び亜鉛(Zn)を含む酸化物半導体膜の構成について、図1乃至図3を用いて説明する。
【0020】
本実施の形態に係るインジウム(In)、ガリウム(Ga)、及び亜鉛(Zn)を含む酸化物半導体膜は、酸化物半導体膜の被形成面の法線ベクトルに平行な方向に揃うc軸配向した結晶領域を有し、c軸配向した結晶領域の組成が、In1+δGa1−δ(ZnO)(ただし、0<δ<1、m=1〜3)で表され、c軸配向した結晶領域を含む全体の酸化物半導体膜の組成が、InGa(ZnO)(ただし、0<x<2、0<y<2、m=1〜3)で表される酸化物半導体膜である。
【0021】
ここで、実際に作製した上記構造を有する酸化物半導体膜の断面を透過型電子顕微鏡(TEM:Transmission Electron Microscope)で観察した結果(断面TEM像)を図1(A)、及び図1(B)に示す。
【0022】
図1(A)に示す断面TEM像のサンプルは、基板100上に、インジウム(In)、ガリウム(Ga)、及び亜鉛(Zn)を含む金属酸化物ターゲット(In:Ga:Zn=1:1:1[原子%比])を用いて、スパッタリング法により室温にて膜厚50nmで酸化物半導体膜101を成膜し、その後酸素雰囲気下において、700℃ 1時間の熱処理を行ったものである。図1(A)に示す断面TEM像より、酸化物半導体膜101の上部に結晶領域102があることがわかる。なお、図1(B)に示す断面TEM像は、図1(A)に示す結晶領域102を拡大した図である。
【0023】
図1(A)、及び図1(B)に示す断面TEM像より、酸化物半導体膜101内に層状に原子が配向した結晶領域102が、インジウム(In)、ガリウム(Ga)、及び亜鉛(Zn)を含む酸化物半導体膜中に複数観察される。
【0024】
次に、図1(B)に示す断面TEM像を用いて、層状に原子が配向した結晶面の間隔を算出したところ、被形成面の法線ベクトルに平行な方向の面間隔は0.288nmであることがわかった。なお、結晶面の間隔の算出方法としては、FFTM(Fast Fourier Transform Mapping)法を用いた。
【0025】
ここで、インジウム(In)、ガリウム(Ga)、及び亜鉛(Zn)を含む酸化物半導体膜の一例であるIn−Ga−Zn−O膜の結晶構造は、InO層とGaO層またはZnO層がc軸方向に層状に積層した構造を構成している。その一つにInGaO(ZnO)の組成にて格子定数c=2.607nmの構造がある。図2にIn−Ga−Zn−O膜の結晶構造の模式図を示す。図2は、白丸がIn、灰色丸がGaまたはZn、黒丸が酸素(O)を示す。図2に示すように、InO層(図中InO Layer)、及びGaZnO層(図中GaZnO Layer)が六角形の格子を有する結合の層がc軸方向に積層されている。なお、c軸方向はa−b面に垂直である。
【0026】
次に、図2に示した結晶構造を元にシミュレーションを行った。シミュレーションにより得られた模式図を図3(A)に示す。また、図3(B)に図1(B)に示す結晶領域102のさらに拡大した結晶領域102の断面TEM像を示す。
【0027】
図3(A)においては、像強度は原子番号の二乗に比例しており、白丸がIn、灰色丸がGaまたはZnを表す。また、図3(B)においては、黒い層状に見える領域がInO層を示しており、黒い層状の間に位置する領域がGaO層またはZnO層を示している。
【0028】
このように、図3(A)に示す模式図と、図3(B)に示す結晶領域102の断面TEM像の原子配列の構造が概略一致していることが分かる。すなわち、図1(A)、図1(B)、及び図3(B)に示した結晶領域102は図2の結晶構造を有している。
【0029】
また、c軸方向での単位格子の1つ、すなわち(001)面間隔は、c軸の格子定数c=2.607nmに相当する。ここから、(009)面間隔はd=0.2897nmに相当する。つまり、図1(B)に示した結晶領域102の層状に原子が配向した結晶面の被形成面の法線ベクトルに平行な方向の面間隔は0.288nmであり、概ね(009)面間隔のd=0.2897nmと一致することからもInGaZnOの結晶構造を有することが分かる。すなわち、結晶領域102の組成はIn:Ga:Zn=1:1:1[原子%比]である。
【0030】
このように、結晶領域102は、図1(A)、図1(B)、及び図3(B)に示す断面TEM像より、c軸配向し、かつa−b面に垂直な方向から見て三角形状または六角形状の原子配列を有し、c軸においては、金属原子が層状または金属原子と酸素原子とが層状に配列しており、a−b面においては、a軸またはb軸の向きが異なる(c軸を中心に回転した)結晶領域102を含む酸化物半導体膜であり、本明細書等においては、該酸化物半導体膜は、CAAC−OS(C Axis Aligned Crystalline Oxide Semiconductor)膜とする。
【0031】
CAAC−OS膜とは、広義に、非単結晶であって、そのa−b面に垂直な方向から見て、三角形、または、六角形、または正三角形、正六角形の原子配列を有し、且つ、c軸方向に垂直な方向から見て、金属原子が層状、または、金属原子と酸素原子が層状に配列した相を含む材料をいう。
【0032】
なお、CAAC−OS膜は単結晶ではないが、また、非晶質のみから形成されているものでもない。また、CAAC−OS膜は結晶化した部分(結晶部分)、または結晶化した領域(結晶領域)を含むが、1つの結晶部分と他の結晶部分の境界、または1つの結晶領域と他の結晶領域の境界を明確に判別できないこともある。
【0033】
また、CAAC−OS膜を構成する酸素の一部は窒素で置換されてもよい。また、CAAC−OS膜を構成する個々の結晶部分のc軸は一定の方向(例えば、CAAC−OS膜の被形成面の法線ベクトルまたは表面の法線ベクトルに平行な方向)に揃っていてもよい。あるいは、CAAC−OS膜を構成する個々の結晶部分のa−b面の法線ベクトルは一定の方向(例えば、CAAC−OS膜の被形成面の法線ベクトルまたは表面の法線ベクトルに垂直な方向)を向いていてもよい。
【0034】
このようなCAAC−OS膜の例として、c軸がCAAC−OS膜の被形成面の法線ベクトルまたは表面の法線ベクトルに平行な方向に揃い、かつab面に垂直な方向から観察すると三角形、または、六角形の原子配列が認められ、かつその膜断面を観察すると金属原子、または、金属原子と酸素原子(あるいは窒素原子)の層状配列が認められる材料を挙げることもできる。
【0035】
ここで、インジウム(In)、ガリウム(Ga)、及び亜鉛(Zn)を含む酸化物半導体膜の化学量論的組成比について考えてみる。In、Gaは3価、Znは2価である。例えば、InをGaに置換してもIn、Gaともに3価であるため価数は変わらない。また、結晶構造は変化せずにGaの量を減らし、Inを増やすことができる。
【0036】
すなわち、インジウム(In)、ガリウム(Ga)、及び亜鉛(Zn)を含む酸化物半導体膜の化学量論的組成比が、In1+δGa1−δ(ZnO)(ただし、0<δ<1、m=1〜3)で表され、InとGaの組成比が化学量論的組成比からずれた場合においても、安定な結晶構造を維持することができる。
【0037】
図3(B)に示す結晶構造も一部InとGaが置換されている様子がわかる。結晶領域102中の領域150において、連続しているIn(黒い層状に見える領域)の結晶構造の連続性が一部異なっている。また、領域150のコントラストはGaまたはZnのコントラストと酷似しており、Znによる置換では価数が変化し、その結晶構造を維持できないため、Gaにより置換されていると示唆される。
【0038】
次に、c軸配向した結晶領域102を含む酸化物半導体膜101の組成分析を行った結果を表1に示す。なお、組成分析は、誘導結合プラズマ質量分析法(ICP−MS:Inductively Coupled Plasma − Mass Spectrometry)を用いて行ったものである。また、酸化物半導体膜101の各元素は、原子%で表される。また、酸素(O)量については、酸化物半導体膜101を構成する酸化物が理想的な組成であるIn、Ga、ZnOと仮定して算出している。
【0039】
【表1】

【0040】
ここで、表1に示した酸化物半導体膜101をInで規格化すると表2に示す組成となる。
【0041】
【表2】

【0042】
表2より、c軸配向した結晶領域102を含む酸化物半導体膜101の組成比は、概ねIn:Ga:Zn=1:1:0.7[原子%比]である。従って、一般式InGaO(ZnO)(nは自然数)で表されるIn−Ga−Zn−O系酸化物半導体膜の構造と異なった構造をとることがある。すなわち、InGa(ZnO)(ただし、0<x<2、0<y<2、m=1〜3)で表される。
【0043】
このように、c軸配向した結晶領域102の組成比と、c軸配向した結晶領域102を含む酸化物半導体膜101の組成比が異なる。すなわちc軸配向した結晶領域102は、膜全体の組成と比較し異なる組成比をとることがある。これは、酸化物半導体膜101を形成するときの形成温度、または、酸化物半導体膜101を形成した後の熱処理等によって、酸化物半導体膜101中の組成が変化したものと考えられる。
【0044】
しかし、酸化物半導体膜101全体の組成が変化した場合においても、c軸配向した結晶領域102は、安定な結晶構造を維持しているため、酸化物半導体膜101としては、安定な結晶構造を有する酸化物半導体膜とすることができる。
【0045】
また、図1に示すc軸配向を示す結晶領域102を含む酸化物半導体膜101は、膜中の不純物濃度が低い。具体的には、酸化物半導体膜101において、N型の不純物となるリン(P)、ボロン(B)、窒素(N)の不純物を足し合わせた不純物濃度は、好ましくは、5×1019atoms/cm以下、更に好ましくは、5×1018atoms/cm以下とすることができる。
【0046】
さらに、酸化物半導体膜101において、N型の不純物となるリン(P)、ボロン(B)、窒素(N)のいずれか一つの不純物が、好ましくは、1.0×1019atoms/cm以下、更に好ましくは、1.0×1018atoms/cm以下の不純物濃度とすることができる。
【0047】
これは、c軸配向した結晶領域102が安定な結晶構造を有するので、酸化物半導体膜101内の酸素欠損やダングリングボンド、あるいはダングリングボンドなどに結合する水素、ボロン、窒素、リンなどの不純物が低減されているためである。
【0048】
ここで、実際に作製した図1に示した酸化物半導体膜101の不純物であるリン(P)濃度、ボロン(B)濃度、窒素(N)濃度の測定を行った。なお、不純物濃度の測定は二次イオン質量分析(SIMS:Secondary Ion Mass Spectrometry)によるものである。
【0049】
SIMS分析の結果、P濃度は、4.0×1016atoms/cm以下であり、B濃度は、4.0×1017atoms/cm以下であり、N濃度は、1.0×1017atoms/cm以下であり、全ての元素の合計で、4.5×1016atoms/cm以下であることがわかった。
【0050】
このように、N型となりえる不純物を酸化物半導体膜101より徹底的に排除することにより、酸化物半導体膜101を高純度化することができる。
【0051】
また、本実施の形態に係るインジウム(In)、ガリウム(Ga)、及び亜鉛(Zn)を含む酸化物半導体膜は、上述した不純物であるP濃度、B濃度、及びN濃度以外にも、酸化物半導体膜中のアルカリ金属等の不純物の濃度が低減されていることが好ましい。例えば、酸化物半導体膜において、リチウムの濃度が5×1015atoms/cm以下、好ましくは1×1015atoms/cm以下、ナトリウムの濃度が5×1016atoms/cm以下、好ましくは1×1016atoms/cm以下、カリウムの濃度が5×1015atoms/cm以下、好ましくは1×1015atoms/cm以下とする。
【0052】
アルカリ金属、及びアルカリ土類金属は酸化物半導体にとっては悪性の不純物であり、少ないほうがよい。特に、当該酸化物半導体膜をトランジスタに用いる場合、アルカリ金属のうちナトリウムは酸化物半導体膜に接する絶縁膜に拡散し、トランジスタの閾値電圧の変動などを引き起こす可能性がある。また酸化物半導体膜内において、金属と酸素の結合を分断し、あるいは結合中に割り込む。その結果、トランジスタ特性の劣化(例えば、ノーマリオン化(しきい値の負へのシフト)、移動度の低下等)をもたらす。加えて、特性のばらつきの原因ともなる。
【0053】
よって、c軸配向した結晶領域を含む酸化物半導体膜中の不純物を極めて低減し、アルカリ金属の濃度が5×1016atoms/cm以下、水素の濃度が5×1019atoms/cm以下とすることが好ましい。
【0054】
以上説明したインジウム(In)、ガリウム(Ga)、及び亜鉛(Zn)を含む酸化物半導体膜において、c軸配向した結晶領域を含むことにより、全体が非晶質構造の酸化物半導体膜と比較して良好な結晶性を有するので、酸素欠損やダングリングボンド、あるいはダングリングボンドなどに結合する水素、ボロン、窒素、リンなどの不純物が低減されている。
【0055】
これらの酸素欠損やダングリングボンド、あるいはダングリングボンドなどに結合する不純物は、酸化物半導体膜中でキャリアのトラップ、あるいはキャリアの供給源のように機能するため、当該酸化物半導体膜の電気伝導度が変動する原因となりうる。
【0056】
したがって、インジウム(In)、ガリウム(Ga)、及び亜鉛(Zn)を含む酸化物半導体膜において、c軸配向した結晶領域を含む酸化物半導体膜は、電気伝導度が安定しており、可視光や紫外光などの照射に対しても電気的に安定な構造を有することができる。
【0057】
また、インジウム(In)、ガリウム(Ga)、及び亜鉛(Zn)を含む酸化物半導体膜において、c軸配向した結晶領域の組成と、c軸配向した結晶領域を含む全体の酸化物半導体膜の組成が決定されている。また、c軸配向した結晶領域の組成は、その化学量論的組成比からのずれが生じても安定な構造とすることができる。このように各組成を決定することにより、安定した結晶構造を有する酸化物半導体膜とすることができる。
【0058】
以上、本実施の形態に示す構成などは、他の実施の形態に示す構成、方法などと適宜組み合わせて用いることができる。
【0059】
(実施の形態2)
本実施の形態では、実施の形態1に示す、インジウム、ガリウム、及び亜鉛を含む酸化物半導体膜において、c軸配向した結晶領域を含む酸化物半導体膜、及び当該酸化物半導体膜を有するトランジスタの作製方法について図4及び図5を用いて説明する。図4は、トップゲート構造のトランジスタ320の作製工程を示す断面図であり、図5は製造装置の構成の一形態である。また、本実施の形態においては、先の実施の形態1と異なり、c軸配向した結晶領域を含む酸化物半導体膜は、2回に分けて形成する方法について例示する。
【0060】
図4(E)は、トップゲート型のトランジスタ320の断面図であり、トランジスタ320は、絶縁表面を有する基板300上に、絶縁膜301、チャネル形成領域を含む酸化物半導体膜309、ソース電極304a、ドレイン電極304b、ゲート絶縁膜302、ゲート電極312、及び絶縁膜310aを含む。酸化物半導体膜309の端部を覆ってソース電極304a、及びドレイン電極304bが設けられ、ソース電極304a、及びドレイン電極304bを覆うゲート絶縁膜302は、酸化物半導体膜309の一部に接する。該酸化物半導体膜309の一部上にゲート絶縁膜302を介してゲート電極312が設けられる。
【0061】
また、ゲート絶縁膜302、及びゲート電極312上に絶縁膜310a、及び絶縁膜310bが設けられている。
【0062】
以下、図4(A)乃至図4(E)を用い、基板上にトランジスタ320を作製する工程を説明する。
【0063】
まず、基板300上に絶縁膜301を形成する(図4(A)参照)。
【0064】
基板300は、フュージョン法やフロート法で作製される無アルカリガラス基板、本作製工程の処理温度に耐えうる耐熱性を有するプラスチック基板等を用いることができる。また、ステンレスなどの金属基板の表面に絶縁膜を設けた基板や、半導体基板の表面に絶縁膜を設けた基板を適用しても良い。基板300がマザーガラスの場合、基板の大きさは、第1世代(320mm×400mm)、第2世代(400mm×500mm)、第3世代(550mm×650mm)、第4世代(680mm×880mm、または730mm×920mm)、第5世代(1000mm×1200mmまたは1100mm×1250mm)、第6世代(1500mm×1800mm)、第7世代(1900mm×2200mm)、第8世代(2160mm×2460mm)、第9世代(2400mm×2800mm、または2450mm×3050mm)、第10世代(2950mm×3400mm)等を用いることができる。マザーガラスは、処理温度が高く、処理時間が長いと大幅に収縮するため、マザーガラスを使用して大量生産を行う場合、作製工程の加熱処理は、600℃以下、好ましくは450℃以下とすることが望ましい。
【0065】
絶縁膜301は、PCVD法またはスパッタリング法を用いて50nm以上600nm以下の膜厚で、酸化シリコン膜、酸化ガリウム膜、酸化アルミニウム膜、窒化シリコン膜、酸化窒化シリコン膜、酸化窒化アルミニウム膜、または窒化酸化シリコン膜から選ばれた一層またはこれらの積層を用いる。下地絶縁膜として用いられる絶縁膜301は、膜中(バルク中)に少なくとも化学量論的組成比を超える量の酸素が存在することが好ましく、例えば酸化シリコン膜を用いる場合には、SiO2+α(ただし、α>0)とする。絶縁膜301の酸素含有量を多くすることで、後に形成する酸化物半導体膜に絶縁膜301より酸素を供給することができる。
【0066】
また、絶縁膜301は、表面の平坦性を良好にすることが好ましい。例えば、絶縁膜301の平均面粗さ(Ra)を0.1nm以上0.5nm未満とすることが好ましい。絶縁膜301の表面の平坦性が良好であると、後に形成する酸化物半導体膜の結晶性が向上する。
【0067】
また、アルカリ金属などの不純物を含むガラス基板を用いる場合、アルカリ金属の侵入防止のため、絶縁膜301と基板300との間に窒化物絶縁膜としてPCVD法またはスパッタリング法で得られる窒化シリコン膜、窒化アルミニウム膜などを形成してもよい。LiやNaなどのアルカリ金属は、不純物であるため含有量を少なくすることが好ましい。
【0068】
次いで、絶縁膜301上に膜厚1nm以上10nm以下の第1の酸化物半導体膜を形成する。
【0069】
本実施の形態では、金属酸化物ターゲット(In−Ga−Zn−O系金属酸化物ターゲット(In:Ga:Zn=1:1:1[原子%比])を用いて、基板とターゲットの間との距離を170mm、基板温度を400℃、圧力を0.4Pa、直流(DC)電源を500W、酸素のみ、アルゴンのみ、又はアルゴン及び酸素雰囲気下で膜厚5nmの第1の酸化物半導体膜を成膜する。
【0070】
第1の酸化物半導体膜は、スパッタリング法を用いて、アルゴンガス、酸素ガス、またはアルゴンガスと酸素ガスの混合ガスなどを用いて、成膜することができる。なお、成膜時に基板を加熱することで、非晶質領域に対して結晶領域の占める割合の多い第1の酸化物半導体膜とすることができる。例えば、基板温度が150℃以上450℃以下とすればよい。好ましくは、基板温度が200℃以上400℃以下とする。
【0071】
また、第1の酸化物半導体膜の形成雰囲気は、アルゴンガス、酸素ガス、またはアルゴンガスと酸素ガスの混合ガスを用いることができ、これらのガスは高純度ガスを用いるのが好適である。例えば、水素、水、水酸基、水素化物などの不純物が、濃度1ppm以下(望ましくは濃度10ppb以下)にまで除去された高純度ガスを用いると良い。
【0072】
また、成膜時のスパッタリング雰囲気中の酸素の流量を大きくすると好ましい。成膜時の酸素の流量を大きくすることで、第1の酸化物半導体膜中の酸素濃度を高くすることができる。例えば、総ガス流量に対する酸素の割合が、好ましくは10%以上、より好ましくは30%以上、特に好ましくは50%以上とする。
【0073】
基板温度を高めることによって、第1の酸化物半導体膜をより結晶化させることができる。
【0074】
次いで、基板を配置するチャンバー雰囲気を窒素、または乾燥空気とし、第1の加熱処理を行う。第1の加熱処理の温度は、400℃以上750℃以下とする。また、第1の加熱処理の加熱時間は1分以上24時間以下とする。第1の加熱処理によって第1の酸化物半導体膜308aを形成する(図4(A)参照)。
【0075】
次いで、第1の酸化物半導体膜308a上に10nmよりも厚い第2の酸化物半導体膜を形成する。
【0076】
本実施の形態では、金属酸化物ターゲット(In−Ga−Zn−O系金属酸化物ターゲット(In:Ga:Zn=1:1:1[原子%比])を用いて、基板とターゲットの間との距離を170mm、基板温度を400℃、圧力を0.4Pa、直流(DC)電源を500W、酸素のみ、アルゴンのみ、又はアルゴン及び酸素雰囲気下で膜厚25nmの第2の酸化物半導体膜を成膜する。
【0077】
次いで、基板を配置するチャンバー雰囲気を窒素、または乾燥空気とし、第2の加熱処理を行う。第2の加熱処理の温度は、400℃以上750℃以下とする。また、第2の加熱処理の加熱時間は1分以上24時間以下とする。第2の加熱処理によって第2の酸化物半導体膜308bを形成する(図4(B)参照)。
【0078】
以上により、第1の酸化物半導体膜308aと第2の酸化物半導体膜308bからなる酸化物半導体膜308が形成される。
【0079】
第1の加熱処理、及び第2の加熱処理を750℃よりも高い温度で加熱処理を行うと、ガラス基板の収縮により酸化物半導体膜にクラック(厚さ方向に伸びるクラック)が形成されやすい。従って、第1の酸化物半導体膜形成後の加熱処理、例えば第1の加熱処理、及び第2の加熱処理の温度や、スパッタリング成膜時の基板温度などを、好ましくは750℃以下、さらに好ましくは450℃以下のプロセスとすることで、大面積のガラス基板上に信頼性の高いトランジスタを作製することができる。
【0080】
また、絶縁膜301の形成から第2の加熱処理までの工程を大気に触れることなく連続的に行うことが好ましい。図5に絶縁膜301の形成から第2の加熱処理までの工程を大気に触れることなく連続的に行うことができる製造装置の上面図を例示する。
【0081】
図5に示す製造装置は、枚葉式マルチチャンバー装置であり、スパッタリング室10a、スパッタリング室10b、スパッタリング室10cや、被処理基板を収容するカセットポート14を3つ有する基板供給室11や、ロードロック室12a、アンロードロック室12bや、搬送室13や、基板加熱室15などを有している。なお、基板供給室11及び搬送室13には、被処理基板を搬送するための搬送ロボットがそれぞれ配置されている。また、各チャンバー(スパッタリング室10a、ロードロック室12aなど)を仕切るためのゲートバルブ16が設けられている。スパッタリング室10a、スパッタリング室10b、スパッタリング室10c、搬送室13、及び基板加熱室15は、水素及び水分をほとんど含まない雰囲気(不活性雰囲気、減圧雰囲気、乾燥空気雰囲気など)下に制御することが好ましく、例えば、水分については露点−40℃以下、好ましくは露点−50℃以下の乾燥窒素雰囲気とする。
【0082】
また、スパッタリング室10a、スパッタリング室10b、及びスパッタリング室10cは、ターゲット交換、防着板などの交換時に、チャンバーを大気開放することがある。スパッタリング室を大気開放したあとは、チャンバー内の水素及び水分は、ほとんど含まない雰囲気とすることが好ましい。例えば、チャンバー大気開放後、チャンバーをベーキングし、チャンバー内に付着した水素、及び水分を取り除く作業や、ターゲット表面、または、防着板に付着した水素、水分を取り除くためにプレスパッタリング作業を行うことで、酸化物半導体膜中への不純物の混入を徹底的に排除することができる。
【0083】
また、スパッタリング室10a、スパッタリング室10b、及びスパッタリング室10cは、クライオポンプ、ターボ分子ポンプにコールドトラップを取り付けたポンプなどを用いて、排気経路からのガスの逆流を防ぐ構造とすればよい。排気経路からのガスの混入は、酸化物半導体膜中の不純物濃度が上昇してしまうため、徹底的に排除する必要がある。
【0084】
図5の製造装置を用いた作製工程の手順の一例としては、まず、カセットポート14より、ロードロック室12aと搬送室13を経て基板加熱室15に移動させ、基板加熱室15で被処理基板に付着している水分を真空ベークなどで除去し、その後、搬送室13を経てスパッタリング室10cに被処理基板を移動させ、スパッタリング室10c内で絶縁膜301を成膜する。そして、大気に触れることなく、搬送室13を経てスパッタリング室10aに被処理基板を移動させ、スパッタリング室10a内で膜厚5nmの第1の酸化物半導体膜を成膜する。そして、大気に触れることなく、搬送室13を経て基板加熱室15に被処理基板を移動させ、第1の加熱処理を行い、第1の酸化物半導体膜308aを形成する。そして、大気に触れることなく、搬送室13を経てスパッタリング室10bに被処理基板を移動させ、スパッタリング室10b内で膜厚10nmよりも厚い第2の酸化物半導体膜を成膜する。そして、大気に触れることなく、搬送室13を経て基板加熱室15に被処理基板を移動させ、第2の加熱処理を行い、第2の酸化物半導体膜308bを形成する。その後、搬送室13、アンロードロック室12b、基板供給室11を経てカセットポート14へ被処理基板を移動させる。
【0085】
このように、図5の製造装置を用いることによって絶縁膜301形成から第2の加熱処理まで大気に触れることなく、作製プロセスを進めることができる。
【0086】
また、図5の製造装置は、スパッタリング室のスパッタリングターゲットを変更することで、異なる構成の大気に触れることのないプロセスを実現できる。例えば、予め絶縁膜301を形成した基板をカセットポート14に設置し、第1の酸化物半導体膜の成膜から第2の加熱処理を行う工程までを大気に触れずに進めて、酸化物半導体膜308を形成し、その後、大気に触れることなく、スパッタリング室10c内で金属ターゲットを用いてソース電極およびドレイン電極を形成するための導電膜を酸化物半導体膜308に成膜することもできる。
【0087】
このように、図5に示す枚葉式マルチチャンバー装置を用いて、絶縁膜301、第1の酸化物半導体膜308a、及び第2の酸化物半導体膜308bの成膜を連続的に行うことができる。
【0088】
なお、図では、第1の酸化物半導体膜308aと第2の酸化物半導体膜308bの界面を点線で示し、酸化物半導体膜308としているが、明確な界面が存在しているのではなく、あくまでも分かりやすく説明するために図示している。
【0089】
また、酸化物半導体膜308は、成膜プロセス、加熱処理等により酸化物半導体膜308内より徹底的に水、水素、水酸基、水素化物などが除去された高純度化された酸化物半導体膜である。その水素濃度は、5×1019atoms/cm以下、望ましくは5×1018atoms/cm以下、より望ましくは5×1017atoms/cm以下である。
【0090】
また、酸化物半導体膜308は、N型の不純物となるリン(P)、ボロン(B)、N(窒素)の不純物を足し合わせた不純物濃度は、好ましくは、5×1019atoms/cm以下、更に好ましくは、5×1018atoms/cm以下である。また、N型の不純物となるリン(P)、ボロン(B)、N(窒素)のいずれか一つの不純物が、好ましくは、1.0×1019atoms/cm以下、更に好ましくは、1.0×1018atoms/cm以下である。
【0091】
このように、N型となりえる不純物を酸化物半導体膜308より徹底的に排除することにより、酸化物半導体膜308をI型(真性)にすることができる。
【0092】
次いで、酸化物半導体膜308を加工して島状の酸化物半導体膜309を形成する(図4(C)参照)。酸化物半導体膜308の加工は、所望の形状のマスクを酸化物半導体膜308上に形成した後、当該酸化物半導体膜308をエッチングすることによって行うことができる。上述のマスクは、フォトリソグラフィなどの方法を用いて形成することができる。または、インクジェット法などの方法を用いてマスクを形成しても良い。
【0093】
なお、酸化物半導体膜308のエッチングは、ドライエッチングでもウェットエッチングでもよい。もちろん、これらを組み合わせて用いてもよい。
【0094】
次いで、島状の酸化物半導体膜309上に、ソース電極、及びドレイン電極(これと同じ層で形成される配線を含む)を形成するための導電膜を形成し、当該導電膜を加工して、ソース電極304a、及びドレイン電極304bを形成する(図4(C)参照)。ソース電極304a、及びドレイン電極304bは、スパッタリング法等により、モリブデン、チタン、タンタル、タングステン、アルミニウム、銅、ネオジム、スカンジウム等の金属材料又はこれらを含む合金材料を用いて、単層で又は積層して形成することができる。
【0095】
次いで、酸化物半導体膜309の一部と接し、且つ、ソース電極304a、及びドレイン電極304bを覆うゲート絶縁膜302を形成する(図4(D)参照)。ゲート絶縁膜302は、プラズマCVD法又はスパッタリング法等を用いた酸化物絶縁膜であり、酸化シリコン、酸化窒化シリコン、窒化酸化シリコン、酸化アルミニウム、酸化ガリウム、酸化窒化アルミニウム、窒化酸化アルミニウム、酸化ハフニウム、又はこれらの混合材料を用いて単層で又は積層して形成する。ゲート絶縁膜302の膜厚は、10nm以上200nm以下である。
【0096】
本実施の形態では、ゲート絶縁膜302として、スパッタリング法を用いて100nmの酸化シリコン膜を用いる。そして、ゲート絶縁膜302の形成後に第3の加熱処理を行う。第3の加熱処理によって、ゲート絶縁膜302から酸化物半導体膜309への酸素供給が行われる。第3の加熱処理の条件は、不活性雰囲気、酸素雰囲気、酸素と窒素の混合雰囲気下で、200℃以上400℃以下、好ましくは250℃以上320℃以下とする。また、第3の加熱処理の加熱時間は1分以上24時間以下とする。なお、第3の加熱処理の加熱温度を320℃より高くするとトランジスタのオン特性の低下が生じる可能性がある。
【0097】
次いで、ゲート絶縁膜302上に導電膜を形成した後、フォトリソグラフィ工程、及びエッチング工程によりゲート電極312を形成する(図4(E)参照)。ゲート電極312は、ゲート絶縁膜302を介して酸化物半導体膜309の一部と重なる。ゲート電極312は、スパッタリング法等により、モリブデン、チタン、タンタル、タングステン、アルミニウム、銅、ネオジム、スカンジウム等の金属材料又はこれらを含む合金材料を用いて、単層で又は積層して形成することができる。
【0098】
次いで、ゲート電極312およびゲート絶縁膜302を覆う絶縁膜310a、及び絶縁膜310bを形成する(図4(E)参照)。
【0099】
絶縁膜310a、及び絶縁膜310bは、酸化シリコン、窒化シリコン、酸化ガリウム、酸化窒化シリコン、窒化酸化シリコン、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、酸化窒化アルミニウム、窒化酸化アルミニウム、又はこれらの混合材料を用いて単層で又は積層して形成することができる。本実施の形態では、絶縁膜310aとしてスパッタリング法で得られる300nmの酸化シリコン膜を用い、窒素雰囲気下で250℃、1時間の加熱処理を行う。その後、水分の侵入防止や、アルカリ金属の侵入防止のため、絶縁膜310bとしてスパッタリング法で得られる窒化シリコン膜を形成する。LiやNaなどのアルカリ金属は、不純物であるため含有量を少なくすることが好ましく、酸化物半導体膜309中に5×1016atoms/cm以下、好ましくは、1×1016atoms/cm以下、の濃度とする。なお、本実施の形態では絶縁膜310a、及び絶縁膜310bの2層構造とする例を示したが、単層構造としてもよい。
【0100】
以上の工程でトップゲート型のトランジスタ320が形成される。
【0101】
図4(E)に示すトランジスタ320において、第1の酸化物半導体膜308a、または第2の酸化物半導体膜308bは、少なくとも一部がc軸配向した結晶領域を有している。c軸配向した結晶領域を含むことにより、全体が非晶質構造の酸化物半導体膜と比較して良好な結晶性を有するので、酸素欠損やダングリングボンド、あるいはダングリングボンドなどに結合する水素、ボロン、窒素、リンなどの不純物が低減されている。
【0102】
したがって、インジウム(In)、ガリウム(Ga)、及び亜鉛(Zn)を含む酸化物半導体膜において、c軸配向した結晶領域を含む酸化物半導体膜は、電気的に安定な構造を有することができる。
【0103】
以上、本実施の形態に示す構成などは、他の実施の形態に示す構成、方法などと適宜組み合わせて用いることができる。
【0104】
(実施の形態3)
本実施の形態では、先の実施の形態2に示したトップゲート構造のトランジスタ320と異なる構成のトランジスタについて図6を用いて説明する。また、先の実施の形態2に示したトランジスタ320と同様の構成については、同様の符号を用い、その繰り返しの説明は省略する。
【0105】
図6(A)乃至図6(C)に示すトランジスタは、実施の形態1に示すインジウム、ガリウム、及び亜鉛を含み、且つc軸配向した結晶領域を有する酸化物半導体膜を、チャネル形成領域に用いることで高い信頼性を有するトランジスタを実現することができる。
【0106】
図6(A)に示すトランジスタ330は、基板300上に設けられた絶縁膜301と、絶縁膜301上に設けられたソース電極304a、及びドレイン電極304bと、ソース電極304a、及びドレイン電極304bの上面及び側面と接するように設けられた酸化物半導体膜309と、酸化物半導体膜309上に設けられたゲート絶縁膜302と、酸化物半導体膜309と重畳してゲート絶縁膜302上に設けられたゲート電極312と、ゲート電極312上に設けられた絶縁膜310aとを有する。つまり、トランジスタ330は、酸化物半導体膜309がソース電極304a、及びドレイン電極304bの上面及び側面と接するように設けられている点において、トランジスタ320と異なる。
【0107】
図6(B)に示すトランジスタ340は、基板300上に設けられた絶縁膜301と、絶縁膜301上に設けられたゲート電極312と、ゲート電極312上に設けられたゲート絶縁膜302と、ゲート絶縁膜302上に設けられた酸化物半導体膜309と、酸化物半導体膜309の上面及び側面と接するように設けられたソース電極304a、及びドレイン電極304bと、酸化物半導体膜309上に設けられた絶縁膜310aとを有する。つまり、トランジスタ340は、ゲート電極312とゲート絶縁膜302が酸化物半導体膜309の下に設けられた、ボトムゲート構造である点において、トランジスタ320と異なる。
【0108】
また、図6(C)に示すトランジスタ350は、基板300上に設けられた絶縁膜301と、絶縁膜301上に設けられたゲート電極312と、ゲート電極312上に設けられたゲート絶縁膜302と、ゲート絶縁膜302上に設けられたソース電極304a及びドレイン電極304bと、ソース電極304a及びドレイン電極304bの上面及び側面と接するように設けられた酸化物半導体膜309と、酸化物半導体膜309上に設けられた絶縁膜310aとを有する。つまり、トランジスタ350は、ゲート電極312とゲート絶縁膜302が酸化物半導体膜309の下に設けられた、ボトムゲート構造である点において、トランジスタ330と異なる。
【0109】
なお、図6(A)乃至図6(C)に示すトランジスタ330、トランジスタ340、及びトランジスタ350において、酸化物半導体膜309の少なくとも一部がc軸配向した結晶領域を有している。c軸配向した結晶領域を含むことにより、全体が非晶質構造の酸化物半導体膜と比較して良好な結晶性を有するので、酸素欠損やダングリングボンド、あるいはダングリングボンドなどに結合する水素、ボロン、窒素、リンなどの不純物が低減されている。
【0110】
したがって、インジウム(In)、ガリウム(Ga)、及び亜鉛(Zn)を含む酸化物半導体膜において、c軸配向した結晶領域を含む酸化物半導体膜は、電気的に安定な構造を有することができる。
【0111】
このように、本発明の酸化物半導体膜は、さまざまな構造のトランジスタに適用することができる。
【0112】
以上、本実施の形態に示す構成、方法などは、他の実施の形態に示す構成、方法などと適宜組み合わせて用いることができる。
【0113】
(実施の形態4)
本実施の形態では、同一基板上に少なくとも駆動回路の一部と、画素部に配置するトランジスタ有する表示装置について図7を用いて以下に説明する。
【0114】
画素部に配置するトランジスタは、実施の形態2、または実施の形態3に示したトランジスタを用いる。また、当該トランジスタはnチャネル型とすることが容易なので、駆動回路のうち、nチャネル型TFTで構成することができる駆動回路の一部を画素部のトランジスタと同一基板上に形成する。このように、画素部や駆動回路に先の実施の形態2、または実施の形態3に示すトランジスタを用いることにより、信頼性の高い表示装置を提供することができる。
【0115】
アクティブマトリクス型表示装置のブロック図の一例を図7(A)に示す。表示装置の基板500上には、画素部501、第1の走査線駆動回路502、第2の走査線駆動回路503、信号線駆動回路504を有する。画素部501には、複数の信号線が信号線駆動回路504から延伸して配置され、複数の走査線が第1の走査線駆動回路502、及び第2の走査線駆動回路503から延伸して配置されている。なお走査線と信号線との交差領域には、各々、表示素子を有する画素がマトリクス状に設けられている。また、表示装置の基板500はFPC(Flexible Printed Circuit)等の接続部を介して、タイミング制御回路(コントローラ、制御ICともいう)に接続されている。
【0116】
図7(A)では、第1の走査線駆動回路502、第2の走査線駆動回路503、信号線駆動回路504は、画素部501と同じ基板500上に形成される。そのため、外部に設ける駆動回路等の部品の数が減るので、コストの低減を図ることができる。また、基板500外部に駆動回路を設けた場合、配線を延伸させる必要が生じ、配線間の接続数が増える。同じ基板500上に駆動回路を設けた場合、その配線間の接続数を減らすことができ、信頼性の向上、又は歩留まりの向上を図ることができる。
【0117】
また、画素部の回路構成の一例を図7(B)に示す。ここでは、VA型液晶表示パネルの画素構造を示す。
【0118】
この画素構造は、一つの画素に複数の画素電極層が有り、それぞれの画素電極層にトランジスタが接続されている。各トランジスタは、異なるゲート信号で駆動されるように構成されている。すなわち、マルチドメイン設計された画素において、個々の画素電極層に印加する信号を、独立して制御する構成を有している。
【0119】
トランジスタ516のゲート配線512と、トランジスタ517のゲート配線513は、異なるゲート信号を与えることができるように分離されている。一方、データ線として機能するソース電極層又はドレイン電極層514は、トランジスタ516とトランジスタ517で共通に用いられている。トランジスタ516とトランジスタ517は先の実施の形態に示すトランジスタを適宜用いることができる。これにより、信頼性の高い液晶表示パネルを提供することができる。
【0120】
トランジスタ516と接続する第1の画素電極層と、トランジスタ517と接続する第2の画素電極層の形状は異なっており、スリットによって分離されている。V字型に広がる第1の画素電極層の外側を囲むように第2の画素電極層が形成されている。第1の画素電極層と第2の画素電極層に印加する電圧のタイミングを、トランジスタ516及びトランジスタ517により異ならせることで、液晶の配向を制御している。トランジスタ516はゲート配線512と接続し、トランジスタ517はゲート配線513と接続している。ゲート配線512とゲート配線513は異なるゲート信号を与えることで、トランジスタ516とトランジスタ517の動作タイミングを異ならせることができる。
【0121】
また、容量配線510と、誘電体として機能するゲート絶縁膜と、第1の画素電極層または第2の画素電極層と接続する容量電極とで保持容量を形成する。
【0122】
第1の画素電極層と液晶層と対向電極層が重なり合うことで、第1の液晶素子518が形成されている。また、第2の画素電極層と液晶層と対向電極層が重なり合うことで、第2の液晶素子519が形成されている。また、一画素に第1の液晶素子518と第2の液晶素子519が設けられたマルチドメイン構造である。
【0123】
なお、図7(B)に示す画素構成は、これに限定されない。例えば、図7(B)に示す画素に新たにスイッチ、抵抗素子、容量素子、トランジスタ、センサ、又は論理回路などを追加してもよい。
【0124】
また、図7(B)に示す画素構成と異なる回路構成の一例を図7(C)に示す。ここでは、有機EL素子を用いた表示パネルの画素構造を示す。
【0125】
有機EL素子は、発光素子に電圧を印加することにより、一対の電極から電子および正孔がそれぞれ発光性の有機化合物を含む層に注入され、電流が流れる。そして、それらキャリア(電子および正孔)が再結合することにより、発光性の有機化合物が励起状態を形成し、その励起状態が基底状態に戻る際に発光する。このようなメカニズムから、このような発光素子は、電流励起型の発光素子と呼ばれる。
【0126】
有機EL素子を駆動可能な画素の構成及び画素の動作について説明する。ここでは本発明の酸化物半導体膜をチャネル形成領域に用いるnチャネル型のトランジスタを1つの画素に2つ用いる例を示す。
【0127】
画素520は、スイッチング用トランジスタ521、駆動用トランジスタ522、発光素子524及び容量素子523を有している。スイッチング用トランジスタ521は、ゲート電極層が走査線526に接続され、第1電極(ソース電極層及びドレイン電極層の一方)が信号線525に接続され、第2電極(ソース電極層及びドレイン電極層の他方)が駆動用トランジスタ522のゲート電極層に接続されている。駆動用トランジスタ522は、ゲート電極層が容量素子523を介して電源線527に接続され、第1電極が電源線527に接続され、第2電極が発光素子524の第1電極(画素電極)に接続されている。発光素子524の第2電極は共通電極528に相当する。共通電極528は、同一基板上に形成される共通電位線に接続される。
【0128】
スイッチング用トランジスタ521および駆動用トランジスタ522は実施の形態2、または実施の形態3に示すトランジスタを適宜用いることができる。これにより、信頼性の高い有機EL素子を用いた表示パネルを提供することができる。
【0129】
なお、発光素子524の第2電極(共通電極528)には低電源電位が設定されている。なお、低電源電位とは、電源線527に設定される高電源電位を基準にして低電源電位<高電源電位を満たす電位であり、低電源電位としては例えばGND、0Vなどが設定されていても良い。この高電源電位と低電源電位との電位差を発光素子524に印加して、発光素子524に電流を流して発光素子524を発光させるため、高電源電位と低電源電位との電位差が発光素子524の順方向しきい値電圧以上となるようにそれぞれの電位を設定する。
【0130】
なお、容量素子523は、駆動用トランジスタ522のゲート容量を代用して省略することも可能である。駆動用トランジスタ522のゲート容量については、チャネル形成領域とゲート電極層との間で容量が形成されていてもよい。
【0131】
ここで、アナログ階調駆動を行う場合、駆動用トランジスタ522のゲート電極層に発光素子524の順方向電圧 + 駆動用トランジスタ522のVth以上の電圧をかける。発光素子524の順方向電圧とは、所望の輝度とする場合の電圧を指しており、少なくとも順方向しきい値電圧を含む。なお、駆動用トランジスタ522が飽和領域で動作するようなビデオ信号を入力することで、発光素子524に電流を流すことができる。駆動用トランジスタ522を飽和領域で動作させるため、電源線527の電位は、駆動用トランジスタ522のゲート電位よりも高くする。ビデオ信号をアナログとすることで、発光素子524にビデオ信号に応じた電流を流し、アナログ階調駆動を行うことができる。
【0132】
なお、図7(C)に示す画素構成は、これに限定されない。例えば、図7(C)に示す画素に新たにスイッチ、抵抗素子、容量素子、センサ、トランジスタ又は論理回路などを追加してもよい。
【0133】
このように、画素部や駆動回路に先の実施の形態2、または実施の形態3に示すトランジスタを用いており、当該トランジスタのチャネル形成領域に用いる酸化物半導体膜の少なくとも一部がc軸配向した結晶領域を有しており、高い信頼性を有するトランジスタである。従って、信頼性の高い表示装置を提供することができる。
【0134】
以上、本実施の形態に示す構成、方法などは、他の実施の形態に示す構成、方法などと適宜組み合わせて用いることができる。
【0135】
(実施の形態5)
本明細書に開示する半導体装置は、さまざまな電子機器(遊技機も含む)に適用することができる。電子機器としては、例えば、テレビジョン装置(テレビ、またはテレビジョン受信機ともいう)、コンピュータ用などのモニタ、デジタルカメラ、デジタルビデオカメラ等のカメラ、デジタルフォトフレーム、携帯電話機(携帯電話、携帯電話装置ともいう)、携帯型ゲーム機、携帯情報端末、音響再生装置、パチンコ機などの大型ゲーム機などが挙げられる。上記実施の形態4で説明した表示装置を具備する電子機器の例について説明する。
【0136】
図8(A)は、携帯型の情報端末であり、本体1001、筐体1002、表示部1003a、表示部1003bなどによって構成されている。表示部1003bはタッチパネルとなっており、表示部1003bに表示されるキーボードボタン1004に触れることで画面操作や、文字入力を行うことができる。勿論、表示部1003aをタッチパネルとして構成してもよい。先の実施の形態2、または実施の形態3で示したトランジスタをスイッチング素子として液晶パネルや有機発光パネルを作製して表示部1003a、表示部1003bに適用することにより、信頼性の高い携帯型の情報端末とすることができる。
【0137】
図8(A)に示す携帯型の情報端末は、様々な情報(静止画、動画、テキスト画像など)を表示する機能、カレンダー、日付又は時刻などを表示部に表示する機能、表示部に表示した情報を操作又は編集する機能、様々なソフトウェア(プログラム)によって処理を制御する機能、等を有することができる。また、筐体の裏面や側面に、外部接続用端子(イヤホン端子、USB端子など)、記録媒体挿入部などを備える構成としてもよい。
【0138】
また、図8(A)に示す携帯型の情報端末は、無線で情報を送受信できる構成としてもよい。無線により、電子書籍サーバから、所望の書籍データなどを購入し、ダウンロードする構成とすることも可能である。
【0139】
図8(B)は、携帯音楽プレイヤーであり、本体1021には表示部1023と、耳に装着するための固定部1022と、スピーカー、操作ボタン1024、外部メモリスロット1025等が設けられている。先の実施の形態2、または実施の形態3で示したトランジスタをスイッチング素子として液晶パネルや有機発光パネルを作製して表示部1023に適用することにより、より信頼性の高い携帯音楽プレイヤーとすることができる。
【0140】
さらに、図8(B)に示す携帯音楽プレイヤーにアンテナやマイク機能や無線機能を持たせ、携帯電話と連携させれば、乗用車などを運転しながらワイヤレスによるハンズフリーでの会話も可能である。
【0141】
図8(C)は、携帯電話であり、筐体1030及び筐体1031の二つの筐体で構成されている。筐体1031には、表示パネル1032、スピーカー1033、マイクロフォン1034、ポインティングデバイス1036、カメラ用レンズ1037、外部接続端子1038などを備えている。また、筐体1030には、携帯電話の充電を行う太陽電池セル1040、外部メモリスロット1041などを備えている。また、アンテナは筐体1031内部に内蔵されている。先の実施の形態2、または実施の形態3で示したトランジスタを表示パネル1032に適用することにより、信頼性の高い携帯電話とすることができる。
【0142】
また、表示パネル1032はタッチパネルを備えており、図8(C)には映像表示されている複数の操作キー1035を点線で示している。なお、太陽電池セル1040で出力される電圧を各回路に必要な電圧に昇圧するための昇圧回路も実装している。
【0143】
例えば、昇圧回路などの電源回路に用いられるパワートランジスタも先の実施の形態2、または実施の形態3に示したトランジスタの酸化物半導体膜の膜厚を2μm以上50μm以下とすることで形成することができる。
【0144】
表示パネル1032は、使用形態に応じて表示の方向が適宜変化する。また、表示パネル1032と同一面上にカメラ用レンズ1037を備えているため、テレビ電話が可能である。スピーカー1033及びマイクロフォン1034は音声通話に限らず、テレビ電話、録音、再生などが可能である。さらに、筐体1030と筐体1031は、スライドし、図8(C)のように展開している状態から重なり合った状態とすることができ、携帯に適した小型化が可能である。
【0145】
外部接続端子1038はACアダプタ及びUSBケーブルなどの各種ケーブルと接続可能であり、充電及びパーソナルコンピュータなどとのデータ通信が可能である。また、外部メモリスロット1041に記録媒体を挿入し、より大量のデータ保存及び移動に対応できる。
【0146】
また、上記機能に加えて、赤外線通信機能、テレビ受信機能などを備えたものであってもよい。
【0147】
図8(D)は、テレビジョン装置の一例を示している。テレビジョン装置1050は、筐体1051に表示部1053が組み込まれている。表示部1053により、映像を表示することが可能である。また、ここでは、CPUを内蔵したスタンド1055により筐体1051を支持した構成を示している。先の実施の形態2、または実施の形態3で示したトランジスタを表示部1053に適用することにより、信頼性の高いテレビジョン装置1050とすることができる。
【0148】
テレビジョン装置1050の操作は、筐体1051が備える操作スイッチや、別体のリモコン操作機により行うことができる。また、リモコン操作機に、当該リモコン操作機から出力する情報を表示する表示部を設ける構成としてもよい。
【0149】
なお、テレビジョン装置1050は、受信機やモデムなどを備えた構成とする。受信機により一般のテレビ放送の受信を行うことができ、さらにモデムを介して有線または無線による通信ネットワークに接続することにより、一方向(送信者から受信者)または双方向(送信者と受信者間、あるいは受信者間同士など)の情報通信を行うことも可能である。
【0150】
また、テレビジョン装置1050は、外部接続端子1054や、記憶媒体再生録画部1052、外部メモリスロットを備えている。外部接続端子1054は、USBケーブルなどの各種ケーブルと接続可能であり、パーソナルコンピュータなどとのデータ通信が可能である。記憶媒体再生録画部1052では、ディスク状の記録媒体を挿入し、記録媒体に記憶されているデータの読み出し、記録媒体への書き込みが可能である。また、外部メモリスロットに差し込まれた外部メモリ1056にデータ保存されている画像や映像などを表示部1053に映し出すことも可能である。
【0151】
以上、本実施の形態に示す構成、方法などは、他の実施の形態に示す構成、方法などと適宜組み合わせて用いることができる。
【実施例1】
【0152】
本実施例においては、インジウム、ガリウム、及び亜鉛を含む酸化物半導体膜において、酸化物半導体膜の成膜条件を変更することで、全体が非晶質構造の酸化物半導体膜(amo−OS、試料1)と、開示する発明の一態様であるc軸に配向した結晶領域を有した酸化物半導体膜(CAAC−OS、試料2及び試料3)を作製し、酸化物半導体膜中の酸素欠損について評価を行った。各試料の詳細は以下の通りである。
【0153】
(試料1)
石英基板上にスパッタリング法にてIGZO膜を100nm形成した。その後IGZO膜を450℃×1時間、N雰囲気(N=100%)にて熱処理を行った。その後、該IGZO膜上にプラズマCVD法にてSiON膜を400nm形成した。なお、IGZO膜の成膜条件は、In:Ga:Zn=1:1:1の金属酸化物ターゲットを用い、Ar/O=90/10sccm(Oガス流量比10%)、成膜圧力=0.6Pa、成膜電力=5kw(DC)、基板温度=170℃の条件とした。また、SiON膜の成膜条件は、SiH/NO=30/4000sccm、成膜圧力=200Pa、成膜電力=150W(RF)、基板温度=220℃の条件とした。
【0154】
(試料2)
石英基板上にスパッタリング法にてIGZO膜を100nm形成した。その後IGZO膜を450℃×1時間、N雰囲気(N=100%)にて熱処理を行った。その後、該IGZO膜上にプラズマCVD法にてSiON膜を400nm形成した。なお、IGZO膜の成膜条件は、In:Ga:Zn=1:1:1の金属酸化物ターゲットを用い、Ar/O=50/50sccm(Oガス流量比50%)、成膜圧力=0.6Pa、成膜電力=5kw(DC)、基板温度=170℃の条件とした。また、SiON膜の成膜条件は、試料1と同じ条件とした。
【0155】
(試料3)
石英基板上にスパッタリング法にてIGZO膜を100nm形成した。その後IGZO膜を450℃×1時間、N雰囲気(N=100%)にて熱処理を行った。その後、該IGZO膜上にプラズマCVD法にてSiON膜を400nm形成した。なお、IGZO膜の成膜条件は、In:Ga:Zn=1:1:1の金属酸化物ターゲットを用い、Ar/O=0/100sccm(Oガス流量比100%)、成膜圧力=0.6Pa、成膜電力=2kw(DC)、基板温度=170℃の条件とした。また、SiON膜の成膜条件は、試料1及び試料2と同じ条件とした。
【0156】
上記、試料1乃至試料3に対して、SiON成膜後、300℃×1時間、N雰囲気(N=100%)にて熱処理後、及び300℃×1時間、N+O雰囲気(N=80%、O=20%)にて熱処理後に、それぞれ酸化物半導体膜中の酸素欠損の評価を行った。
【0157】
なお、酸化物半導体膜中の酸素欠損は、電子スピン共鳴(ESR:Electron Spin Resonance)によって評価できる。
【0158】
試料1乃至試料3におけるスピン密度の結果を図9及び図10に示す。なお、スピン密度の測定条件は、温度25℃、μ波パワー20mW、9.2GHz、磁場の向きは膜面に平行、検出下限1.0×1017spins/cmとした。
【0159】
図9(A)は試料1におけるスピン密度の結果を、図9(B)は試料2におけるスピン密度の結果を、図9(C)は試料3におけるスピン密度の結果を、それぞれ示す。また、図9(A)、図9(B)、及び図9(C)において、上段がSiON成膜後、中段が300℃×1時間、N雰囲気(N=100%)にて熱処理後、下段が300℃×1時間、N+O雰囲気(N=80%、O=20%)にて熱処理後のスピン密度の結果を表す。なお、図9において、横軸がg−factor(g値ともいう)を表し、縦軸が強度を表す。
【0160】
図10は、図9(A)、図9(B)、及び図9(C)に示したスピン密度の結果を棒グラフにした図である。
【0161】
図9及び図10より、SiON成膜後において、試料1は2.3×1018spins/cmのスピン密度であり、試料2は2.1×1018spins/cmのスピン密度であり、試料3は8.9×1017spins/cmのスピン密度であった。また、300℃×1時間、N雰囲気にて熱処理後において、試料1は2.4×1018spins/cmのスピン密度であり、試料2及び試料3は検出下限以下であった。また、300℃×1時間、N+O雰囲気にて熱処理後において、試料1は1.7×1018spins/cmのスピン密度であり、試料2及び試料3は検出下限以下であった。
【0162】
これらの結果より、全体が非晶質構造の酸化物半導体膜(amo−OS、試料1)と、開示する発明の一態様であるc軸に配向した結晶領域を有した酸化物半導体膜(CAAC−OS、試料2及び試料3)では、膜中の酸素欠損が異なる結果が示された。また、試料1においては、SiON成膜後に300℃×1時間、N+O雰囲気にて熱処理を行った条件については、スピン密度の低下、すなわち酸化物半導体膜中の酸素欠損がSiON膜中、または熱処理雰囲気中の酸素により一部補填される様子が確認されるが、完全に酸化物半導体膜中の酸素欠損を補填することが出来ていない。一方、試料2及び試料3においては、SiON成膜後に熱処理を行うことにより、スピン密度が低下し検出下限以下、すなわち酸化物半導体膜中の酸素欠損がSiON膜中、または熱処理雰囲気中の酸素により酸化物半導体膜中の酸素欠損が補填された結果が確認された。
【0163】
したがって、開示する発明の一態様であるc軸に配向した結晶領域を有した酸化物半導体膜(CAAC−OS)は、ESRによって、酸素欠損に起因する信号を有さない酸化物半導体膜と言い換えることができる。
【符号の説明】
【0164】
10a スパッタリング室
10b スパッタリング室
10c スパッタリング室
11 基板供給室
12a ロードロック室
12b アンロードロック室
13 搬送室
14 カセットポート
15 基板加熱室
16 ゲートバルブ
100 基板
101 酸化物半導体膜
102 結晶領域
150 領域
300 基板
301 絶縁膜
302 ゲート絶縁膜
304a ソース電極
304b ドレイン電極
308 酸化物半導体膜
308a 酸化物半導体膜
308b 酸化物半導体膜
309 酸化物半導体膜
310a 絶縁膜
310b 絶縁膜
312 ゲート電極
320 トランジスタ
330 トランジスタ
340 トランジスタ
350 トランジスタ
500 基板
501 画素部
502 走査線駆動回路
503 走査線駆動回路
504 信号線駆動回路
510 容量配線
512 ゲート配線
513 ゲート配線
514 ドレイン電極層
516 トランジスタ
517 トランジスタ
518 液晶素子
519 液晶素子
520 画素
521 スイッチング用トランジスタ
522 駆動用トランジスタ
523 容量素子
524 発光素子
525 信号線
526 走査線
527 電源線
528 共通電極
1001 本体
1002 筐体
1003a 表示部
1003b 表示部
1004 キーボードボタン
1021 本体
1022 固定部
1023 表示部
1024 操作ボタン
1025 外部メモリスロット
1030 筐体
1031 筐体
1032 表示パネル
1033 スピーカー
1034 マイクロフォン
1035 操作キー
1036 ポインティングデバイス
1037 カメラ用レンズ
1038 外部接続端子
1040 太陽電池セル
1041 外部メモリスロット
1050 テレビジョン装置
1051 筐体
1052 記憶媒体再生録画部
1053 表示部
1054 外部接続端子
1055 スタンド
1056 外部メモリ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
インジウム(In)、ガリウム(Ga)、及び亜鉛(Zn)を含む酸化物半導体膜において、
前記酸化物半導体膜は、前記酸化物半導体膜の被形成面の法線ベクトルに平行な方向に揃うc軸配向した結晶領域を有し、
前記c軸配向した結晶領域の組成が、
In1+δGa1−δ(ZnO)(ただし、0<δ<1、m=1〜3)で表され、
前記c軸配向した結晶領域を含む全体の前記酸化物半導体膜の組成が、
InGa(ZnO)(ただし、0<x<2、0<y<2、m=1〜3)で表される酸化物半導体膜。
【請求項2】
請求項1において、
前記酸化物半導体膜は、ボロン(B)濃度、リン濃度(P)、及び窒素(N)濃度の合計が、5×1019atoms/cm以下である酸化物半導体膜。
【請求項3】
請求項1または請求項2において、
前記酸化物半導体膜は、ボロン(B)濃度、リン濃度(P)、及び窒素(N)濃度のいずれか一の元素が、1×1019atoms/cm以下である酸化物半導体膜。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれか一において、
前記酸化物半導体膜は、リチウム(Li)濃度、及びカリウム(K)濃度が5×1015atoms/cm以下である酸化物半導体膜。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4のいずれか一において、
前記酸化物半導体膜は、ナトリウム(Na)濃度が5×1016atoms/cm以下である酸化物半導体膜。
【請求項6】
ゲート電極と、
前記ゲート電極と接する第1の絶縁膜と、
前記第1の絶縁膜に接する酸化物半導体膜と、
前記酸化物半導体膜に接する第2の絶縁膜と、を有し、
前記酸化物半導体膜は、インジウム(In)、ガリウム(Ga)、及び亜鉛(Zn)を含み、且つ前記酸化物半導体膜の被形成面の法線ベクトルに平行な方向に揃うc軸配向した結晶領域を有し、
前記c軸配向した結晶領域の組成が、
In1+δGa1−δ(ZnO)(ただし、0<δ<1、m=1〜3)で表され、
前記c軸配向した結晶領域を含む全体の前記酸化物半導体膜の組成が、
InGa(ZnO)(ただし、0<x<2、0<y<2、m=1〜3)
で表される半導体装置。
【請求項7】
請求項6において、
前記酸化物半導体膜は、ボロン(B)濃度、リン濃度(P)、及び窒素(N)濃度の合計が、5×1019atoms/cm以下である半導体装置。
【請求項8】
請求項6または請求項7において、
前記酸化物半導体膜は、ボロン(B)濃度、リン濃度(P)、及び窒素(N)濃度のいずれか一の元素が、1×1019atoms/cm以下である半導体装置。
【請求項9】
請求項6乃至請求項8のいずれか一において、
前記酸化物半導体膜は、リチウム(Li)濃度、及びカリウム(K)濃度が5×1015atoms/cm以下である半導体装置。
【請求項10】
請求項6乃至請求項9のいずれか一において、
前記酸化物半導体膜は、ナトリウム(Na)濃度が5×1016atoms/cm以下である半導体装置。

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2012−231133(P2012−231133A)
【公開日】平成24年11月22日(2012.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−90167(P2012−90167)
【出願日】平成24年4月11日(2012.4.11)
【出願人】(000153878)株式会社半導体エネルギー研究所 (5,264)
【Fターム(参考)】