説明

金属箔およびポリマ膜を積層するツール、ならびに積層構造物を製造する方法

【課題】高温積層ツールを提供すること。
【解決手段】積層構造物を形成するように金属箔およびポリマ膜を積層するツールが開示される。ツール10は、金属箔23およびポリマ膜25を積層する。また、ツール10は、一対の圧盤11を有している。各圧盤11は、シール面12を有する。ツール10、具体的には圧盤11が作動される前に、積層構造物20(任意選択的に、収縮アイソレータ27を含む)は、開いたキャビティ19に配設される。真空液圧プレスによって圧力が加えられたときに、対の圧盤11は、シール面12の間でキャビティ19を閉じるように互いに向かって移動する。十分な圧力が加えられたときに、キャビティ19は完全に閉じてシールされるようになり、キャビティ自体は加圧される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、一般に、高温で金属箔とポリマ膜とを積層するツール、ならびにこのツールの製造方法および使用方法に関する。
【背景技術】
【0002】
薄い熱可塑性ポリイミド膜および金属箔の複合構造ヒータは、プロペラ、ヘリコプタのロータ、ノーズコーン、スピナ、ステータ、ガスタービン入口ダクト、ナセルおよび主翼などと共に、またはこれらの部材内において航空宇宙用途で広く使用されている。300°F(約148.89℃)以上での動作の場合、ヒータアセンブリは、真空下で200ポンド/平方インチ(psi)(約14.06kgf/cm2)を超える圧力を使用して600°F(約315.56℃)より高い温度で処理される。
【0003】
このタイプのヒータは、一般に、熱、圧力および真空を適用するためにオートクレーブまたは真空液圧プレス(VHP)を使用して処理される。これらの方法の各々には、利点および欠点がある。
【0004】
オートクレーブ処理には、静水圧を積層スタックの面に一様に加えるようにガス圧力を使用することができ、さらに多数の積層構造物を同時に処理することができるという利点がある。欠点は、オートクレーブ処理が一般に600°Fで200psiの最大圧力に制限され、その結果、装置制限のためにスループット速度が低下することである。さらに、オートクレーブ処理はポリマの袋(bag)やシールを使用し、ポリマの袋やシールは、積層に必要とされる高い処理温度で損なわれ、その結果、印加圧力の低下を引き起こし、かつ製造される積層部の損失を引き起こす恐れのある漏れを生じる可能性がある。オートクレーブ装置は、ポリマの袋およびシーラントが使用されるので、高価であり、労力がかかり、積層のための高圧(200psiを超える)および高温(600°Fを超える)において安全危険要因となることがある。また、オートクレーブの大きな熱質量のために加熱速度が低くなるので、オートクレーブはサイクル時間が長い。同様に、大きなガス体積が必要とされるために加圧速度が低く、200psiに達するのに10分以上となることがある。
【0005】
真空液圧プレス(VHP)処理には、高圧(3000psi(約210.92kgf/cm2)を超える)と同じように高温(1000°F(約537.78℃)を超える)が容易に達成されるという利点がある。VHPは、急速な圧力印加および高加熱速度を実現する。VHPは、使い捨てのポリマシーラントを必要としない。多数の圧盤および低熱質量のために、より速いサイクル時間および多部品処理能力が可能になる。さらに、VHPは、オートクレーブよりも「占有面積」が小さく、実質的に作業コストが低い。したがって、VHPにより、オートクレーブ処理よりも数倍速い全体的な部品の流れが可能になる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、VHPには、薄い膜を処理するときに、圧縮金型不整合のために不均一な圧力印加が生じることがあるという欠点がある。また、圧力を分散させるためにPFA(パーフルオロアルコキシ膜)のような流体熱可塑性層が必要とされる。さらに、ツール内の不均一な荷重に起因するツール/圧盤ゆがみが、積層品質の問題の一因になることがある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示は、積層構造物を形成するように金属箔およびポリマを積層するツールを提供する。
【0008】
本開示は、さらに、オートクレーブ処理で使用可能な積層スタックの面にガス圧力を加えるだけでなく、VHP処理で使用可能な高温高圧を使用して1つまたは複数の金属箔とポリマとを積層するようなツールを提供する。
【0009】
本開示は、さらにまた、ガスタービンエンジンにおける防氷/除氷用途用の電熱ヒータの製作に使用されるようなツールを提供する。任意選択的に、このツールは、さらに、積層構造物が冷却されるときに積層構造物のしわ、崩壊または座屈を減少させるか、除去する収縮アイソレータを備える。
【0010】
本開示は、また、このツールの動作に必要とされる加圧ガスの体積を、オートクレーブに比べて減少させるようなツールを提供し、その結果、本ツールは、経済上、環境上の利点をもたらす。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
図面、特に図1A,図1Bおよび図2を参照すると、全体的に参照数字10で表された本発明によるツールが示されている。ツール10は、図2に示される積層構造物(積層膜)20を形成するように、金属箔23と、ポリマつまりポリマ膜25とを積層する。積層構造物20は、ガスタービンエンジンにおける防氷/除氷用途の電熱ヒータの製作で使用される。
【0012】
図2を参照すると、積層構造物20は、2つの金属箔23と共に示され、これら金属箔の各々がポリマ膜25の異なる側に隣接して配置されている。任意選択的に、一対の収縮アイソレータ27が各金属箔23に隣接して1つ配置されている。収縮アイソレータ27は、冷却段階中の積層構造物のしわ、崩壊または座屈を減少させるか、除去するために使用されることがある。
【0013】
図1Aおよび図1Bを参照すると、ツール10は、一対の圧盤11を有している。各圧盤11は、シール面12を有する。シール面12は、好ましくは、平らな面である。しかし、各シール面12は平らでない面を有することができる。圧盤11およびシール面12の対がキャビティ19を形成する。2つの圧盤11が示されているが、ツール10は3つ以上の圧盤を有してもよい。また、一実施形態では、ツール10は、2つ以上のばね13を有し、このばね13は、圧力が加えられていないときに対の圧盤を離しておくために、かつ圧力が解放された後に圧盤を開いた位置に戻すために、その一対の圧盤11の端部に、または端部の近くに配置されている。一実施形態では、ばね13は、シール面12の構造に隣接するが接触せずにキャビティ19の外側に配置されている。図1Bに示されるように、対のばね13および対のばね15を含む4つのばねが使用されることがある。ばね13(およびばね15)は、最小圧力荷重を受けているときにツール10を開いた構成にしておくように、大きさが決められる。ばね13,15は、ツール10が開いた構成にあるとき、圧盤11の重さを受けるが、ツール10が動作するためには必ずしも必要ではない。ばね13,15は、好ましくは、さらばねである。
【0014】
各圧盤11は、媒体、好ましくはガスが、キャビティ19内への流入を許容するチャネルつまり入口圧力開口部14を有する。しかし、他の実施形態では、2つ以上の入口圧力開口部14を、各圧盤11について使用することができる。
【0015】
ツール10は、積層に必要とされる高温および高圧の繰返しの印加に耐えることができる任意の材料製の本体を有する。例えば、材料は、600°F(約315.56℃)を超える温度および200ポンド/平方インチ(psi)を超える圧力、さらに1000psi(約70.30kgf/cm2)を超える圧力にも耐えることができなければならい。容易に酸化しない金属または金属合金を、ツールを作製するための材料として使用することができる。しかし、代わりに、ツール10の本体は、高温および高圧で動作することができるセラミックまたは任意の材料製とすることができる。好ましくは、ツール10の本体はステンレス鋼製である。
【0016】
ツール10、具体的には圧盤11が作動される前に、積層構造物20(任意選択的に、収縮アイソレータ27を含む)は、開いたキャビティ19に配設される。真空液圧プレスによって圧力が加えられたときに、対の圧盤11は、シール面12の間でキャビティ19を閉じるように互いに向かって移動する。十分な圧力が加えられたときに、キャビティ19は完全に閉じてシールされるようになり、キャビティ自体が加圧される。ツール10は、水銀柱28インチよりも高い真空を使用して、積層スタック20から空気および揮発性物質を排気することができるように開閉する。積層スタック20の排気、加熱、および圧盤11の作動のために必要な真空や熱や圧力の供給源として、真空液圧プレス(VHP)が使用されてもよい。
【0017】
本開示の実施形態は、1つまたは複数の収縮アイソレータ27を使用する。収縮アイソレータ27は、特に冷却段階中に、積層構造物のゆがみを最小限にするか、防止するように金型縁部(シール面12)から積層構造物20を分離する。積層構造物20のゆがみは、積層構造物を作製するために使用された金属箔(チタンなど)の熱収縮に比べて金型金属(ステンレス鋼など)の熱収縮が大きいことに基づいている。収縮アイソレータ27は本開示の動作のために必要ではないが、これの使用で、積層構造物のしわや崩壊や座屈が減少する。さらに、収縮アイソレータは、積層構造物がツール10から取り出されるときに積層構造物20に対する追加の構造支持物となり、これによって、製品がより扱い易くなる。次に、収縮アイソレータ27は、積層構造物20から除去されてもよく、さらに処分されるか再利用されてもよい。
【0018】
本開示で使用される収縮アイソレータ27のいくつかの特徴は、収縮アイソレータの熱膨張係数(CTE)がツール材料の熱膨張係数以上となることである。ツール材料の熱膨張係数が、積層構造物20に使用される金属箔23の熱膨張係数以下であるとき、収縮アイソレータ27が必要なくなる可能性がある。さらに、収縮アイソレータ27は、また、スリップ面界面の恩恵をもたらし、その結果、製造後に積層構造物20をツール10からより容易かつきれいに取り外すことができるようになる。図1に示された積層構造物20の実施形態は、2つの収縮アイソレータ27を有するものとして示されているが、また、積層構造物20ごとに単一の、または3つ以上の収縮アイソレータがあってもよい。各収縮アイソレータ27は、それ自体、単一の層であってもよく、2以上の層であってもよい。
【0019】
上述のように、積層構造物20は、1つまたは複数の金属箔23と1つまたは複数のポリマ膜25と、ならびに、望ましい場合には、1つまたは複数の収縮アイソレータ27との任意の組合せであってもよい。積層構造物20に使用されるポリマ膜25は、金属箔に十分に付着する任意の異種または同種のポリマ膜であってもよい。好ましくは、各金属箔23は薄い。同様に、好ましくは、各ポリマつまりポリマ膜25は薄い。
【0020】
金属箔23の例は、チタン箔である。本開示の金属箔の他の例には、チタン合金、銅、銅合金、ニッケル、ニッケル合金、ステンレス鋼、または他の電気抵抗性金属合金がある。金属箔の厚さは、約0.0005〜0.010インチ(約0.013〜0.254mm)に及ぶことがあり、一般に、約0.001インチ(約0.025mm)の厚さである。
【0021】
ポリマ膜25は、ポリイミドなどの非多孔質熱可塑性ポリマであってもよい。ポリマ膜の厚さは、厚さが約0.0005〜0.050インチ(約0.013〜1.27mm)に及ぶことがあり、一般に、約0.002インチ(約0.051mm)の厚さである。
【0022】
作動によってツール10を閉じることで積層物の縁部がしっかり結合されて、積層構造物20の縁部をシールする。シール面12が積層構造物20の縁部をシールするように、対の圧盤11を互いに他方の方に移動してキャビティ19を密閉するために必要な圧力の量は、シール圧力(SP)と定義される。
【0023】
キャビティ19が閉じられるときに、ツール10は、図4に示される閉位置にある。次に、積層圧力媒体(LPM)と定義されるガスまたは流体の媒体を用いて、積層圧力印加(LPA)と定義される圧力がキャビティ19に加えられ、その結果、積層構造物20の両面に対する圧力印加が生じる。
【0024】
LPMが上述の1つまたは複数のポート、すなわち入口圧力開口部14の中に入ることによって、LPAは達成される。1つまたは複数の入口圧力開口部14は、連続して、または平行して制御される。入口圧力開口部14は、1つの実施形態ではガスの通過を、または他の実施形態では流体の通過を可能にすることができる。
【0025】
積層圧力媒体は、積層構造物20の面に圧力を伝えることができる任意のガスまたは流体であってもよい。ガスであるLPMの例には、窒素、アルゴン、空気、およびヘリウムがある。流体の例には、ポリマ溶融物または熱伝達油がある。任意選択的に、LPMは、積層構造物20の面により大きな付着力を与えるために、積層構造物20の表面と化学的に相互作用する媒体とすることができる。積層構造物20の面と化学的に相互作用するLPMの例は、1つまたは複数の化学反応性ガスであってもよい。化学反応性ガスには、空気、酸素、または酸素混合ガスがある。他のLPMは、窒素、アルゴンまたはヘリウムガスなどの不活性ガスのLPMを使用することによって、処理中に環境劣化(酸化など)から積層面を守ることができる。本開示のツール10の開発モデルは、2つのポートすなわち入口圧力開口部14を有し、LPMとして窒素ガスを使用した。
【0026】
この開示では、この開示のキャビティの内部は、積層圧力媒体によって、少なくとも200ポンド/平方インチの圧力に加圧され、少なくとも1000ポンド/平方インチのより高い圧力に加圧されることもある。
【0027】
本開示のツール10は、空気を排気するためだけでなくポリマ膜25から水分を除去するためにも熱と真空を使用するように設計されており、その結果、積層プロセス中に空気が閉じ込められない。図3は、積層物排気および乾燥セグメント中の本開示のツール10を示す。加えられた真空は、約水銀柱28インチであり、この圧力は、ばね13がツール10を開いた状態に保つことができるほど低い。一般に、200°Fを超える温度が、水分除去のために使用される。再び、制御された加熱、真空およびシール圧力を与えるために、VHPが使用されてもよい。
【0028】
本開示のツール10のキャビティ19は、少なくとも600°Fの温度に容易に加熱することができる。キャビティ19は、少なくとも700°F(約371.11℃)または1000°F(約537.78℃)の温度さえ達成することができ、この温度は、特定のポリイミド膜を積層するために必要である可能性がある。
【0029】
図4は、本開示のツール10を示し、ここでは、2つ以上のばねが押し縮められ、対向するシール面12が積層構造物20のまわりのキャビティ19を閉じて互いに押し付けられるように、VHPが対の圧盤11に圧力を加え、ばね13を押し縮めている。VHP30は、積層物の縁部をしっかり結合するように圧盤11に圧力を加える。ツール10の開発モデルでは、LPMとして窒素ガスが使用されたが、上述のどんなLPMが使用されてもよい。真空は一般に約水銀柱28インチであるが、下げることができる。この段階で使用された圧力は、キャビティ19の加圧中に積層構造物の縁部がシールされたままであることを保証するほど高い。このように形成されたキャビティ19は、ポリマ膜25への金属箔23の積層を圧密化するように、外部供給源から供給されるLPMで圧力を加えられる。積層を圧密化するために必要な圧力が、圧密圧力である。圧密圧力および温度は、積層される材料に依存する。
【0030】
このプロセスの積層冷却段階中に、積層構造物20は、収縮アイソレータ27によって、積層物のゆがみを防止しながら金型縁部から分離される。冷却は、VHPによって行われ、冷却速度、圧力分布および真空分布は、積層される材料の特性に依存している。
【0031】
本開示は、積層構造物を形成するように金属箔とポリマとを積層するツールを含み、このツールは、2つ以上の圧盤を有する本体を備え、この2つ以上の圧盤の各々はシール面を有し、2つ以上の圧盤および各圧盤のシール面はキャビティを形成しており、さらに、キャビティを開閉するように2つ以上の圧盤を互いに近づけるように、または互いに遠ざけるように移動させる手段を備え、このキャビティは、積層構造物を形成するように加圧され加熱される内部を有し、さらに、キャビティは、積層構造物から揮発性物質を除去するように排気され加熱される。
【0032】
ツールは、さらに、2つ以上のばねを備える。これらの2つ以上のばねは、この移動させる手段から圧力を受けないときに、圧盤を分離された状態にしておくように、2つ以上の圧盤間に配置される。
【0033】
本明細書で開示されたこの移動させる手段は、真空液圧プレス(VHP)または他の液圧作動機構とすることができる。キャビティを排気する手段は、VHPで使用されることになるものなど機械真空ポンプとすることができる。熱は、一体型の電気または熱伝達流体加熱を使用して加えられてもよい。
【0034】
本開示のツール10は、積層表面に均一に静水圧を加えるために不活性ガスなどのLPMが使用されるという利点を提供し、結果として、ヒータ製作に有用な高品質の積層構造物をもたらす。さらに、ツール10は、ポリイミド膜などのポリマ膜25を使用する積層構造物の製作を可能にする高温(1000°F程度)および高圧(3000psi程度)を容易に達成する。高圧および高温を加えることができる速さのために、積層材料が長時間にわたって600°Fを超える温度に保たれたとき起こることがある薄いポリイミド膜25および金属箔23の劣化が最小限になる。
【0035】
本ツールは、オートクレーブで使用される高価な使い捨てポリマシール、シーラント、または熱可塑性膜を必要とせず、さらに、高価な使い捨てバギングフィルムおよび通気孔用織物またはマットも必要としないので、本開示のツール10は、経済的および環境的な利点を提供する。
【0036】
本開示のツール10の他の利点は、オートクレーブと比較して積層用のキャビティを加圧するために劇的に少ない体積のLPM(窒素ガスなど)を必要とし、また価格および環境的な影響を減少させる。加圧される必要のあるLPMの体積は、開いたキャビティ19を満たすために必要な量だけであり、この量は、オートクレーブを使用するときに比べて遥かに小さな量である。例えば、このツール10の開いたキャビティ19は、厚さ約10ミル(0.25mm)とすることができる。キャビティが閉じたときに、この閉じたキャビティを満たすのに必要なほんの少量のLPM(窒素ガスなど)を加圧することが必要である。それに比べて、オートクレーブ内の開いた空間は3フィート(約0.91m)×10フィート(約3.04m)以上であることがあり、遥かに大きな体積の加圧ガスを必要とする。さらに、ポリマシール、シーラント、熱可塑性膜などのオートクレーブに関連した使い捨て用品の多くは、このツール10を使用することによって無くなる。したがって、本明細書で開示されたようにツール10にとって経済的な利点と環境的な利点の両方がある。
【0037】
本開示のツール10は、多数の部品の同時製作を可能にする設計構成に非常に適している。さらに、ツール10は、熱、圧力および真空の作動および印加を一体化することができる自立型製造セルとしての設計に非常に適しており、このセルは、単一部品の流れ発生機構に容易に組み込まれる。
【0038】
図面に示された実施形態は、一度に1つの積層構造物20を製造するように使用されるツール10を示したが、本ツールは、同時にいくつかの積層構造物を作製するように構成することができる。ツール10のこのような構成は、ポートの付いた他の圧盤を開いたキャビティの中央に配置するなどして、2つ以上のキャビティ19を用いて作製されることになる。代わりに、ツール10は、ただ単に圧盤11を積み重ねて形成されたキャビティ19の中により多くの積層構造物20を配置するだけで、いくつかの積層構造物を一度に作製するように、マルチキャビティツールとして構成することができる。
【0039】
本開示のツール10の代替の実施形態は、対の圧盤の1つの代わりに平板を用いることを含み、結果として、一方の側だけから積層構造物20の面に圧力を加えることになる。別の代替の実施形態では、ツール10は積層構造物20の様々な形状寸法に対応するように形状づけられた開いたキャビティか、または曲げられた開いたキャビティを持つことになる。さらに別の代替の実施形態では、ツール10は、同時に製作することができる積層構造物20の数を増やすように積み重ねられた多数のキャビティを持つことになる。また、金型面自体は、一体的に加熱され、冷却することができる。
【0040】
本開示は、1つまたは複数の例示の実施形態に関連して説明されたが、本開示の範囲から逸脱することなしに様々な変更を加えることができ、さらに本開示の要素の代わりに均等物が用いられる可能性があることを、当業者は理解するであろう。さらに、本開示の範囲から逸脱することなしに特定の状況または材料を本開示の教示に適応させるために、多くの修正を加えることができる。したがって、本開示は、考えられる最良の形態として開示された特定の実施形態に限定されず、本開示は添付の特許請求の範囲に含まれる全ての実施形態を含むものとする。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1A】開いた構成で示された本ツールを示す断面図である。
【図1B】開いた構成で示された本ツールを示す断面図である。
【図2】積層構造物を形成するために使用される積層スタックおよび収縮アイソレータを示す図である。
【図3】積層構造物が内部にある本ツールを示す断面図である。
【図4】積層縁部シールおよび圧密サイクル中の本ツールを示す断面図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
積層構造物を形成するように金属箔およびポリマ膜を積層するツールであって、
2つ以上の圧盤を有する本体であって、該2つ以上の圧盤のそれぞれがシール面を有し、前記2つ以上の圧盤および前記圧盤の各々のシール面がキャビティを形成する、本体と、
前記キャビティを開閉するように、前記2つ以上の圧盤を互いに近づくように、または互いに遠ざけるように移動させる手段と、
を備え、
前記キャビティが、前記積層構造物を形成するように加圧され加熱される内部を有し、
前記キャビティが、前記積層構造物から揮発性物質を除去するように排気され加熱されることを特徴とするツール。
【請求項2】
2つ以上のばねをさらに備えることを特徴とする請求項1に記載のツール。
【請求項3】
前記2つ以上のばねが、前記移動させる手段から圧力を受けないときに、前記圧盤を分離された状態にしておくように、前記2つ以上の圧盤間に配置されることを特徴とする請求項2に記載のツール。
【請求項4】
前記移動させる手段が、真空液圧プレス(VHP)または他の液圧作動機構であることを特徴とする請求項1に記載のツール。
【請求項5】
前記キャビティが、機械真空ポンプによって排気されることを特徴とする請求項1に記載のツール。
【請求項6】
前記キャビティの内部が、積層圧力媒体によって加圧されることを特徴とする請求項1に記載のツール。
【請求項7】
前記キャビティの内部が、前記積層圧力媒体によって、少なくとも200ポンド/平方インチ(約14.06kgf/cm2)の圧力に加圧されることを特徴とする請求項6に記載のツール。
【請求項8】
前記キャビティの内部が、前記積層圧力媒体によって、少なくとも1000ポンド/平方インチ(約70.30kgf/cm2)の圧力に加圧されることを特徴とする請求項6に記載のツール。
【請求項9】
前記積層圧力媒体が、1つまたは複数の不活性ガスであることを特徴とする請求項6に記載のツール。
【請求項10】
前記1つまたは複数の不活性ガスが、窒素、アルゴン、またはヘリウムのガスであることを特徴とする請求項9に記載のツール。
【請求項11】
前記積層圧力媒体が、1つまたは複数の化学反応性ガスであることを特徴とする請求項6に記載のツール。
【請求項12】
前記1つまたは複数の化学反応性ガスが、空気、酸素、または酸素混合ガスであることを特徴とする請求項11に記載のツール。
【請求項13】
前記キャビティの内部が、1つまたは複数の入口ポートを通って流れる前記積層圧力媒体によって加圧されることを特徴とする請求項6に記載のツール。
【請求項14】
前記1つまたは複数の入口ポートが、連続して、または平行して制御されることを特徴とする請求項13に記載のツール。
【請求項15】
前記キャビティの内部が、少なくとも600°F(約315.56℃)の温度に加熱されることを特徴とする請求項1に記載のツール。
【請求項16】
前記キャビティの内部が、少なくとも700°F(約371.11℃)の温度に加熱されることを特徴とする請求項1に記載のツール。
【請求項17】
前記キャビティが、真空液圧プレスまたはオートクレーブによって外部供給圧力および熱を加えることによって加圧され、加熱されることを特徴とする請求項1に記載のツール。
【請求項18】
前記キャビティが、外部供給真空を適用し、一体型の電気または熱伝達流体加熱を使用して加熱することによって、排気され加熱されることを特徴とする請求項1に記載のツール。
【請求項19】
前記2つ以上のシール面の各々が、平らな面であることを特徴とする請求項1に記載のツール。
【請求項20】
前記2つ以上のシール面の各々が、平らでない面であることを特徴とする請求項1に記載のツール。
【請求項21】
請求項1に記載のツールを使用して積層構造物を製造する方法。
【請求項22】
1つまたは複数の収縮アイソレータの使用をさらに含むことを特徴とする請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記金属箔が、チタン、チタン合金、銅、銅合金、ニッケル、ニッケル合金、ステンレス鋼、または他の電気抵抗性金属合金から成る群から選択されることを特徴とする請求項21に記載の方法。
【請求項24】
前記ポリマ膜が、非多孔質熱可塑性ポリマであることを特徴とする請求項21に記載の方法。
【請求項25】
前記ポリマ膜が、ポリイミド膜であることを特徴とする請求項24に記載の方法。

【図1A】
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【図1B】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−162286(P2008−162286A)
【公開日】平成20年7月17日(2008.7.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−338709(P2007−338709)
【出願日】平成19年12月28日(2007.12.28)
【出願人】(590005449)ユナイテッド テクノロジーズ コーポレイション (581)
【氏名又は名称原語表記】UNITED TECHNOLOGIES CORPORATION
【Fターム(参考)】