説明

金属被膜を有するプラスチック成形体とその製造方法およびそれらを用いた物品

【課題】
プラスチック成形体表面に対し、シランカップリング剤によるカップリング処理を行った後、前記プラスチック成形体表面に金属被膜を形成している。
しかしながら、シランカップリング剤の塗布方法を用いると、前記プラスチック成形体基材表面に余分なシランカップリング剤が残り、残った前記シランカップリング剤が前記密着性の向上を邪魔し、適切に前記密着性を向上させることが出来ないという課題があった。

【解決手段】
プラスチック成形体基材と金属被膜間の密着性を向上させたプラスチック成形体ならびに前記プラスチック成形体を用いた物品を提供するために、プラスチック成形体基材の表面に単分子膜を形成する工程と、(b)前記単分子膜上に、金属被膜をメッキ形成する工程を用いて、プラスチック基材の表面が基材表面に共有結合した単分子膜を介して金属被膜で被われているプラスチック成形体を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラスチック成形体基材の表面が基材表面に共有結合した単分子膜を介して金属被膜で被われているプラスチック成形体およびその製造方法と前記プラスチック成形体を用いた物品に関するものである。
なお、ここでいう物品には、各種装飾品や生活雑貨、あるいは乗り物やその部材、建物や建材が含まれる。代表的なものには、自動車のバンパーや建材、交通標識用反射板、各種おもちゃ等、表面が光沢性で且つ耐剥離性が必要な、すなわち耐久性が必要な各種プラスチック製品がある。
【背景技術】
【0002】
従来、プラスチック成形体基材表面に金属被膜を形成した物品は、各種装飾品や生活雑貨、あるいは乗り物や建物、さらに、特殊なミラーや反射板、フィルム等に幅広く利用されている。
ここで問題となるのは、前記樹脂プラスチック成形体基材と前記金属被膜との間の密着性であった。
【0003】
例えば、前記密着性を向上させるため、従来では、前記樹脂プラスチック成形体の表面を酸・アルカリ薬液で処理等して、前記表面に凹凸を形成し、機械的なアンカー効果によって前記密着性を向上させる方法がとられていた。
しかし、かかる方法では、前記樹脂プラスチック成形体の表面が粗らされる結果、光沢が無くなるといった大きな問題があった。
そこで、下記特許文献1には、上記とは異なった方法で前記密着性を向上させる方法が開示されている。
【特許文献1】特開平9−59763号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1では、プラスチック成形体表面に対し、シランカップリング剤によるカップリング処理を行った後、前記プラスチック成形体表面に金属被膜を形成している。
これにより、特許文献1では、プラスチック成形体表面に凹凸を設けることなく、プラスチック成形体と金属被膜との密着性を向上させることが出来るとしている。
【0005】
しかしながら、特許文献1のようにシランカップリング剤の塗布方法を用いると、前記プラスチック成形体基材表面に余分なシランカップリング剤が残り、残った前記シランカップリング剤が前記密着性の向上を邪魔し、適切に前記密着性を向上させることが出来ないといった大きな問題があった。
また、特許文献1では前記プラスチック成形体機材表面に付着する前記シランカップリング剤の厚みの調整を特に行っておらず、このことが前記密着性を向上できない原因の一つであると考えられた。
【0006】
これに対して、本発明は、プラスチック成形体基材と金属被膜間の密着性を向上させたプラスチック成形体およびその製造方法、ならびに前記プラスチック成形体を用いた物品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、少なくとも(a)プラスチック成形体基材の表面に単分子膜を形成する工程と、(b)前記単分子膜上に、金属被膜をメッキ、スパッタ、蒸着、CVDなどを形成する工程を用いて、プラスチック成形体基材の表面が基材表面に共有結合した単分子膜を介して金属被膜で被われているプラスチック成形体を提供することを要旨とする。
【0008】
ここで、 前記単分子膜は、下記の(化1)の化合物を繰り返し単位とし、各化合物が、−SiO−結合を介してプラスチック成形体機材表面に共有結合させておくと、耐剥離性の高い金属被膜を有するプラスチック成形体を提供する上で都合がよい。
【0009】
【化1】

(ただし、Aは、複素環を有する官能基であり、nは、1〜30の整数である。)
【0010】
また、前記官能基Aが、ピロリル基、チエニル基、あるいはフリル基から選択される官能基であると、金属被膜とプラスチック成形体基材表面との耐剥離強度を向上する上で都合がよい。
【0011】
さらに、前記単分子膜と前記金属被膜との間には、前記官能基Aを含有する中間膜が形成されていると、金属被膜とプラスチック成形体基材表面との耐剥離強度をさらに向上する上で都合がよい。
さらにまた、前記単分子膜及び前記中間膜に含まれる官能基Aを結合しておくと、より一層、金属被膜とプラスチック成形体基材表面との耐剥離強度を向上する上で都合がよい。
【0012】
また、前記金属被膜中に前記官能基Aを含む物質が取り込まれていると、金属被膜とプラスチック成形体基材表面との耐剥離強度を向上する上で都合がよい。
また、前記金属被膜が、金、銀、銅、アルミニウム、クロム、錫、鉛、Ta,W,Ti、亜鉛あるいはニッケルのうち少なくともいずれか1種の元素を含んで形成されていると金属被膜とプラスチック成形体基材表面との耐剥離強度を向上する上で都合がよい。
さらに、プラスチック基材が、フィラーを含む合成樹脂、あるいは繊維強化プラスチックで成型されていると耐久性を上げる上で都合がよい。
さらにまた、前記プラスチック成形体を用いた各種物品を製造すれば、耐久性を向できて都合がよい。
【0013】
またこのとき、単分子膜形成のための出発物質に、下記(化2)に示す化合物を用い、プラスチック成形体基材表面との反応により生じるSiO結合を介して前記プラスチック成形体基材表面に共有結合させると、金属被膜の耐剥離強度を向上する上で都合がよい。
【0014】
【化2】

(ただし、Aは、複素環を有する官能基であり、nは、1〜30の整数である。また、X1〜X3は、それぞれハロゲン、もしくは炭素数1〜4のアルコキシ基である。)
【0015】
また、前記(a)のプラスチック成形体基材の表面に単分子膜を形成する工程と前記(b)の単分子膜上に、金属被膜をメッキ形成する工程の間に、さらに(c)前記官能基Aを含む中間膜を前記単分子膜上に形成する工程を入れると、耐剥離強度を向上する上で都合がよい。 さらに、前記(c)工程において、前記官能基Aを有する溶液に前記プラスチック成形体を浸漬させて前記中間膜を形成すると、製造能率を向上する上で都合がよい。
【0016】
さらにまた、前記(a)のプラスチック成形体基材の表面に単分子膜を形成する工程と前記(b)の単分子膜上に、金属被膜をメッキ形成する工程の間に、(d)前記プラスチック成形体を、酸化剤と接触させる工程を入れると、耐剥離強度をさらに向上できて都合がよい。
また、前記酸化剤として、鉄、銅、アルミニウムのうち少なくともいずれか一種を含む塩、あるいはハロゲンガスを用いると、コストが安く且つ効率よく酸化重合できて都合がよい。
【0017】
また、前記(b)の単分子膜上に、金属被膜をメッキ形成する工程において、前記官能基Aを含む物質を混合しながら前記金属被膜をメッキ形成すると、耐剥離強度をさらに向上できて都合がよい。
さらに、前記金属被膜の少なくとも一部を無電解メッキ法にてメッキ形成し、このとき、触媒液中に前記官能基Aを含む物質を混合しながら、あるいはメッキ液中に前記官能基Aを含む物質を混合しながら行うと、耐剥離強度をさらに向上できて都合がよい。
【0018】
また、前記金属被膜を、金、銀、銅、アルミニウム、クロムあるいはニッケルのうち少なくともいずれか1つを含んでメッキ、スパッタ、蒸着、CVDなどを形成すると、プラスチックをメタル調に装飾する上で都合がよい。
さらにここで、前記プラスチック成形体の基材として、無機フィラーを含む合成樹脂、あるいは無機繊維強化プラスチックで成型された部材を用いること、フィラーを介してより強固に結合した単分子膜を形成できるので都合がよい。
【発明の効果】
【0019】
本発明では、従来のように、プラスチック成形体機材表面を粗面化することなく、プラスチック成形体基材と金属被膜間の密着性を従来に比べて格段に向上させることが可能となり、プラスチック成形体基材や金属被膜の材質の選択性を大幅に拡大できる作用がある。したがって、耐久性が必要とされる各種装飾品や乗り物、建物、生活雑貨等のメッキあるいは反射板やフィルム等のメッキに幅広く適用できる効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
本発明は、少なくとも(a)プラスチック成形体基材の表面に単分子膜を形成する工程と、(b)前記単分子膜上に、金属被膜をメッキ形成する工程を用いて、プラスチック基材の表面が基材表面に共有結合した単分子膜を介して金属被膜で被われているプラスチック成形体を製造提供するものである。
前記単分子膜は、前記(化1)の化合物を繰り返し単位としたもので表せるが、本実施の形態では、以下、官能基Aがピロリル基の場合について説明する。
図1は、本実施形態の金属被膜を最表面に有するプラスチック成形体を膜厚方向から切断した断面概念図である。図1に示すプラスチック成形体基材1上には単分子膜2が形成されている。単分子膜2は、下記(化3)に示す化合物が、前記プラスチック成形体基材1の表面に多数並んだものである。前記単分子膜2の出発物質として下記(化4)で示される物質を用いると、炭化水素鎖の末端に活性な反応性基を有することから、自己集合単分子膜(Self-assembled Monolayer SAM)を形成する。
【0021】
【化3】

【0022】
【化4】

【0023】
ここで、単分子膜2は、シロキサン結合(−Si−O−)を介して前記プラスチック成形体基材1の表面に強固に共有結合している。前記プラスチック成形体基材1の表面には予め親水化処理が成され、前記プラスチック成形体基材1の表面のOH基と前記化学式4で示される物質は脱塩酸反応して非常に強く結合する。
【0024】
さらに、前記単分子膜2上にはピロリル基を有する物質よりなる中間膜3が形成されている。ここで、ピロリル基を有する物質よりなる中間膜3と単分子膜のピロリル基は互いに結合している。このことで、前記単分子膜2と前記中間膜3は強固に結合している。
図1に示すように、前記中間層3上にはメッキ還元反応の触媒からなる触媒膜4が設けられ、前記触媒膜4(図1ではPd)の上に金属被膜5がメッキ形成されている。
【0025】
さらに、前記それぞれのピロリル基は金属被膜5との親和力が強いことから、前記金属被膜5を前記単分子膜2上に結合させることができる。なお、前記中間層3を設けなくても、前記単分子膜2のピロリル基のみでも、前記効果を発揮できるが、前記単分子膜2のみでは、やや緻密性に欠ける場合がある。その場合は、ピロリル基と結合しない金属被膜が部分的に形成されて金属膜全体としての結合力に問題を生じる。そこで、ピロリル基を有する中間膜3を設け、結合力を向上させている。これにより、前記プラスチック成形体基材1の表面等に吸着する金属被膜5等の割合を減少させることができ、より効果的にプラスチック成形体基材1と金属被膜5間の密着性を向上させることが可能になる。
【0026】
ここで、ピロリル基を含む物質が、前記触媒膜4中や金属被膜5中に含まれていると、プラスチック成形体基材1と金属被膜5間の密着性をさらに向上できる。
本実施の形態では、従来のように、プラスチック成形体基材1の表面に凹凸加工がなされていないため、光沢性にも優れる。
また、前記プラスチック成形体基材1の材料には、各種無機フィラー含有プラスチックやガラス繊維強化プラスチック(FRP)等が含まれる。また、前記金属被膜は、金、銀、銅、アルミニウム、クロムあるいはニッケルのうち少なくともいずれか1つを含んだ金属被膜に適用できる。
【0027】
以下、本願発明の詳細を実施例を用いて説明するが、本願発明は、これら実施例によって何ら限定されるものではない。
【実施例】
【0028】
(実施例1)
まず、あらかじめ、フィラーとしてガラス繊維が混入されたPPS(ポリフェニレンサルファイド)樹脂を用いて下地となるカーブミラーの基材を成形し、表面を脱脂洗浄した。また、並行して、前記(化4)で示した物質(出発物質)を、クロロホルムとジメチルシリコーンの混合溶媒に0.05mol/lの濃度で溶解し、吸着液を作成した。
【0029】
次ぎに、前記成型したカーブミラーの基材を前記吸着材料液中に、常温で1時間、浸漬した(単分子膜の形成工程)。その後、前記基材を吸着材料液から取り出し、クロロホルムとアセトンで洗浄して未反応の出発物質を除去し、その後、水洗・乾燥した。
【0030】
次に、前記基材をアセトニトリル溶媒にピロールを0.2mol/lの濃度で溶解したピロール液に常温で5分間、浸漬し、その後、前記基材を水洗・乾燥した(中間膜の形成工程)。
続いて、前記基材を、塩化第二鉄を0.02mol/l含む水溶液に常温で5分間、浸漬し、その後、前記基材を、水洗・乾燥した(ピロリル基どうしの重合工程)。
【0031】
次に、前記基材を、Pd−Snコロイドを含む酸性水溶液に、50℃で5分間、浸漬して、コロイドをプラスチック成形体表面に吸着させ、ホウフッ化水素酸水溶液に常温で7分浸漬することで、吸着したコロイドからSnを除去し、Pdを前記基材表面に露出させた(触媒膜の形成工程)。
続いて、前記基材を、硫酸銅、酒石酸ナトリウムカリウム、水酸化ナトリウム、ホルマリンを主成分とする無電解メッキ液に15分浸漬し、これにより前記基材の表面に0.3μmの膜厚の銅膜を形成した。
【0032】
さらに、前記基材を、硫酸銅を主体とする電気メッキ液中で200A/mの電流密度で1時間メッキし、銅膜をトータルで約30μmに成長させた(金属被膜の形成工程)。最後に、最表面にクロムを数ミクロンの厚みで電気メッキすると、基材がFRPで、耐久性の高いカーブミラーを製造できた。
【0033】
(実施例2)
上記実施例1の各工程のうち、基材を塩化第二鉄の水溶液に浸漬する工程だけを除いた。
【0034】
(実施例3)
上記実施例1の各工程のうち、基材をピロール液に浸漬する工程、基材を塩化第二鉄の水溶液に浸漬する工程を除いた。その代わり、Pd−Snコロイドを含む酸性水溶液に浸漬する工程において、前記水溶液にピロールを0.2mol/lの濃度で添加した。
【0035】
(実施例4)
上記実施例1の各工程のうち、基材をピロール液に浸漬する工程だけを除いた。
【0036】
(比較例1)
実施例1の各工程のうち、基材を吸着材料液中に浸漬する工程から基材を塩化第二鉄の水溶液に浸漬する工程までを除き、すなわち重合した単分子膜を形成することなく、前記基材を直接、Pd−Snコロイドを含む酸性水溶液に浸漬し、さらに実施例1と同様に、銅膜をメッキ形成した。
【0037】
上記した実施例1〜4および比較例1の各試料に対し、JIS−H8630に定める90度引き剥がし法にて、基材と銅膜(金属被膜)間の密着力の評価を行った。
その結果、実施例1では、0.6N/mm、実施例2では、0.5N/mm、実施例3では、0.5N/mm、実施例4では、0.3N/mmの密着強度が得られた。
【0038】
一方、比較例1では、基材上に銅膜をメッキ形成できたものの、密着強度を測定できないほど、弱かった。
【0039】
また、実施例1〜実施例3のように、プラスチック成形体基材(カーブミラー)をピロール溶液に浸漬する、あるいはメッキ液等にピロールを添加することにより、前記密着強度を向上させ得ることが明らかになった。特に実施例1では、酸化剤を用いてピロリル基を重合しており、このことにより、密着強度をより向上できた。
【産業上の利用可能性】
【0040】
なお、本発明のプラスチック成形体基材表面への金属被膜形成は、各種装飾品や生活雑貨のメッキ、乗り物の部材や建物の部材(建材)のメッキ、あるいは反射板やフィルム等のメッキに幅広く利用可能である。
【0041】
例えば、装飾品の例として、各種樹脂成型物表面にアルミニウムや銀を蒸着した鏡や、クロムやニッケルを蒸着したメタル調の各種家具がある。
また、乗り物の部品に適用する例として、(1) ABS樹脂:ランプカバー、インストルメントパネル、内装部品、オートバイのプロテクター、(2) セルロースプラスチック:自動車のマーク、ハンドル(3) FRP(繊維強化樹脂):外板バンパー、エンジンカバー、(4)フェノール樹脂:ブレーキ(5) ポリアセタール:ワイパーギヤ、ガスバルブ、キャブレター部品(6) ポリアミド:ラジエータファン(7) ポリアリレート:方向指示レンズ、計器板レンズ、リレーハウジング(8) ポリブチレンテレフタレート:リヤエンド、フロントフェンダ(9) ポリアミノビスマレイミド:エンジン部品、ギヤボックス、ホイール、サスペンジョンドライブシステム(10)メタクリル樹脂:ランプカバーレンズ、計器板とカバー、センターマーク()ポリプロピレン:バンパー(12)ポリフェニレンオキシド:ラジエーターグリル、ホイールキャップ(13)ポリウレタン:バンパー、フェンダー、インストルメントパネル、ファン(14)不飽和ポリエステル樹脂:ボディ、燃料タンク、ヒーターハウジング、計器板がある。
【0042】
さらに、建物の例として、屋根材、外壁材、内装材などがある。さらにまた、道路標識の例として、コーナーミラーや各種反射板反射フィルムがある。
その他、看板や店頭の飾り、鞄、帽子、衣類における応用も可能である。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本実施形態の金属被膜を有するプラスチック成形体を膜厚方向から切断した断面概念図、
【符号の説明】
【0044】
1 プラスチック成形体基材
2 単分子膜
3 中間膜
4 触媒膜
5 金属被膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラスチック成形体基材の表面が基材表面に共有結合した単分子膜を介して金属被膜で被われていることを特徴とするプラスチック成形体。
【請求項2】
前記単分子膜は、下記(化1)で示す化合物を繰り返し単位とし、各化合物が、−SiO−結合を介してプラスチック成形体基材表面に共有結合していることを特徴とする請求項1記載の金属被膜を有するプラスチック成形体。
【化1】

(ただし、Aは、複素環を有する官能基であり、nは、1〜30の整数である。)
【請求項3】
前記官能基Aは、ピロリル基、チエニル基、あるいはフリル基から選択されることを特徴とする請求項2記載の金属被膜を有するプラスチック成形体。
【請求項4】
前記単分子膜と前記金属被膜との間には、前記官能基Aを含有する中間膜が形成されていることを特徴とする請求項2または3に記載の金属被膜を有するプラスチック成形体。
【請求項5】
前記単分子膜及び前記中間膜に含まれる官能基Aが結合していることを特徴とする請求項4記載の金属被膜を有するプラスチック成形体。
【請求項6】
前記金属被膜中に前記官能基Aを含む物質が取り込まれていることを特徴とする請求項2乃至5のいずれかに記載の金属被膜を有するプラスチック成形体。
【請求項7】
前記金属被膜が、金、銀、銅、アルミニウム、クロム、錫、鉛、Ta,W,Tiあるいはニッケルのうち少なくともいずれか1種の元素を含んで形成されていることを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載の金属被膜を有するプラスチック成形体。
【請求項8】
プラスチック基材が、フィラーを含む合成樹脂、あるいは繊維強化プラスチックで成型されることを特徴とする請求項1乃至7のいずれかに記載の金属被膜を有するプラスチック成形体。
【請求項9】
請求項1乃至8のいずれかに記載された前記プラスチック成形体が用いられていることを特徴とする物品。
【請求項10】
(a) プラスチック成形体の表面に単分子膜を形成する工程と、
(b) 前記単分子膜上に、金属被膜を形成する工程を
含むことを特徴とする金属被膜を有するプラスチック成形体の製造方法。
【請求項11】
単分子膜形成のための出発物質に、下記の化学式2に示す化合物を含み、複数の前記化合物を脱離反応によってSiO結合を介して前記プラスチック成形体に共有結合させることを特徴とする請求項10記載の金属被膜を有するプラスチック成形体の製造方法。
【化2】

(ただし、Aは、複素環を有する官能基であり、nは、1〜30の整数である。また、X1〜X3は、それぞれハロゲン、もしくは炭素数1〜4のアルコキシ基である。)
【請求項12】
前記官能基Aを、ピロリル基、チエニル基、あるいはフリル基から選択することを特徴とする請求項11記載の金属被膜を有するプラスチック成形体の製造方法。
【請求項13】
前記(a)工程と前記(b)工程の間に、さらに
(c) 前記官能基Aを含む中間膜を前記単分子膜上に形成する工程
を含み、前記(b)工程で、前記中間膜上に前記金属被膜を形成することを特徴とする請求項10乃至12のいずれかに記載の金属被膜を有するプラスチック成形体の製造方法。
【請求項14】
前記(c)工程に於いて、前記官能基Aを有する溶液に前記プラスチック成形体を浸漬させて前記中間膜を形成することを特徴とする請求項13記載の金属被膜を有するプラスチック成形体の製造方法。
【請求項15】
前記(c)工程と前記(b)工程の間に、さらに
(d) 前記プラスチック成形体を酸化剤と接触させる工程
を含むことを特徴とする請求項13または14に記載の金属被膜を有するプラスチック成形体の製造方法。
【請求項16】
前記酸化剤として、鉄、銅、アルミニウムのうち少なくともいずれか一種を含む塩、あるいはハロゲンガスを用いることを特徴とする請求項15記載の金属被膜を有するプラスチック成形体の製造方法。
【請求項17】
前記(b)工程に於いて、前記官能基Aを含む物質と同時に前記金属被膜をメッキ形成することを特徴とする請求項10乃至16のいずれかに記載の金属被膜を有するプラスチック成形体の製造方法。
【請求項18】
前記金属被膜の少なくとも一部を無電解メッキ法にてメッキ形成し、このとき、触媒液中に前記官能基Aを含む物質を含め、あるいはメッキ液中に前記官能基Aを含む物質を含めることを特徴とする請求項17記載の金属被膜を有するプラスチック成形体の製造方法。
【請求項19】
前記金属被膜を、金、銀、銅、アルミニウム、錫、鉛、Ta,W,Tiあるいはニッケルのうち少なくともいずれか1つを含んでメッキ形成することを特徴とする請求項10乃至18のいずれかに記載の金属被膜を有するプラスチック成形体の製造方法。
【請求項20】
前記プラスチック成形体の基材として、フィラーを含む合成樹脂、あるいは繊維強化プラスチックで成型された部材を用いることを特徴とする請求項10乃至19のいずれかに記載の金属被膜を有するプラスチック成形体の製造方法。

【図1】
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【公開番号】特開2007−76076(P2007−76076A)
【公開日】平成19年3月29日(2007.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−264716(P2005−264716)
【出願日】平成17年9月13日(2005.9.13)
【出願人】(304028346)国立大学法人 香川大学 (285)
【Fターム(参考)】