説明

針状体の製造方法並びに針状体および針状体保持シート

【課題】患部に直接薬剤を打ち込む治療を行うための生体内適合性針状体を再現性良く高精度に製造する方法を提供する。
【解決手段】
複数のエッチング工程によって形成したマスターモールドを反転転写して形成したマスターモールドの針状体の形状を反転転写した微細孔21aを備えた針状体成型用モールド21に溶融した生体内適合性材料を充填する。生体内適合性材料が固化した後、針状体成型用モールド21取り外すことによって、先端に向かって細径化したテーパ状をなす先端部と該先端部に連なる長手方向にわたって同一径、あるいは径が小さくなる支柱部を有する生体溶解性針状体22bを製造する。
マスターモールドのエッチングにおいて、ボッシュプロセスによって任意の微細形状の支柱部を形成し、酸化シリコン膜の形成の除去を繰り返しによって、先端部の鋭角化を行うことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薬剤の経皮投与を容易にする針状体の製造方法並びに針状体および針状体保持シートに関する。さらに詳しくは、生体内適合性材料の針状体の製造方法ならびに針状体および針状体保持シートに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、医薬物の過剰投与および副作用を抑制し、より安全に、効果的に医薬物を投与する方法として、ミクロンオーダーの針状体(マイクロニードル)を、直接患部へ注入・滞留させ治療を行う方法が考案されている。この方法は、薬剤を直接患部へ注入・滞留させるため投薬効率が良く、副作用の影響が少ないことに特徴がある。
このような治療方法に使用される針状体は、その先端部を皮膚を穿孔して使用される。そのため、針状体は、皮膚を穿孔するために先端を鋭くする必要があり、皮膚の下に薬剤を供給するために十分な長さ(通常100μm以上)を必要とする。
【0003】
このような針状体としては、シリコン製の針状体があり、その先端部に薬剤を塗布した後に皮膚を穿孔して使用される。例えば、特許文献1記載のシリコン製の針状体は、シリコンウェハの単結晶材料の結晶面方位ごとのエッチングレート差を利用した異方性ウェットエッチングと、結晶面方位に依存しない等方性エッチングとを組み合わせた方法により、マイクロニードルの先端の先鋭化を実現している。
【0004】
シリコン製の針状体は、高硬度であり皮膚に対する穿孔性が高いという利点があるが、皮膚を穿孔したのちに先端部が破損すると、体内に残留するという問題がある。
これに対し、特許文献2には、針状体の材料として、仮に破損した針状体が体内に残留した場合でも、人体に悪影響を及ぼさない生分解材料を使用することが開示されている。
また、生分解材料を使用した針状体の他の製造方法として、所望の形状のマイクロニードル型パッチを反転転写(凹凸を反転して転写)させたレプリカモールド(鋳型)を使用する方法がある。例えば、特許文献3には、シリコンの結晶性を利用した異方性エッチングによりシリコンのマスターモールドを作製し、金属メッキによりマスターモールドを型取りしたレプリカモールドを製造し、該レプリカモールドに対し生体内溶解性材料の埋込み・離型により微細針の作製する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−79499号公報
【特許文献2】特開2005−154321号公報
【特許文献3】国際公開2002/64193号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、生体内溶解性の材料を使用した針状体は、シリコン製の針状体と比べて硬度が低いため皮膚に対する穿孔性が十分でないことが多い。そのため、穿孔性を高めるために、針状体の先端をより鋭くする必要がある。しかしながら、特許文献2や特許文献3で開示された従来の方法では、針状体の先端を十分に鋭くすることができず、サブミリオーダーの針状体の薬剤を製造することができなかった。
【0007】
また、特許文献3の転写形成法では、金属メッキでレプリカモールドを作製するため、マスターモールドであるシリコン針状体を溶かす必要があり、製造工程が非常に複雑なうえ高コストであることから大量生産することが困難である。また、この方法では製造した針状(弾丸状)の薬剤の先端径が10ミクロン程度と大きくなり、さらにこれらの薬剤の支柱部に行くに従い拡がっている構造になるため、薬剤の経皮投与に高い刺針圧力が必要なだけでなく、必要以上に経皮を損傷する恐れがある。
【0008】
かかる状況下、本発明の目的は、皮膚に対する高い穿孔性を有し、先端角およびその高さを容易に制御可能とし、高い精度で一体成型することの出来る針状体の製造方法及び針状体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、繰り返し使用可能なマスターモールドおよびマスターモールドの形状を反転転写して繰り返し使用できるレプリカモールドを作製し、このレプリカモールドを用いて生体内適合性を有する針状体、針状体保持シートを効率的に形成出来ることを見出した。
そして、マスターモールドの針状体の形状を複数の異なるエッチングによって最適な形状を得ることができることを見出し、本発明を完成した。
【0010】
すなわち、本発明は、以下の発明に係るものである。
<1> 下記工程を有する生体内適合性針状体の製造方法。
(1)シリコンウェハの所定の位置にエッチングマスクを形成し、前記マスクを設けた状態で、プラズマエッチングと、プラズマデポジションによる保護膜形成とを交互に繰り返し行うボッシュプロセスによって、先端に向かって細径化したテーパ状をなす先端部と、長手方向にわたって同一径、あるいは径が小さくなる該先端部に連なる支柱部を有するシリコン製針状体とを形成する第1のエッチング工程と、
前記マスクを除去し、前記先端部をエッチング液および/または反応性ラジカルによってエッチングし、さらに熱酸化による酸化シリコン膜の形成と、フッ酸水溶液による酸化シリコン膜の除去を繰り返し行うことによって、針状体を形成する第2のエッチング工程と、を含むシリコン基端部に設けられた複数のシリコン製針状体からなるマスターモールドを製造する工程
(2)前記マスターモールドを鋳型とし、前記マスターモールドの針状体の形状を反転転写した微細孔を備えた、可撓性を有する樹脂からなる針状体成型用モールドを形成する工程
(3)前記針状体の成型用モールドに、生体内適合性材料を充填し、該材料を前記微細孔の形状に成形したのちに離型する工程
<2> 先端部の直径が、3μm以下である前記<1>記載の針状体の製造方法。
<3> 工程(1)において、前記針状体における支柱部が、長手方向にわたって径が小さくなる支柱部である前記<1>または<2>に記載の生体内適合性針状体の製造方法。
<4> 工程(1)において、前記針状体における支柱部が、1または2以上のくびれをもつ前記<1>から<3>のいずれかに記載の生体内適合性針状体の製造方法。
<5> 工程(2)において、前記可撓性を有する樹脂が、ポリジメチルシランである前記<1>から<4>のいずれかに記載の生体内適合性針状体の製造方法。
<6> 工程(3)において、超音波を照射する前記<1>から<5>のいずれかに記載の生体内適合性針状体の製造方法。
<7> 工程(3)において、前記材料を減圧下で溶融し、前記針状体成型用モールドに充填する前記<1>から<6>のいずれかに記載の生体内適合性針状体の製造方法。
<8> 工程(3)において、減圧と加圧を繰り返して、生体内適合性材料を前記針状体成型用モールドに充填する前記<7>記載の生体内適合性針状体の製造方法。
<9> 工程(3)において、前記生体内適合性材料側から加熱し溶融をおこない針状体成形用モールドに充填する前記<1>から<8>のいずれかに記載の生体内適合性針状体の製造方法。
<10> 前記<1>から<9>のいずれかに記載の方法で製造された生体内適合性針状体。
<11> 薬剤成分と生体内溶解性高分子からなる前記<10>記載の生体内適合性針状体。
<12> シート状の支持体の少なくとも一方の面に前記<10>または<11>記載の針状体が1または2個以上保持されてなる生体内適合性針状体保持シート。
【発明の効果】
【0011】
本発明の製造方法によると、皮膚に対する高い穿孔性を有する、サブミリオーダーの生体内適合性針状体を、高精度に再現性よく作製することができる。また、本発明の製造方法によると、長さ、太さ、形状、混入薬剤を自由に選択可能な針状体を得ることができるため、該針状体を多種多様な疾病治療に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】工程(1)における、マスターモールドの針状体の製造工程を説明するための模式図(断面図)である。
【図2】工程(1)で形成した、マスターモールドの例(断面図)である。
【図3】工程(2)における、針状体形成用モールドの製造工程を説明するための模式図(断面図)である。
【図4】針状体製造装置の模式図(断面図)である。
【図5】工程(3)における、針状体の製造工程を説明するための模式図(断面図)であり、(a−1)及び(a−2)は埋込前工程、(b)は埋込固化工程、(c)は剥離工程である。
【図6】工程(3)で形成した、生体内適合性針状体(シート状)の斜視図である。
【図7】形状の異なる生体内適合性針状体の例(断面図)である。
【図8】実施例における、マスターモールドの写真(1本の拡大写真)である。
【図9】実施例における、マスターモールドの先端部の拡大写真である。
【図10】実施例における、針状薬剤形成用モールドの写真で(1本の拡大写真)ある。
【図11】実施例における、生体適合性針状薬剤アレイの写真である。
【図12】実施例における、生体適合性針状薬剤の写真(1本の拡大写真)である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明につき詳細に説明する。
本発明は、下記工程を有すること生体内適合性針状体の製造方法(以下、「本発明の製造方法」と称す。)に係るものである。
(1)シリコンウェハの所定の位置にエッチングマスクを形成し、前記マスクを設けた状態で、プラズマエッチングと、プラズマデポジションによる保護膜形成とを交互に繰り返し行うボッシュプロセスによって、先端に向かって細径化したテーパ状をなす先端部と、長手方向にわたって同一径、あるいは径が小さくなる該先端部に連なる支柱部を有するシリコン製針状体とを形成する第1のエッチング工程と、
前記マスクを除去し、前記先端部をエッチング液および/または反応性ラジカルによってエッチングし、さらに熱酸化による酸化シリコン膜の形成と、フッ酸水溶液による酸化シリコン膜の除去を繰り返し行うことによって、針状体を形成する第2のエッチング工程と、
を含むシリコン基端部に設けられた複数のシリコン製針状体からなるマスターモールドを製造する工程
(2)前記マスターモールドを鋳型とし、前記マスターモールドの針状体の形状を反転転写した微細孔を備えた、可撓性を有する樹脂からなる生体内適合性針状体成型用モールドを形成する工程
(3)前記針状体成型用モールドに、生体内適合性材料を充填し、該材料を前記微細孔の形状に成形したのちに離型する工程
【0014】
上記工程(1)から(3)のそれぞれの工程について図面を参照して詳細に説明する。
【0015】
図1(a)〜(e)は、工程(1)における、マスターモールドの針状体の製造工程を説明するための模式図(断面図)である。
この工程では、シリコンウェハを所定のステップでエッチングすることによりシリコン基端部に設けられた複数のシリコン製針状体からなるマスターモールドを形成する。なお、最終品である生体内適合性針状体は、工程(1)で作製するマスターモールドの針状体の形状が転写される。
また、本発明の製造方法において、工程(1)で形成されたシリコン製のマスターモールドは工程(2)における鋳型として使用され、破損しない限り再利用が可能である。
以下、工程(1)における第1のエッチング工程及び第2のエッチング工程を説明する。
【0016】
(i)第1のエッチング工程
第1のエッチング工程では、シリコンウェハにおける、前記シリコン製針状体を形成する所定の位置にエッチングマスクを形成し、前記マスクを設けた状態で、プラズマエッチング(反応性ラジカルエッチングともいう)と、プラズマデポジションによる保護膜形成とを交互に繰り返し行うボッシュプロセスによって、先端に向かって細径化したテーパ状をなす先端部と、該先端部に連なる長手方向にわたって同一径、あるいは径が小さくなる支柱部を有するシリコン製針状体とを形成する工程である。
ここで、「ボッシュプロセス」とは、例えば、米国特許第5501893号明細書等で開示されているように、誘導結合型プラズマによる反応性イオンエッチング装置(以下、「ICP−RIE装置」と称す。)を用い、SF6などのエッチングガスを用いたプラズマエッチングの工程と、C48などの保護膜形成ガスを用いてフルオロカーボン系ポリマーを保護膜として堆積させるプラズマデポジションの工程とを交互に繰り返すことで、シリコンの高速異方性エッチングを可能としたプロセスである。
【0017】
工程(1)では、図1(a)に示されるように、シリコンウェハ1の所定の箇所に対応するようにマスク2が設けられる。なお、後述するようにこのマスク2の下部にシリコン製針状体が形成される。
【0018】
基板となるシリコンウェハとしては、単結晶シリコン、多結晶シリコン、非晶質シリコンのいずれも使用することができるが、シリコン製針状体の形状の再現性が高く、特に先端部を鋭角化することができる単結晶シリコンが好適に使用される。
【0019】
マスク2は、第1のエッチング工程において、エッチングされないものであれば特に限定されず、フォトレジストなどの有機薄膜、酸化シリコン薄膜、窒化シリコン薄膜および各種金属薄膜およびこれら薄膜の積層膜が用いられる。
特に形成される針状体の太さおよび密度に応じたパターニングを施し、微細針となるシリコンの加工を行う高精度なマスクが形成できることから、フォトリソグラフィー法によりマスクパターンを形成することが好ましい。
【0020】
マスクの形状は特に限定されないが、マスクの形状は、その下部に形成される針状体の断面形状に影響するため、円形が好適であり、形成される針状体が十分な機械的強度を有すための好適な直径は、50〜300μmである。また、マスク2の密度は、シリコン製針状体の密度になり、好適には、0.5〜50個/5mm2である。
【0021】
次いで、図1(b)に示すように、上述のマスク2を設けた状態で、プラズマエッチング(反応性ラジカルエッチング)によって、シリコンウェハ1に対して等方性エッチングを施すことにより、針形状の先端部3を形成させる。なお、プラズマエッチング(反応性ラジカルエッチング)は、高速でシリコンのエッチングが可能という特徴があるため、本工程に適している。
【0022】
第1のエッチング工程において、ガス種、反応容器圧力、ガス分解のためのエネルギー、基板バイアスを高速に制御することによって、マスターモールドの針状突起部における先端部に連なる支柱部の形状を任意の形状とすることができる
シリコンウェハ1のエッチングガスとしては、SF6、CF4などが挙げられ、SF6が好適に用いられる。装置内に導入する反応ガスの流量は、100〜1000sccm程度、プラズマ圧力(上記エッチングガスのチャンバー内圧力)は、3.0〜200Pa程度、プラズマ出力は、500〜1000W程度である。また、プラズマ処理の温度条件は、任意に設定可能であるが、通常、10〜40℃である。
上記のエッチング条件で、シリコンウェハ1の表面から、例えば、深さ10〜50μm、幅5〜50μm程度に亘って等方性エッチングを行い、先端部にある程度の針形状を形成させることができる。
【0023】
次いで、図1(c)に示されるように、側壁保護膜形成ガスを用いてプラズマデポジションによって、エッチングされた部分の側壁(内壁)面に保護膜3bを堆積させる。側壁保護膜形成ガスとしては、C48などが挙げられ、これらの側壁保護膜形成ガスを堆積させることでフルオロカーボン系ポリマーからなる保護膜3bが形成される。装置内に導入する反応ガスの流量は、50〜500sccm程度、プラズマ圧力(上記保護膜形成ガスのチャンバー内圧力)は、3.0〜200Pa程度、プラズマ出力は、500〜1000W程度である。また、プラズマ処理の温度条件は、任意に設定可能であるが、通常、10〜40℃である。
上記の保護膜形成条件で、シリコンウェハ1の表面から例えば厚み10〜50nmの保護膜3bを形成させることができる。
【0024】
上記のプラズマエッチングと、プラズマデポジションを交互に繰り返すことにより、図1(d)に示されるように例えば、支柱部4の高さ100〜600μm程度の所定形状の針状体が形成される。
【0025】
ここで、本発明の方法の特徴の一つは、上述のガス種及びその圧力、反応容器圧力、ガス分解のためのエネルギー、基板バイアスなどのプラズマエッチングおよびプラズマデポジション条件を制御することによって、支柱部4の形状を任意の形状とすることができることにある。特にプラズマエッチングおよびプラズマデポジションの時間を変化させることが好適であり、例えば、支柱部4が、長手方向にわたって同一径となるようにするには、プラズマエッチングおよびプラズマデポジションを1〜3秒以内で行いこれらを交互に繰り返すという条件で行えばよい。
【0026】
(ii)第2のエッチング工程
第2のエッチング工程は、さらにエッチングマスクを除去した後に、前記先端部をエッチング液および/または反応性ラジカルによってエッチングする工程と、次いで熱酸化による酸化シリコン膜の形成と、フッ酸水溶液による酸化シリコン膜の除去を繰り返し行う工程に大別される。
【0027】
第1のエッチング工程によって形成されたシリコン製針状体の先端部は、図1(d)に示すように、エッチングマスクで覆われているため完全に鋭角性が高くない。そこで、第2のエッチング工程によって、第1のエッチング工程によって形成されたシリコン製針状体の先端部をさらに鋭角にする。
【0028】
エッチングマスクを除去する方法としては、形成されたシリコン製針状体が破損されないように液中で行われる。エッチングマスクの除去液として、H2SO4/H22/H2Oが好適な一例として挙げられ、その混合体積比は、3〜9:3:1程度である。
【0029】
マスクを除去したのちにシリコン製針状体の先端部を、エッチング液および/または反応性ラジカルによって等方性エッチングを行う。
【0030】
エッチング液としては、酸やアルカリのエッチング液が挙げられ、フッ酸と硝酸の混合液を好適なエッチング液として例示することができる。溶液組成は、フッ酸:硝酸=1:100〜1:1程度が好適である。溶液組成にもよるがエッチング液によるエッチングに好適な温度及び時間は、通常、それぞれ10〜20℃、1〜10分である。また、処理後は純水によるリンスを行なうことが好ましい。
【0031】
反応性ラジカルによるエッチングは、上記ICP−RIE装置を使用した第1のエッチング工程と同様の条件で行うことができる。
具体的な条件としては、SF6ガス流量:600sccm、圧力:100Pa、プラズマパワー:600W、エッチング時間:1分を例示することができる。
【0032】
次に、上記エッチング液および/または反応性ラジカルによって等方性エッチングによって、鋭角化した針状体先端部に対し、熱酸化による酸化シリコン膜の形成と、フッ酸水溶液による酸化シリコン膜の除去を繰り返し行うことにより、該先端部がさらに鋭角化する。
【0033】
酸化シリコンの形成方法は、特に限定されないが、好適には水蒸気を用いたいわゆるウェット酸化によって行い、その場合の酸化シリコンを形成する際の温度は、900〜1100℃程度である。酸化シリコンの除去は、フッ酸水溶液に針状体先端を浸漬することにより行われ、反応温度および時間はそれぞれ、10〜20℃、5〜20分が好適である。
これらの工程を1〜10回程度繰り返すことにより、その先端部の直径が、3μm以下(好適には1μm以下)である鋭角な先端を有する針状体を得ることができる。なお、先端部の直径は、先端部のSEM写真から判断することができる。
このような先端部の直径を有するマスターモールドを使用することにより、最終品として、穿孔性が特に優れた生体内適合性針状体を得ることができる。マスターモールドにおける先端部の直径が、3μmを超える場合には、最終品となる針状体の穿孔性が不十分となる場合がある。なお、先端部の直径の下限値は、特に制限はなく、ボッシュプロセスにより直径数nm程度まで作製可能であるが、機械的強度などを考慮して通常、10nm以上である。
【0034】
この工程(1)に形成された異なる形成したマスターモールドの例を図2(a)〜(d)に示す。なお、これらのマスターモールドは、第1のエッチング工程におけるプラズマエッチングおよびプラズマデポジション条件を適当にすることによって、支柱部の形状を変化させたものである。
【0035】
図2(a)は、マスターモールドにおいて、先端部13Aに連なる支柱部14Aが長手方向に同一径である例である。
図2(b)は、先端部13Bに連なる支柱部14Bが長手方向にわたって(基端部15Bに向かうにつれて)径が小さくなる例である。
図2(b)のように支柱部14Bが、長手方向にわたって径が小さくなるようにするには、上記のプラズマエッチング、プラズマデポジションの条件においてプラズマエッチング時間のみを3秒以上行うという条件で行えばよい。
詳しくは後述するが、このような形状を転写した最終品の生体内適合性針状体は基端部近傍で折損しやすいため、生体内適合性材料として、生体内分解性や生体内溶解性の材料とすることでドラッグデリバリー型薬剤として好適に使用できる。このような用途で用いる場合には、支柱部14Bの最大直径(先端部13Bと支柱部14Bとの接合部分)が50〜300μmであることが好ましい。また、支柱部の最小直径(支柱部14Bと支柱部15Bとの接合部分)は、最大直径D2の90%以下(好適には、80%以下)であることが好ましい。
【0036】
また、図2(c),(d)は、図2(a)の変形例であり、前記先端部に連なる支柱部が、1または2以上のくびれをもつ例である。
このようなマスターモールドを使用することで、後述する同形状くびれを有する生体内適合性材料からなる針状体を得ることができる。該針状体は、くびれから容易に折損することができ、折損した生体内適合性材料からなる針状体を効果的に患部に止まらせることができるという利点がある。
このような形状のマスターモールド形成するための具体的条件は、図2(c)の場合、まず、図2(a)と同様にプラズマエッチングおよびプラズマデポジションを1〜3秒以内で行いこれらを交互に繰り返しおこなう。所定の位置までエッチングが進んだときプラズマエッチングの時間を20〜50秒と長く行うことでくびれ部分が作製される。その後は、元のエッチング条件に戻すことで作製できる。図2(d)の場合は、図2(a)と同様にプラズマエッチングおよびプラズマデポジションを交互に繰り返しおこなうが、その際プラズマエッチング時間を5〜20秒と長くすることで凹凸の激しい針が作製できる。
【0037】
次に工程(2)について説明する。
工程(2)は、工程(1)で形成したマスターモールドを鋳型とし、前記マスターモールドの針状体の形状を反転転写した微細孔を備えた、可撓性を有する樹脂からなる針状体成型用モールドを形成する工程である。工程(2)において、工程(1)で得られた高精度なマスターモールドを使用することによって、このマスターモールドを反転転写して形成される針状体成型用モールドの高精度化が実現される。
【0038】
可撓性を有する樹脂は、マスターモールドからの離型性がよく、適度な機械的強度を有するものであればよく特に制限されない。具体的には、シリコン樹脂を挙げることができ、特にポリジメチルシラン(PDMS)あるいはPDMSを主成分とするシリコン樹脂は、上記図2(c)、(d)などの様に側面に溝構造があるマスターモールドでも取り外しが可能なため好適である。
【0039】
可撓性を有する樹脂を形成する方法としては、マスターモールドに熱硬化性樹脂を流し込んだのちに適当な温度に加熱した後にマスターモールドを離型する方法や、図3に示すように溶融した樹脂にマスターモールドを溶融した樹脂に埋め込んだのちに冷却してマスターモールドを離型する方法が挙げられる。
【0040】
工程(3)は、工程(2)で作製した針状体成型用モールドに、生体内適合性材料を埋め込み、該材料を前記微細孔の形状に成形したのちに離型する工程である。
本工程では、上記針状体成型用モールドを反転転写、すなわち、上記マスターモールドを転写した針状体を形成することができる。
【0041】
生体内適合性針状体とは、生体に適合性がある材料で作製された針を指し、目的となる薬剤成分を生体内適合性材料に付与した場合も含む概念である。なお、本発明において「生体内適合性材料」とは、長期間にわたって生体に悪影響も強い刺激も与えず、本来の機能を果たしながら生体と共存できる材料であればよく、生体内溶解性を有する材料のみならず、生体内溶解性を有さない材料も含む。
薬剤成分を生体内適合性材料に付与する方法としては、例えば、(1)生体内適合性材料と薬剤成分を混練して針を成形する方法、(2)生体内適合性材料の針に薬剤成分をコーティングする方法などが挙げられる。また、生体内で溶解しない生体適合性のある材料で作製された針状体で皮膚を穿刺後に針状体又は針状体保持シートを除去し、別途、薬剤成分を投与する(例えば、薬剤含有貼付剤を貼付する)方法によれば、生体適合性材料の針に薬剤成分を付与することは必ずしも必要ではない。
【0042】
薬剤成分としては、生体内適合性材料に対する付与性を有する薬剤であればよく、経皮吸収剤では皮膚を透過しにくい分子量500以上の薬物や、水溶性の薬物や、経皮吸収剤によって皮膚刺激を示す薬物などを例示することができる。これらは1種または2種以上を組み合わせて使用してもよい。なお、この中でも、医療従事者でなくとも患者自身での投与が可能であるという観点から、現在、注射剤として投与されているワクチン、抗がん剤、抗体医薬などが本発明の針状体の薬剤成分として好適に使用できる。
【0043】
生体内適合性材料として具体的には、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、乳酸−グリコール酸共重合体、ポリカプロラクトン、ポリカーボネート、ナイロン、ポリビニルアルコール、シリコーン、ポリエステル、ポリウレタン、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリメタクリル酸メチル、ポリメタクリル酸2−ヒドロキシエチルなどの合成高分子、あるいはコラーゲン、ゼラチン、アルブミンなどの各種タンパク質、セルロース、アミロース、デキストラン、キチン、キトサン、ヒアルロン酸などの多糖類などの天然高分子を挙げることができる。この中でも、機械的強度や生体内で溶解性が高いポリ乳酸が特に好適である。これらは、1種または2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0044】
次に図4及び図5に基づいて、本発明の実施形態に係る生体内適合性針状体の製造工程を説明する。
図4に示すように本発明の実施形態に係る針状体製造装置20において、容器20aは、ガス供給口20bから窒素や空気などを供給し、排気ポンプ(図示せず)によってガス排出口20cで排気することにより、内部の圧力を調整することができ、容器上部に備えられた加熱用のヒータ20dによって内部の温度を調節することができる。そして、容器20aの下部には、冷媒供給管20e及び冷媒排出管20fを備えた冷却台20gに配置され、冷却台20gの下に超音波印加機20hが設けられている。針状体成型用モールド22は、冷却台20gの上に配置され、ヒータ20dと冷却台20gによって温度制御することができる。
【0045】
図5は針状体の製造工程を説明するための模式図である。まず、埋込前工程として、液体状の生体内適合性材料24aを適当な温度に溶融させたのちに、ホットメルトガンや分注機などのノズル23から針状体成型用モールド21の微細孔21aに滴下する(図5(a−1))、あるいは固形状の生体内適合性材料24bを微細上に配置し針状体成型用モールド21を昇温し(図5(a−2))、針状体成型用モールド21の微細孔21aに溶融した生体内適合性材料を充填する。次いで、埋込固化工程として針状体成型用モールド21を冷却して、固化した生体内適合性針状体22aを得る(図5(b))。最後に、剥離工程として針状体成型用モールド21を取り外すことによって、針状体成型用モールド21の形状を反転転写した生体内適合性針状体22bを得ることができる(図5(c))。なお、超音波印加機20hによって超音波を照射することにより、溶融した生体内適合性材料を針状体成型用モールド21内に好適に充填することができる。
【0046】
なお、上述のようにマスターモールドにおける針状体の形状を反転転写した針状体成型用モールドの溝は、直径が50〜300μm程度であり、さらに入り口が狭く、アスペクト比が大きい。そのため、生体内適合性材料の種類によっては溝の中に入れようとしても、内部の気泡が除去されないことがあり、最終品である針状体の内部に気泡が残ったり、針状体の形状が不完全となる場合がある。
【0047】
そのため、生体内適合性材料を減圧下で溶融し(図4,5参照)、前記針状体成型用モールドの微細孔に充填することが好適であり、さらに減圧と加圧を繰り返して、前記材料を前記針状体成型用モールドに充填することが好ましい。このような操作を行うことで、溶融した生体内適合性材料を好適に針状体成型用モールドの微細孔に充填することができる。減圧・加圧の条件は、溶融した生体内適合性材料を好適に針状体成型用モールドの微細孔に充填できれば特に制限されないが、好適な減圧の条件としては圧力1Pa程度であり、加圧の条件としては、106Pa程度である。
なお、上述したように超音波照射と組み合わせることで、さらに生体内適合性材料の針状体成型用モールドへの充填性が向上する。
【0048】
また、生体内適合性材料を溶融する際は、材料側からヒーター、赤外線ランプなどで加熱し、針状体成型用モールド裏面は冷却する方法により(図4,5参照)、針状体を離型する時間を短縮できるだけでなく、針状体成型用モールドの繰り返し利用が可能となる。
【0049】
以下、形成した生体適合性針状体について説明する。なお、本発明の針状体は、特に、上記した本発明の針状体の製造方法を採用することにより、再現性良く製造することができる。
【0050】
上記本発明の製造方法によって製造された生体適合性針状体は、図6に示すように通常、複数の針状体が連なったシートの形状となる。
このシート状の針状体は、用途に応じてそのまま針状体保持シートとして使用してもよいし、各針状体を折りはずして、単独の針状体として使用してもよい。
また、単独の針状体としたのちに、適当なシートに貼付け、針状体保持シートとして使用することもできる。
【0051】
図7(a)〜(d)は、1本の針状体の断面図であり、それぞれ支柱部の形状が異なるものである。これらの針状体は、図2(a)〜(d)で例示したマスターモールドを反転転写した針状成形用モールドを鋳型として形成することができる。
【0052】
針状体30(図7(a))は、先端部33に連なる支柱部34が長手方向に同一径である例である。支柱部34の径D1は50〜300μm程度である。先端部33の長さL1は50〜200μm程度であり、支柱部34の長さL2が、200〜800μm程度である
先端部33の長さL1および支柱部34の径D1は、先端部33の最先端33aが、突孔性を有する範囲で任意に決定される。
先端部の直径を3μm以下とする場合には、先端部33の長さL1が、50〜200μm、支柱部34の径D1が、50〜300μmが好適である。
支柱部34のL2はその用途によって、任意であり、通常、その長手方向長さが200〜1000μmである。
【0053】
針状体40(図7(b))は、支柱部44が長手方向にわたって径が小さくなる例であり、支柱部44の長手方向に垂直な断面の最大直径D2(先端部43と支柱部44の継目の直径)は、50〜300μm程度であり、最小直径D3(支柱部44と基端部45の継目)は、最大直径D2より小さい範囲で決定され、好ましくは30〜70μm程度である。このように形状の支柱部44では、支柱部44と基端部45の継目から容易に折損することができ、穿孔のあとに針状体を患部に止まらせることができる。また、生体内適合性針状体として、生体内分解性の材料とすることでドラッグデリバリー型薬剤として好適に使用できる。なお、先端部の長さL1および支柱部の長さL2は、針状体30と同様である。
【0054】
針状体50(図7(c))は、針状体30の変形例であり、前記先端部に連なる支柱部54が、1つのくびれ54aを有する例である。該針状体は、くびれから容易に折損することができ、上記針状体40と同様な効果が期待できる。
針状体60(図7(d))は、針状体30の他の変形例であり、前記先端部に連なる支柱部64が、複数のくびれ64aを有する例である。複数のくびれ64aによって形成される突起64bの存在により、穿孔のあとに生体内適合性針状体の先端部を折損して薬剤を効果的に患部に止まらせることができるという利点がある。
【実施例】
【0055】
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明は、これらの実施例に限定されるものではない。
【0056】
工程(1):マスターモールドの作製
サムコ社製のエッチング装置(型番:800iPB)を使用した。
第1のエッチング工程として、厚さ約700μmの単結晶Si基板に対し、1050℃の水蒸気酸化を行い、Si基板表面に約300nmの酸化シリコン膜を形成した。次いで、形成した酸化シリコン膜をパターニングするために、厚さ約3μmのフォトレジスト(ロームアンドハース社製、型番:S800)を用い、密度36個/5mm2となるように直径100μmのパターンを作製した。フォトレジストパターン作成後、5%HF水溶液により酸化シリコン膜を除去し、エッチングマスクを完成させた。エッチングマスクは、フォトレジスト(3μm)/酸化シリコン膜(300nm)の2層膜とした。続いてボッシュプロセスを用い針の作製を行った。
【0057】
ボッシュプロセスの条件は以下の通りである。
(プラズマエッチング条件)
エッチングガス:SF6
ガス流量:300sccm
プラズマ圧力(エッチングガスのチャンバー内圧力):100Pa
プラズマ出力:500W
温度:室温
(プラズマデポジション条件)
側壁保護膜形成ガス:C48
ガス流量:200sccm
プラズマ圧力(保護膜形成ガスのチャンバー内圧力):100Pa
プラズマ出力:500W
温度:室温
先端部分は、プラズマデポジション時間を2秒と固定し、プラズマエッチング時間を30、20、15、10、5、3、2秒と変化させ作製した。長手部分はプラズマエッチング時間およびプラズマでポジション時間を2秒と固定し、所定の長さになるまで繰り返し行った。
【0058】
次いで、第2のエッチング工程として、エッチングマスクを5%HF水溶液により除去した後、熱酸化および酸化シリコン膜の除去により尖鋭化を行った。熱酸化は水蒸気ガスを用い、1000℃、1h行った。酸化シリコン膜の除去は5%HF水溶液に10min浸すことで行った。この工程を10回繰り返し尖鋭化した。
図8に作製したマスターモールドの写真(1本の拡大写真)、図9にマスターモールドの先端部の拡大写真を示す。先端部の直径は、1μm以下(平均値)であった。
【0059】
工程(2):針状体成型用モールドの作製
マスターモールドの針を上にした状態で、PDMS(信越化学社製、主剤:KE−1310ST,硬化剤:CAT1310S)を室温で流し込んだ。その後、12時間大気中で乾燥させ、マスターモールドを剥離し、針状体成型用モールドを作製した。
図9に作製した針状体成型用モールドの断面写真(1本の拡大写真)を示す。
【0060】
工程(3):針状体の作製
図4に示す構成の針状体製造装置を使用して、針状体成型用モールドに以下の条件で生体内適合性材料を埋め込んだ。
生体内適合性材料:ポリ乳酸(和光純薬工業株式会社 L‐PLA‐0020)

真空度:10Pa
温度:240℃
時間:60min
その後、自然冷却を行い生体内適合性材料を固化した後、離型を行った。
図11に作製した生体適合性針状薬剤アレイの写真、図12に針状薬剤の写真(1本の拡大写真)を示す。

薬物の投与
薬物:イフェンプロジル酒石酸塩
投与部位の皮膚を針状体で穿刺を行う。穿刺後、針状体は皮膚から除去する。
エタノール20%水溶液にイフェンプロジル酒石酸塩を溶解し5%としたものを脱脂綿に染み込ませ、針状体を適用した皮膚に貼付する。
【産業上の利用可能性】
【0061】
本発明の製造方法によると、患部に直接薬剤を打ち込み治療を行うための針状体を再現性良く高精度に製造することが可能となる。従って、この発明技術は、これまで投薬が困難であった部位に直接かつ副作用が少ない投薬に利用できる。
【符号の説明】
【0062】
1 シリコンウェハ
2 エッチングマスク
3 先端部
3a 先端部の最先端
3b 保護膜
4 支柱部
5 基端部
10A,10B,10C,10D マスターモールド
11A,11B,11C,11D 針状体
12A,12B,12C,12D 先端部の最先端
13A,13B,13C,13D 先端部
14A,14B,14C,14D 支柱部
15A,15B,15C,15D 基端部
16C,16D くびれ
17D 突起
20 針状体製造装置
20a 容器
20b ガス供給口
20c ガス排出口
20d ヒータ
20e 冷媒供給管
20f 冷媒排出管
20g 冷却台
20h 超音波印加器
21 針状体成形用モールド
21a 微細孔
22 生体内適合性針状体
22a 固化した生体内適合性針状体
22b (生体適合性)針状体
23 ノズル
24a 液体状生体内適合性材料
24b 固形状生体内適合性材料
30,40,50,60 (生体内適合性)針状体
33,43,53,63 先端部
33a,43a,53a,63a 先端部の最先端
34,44,54,64 支柱部
35,45,55,65 基端部
54a,64a くびれ
64b 突起

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記工程を有することを特徴とする、生体内適合性針状体の製造方法。
(1)シリコンウェハの所定の位置にエッチングマスクを形成し、前記マスクを設けた状態で、プラズマエッチングと、プラズマデポジションによる保護膜形成とを交互に繰り返し行うボッシュプロセスによって、先端に向かって細径化したテーパ状をなす先端部と、長手方向にわたって同一径、あるいは径が小さくなる該先端部に連なる支柱部を有するシリコン製針状体とを形成する第1のエッチング工程と、
前記マスクを除去し、前記先端部をエッチング液および/または反応性ラジカルによってエッチングし、さらに熱酸化による酸化シリコン膜の形成と、フッ酸水溶液による酸化シリコン膜の除去を繰り返し行うことによって、針状体を形成する第2のエッチング工程と、
を含むシリコン基端部に設けられた複数のシリコン製針状体からなるマスターモールドを製造する工程
(2)前記マスターモールドを鋳型とし、前記マスターモールドの針状体の形状を反転転写した微細孔を備えた、可撓性を有する樹脂からなる針状体成型用モールドを形成する工程
(3)前記針状体成型用モールドに、生体内適合性材料を充填し、該材料を前記微細孔の形状に成形したのちに離型する工程
【請求項2】
先端部の直径が、3μm以下である請求項1記載の針状体の製造方法。
【請求項3】
工程(1)において、前記針状体における支柱部が、長手方向にわたって径が小さくなる支柱部である請求項1または2に記載の針状体の製造方法。
【請求項4】
工程(1)において、前記針状体における支柱部が、1または2以上のくびれをもつ請求項1から3のいずれかに記載の針状体の製造方法。
【請求項5】
工程(2)において、前記可撓性を有する樹脂が、ポリジメチルシランである請求項1から4のいずれかに記載の針状体の製造方法。
【請求項6】
工程(3)において、生体内適合性材料を充填する際、超音波を照射する1から5のいずれかに記載の針状体の製造方法。
【請求項7】
工程(3)において、前記材料を減圧下で溶融し、前記針状体成型用モールドに充填する請求項1から6のいずれかに記載の針状体の製造方法。
【請求項8】
工程(3)において、減圧と加圧を繰り返して、前記材料を前記針状体成型用モールドに充填する請求項7記載の針状体の製造方法。
【請求項9】
工程(3)において、前記針状体側から加熱し溶融をおこない、前記材料を針状体成形用モールドに充填することを特徴とする請求項1から7のいずれかに記載の針状体の製造方法。
【請求項10】
請求項1から8のいずれかに記載の方法で製造された生体内適合性針状体。
【請求項11】
薬剤成分と生体内溶解性材料とからなる請求項10記載の生体内溶解性針状体。
【請求項12】
シート状の支持体の少なくとも一方の面に請求項10または11記載の針状体が1または2個以上保持されてなる針状体保持シート。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2011−83387(P2011−83387A)
【公開日】平成23年4月28日(2011.4.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−237702(P2009−237702)
【出願日】平成21年10月14日(2009.10.14)
【出願人】(504174135)国立大学法人九州工業大学 (489)
【出願人】(000004020)ニチバン株式会社 (80)
【Fターム(参考)】