説明

銅配線膜形成方法及び配線膜

【課題】半導体基板上に形成され、凹部が設けられた絶縁膜上に拡散バリア用下地膜を形成し、その上に第1の銅膜を形成し、当該第1の銅膜を電極とした電解メッキ法により第2の銅膜を形成する銅配線膜形成方法において、密着性の改善に有効なCuシード膜のアニール処理を行っても、半導体基板上のホールやトレンチパターンの上角部(開口部近傍)といった基板表面において、Cuシード膜が弾かれその下の拡散バリア用下地膜が露出する現象を起こさずにアニール処理が行える方法と、これによる配線膜を提供する。
【解決手段】拡散バリア用下地膜の形成から前記第1の銅膜形成までの工程が、前記半導体基板を大気に晒すことなく真空一貫の状態で行われると供に、当該工程の間に、到達真空度で1×10-4Pa以下の真空状態にしてから前記拡散バリア用下地膜が加熱される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被処理基板上に形成され、凹部が設けられている絶縁膜上に形成した拡散バリア用下地膜上に銅膜を形成し、前記凹部を銅材料で充填する銅配線形成方法において、拡散バリア用下地膜と銅膜との間の密着性が高められたCu(銅)配線膜の形成方法及び配線膜に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体デバイスの高性能化にともない、配線材料としてCu(銅)が使用されている。その理由は、Cuは、Al(アルミニウム)に比較して低抵抗であり、ストレスマイグレイションやエレクトロマイグレイションという配線を構成する金属原子の拡散挙動が支配する現象に対して、高い耐性をもっているからである。
【0003】
このようなCu(銅)を用いた配線の形成方法の中に、半導体基板上の絶縁膜に配線及び接続孔(ビアホール、またはコンタクトホール)のパターンを形成し、その後、拡散バリア用下地膜を成膜、さらに銅(Cu)膜を凹部パターンに埋め込み、CMP(化学的機械研磨法)により余分な銅膜等を除去して行う方法が用いられている。
【0004】
このような拡散バリア用下地膜や銅(Cu)膜の形成方法は、半導体デバイスの高集積化がさらに進み、ビアホール等のアスペクト比(ビアホールの深さ/ビアホールの開口径)はさらに大きくなり、ビアホール等の開口内部を完全に被覆することが困難になりつつある。
【0005】
また、配線及び接続孔の凹部パターンヘの銅による埋め込みについては、コストのかからない技術として電解銅メッキ法による銅の埋めこみが広く採用されているが、予め、電極として拡散バリア用下地膜上にCuシード膜と呼ばれる第1の銅膜を形成しておく必要がある。このような技術的な背景の中で、Cuシード膜の形成方法として被覆性(カバレッジ)の優れた化学気相成長法(本明細書において「CVD法」と表す)が有力な候補として上げられている。
【0006】
しかし、上述のようなCVD法によってCuシード膜として第1の銅膜を形成し、第1の銅膜を電極とした電解銅メッキ法により第2の銅薄膜が形成される半導体デバイスの製造方法では、従来からTiN等の拡散防止用の下地膜と界面をなす銅(Cu)膜の密着性が弱いという課題があり、実用化には密着力の強化が不可欠であった。
【0007】
そのため、CVD法による銅配線形成後(電解銅メッキ法による第2の銅膜形成後)の研磨工程(CMP工程)では、銅膜(第1の銅膜、Cuシード膜)がTiN等の拡散バリア用下地膜から剥がれてしまうという不具合が発生することがあった。
【0008】
そこで、例えば、本願出願人による先の特許出願である特願2001−13621では、拡散バリア用下地膜とCuシード膜の密着性の改善に関して、Cuシード膜をアニールすることの重要性を見出し、提案している。
【0009】
この発明では、CVD法による第1の銅膜(Cuシード膜)形成工程と当該第1の銅膜を電極とした電解銅メッキ法による第2の銅膜を形成する工程の間に、第1の銅膜(Cuシード膜)を200〜500℃の温度範囲にて加熱する工程を設けることで、第1の銅膜と拡散バリア用下地膜との密着性が改善され、半導体製造工程におけるCMP(化学的機械研磨法)工程においても膜剥がれが起きない信頼性の高いCu膜配線を形成する銅配線膜形成方法を提案した。
【0010】
しかし、密着性の改善効果は確認されるものの、Cuシード膜の膜厚やその成膜条件、または、Cuシード膜のアニール時間等の条件によっては、半導体基板上のホールやトレンチパターンの上角部(開口部近傍)といった基板表面の一部分において、Cuシード膜が弾かれその下の拡散バリア用下地膜が露出する現象が見られた。この現象は、半導体基板の大部分を占めている平坦部(半導体基板と水平な表面部)に見られるものではなく、ホールやトレンチパターンの上角部に限られていた。
【特許文献1】特開2002−217202号(特願2001−13621)公報
【特許文献2】特開2000−331957号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
上述のとおり、特願2001−13621で提案された銅配線形成方法では、拡散バリア用下地膜とCuシード膜の密着性の改善については、その有効性が確認されているが、半導体基板上のホールやトレンチパターンの上角部(開口部近傍)といった基板表面の一部分において、Cuシード膜が弾かれその下の拡散バリア用下地膜が露出する現象が見られた。このようなCuシード膜が完全に拡散バリア用下地膜を被覆することなく露出箇所がある場合、Cuシード膜を電極とする電解銅メッキ工程において、露出箇所では銅(Cu)膜が成長できず、電解銅メッキ工程後、その箇所は空洞となってしまう。
【0012】
上角部(開口部近傍)に空洞部分が存在しているホールの配線抵抗は高く、マイグレーション耐性が弱くなり、銅配線に電気を長時間流すと断線不良を発生する可能性が高くなるという信頼性の問題が発生してしまう。
【0013】
したがって本発明は、かかる状況に鑑み、銅配線形成方法において、密着性の改善に有効なCuシード膜のアニール処理を行っても、半導体基板上のホールやトレンチパターンの上角部(開口部近傍)といった基板表面において、Cuシード膜が弾かれその下の拡散バリア用下地膜が露出する現象を起こさずにアニール処理が行える方法と、こうして形成した配線膜を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
前記課題を解決するため、この発明が提案する銅配線膜形成方法は、半導体基板上に形成され、凹部が設けられた絶縁膜上に拡散バリア用下地膜を形成し、その上に第1の銅膜を形成し、当該第1の銅膜を電極とした電解メッキ法により第2の銅膜を形成する銅配線膜形成方法において、前記拡散バリア用下地膜の形成から前記第1の銅膜形成までの工程が、前記半導体基板を大気に晒すことなく真空一貫の状態で行われると供に、当該工程の間に、到達真空度で1×10-4Pa以下の真空状態にしてから前記拡散バリア用下地膜が加熱されることを特徴とするものである。
【0015】
第1の銅膜(Cuシード膜)と拡散バリア用下地膜との密着性を改善させるべく、第1の銅膜形成工程と当該第1の銅膜を電極とした電解銅メッキ法による第2の銅膜を形成する工程の間に、第1の銅膜(Cuシード膜)を加熱する工程を設ける場合であっても、前記本発明の銅配線膜形成方法のように、拡散バリア用下地膜を形成する工程と第1の銅膜形成工程の間に、当該拡散バリア用下地膜を、到達真空度で1×10-4Pa以下の真空状態にしてから加熱する工程を設けておくことにより、半導体基板上のホールやトレンチパターンの上角部(開口部近傍)といった基板表面において、Cuシード膜が弾かれその下の拡散バリア用下地膜が露出する現象が発生することを防止できる。
【0016】
前記において、前記拡散バリア用下地膜の形成から前記第1の銅膜形成までの工程は、前記半導体基板を大気に晒すことなく真空一貫の状態で行われている。拡散バリア用下地膜が大気に晒されてしまうと、大気中の酸素が拡散バリア用下地膜の中に取り込まれてしまう。拡散バリア用下地膜を形成している間に残留したガスを前記の加熱工程によって放出させることは容易であるが、大気に晒すことによって取り込んだ酸素を放出させることは困難である。大気に晒すことによって取り込まれた酸素が拡散バリア用下地膜中に残留していると、この上に形成される第1の銅膜との間の密着性に悪影響が及ぼされる。そこで、前述したように、第1の銅膜が形成されるまでの工程は、半導体基板を大気に晒すことなく真空一貫の状態で行われることが望ましい。
【0017】
また、前記において、拡散バリア用下地膜を加熱する工程は、アニールの効果が現われる拡散バリア用下地膜の成膜温度以上、すなわち、300℃以上で行うことが望ましい。ただし、半導体基板に熱的にダメージを与えない温度領域、せいぜい600℃くらいまでで行うことが望ましい。
【0018】
また、前記課題を解決するため、この発明が提案する他の銅配線膜形成方法は、半導体基板上に形成され、凹部が設けられた絶縁膜上に拡散バリア用下地膜を形成し、その上に第1の銅膜を形成し、当該第1の銅膜を電極とした電解メッキ法により第2の銅膜を形成する銅配線膜形成方法において、前記拡散バリア用下地膜を形成する工程と第1の銅膜形成工程の間に、前記拡散バリア用下地膜を、到達真空度で1×10-4Pa以下の真空状態にしてから加熱する工程と、第1の銅膜を電極とした電解メッキ法により第2の銅膜を形成する工程の前に200〜500℃の温度範囲、10KPa以上の圧力雰囲気で前記第1の銅膜を加熱する工程とが行われることを特徴とするものである。
【0019】
この本発明の方法によれば、拡散バリア用下地膜上に形成した第1の銅膜をCuシード膜とし、この上に、電解銅メッキ法によって第2の銅膜が形成される銅配線膜形成において、拡散バリア用下地膜とCuシード膜との密着性の改善を図るべく第1の銅膜(Cuシード膜)を電極とした電解銅メッキ法による第2の銅膜形成の前に第1の銅膜をアニール処理することとしても、半導体基板上のホールやトレンチパターンの上角部(開口部近傍)といった基板表面の一部分において、Cuシード膜が弾かれその下の拡散バリア用下地膜が露出する現象が生じないようにできる。すなわち、第1の銅膜(Cuシード膜)と拡散バリア用下地膜との密着性を改善すべく、第1の銅膜の形成工程と第2の銅膜形成工程との間に、200〜500℃の温度範囲で、またこの加熱工程における圧力雰囲気を10KPa以上として第1の銅膜を加熱する工程を設けるようにしても、半導体基板上のホールやトレンチパターンの上角部(開口部近傍)といった基板表面の一部分において、Cuシード膜が弾かれその下の拡散バリア用下地膜が露出する現象が生じないようにできる。
【0020】
ここでも、上述した理由により、前記拡散バリア用下地膜の形成から前記第1の銅膜形成までの工程は、前記半導体基板を大気に晒すことなく真空一貫の状態で行われることが望ましい。
【0021】
また、ここでも、拡散バリア用下地膜を加熱する工程は、アニールの効果が現われる拡散バリア用下地膜の成膜温度以上、すなわち、300℃以上で行うことが望ましい。ただし、半導体基板に熱的にダメージを与えない温度領域、せいぜい600℃くらいまでで行うことが望ましい。
【0022】
なお、前記において、拡散バリア用下地膜の形成は、原料ガスとしてテトラキスジアルキルアミノチタン(本明細書において「TDAAT」と表すことがある)を用いて行うことができる。
【0023】
本願出願人は、MOCVD(Metal Organic Chemical Vapor Deposition )法により、原料としてTDAATを用いて拡散バリア用下地膜としてのTiN膜を形成し、この上にCu膜を形成するCu配線膜形成方法において、拡散バリア用下地膜(TiN膜)とCu配線膜との密着性を高めるために、拡散バリア用下地膜(TiN膜)の成膜工程と、Cu膜の成膜工程との間に、拡散バリア用下地膜(TiN膜)の成膜工程後、大気に晒すことなく真空一貫の状態で、1Pa〜10KPaの圧力範囲、200〜500℃の温度範囲で加熱するアニール工程を設けたCu配線膜形成方法を提案している(特開2000−331957号)。
【0024】
この特開2000−331957号で提案したCu配線膜形成方法により、拡散バリア用下地膜(TiN膜)とCu膜との間の密着性が良好なCu配線膜を形成することができている。
【0025】
本発明は、この特開2000−331957号や、前述した特願2001−13621で提案した銅配線形成方法に更に検討と改良を加えて完成されたものである。
【0026】
すなわち、本発明は、拡散バリア用下地膜を成膜しその上にCu膜を成膜する前に拡散バリア用下地膜を所定の条件の下でアニール処理する工程を含むものであるが、特開2000−331957号で提案されている発明とは異なり、拡散バリア用下地膜上に形成する第1の銅膜はCuシード膜とされ、この上に電解銅メッキ法によって第2の銅膜が形成される銅配線膜形成方法に関するものである。特に、このような銅配線膜形成方法において、第1の銅膜(Cuシード膜)と拡散バリア用下地膜との密着性を改善すべく、第1の銅膜を電極とした電解銅メッキ法による第2の銅膜形成の前に、第1の銅膜をアニール処理する場合であっても、半導体基板上のホールやトレンチパターンの上角部(開口部近傍)といった基板表面の一部分において、Cuシード膜が弾かれその下の拡散バリア用下地膜が露出する現象が生じないようにすることを目的として研究し、完成されたものである。
【0027】
本発明は、Cuシード膜とされる第1の銅膜を拡散バリア用下地膜の上に形成する前に拡散バリア用下地膜をアニール処理することとし、この際の最も好ましい条件を特定することにより完成されたものである。
【0028】
この本発明の方法によれば、拡散バリア用下地膜上に形成した第1の銅膜をCuシード膜とし、この上に、電解銅メッキ法によって第2の銅膜が形成される銅配線膜形成において、拡散バリア用下地膜とCuシード膜との密着性の改善を図るべく第1の銅膜(Cuシード膜)を電極とした電解銅メッキ法による第2の銅膜形成の前に第1の銅膜をアニール処理することとしても、半導体基板上のホールやトレンチパターンの上角部(開口部近傍)といった基板表面の一部分において、Cuシード膜が弾かれその下の拡散バリア用下地膜が露出する現象が生じないようにできる。すなわち、拡散バリア用下地膜上にCVD法によって第1の銅膜を形成し、この上に第1の銅膜を電極として電解銅メッキ法により第2の銅膜を形成する銅配線膜形成方法において、第1の銅膜(Cuシード膜)と拡散バリア用下地膜との密着性を改善すべく、例えば、第1の銅膜の形成工程と第2の銅膜形成工程との間に、200〜500℃の温度範囲で、より好ましくは350〜450℃の温度範囲で、またこの加熱工程における圧力雰囲気を10KPa以上として第1の銅膜を加熱する工程を設けるようにしても、本発明の方法を併用することによって、半導体基板上のホールやトレンチパターンの上角部(開口部近傍)といった基板表面の一部分において、Cuシード膜が弾かれその下の拡散バリア用下地膜が露出する現象が生じないようにできる。
【発明の効果】
【0029】
本発明によれば、密着性の改善に有効なCuシード膜のアニール処理を行っても、半導体基板上のホールやトレンチパターンの上角部(開口部近傍)といった基板表面において、Cuシード膜が弾かれその下の拡散バリア用下地膜が露出する現象を起こさずにアニール処理を行うことができ、銅配線としての信頼性を確保した上で、密着性の改善を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
以下に、本発明の好適な実施形態を添付図面に基づいて説明する。
【0031】
図1は、本発明の銅配線膜形成方法に使用される銅配線膜形成装置の一例の概略構成を表すものである。
【0032】
図1図示の装置は、図2図示のように、半導体基板1上に形成され、凹部が設けられた絶縁膜2上に、拡散バリア用下地膜としてTiN膜3がMOCVD(Metal Organic Chemical Vapor Deposition )で成膜され、このTiN膜3を加熱(アニール)した後、CVD法によって第一の銅膜4を当該アニール処理後のTiN膜3の上に形成し、次いで、この第一の銅膜4を加熱(アニール)する工程を行うまでのシステムの一例を表すものである。
【0033】
この場合、絶縁膜2が、例えば有機低誘電率膜であってもかまわない。しかも、拡散バリア用下地膜は、TiN膜に限られることなく、Ta、TaN、WxNや、TiSiN等の高融点金属膜でも可能であり、また、この拡散バリア用下地膜の成膜方法もCVD法に限られず、スパッタリングなどを用いてもかまわない。また、拡散バリア用下地膜は、成膜後、膜質の改善のため、水素やArガスなどのプラズマにさらされていてもかまわない。
【0034】
図1図示の銅配線膜形成装置は、一例としてマルチチャンバ方式の装置として構成され、搬送ロボット(基板搬送機構)18を内蔵したセパレーションチャンバ(トランスファーチャンバ)14が中央に設けられ、セパレーションチャンバ14の周囲に3つのプロセスチャンバ、すなわち拡散バリア用TiNCVDチャンバ11、銅膜用CVDチャンバ12、アニールチャンバ13を配し、さらに、2つのロード/アンロード・ロックモジュール15、16が付設されているものである。各チャンバ等には、ゲートバルブ17が設けられている。
【0035】
なお、ここで「モジュール」とは、装置・機械・システムを構成する部分で、機能的にまとまった部分を意味する。したがって、前記の3つのプロセスチャンバ(拡散バリア用TiNCVDチャンバ11、銅膜用CVDチャンバ12、アニールチャンバ13)も当然、モジュールとして構成されており、これらのプロセスが実施される場所を指す用語としてチャンバが使用される。
【0036】
セパレーションチャンバ14の内部には、搬送ロボット(基板搬送機構)18が設けられ、搬送ロボット18は、そのハンドで基板19を各チャンバ等に搬入、又は、各チャンバ等から搬出する。上記装置において、カセット(図示せず)にセットされた1枚の基板19は、図面左側のロード/アンロード・ロック・モジュール15から搬送ロボット18によってセパレーションチャンバ14内に搬入される。
【0037】
拡散バリア用TiNCVDチャンバ11、銅膜用CVDチャンバ12、アニールチャンバ13のそれぞれのチャンバで所定のプロセスが行われる。まず、図2(a)図示のように、半導体基板1上に形成され、凹部が設けられた絶縁膜2上に、拡散バリア用下地膜としてTiN膜3がMOCVD法で成膜される。次に、このTiN膜3を加熱(アニール)する工程が行われる(図2(b))。次いで、このアニール処理後のTiN膜3の上にCVD法によって第一の銅膜4が形成される(図2(c))。そして、図2(d)図示のように、この第一の銅膜4を加熱(アニール)する工程が行われる。これらの一連の処理が施された基板19は、搬送ロボット18によってロード/アンロード・ロックモジュール16に戻されて搬出される。上記の構成において、プロセスチャンバについてもう少し詳細に述べる。
【0038】
拡散バリア用TiNCVDチャンバ11、銅膜用CVDチャンバ12、アニールチャンバ13は、それぞれ真空排気機構11a、12a、13aを備えている。各プロセスチャンバは、その真空排気機構11a、12a、13aによって内部を適宜、減圧状態、すなわち所望の真空状態に保持される。真空排気機構11a、12a、13aの動作はコントローラ20によって制御される。
【0039】
拡散バリア用TiNCVDチャンバ11、銅膜用CVDチャンバ12、アニールチャンバ13の各プロセスチャンバは、搬送ロボット18により各プロセスチャンバ内に搬入される基板19を配置できる基板支持機構(不図示)を具備し、その上で各工程のプロセスが進行し、しかも、基板19を所定の温度に加熱できる基板加熱機構(不図示)も設置されている。
【0040】
アニールチャンバ13で使用されるガス(主にArが使用されるが、N2、H2も使用可能)は、主にMFC(マスフローコントローラ)と配管より構成されるガス供給系(図示せず)により、アニールチャンバ13内へ導入される。なお、その他のチャンバで使用されるプロセスガスの流量制御も上記コントローラ20によって行われる。
【0041】
本発明に係るCu配線膜形成方法は、前述のように、基板19が、拡散バリア用TiNCVDチャンバ11、アニールチャンバ13、銅膜用CVDチャンバ12、アニールチャンバ13の順に搬送され、それぞれ拡散バリア用のTiN膜3が成膜された後に、アニール処理が行われ、次いで、第一の銅膜4が成膜され、次に第一の銅膜4をアニール処理するという各工程の順序を特徴としている。図1図示の装置を用いて行われるこれらの各工程のプロセス条件の一例を以下に説明する。
【0042】
まず、半導体基板1上に形成され、凹部が設けられた絶縁膜2上に、拡散バリア用TiNCVDチャンバ11によって、拡散バリア用下地膜としてTiN膜3がMOCVDで成膜される(図2(a)図示)。具体的な成膜工程は次のように行われる。
【0043】
拡散バリア用TiNCVDチャンバ11内の内部圧力は、例えば、0.1〜15Paの範囲で、基板19の温度は、約300〜400℃となるように加熱される。この状態で、まず原料ガスとしてTDAAT(テトラキスジアルキルアミノチタン)を、例えば、0.004〜0.2g/minの範囲で供給する。このとき、配管内で原料ガスの流動性を良くするために添加するキャリアガス(Ar:アルゴンガス)は、約0.05〜3.0g/min(約30〜170ml/min)の流量範囲とする。添加ガス(NH:アンモニアガス)は、例えば、0.76〜380mg/minの流量範囲で供給される。上記の条件で、拡散バリア膜3を、10nmの膜厚で成膜した(図2(a))。
【0044】
次に、上記拡散バリア用下地膜(TiN膜)の成膜工程を終えた基板19は、アニールチャンバ13内に搬入され、ここで、図2(b)図示のようにTiN膜3を加熱(アニール)する工程が行われる。
【0045】
アニールの条件は、アニールチャンバ13の内部圧力を到達真空度で1×10-4Pa以下の真空状態に一旦した後行われる。
【0046】
このとき、02(酸素)やH20(水)の分圧が到達真空度と同等レベル以上に充分低い値であることがより好ましい。つまり、このアニールの際には、H20の分圧を下げ、酸化を防止することがCuシード膜の凝集防止により有効であると考えられるからである。
【0047】
基板19の加熱温度は、アニールの効果が現われる拡散バリア用下地膜であるTiN膜3の成膜温度以上、つまり、300℃以上が好ましい。アニール温度の上限は、基板19に熱的にダメージを与えない温度領域、せいぜい600℃くらいまでが望ましい。
【0048】
アニール時間は、少なくとも拡散バリア用下地膜であるTiN膜3の下限である300℃に達するまでの昇温時間が、加熱として費やされていれば効果が現れる。
【0049】
次に、上記TiNの成膜工程とアニール処理工程とを終えた基板19は、銅膜用CVDチャンバ12内に搬入され、ここで、拡散バリア用下地膜としてのTiN膜3の上に、CVD法によって第一の銅膜4が形成されて図2(c)図示の状態となる銅薄膜の成膜工程が行われる。
【0050】
銅膜用CVDチャンバ12内の内部圧力は例えば1.0KPaに保持され、基板19の温度は約170℃に設定されている。この状態で、原料ガスとしてCu(hfac)(tmvs)(トリメチルビニルシリルヘキサフルオロアセチルアセトナト酸塩銅I)を使用し、第一の銅膜4の成膜を行った(図2(c))。
【0051】
最後に、第1の銅膜4の成膜工程を終えた基板19は、アニールチャンバ13内に搬入され、ここで、図2(d)図示のように、第1の銅膜4を加熱(アニール)する工程が行われる。アニールの条件は、例えば、アニールチャンバ13内にアルゴンガス(Ar)を導入し、内部圧力を0.008〜40KPaに保持して行う。使用されるガスは、Ar以外に窒素(N2)もしくは水素のいずれかでもよく、2種類以上の混合ガスで行ってもかまわない。基板19の温度は、300〜500℃であり、加熱時間は、例えば30分である。
【0052】
ここで、銅膜用CVDチャンバ12までの工程、つまり、バリア用下地膜(TiN膜3)に第1の銅膜4を形成するまでの工程(図2(a)〜図2(c)の工程)は、処理中の基板19を大気に晒すことなく、真空の雰囲気で連続的に進行されることが望ましい。しかし、第1の銅膜4が形成された基板19は、第1の銅膜4に対するアニール工程の前に大気に晒してもかまわない。したがって、例えば、図1図示のマルチチャンバ方式におけるアニールチャンバ13のように、真空の状態を維持したままで一連の工程の中で連続的に第1の銅膜4に対するアニール工程を行ってもよく、図示していないが、第1の銅膜4を大気に晒して、例えば、電気炉でアニール工程を行ってもよい。
【0053】
第1の銅膜4に対するアニール工程後は、第1の銅膜4を電解銅メッキの電極(Cuシード膜)にして基板19の凹部を第2の銅膜5で埋め込む(図2(e)の工程)。
[実験例1]
【0054】
以下の条件で、図2(a)〜図2(d)の工程を行ってCuシード膜を形成し、これを実験例とした。
TiN膜(拡散バリア用下地膜)の成膜条件
原料ガス(TDAAT)流量:0.04g/min
キャリアガス(N2)流量:50〜300ml/minで調整
添加ガス(NH3)流量:1.1ml/min
加熱温度:300℃
内部圧力:10Pa
膜厚:10nm
TiN膜のアニール条件
到達真空度:1×10-4Pa
(アニール開始前の到達真空度)
加熱温度:400℃
加熱時間:10分
Cuシード膜(第1の銅膜)の成膜条件
原料ガス(Cu(hfac)(tmvs))流量:1g/min
キャリアガス(Ar)流量:100〜1000ml/minで調整
加熱温度:200℃
内部圧力:500Pa
膜厚:50nm
Cuシード膜(第1の銅膜)のアニール条件
内部圧力:400Pa
加熱温度:400℃
加熱時間:30分
【0055】
一方、TiN膜のアニール開始前の到達真空度を1×10-3Paとした以外は前記と同一の条件にして、図2(a)〜図2(d)の工程を行ってCuシード膜を形成し、これを比較例とした。
【0056】
実験例と比較例についてそれぞれ表面をSEM(走査型電子顕微鏡)で観察したところ、図3(a)(実験例:TiN膜のアニールの際、到達真空度で1×10-4Paの真空状態としてからアニールを開始した)、図3(b)(比較例:TiN膜のアニールの際、到達真空度で1×10-3Paの真空状態としてからアニールを開始した)の結果が得られた。
【0057】
比較例(図3(b))の場合、孔の入り口部の上角部(開口部近傍)でCuシード膜が拡散バリア用下地膜に弾かれ、拡散バリア用下地膜が一部露出していた。一方、実験例(図3(a))の場合、Cuシード膜は拡散バリア用下地膜に弾かれることなく連続であった。
【0058】
この実験結果から、本発明の銅配線形成方法によれば、密着性の改善に有効なCuシード膜のアニール処理を行っても、半導体基板上のホールの上角部(開口部近傍)といった基板表面において、Cuシード膜が弾かれその下の拡散バリア用下地膜が露出する現象を起こさずにアニール処理を行うことができることを確認できた。
[実験例2]
【0059】
図2(b)図示の加熱(アニール)工程におけるアニールチャンバ13の到達圧力と、ホール上角部被覆率(%)との関係に関する実験を以下のように行ったところ、図4図示の結果が得られた。
【0060】
実験は、凹部(ホール)が設けられている8インチウェハ上の絶縁膜に拡散バリア用下地膜を形成した後、当該拡散バリア用下地膜をアニール処理し、次いで、この上に、CuCVD法によってCuシード膜(第1の銅膜)を形成するにあたり、拡散バリア用下地膜をアニール処理する際の、アニールチャンバ13の到達圧力を変更した以外の条件を一定にしてCuシード膜を形成し、8インチウェハの中心部の所定領域における試験パターンでの被覆状況をSEMで確認したものである。
【0061】
所定領域の全ホール数に対し、ホールの上角部で拡散バリア用下地膜が露出されることなく完全に被覆されていたホール数の割合(ホール上角部被覆率)を算出した。ホール上角部被覆率:100%は、所定領域のホールすべてが、ホール上角部で拡散バリア用下地膜が露出されることなく完全に被覆されていたことを示す。
【0062】
図4中、横軸は、図2(b)図示の拡散バリア用下地膜を加熱する工程が開始される前のアニールチャンバ13の到達圧力、縦軸は、ホール上角部被覆率を表している。図4に示された実験結果から、アニールチャンバ13の到達圧力を1×10-4Pa以下の真空状態に一旦した後に、図2(b)図示の拡散バリア用下地膜を加熱する工程を行うことにより、密着性の改善に有効なCuシード膜のアニール処理を行っても、半導体基板上のホールの上角部(開口部近傍)といった基板表面において、Cuシード膜が弾かれその下の拡散バリア用下地膜が露出する現象を起こさずにアニール処理を行うことができることを確認できた。
【0063】
以上、添付図面を参照して本発明の好ましい実施形態を説明したが、本発明はかかる実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲の記載から把握される技術的範囲において種々の形態に変更可能である。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】本発明の銅配線膜形成方法に使用される銅配線膜形成装置の一例の概略構成を表す図。
【図2】本発明の銅配線膜形成方法の工程を説明する図であって、(a)は半導体基板上に形成され、凹部が設けられた絶縁膜上に、拡散バリア用下地膜が成膜された状態の一部断面図、(b)は図2(a)図示の工程の後に加熱処理が施されている状態を説明する一部断面図、(c)は、更に第一の銅膜が形成された状態の一部断面図、(d)は図2(c)図示の工程の後に加熱処理が施されている状態を説明する一部断面図、(e)は第二の銅膜が形成された状態の一部断面図。
【図3】(a)本発明の銅配線膜形成方法によって形成されたCuシード膜(アニールチャンバの到達真空度を1×10-4Paの真空状態としてから拡散バリア用下地膜のアニールを開始)におけるCuシード膜アニール後の表面のSEM写真、(b)本発明の銅配線膜形成方法によらないCuシード膜(アニールチャンバの到達真空度を1×10−3Paの真空状態としてから拡散バリア用下地膜のアニールを開始)におけるCuシード膜アニール後の表面のSEM写真。
【図4】拡散バリア用下地膜アニール開始前のアニールチャンバ到達圧力と、Cuシード膜アニール後のホール上角部被覆率との実験結果を表すグラフ。
【符号の説明】
【0065】
1 半導体基板
2 絶縁膜
3 TiN膜(拡散バリア用下地膜)
4 第一の銅膜
5 第二の銅膜
11 拡散バリア用TiNCVDチャンバ
11a、12a、13a 真空排気機構
12 銅膜用CVDチャンバ
13 アニールチャンバ
14 セパレーションチャンバ(トランスファーチャンバ)
15、16 ロード/アンロード・ロックモジュール
17 ゲートバルブ
18 搬送ロボット(基板搬送機構)
19 基板
20 コントローラ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体基板上に形成され、凹部が設けられた絶縁膜上に拡散バリア用下地膜を形成し、その上に第1の銅膜を形成し、当該第1の銅膜を電極とした電解メッキ法により第2の銅膜を形成する銅配線膜形成方法において、
前記拡散バリア用下地膜の形成から前記第1の銅膜形成までの工程が、前記半導体基板を大気に晒すことなく真空一貫の状態で行われると供に、当該工程の間に、到達真空度で1×10-4Pa以下の真空状態にしてから前記拡散バリア用下地膜が加熱される
ことを特徴とする銅配線膜形成方法。
【請求項2】
半導体基板上に形成され、凹部が設けられた絶縁膜上に拡散バリア用下地膜を形成し、その上に第1の銅膜を形成し、当該第1の銅膜を電極とした電解メッキ法により第2の銅膜を形成する銅配線膜形成方法において、
前記拡散バリア用下地膜を形成する工程と第1の銅膜形成工程の間に、前記拡散バリア用下地膜を、到達真空度で1×10-4Pa以下の真空状態にしてから加熱する工程と、
第1の銅膜を電極とした電解メッキ法により第2の銅膜を形成する工程の前に200〜500℃の温度範囲、10KPa以上の圧力雰囲気で前記第1の銅膜を加熱する工程とが行われる
ことを特徴とする銅配線膜形成方法。
【請求項3】
前記拡散バリア用下地膜の形成から前記第1の銅膜形成までの工程が、前記半導体基板を大気に晒すことなく真空一貫の状態で行われることを特徴とする請求項2項記載の銅配線膜形成方法。
【請求項4】
半導体基板上に形成され、凹部が設けられた絶縁膜上に拡散バリア用下地膜を形成し、その上に第1の銅膜を形成し、当該第1の銅膜を電極とした電解メッキ法により第2の銅膜を形成してなる配線膜であって、
前記拡散バリア用下地膜の形成から前記第1の銅膜形成までの工程が、前記半導体基板を大気に晒すことなく真空一貫の状態で行われると供に、当該工程の間に、到達真空度で1×10-4Pa以下の真空状態にしてから前記拡散バリア用下地膜が加熱される
ことを特徴とする配線膜。
【請求項5】
半導体基板上に形成され、凹部が設けられた絶縁膜上に拡散バリア用下地膜を形成し、その上に第1の銅膜を形成し、当該第1の銅膜を電極とした電解メッキ法により第2の銅膜を形成してなる配線膜であって、
前記拡散バリア用下地膜を形成する工程と第1の銅膜形成工程の間に、前記拡散バリア用下地膜を、到達真空度で1×10-4Pa以下の真空状態にしてから加熱する工程と、
第1の銅膜を電極とした電解メッキ法により第2の銅膜を形成する工程の前に200〜500℃の温度範囲、10KPa以上の圧力雰囲気で前記第1の銅膜を加熱する工程とが行われている
ことを特徴とする配線膜。
【請求項6】
前記拡散バリア用下地膜の形成から前記第1の銅膜形成までの工程が、前記半導体基板を大気に晒すことなく真空一貫の状態で行われることを特徴とする請求項5項記載の配線膜。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−214593(P2007−214593A)
【公開日】平成19年8月23日(2007.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−122001(P2007−122001)
【出願日】平成19年5月7日(2007.5.7)
【分割の表示】特願2002−85757(P2002−85757)の分割
【原出願日】平成14年3月26日(2002.3.26)
【出願人】(000227294)キヤノンアネルバ株式会社 (564)
【Fターム(参考)】