説明

長尺センサ及びその製造方法

【課題】近接・接触状態で異物を検知することができるとともに、センサの誤作動及び外観品質の低下を防止しつつ、ドアの端縁部の視認性を向上させる。
【解決手段】長尺センサ21は、取付基部22、表皮部23、及び、LED51を備える。表皮部23は、その内部に中空部26を備えており、LED51は、長尺センサ21の端部に設けられる。中空部26には、透明又は半透明であり、空気よりも誘電率の高い弾性変形可能な導光材料により形成されるとともに、LED51が発光する光を導光し、発光する弾性導光体29と、空気層30とが設けられる。また、中空部26には、第1の電極27と、第2の電極28とが設けられる。表皮部23は、自身の少なくとも一部に透明又は半透明の透明部52を有しており、弾性導光体29によって導光された光が透明部52を透過する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、異物を検知するセンサ及びその製造方法に関するものであり、特に自動車等の車両において車両本体とドア等の開閉体との間の異物を検知するための長尺センサ及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、所謂ワンボックスカー等の車両においては、乗員の昇降口を大きく開閉して昇降の便を向上させるとともに、その際にできるだけドアをボディから離さないようにするために、車両のボディに沿ってスライドするスライドドアを具備するものがある。そして、近年では、このスライドドアをモータ等を用いて自動閉鎖可能なものや、スライドドアがボディ開口部の全閉される全閉位置の手前に位置していわば半ドアの状態となると、スライドドアを全閉位置まで駆動するものが知られている。
【0003】
このようなドアの開閉システムにおいては、スライドドアの自動閉鎖動作中に何らかの異物(例えば、人体や衣服等)を挟み込まないようにする必要がある。そのため、異物を検知するセンサと、当該センサによって異物が検知された際に、スライドドアを停止させるとともに、開方向へと逆転制御する機構とが一般的に設けられる。ここで、異物を検知すべく、静電容量式のセンサをスライドドアの前側端縁部に設ける方法が知られている(例えば、特許文献1等参照)。静電容量式のセンサは、人体等の異物が近接・接触した際に、静電容量が変化することに基づいて異物を検知するものである。
【0004】
また、暗所(夜間や暗闇)におけるドアの開閉時に異物が挟み込まれてしまうという事態を防止すべく、スライドドアの前側端縁部に沿ってLED等の発光手段を設け、ドア端縁部を視認可能とすることが考えられる。
【特許文献1】特開2007−123202号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、ドア端縁部をより確実に視認可能とするためには、発光手段を複数設けたり、長尺状の発光手段を設けたりする必要があるが、ドア端縁部の限られたスペースに複数或いは長尺状の発光手段を設けることは困難である。また、発光手段をドアの端縁部に配置できたとしても、発光手段がセンサの近傍に配置されることとなるため、発光手段の動作等に伴い、センサの静電容量が変化してしまい、ひいてはセンサが誤作動してしまうおそれがある。加えて、発光手段を複数設けた場合には、ドア端縁部に沿って光源が点在することとなってしまい、外観品質の低下を招いてしまうおそれがある。
【0006】
本発明は上記事情を鑑みてなされたものであり、その目的は、近接・接触状態で異物を検知することができるとともに、センサの誤作動及び外観品質の低下を防止しつつ、ドア端縁部の視認性を向上させることができる長尺センサ及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
以下、上記目的を解決するのに適した各手段につき、項分けして説明する。なお、必要に応じて対応する手段に特有の作用効果を付記する。
【0008】
手段1.車両本体に設けられた開口部を開閉可能な開閉体の側縁部に取着される取付基部と、
前記取付基部から前記開口部周縁側に向けて膨出し、内部に中空部を有する表皮部と、
前記中空部内において、互いに相対向するように所定間隔を隔てて設けられた一対の電極と
を有し、前記一対の電極間の静電容量の変化に基づき、前記表皮部への近接及び接触のうち少なくとも一方を検知するとともに、
自身の両端部のうち少なくとも一方の端部に発光手段を備えてなる長尺センサであって、
前記中空部内には、
透明又は半透明であり、空気よりも誘電率の高い弾性変形可能な導光材料により形成されるとともに、前記発光手段が発する光を導光する長尺状の弾性導光体と、
空気よりなる空気層とが設けられ、
前記一対の電極のうち、
第1の電極は、前記表皮部側に設けられる一方で、
前記第1の電極とは異なる第2の電極が、前記第1の電極との間で前記空気層を挟むようにして前記取付基部側に設けられ、さらに、
前記表皮部は、自身の少なくとも一部に透明又は半透明の透明部を有しており、
前記弾性導光体によって導光される光が前記透明部を透過することを特徴とする長尺センサ。
【0009】
上記手段1によれば、人体等の異物が近接した場合には、第1の電極及び第2の電極間の静電容量が比較的大きく変化することとなる。すなわち、人体等の異物については、非接触状態で感度よく検知することができる。
【0010】
さらに、第1の電極と第2の電極との間には、空気よりなる空気層が設けられている。このため、異物が表皮部に接触した場合には、比較的小さな荷重であっても、両電極間の距離を比較的大きく減少させることができ、両電極間の静電容量を比較的大きく変化させることができる。その結果、異物の検知精度を一層向上させることができる。
【0011】
また、異物に押圧されることによって空気層が潰された際、両電極間の距離が減少したときの両電極間の静電容量の変化量は弾性導光体の誘電率によることとなるが、本手段1において、弾性導光体の誘電率は空気(空気層)の誘電率よりも大きなものとされている。そのため、弾性導光体の潰れ量が比較的小さなものであっても、静電容量の変化量を比較的大きなものとすることができ、異物を一層感度よく検知することができる。但し、センサ形状が長尺状をなすため、弾性導光体の誘電率が大きすぎる場合には、静電容量が大きくなりすぎて、異物(誘電体)を検知することが困難となってしまうおそれがある。そのため、弾性導光体の誘電率としては、あまり大きすぎない適値の誘電率を選択することが好ましい。
【0012】
さらに、本手段1によれば、導光材料によって形成された長尺状の弾性導光体が、発光手段が発する光を導光し、当該導光された光が表皮部の透明部を通して発するように構成されている。これにより、ドア端縁部に沿って長尺センサを線状に発光させることができるため、外観品質の低下を防止しつつ、ドア端縁部の視認性の向上を図ることができる。
【0013】
加えて、中空部内には空気層が設けられているため、当該空気層と、弾性導光体や表皮部との間において光を屈折・反射させることができる。これにより、導光に際する光の漏れ出しを効果的に抑制することができ、長尺のセンサであっても発光手段が設けられている一端部から他端部に向けて、光をより確実に導光させることができる。これにより、視認性の一層の向上を図ることができる。
【0014】
また、発光手段が長尺センサの端部に設けられているため、発光手段の動作や発光手段と接続される配線等によって両電極間の静電容量が変化してしまうことをより確実に抑制でき、ひいては長尺センサの誤作動をより確実に防止することができる。
【0015】
以上、本手段1によれば、弾性導光体及び空気層によって、異物の検知精度の飛躍的な向上を図ることができるとともに、空気層によって光の漏れ出しを抑制しつつ、長尺状の弾性導光体が端部に設けられた発光手段の光を導光することで、センサの誤作動及び外観品質の低下といった事態を招くことなく、ドア端縁部の視認性を飛躍的に向上させることができる。
【0016】
手段2.前記第1の電極が、透明又は半透明の導電性材料によって形成されているとともに、
前記表皮部の略全域に透明部が形成されていることを特徴とする手段1に記載の長尺センサ。
【0017】
上記手段2によれば、第1の電極が透明又は半透明の導電性材料によって形成されるとともに、表皮部の略全域に透明部が形成されるため、表皮部の略全域に亘って弾性導光体が導光する光を透過させることができる。その結果、ドア端縁部の視認性をより一層向上させることができる。
【0018】
手段3.前記発光手段が両端部に設けられていることを特徴とする手段1又は手段2に記載の長尺センサ。
【0019】
上記手段3によれば、発光手段が長尺センサの両端部に設けられるため、光量をより増加させることができる。その結果、ドア端縁部の視認性の更なる向上を図ることができる。
【0020】
手段4.前記第1の電極が網状に形成されていることを特徴とする手段1乃至手段3のいずれかに記載の長尺センサ。
【0021】
上記手段4によれば、第1の電極は網状に形成されている。このため、弾性導光体の発する光が第1の電極の存在によって外部に出づらくなってしまうといった事態を抑制することができる。その結果、ドア端縁部の視認性の一層の向上を図ることができる。
【0022】
手段5.手段1乃至手段4のいずれかに記載の長尺センサの製造方法であって、
前記取付基部、及び、前記中空部を有する前記表皮部を備えるセンサ基体を形成する工程と、
前記第1の電極、前記第2の電極、前記弾性導光体、及び、前記空気層を備えるセンサ形成体を形成する工程と、
前記中空部に前記センサ形成体を挿設する工程と
を含むことを特徴とする長尺センサの製造方法。
【0023】
上記手段5によれば、センサ基体と、センサ形成体とが別体で形成され、センサ基体の中空部にセンサ形成体が挿設されることで、長尺センサが形成される。このため、製造工程の簡素化、及び、生産効率の向上を図ることができる。
【0024】
手段6.前記中空部の内周面に対する、前記センサ形成体の外周面の相対回転を規制する相対回転規制手段を設けたことを特徴とする手段5に記載の長尺センサの製造方法。
【0025】
上記手段6によれば、相対回転規制手段を設けることによって、中空部の内周面に対する、センサ形成体の外周面の相対回転を規制することができる。これにより、センサ形成体がねじれた状態で中空部に挿設されてしまうといった事態を防止することができる。その結果、長尺センサの異物検知機能が発揮されない等の不具合の発生をより確実に抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下に、一実施形態について図面を参照しつつ説明する。
【0027】
図1はスライドドアを搭載した車両の概略斜視図である。同図に示すように、車両1本体は、そのボディ側面に開閉体としてのスライドドア2を有している。当該スライドドア2は、ボディ側面の中央部に設けられたスライドレール3と、ボディ側面の天井部側及び床部側に設けられた図示しないスライドレールとによって、ボディ側面に支持されている。当該スライドドア2は、ボディ側面に示される開口部としての昇降口4を全閉した図示する全閉位置と、昇降口4を全開した全開位置(図中の二点鎖線参照)との間に亘ってボディ側面に沿ってスライドし、昇降口4を開閉できるように構成されている。
【0028】
ボディのドアピラー5の後端面とスライドドア2の前方側サイドパネルとの間には、ボディとドアとを係合する図示しないロック機構が設けられている。そして、スライドドア2が図示する全閉位置までスライドされると、スライドドア2は、このロック機構により、全閉位置でロックされるように構成されている。
【0029】
また、前記スライドドア2の内部には、自動閉鎖機構が設けられている。当該自動閉鎖機構は、全開位置にあるスライドドア2を全閉位置までスライド動作させるためのものである。図2に示すように、自動閉鎖機構は、スライドドア2を全閉位置まで動作させるための駆動手段としての駆動モータ11と、当該駆動モータ11を駆動制御する制御手段としての電子制御ユニット(ECU)12とを備えている。ECU12には、運転席に配設される操作スイッチ13や、車両室内に配置されるリモートコントローラ(リモコン)スイッチ14等から閉鎖指令信号が入力されるようになっている。また、ECU12には、駆動モータ11或いは別途の図示しない検出センサからの信号に基づき、スライドドア2の位置が現在どの程度であるのかが(全開位置、全閉位置をも含めて)把握可能となっている。
【0030】
そして、昇降口4が開状態(ここでは、例えばスライドドア2が全開位置)にあるときに、閉鎖指令信号が入力された場合、ECU12は、前記駆動モータ11を正転駆動制御する。これにより、スライドドア2が全閉位置までスライド動作され、全閉位置にてロックされるようになっている。そして、ロックが完了した後、駆動モータ11の動作が停止されるようになっている。
【0031】
さらに、本実施形態では、スライドドア2と昇降口4周縁との隙間に異物が存在していることを検知可能な長尺センサ21が設けられている。当該長尺センサ21は、静電容量計測手段15に対して電気的に接続されており、静電容量計測手段15は、前記ECU12に対して電気的に接続されている。ここで、静電容量計測手段15は、後述する第1の電極27及び第2の電極28間の静電容量を計測可能に構成されており、計測された静電容量(に関する情報)がECU12に対して伝送されるようになっている。本実施形態において、前記ECU12は、異物が近接・接触していないときの静電容量(初期静電容量)に対する伝送された静電容量の変化割合が、予め設定された閾値よりも大きい場合に、スライドドア2と昇降口4周縁との隙間に異物が存在しているものと検知する。そして、駆動モータ11の閉動作を一旦停止させるとともに、スライドドア2を開方向へと移動させる逆転駆動制御を行うようになっている。すなわち、ECU12は、停止制御手段としての機能をも発揮するよう構成されている。
【0032】
また、長尺センサ21は、発光手段としてのLED51を備えている。当該LED51は、ECU12に対して電気的に接続されており、スライドドア2の開閉状態に基づいてECU12により生成・出力された発光信号を受信した際に点滅状態で発光するように構成されている。本実施形態においては、全開位置にあるスライドドア2を全閉位置までスライド動作させる際(つまり、スライドドア2の閉動作時)に、ECU12によって発光信号が生成・出力され、LED51が発光するように構成されている。
【0033】
ここで、長尺センサ21等の詳細について説明する。図3は、スライドドア2の前端縁部の中央部分及びドアピラー5の中央部分を示す図1のJ−J線断面図である。同図に示すように、ボディのドアピラー5の後端側に沿って上下に延びるフランジ5aには、ウエザストリップ31が設けられている。ウエザストリップ31は、スライドドア2が同図実線で示す全閉位置までスライドされたときに、ボディとスライドドア2との間をシールするものである。尚、スライドドア2の全閉直前においては、当該スライドドア2は、図中二点鎖線で示すように、この全閉位置から図において斜め右下に位置する。
【0034】
前記ウエザストリップ31は、押出成形により得られるものであり、フランジ5aに差し込み固定される取付基部32と、中空状のシール部33とを備えている。この場合において、取付基部32はEPDMソリッドゴムにより形成され、シール部33はEPDMスポンジゴムにより形成されている。そして、シール部33が、スライドドア2のインナパネルにより押圧されて潰れ変形することでシール機能が発揮されるようになっている。
【0035】
次に、長尺センサ21について説明する。本実施形態において、長尺センサ21は、ボディのドアピラー5と対向する部位のスライドドア2の前端部2bに取付けられている。長尺センサ21は、EPDMソリッドゴムからなり、スライドドア2の前端部2bに固定される取付基部22と、弾性が比較的小さな材料からなる表皮部23とを備えている。尚、長尺センサ21は、スライドドア2の前縦辺部ほぼ全域に亘って装着されている。これにより、スライドドア2がその全閉位置までスライドされる際に、ドアピラー5の後端側面及びこれに対向するスライドドア2の前端縁間に異物が存在しているかを検知可能となっている。
【0036】
前記取付基部22は、押出成形によって形成され、基底部24と、当該基底部24からボディ後方側へと延びる一対の側壁部25a,25bとから構成されている。また、前記表皮部23は、前記取付基部22と一体で押出成形によって形成されており、ボディのドアピラー5側へと膨出するようにして断面円弧状に形成され、その内部には中空部26が形成されている。また、表皮部23は、比較的薄肉な透明材料(例えば、塩化ビニル等)によって形成された透明部52を備えている。本実施形態においては、表皮部23の略全域が、前記透明材料によって形成されている(すなわち、表皮部23の略全域が透明部52となっている)。
【0037】
加えて、前記中空部26内には、第1の電極27及び第2の電極28が配設されている。より詳しくは、第1の電極27は、前記表皮部23の内側(中空部26側)表面のうち、前記基底部24と対向する面に取着されており、第2の電極28は、前記取付基部22の基底部24表面に取着されている。
【0038】
さらに、前記第1の電極27は、例えば、ITO(酸化インジウムスズ)により形成された帯状の透明電極であり、前記表皮部23の断面形状に合わせて断面円弧状とされている。また、前記第1の電極27は、図示しない電荷供給装置に電気的に接続され、当該電荷供給装置から所定の電荷が供給されている。一方で、前記第2の電極28は、導電性材料(例えば、銅等)によって形成された電極箔であり、接地されている。このため、両電極27,28がコンデンサを構成するようになっている。また、第1の電極27には、前記静電容量計測手段15が電気的に接続されており、上述の通り、静電容量計測手段15によって、両電極27,28間の静電容量が計測される。尚、異物が前記第1の電極27に近接したときには、異物の有する静電容量だけ変化した静電容量が計測されることとなる。
【0039】
また、前記中空部26には、弾性導光体29と、空気層30とが設けられている。より詳しくは、弾性導光体29は、基底部24との間に前記第2の電極28を挟みこむようにして基底部24側に設けられている。また、弾性導光体29は、空気よりも誘電率が高く、弾性変形可能な長尺状の導光材料〔例えば、拡散材(シリカ等)を含有するアクリル系樹脂、シリコーン樹脂、シリコーンゴム等〕によって構成されている。また、空気層30は、前記弾性導光体29のドアピラー5側表面と、第1の電極27との間に形成された中空部分の空気により構成されている。さらに、前記空気層30は、前記弾性導光体29の側面部と前記表皮部23との間にまで延出するようにして形成されている。
【0040】
加えて、長尺センサ21の上端部に、前記LED51が設けられている。より詳しくは、図4(図1のK−K線断面図)に示すように、第2の電極28と、弾性導光体29との間にLED51が設けられている。当該LED51は、図示しない電力供給手段に対して電気的に接続されているとともに、当該電力供給手段から供給される電力によって発光可能に構成されている。また、LED51が発する光は、前記弾性導光体29によって、長尺センサ21の下端側へと導光されるようになっている。
【0041】
以上、本実施形態における長尺センサ21によれば、人体等の異物が近接した場合には、第1の電極27及び第2の電極28間の静電容量が比較的大きく変化することとなる。すなわち、人体等の異物については、非接触状態で感度よく検知することができる。
【0042】
さらに、第1の電極27と第2の電極28との間には、空気よりなる空気層30が設けられている。このため、異物が表皮部23に接触した場合には、比較的小さな荷重であっても、両電極27,28間の距離を比較的大きく減少させることができ、両電極27,28間の静電容量を比較的大きく変化させることができる。その結果、異物の検知精度を一層向上させることができる。
【0043】
また、異物に押圧されることによって空気層30が潰された際、両電極27,28間の距離が減少したときの両電極27,28間の静電容量の変化量は弾性導光体29の誘電率によることとなるが、本実施形態において、弾性導光体29の誘電率は空気(空気層30)の誘電率よりも大きなものとされている。そのため、弾性導光体29の潰れ量が比較的小さなものであっても、静電容量の変化量を比較的大きなものとすることができ、異物を一層感度よく検知することができる。但し、センサ形状が長尺状をなすため、弾性導光体29の誘電率が大きすぎる場合には、静電容量が大きくなりすぎて、異物(誘電体)を検知することが困難となってしまうおそれがある。そのため、弾性導光体29の誘電率としては、あまり大きすぎない適値の誘電率を選択することが好ましい。
【0044】
さらに、本実施形態においては、導光材料によって形成された長尺状の弾性導光体29が、LED51が発する光を導光し、当該導光された光が表皮部23の透明部52を通して発するように構成されている。これにより、スライドドア2端縁部に沿って長尺センサ21を線状に発光させることができるため、外観品質の低下を防止しつつ、スライドドア2端縁部の視認性の向上を図ることができる。
【0045】
加えて、中空部26内には空気層30が設けられているため、当該空気層30と、弾性導光体29や表皮部23との間において光を屈折・反射させることができる。これにより、導光に際する光の漏れ出しを効果的に抑制することができ、長尺のセンサであってもLED51が設けられている上端部から下端部に向けて、光をより確実に導光させることができる。これにより、視認性の一層の向上を図ることができる。
【0046】
また、LED51が長尺センサ21の端部に設けられているため、LED51の動作やLED51と接続される配線等によって両電極27,28間の静電容量が変化してしまうことをより確実に抑制でき、ひいては長尺センサ21の誤作動をより確実に防止することができる。
【0047】
このように、本実施形態によれば、弾性導光体29及び空気層30によって、異物の検知精度の飛躍的な向上を図ることができるとともに、空気層30によって光の漏れ出しを抑制しつつ、弾性導光体29が端部に設けられたLED51の光を導光することで、センサの誤作動及び外観品質の低下といった事態を招くことなく、スライドドア2端縁部の視認性を飛躍的に向上させることができる。
【0048】
また、第1の電極27が透明電極によって形成されるとともに、表皮部23の略全域に透明部52が形成されるため、表皮部の略全域に亘って弾性導光体29が導光する光を透過させることができる。その結果、スライドドア2端縁部の視認性をより一層向上させることができる。
【0049】
尚、上記実施形態の記載内容に限定されず、例えば次のように実施してもよい。勿論、以下において例示しない他の応用例、変更例も当然可能である。
【0050】
(a)上記実施形態では、第1の電極27がITOによって形成されているが、他の透明又は半透明の導電性材料(例えば、ZnO等)によって形成することとしてもよい。また、第1の電極27を不透明の導電性材料(例えば、銅や導電性樹脂等)によって形成することとしてもよい。
【0051】
(b)上記実施形態では、表皮部23の略全域が透明部52となっているが、表皮部23の一部に透明部52を形成することとしてもよい。この場合において、前記透明部52は、弾性導光体29の導光する光を表皮部23の外に発することができる位置に形成される必要がある。
【0052】
(c)上記実施形態では特に記載していないが、第1の電極27を網状に形成することとしてもよい。この場合には、第1の電極27を不透明の導電性材料によって形成したとしても、弾性導光体29の発する光が第1の電極27の存在によって外部に出づらくなってしまうといった事態を抑制することができる。その結果、スライドドア2端縁部の視認性の一層の向上を図ることができるとともに、第1の電極27を形成する材料の選択の幅を広げることができる。
【0053】
(d)上記実施形態では、長尺センサ21の上端部にLED51が設けられているが、長尺センサ21の下端部にLED51を設けることとしてもよい。また、長尺センサ21の両端部にLED51を設けることとしてもよい。長尺センサ21の両端部にLED51を設けることで、光量をより増加させることができ、スライドドア2端縁部の視認性の更なる向上を図ることができる。
【0054】
(e)上記実施形態では、LED51は、基底部24と弾性導光体29との間に配設されているが、弾性導光体29が導光可能な位置にLED51が配設されていればよい。従って、例えば、弾性導光体29の内部にLED51を埋め込むようにして配設することとしてもよい。
【0055】
(f)上記実施形態における長尺センサ21の断面形状はあくまでも例示であって、これに限定されるものではない。従って、図5(a)に示すように、長尺センサ21aの弾性導光体29aが、空気層30aを覆うようにして設けられていてもよいし、図5(b)に示すように、長尺センサ21bの弾性導光体29bの内部に、第1の電極27bや第2の電極28bが埋め込まれて構成されることとしてもよい。
【0056】
また、この場合において、図6(a),(b)に示すように、取付基部22a(22b)、及び、中空部26a(26b)を有する表皮部23a(23b)を備えるセンサ基体41a(41b)を押出成形によって形成するとともに、図7(a),(b)に示すように、両電極27a(27b),28a(28b)、弾性導光体29a(29b)、及び、空気層30a(30b)を備えるセンサ形成体42a(42b)を押出成形により形成し、センサ形成体42a(42b)をセンサ基体41a(41b)の中空部26a(26b)に挿設することで、長尺センサ21a(21b)を形成することとしてもよい。また、当該センサ成形体42a(42b)の表面に表面処理を施し、滑り性や防水性を持たせることとしてもよい。この場合には、製造工程の簡素化を図ることができるとともに、生産効率の向上を図ることができる。
【0057】
加えて、中空部26a(26b)の内周面に対する、センサ形成体42a(42b)の外周面の相対回転を規制可能な相対回転規制手段を設けることとしてもよい。相対回転規制手段としては、例えば、図5等に示したように、中空部26a(26b)、及び、センサ形成体42a(42b)の断面形状を互いに相対回転が不能な断面形状とすることで実現することとしてもよい。このように中空部26a(26b)の内周面に対する、センサ形成体42a(42b)の外周面の相対回転を規制可能とすることで、センサ形成体42a(42b)がねじれた状態で中空部26a(26b)に挿設されてしまうといった事態を防止することができる。これにより、長尺センサ21a(21b)の異物検知機能が発揮されない等の不具合の発生をより確実に抑制することができる。
【0058】
(g)上記実施形態では、ボディ側面に設けられた昇降口4を開閉するためのスライドドア2を有する場合について具体化している。つまり、上記実施形態における開閉体はスライドドア2とされている。これに対し、他の開閉体(例えば、非スライドタイプ)であっても差し支えない。他の開閉体としては、例えば、上部が支持されているハッチバックタイプのバックドアや、車両天井部を開閉するスライディングルーフ、ドアの窓部を開閉するドアガラス等であってもよい。
【0059】
(h)上記実施形態では、スライドドア2を全開位置から全閉位置まで自動的に閉鎖するシステムについて具体化しているが、スライドドア2を半閉鎖状態(半ドア位置)或いは中間位置から全閉位置まで自動的に閉鎖するシステムに具体化することも可能である。
【0060】
(i)上記実施形態では、スライドドア2の閉動作時にLED51が発光するように構成されているが、LED51の発光するタイミングはこれに限定されるものではない。従って、例えば、スライドドア2が開状態にある場合に、LED51が発光するように構成することとしてもよい。
【0061】
(j)上記実施形態では、LED51が点滅状態で発光するように構成されているが、LED51が点滅することなく発光することとしてもよい。また、スライドドア2の位置に従って、LED51の点滅の早さを変更したり、発光色を変化したりすることとしてもよい。従って、例えば、スライドドア2の前側端縁部と、ドアピラー5との距離が近づくに従って、LED51が早く点滅したり、発光色が変化(例えば、赤色に変化)したりするように構成してもよい。
【0062】
(k)上記実施形態では特に記載していないが、LED51の発光状態に合わせて警告音を発するように構成することとしてもよい。
【0063】
(l)上記実施形態では特に記載していないが、ECU12が異物を検知した段階で、LED51が通常時と異なる発光動作(例えば、点滅が早くなったり、発光色が変化したりする等)をするように構成することとしてもよい。
【0064】
(m)上記実施形態では、第1の電極27は、表皮部23の内側表面に取着されているが、第1の電極27を表皮部23の内部に埋め込むようにして設けることとしてもよい。また、上記実施形態において、第2の電極28は、取付基部22の表面に取着されているが、第2の電極28を取付基部22の内部に埋め込むようにして設けることとしてもよい。この場合には、長尺センサ21を押出成形によって製造する際に、第1(第2)の電極27(28)を表皮部23や取付基部22とともに押出成形することで、長尺センサ21を製造することができる。従って、第1(第2)の電極27(28)を中空部26に配設する工程を省略することができ、製造工程の簡素化を図ることができる。
【0065】
(n)上記実施形態では、発光手段としてLED51が設けられているが、他の発光手段(例えば、有機EL等)を設けることとしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】スライドドアを具備する車両を示す斜視図である。
【図2】ECU等の電気的構成を示すブロック図である。
【図3】図1におけるJ−J線断面図である。
【図4】図1におけるK−K線断面図である。
【図5】(a),(b)は、別の実施形態における長尺センサを示す断面図である。
【図6】(a),(b)は、別の実施形態におけるセンサ基体を示す断面図である。
【図7】(a),(b)は、別の実施形態におけるセンサ形成体を示す断面図である。
【符号の説明】
【0067】
1…車両、2…開閉体としてのスライドドア、4…開口部としての昇降口、21,21a,21b…長尺センサ、22,22a,22b…取付基部、23,23a,23b…表皮部、26,26a,26b…中空部、27,27a,27b…第1の電極、28,28a,28b…第2の電極、29,29a,29b…弾性導光体、30,30a,30b…空気層、41a,41b…センサ基体、42a,42b…センサ形成体、51…発光手段としてのLED、52…透明部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両本体に設けられた開口部を開閉可能な開閉体の側縁部に取着される取付基部と、
前記取付基部から前記開口部周縁側に向けて膨出し、内部に中空部を有する表皮部と、
前記中空部内において、互いに相対向するように所定間隔を隔てて設けられた一対の電極と
を有し、前記一対の電極間の静電容量の変化に基づき、前記表皮部への近接及び接触のうち少なくとも一方を検知するとともに、
自身の両端部のうち少なくとも一方の端部に発光手段を備えてなる長尺センサであって、
前記中空部内には、
透明又は半透明であり、空気よりも誘電率の高い弾性変形可能な導光材料により形成されるとともに、前記発光手段が発する光を導光する長尺状の弾性導光体と、
空気よりなる空気層とが設けられ、
前記一対の電極のうち、
第1の電極は、前記表皮部側に設けられる一方で、
前記第1の電極とは異なる第2の電極が、前記第1の電極との間で前記空気層を挟むようにして前記取付基部側に設けられ、さらに、
前記表皮部は、自身の少なくとも一部に透明又は半透明の透明部を有しており、
前記弾性導光体によって導光される光が前記透明部を透過することを特徴とする長尺センサ。
【請求項2】
前記第1の電極が、透明又は半透明の導電性材料によって形成されているとともに、
前記表皮部の略全域に透明部が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の長尺センサ。
【請求項3】
自身の両端部に前記発光手段が設けられていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の長尺センサ。
【請求項4】
前記第1の電極が網状に形成されていることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の長尺センサ。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の長尺センサの製造方法であって、
前記取付基部、及び、前記中空部を有する前記表皮部を備えるセンサ基体を形成する工程と、
前記第1の電極、前記第2の電極、前記弾性導光体、及び、前記空気層を備えるセンサ形成体を形成する工程と、
前記中空部に前記センサ形成体を挿設する工程と
を含むことを特徴とする長尺センサの製造方法。
【請求項6】
前記中空部の内周面に対する、前記センサ形成体の外周面の相対回転を規制する相対回転規制手段を設けたことを特徴とする請求項5に記載の長尺センサの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−220704(P2009−220704A)
【公開日】平成21年10月1日(2009.10.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−67566(P2008−67566)
【出願日】平成20年3月17日(2008.3.17)
【出願人】(000241463)豊田合成株式会社 (3,467)
【Fターム(参考)】