説明

集積光モジュール及び集積光モジュールの組立調整方法

【課題】光ピックアップ装置の組立性の向上や高速化を実現する集積光モジュールにあって、高出力のレーザ光源は、発熱量が大きく、この発熱を適正に放熱できない場合に、温度上昇によるレーザ性能の劣化及び寿命劣化を招き、集積光モジュールに信頼性の問題が発生した。
【解決手段】レーザ光源11と受光素子12とを、平板状のベースプレート16の両面にそれぞれ固定して集積化されたた集積光モジュール1であって、受光素子12が、ベースプレート16の一方の面に、レーザ光源11が、ベースプレート16の他方の面に位置決め固定されている。そして、このレーザ光源11は、少なくとも2つの凸部18aを有する、熱伝導性の部材で構成されたレーザ光源ホルダ18に保持され、ベースプレート16のスルーホール16b(凹部)内に、熱伝導性の接着部材が充填されて、位置決め固定される構成とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ディスクなどの光記録媒体に情報を記録したり、光記録媒体に記録された情報を読み出したりするために用いられる光ピックアップ装置などの要部となる集積光モジュールと、その集積光モジュールを組み立てながら調整する組立調整方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、光ディスクなどの光記録媒体の情報記録容量を高密度化及び大容量化し、さらに光ディスクなどをモバイルで使用するために、光ピックアップ装置の小型軽量化及び高速化が強く望まれている。
そのため、そのような光ピックアップ装置の光源と受光部を含む主要な部分を集積化したものが、種々提案されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、光記録媒体にレーザ光を照射する光源装置と、光記録媒体からの戻り光を波面分割する回折素子(ホログラム素子)と、その回折素子を通過した戻り光を光源装置と異なる方向へ導く偏光ビームスプリッタと、その異なる方向へ導かれた戻り光を検出する光検出器とを、光源装置の保持部材と一体に固定して集積化した光集積ユニット(集積光モジュール)、およびその光集積ユニットを用いた光ピックアップ装置が提案されている。
【0004】
このような光集積ユニットでは、それを構成する各光学部品の形状寸法や特性の精度と共に高い組み付け精度が要求される。そして、光源装置の発光点と光検出器における非回折光検出部の中心位置とが同一の光軸上となり、回折素子によって波面分割された戻り光のそれぞれの回折光が光検出器によって検出されたときの光強度比が設計値どおりであることが必要である。
【0005】
そのため、上記特許文献1においては、上記光集積ユニットの各光学部品を相互に固定する際に位置調整をすることと、光源装置と光検出器との相対的な位置調整を行って、上記回折素子による非回折光と回折光の光検出器(二次元的に異なる位置に複数の検出部を有する)への落射位置が所定の位置になるようにする調整方法も記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−59032号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記特許文献1に記載された光集積ユニットは、それを構成する各光学部品を相互の決めを行いながら組み付けし難い。また、光源装置と光検出器の位置調整は、保持部材に光源装置をレーザ光の出射方向(光軸)と直交する各方向(X−Y面内)に若干移動できるように保持し、その光源装置が出射するレーザ光を調整用のミラーやコーナキューブで反射させた戻り光を検出器によって検出させながら、光源装置をその光検出器に対してX−Y方向に相対的に移動させて行っている。すなわち、光集積ユニット自体の光源を基準にして調整している。
【0008】
しかし、このような調整方法では、発光点と光検出器の中心を同一光軸上にすることはできるが、発光点と光検出器の中心を共役な関係とすることはできない。また、発光光軸及び戻り光の光軸パッケージに対して傾く可能性があり、最適な調整をすることはできな
い。
【0009】
また、上記の調整方法では光軸方向(Z方向)の位置調整は行わないので、戻り光の非回折光の焦点が光検出器の非回折光検出部の中心と一致せず、焦点ずれが生じたままになる恐れがある。この焦点ずれが大きい場合、回折素子を回転させても補償しきれず、良好な再生信号を得ることができないという問題があった。
【0010】
更に、特許文献1では、光源装置、光検出器、偏光ビームスプリッタ、回折格子を集積化した光集積ユニットではあるが、光源装置で発生した熱を放熱する技術を開示するものではない。
そして特に、光ピックアップ装置の高速化に対応する高出力の光源装置は、発熱量が大きく、この発熱を適正に放熱できない場合に、光源装置であるレーザ光源の温度上昇によるレーザ性能の劣化及び寿命劣化を招き、信頼性に問題が発生した。
【0011】
本発明は、これらの問題を解決するためになされたものであり、構成する各光学備品の最適な位置調整ができ、しかもレーザ光源の発熱に対して、集積光モジュール内に良好な熱伝導性を確立し、光ピックアップ装置に放熱する集積光モジュール及び集積光モジュールの組立調整方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の集積光モジュールは、上記の目的を達成するため、下記記載の構成を採用するものである。
本発明の集積光モジュールは、往路光ビームとしてレーザ光を出射するレーザ光源と、往路光ビームが反射されて戻る復路光ビームが導かれる受光素子とが、平板状のベースプレートに固定されている集積光モジュールであって、受光素子は、ベースプレートの一方の面に位置決め固定されており、このレーザ光源が、ベースプレートの他方の面側であって、少なくとも2つの凸部を有する、熱伝導性の部材で構成されたレーザ光源ホルダに保持されており、ベースプレートが、凸部に対応する位置に凹部を有し、ベースプレートの凹部内に、熱伝導性の接着剤が充填することで、レーザ光源が位置決め固定されていることを特徴とする。
【0013】
本発明の集積光モジュールは、往路光ビームが通過し、復路光ビームを反射して受光素子へ導く偏光ビームスプリッタと、復路光ビームを波面分割して、その分割した復路光ビームを、偏光ビームスプリッタを介して受光素子の異なる検出位置に導くホログラム素子と、を更に有し、ホログラム素子は、偏光ビームスプリッタの復路光ビーム入射側に位置決め固定されているようにしてもよい。
【0014】
なお、偏光ビームスプリッタと受光素子との間は、スペーサによって所定の間隙に調整されているとよい。
【0015】
また、本発明の集積光モジュールの調整方法は、集積光モジュールを構成するための部材として、ベースプレートと、レーザ光源と、受光素子とを用意するとともに、発振波長と発散角が前記レーザ光源と同等なレーザ光源である参照光源と、撮像素子とを備え、参照光源の発光点と撮像素子の画像原点とが共役の関係に設定された光学装置を用意し、以下の(1)から(3)の各工程を行なって、集積光モジュールを組み立てながら調整することを特徴とする。
(1)ベースプレートに受光素子を位置決め固定する工程、
(2)受光素子の非回折光(0次光)受光部の中心位置を、光学装置の参照光源の発光点と共役な関係に調整する工程、
(3)ベースプレートの受光素子を固定した面と反対の面側に、集積光モジュールを構成
するレーザ光源を配置し、レーザ光源の発光点を光学装置の撮像素子の画像中心と共役な関係になるように、レーザ光源をレーザ光源の光軸方向、および光軸方向と垂直な面内に移動させて調整した後、熱伝導性の接着部材を用いてベースプレートに固定することで、レーザ光源で発生する熱を、接着部材を介して前記ベースプレートに放熱できるようにする工程。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、集積光モジュールを組み立てる際に使用するレーザ光源の発光光軸が、ずれたり、または傾いたとしても、その影響を受けずに正確に個々の位置調整がされるとともに、この集積光モジュールが組み込まれた光ピックアップ装置が、レーザ光源の温度上昇によるレーザ性能の劣化及び寿命劣化を招くことがなくなる。従って、本発明によれば、構成の複雑化、高コスト化を招くことなく、良好な熱放散が可能で、光ピックアップ装置の高速化と高信頼性を実現することが可能となる。
【0017】
本発明による上記集積光モジュールの組立調整方法によれば、レーザ光源と受光素子をベースプレート上に集積化した、放熱特性が良好な集積光モジュールを、正確に位置決め調整することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の集積光モジュールの一実施例の外観を示す斜視図である。
【図2】上記の集積モジュールの構成を示す分解斜視図である。
【図3】上記の集積光モジュールの縦断面図である。
【図4】上記の集積光モジュールが組み込まれた光ピックアップ装置の構成を示す模式的な図である。
【図5】上記の集積光モジュールの組立調整方法で使用する光学装置及びコリメータレンズの構成図である。
【図6】上記の集積光モジュールの組立調整方法の工程(1)で、ベースプレート上に受光素子を固定した状態を示す平面図である。
【図7】上記組立調整方法でベースプレート上のスペーサと偏光ビームスプリッタを示す斜視図ある。
【図8】上記組立調整方法の各光学部材の配置と光路を示す図である。
【図9】同じく工程(2)で、受光素子の0次光検出部の中心を集光光の光軸に一致させる調整の例を説明するための図である。
【図10】同じく工程(2)で、受光素子の0次光検出部の中心と集光光の焦点とを一致させる調整の例を説明するための図である。
【図11】各光学部材の配置と光路を示す図である。
【図12】上記組立調整方法の工程(3)を行う際の、各光学部材の配置と光路を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施例を図面に基づいて具体的に説明する。
図1から図4は、本実施例の集積光モジュールの構成を説明するための図面であり、図1は、この集積光モジュールの外観を示す斜視図であり、図2は、集積光モジュールの構成を示す分解斜視図であり、図3は、集積光モジュールの縦断面図であり、図4は、集積光モジュールが組み込まれた光ピックアップ装置の構成を示す模式的な図である。
【0020】
[集積光モジュールの構成および作用:図1から図3]
まず、図1から図4を用いて本実施例の集積光モジュールの全体構成を説明する。なお、各図において同一の構成部材には同一の番号を付して、重複する説明は省略する。
【0021】
図1に示すように、集積光モジュール1は、レーザ光源11、受光素子12、偏光ビームスプリッタ13、及びホログラム素子14が一体化されて構成されている。レーザ光源11は、レーザ光源ホルダ18に嵌入保持され、そのレーザ光源ホルダ18が、ベースプレート16の一方の面(図では下面)に、位置決め固着されている。
【0022】
また、ベースプレート16の他方の面(図では上面)には、受光素子12が位置決め固着されると共に、スペーサ17を介して偏光ビームスプリッタ13が位置決め固着されている。更に、その偏光ビームスプリッタ13の上面には、ホログラム素子ホルダ15を介してホログラム素子14が位置決め固着されている。各位置決め固着方法については、後で詳細に説明する。
【0023】
ベースプレート16は、熱伝導率の良好なセラミクス基板(例えば窒化アルミ基板、アルミナ基板)からなり、図2に示すように、レーザ光を通過させるための開孔16aと、後述するレーザ光源ホルダ18の凸部を収納する2つのスルーホール16bが形成されている。スルーホール16bは、金メッキ或いは半田メッキの表面処理が施されていることが望ましい。そして、ベースプレート16は、回路基板を兼ねているから、受光素子12による検出信号を処理する回路素子を搭載したり、その検出信号を外部へ導出するための配線パターンが形成され、フレキシブルプリント回路(FPC)を接続したりすることもできるようになっている。
なお、本図中に示したスルーホール16bは、ベースプレート16の上面側が塞がれていても問題は無い。したがって、本明細書及び特許請求の範囲では、スルーホール16bとその上面側が塞がれたものを総称して「凹部」と言うこととする。
【0024】
レーザ光源ホルダ18は、銅や銅合金、或いは、アルミニウムなどの熱伝導率の高い金属からなり、内部にレーザ光源11を嵌入固定すると共に、ベースプレート16と対向する面に、2つの円柱状の突起18aが凸部を形成している。2つの突起18aは、ベースプレート16の2つのスルーホール16bに挿入可能に形成され、突起18aの高さはベースプレート16の厚さを超えない寸法に、突起18aの直径はスルーホール16bの内径との間に間隙が形成される寸法に設定されている。この間隙は、後述するレーザ光源11の位置を調整する工程において、スルーホール16bに挿入された突起18aの凸部が干渉することなく、レーザ光源ホルダ18の位置調整が可能なように設定されている。
【0025】
また、図3に示すように、突起18aの凸部とスルーホール16bとで形成された間隙は、半田或いは熱伝導性の接着部材19(例えば、銀ペースト、銅ペースト)で充填されている。この様な形態として、レーザ光源11を点灯することで発生した熱は、熱伝導率の高い金属からなるレーザ光源ホルダ18の突起18aから、半田或いは熱伝導性の接着部材19を経由してベースプレート16に伝導し、更には、光ピックアップ装置の筐体に伝導させることができる。これにより、レーザ光源11で発生する熱の、効率良い放熱を実現する。
【0026】
偏光ビームスプリッタ13には、その内部に上下面に対して45°に傾斜して互いに平行なビームスプリット面13aと反射面(ミラー面)13bが形成されている。
【0027】
スペーサ17は、レーザ光を通過させるための開孔17aとガイド部17bを有し、開孔17aは、ベースプレート16の開孔16aを基準としてスペーサ17の位置決めのガイドの機能も有し、ガイド部17bは、偏光ビームスプリッタ13を受光素子12に対して最適位置に配置するガイドの機能を有している。スペーサ17によって、ベースプレート16と偏光ビームスプリッタ13との間隔が決められている。
【0028】
この偏光ビームスプリッタ13は、予めスペーサ17の厚さ分を加えた厚みを有するよ
うにして、スペーサ17を無くして目的の集積光モジュール1を構成しても構わない。その場合、偏光ビームスプリッタ13と受光素子12とが干渉しないように、ベースプレート16に凹部を形成してそこに受光素子12を配置するか、偏光ビームスプリッタ13の受光素子12と対向する部分の厚みを若干薄くすればよい。
【0029】
ホログラム素子ホルダ15は、枠状に形成され、スペーサ17と同様にレーザ光を通過させるための開孔15aとガイド部15bを有し、このガイド部15bは、ホログラム素子14を位置決めするガイドの機能を有している。なお、ホログラム素子ホルダ15を省略して、ホログラム素子14を偏光ビームスプリッタ13の上面に直接固定するようにしてもよい。
【0030】
次に、集積光モジュール1の作用について説明する。
図3に示すように、半導体レーザであるレーザ光源11は、発光点P1からレーザ光を発光して往路光ビームとして矢印a方向に出射する。そのレーザ光は、例えば波長が405nmの青紫光であるが、これに限るものではない。3本の端子(足)11aは、レーザ光源11の発光と発光制御の電気的な接続端子である。
【0031】
偏光ビームスプリッタ13は、往路光ビームをそのまま透過させるが、その往路光ビームが外部の反射部材によって反射されて戻された、矢印b方向から入射する復路光ビームを、ビームスプリット面13aで反射して90°方向を変え、さらに反射面13bで反射して、90°方向を変えて受光素子12に向かわせる。
【0032】
ホログラム素子14には、波面を分割するための、その分割する領域ごとに異なるパターンが形成されている。そして、このホログラム素子14は、往路光ビームをそのまま透過させるが、矢印b方向から入射する復路光ビームを、各領域のパターンごとに異なる回折を与える。このとき、パターンごとに非回折光(0次光)と回折光(±1次回折光)が生じ、パターンごと及び回折次数ごとに分割した復路光ビームを、受光素子12の異なる位置に導く。
【0033】
具体的には、例えばこのホログラム素子14は、トラッキングエラー信号およびフォーカスエラー信号を形成する領域を有する。この領域が、上述した分割する領域である。なお、このトラッキングエラー信号の形成には、3ビーム法、作動プッシュプル法などの手法が利用され、フォーカスエラー信号の形成には、ナイフエッジ法、スポットサイズ法などが利用される。
【0034】
受光素子12は、ホログラム素子14で分割された復路光ビームを受光する面の異なる位置に、複数の光電変換領域(検出部)を有し、その複数の光電変換領域によって、トラッキングエラー信号、フォーカスエラー信号、及び情報再生信号を検出する。この受光素子12に、検出した各信号を増幅する機能を持たせることもできる。
【0035】
[光ピックアップ装置の構成および作用:図4]
次に、集積光モジュール1が組み込まれた光ピックアップ装置100の構成および作用を、模式的に示す図4を用いて説明する。
【0036】
まず、光ピックアップ装置100の構成について説明する。
図4に示す様に、集積光モジュール1は、光ピックアップ装置100の基台101に、集積光モジュール1のベースプレート16が位置決め固着されて組み込まれる。そして、集積光モジュール1のレーザ光源11の発光点P1を通る光軸M上に、光ピックアップ装置100のコリメータレンズ102と波長板103と対物レンズ104が間隔を空けて配置される。なおここで、光ピックアップ装置100の薄型化を図りたい場合は、例えばコ
リメータレンズ102と対物レンズ104との間に立ち上げミラーを設ければよい。この様に構成すれば、レーザ光源11から発せられる往路光ビーム111を、この立ち上げミラーにより紙面手前方向に90°光路を変えことができ、装置の薄型化を実現する。
【0037】
次に、光ピックアップ装置100の作用について説明する。
集積光モジュール1から出射する往路光ビーム111は、コリメータレンズ102によって平行光束になり、波長板103にて直線偏光から円偏光に変換され、対物レンズ104によって光ディスク200に集光する。
【0038】
光ディスク200によって反射された復路光ビームは、対物レンズ104によって平行光束にされ、波長板103にて直線偏光に変換され、コリメータレンズ102によって集光され、偏光ビームスプリッタ13のビームスプリット面で直角に反射した復路光ビーム112が受光素子12に入射し、電気信号に変換される。
【0039】
対物レンズ104は、対物レンズホルダ105からなる対物レンズ駆動機構(図示せず)によって、受光素子12によって検出されるトラッキングエラー信号とフォーカスエラー信号に応じて、トラッキング方向(図の左右方向)とフォーカス方向(光軸方向;図の上下方向)に移動され、集光スポットが常に光ディスク200のトラック上になるように制御されている。
【0040】
なお、集積光モジュール1は、後述の方法で発光素子と受光素子の光軸が調整済みである。
【0041】
この様に、光ピックアップ装置100にこの集積光モジュール1を組み込むことで、超小型の光ピックアップ装置を簡単に製造でき、組み立て工程が簡略化できるので、コスト低減にも貢献する。
【0042】
また、図3において説明したように、レーザ光源11から発生した熱は、レーザ光源ホルダ18から突起18aに達し、半田或いは熱伝導性の接着部材19を経由してベースプレート16に伝導し、そして更に、熱容量と放熱面積の大きい光ピックアップ装置100の基台101に伝導して放熱する。このように、熱伝導の良好な構造を採用しているからこそ、レーザ光源11の発熱によるレーザ性能の劣化及び寿命劣化を招くことがなく、信頼性のある高速化した光ピックアップ装置が実現可能となる。
【0043】
〔集積光モジュールの組立調整方法:図5−図12〕
次に、この集積光モジュール1を組み立てながら調整する組立調整方法について、図5から図12を用いて説明する。
図5は、集積光モジュールの組立調整方法で使用する光学装置及びコリメータレンズの構成図である。図6は、集積光モジュールの組立調整方法の工程(1)で、ベースプレート上に受光素子を固定した状態を示す平面図である。図7は、ベースプレート上の、スペーサと偏光ビームスプリッタを示す斜視図ある。図8は、各光学部材の配置と光路を示す図である。図9は、工程(2)で、受光素子の0次光検出部の中心を集光光の光軸に一致させる調整の例を示す図である。図10は、同じく工程(2)で、受光素子の0次光検出部の中心と集光光の焦点とを一致させる調整の例を示す図である。図11は、各光学部材の配置と光路を示す図である。図12は、工程(3)を行う際の、各光学部材の配置と光路を示す図である。
【0044】
まず、前述した集積光モジュール1を構成する各部品と、図5に示す光学装置2及びコリメータレンズ4を用意する。
【0045】
この光学装置2は、参照光源21、ビームスプリッタ22、撮像素子23及びコリメータレンズ24からなる。コリメータレンズ4は、光学装置2のコリメータレンズ24と全く同一のものが良い。
【0046】
参照光源21は、発振波長と発散角が集積光モジュール1のレーザ光源11と同等のレーザ光源である。
【0047】
ビームスプリッタ22は、内部に45°に傾斜したハーフミラー面22aを有し、入射光の約半分は透過し、残り半分は反射して90°向きを変えて出射する。したがって、参照光源21からコリメータレンズ24に向けて出射されるレーザ光の約半分をそのまま透過させ、光学装置2の外部からコリメータレンズ24に入射する光の約半分を撮像素子23に向けて反射させる。
【0048】
コリメータレンズ24は、参照光源21から出射されたレーザ光である発散光を平行光にする。また、光学装置2の外部からコリメータレンズ24に入射する平行光を集光して、撮像素子23の表面に結像させる。
【0049】
撮像素子23は、受光面である表面に、CCDなどの光電変換素子が2次元状に多数配置されており、表面の光強度分布を画像化することができる。
【0050】
平面ミラー3は、撮像素子23の画像中心P4を設定するときに使用される。したがって、後述の集積光モジュールを組調整する際にはこの平面ミラーは使用しないので、図5に示した光路中から取り除く。
【0051】
このとき、撮像素子23の画像中心P4が、参照光源21を発光させたとき、参照光源21の発光点P3とコリメータレンズ24の主点を通る直線(軸線)Lに対して、垂直に配置された平面ミラー3により反射された光が、撮像素子23の表面に作る像の中心になるように、各光学部品の位置関係が設定されている。つまり、参照光源21の発光点P3と撮像素子23の画像中心P4とは共役の関係になっている。
【0052】
次に、上記光学装置2を使用する集積光モジュールの組立調整の工程を順次行う。
まず、図6に示すように、ベースプレート16上に受光素子12を配置し、ベースプレート16上のアライメントマークA1と、受光素子12上のアライメントマークA2を利用し、その各アライメントマークA1とA2が全て一致するように、接着剤を用いて固定する(工程(1))。
【0053】
次に、図7(a)に示すように、ベースプレート16とスペーサ17を、ベースプレート16の開孔16aと、スペーサ17の開孔17aの軸心を一致させ、ベースプレート16の端面16cと、スペーサ17の端面17cの平行度を合わせて位置決めして固定する。そして、偏光ビームスプリッタ13とスペーサ17を、偏光ビームスプリッタ13の側面をガイド部17bに嵌め込み、そして、偏光ビームスプリッタ13の端面13cと、スペーサ17の端面17cを一致させて位置決めして固定する。この組み付け状態を図7(b)に示す。本工程で調整した、ベースプレート16、受光素子12、スペーサ17、偏光ビームスプリッタ13の、この組み付け状態の集積光モジュールを1Aとする。なお、これらの固定は、全て接着剤を用いて行う。
【0054】
次に、図8に示すように、図5に示した光学装置2及びコリメータレンズ4と、図7(b)に示した組み付け状態の集積光モジュール1Aとを、それぞれ図示していない調整用治具に搭載して、光学装置2のコリメータレンズ24とコリメータレンズ4の光軸を一致させ、その光軸L上に、集積光モジュール1Aの偏光ビームスプリッタ13のビームスプ
リット面13aの略中心が位置するように配置する(工程(2))。集積光モジュール1Aは、調整用治具のベースプレート搭載部(図示せず)に把持される。そのベースプレート搭載部は、調整用治具に固定された光軸Lに直交する2方向(X,Y方向)及び光軸Lに沿う方向(Z方向)に対して、それぞれ移動及び固定可能な構造を有している。
【0055】
なお、図8に示す状態で、光学装置2の参照光源21から出射されたレーザ光である発散光の約半分は、ビームスプリッタ22を透過し、コリメータレンズ24を通過して平行光となり、光学装置2から出射される。その平行光は、コリメータレンズ4に入射して集光光に変わり、集積光モジュール1Aに入射する。この集光光は、偏光ビームスプリッタ13によって反射されて受光素子12に向うが、その焦点は参照光源21の発光点P3と共役の関係であるため、受光素子12を固定した集積光モジュール1Aを図8に示すX,Y方向に移動させ、受光素子12の0次光検出部の中心を、集光光の焦点にするように調整する。
【0056】
例えば、受光素子12の0次光検出部が、図9に示すような4象限検出器12fから構成されている場合、図9(a)に示すように、4象限検出器12fの各検出部a、b、c、dからの光電変換出力の出力レベル(電圧)Va〜Vdが等しくなれば、受光素子12の0次光検出部の中心P2(図3も参照)である4象限検出器12fの中心が、集光光のスポットSPの中心、すなわち光軸と一致していると判断できる。
【0057】
しかし、図9(b)に示すように、4象限検出器12fの各検出部a、b、c、dからの光電変換出力の出力レベルVa〜Vdが異なっている場合は、受光素子12の0次光検出部の中心P2が、集光光のスポットSPの中心すなわち光軸からずれている。そこで、受光素子12を固定した集積光モジュール1Aを図8に示すX,Y方向に移動させて、図9(a)に示すように、各検出部a、b、c、dからの出力レベルVa〜Vdが等しくなるように調整すれば、受光素子12の0次光検出部の中心P2を、集光光の光軸に一致させることができる。
【0058】
次に、受光素子12の0次光検出部の中心P2と、集光光の焦点とを一致させる方法について述べる。
図8におけるコリメータレンズ4と集積光モジュール1Aとの間に、例えばトーリックレンズやトーリックレンズと同等な回折素子などの非点収差を発生させる光学素子を挿入すると、集光光の焦点面以外でのスポットSPは、図10(a)又は(b)に示すように楕円状になり、4象限検出器12fの各検出部a、b、c、dからの光電変換出力の出力レベルVa〜Vdは等しくならない。なお、図10(a)と(b)では、焦点面より近い場合と遠い場合を示している。
【0059】
これに対して、受光素子12の0次光検出部の中心P2と、集光光の焦点とが一致している場合には、集光光の焦点面でのスポットSPは、図9(a)に示したのと同様に円形になるため、4象限検出器の各検出部a、b、c、dからの光電変換出力の出力レベルVa〜Vdが等しくなる。そこで、受光素子12を固定した集積光モジュール1Aを、図8に示すZ方向(光軸Lに沿う方向)に移動させて、4象限検出器の各検出部a、b、c、dからの光電変換出力の出力レベルVa〜Vdが等しくなるようにすれば、受光素子12の0次光検出部の中心P2と集光光の焦点とを一致させることができる。この状態で、集積光モジュール1Aを、調整用治具に固定する。
【0060】
なお、この非点収差を発生させる光学素子は、受光素子12の0次光検出部の中心P2を、図8に示した参照光源21の発光点P3と共役な関係に調整する工程で、受光素子12をZ方向に移動させるときのみに使用する。
【0061】
次に、ホログラム素子14を、ホログラム素子ホルダ15(図2参照)のガイド部15bに嵌め込み、一体にして、偏光ビームスプリッタ13の上に、図11に示すように配置する。或いは、ホログラム素子ホルダ15を用いずに、直接ホログラム素子14を偏光ビームスプリッタ13の上に配置しても良い。この組み付け状態の集積光モジュールを1Bとする。
【0062】
ここで、コリメータレンズ4から出射される集光光の光軸と、ホログラム素子14のホログラムパターンの中心とは、必ずしも一致しない。そのため、光学装置2からコリメータレンズ4を通して、集積光モジュール1Bに入射されるレーザビームが、ホログラム素子14によって波面分割された、それぞれの回折光(±1次回折光)の光強度比が設計値と異なることになる。そこで、ホログラム素子14を、偏光ビームスプリッタ13上で図11に示す光軸Lに直交するX,Y方向の面内で移動させて、受光素子12の回折光検出部による光電変換出力のレベル比が、上記の光強度比が設計値に最も近くなるようにする。
【0063】
また、必要があれば、ホログラム素子14をX,Y方向の面内で回転させて、上記の光強度比が設計値に最も近くなるようにする。このようにして、ホログラム素子14を位置決め配置し、UV硬化型の接着剤により偏光ビームスプリッタ13上に固定する。
【0064】
さらに、必要があれば、ホログラム素子14を固定した後、受光素子12から出力されるフォーカスエラー信号を用いて、集積光モジュール1Bを図11に示すZ方向(光軸Lに沿う方向)へ移動させて、フォーカスエラー信号が最小になるように微調整をしてもよい。
【0065】
次に、レーザ光源11を保持したレーザ光源ホルダ18を、調整治具のレーザ光源ホルダ搭載部(図示せず)に把持して、熱伝導性の接着部材で固定する(工程(3))。そのレーザ光源ホルダ搭載部は、X,Y方向の面内およびZ方向に移動および固定可能となっており、また、そのレーザ光源ホルダ搭載部はX,Y軸に対して回転および固定可能な構造をしている。そして、レーザ光源11を保持したレーザ光源ホルダ18を、図11に示した集積モジュール1Bのベースプレート16の下面側から、レーザ光源ホルダ18の突起18aをベースプレート16のスルーホール16bに挿入して配置する。
【0066】
この組み付け状態の集積光モジュールを1Cとし、図12に示す。ここで、突起18aとスルーホール16bの間隙の存在を示すため、ベースプレート16とレーザ光源ホルダ18を断面で示す。そして更に、本図では、ベースプレート16とレーザ光源ホルダ18との対向する面間に若干隙間を設けて、光軸Lに沿うZ方向への相対移動しろを取ってある。
【0067】
図12において、集積光モジュール1Cのレーザ光源11を発光させると、その発光点P1から出射されるレーザ光である発散光は、偏光ビームスプリッタ13及びホログラム素子14を透過して出射し、コリメータレンズ4によって平行光となり、その平行光が光学装置2に入射する。コリメータレンズ4で平行光となった往路光ビームは、コリメータレンズ24により集光光となり、その集光光の約半分がビームスプリッタ22で反射されて、撮像素子23に導かれる。
【0068】
そこで、レーザ光源11を保持するレーザ光源ホルダ18を、図12における光軸Lに直交するX,Y方向の面内(水平方向)および光軸Lに沿うZ方向(垂直方向)に移動させて、撮像素子23の画像中心P4に結像させる。また、必要があればレーザ光源11をX,Y軸に対して回転させて、レーザ光源11から出射されるレーザ光の最大輝度方向と光軸Lとを一致させるようにしてもよい。このとき、レーザ光源11の発光点P1と撮像
素子23の画像中心P4とが共役な関係となる。
【0069】
このようにして、レーザ光源ホルダ18をXYZ方向の調整を行って位置決めした後、レーザ光源ホルダ18の突起18aとベースプレート16のスルーホール16bの間隙(周囲も含む)を、半田或いは熱伝導性の接着部材の銀ペースト、銅ペーストなどで充填して接着固定すれば、図1の斜視図で示した集積光モジュール1が完成する。
【0070】
この様にして調整された、本発明による集積光モジュールは、レーザ光源と受光素子と偏光ビームスプリッタとホログラム素子とを一体に固定して集積化した集積光モジュールとを、その各光学部品を、ベースプレートを基準に容易に位置決めして組み立てながら、予め調整された外部のレーザ光源と撮像素子を基準として、集積光モジュールを構成するレーザ光源と受光素子とホログラム素子の位置をそれぞれ正確に調整することができる。
【0071】
またそれと同時に、上記組立調整方法で組み立てられた集積光モジュールは、レーザ光源ホルダの凸部がベースプレートの凹部に挿入した状態で、その隙間を充填した半田或いは熱伝導性の接着部材で固定されるから、レーザ光源から発生した熱が伝導しやすく放熱されるので、発熱によるレーザ光源11のレーザ性能の劣化及び寿命劣化を招くことがなく、光ピックアップ装置の高速化が図れることになる。
【0072】
なお本発明は、上述した実施例に限定されることはなく、それらの全てを行う必要もなく、特許請求の範囲の各請求項に記載した内容の範囲で種々に変更や省略をすることができることは言うまでもない。本発明による集積光モジュールについても同様である。
【符号の説明】
【0073】
1、1A、1B、1C:集積光モジュール
2:光学装置
3:平面ミラー
4:コリメータレンズ
11:レーザ光源
12:受光素子
13:偏光ビームスプリッタ
13a:ビームスプリット面
13b:反射面(ミラー面)
14:ホログラム素子
15:ホログラム素子ホルダ
16:ベースプレート
16a:開孔
16b:スルーホール
17:スペーサ
17a:開孔
18:レーザ光源ホルダ
18a:突起
19:熱伝導性の接着部材
21:参照光源
22:ビームスプリッタ
22a:ハーフミラー面
23:撮像素子
24:コリメータレンズ
100:光ピックアップ装置
101:基台
102:コリメートレンズ
103:波長板
104:対物レンズ
105:対物レンズホルダ
200:光ディスク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
往路光ビームとしてレーザ光を出射するレーザ光源と、前記往路光ビームが反射されて戻る復路光ビームが導かれる受光素子とが、平板状のベースプレートに固定されている集積光モジュールであって、
前記受光素子は、前記ベースプレートの一方の面に位置決め固定されており、
前記レーザ光源は、前記ベースプレートの他方の面側であって、少なくとも2つの凸部を有する、熱伝導性の部材で構成されたレーザ光源ホルダに保持されており、
前記ベースプレートは、前記凸部に対応する位置に凹部を有し、
前記ベースプレートの凹部内に、熱伝導性の接着部材が充填することで、前記レーザ光源が位置決め固定されている
ことを特徴とする集積光モジュール。
【請求項2】
前記往路光ビームが通過し、前記復路光ビームを反射して前記受光素子へ導く偏光ビームスプリッタと、
前記復路光ビームを波面分割して、その分割した復路光ビームを、前記偏光ビームスプリッタを介して前記受光素子の異なる検出位置に導くホログラム素子と、を更に有し、
前記ホログラム素子は、前記偏光ビームスプリッタの前記復路光ビーム入射側に位置決め固定されている
ことを特徴とする請求項1に記載の集積光モジュール。
【請求項3】
前記偏光ビームスプリッタと前記受光素子との間が、スペーサによって所定の間隙に調整されている
ことを特徴とする請求項2に記載の集積光モジュール。
【請求項4】
集積光モジュールを構成するための部材として、ベースプレートと、レーザ光源と、受光素子とを用意するとともに、
発振波長と発散角が前記レーザ光源と同等なレーザ光源である参照光源と、撮像素子とを備え、前記参照光源の発光点と前記撮像素子の画像原点とが共役の関係に設定された光学装置を用意し、
以下の(1)から(3)の各工程を行なって、前記集積光モジュールを組み立てながら調整することを特徴とする集積光モジュールの組立調整方法。
(1)前記ベースプレートに前記受光素子を位置決め固定する工程、
(2)前記受光素子の非回折光(0次光)受光部の中心位置を、前記光学装置の前記参照光源の発光点と共役な関係に調整する工程、
(3)前記ベースプレートの前記受光素子を固定した面と反対の面側に、前記集積光モジュールを構成するレーザ光源を配置し、該レーザ光源の発光点を前記光学装置の前記撮像素子の画像中心と共役な関係になるように、該レーザ光源を前記レーザ光源の光軸方向、および当該光軸方向と垂直な面内に移動させて調整した後、熱伝導性の接着部材を用いて前記ベースプレートに固定することで、前記レーザ光源で発生する熱を、前記接着部材を介して前記ベースプレートに放熱できるようにする工程。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2011−100526(P2011−100526A)
【公開日】平成23年5月19日(2011.5.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−256163(P2009−256163)
【出願日】平成21年11月9日(2009.11.9)
【出願人】(000001960)シチズンホールディングス株式会社 (1,939)
【Fターム(参考)】