説明

集積回路の修正配線形成方法

【課題】 カーボンナノチューブ配線を用いた集積回路の修正配線形成方法を提供する。
【解決手段】 電子ビーム化学気相成長法で配線修正が必要なところに成長の触媒となる金属を含む微粒子10を堆積し、炭化水素系ガスやエタノールを原料とした化学気相成長法でカーボンナノチューブ配線11を成長させる。配線修正が必要なところへの触媒金属の供給は走査マイクロピペットプローブ顕微鏡による電気化学反応による析出または集束イオンビーム化学気相成長法でも行うことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は集積回路の修正配線形成方法に関し、特にカーボンナノチューブを成長させて修正配線を形成する集積回路の修正配線形成方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
シリコン半導体デバイスの微細化により、配線も微細化し配線を流れる電流の密度が上昇してきている。国際半導体技術ロードマップでは、32nm世代の配線に求められる許容電流密度は1X107A/Cm2になると見積もられている。Cuのような金属配線では配線の電流密度が高くなるとエレクトロマイグレーションによる断線が起こりやすくなり、更に応力があるとストレスマイグレーションによる断線も起こりやすくなるので配線の信頼性の低下が懸念されている。この問題を解決するためにCuに代わる配線として許容電流密度がCu配線に比べて2〜3桁高く、断線しにくいカーボンナノチューブを用いた配線が提案され、現在精力的に研究されている(非特許文献1)。カーボンナノチューブ配線は、触媒金属(ニッケル、コバルト、鉄など)をビアの底の電極などの配線が必要な所に供給し、炭化水素系ガスやエタノールを原料とした化学気相成長でカーボンナノチューブが、触媒金属があるところのみ成長することを利用して形成している。半導体的な多層カーボンナノチューブのバンドギャップは直径が太いほど狭く、金属に近い伝導を示すことが知られている。成長するカーボンナノチューブの径は成長の基点となる触媒金属の径に依存し、低抵抗で均質なカーボンナノチューブ配線を得るためには、触媒金属の径の制御が重要である。また最近では垂直方法のみならず触媒金属を垂直な壁に形成することで水平方向にカーボンナノチューブ配線を成長させることができるようになってきている。
【0003】
従来、集積回路の開発期間短縮のためにテスターで測定して配線に問題があるものに関しては集束イオンビーム装置を用いて修正配線形成が行われてきた(特許文献1)。集束イオンビームはイオンビームによる物理スパッタやガス支援エッチングでビーム照射領域の選択的な除去が行えるので、配線の切断や配線が必要な箇所の露出が行える。また適当なガス存在下で原料ガスの分解による金属含有膜や絶縁膜の堆積により配線や絶縁膜保護層が形成できる。カーボンナノチューブ配線を用いた集積回路でも、開発期間短縮のために修正配線形成が行えることが望ましく、実現する技術が求められている。
【非特許文献1】粟野祐二、日経マイクロデバイス、2006年10月号 pp59-64
【特許文献1】特開平07-211716号公報(要約、図2)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来のカーボンナノチューブ配線にあたっては、マスクを用いたウェハー全面のプロセス技術で、カーボンナノチューブ配線を形成する部分に触媒金属をつけていた。この方法を集積回路の修正配線形成に適用しようとすると修正配線形成用のマスクを作らねばならず、またマスクなしでやろうとすると余分な所まで触媒金属をつけてしまい、その後熱フィラメントあるいはプラズマ化学気相成長法でカーボンナノチューブを成長させると余分なところまでカーボンナノチューブが成長してしまうという問題があった。また、試作品としてウェハーから切り出して評価したものに修正配線を形成しようとする場合には、ウェハー用の装置が使えないという問題があった。
【0005】
本発明は、カーボンナノチューブ配線を用いて集積回路の修正配線の形成を可能にするために、カーボンナノチューブを成長させるための触媒金属を精度よく局所的に供給できるようにし、またそれを利用してウェハーから切り出した試作品の修正配線形成も行えるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本願発明においては、電子ビーム化学気相成長法、集束イオンビーム化学気相成長法、あるいは走査マイクロピペットプローブ顕微鏡を用いて、カーボンナノチューブの選択成長の基点となる触媒金属を形成するようにした。これにより、ナノメーターの位置決め精度で数10nm幅の大きさで触媒金属を形成することができる。
【0007】
電子ビーム化学気相成長法で、配線修正が必要なところに成長の触媒となるニッケルまたはコバルトまたは鉄を含む微細な粒を堆積する。触媒金属形成後、炭化水素系ガスやエタノールを原料とした化学気相成長法でカーボンナノチューブを成長させ配線を形成する。カーボンナノチューブの化学気相成長は、熱フィラメント化学気相成長法、あるいはプラズマ気相成長法等の低温(400℃以下)で成長できる方法で行う。
【0008】
集束イオンビーム化学気相成長法で、配線修正が必要なところに成長の触媒となるニッケルまたはコバルトまたは鉄を含む膜を堆積する。触媒金属形成後、炭化水素系ガスやエタノールを原料とした化学気相成長法でカーボンナノチューブを成長させ配線を形成する。カーボンナノチューブの化学気相成長は、熱フィラメント化学気相成長法、あるいはプラズマ気相成長法等の低温(400℃以下)で成長できる方法で行う。
【0009】
走査マイクロピペットプローブ顕微鏡で、配線修正が必要なところに成長の触媒となるニッケルまたはコバルトまたは鉄の微細な粒を電気化学反応で析出させる。触媒金属形成後、炭化水素系ガスやエタノールを原料とした化学気相成長法でカーボンナノチューブを成長させ配線を形成する。カーボンナノチューブの化学気相成長は、熱フィラメント化学気相成長法、あるいはプラズマ気相成長法等の低温(400℃以下)で成長できる方法で行う。
【0010】
ビア等の電流密度が高くなるところは、上記の方法でカーボンナノチューブ配線を形成し、水平配線のような電流密度が高くならないところは電子ビーム化学気相成長法や集束イオンビーム化学気相成長法で配線を形成する。
【発明の効果】
【0011】
電子ビーム化学気相成長法や集束イオンビーム化学気相成長法を用いれば、数10nm幅の大きさの、成長の触媒となる金属(ニッケル、コバルト、鉄)を含む膜を所望の位置に堆積することが可能である。また、触媒金属を含む微細な粒を再現性良く形成することができるので、均質で抵抗の低い配線の形成が可能である。触媒となる金属があるところでのみカーボンナノチューブは化学気相成長するため、触媒となる金属の位置を制御することでカーボンナノチューブ配線の位置を制御することができる。400℃以下でカーボンナノチューブを成長させることで、集積回路の特性を損なうことなく修正配線形成を行うことができる。電子ビーム化学気相成長法を用いた場合の方が、集束イオンビーム化学気相成長法を用いて触媒金属を含む微細な粒を形成する場合よりも、プライマリービームのガリウムが含まれないので触媒金属の含有率の高いものが得られる。
【0012】
走査マイクロピペットプローブ顕微鏡の電気化学反応による析出でも所望の位置に数10nmの幅の金属の析出が可能で、触媒金属の微細粒を再現性良く形成することができるので、均質で抵抗の低い配線の形成が可能である。電子ビーム化学気相成長法や集束イオンビーム化学気相成長法同様、触媒となる金属の位置を制御することでカーボンナノチューブ配線の位置を制御することができる。400℃以下でカーボンナノチューブを成長させることで集積回路の特性を損なうことなく修正配線形成を行うことができる。電気化学反応で析出されるため純度の高い触媒金属を得ることができる。
【0013】
カーボンナノチューブをパターンの横方向に成長させ、横方向に配線(以下横配線と呼ぶ)を形成しようとする場合、触媒金属をパターンの側面すなわち基板と垂直な面に供給しなければならず、電子ビームやイオンビームや走査マイクロピペットプローブ顕微鏡で所望の位置への触媒金属の供給が難しくなる。しかし、電流密度が低い集束イオンビームまたは電子ビームによる修正配線形成手法を使うことで、横配線の形成を容易に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下に本発明の実施例について図面を用いて詳細に説明する。
【0015】
作製した集積回路のテスターの測定結果と設計レイアウト(CADデータ)から、修正配線形成が必要なところを割り出す。割り出した場所を集束イオンビームの観察機能で確認し、実際に加工する領域を決定する。配線が欠線している場合には集束イオンビームの物理スパッタやガス支援エッチングで、ビーム照射領域の選択的な除去により、集積回路の修正配線形成が必要なところ(例えば電極上)を覆う絶縁膜を除去しコンタクトを形成するビア部分を露出させる。配線されていたにも拘わらず断線している場合には、集束イオンビームの物理スパッタやガス支援エッチングで、断線している部分のカーボンナノチューブ配線や触媒金属を全て除去し、修正配線の形成が必要なところ(例えば下地層5の上の電極3上)を露出させる。
【0016】
この後、下記本願発明を用いて触媒金属を形成する。
【0017】
図1(a)、(b)は、電子ビーム化学気相成長で触媒金属を堆積させる場合を説明する図である。
【0018】
図1(a)に示すように、触媒金属原料ガス供給系1からカルボニルニッケル、カルボニルコバルト、または鉄カルボニルなどの触媒金属含有ガスを絶縁膜4に設けられた穴内の電子ビーム2の照射位置に供給し、電子ビーム化学気相成長法で、上記修正が必要なビア配線を除去し露出した電極(配線)3上に、成長の触媒となるニッケル、コバルト、または鉄を含む金属微細粒10を触媒金属として堆積する。該触媒金属を形成後、図1(b)に示すように炭化水素系ガスやエタノールを原料として、400℃以下の集積回路の特性を損なわない低い温度でカーボンナノチューブを成長できる化学気相成長法(例えば熱フィラメント化学気相成長法やプラズマ化学気相成長法)を用いて、カーボンナノチューブ配線11を垂直方向に成長させる。
【0019】
図2(a)、(b)は、走査マイクロピペットプローブ顕微鏡で触媒金属を析出させる場合を説明する図である。
【0020】
図2(a)に示すように、走査マイクロピペットプローブ顕微鏡のマイクピペットプローブ6内に、硫酸ニッケルや硫酸コバルトや硫酸鉄などの触媒金属を含む硫酸金属水溶液8充填し、上記修正が必要なビア配線を除去し露出した電極(配線)3上に、マイクロピペットプローブ内の電極7に電圧をかけて、電気化学反応で成長の触媒となるニッケルやコバルトの金属微細粒10を析出させる。金属微細粒10を触媒金属として形成後、金属微細粒10の上に、図2(b)に示すように炭化水素系ガスやエタノールを原料とした、集積回路の特性を損なわない400℃以下の低い温度でカーボンナノチューブを成長できる化学気相成長法(例えば熱フィラメント化学気相成長法やプラズマ化学気相成長法)を用いて、カーボンナノチューブを垂直方向に成長させ、カーボンナノチューブ配線11を形成する。
【0021】
図3(a)、(b)は、集束イオンビーム化学気相成長で触媒金属を堆積させる場合を説明する図である。
【0022】
図3(a)に示すように、ガス供給系1からカルボニルニッケル、カルボニルコバルト、または鉄カルボニルなどの触媒金属含有ガスをイオンビーム9の照射位置に供給し、集束イオンビーム化学気相成長法で、上記修正が必要なビア配線を除去し露出した電極(配線)3上に、成長の触媒となるニッケル、コバルト、または鉄を含む金属微細粒10を堆積する。修正配線形成が必要な個所の底に金属微細粒10の堆積により触媒金属を形成後、図3(b)に示すように、炭化水素系ガスやエタノールを原料とした、集積回路の特性を損なわない400℃以下の低い温度でカーボンナノチューブを成長できる化学気相成長法(例えば熱フィラメント化学気相成長法やプラズマ化学気相成長法)を用いて、カーボンナノチューブ垂直方向に成長させ、カーボンナノチューブ配線11を形成する。
【0023】
図4(a)〜(c)は、使用時比較的電流密度が高くなるところにカーボンナノチューブ配線を成長させ、使用時比較的電流密度が高くならないところは集束イオンビーム化学気相成長で金属配線を堆積させる場合を説明する図である。
【0024】
図4(a)に示すように、まず電流密度が高くなるビア配線は上記の方法でカーボンナノチューブ配線11を成長させる。次に図4(b)に示すように、電流密度が高くならない横方向の配線はガス供給系12から原料となるカルボニルタングステンや白金含有ガスをイオンビーム9照射位置に供給し、集束イオンビーム化学気相成長法で、配線が必要なビアとビアを結ぶように金属配線13を堆積する。横配線として形成された金属配線13の絶縁保護膜が必要な場合には、図4(c)に示すように、絶縁膜原料ガス供給系14からテトラエトキシシラン(TEOS)などの絶縁膜原料ガスをイオンビーム9の照射位置に供給し、集束イオンビーム化学気相成長法で、金属配線13を覆うように絶縁保護膜15を形成する。
【0025】
あるいは、図4(a)〜(c)において、上記集束イオンビーム化学気相成長法の変わりに、電子ビーム化学気相成長法を用いてもよい。図5(a)〜(c)は、使用時比較的電流密度が高くならないところに電子ビーム化学気相成長で金属配線を堆積させる場合を説明する図である。
【0026】
図5(a)に示すように、まず電流密度が高くなるビア配線は上記の方法でカーボンナノチューブ配線11を成長させる。次に図5(b)に示すように電流密度が高くならない横方向の配線はガス供給系12から原料となるカルボニルタングステンや白金含有ガスを電子ビーム2照射位置に供給し電子ビーム化学気相成長法で配線が必要なビアとビアを結ぶように金属配線13を堆積する。横配線として形成された金属配線13の絶縁保護膜が必要な場合には、図5(c)に示すように、ガス供給系14からテトラエトキシシラン(TEOS)などの絶縁膜原料ガスを電子ビーム2の照射位置に供給し、電子ビーム化学気相成長法で、金属配線13を覆うように絶縁保護膜15を形成する。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】(a)、(b)は電子ビーム化学気相成長で触媒金属を堆積させる場合を説明する図である。
【図2】(a)、(b)は走査マイクロピペットプローブ顕微鏡で触媒金属を析出させる場合を説明する図である。
【図3】(a)、(b)は集束イオンビーム化学気相成長で触媒金属を堆積させる場合を説明する図である。
【図4】(a)〜(c)は電流密度が高くなるところのみカーボンナノチューブ配線を成長させ、電流密度が高くならないところは集束イオンビーム化学気相成長で金属配線を堆積させる場合を説明する図である。
【図5】(a)〜(c)は電流密度が高くなるところのみカーボンナノチューブ配線を成長させ、電流密度が高くならないところは電子ビーム化学気相成長で金属配線を堆積させる場合を説明する図である。
【符号の説明】
【0028】
1 触媒金属原料ガス供給系
2 電子ビーム
3 電極
4 絶縁層
5 下地層
6 マイクロピペットプローブ
7 電気化学反応用電極
8 触媒金属含有水溶液
9 集束イオンビーム
10 金属微細粒
11 カーボンナノチューブ配線
12 金属配線原料ガス供給系
13 金属配線
14 絶縁膜原料ガス供給系
15 絶縁保護膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
集積回路の修正配線形成方法であって、荷電粒子ビームを用いた化学気相成長法で修正配線接続部に成長の触媒となる金属を含む微粒子を堆積し、該微粒子の上に400℃以下の低温で成長できる熱フィラメント化学気相成長法あるいはプラズマ化学気相成長法でカーボンナノチューブを成長させて修正配線を形成することを特徴とする集積回路の修正配線形成方法。
【請求項2】
前記荷電粒子ビームが電子ビームである請求項1記載の集積回路の修正配線形成方法。
【請求項3】
前記荷電粒子ビームが集束イオンビームである請求項1記載の集積回路の修正配線形成方法。
【請求項4】
集積回路の修正配線形成方法であって、走査マイクロピペットプローブ顕微鏡で修正配線接続部に成長の触媒となる金属を含む微粒子を析出し、該微粒子の上に400℃以下の低温で成長できる熱フィラメント化学気相成長法あるいはプラズマ化学気相成長法でカーボンナノチューブ配線を成長させて修正配線を形成することを特徴とする集積回路の修正配線形成方法。
【請求項5】
請求項1から4の集積回路の修正配線形成方法において、使用時に比較的電流密度が高くなるところは前記カーボンナノチューブからなる修正配線を形成し、使用時に比較的電流密度が高くならないところは集束イオンビーム化学気相成長法で配線を形成することを特徴とする集積回路の修正配線形成方法。
【請求項6】
請求項1から4の集積回路の修正配線形成方法において、使用時に比較的電流密度が高くなるところは前記カーボンナノチューブからなる修正配線を形成し、使用時に比較的電流密度が高くならないところは電子ビーム化学気相成長法で配線を形成することを特徴とする集積回路の修正配線形成方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−218615(P2008−218615A)
【公開日】平成20年9月18日(2008.9.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−52437(P2007−52437)
【出願日】平成19年3月2日(2007.3.2)
【出願人】(503460323)エスアイアイ・ナノテクノロジー株式会社 (330)
【Fターム(参考)】