電動機の取付構造

【課題】後輪に電動機が連結された車両において、後突による電動機の端子連結部の損壊を防止する。
【解決手段】車両は、後輪に電動機が連結されている。電動機は、車両後部に設けられたサブフレームに据え付けられる。サブフレームは、前後延設部材を左右に配置し、前後延設部材の前後にそれぞれフロントクロスメンバおよびリアクロスメンバを取り付けて、井桁状に形成する。サブフレームの後方には、構造部材であるリアモータマウントを取り付ける。電動機に接続コードを接続させる端子連結部を、リアモータマウントより前方に配置させる。これにより、後突時に端子連結部の損壊を防止できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【０００１】
本発明は、後輪に電動機を連結させた車両の電動機の取付構造に関する。
【背景技術】
【０００２】
電気自動車やハイブリッド車において、後輪に電動機を連結して後輪をメイン、あるいは補助的に駆動させる構想が知られている。後輪に電動機を連結させる場合、後輪の近傍に電動機を設置すれば、構造を簡略化させ、伝達効率を向上させることができる。そこで例えば、車両後部に設けられたサブフレーム内に電動機を据え付け、差動機構を介して電動機と後輪とを駆動軸で連結させる構成が考えられている。
【０００３】
一方電動機は電力供給を受けるため、パワーコントロールユニットと通常接続コードを用いて接続される。また、リアのサブフレームは、後席の後方に配置される。後席は、室内空間を広くするため、できるだけ車両後方に配置しようとするため、サブフレームと後席との間に余分な空間はほとんど形成されない。
【０００４】
電動機に接続される接続コードは、径が比較的太いことから小さな曲率で折り曲げることができず、ほぼ円弧を描くようにして湾曲される。上述したように電動機やパワーコントロールユニットの前方には後席が配置され、接続コードを通すための十分な空間が取れないことから、接続コードを電動機の前方に引き回すことができない。したがって、例えば電動機の上部に、後方から接続コードを接続させる端子連結部を設け、端子連結部に接続させた接続コードをほぼ１８０度湾曲させて、電動機の上方に設けられたパワーコントロールユニットに接続させる構成が考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【０００５】
【特許文献１】特開平１１−１６５５１６号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【０００６】
しかしながら、上記構成の車両では、電動機の後方に端子連結部が設けられ、端子連結部から接続コードが後方に延びることから、万一車両後部に他の車両が衝突すると（以下、「後突」とする。）、端子連結部や接続コードが直ちに押圧され、破損したり、挟まれて損傷を受けることが考えられる。電動機の端子連結部は、電動機の内部と構造的に強固に連結されており、端子連結部が破損したのみでも、修理コストが大きくかかるという問題が生じる。
【０００７】
本発明は、上記課題を解決し、後輪に電動機を連結させた車両において、後突時に電動機等の端子連結部が簡易に損壊されることのない車両の電動機の取付構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【０００８】
上記の課題を解決するため、本発明は、車両における電動機の取付構造を次のように構成した。
【０００９】
車両の後部に、井桁状のサブフレームを設ける。例えばサブフレームは、車両の前後方向に沿って配置した２本の前後延設部材と、前後延設部材の前方に設けたフロントクロスメンバと、後方に設けたリアクロスメンバとから井桁状に形成する。サブフレームに、リアの懸架装置などを組み付け、懸架装置を介して後輪を上下動自在に保持してもよい。
【００１０】
サブフレームの内側に電動機を据え付ける。またサブフレームの後方には、構造部材であるリアモータマウントを取り付ける。
【００１１】
電動機は、上部に端子連結部を備えている。端子連結部は、端子を有し、端子には接続コードが接続される。接続コードは、パワーコントロールユニットと電動機とを接続させる。端子連結部は、リアクロスメンバやリアモータマウントのいずれの後壁より前方に配置する。また、パワーコントロールユニットの端子連結部を、リアクロスメンバやリアモータマウントの後壁より前方に設ける。
【発明の効果】
【００１２】
本発明にかかる車両の電動機の取付構造は、次の効果を有している。後輪電動機が後輪の近傍に設けられているので、後輪を効率よく駆動して車両を走行させることができる。万一車両が後突されても、接続コードを接続させる端子連結部が、サブフレームより前方に配置してあるので、端子連結部の破損が防止される。
【図面の簡単な説明】
【００１３】
【図１】本発明にかかる電動機の組付構造の一実施例を示す斜視図である。
【図２】サブフレームの一例を示す斜視図である。
【図３】フロントモータマウントの一例を示す斜視図である。
【図４】図１に示す電動機の組付構造の一実施例を示す側面図である。
【図５】後輪電動機を組み付けた車両の一例を示す構成図である。
【発明を実施するための形態】
【００１４】
本発明にかかる、車両の電動機の取付構造の一実施形態について説明する。
【００１５】
図５に、車両１０を示す。車両１０は、前方にエンジン１２を搭載し、後方に走行用の後輪電動機１４、および燃料タンク２２を備えたハイブリッド車である。以下、車両１０の進行方向を前方とし、その逆を後方とし、それを基準に左右を定め、更に重力の方向を下方とし、その逆を上方として説明する。
【００１６】
車両１０は、前方左右に前輪１６、後方左右に後輪１８をそれぞれ具えている。エンジン１２は、ガソリンを燃料とする内燃機関で、左右の前輪１６の間に搭載されている。エンジン１２には、変速機、差動機構（いずれも図示せず。）などが組み付けられており、エンジン１２の回転出力がこれらを介して前輪１６に伝達される。
【００１７】
車両１０は、ＥＣＵ（電子コントロールユニット）（図示せず。）を備えている。ＥＣＵは、アクセルペダルやブレーキペダル（いずれも図示せず。）の操作状態、車速、後述する電池３０の充電量等各種情報を入手し、これらの値に基づきエンジン１２や変速機等を適宜制御する。尚エンジン１２は、ガソリンエンジンに限るものではない。
【００１８】
エンジン１２の側方には、発電機２０が設けられている。発電機２０は、エンジン１２や前輪１６から入力される回転力により発電する。車両１０の床下中央部分には、電池３０が設けられている。電池３０は、車両１０を走行させる電池であり、比較的大きな容量を有している。発電機２０で発電された電力は、電池３０に蓄えられる。尚発電機２０は、電池３０からの電力により駆動し、前輪１６を回転させたり、エンジン１２の始動を行わせるように構成してもよい。車両１０の後方には、内側に後輪電動機１４を組み付けたサブフレーム５０が設けられている。
【００１９】
サブフレーム５０は、シャーシフレーム３５の下方で、燃料タンク２２の後方に設けられている。サブフレーム５０の前方斜め上部には、後席（図示せず。）が取り付けられている。また、サブフレーム５０の上方には、荷室の床面（図示せず。）が敷設されている。
【００２０】
次に、サブフレーム５０について説明する。
【００２１】
図２に、サブフレーム５０を示す。図２に示すようにサブフレーム５０は井桁状で、左右両側に設けられ車両前後方向に延びる２本の管状部材５２、５４（前後延設部材）と、管状部材５２、５４の前方に設けられたフロントクロスメンバ５６（左右延設部材）と、後方に設けられたリアクロスメンバ５８（後側左右延設部材）などから形成されている。
【００２２】
フロントクロスメンバ５６は、断面四角形の部材で、車両１０の幅方向に設けられている。フロントクロスメンバ５６には、管状部材５２、５４の先端部分が所定の間隔をもって固定されている。またフロントクロスメンバ５６の左右両端には、固定部６０が形成してある。固定部６０は、車両１０のシャーシフレーム３５（図５参照。）に固定される。
【００２３】
更にフロントクロスメンバ５６のほぼ中央には、フロントモータマウントブラケット６２が設けられている。フロントモータマウントブラケット６２は、ほぼコの字状に形成されており、フロントクロスメンバ５６の下方に延びている。フロントモータマウントブラケット６２の内側には、連結部材としてのフロントモータマウント６４が取り付けられる。
【００２４】
フロントモータマウント６４を、図３に示す。フロントモータマウント６４は、図３に示すように、基台６６と基台６６に設けられた取付部としての取付片６８から形成されている。基台６６にはマウント部７０が形成してあり、マウント部７０がフロントモータマウントブラケット６２に取り付けられる。取付片６８は、ほぼ三角形の板状部材であり、３箇所の角部にそれぞれ取付孔７１が形成されている。
【００２５】
管状部材５２と５４は、管状部材からなり、図２に示すようにそれぞれが車両１０の前後方向に対してほぼ左右対称に形成されている。管状部材５２および５４は、フロントクロスメンバ５６から、フロントクロスメンバ５６とほぼ同一の高さを保持した状態で後方に延び、中間付近で外方に開くように湾曲している。そして管状部材５２、５４の後端は、それぞれリアクロスメンバ５８の左右端部に連結されている。
【００２６】
管状部材５２および５４とリアクロスメンバ５８との連結部分には、固定部７２が形成してある。固定部７２は、車両１０のシャーシフレーム３５（図５参照。）に固定される。
【００２７】
リアクロスメンバ５８は、断面四角形の部材で、左右両端が上方に湾曲し、両端で管状部材５２、５４と連結している。リアクロスメンバ５８の中央部分は、若干前方に張り出している。リアクロスメンバ５８の左右両端の後面には、取付部７４が設けられている。取付部７４には、図１に示すように構造部材としてのリアモータマウント７６がねじで固定される。
【００２８】
図１に、サブフレーム５０の内側に後輪電動機１４を組み付けた状態を示す。後輪電動機１４は、円筒体状で、出力軸（図示せず。）の方向を、車両１０の幅方向と平行にして取り付けられている。
【００２９】
後輪電動機１４は、上部に端子連結部２４を具えている。端子連結部２４は、所定の数の接続端子（図示せず。）を有する接続口で、接続線としての電力線３４が接続されている。電力線３４は、直径が１ｃｍ程度であり、所定の電流を流すに十分な太さを有している。電力線３４の他端は、後述するパワーコントロールユニット３２に接続されている。
【００３０】
端子連結部２４は、後輪電動機１４をサブフレーム５０に据え付けると、図４に示すようにリアモータマウント７６の後方壁７７より前方に位置する。またパワーコントロールユニット３２の端子連結部３６も、端子連結部２４と同様リアモータマウント７６の後方壁７７より前方に配置されている。端子連結部２４に接続された電力線３４は、端子連結部２４から上方に湾曲し、パワーコントロールユニット３２の端子連結部３６に連結されている。電力線３４は、電力線３４が形成する円弧の後端が、リアモータマウント７６の後方壁７７より若干後方に突出する程度に折り曲げられている。
【００３１】
後輪電動機１４の出力軸端面（図における右側面）には、減速差動機構３８が設けられている。減速差動機構３８は、内部に減速歯車と差動歯車とを具え、差動歯車の出力端部に左右の後輪駆動軸（図示せず。）が連結されている。後輪駆動軸はそれぞれ後輪１８に連結され、後輪電動機１４の回転出力を左右の後輪１８に、差動を行いつつ伝達させている。尚、減速差動機構３８には、減速でなく、増速歯車を内部に具えていてもよい。
【００３２】
減速差動機構３８は、左側面に取付孔（図示せず。）を有し、取付孔を介して図４に示すようにフロントモータマウント６４の取付片６８がねじ７３で固定されている。後輪電動機１４は、これによりフロントクロスメンバ５６に取り付けられている。
【００３３】
後輪電動機１４は、リアクロスメンバ５８と後輪電動機１４の回転中心とをほぼ同じ高さにして取り付けられている。フロントクロスメンバ５６の前方には、燃料タンク２２が設けられている。燃料タンク２２は、エンジン１２の液体燃料を貯留するタンクである。燃料タンク２２は、車両１０の床面より下方に、フロントクロスメンバ５６とほぼ同じ高さに設けられている。
【００３４】
後輪電動機１４の下部には、後輪電動機１４との間に若干の間隙をもってリアクロスメンバ５８が渡されている。また後輪電動機１４の後方には、後輪電動機１４との間に若干の間隙をもってリアモータマウント７６が渡されている。
【００３５】
後輪電動機１４の上方には、パワーコントロールユニット３２が設けられている。パワーコントロールユニット３２は、シャーシフレーム３５にステー等を介して取り付けられており、ＥＣＵからの指示に従って電池３０の充放電や後輪電動機１４の作動を制御する。
【００３６】
パワーコントロールユニット３２は、端子連結部３６を有し、前述した電力線３４が接続され、後輪電動機１４と電力線３４を介して接続している。またパワーコントロールユニット３２は、電力線３１を介して電池３０と接続している。
【００３７】
更に車両１０には、例えば後部側面に外部電源接続口３３が設けられている。外部電源接続口３３は、外部電源を接続する接続口であり、外部電源接続口３３に接続した外部電源を用いて電池３０に充電を行わせる。
【００３８】
次に、上述した車両１０の後輪電動機１４の取付構造における作用効果について説明する。エンジン１２が作動して動力が前輪１６に伝達されると、車両１０が前輪駆動で走行する。また、後輪電動機１４に、パワーコントロールユニット３２から電力が供給されると、後輪電動機１４の駆動力が減速差動機構３８を通して後輪１８に伝達され、車両１０が後輪走行する。車両１０の走行は、前輪駆動でも後輪駆動でもよく、更に前後輪同時に回転する全輪駆動でもよい。後輪１８は、サブフレーム５０に設けられた懸架装置（図示せず。）により支持され、上下方向に適宜作動する。
【００３９】
万一車両１０が後突されると、後突による衝撃力は、車両１０後部のクラッシャブルゾーンａ（図５参照。）をつぶして吸収される。衝撃力が、クラッシャブルゾーンａ内での破損で留まる大きさであれば、リアモータマウント７６より前方には大きな損壊が及ばない。
【００４０】
したがって、リアモータマウント７６で抑えられる後突事故であれば、後輪電動機１４の端子連結部２４は、後突時に押圧を直接受けることがなく、破損されることがない。また、たとえ電力線３４が押圧されても、撓みにより力を逃がし、電力線３４が挟まれて損傷を受けたり、押圧力で端子連結部２４等を損壊させることはない。
【００４１】
尚、上記例では、エンジン１２を備えたハイブリッド車を例に説明したが、本発明は、ハイブリッド車に限らず、エンジン１２などの内燃機関を備えない電気車両であってもよい。また電気車両の場合、電動機は後輪のみでなく、前輪と後輪の双方に備えていてもよい。
【産業上の利用可能性】
【００４２】
本発明は、後輪に電動機を連結させた電気車両やハイブリッド車等に利用可能である。
【符号の説明】
【００４３】
１０…車両
１２…エンジン
１４…後輪電動機
１８…後輪
２４…端子連結部
３０…電池
３１…電力線
３２…パワーコントロールユニット
３４…電力線
３６…端子連結部
５０…サブフレーム
５２．５４…管状部材
５６…フロントクロスメンバ
５８…リアクロスメンバ
６４…フロントモータマウント
７６…リアモータマウント
７７…後方壁

【特許請求の範囲】
【請求項１】
車両前後方向に延びる少なくとも２本の前後延設部材と、車両左右方向に延在する少なくとも２本の左右延設部材とで井桁状に形成されたサブフレームと、
前記サブフレーム内に据え付けられ後輪を駆動させる後輪電動機と、
前記後輪電動機の前記車両前後方向後方に設けられた端子連結部に接続可能に設けられた電力供給用の接続コードと、を備え、
前記端子連結部は、前記２本の左右延設部材で前記車両前後方向後方に配置された後側左右延設部材の更に後方に設けられたリアモータマウントより前方に位置するよう、前記後輪電動機を前記サブフレームの内側に取り付けたことを特徴とする車両の電動機の取付構造。
【請求項２】
前記後輪電動機の上方に、該後輪電動機に電力を供給するパワーコントロールユニットを備え、
前記後輪電動機と前記パワーコントロールユニットとを前記接続コードにより接続させるとともに、前記パワーコントロールユニットの端子連結部が、前記リアモータマウントより前方に位置するように、前記パワーコントロールユニットを設けたことを特徴とする請求項１に記載の車両の電動機の取付構造。

【図１】