説明

電動機駆動装置およびそれを搭載する車両

【課題】電機子巻線鎖交磁束量を調整可能な電動機を駆動するための電動機駆動装置において、電動機の力行時および回生時の両方で電動機の高出力化を可能とする。
【解決手段】電動機駆動装置は、界磁巻線L1を有するロータとステータとを備えるモータジェネレータ130を駆動する。電動機駆動装置は、電源装置110と、コンバータ115と、インバータ120と、ECU300とを備える。コンバータ115は、リアクトルを有し、界磁巻線L1をリアクトルの少なくとも一部として共用して、電源装置110からの電圧を電圧変換するとともに、電圧変換動作時に界磁電流を流すように構成される。インバータ120は、コンバータ115から供給される電力を変換してモータジェネレータ130を駆動する。ECU300は、モータジェネレータ130の力行時および回生時の両方の場合において、界磁巻線L1に流れる電流が同じ方向となるようにコンバータ115を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動機駆動装置およびそれを搭載する車両に関し、より特定的には、電機子巻線鎖交磁束量を調整可能な電動機を駆動するための電動機駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、環境に配慮した車両として、蓄電装置(たとえば二次電池やキャパシタなど)を搭載し、蓄電装置に蓄えられた電力から生じる駆動力を用いて走行する車両が注目されている。このような車両には、たとえば電気自動車、ハイブリッド自動車、燃料電池車などが含まれる。そして、これらの車両に搭載される蓄電装置を発電効率の高い商用電源により充電する技術が提案されている。
【0003】
これらの車両においては、発進時や加速時に蓄電装置から電力を受けて走行のための駆動力を発生するとともに、制動時に回生制動によって発電を行なって蓄電装置に電気エネルギを蓄えるための回転電機(モータジェネレータ)を備える場合がある。このように、走行状態に応じてモータジェネレータを制御するために、車両にはインバータが搭載される。このような車両においては、インバータが必要とする電力は車両状態によって変動する。そして、インバータが必要とする電力を安定的に供給するために、蓄電装置とインバータとの間にコンバータが備えられる場合がある。このコンバータにより、インバータの入力電圧を蓄電装置の出力電圧より高くして、モータの高出力化ができるとともに、同一出力時のモータ電流を低減することで、インバータおよびモータの小型化,低コスト化を図ることができる。
【0004】
また、このような車両の用いられる回転電機としては、回転子(以下、ロータとも称する。)に永久磁石を備え、その永久磁石による磁極と、固定子(以下、ステータとも称する。)において発生する回転磁界との磁気作用によって回転する永久磁石型モータや、ロータに界磁コイルを備え、界磁コイルに界磁電流を流すことによってロータに発生する磁界の回転軸と垂直方向の成分と、ステータにおいて発生する回転磁界との磁気作用によって回転する界磁巻線型モータなどが検討されている。
【0005】
特開2008−228534号公報(特許文献1)は、電動機駆動装置において、昇圧コンバータのリアクトルを電動機の界磁巻線と共用するとともに、このリアクトルに並列に接続されたスイッチング素子をスイッチング制御することによって、電動機の電機子巻線鎖交磁束量を調整することが可能な構成が界磁される。
【0006】
特開2008−228534号公報(特許文献1)に開示された電動機駆動装置によれば、電動機の状態に応じて電機子巻線鎖交磁束量を変化させることができるので、駆動装置の小型化と電動機の高出力化が可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2008−228534号公報
【特許文献2】特開2006−114662号公報
【特許文献3】特開2009−220684号公報
【特許文献4】特開2009−065758号公報
【特許文献5】特開2002−084754号公報
【特許文献6】特開2000−354331号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特開2008−228534号公報(特許文献1)に界磁された構成においては、電動機が力行状態の場合の電動機の高出力化については可能であったが、電動機が回生状態の場合の電動機の高出力化については考慮されておらず、回生時には逆に電動機出力を低下させてしまうおそれがあった。
【0009】
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであって、その目的は、電機子巻線鎖交磁束量を調整可能な電動機を駆動するための電動機駆動装置において、電動機の力行時および回生時の両方で電動機の高出力化を可能とすることである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明による電動機駆動装置は、界磁巻線を含み、界磁巻線に界磁電流を流すことによって形成される界磁極を有するロータとステータとを備える電動機を駆動するための電動機駆動装置であって、電源装置と、コンバータと、インバータと、制御装置とを備える。コンバータは、リアクトルを有し、界磁巻線をリアクトルの少なくとも一部として共用して、電源装置からの電圧を受けて、第1の電力線と第2の電力線との間で電圧変換するとともに、電圧変換動作時に界磁巻線に界磁電流を流すように構成される。インバータは、コンバータからの直流電力を受けて、電動機を駆動するための交流電力に変換する。そして、制御装置は、電動機の力行時および回生時の両方の場合において、界磁巻線に流れる電流が同じ方向となるようにコンバータを制御する。
【0011】
好ましくは、コンバータは、力行時に電流が流れる第1の電流経路と、回生時に電流が流れる第2の電流経路とを切替えるための切替部を含む。そして、制御装置は、第1の電流経路および第2の電流経路のいずれにおいても、界磁巻線に流れる電流が同じ方向となるように切替部を制御する。
【0012】
好ましくは、切替部は、昇圧用スイッチング素子と、界磁用スイッチング素子とを含む。昇圧用スイッチング素子は、界磁巻線の一方端である第1の端と電源装置の負極との間に、界磁巻線から電源装置の負極へ向かう方向を順方向として接続され、電源装置からの電圧を昇圧するためのスイッチング素子である。界磁用スイッチング素子は、界磁巻線に流れる電流を制御するためのスイッチング素子である。界磁巻線の他方端である第2の端は、第1の電力線と電気的に接続される。そして、制御装置は、昇圧用スイッチング素子および界磁用スイッチング素子をスイッチング制御することによって、界磁電流を制御してロータおよびステータ間の磁束密度を調整するとともに、コンバータから第2の電力線に出力される昇圧電流を制御して電源装置からの電圧を昇圧電圧の目標値に従った電圧に変換する。
【0013】
好ましくは、制御装置は、目標設定部と、デューティ設定部と、制御信号設定部とを含む。目標設定部は、電動機の回転数および要求トルクに応じて、界磁電流の目標値および昇圧電圧の目標値を設定する。デューティ設定部は、界磁電流の目標値および昇圧電圧の目標値に基づいて、昇圧用スイッチング素子および界磁用スイッチング素子のデューティ比を設定する。制御信号設定部は、演算されたデューティ比に従って、昇圧用スイッチング素子および界磁用スイッチング素子をスイッチングするための制御信号を設定する。
【0014】
好ましくは、界磁用スイッチング素子は、第1〜第3のスイッチング素子を含む。第1のスイッチング素子は、第2の電力線と界磁巻線の第2の端との間に、第2の電力線から第2の端に向かう方向を順方向として接続される。第2のスイッチング素子は、第1の端と第1の電力線との間に、第1の端から第1の電力線に向かう方向を順方向として接続される。第3のスイッチング素子は、第1の電力線と第2の端との間に、第1の電力線から第2の端に向かう方向を順方向として接続される。また、コンバータは、第1の端と第2の電力線との間に、第1の端から第2の電力線に向かう方向を順方向として接続された第1の整流素子と、第2の端と電源装置の負極との間に、電源装置の負極から第2の端に向かう方向を順方向として接続された第2の整流素子とを含む。
【0015】
好ましくは、コンバータは、力行時は昇圧用スイッチング素子のデューティ比に応じた制御信号に基づいて電源装置からの電圧を昇圧し、回生時は第1のスイッチング素子のデューティ比に応じた制御信号に基づいてインバータからの電圧を降圧する。
【0016】
好ましくは、コンバータは、界磁巻線に流れる電流を増加する第1の状態と、界磁巻線に流れる電流を減少する第2の状態と、界磁巻線に流れる電流を維持する第3の状態とを有する。デューティ設定部は、第3の状態において、昇圧用スイッチング素子および第1のスイッチング素子をオフに固定するとともに、第2のスイッチング素子および第3のスイッチング素子をオンに固定するように、デューティ比を設定する。
【0017】
好ましくは、コンバータは、界磁巻線に流れる電流を増加する第1の状態と、界磁巻線に流れる電流を減少する第2の状態と、界磁巻線に流れる電流を維持する第3の状態とを有する。デューティ設定部は、第3の状態において、昇圧用スイッチング素子、第2のスイッチング素子および第3のスイッチング素子をオフに固定するとともに、第1のスイッチング素子をオンに固定するように、デューティ比を設定する。
【0018】
好ましくは、界磁巻線は、直列に接続された第1の界磁巻線と第2の界磁巻線を含む。界磁用スイッチング素子は、第1の界磁巻線および第2の界磁巻線の接続ノードと、第2の電力線との間に、第2の電力線から接続ノードに向かう方向を順方向として接続された第1のスイッチング素子と、第1の端と第1の電力線との間に、第1の端から第1の電力線に向かう方向を順方向として接続された第2のスイッチング素子とを含む。コンバータは、第1の端と第2の電力線との間に、第1の端から第2の電力線へ向かう方向を順方向として接続された第1の整流素子と、接続ノードと電源装置の負極との間に、接続ノードから電源装置の負極へ向かう方向を順方向として接続された第2の整流素子と、第1の電力線と第2の端との間に、第2の端から第1の電力線に向かう方向を順方向として接続された第3の整流素子とを含む。
【0019】
好ましくは、第1の界磁巻線のリアクタンスは、第2の界磁巻線のリアクタンスと等しい。
【0020】
好ましくは、インバータは、昇圧用スイッチング素子のデューティ比に応じた制御信号に基づいて電源装置からの電圧を昇圧する一方で、第1のスイッチング素子のデューティ比に応じた制御信号に基づいてインバータからの電圧を降圧する。
【0021】
好ましくは、コンバータは、界磁巻線に流れる電流を増加する第1の状態と、界磁巻線に流れる電流を減少する第2の状態と、界磁巻線に流れる電流を維持する第3の状態とを有する。デューティ設定部は、第3の状態において、昇圧用スイッチング素子および第2のスイッチング素子をオフに固定するとともに、第1のスイッチング素子をオンに固定するように、デューティ比を設定する。
【0022】
本発明による車両は、電動機と、電動機を駆動するための電動機駆動装置と、駆動輪とを備える。電動機は、界磁巻線を含み、界磁巻線に界磁電流を流すことによって形成される界磁極を有するロータとステータとを備える。駆動輪は、電動機からの回転力によって車両を走行する。また、電動機駆動装置は、電源装置と、コンバータと、インバータと、制御装置とを含む。コンバータは、リアクトルを有し、界磁巻線をリアクトルの少なくとも一部として共用して、電源装置からの電圧を受けて、第1の電力線と第2の電力線との間で電圧変換するとともに、電圧変換動作時に界磁巻線に界磁電流を流すように構成される。インバータは、コンバータからの直流電力を受けて、電動機を駆動するための交流電力に変換する。制御装置は、電動機の力行時および回生時の両方の場合において、界磁巻線に流れる電流が同じ方向となるようにコンバータを制御する。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、電機子巻線鎖交磁束量を調整可能な電動機を駆動するための電動機駆動装置において、電動機の力行時および回生時の両方で電動機の高出力化を可能とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本実施の形態に従う電動機駆動装置を搭載した車両の全体ブロック図である。
【図2】図1で示したモータジェネレータの側断面図である。
【図3】図2のIII−III線における断面図である。
【図4】図2に示す界磁コイルの電流が供給された状態におけるモータジェネレータの側断面図である。
【図5】図4のV−V線における断面図である。
【図6】モータジェネレータのトルクと回転数との関係の一例を示す図である。
【図7】比較例の電動機駆動装置を搭載した車両の全体ブロック図である。
【図8】界磁電流の変化とトルクの増減との関係を説明するための図である。
【図9】比較例におけるモータジェネレータのトルクと回転数との関係の一例を示す図である。
【図10】本実施の形態において、力行時にECUによって制御されるスイッチング素子の動作、および回路を流れる電流を説明するための第1の図である。
【図11】本実施の形態において、力行時にECUによって制御されるスイッチング素子の動作、および回路を流れる電流を説明するための第2の図である。
【図12】本実施の形態において、力行時にECUによって制御されるスイッチング素子の動作、および回路を流れる電流を説明するための第3の図である。
【図13】本実施の形態において、力行時にECUによって制御されるスイッチング素子の動作、および回路を流れる電流を説明するための第4の図である。
【図14】力行時のスイッチング制御の制御周期における界磁電流を説明するためのタイムチャートである。
【図15】力行時において、各状態でのスイッチング素子の状態を示す図である。
【図16】本実施の形態において、回生時にECUによって制御されるスイッチング素子の動作、および回路を流れる電流を説明するための第1の図である。
【図17】本実施の形態において、回生時にECUによって制御されるスイッチング素子の動作、および回路を流れる電流を説明するための第2の図である。
【図18】本実施の形態において、回生時にECUによって制御されるスイッチング素子の動作、および回路を流れる電流を説明するための第3の図である。
【図19】本実施の形態において、回生時にECUによって制御されるスイッチング素子の動作、および回路を流れる電流を説明するための第4の図である。
【図20】回生時のスイッチング制御の制御周期における界磁電流を説明するためのタイムチャートである。
【図21】回生時において、各状態でのスイッチング素子の状態を示す図である。
【図22】本実施の形態における、モータジェネレータのトルクと回転数との関係の一例を示す図である。
【図23】本実施の形態において、ECUで実行されるスイッチング制御を説明するための機能ブロック図である。
【図24】本実施の形態において、ECUで実行されるスイッチング制御処理の詳細を説明するためのフローチャートである。
【図25】本実施の形態の変形例に従う電動機駆動装置を搭載した車両の全体ブロック図である。
【図26】変形例において、力行時にECUによって制御されるスイッチング素子の動作、および回路を流れる電流を説明するための第1の図である。
【図27】変形例において、力行時にECUによって制御されるスイッチング素子の動作、および回路を流れる電流を説明するための第2の図である。
【図28】変形例において、力行時にECUによって制御されるスイッチング素子の動作、および回路を流れる電流を説明するための第3の図である。
【図29】変形例の力行時において、各状態でのスイッチング素子の状態を示す図である。
【図30】変形例において、回生時にECUによって制御されるスイッチング素子の動作、および回路を流れる電流を説明するための第1の図である。
【図31】変形例において、回生時にECUによって制御されるスイッチング素子の動作、および回路を流れる電流を説明するための第2の図である。
【図32】変形例において、回生時にECUによって制御されるスイッチング素子の動作、および回路を流れる電流を説明するための第3の図である。
【図33】変形例の回生時において、各状態でのスイッチング素子の状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下において、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中の同一または相当部分については、同一符号を付してその説明は繰り返さない。
【0026】
[電動機駆動装置の構成]
図1は、本実施の形態に従う電動機駆動装置を搭載した車両100の全体ブロック図である。本実施の形態においては、車両100としてエンジンおよびモータジェネレータを搭載したハイブリッド車両を例として説明するが、車両100の構成はこれに限定されるものではなく、蓄電装置からの電力により電動機を駆動して走行可能な車両であれば適用可能である。車両100としては、ハイブリッド車両以外にたとえば電気自動車や燃料電池自動車などが含まれる。また、電動機を駆動する機器であれば、車両以外のものにも適用可能である。
【0027】
図1を参照して、車両100は、電源装置110と、コンバータ115と、インバータ120と、モータジェネレータ130と、電圧センサ140,150,160と、動力伝達ギア170と、駆動輪180と、エンジン190と、コンデンサC1,C2と、制御装置であるECU(Electronic Control Unit)300とを備える。
【0028】
電源装置110は、充放電可能に構成された電力貯蔵要素である。電源装置110は、たとえば、リチウムイオン電池、ニッケル水素電池あるいは鉛蓄電池などの二次電池や、電気二重層キャパシタなどの蓄電素子を含んで構成される。
【0029】
電源装置110は、電力線PL1および接地線NL1を介してコンバータ115に接続される。また、電源装置110は、モータジェネレータ130で発電された電力を蓄電する。電源装置110の出力はたとえば200V程度である。
【0030】
電圧センサ140は、電源装置110の電圧VBを検出し、その検出値をECU300へ出力する。
【0031】
コンデンサC1は、電力線PL1と接地線NL1との間に接続される。コンデンサC1は、電力線PL1と接地線NL1との間の電圧変動を低減する。電圧センサ150は、コンデンサC1にかかる電圧VLを検出し、その検出値をECU300へ出力する。
【0032】
コンバータ115は、スイッチング素子Q1〜Q4と、ダイオードD1〜D5と、リアクトルL1とを含む。
【0033】
なお、スイッチング素子としては、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)、電力用MOS(Metal Oxide Semiconductor)トランジスタ、あるいは、電力用バイポーラトランジスタ等を用いることができる。本実施の形態においては、スイッチング素子はIGBTの場合を例として説明する。
【0034】
スイッチング素子Q1とダイオードD1は、電力線HPLと接地線NL1との間に直列に接続される。ダイオードD1のカソードが電力線HPLに接続され、ダイオードD1のアノードはスイッチング素子Q1のエミッタに接続される。スイッチング素子Q1のコレクタは、接地線NL1に接続される。
【0035】
リアクトルL1、ダイオードD4およびスイッチング素子Q4は、ダイオードD1とスイッチング素子Q1の接続ノードと電力線PL1との間に直列に接続される。リアクトルL1の一方端P2がダイオードD1とスイッチング素子Q1の接続ノードに接続され、他方端P1がダイオードD4のカソードに接続される。スイッチング素子Q4のコレクタはダイオードD4のアノードに接続され、スイッチング素子Q4のエミッタは電力線PL1に接続される。
【0036】
スイッチング素子Q2とダイオードD2は、電力線HPLと、ダイオードD4のカソード(すなわち、ダイオードD4およびリアクトルL1の接続ノード)との間に、直列に接続される。スイッチング素子Q2のエミッタは電力線HPLに接続され、スイッチング素子Q2のコレクタはダイオードD2のアノードに接続される。ダイオードD2のカソードは、ダイオードD4のカソードに接続される。
【0037】
ダイオードD5は、接地線NL1とダイオードD4のカソードとの間に、接地線NL1からダイオードD4に向かう方向を順方向として接続される。
【0038】
ダイオードD3およびスイッチング素子Q3は、直列に接続された状態で、直列に接続されたリアクトルL1、ダイオードD4およびスイッチング素子Q4と並列に接続される。スイッチング素子Q3のエミッタはダイオードD1とスイッチング素子Q1の接続ノードに接続され、スイッチング素子Q3のコレクタはダイオードD3のアノードに接続される。ダイオードD3のカソードは電力線PL1に接続される。
【0039】
なお、図示しないが、スイッチング素子Q1〜Q4については、それぞれダイオードが逆並列に接続される構成としてもよい。スイッチング素子Q1〜Q4が、本発明における「切替部」を構成する。
【0040】
スイッチング素子Q1〜Q4は、ECU300からの制御信号SE1〜SE4によってオンまたはオフにそれぞれ制御される。
【0041】
スイッチング素子Q1、ダイオードD1およびリアクトルL1は、上述のような接続とすることで、昇圧チョッパ回路として動作する。そして、スイッチング素子Q1のオン時間比率であるデューティ比に応じて、電力線PL1の電圧が昇圧されて電力線HPLへ出力される。逆に、スイッチング素子Q2、リアクトルL1およびダイオードD5は、降圧チョッパ回路として動作する。そして、スイッチング素子Q2のデューティ比に応じて、電力線HPLの電圧が降圧されて電力線PL1へ出力される。
【0042】
すなわち、コンバータ115は、電源装置110からの出力電力を昇圧して、モータジェネレータ130を駆動するための電力をインバータ120へ供給する。また、コンバータ115は、モータジェネレータ130の回転力によって発電された電力を降圧して電源装置110へ充電電力を供給する。
【0043】
また、本実施の形態においては、リアクトルL1は、図1に示されるように、モータジェネレータ130の界磁巻線としても使用される。このように、コンバータ115のリアクトルL1とモータジェネレータ130の界磁巻線とを共用する構成とし、リアクトルL1に流れる電流(すなわち界磁電流)を調整することによって、後述するように、モータジェネレータ130の出力トルクを増減することが可能となる。
【0044】
また、スイッチング素子Q3,Q4を制御することによって、リアクトルL1に流れる電流の方向および大きさを調整することができる。
【0045】
コンデンサC2は、電力線HPLと接地線NL1との間に接続される。コンデンサC2は、電力線HPLと接地線NL1との間の電圧変動を低減する。電圧センサ160は、コンデンサC2にかかる電圧VH、すなわちインバータ120に供給される電圧(以下、「システム電圧」とも称する。)を検出し、その検出値をECU300へ出力する。
【0046】
インバータ120は、電力線HPLおよび接地線NL1を介してコンバータ115と接続される。インバータ120は、電力線HPLおよび接地線NL1の間に並列に設けられる、U相アーム121と、V相アーム122と、W相アーム123とを含む。各相アームは、電力線HPLおよび接地線NL1の間に直列接続されたスイッチング素子を含んで構成される。たとえば、U相アーム121はスイッチング素子Q15,Q16を含み、V相アーム122はスイッチング素子Q17,Q18を含み、W相アーム123はスイッチング素子Q19,Q20を含んで構成される。また、スイッチング素子Q15〜Q20には、逆並列ダイオードD15〜D20がそれぞれ接続されている。スイッチング素子Q15〜Q20のオン・オフは、ECU300からのスイッチング制御信号PWIによって制御される。
【0047】
インバータ120の各相アームにおけるスイッチング素子の接続ノード点は、モータジェネレータ130の各相コイルの各相端に接続されている。すなわち、モータジェネレータ130は、3相同期モータであり、U,V,W相の3つのコイルの一端が中性点に共通に接続される。U相コイルの他端がスイッチング素子Q15,Q16の接続ノードに、V相コイルの他端がスイッチング素子Q17,Q18の接続ノードに、W相コイルの他端がスイッチング素子Q19,Q20の接続ノードにそれぞれ接続されている。インバータ120は、ECU300からのスイッチング制御信号PWIに応答したスイッチング素子Q15〜Q20のスイッチング制御により、インバータ120とモータジェネレータ130との間で双方向の電力変換を行なう。
【0048】
具体的には、インバータ120は、ECU300によるスイッチング制御に従って、電力線HPLから受ける直流電圧を3相交流電圧に変換し、その変換した3相交流電圧をモータジェネレータ130へ出力する。これにより、モータジェネレータ130は、指定されたトルクを発生するように駆動される。
【0049】
また、インバータ120は、車両100の回生制動時、モータジェネレータ130が発電した3相交流電圧をECU300によるスイッチング制御に従って直流電圧に変換し、その変換した直流電圧を電力線HPLへ出力する。
【0050】
なお、ここで言う回生制動とは、車両100を運転するドライバーによるフットブレーキ操作があった場合の回生発電を伴なう制動や、フットブレーキを操作しないものの、走行中にアクセルペダルをオフすることで回生発電をさせながら車速を減速(または加速を中止)させることを含む。
【0051】
モータジェネレータ130は上述のように3相交流回転電機であり、たとえば、永久磁石が埋設されたロータを備える永久磁石型同期電動機である。
【0052】
モータジェネレータ130の出力トルクは、減速機や動力分割機構によって構成される動力伝達ギア170を介して駆動輪180に伝達されて、車両100を走行させる。モータジェネレータ130は、車両100の回生制動動作時には、駆動輪180の回転力によって発電することができる。そして、その発電電力は、インバータ120によって電源装置110の充電電力に変換される。
【0053】
また、モータジェネレータ130は、動力伝達ギア170を介してエンジン190とも結合される。そして、モータジェネレータ130およびエンジン190を協調的に動作させることによって、必要な車両駆動力が発生される。この場合、エンジン190の回転による発電電力を用いて、電源装置110を充電することも可能である。
【0054】
さらに、モータジェネレータ130は界磁巻線を備える。この界磁巻線は、上述のように、コンバータ115のリアクトルL1と共用されている。そして、モータジェネレータ130は、コンバータ115により界磁巻線を流れる界磁電流が制御されることによって、大きなトルクを発生することができる。モータジェネレータ130の詳細な構造は、図2〜図5を用いて後述する。
【0055】
なお、図1においては、インバータおよびモータジェネレータのペアを1つだけ備える構成について示しているが、インバータ,モータジェネレータの数はこれに限定されず、複数のインバータ,モータジェネレータを含む構成としてもよい。
【0056】
ECU300は、コンバータ115やインバータ120などを制御するための制御信号を生成して出力する。また、ECU300は、電圧センサ140からの電源装置110の電圧VB、および図示しない電流センサによって検出される電源装置110の電流に基づいて、電源装置110の充電状態(以下、SOC「State of Charge」とも称する。)を演算する。
【0057】
なお、図1においては、ECU300を1つの制御装置とする構成としているが、たとえば、機能ごとまたは制御対象機器ごとに個別の制御装置を設ける構成としてもよい。
【0058】
[電動機の構成]
次に、図2〜図5を用いて、電動機であるモータジェネレータ130の構成について説明する。
【0059】
図2は、図1で示したモータジェネレータ130の側断面図であり、図3は、図2のIII−III線における断面図である。
【0060】
図2および図3を参照して、モータジェネレータ130は、回転シャフト41と、回転シャフト41に固設されたロータ(回転子)40と、ステータ(固定子)30の外周に設けられた界磁ヨーク21と、界磁コイル50A,50Bとを備える。
【0061】
ロータ40とステータ30との間には、エアギャップGPが設けられており、僅かに径方向に離間するように配置されている。
【0062】
ロータ40は、回転シャフト41に固設されたロータコア43と、ロータコア43の外表面に設けられた磁石44とを含む。
【0063】
ロータコア43は、円筒状に形成された積層ロータコア43aと、積層ロータコア43aの内周に設けられた圧粉ロータコア43bとからなる。圧粉ロータコア43bは、一体の磁性材料から構成されており、具体的には粉末成形磁性体(SMC:Soft Magnetic Composites)から構成されている。
【0064】
積層ロータコア43aは、複数の電磁鋼板を軸方向に積層して構成されており、この電磁鋼板間に生じる隙間によって、軸方向の磁気抵抗が径方向および周方向の磁気抵抗よりも大きくなっている。そのため、積層ロータコア43aの内部においては、磁石からの磁力線は、軸方向に流れ難く、径方向および周方向に流れ易くなっている。
【0065】
これに対して、圧粉ロータコア43bは、粉末成形磁性体から構成されているため、軸方向の磁気抵抗は、積層ロータコア43aの軸方向の磁気抵抗よりも小さくなる。そのため、圧粉ロータコア43bの内部では、磁力線は軸方向に流れ易くなっている。
【0066】
そして図3に示すように、積層ロータコア43aの外表面には、等間隔に隔てて設けられ、かつ、径方向外方に向けて突出する複数のロータティース(第1突極部)45が形成されている。
【0067】
隣り合うロータティース45の間には、磁石44が設けられる。ロータティース45の外表面と磁石44の外表面とは、いずれも、回転シャフト41の中心軸線を中心とする仮
想の同一円周上に位置している。すなわち、磁石44は、ロータ40の周方向にロータティース45と隣り合うように設けられ、かつ、各外周面が面一となるように設けられている。
【0068】
磁石44のN極(第1磁極)とS極(第2磁極)とは、ロータ40の径方向に並ぶように配置されている。なお、本実施の形態においては、磁石44のN極がロータコア43の径方向外方に向けて配置され、磁石44のS極がロータコア43の径方向内方に向けて配置される例が示されるが、磁石の極が逆となるように配置されてもよい。
【0069】
ステータ30は、中空円筒状に形成されたステータコア22と、ステータコア22の内表面に形成され、ステータコア22の径方向内方に向けて突出する複数のステータティース(第2突極部)23と、ステータティース23に巻き付けられたコイル24とを含む。
【0070】
ステータティース23は、周方向に等間隔を隔てて形成されている。コイル24の一部はU相コイルを構成し、残りの一部のコイル24はV相コイルを構成し、残りのコイル24はW相コイルを構成する。そして、U相コイル、V相コイルおよびW相コイルは、一方端が端子とされて図示しないインバータの三相ケーブル(U相ケーブル、V相ケーブルおよびW相ケーブル)にそれぞれ接続される。さらに、U相コイル、V相コイルおよびW相コイルは、他方端が1点に共通接続されて中性点とされる。
【0071】
ECU300(図1)は、電動機駆動装置の外部に設けられたECUからトルク指令値を受けると、その受けたトルク指令値によって指定されたトルクを出力するように、モータジェネレータ130の各相に流す電流(モータ駆動電流)を制御する。制御されたモータ駆動電流は、三相ケーブルを介してコイル24へ供給される。
【0072】
ステータコア22は、磁性鋼板を複数積層して形成されるため、磁性鋼板間にはエアギャップが生じている。そのため、ステータコア22の径方向および周方向の磁気抵抗は、軸方向の磁気抵抗よりも小さくなっている。これにより、ステータコア22内に入り込んだ磁力線は、ステータコア22の周方向および径方向に流れ易く、軸方向に流れ難くなっている。
【0073】
図2に示すように、界磁ヨーク21は、ステータ30およびロータ40の両端部から軸方向に離間した位置に配置された天板部21a,21fと、この天板部21a,21fの周縁部に形成された円筒状の側壁部21bと、天板部21a,21fにそれぞれ形成された円筒状の突部21c,21eとを備えている。
【0074】
天板部21a,21fの中央部には、貫通孔21d,21gがそれぞれ形成されており、貫通孔21d,21g内には軸受46a,46bを介して、回転シャフト41が挿入されている。側壁部21bは、ステータコア22の外表面に固設されている。
【0075】
界磁ヨーク21は、一体の磁性材料から構成されており、具体的には、3次元完全等方材料である粉末成形磁性体(SMC)から構成されている。このため、界磁ヨーク21の軸方向の磁気抵抗は、ステータコア22の軸方向の磁気抵抗より小さくされている。
【0076】
突部21c,21eは、それぞれ天板部21a,21fの内表面に形成され、圧粉ロータコア43bの軸方向端部に向けて突出している。そして、突部21c,21eの端部と圧粉ロータコア43bの端部との間で、磁力線が途切れない程度に、突部21c,21eの端部と圧粉ロータコア43bの端部とが近接している。
【0077】
このため、磁石44の表面からエアギャップGPおよびステータコア22を介して界磁ヨーク21に達し、界磁ヨーク21内を軸方向に流れ、突部21c,21eから圧粉ロータコア43b内に入り込み、磁石44のS極に戻るという磁気回路(第1磁気回路)を形成することができる。
【0078】
この磁気回路において、ステータコア22の径方向の磁気抵抗は小さく抑えられており、界磁ヨーク21内の磁気抵抗も小さく抑えられており、さらに、圧粉ロータコア43bの磁気抵抗も小さく抑えられているため、磁気エネルギのロスを小さく抑えることができる。
【0079】
なお、図2に示す例においては、円筒状の突部21c,21eが界磁ヨーク21に形成されているが、圧粉ロータコア43bの端部に設けてもよい。
【0080】
界磁コイル(巻線)50A,50Bは、突部21c,21eの外周面にそれぞれ巻き付けられている。この界磁コイル50A,50Bに電流を流すことにより、突部21c,21eの端部側にたとえば、N極の磁性を持たせるとともに、側壁部21bにS極の磁性を持たせることができる。あるいは、突部21c,21eの端部側にS極の磁性を持たせるとともに、側壁部21bにN極の磁性を持たせることができる。なお、本実施の形態においては、界磁コイル50A,50Bは、界磁ヨーク21の突部21c,21eに設けられているが、この位置に限られず界磁ヨーク21に設けられておればよい。ここで、界磁コイル50(以下、界磁コイル50A,50Bを総称して「界磁コイル50」とも称する。)が界磁ヨーク21に設けられているとは、界磁コイル50が界磁ヨーク21の表面に当接している場合に限られず、界磁ヨーク21内の磁力線の流れを制御可能な程度であれば、界磁ヨーク21の表面から離間している場合も含む。なお、本実施の形態においては、界磁コイル50A,50Bが直列接続されて図1のリアクトルL1を構成する。
【0081】
上記のように構成されたモータジェネレータ130の動作について、図4および図5を用いて説明する。図4は、図2に示す界磁コイル50の電流が供給された状態におけるモータジェネレータ130の側断面図であり、図5は、図4のV−V線における断面図である。
【0082】
図4を参照して、界磁コイル50に電流を流すことにより、磁力線mt4が発生される。この磁力線mt4は、界磁ヨーク21の天板部21aを通り、側壁部21bからステータコア22内に入り込む。そして、磁力線mt4は、エアギャップGPを解して、ロータコア43内に入り込み、ロータコア43内を軸方向に進む。その後、磁力線mt4は、ロータコア43の軸方向端面から、突部21cの端面を介して、界磁ヨーク21内に入り込む。なお、突部21e側についても同様である。
【0083】
このような磁気回路を発生させることにより、界磁ヨーク21の突部21c,21eがS極の磁性を帯び、界磁ヨーク21の側壁部21bがN極の磁性を帯びることになる。
【0084】
図5においては、磁石44の端部のうち、ロータ40の回転方向P前方側の端部側にステータティース23aが配置されており、磁石44の外主面の周方向の中央部は、ステータティース23aの端面の周方向の中央部に回転方向Pの後方側に位置している。このステータティース23aの内径側の端面がS極とされている。
【0085】
このため、磁石44の外主面から出る磁力線mt1〜mt4は、径方向外方に向かうに従って、回転方向Pの前方側に向かうように傾斜し、ステータティース23aの端面に達する。このように、磁石44およびステータティース23a間の磁力線mt1〜mt3の磁気経路が傾斜し長くなっているので、磁気経路が最短となるようにロータ40に応力が加えられる。すなわち、磁石44は、ステータティース23aに向けて引っ張られることとなる。
【0086】
ステータティース23aに対して、ロータ40の回転方向P後方側には、ステータティース23bが設けられており。このステータティース23bは、磁石44の中央部付近と
対向している。ステータティース23bの内径側の端面は、N極とされており、磁石44と反発している。
【0087】
このため、ステータティース23aからステータコア22内に入り込んだ磁力線mt1〜mt3は、ステータコア22内を周方向に流れる。このとき、上述したように、界磁コイル50に電流を流したことによって側壁部21bの内壁面がN極となっている。そのため、磁石44からの磁力線mt1〜mt3は、ステータティース23aの端面からステータコア22内に入り込むと、ステータコア22の周方向に沿って進む。すなわち、磁力線mt1〜mt3が、ステータティース23aに達した後、ステータコア22内を径方向に流れ、界磁ヨーク21に達するのが抑制されている。
【0088】
そして、ステータティース23bに対して、ロータ40の回転方向P後方側には、ステータティース23cが設けられており、内径側の端面はN極とされている。このステータティース23cはロータティース45aと対向している。
【0089】
ここで、ロータティース45aに隣接する磁石44の外表面はN極とされているため、ステータティース23cの端面からロータティース45aに向かう磁力線mt1〜mt3は、この磁石44のN極の影響を受けて、回転方向P後方に傾斜するようにロータティース45aに向けて流れる。そして、この経路長が最短となるように、ロータティース45aがステータティース23cに向けて良好に引き寄せられる。
【0090】
このように、磁力線mt1〜mt3は、磁石44からエアギャップGPを介して、ステータティース23aに達してステータコア22内を周方向に通り、その後、ステータティース23cからエアギャップGPを介して積層ロータコア43a内に達し、再度磁石44に戻るという磁気回路K1を形成する。
【0091】
一方、界磁コイル50に電流が供給されていない状態では、磁石44からの磁力線mt1〜mt3の一部(たとえば磁力線mt3)は、ステータティース23aに達した後、ステータコア22内を径方向に流れ、界磁ヨーク21に達する。そして、磁力線mt3は、界磁ヨーク21を軸方向に通り、突部21cから圧粉ロータコア43b内に入り込み、再度磁石44に戻るという磁気回路K2(図示せず)を形成する。
【0092】
すなわち、界磁コイル50に電流を流すことによって、磁石44から発せられる磁力線mt1〜mt3が磁気回路K2を通ることを抑制し、磁力線mt1〜mt3が磁気回路K1を通るように制御することができる。これにより、磁石44から生じる一定の磁束量のうち、トルクの発生に大きく貢献する磁気回路K1を通る磁束量の割合を増加することができるため、大きなトルクを得ることができる。
【0093】
さらに、界磁コイル50によって生じる磁力線mt4は、図5に示すように、磁気回路K1の一部であって、ステータティース23cからロータティース45aに達する経路を通り、その後、圧粉ロータコア43bに達する。このため、磁力線mt4もトルクの発生に寄与する。
【0094】
以上に説明したように、界磁コイル50に電流を流すことによって、モータジェネレータ130には「強め界磁制御」が施される。図6は、モータジェネレータ130のトルクと回転数との関係を示す図である。
【0095】
図6において、実線の曲線k1は、界磁コイル50に電流が供給されていない状態(界磁電流If=0)におけるモータジェネレータ130の出力特性を示す。一方、破線の曲線k2は、界磁コイル50に電流が供給された状態(界磁電流If≠0)における電動機の出力特性を示す。
【0096】
図6に示されるように、界磁コイル50に電流を流してモータジェネレータ130に強め界磁制御を行なうことにより、回転数が低い領域においてトルクが大きくなっていることが分かる。その一方で、界磁が強まることによって電圧が上昇するため、運転可能な最高回転数は低下する。
【0097】
なお、界磁コイル50に流す電流の向きを反転することによりモータジェネレータ130に「弱め界磁制御」を施すこともできる。この場合、界磁コイル50に電流を流すことによって、磁気回路K1を通る磁束量の割合が減少する。
【0098】
また、本実施の形態によれば、ロータ40の外周面のうち、磁石44の表面は、磁力線を発する領域として機能しており、ロータティース45は、発せられた磁力線を取り込む領域として機能している。そして、磁石44およびロータティース45は、ロータ40の軸方向に亘って延在しているため、ロータ40の外周面は、磁石44の表面とロータティース45の表面とから構成されている。そのため、ロータティース45の外周面の略全面を、磁力線の出力領域および磁力線の取入領域として機能させることが可能となるため、ロータ40の外周面の利用効率を向上することができる。その結果、小型のロータ40であっても所要の磁束量の出し入れを行なうことができるため、ロータ40自体をコンパクトに構成することができる。
【0099】
[従来技術の問題点]
次に、図7を用いて、従来技術の問題点について説明する。
【0100】
図7は、本実施の形態の比較例の電動機駆動装置を搭載した車両100Aの全体ブロック図である。この比較例の構成は、上述の特開2008−228534号公報(特許文献1)に開示された電動機駆動装置の構成である。なお、図7においては、図1におけるコンバータ115が、コンバータ115Aに置き換わったものとなっている。図7において、図1と重複する要素の説明は繰り返さない。
【0101】
図7を参照して、コンバータ115Aは、スイッチング素子Q11〜Q13と、ダイオードD11〜D13と、リアクトルL1とを含む。リアクトルL1は、図1と同様に、モータジェネレータ130の界磁巻線としても使用される。
【0102】
スイッチング素子Q11,Q12は、電力線HPLと接地線NL1との間に直列に接続される。ダイオードD11,D12は、それぞれスイッチング素子Q11,Q12に逆並列に接続される。
【0103】
リアクトルL1は、スイッチング素子Q1,Q2の接続ノードと電力線PL1とに接続される。
【0104】
スイッチング素子Q13およびダイオードD13は直列に接続された状態で、リアクトルL1に並列に接続される。スイッチング素子Q13のエミッタはスイッチング素子Q1,Q2の接続ノードに接続され、スイッチング素子Q13のコレクタはダイオードD13のアノードに接続される。ダイオードD13のカソードは、電力線PL1に接続される。
【0105】
このような構成とすることで、コンバータ115Aは、電力線PL1から電力線HPLへの昇圧動作と、電力線HPLから電力線PL1への降圧動作の双方向の電圧変換が可能である。また、スイッチング素子Q13を制御することによって、リアクトルL1に流れる電流、すなわちモータジェネレータ130の界磁電流を調整することができる。
【0106】
このようなコンバータ115Aにおいては、力行状態の場合は、図7中の破線矢印AR2の方向に電流が流れる。一方、回生状態の場合には、実線矢印AR1の方向に電流が流れる。したがって、力行時と回生時において、リアクトルL1に流れる電流の方向が逆向きになる。そうすると、回生時には、図4,図5で説明した界磁電流によって発生する磁力線の向きが逆になり、磁石からの磁力線の一部が相殺されることによって、「界磁弱め」の状態となる。
【0107】
図8に示されるように、界磁電流が正の場合(図8中の曲線W12)には、界磁電流がない場合(図8中の曲線W11)に比べて、同じモータ電流でも高トルクが出力可能であるが、界磁電流が負の場合(図8中の曲線W13)には、界磁電流がない場合(図8中の曲線W11)に比べて、逆に発生トルクが減少する。すなわち、図9のように、力行状態で界磁電流を増加させると低回転数の領域でモータジェネレータ130のトルクを増加させることはできるが、回生状態で界磁電流を負の方向に増加させると、逆に低回転数の領域ではモータジェネレータ130のトルクを減少させることはできても増加させることはできない。これによって、たとえば、減速時に所望の減速トルクが発生できずに、減速にかかる距離や時間が長くなったり、トルク減少によって損失低減の効果が発揮できなくなったりするおそれがある。
【0108】
そこで、本実施の形態においては、図1に示した構成を有する電動機制御装置において、ECU300によってスイッチング素子Q1〜Q4を制御することによって、力行時および回生時の両方の場合で、モータジェネレータ130によって発生するトルクを増加させることができる。
【0109】
[電動機制御装置の制御構造]
再び図1を参照して、ECU300は、いずれも図1には図示しないがCPU(Central Processing Unit)、記憶装置および入出力バッファを含み、各センサ等からの信号の入力や各機器への制御信号の出力を行なうとともに、車両100および各機器の制御を行なう。なお、これらの制御については、ソフトウェアによる処理に限られず、専用のハードウェア(電子回路)で処理することも可能である。
【0110】
ECU300は、上位のECU(図示せず)から入力されたモータ指令に従ってモータジェネレータ130が動作するように、コンバータ115およびインバータ120のスイッチング制御を行なうための制御信号SE1〜SE4,PWIを生成し、コンバータ115およびインバータ120の電力変換動作を制御する。
【0111】
さらに、上述のように、ECU300は、コンバータ115のスイッチング素子を制御することによって、モータジェネレータ130の界磁コイル50に流れる電流を制御する。
【0112】
本実施の形態においては、ECU300は、モータジェネレータ130の運転状態に応じてシステム電圧VHの目標値VH*を設定するとともに、界磁電流Ifの目標値If*を設定する。そして、この目標値VH*,If*に基づいて、スイッチング素子Q1〜Q4のデューティ比を設定する。以下、スイッチング素子Q1〜Q4のデューティ比の設定動作について説明する。
【0113】
図10〜図21は、ECU300によるスイッチング素子Q1〜Q4のスイッチング制御を説明するための図である。図10〜図15は力行時の動作を説明するためのものであり、図16〜図21は回生時の動作を説明するためのものである。
【0114】
まず、力行時の動作について説明する。
図10〜図13は、力行時におけるスイッチング素子Q1〜Q4の動作状態と、そのときに回路に流れる電流を示す図である。力行時には、図14のタイムチャートに示すように、状態Aから状態Cまでのパターンを制御の1周期として実行する。なお、状態Cについては、状態C−1(図12)および状態C−2(図13)の2つのパターンが示されているが、この2つのパターンのどちらを採用してもよい。各状態におけるスイッチング素子Q1〜Q4の状態を、図15に示す。
【0115】
図10を参照して、最初に、スイッチング素子Q1,Q4がオンに設定されるとともに、スイッチング素子Q2,Q3がオフに設定される(状態A)。これによって、電流が矢印AR11のように流れ、リアクトルL1にエネルギが蓄積される。このとき、図14の曲線W21における、時刻t1〜t2,t4〜t5のように、リアクトルL1に流れるリアクトル電流IL(すなわち、モータジェネレータ130の界磁電流If)が増加する。
【0116】
次に、図11の状態Bのように、スイッチング素子Q1をオフに切替える(すなわち、スイッチング素子Q1〜Q3をオフ、スイッチング素子Q2をオンに設定する)。そうすると、リアクトルL1に蓄積されたエネルギに応じた電流が、矢印AR12のように、リアクトルL1からダイオードD1を介してインバータ120側に流れる。このとき、図14の時刻t2〜t3,t5〜t6のように、リアクトル電流ILはエネルギの放出とともに徐々に減少する。
【0117】
その後、図12の状態C−1のように、スイッチング素子Q3をオンに切替える(すなわち、スイッチング素子Q1,Q2をオフ、スイッチング素子Q3,Q4をオンに設定する)。そうすると、矢印AR13のように、リアクトルL1からスイッチング素子Q3,Q4を介して再びリアクトルL1に戻るような循環電流が流れる。このときは、図14の時刻0〜t1,t3〜t4などのように、リアクトル電流ILは、リアクトルL1やスイッチング素子Q3,Q4などの導通損失を除けば、ほぼ一定に維持される。
【0118】
この制御周期を繰り返すことによって、図14の曲線W24のような平均電流が界磁電流Ifとしてモータジェネレータ130に供給される。また、状態BにおいてリアクトルL1から供給される電流によってシステム電圧VHが昇圧される。そして、状態Bにおける平均電流とシステム電圧VHとの積で示される電力がインバータ120に供給される。
【0119】
なお、状態Cについては、図13の状態C−2とすることも可能である。この場合は、状態Bから、スイッチング素子Q2をオンに切替えるとともに、スイッチング素子Q4をオフに切替える(すなわち、スイッチング素子Q1,Q3,Q4をオフ、スイッチング素子Q2をオンに設定する)。これによって、矢印14のように、リアクトルL1からダイオードD1およびスイッチング素子Q2を介して再びリアクトルL1に戻る循環電流が流れるので、状態C−1の場合と同様に、リアクトルL1に流れる電流を維持することができる。ただし、状態C−1のほうが、状態Bからの遷移において切替えられるスイッチング素子の数が少ないので、より好適である。
【0120】
上記のようなスイッチング動作において、状態A〜状態Cでの各スイッチング素子のデューティ比を適切に設定することによって、図14中の破線W22,W23のように、界磁電流Ifと昇圧電圧を独立して調整することが可能となる。なお、いずれの状態においても、リアクトル電流は、図中の点P1から点P2に向かう方向に流れる。
【0121】
一方、回生時における動作を図16〜図21を用いて説明する。
図16〜図19は、回生時におけるスイッチング素子Q1〜Q4の動作状態と、そのときに回路に流れる電流を示す図である。回生時には、図20のタイムチャートに示すように、状態Dから状態Fまでのパターンを制御の1周期として実行する。なお、力行時の状態Cと同様に、状態Fについては、状態F−1(図18)および状態F−2(図19)の2つのパターンが示されているが、この2つのパターンのどちらを採用してもよい。各状態におけるスイッチング素子Q1〜Q4の状態を図21に示す。
【0122】
図16を参照して、最初に、スイッチング素子Q2,Q3がオンに設定されるとともに、スイッチング素子Q1,Q4がオフに設定される(状態D)。これによって、電流が矢印AR21のように、電力線HPLからスイッチング素子Q2、リアクトルL1およびスイッチング素子Q3を介して流れ、電源装置110が充電されるとともに、リアクトルL1にエネルギが蓄積される。このとき、図20の曲線W31における、時刻t11〜t12,t14〜t15のように、リアクトルL1に流れるリアクトル電流IL(界磁電流If)が増加する。
【0123】
次に、図17の状態Eのように、スイッチング素子Q2をオフに切替える(すなわち、スイッチング素子Q1,Q2,Q4をオフ、スイッチング素子Q3をオンに設定する)。そうすると、リアクトルL1に蓄積されたエネルギに応じた電流が、矢印AR22のように、リアクトルL1からスイッチング素子Q3を介して電源装置110側に流れ、充電を継続する。このとき、図20の時刻t12〜t13,t15〜t16のように、リアクトル電流ILはエネルギの放出とともに徐々に減少する。
【0124】
その後、図18の状態F−1のように、スイッチング素子Q4をオンに切替える(すなわち、スイッチング素子Q1,Q2をオフ、スイッチング素子Q3,Q4をオンに設定する)。そうすると、ダイオードD5のカソード(図中の点P1)の電位が電源装置110の電圧と等しくなるために図17の電流が止まり、矢印AR23のように、リアクトルL1からスイッチング素子Q3,Q4を介して再びリアクトルL1に戻るような循環電流が流れる。このときは、図20の時刻0〜t11,t13〜t14などのように、リアクトル電流ILは、ほぼ一定に維持される。
【0125】
これによって、図20の曲線W32のような平均電流が界磁電流Ifとしてモータジェネレータ130に供給される。また、状態Dにおいて、電力線HPL側から供給される電流によってシステム電圧VHが降圧される。
【0126】
なお、状態Fについては、上述のように図19の状態F−2とすることも可能である。この場合は、状態Eから、スイッチング素子Q2をオンに切替えるとともに、スイッチング素子Q3をオフに切替える(すなわち、スイッチング素子Q1,Q3,Q4をオフ、スイッチング素子Q2をオンに設定する)。そうすると、ダイオードD1のアノードの電位が上昇し、電力線HPLの電位よりも高くなると、ダイオードD1が導通する。これによって、矢印AR24のように、リアクトルL1からダイオードD1およびスイッチング素子Q2を介して再びリアクトルL1に戻る循環電流が流れるので、状態F−1の場合と同様にリアクトルL1に流れる電流を維持することができる。この場合も、力行時と同様に、状態F−1のほうが、状態Eからの遷移において切替えられるスイッチング素子の数が少ないので、より好適である。
【0127】
なお、回生時においても、図16〜図19で示したように、状態D〜状態Fのいずれの状態においても、電流は図中の点P1から点P2の方向に流れる。すなわち、力行時および回生時を通して、界磁電流Ifによって発生する磁力線がロータの磁石により発生する磁力線を強める方向となる。したがって、図22に示すように、力行時および回生時のいずれにおいても、界磁電流Ifを増加させることによって、低回転数の領域において、発生するトルクを増加させることが可能となる。これによって、力行時だけでなく、回生時においてもトルクアップおよび損失低減による効率改善を図ることができる。なお、状態A〜状態Cで流れる電流経路および状態D〜状態Fで流れる電流経路は、それぞれ本発明における「第1の電流経路」および「第2の電流経路」の一例である。
【0128】
図23は、本実施の形態において、ECU300で実行されるスイッチング制御を説明するための機能ブロック図である。図23で説明される機能ブロック図に記載された各機能ブロックは、ECU300によるハードウェア的あるいはソフトウェア的な処理によって実現される。
【0129】
図1および図23を参照して、ECU300は、目標設定部310と、デューティ設定部320と、制御信号設定部330とを含む。
【0130】
目標設定部310は、上位ECU(図示せず)からのモータジェネレータ130のトルク指令値TR、および、図示しない回転センサによって検出されたモータジェネレータ130の回転速度MRNを受ける。そして、目標設定部310は、これらの情報に基づいて、予め定められたマップ等を用いることによって、システム電圧VHの目標値VH*、および界磁電流Ifの目標値If*を設定し、その設定値をデューティ設定部320に出力する。
【0131】
デューティ設定部320は、目標設定部310で設定された目標値VH*,If*、電圧センサ150,160からの電圧VL,VHの検出値を受ける。デューティ設定部320は、これらの情報に基づいて、目標値VH*,If*を達成するための、コンバータ115に含まれるスイッチング素子Q1〜Q4、およびインバータ120に含まれるスイッチング素子Q15〜Q20のそれぞれのデューティ比を設定する。そして、設定されたデューティ比指令DUTYを制御信号設定部330へ出力する。
【0132】
制御信号設定部330は、デューティ設定部320からのデューティ比指令DUTYに従った制御信号SE1〜SE4,PWIを生成し、コンバータ115およびインバータ120へ出力する。
【0133】
図24は、本実施の形態において、ECU300で実行されるスイッチング制御処理の詳細を説明するためのフローチャートである。図24に示すフローチャート中の各ステップについては、ECU300に予め格納されたプログラムが、メインルーチンから呼び出されて所定周期で実行されることによって実現される。あるいは、一部のステップについては、専用のハードウェア(電子回路)を構築して処理を実現することも可能である。
【0134】
図1および図24を参照して、ECU300は、ステップ(以下、ステップをSと略す。)100にて、モータジェネレータ130のトルク指令値TRおよびモータ回転速度MRNを取得する。また、S110にて、ECU300は、電圧センサ150,160による電圧VL,VHの検出値を取得する。
【0135】
次に、ECU300は、S120にて、取得したモータ要求出力(TR,MRN)に基づいて、システム電圧VHの目標値VH*および界磁電流Ifの目標値If*を、たとえばマップ等を参照することによって設定する。このとき、制御モードが力行であるか回生であるかについての判断も行なう。
【0136】
そして、ECU300は、S130にて、目標値VH*,If*、実際のセンサからの検出値VL,VHおよび力行/回生の制御モードなどに基づいて、コンバータ115およびインバータ120に含まれる各スイッチング素子のデューティ比を演算する。
【0137】
そして、ECU300は、S140にて、演算されたデューティ比に従って、各スイッチング素子のスイッチング制御を行なう。
【0138】
このような処理に従って制御を行なうことによって、コンバータ115による電圧変換とモータジェネレータ130の界磁制御を独立して行なうことが可能となるとともに、力行時および回生時のいずれの場合においても、界磁コイル50に同じ向きの界磁電流を流すことが可能となる。これによって、電動機駆動装置において、電動機の大型化を抑制しつつ、力行時および回生時の両方でトルクアップおよび損失低減を行なうことが可能となる。
【0139】
[変形例]
図25は、本実施の形態に従う、他の例の電動機駆動装置を搭載した車両100Bの全体ブロック図である。図25は、図1におけるコンバータ115がコンバータ115Bに置き換わっており、さらにモータジェネレータ130がモータジェネレータ130Bに置き換わったものとなっている。図25において、図1と重複する要素の説明は繰り返さない。
【0140】
図25を参照して、モータジェネレータ130Bは、基本的な構造は、図2〜図5で説明したモータジェネレータ130と同じである。しかしながら、モータジェネレータ130では、界磁コイル50A,50Bがモータジェネレータ130内で直列に接続された状態でコンバータ115に接続されていたものが、モータジェネレータ130Bにおいては、界磁コイル50A,50Bが個別にコンバータ115Bと接続される構成となっている。
【0141】
コンバータ115Bは、図1におけるコンバータ115における、リアクトルL1の部分に界磁コイル50AであるリアクトルL2が接続される。そして、ダイオードD2のカソードと、ダイオードD4のカソードとの間に、界磁コイル50BであるリアクトルL3が接続される。また、コンバータ115Bにおいては、スイッチング素子Q4が削減され、ダイオードD4のアノードが電力線PL1に接続される。残りの要素である、スイッチング素子Q1〜Q3およびダイオードD1〜D3,D5の接続は、コンバータ115と同様である。
【0142】
このような構成とすることで、コンバータ内のスイッチング素子Q4を削減することが可能となる。なお、リアクトルL2,L3については、モータジェネレータ130B内に発生する磁束のアンバランスが生じないようにするために、基本的には、それぞれの有するリアクタンスがほぼ同じになるようにすることが好ましい。
【0143】
図25におけるコンバータ115Bのスイッチング素子のスイッチング状態と、回路を流れる電流の状態を、以下の図26〜図33を用いて説明する。なお、図26〜図29は力行時の場合を示しており、図30〜図33は回生時の場合を示している。
【0144】
図26は、図10で示した状態Aに対応する場合であり、この場合は、スイッチング素子Q1がオンに設定され、スイッチング素子Q2,Q3はオフに設定される。このときに回路に流れる電流は、矢印AR31のように流れ、リアクトルL2、L3にエネルギが蓄積される。
【0145】
次に、図27では、図11で示した状態Bと同様に、スイッチング素子Q1がオフに切替えられ、スイッチング素子Q1〜Q3のすべてがオフに設定される。このとき、電流は、リアクトルL2,L3に蓄積されたエネルギに応じた電流が、ダイオードD1を介してインバータ120側へ供給される。
【0146】
そして、図28では、スイッチング素子Q2がオンに切替えられる。これによって、図13で示した状態C−2のように、リアクトルL3からダイオードD1およびスイッチング素子Q2を介して再びリアクトルL3に戻るような循環電流(図28中の矢印AR33)が流れる。その後、再度状態Aに戻って次のスイッチング周期が開始される。
【0147】
図29に、力行時のスイッチング素子Q1〜Q3のスイッチング状態を示す。なお、図示しないが、状態Cにおいては、図12で示した状態C−1のように、スイッチング素子Q3をオンに設定することで、リアクトルL3から、スイッチング素子Q3、ダイオードD4およびリアクトルL2を介して再びリアクトルL3に戻るような循環電流が流れるようにしてもよい。
【0148】
次に、図30〜図33を用いて回生時の状態について説明する。
図30は、図16で示した状態Dに対応する場合であり、この場合は、スイッチング素子Q1がオフに設定され、スイッチング素子Q2,Q3がオンに設定される。このとき、電流は矢印AR41のように流れ、リアクトルL3にエネルギが蓄積される。なお、この場合は、図中の点P1の電位が電力線PL1の電位よりも高いため、リアクトルL2には電流は流れない。
【0149】
次に、図31では、図17で示した状態Eと同様に、スイッチング素子Q2がオフに切替えられ、スイッチング素子Q1,Q2がオフに設定されるとともに、スイッチング素子Q3がオンに設定される。これによって、リアクトルL3に蓄えられたエネルギが放出されて、リアクトルL3からスイッチング素子Q3を介して電源装置110へ電流が継続して流れる(図31中の矢印AR42)。
【0150】
そして、図32では、スイッチング素子Q3がオフに切替えられる。これによって、図19の状態F−2のように、リアクトルL3からダイオードD1およびスイッチング素子Q2を介して再びリアクトルL3に戻るような循環電流(図32中の矢印AR43)が流れる。
【0151】
図33に、回生時のスイッチング素子Q1〜Q3のスイッチング状態を示す。なお、回生時においては、リアクトルL2にエネルギが蓄積されていないため、図20のような状態F−1とすることはできない。
【0152】
以上のように、図25で示した変形例の構成においても、力行時および回生時のいずれの場合でも、同じ向きの界磁電流を流すことが可能となる。変形例においては、一部の状態において、リアクトルL3には電流が流れるがリアクトルL2には電流が流れず、エネルギが図1の構成と比べて小さくなる可能性がある。そうすると、界磁電流を流すことによるトルクの増加量が小さくなる可能性がある。しかしながら、一方でスイッチング素子Q4を削減できることによって機器および制御の削減が可能となるために、全体のコストを低減することが可能となる。
【0153】
なお、本実施の形態における「スイッチング素子Q1」は、本発明の「昇圧用スイッチング素子」の一例である。本実施の形態における「スイッチング素子Q2」,「スイッチング素子Q3」,「スイッチング素子Q4」は、それぞれ本発明の「第1のスイッチング素子」,「第2のスイッチング素子」,「第3のスイッチング素子」の一例である。また、本実施の形態の「ダイオードD1」,「ダイオードD5」,「ダイオードD4」は、それぞれ本発明の「第1の整流素子」,「第2の整流素子」,「第3の整流素子」の一例である。本実施の形態における「電力線PL1」および「電力線HPL」は、それぞれ本発明の「第1の電力線」および「第2の電力線」の一例である。
【0154】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0155】
21 界磁ヨーク、21a,21f 天板部、21b 側壁部、21c,21e 突部、21d,21g 貫通孔、22 ステータコア、23,23a〜23c ステータティース、24 コイル、30 ステータ、40 ロータ、41 回転シャフト、43 ロータコア、43a 積層ロータコア、43b 圧粉ロータコア、44 磁石、45,45a ロータティース、46a,46b 軸受、50,50A,50B 界磁コイル、100,100A,100B 車両、110 電源装置、115,115A,115B コンバータ、120 インバータ、121 U相アーム、122 V相アーム、123 W相アーム、130,130B モータジェネレータ、140,150,160 電圧センサ、170 動力伝達ギア、180 駆動輪、190 エンジン、300 ECU、310 目標設定部、320 デューティ設定部、330 制御信号設定部、C1,C2 コンデンサ、D1〜D5,D11〜D13,D15〜D20 ダイオード、GP エアギャップ、HPL,PL1 電力線、K1,K2 磁気回路、L1,L2,L3 リアクトル、mt1〜mt4 磁力線、NL1 接地線、Q1〜Q4,Q11〜Q13,Q15〜Q20 スイッチング素子。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
界磁巻線を含み、前記界磁巻線に界磁電流を流すことによって形成される界磁極を有するロータとステータとを備える電動機を駆動するための電動機駆動装置であって、
電源装置と、
リアクトルを有し、前記界磁巻線を前記リアクトルの少なくとも一部として共用して、前記電源装置からの電圧を受けて、第1の電力線と第2の電力線との間で電圧変換するとともに、電圧変換動作時に前記界磁巻線に界磁電流を流すように構成されたコンバータと、
前記コンバータからの直流電力を受けて、前記電動機を駆動するための交流電力に変換するように構成されたインバータと、
前記電動機の力行時および回生時の両方の場合において、前記界磁巻線に流れる電流が同じ方向となるように前記コンバータを制御するための制御装置とを備える、電動機駆動装置。
【請求項2】
前記コンバータは、
力行時に電流が流れる第1の電流経路と、回生時に電流が流れる第2の電流経路とを切替えるための切替部を含み、
前記制御装置は、前記第1の電流経路および前記第2の電流経路のいずれにおいても、前記界磁巻線に流れる電流が同じ方向となるように前記切替部を制御する、請求項1に記載の電動機駆動装置。
【請求項3】
前記切替部は、
前記界磁巻線の一方端である第1の端と前記電源装置の負極との間に、前記界磁巻線から前記電源装置の負極へ向かう方向を順方向として接続され、前記電源装置からの電圧を昇圧するための昇圧用スイッチング素子と、
前記界磁巻線に流れる電流を制御するための界磁用スイッチング素子とを含み、
前記界磁巻線の他方端である第2の端は、前記第1の電力線と電気的に接続され、
前記制御装置は、前記昇圧用スイッチング素子および前記界磁用スイッチング素子をスイッチング制御することによって、前記界磁電流を制御して前記ロータおよび前記ステータ間の磁束密度を調整するとともに、前記コンバータから前記第2の電力線に出力される昇圧電流を制御して前記電源装置からの電圧を昇圧電圧の目標値に従った電圧に変換する、請求項2に記載の電動機駆動装置。
【請求項4】
前記制御装置は、
前記電動機の回転数および要求トルクに応じて、前記界磁電流の目標値および前記昇圧電圧の目標値を設定する目標設定部と、
前記界磁電流の目標値および前記昇圧電圧の目標値に基づいて、前記昇圧用スイッチング素子および前記界磁用スイッチング素子のデューティ比を設定するデューティ設定部と、
演算された前記デューティ比に従って、前記昇圧用スイッチング素子および前記界磁用スイッチング素子をスイッチングするための制御信号を設定する制御信号設定部とを含む、請求項3に記載の電動機駆動装置。
【請求項5】
前記界磁用スイッチング素子は、
前記第2の電力線と前記界磁巻線の前記第2の端との間に、前記第2の電力線から前記第2の端に向かう方向を順方向として接続された第1のスイッチング素子と、
前記第1の端と前記第1の電力線との間に、前記第1の端から前記第1の電力線に向かう方向を順方向として接続された第2のスイッチング素子と、
前記第1の電力線と前記第2の端との間に、前記第1の電力線から前記第2の端に向かう方向を順方向として接続された第3のスイッチング素子とを含み、
前記コンバータは、
前記第1の端と前記第2の電力線との間に、前記第1の端から前記第2の電力線に向かう方向を順方向として接続された第1の整流素子と、
前記第2の端と前記電源装置の負極との間に、前記電源装置の負極から前記第2の端に向かう方向を順方向として接続された第2の整流素子とを含む、請求項4に記載の電動機駆動装置。
【請求項6】
前記コンバータは、力行時は前記昇圧用スイッチング素子のデューティ比に応じた前記制御信号に基づいて前記電源装置からの電圧を昇圧し、回生時は前記第1のスイッチング素子のデューティ比に応じた前記制御信号に基づいて前記インバータからの電圧を降圧する、請求項5に記載の電動機駆動装置。
【請求項7】
前記コンバータは、前記界磁巻線に流れる電流を増加する第1の状態と、前記界磁巻線に流れる電流を減少する第2の状態と、前記界磁巻線に流れる電流を維持する第3の状態とを有し、
前記デューティ設定部は、前記第3の状態において、前記昇圧用スイッチング素子および前記第1のスイッチング素子をオフに固定するとともに、前記第2のスイッチング素子および前記第3のスイッチング素子をオンに固定するように、前記デューティ比を設定する、請求項5に記載の電動機駆動装置。
【請求項8】
前記コンバータは、前記界磁巻線に流れる電流を増加する第1の状態と、前記界磁巻線に流れる電流を減少する第2の状態と、前記界磁巻線に流れる電流を維持する第3の状態とを有し、
前記デューティ設定部は、前記第3の状態において、前記昇圧用スイッチング素子、前記第2のスイッチング素子および前記第3のスイッチング素子をオフに固定するとともに、前記第1のスイッチング素子をオンに固定するように、前記デューティ比を設定する、請求項5に記載の電動機駆動装置。
【請求項9】
前記界磁巻線は、
直列に接続された第1の界磁巻線と第2の界磁巻線を含み、
前記界磁用スイッチング素子は、
前記第1の界磁巻線および前記第2の界磁巻線の接続ノードと、前記第2の電力線との間に、前記第2の電力線から前記接続ノードに向かう方向を順方向として接続された第1のスイッチング素子と、
前記第1の端と前記第1の電力線との間に、前記第1の端から前記第1の電力線に向かう方向を順方向として接続された第2のスイッチング素子とを含み、
前記コンバータは、
前記第1の端と前記第2の電力線との間に、前記第1の端から前記第2の電力線へ向かう方向を順方向として接続された第1の整流素子と、
前記接続ノードと前記電源装置の負極との間に、前記接続ノードから前記電源装置の負極へ向かう方向を順方向として接続された第2の整流素子と、
前記第1の電力線と前記第2の端との間に、前記第2の端から前記第1の電力線に向かう方向を順方向として接続された第3の整流素子とを含む、請求項4に記載の電動機駆動装置。
【請求項10】
前記第1の界磁巻線のリアクタンスは、前記第2の界磁巻線のリアクタンスと等しい、請求項9に記載の電動機駆動装置。
【請求項11】
前記インバータは、前記昇圧用スイッチング素子のデューティ比に応じた前記制御信号に基づいて前記電源装置からの電圧を昇圧する一方で、前記第1のスイッチング素子のデューティ比に応じた前記制御信号に基づいて前記インバータからの電圧を降圧する、請求項9に記載の電動機駆動装置。
【請求項12】
前記コンバータは、前記界磁巻線に流れる電流を増加する第1の状態と、前記界磁巻線に流れる電流を減少する第2の状態と、前記界磁巻線に流れる電流を維持する第3の状態とを有し、
前記デューティ設定部は、前記第3の状態において、前記昇圧用スイッチング素子および前記第2のスイッチング素子をオフに固定するとともに、前記第1のスイッチング素子をオンに固定するように、前記デューティ比を設定する、請求項9に記載の電動機駆動装置。
【請求項13】
車両であって、
界磁巻線を含み、前記界磁巻線に界磁電流を流すことによって形成される界磁極を有するロータとステータとを備える電動機と、
前記電動機を駆動するための電動機駆動装置と、
前記電動機からの回転力によって、前記車両を走行するための駆動輪とを備え、
前記電動機駆動装置は、
電源装置と、
リアクトルを有し、前記界磁巻線を前記リアクトルの少なくとも一部として共用して、前記電源装置からの電圧を受けて、第1の電力線と第2の電力線との間で電圧変換するとともに、電圧変換動作時に前記界磁巻線に界磁電流を流すように構成されたコンバータと、
前記コンバータからの直流電力を受けて、前記電動機を駆動するための交流電力に変換するように構成されたインバータと、
前記電動機の力行時および回生時の両方の場合において、前記界磁巻線に流れる電流が同じ方向となるように前記コンバータを制御するための制御装置とを含む、車両。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【公開番号】特開2011−223680(P2011−223680A)
【公開日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−87862(P2010−87862)
【出願日】平成22年4月6日(2010.4.6)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【出願人】(304021277)国立大学法人 名古屋工業大学 (784)
【Fターム(参考)】