説明

電動車両

【課題】電動車両に衝突等により外部から力が加わった場合でも、動力源室内の部品の損傷を有効に防止しやすくすることである。
【解決手段】動力源室であるモータルーム10は、車両の前後方向中間部に設けられたダッシュパネル20と、車両の幅方向両側に設けられた一対のフェンダー側内側パネルとを含み、全体を枠状に構成する。モータルーム10に設けられ、モータルーム10内を上部空間と下部空間とに仕切るベースパネル42を備える。ベースパネル42は、平板部44を備え、平板部44の車両前後方向後端部をダッシュパネル20の前側面に、水平方向に溶接等により直接結合固定し、平板部44の車両幅方向両端部を、一対のフェンダー側内側パネルの内側面に、水平方向に溶接等により直接結合固定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の前後方向中間部に設けられた車室側パネルと、車両の幅方向両側に設けられた一対の幅方向外側パネルとを含み、枠状に構成され、回転電機が搭載される動力源室を備える電動車両に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、燃料電池を搭載した燃料電池車や、電気自動車等の電動車両が考えられている。電動車両は、燃料電池や、バッテリ等の蓄電部等から回転電機である電動モータに電力を供給し、電動モータを車両の動力源として使用する。電動車両は、例えば前部に設けられた動力源室であるモータルーム内に、電動モータを搭載する。
【0003】
図8は、従来から考えられている電動車両である、燃料電池車において、モータルーム内の部品搭載構造の1例を示す略透視図であり、図9は、図8の上方から下方に見た場合の略透視図である。また、図10は、図9に示した燃料電池車の車体において、モータルームを含む前部を、一部を省略して示す略斜視図である。燃料電池車は、前部に設けたモータルームを備える。なお、本明細書全体において、前後方向は、車両の前後方向を意味し、幅方向は、車両の幅方向を意味する。モータルーム10内に、燃料電池スタック12と、電力制御ユニット(PCU)14と、回転電機である走行用モータ16と、エアコンプレッサ18とを搭載している。モータルーム10は、車両の前後方向中間部に設けられた車室側パネルであるダッシュパネル20と、車両の幅方向両側に設けられた一対の幅方向外側パネルであるフェンダー側内側パネル22とを含む部分により、枠状に構成している。
【0004】
図10に示すように、モータルーム10は、一対のフェンダー側内側パネル22の前端部(図8、図9の左端部)を、車両の前端部に設けた前側上部パネル24(図10)と前側下部フレーム26とにより連結している。また、各フェンダー側内側パネル22の前後方向中間部に一対のストラットタワー部28を一体に設けている。ストラットタワー部28は、車輪懸架装置である前側サスペンションの構成部品であるダンパー(図示せず)及びコイルばね29の上部を内側に配置し、ダンパー及びコイルばね29の上部を支持する役目を有する。また、モータルーム10の下部において、前側下部フレーム26とダッシュパネル20との下側に、車両前後方向(図8、図9の左右方向)に掛け渡すように一対のサブフレーム30を結合固定している。
【0005】
また、モータルーム10内において、一対のサブフレーム30の上側に台座部32を設けるとともに、台座部32に燃料電池スタック12を載置している。台座部32は、4本等複数本の脚部34と、脚部34の上部に結合した載置板部36とを備える。各脚部34は、各サブフレーム30の上側に結合している。各サブフレーム30は、前側サスペンションを構成する図示しない懸架装置用アームを支持する役目も有する。
【0006】
また、燃料電池スタック12の上側に電力制御ユニット14を載置している。モータルーム10内で燃料電池スタック12の前側に、ラジエータ38を設けている。載置板部36の下側に、走行用モータ16とエアコンプレッサ18とを配置している。走行用モータ16は、燃料電池スタック12から直接に、または蓄電部である図示しないバッテリを介して電力が供給されることにより、駆動し、図示しない動力伝達機構を介して車輪40に動力を伝達する。エアコンプレッサ18は、外部から取り入れた空気を圧縮した後、燃料電池スタック12に供給するために使用する。また、電力制御ユニット14内に、燃料電池スタック12またはバッテリからの直流電圧を交流電圧に変換し、走行用モータ16に交流電圧の電力を供給するためのインバータ(図示せず)と、インバータを制御する制御回路(図示せず)等の電気回路を設けている。
【0007】
また、特許文献1には、インバータを冷却する冷却部を備え、冷却部を、冷媒が通る複数の冷媒流路ブロックと、複数の冷媒流路を接合する接合部材とを含み、接合部材を、冷媒流路ブロックよりも低剛性の部材とする電気自動車が記載されている。
【0008】
【特許文献1】特開2006−82570号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記の図8から図10に示した従来から考えられている燃料電池車の場合、車両の前側から車両の前後方向に、衝突等により外部からの力が入力された場合には、一対のフェンダー側内側パネル22と前側上部パネル24及び前側下部フレーム26とがこの外部からの力を受ける。このため、モータルーム10内の部品の損傷を抑えることができる可能性がある。ただし、燃料電池スタック12を載置した載置板部36の幅方向両端部と後端部とは、フェンダー側内側パネル22とダッシュパネル20とに、直接は結合されていない。すなわち、載置板部36と、フェンダー側内側パネル22とダッシュパネル20との間に大きな空間が存在する。このため、例えば、図9に矢印αで示す、車両の斜め前後方向に別の車両(図示せず)等が衝突し、外部から力が加わった場合に、一対のフェンダー側内側パネル22のうち、片側のフェンダー側内側パネル22(図9の上側、図10の左側)と、片側のフェンダー側内側パネル22の外側に設けられた図示しない片側フェンダーパネルと、前側上部パネル24(図10)及び前側下部フレーム26とが、図9に矢印βで示す方向の力を外部から受けることとなる。そして、片側のフェンダー側内側パネル22と、片側フェンダーパネルと、前側上部パネル及び前側下部フレーム26とが潰れると、各パネル22及び前側上部パネル及び前側下部フレーム26と、燃料電池スタック12との間の隙間がほぼなくなるように、車体を構成する部材と、燃料電池スタック12等、モータルーム10内の部品とが強く衝突して、モータルーム10内の部品の損傷を招く可能性がある。このような事情から、従来から、電動車両に衝突等により外部から力が加わった場合でも、動力源室内の部品の損傷を有効に防止しやすくする構造の実現が求められている。
【0010】
これに対して、本発明者は、燃料電池車等の電動車両の場合には、エンジンを搭載する必要がなく、しかも、上下方向寸法が大きい連続した空間を設ける必要がないことから、従来から一般的に知られているエンジン付車のエンジンルームの構造から外れた、電動車両独特な動力源室の構造を採用することにより、上記の課題の解決を図れると知見するに至った。すなわち、エンジン付車の場合には、エンジンが大きな振動と音と熱とを発生するため、周囲の部品にその振動、音、熱が伝達されないよう大きな隙間を確保する必要がある。また、エンジンとトランスアクスル等の動力伝達機構とが機械的に連結した構造をエンジンルーム内に設ける必要もある。また、同じエンジンルーム構造を、異なる部品配置構造を持つ別のエンジン付車にも使用可能とする場合には、車体を共通化できるように、エンジンと周辺部品との隙間をより大きく確保する必要が生じる。また、エンジンルームにあらかじめ寸法及び形状が決まっている多くの部品を搭載できるように、エンジンルーム内の部品配置の検討が行われることが多く、この場合には、エンジンルーム内の空間をより大きくする必要が生じる。このため、上下方向寸法が大きい連続した広い空間をエンジンルーム内に設ける必要がある。これに対して、電動車両では、回転機である走行用モータ16をエンジンよりも小型に構成でき、また、走行用モータ16に電力を供給する周辺部品と、走行用モータ16とを電線により接続したり、また、エアコンプレッサ18、燃料電池スタック12等の周辺部品を配管により連結すればよいため、部品同士が連結された連続する広い空間をモータルーム10内に設ける必要がない。このため、電動車両の場合は、エンジン付車の場合と異なる独特の動力源室の構造を採用でき、これにより上記の課題の解決を図れることを本発明者は知見した。
【0011】
本発明の目的は、電動車両に衝突等により外部から力が加わった場合でも、動力源室内の部品の損傷を有効に防止しやすくすることである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明に係る電動車両は、車両の前後方向中間部に設けられた車室側パネルと、車両の幅方向両側に設けられた一対の幅方向外側パネルとを含み、枠状に構成され、回転電機が搭載される動力源室と、動力源室に設けられ、動力源室内を上部空間と下部空間とに仕切る補強部材とを備え、補強部材は、車両前後方向一端部である車室側端部を車室側パネルに水平方向に結合固定し、車両幅方向両端部を一対の幅方向外側パネルに水平方向に結合固定していることを特徴とする電動車両である。
【0013】
また、好ましくは、補強部材は、車両前後方向他端部である車室反対側端部を、車両の前後方向他端部に設けられ、幅方向外側パネルの端部に結合される前後方向端部構造材に直接結合固定する。
【0014】
また、より好ましくは、補強部材は、車両前後方向一端部である車室側端部を車室側パネルの水平方向側面に直接結合固定し、車両幅方向両端部を一対の幅方向外側パネルの水平方向側面に直接結合固定する。
【0015】
また、より好ましくは、補強部材の上側に燃料電池を、補強部材の下側に回転電機を、それぞれ配置する。
【0016】
また、より好ましくは、車輪懸架装置を構成する部品の最上端を、動力源室内の補強部材よりも低くする。
【0017】
また、より好ましくは、補強部材は、波形部または折れ部を含む衝撃吸収部を有する。
【発明の効果】
【0018】
本発明に係る電動車両によれば、動力源室に設けられ、動力源室内を上部空間と下部空間とに仕切る補強部材を備え、補強部材は、車両前後方向一端部である車室側端部を車室側パネルに水平方向に結合固定し、車両幅方向両端部を一対の幅方向外側パネルに水平方向に結合固定しているため、衝突等により外部から外力が加わった場合に、補強部材を含む部材で外力を分担して受けることができ、車体を構成する各部材に加わる力が過度に大きくなることを防止できる。このため、補強部材が潰れた場合でも、補強部材に載置した部品等、動力源室内の部品に外部から大きな力が加わることを防止しやすくでき、部品の損傷を有効に防止しやすくできる。また、エンジン付車に補強部材を設ける場合と異なり、動力源室内の補強部材を介して上下に位置する、上下の部品同士を接続する電線や配管等を通すための小さい連通部分を補強部材部分に設ければよく、補強部材の断面積を十分に大きくできるため、補強部材に大きな外力が加わっても強度を十分に確保しやすくできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
[第1の発明の実施の形態]
以下において図面を用いて本発明に係る実施の形態につき詳細に説明する。図1から図2は、本発明に係る第1の実施の形態を示している。図1は、本実施の形態の電動車両である燃料電池車において、動力源室であるモータルーム内の部品搭載構造を示す略透視図であり、図2は、図1の上方から下方に見た場合の略透視図である。なお、本発明に係る電動車両は、回転電機が搭載される動力源室を備えるものであれば、燃料電池車に限らず、例えば、バッテリからの電力供給により走行用モータを駆動し、車輪に走行用モータの動力を伝達する電気自動車等としてもよい。
【0020】
図1に示すように、本実施の形態の電動車両である燃料電池車は、上記の図8から図10に示した従来から考えられている構造と同様に、モータルーム10内の下部に、回転電機である走行用モータ16と、エアコンプレッサ18とを搭載し、走行用モータ16とエアコンプレッサ18との上側に、燃料電池スタック12と電力制御ユニット(PCU)14とを配置している。また、モータルーム10は、車両の前後方向(図1、図2の左右方向)中間部に設けられた車室側パネルであるダッシュパネル20と、車両の幅方向両側に設けられた一対の幅方向外側パネルであるフェンダー側内側パネル22とを含み、全体を枠状に構成している。
【0021】
特に、本実施の形態の場合には、モータルーム10に設けられ、モータルーム10内を上部空間と下部空間とに仕切る補強部材であり、補強板部であるベースパネル42を備える。図2では、ベースパネル42を、斜格子を付した部分により表している。ベースパネル42の表面に実際には斜格子は記載されていない。ベースパネル42は、水平方向の略平板状の平板部44と、平板部44の前端部(図1、図2の左端部)から連続し、上側のラジエータ38を避けるように、前方に向かうほど低くなるように湾曲した湾曲板部46とを備え、湾曲板部46の車室反対側端部である、前端部上側面を、前側下部フレーム26の下端縁に溶接等により直接結合固定している。
【0022】
前側下部フレーム26は、上記の図8から図10に示した従来から考えられている構造と同様に、車両の前端部に設けて、一対のフェンダー側内側パネル22の前端部の下部に、車両幅方向(図2の上下方向)に掛け渡すように結合している。また、車両の前端部に設けた前側上部パネル24(図10参照)により、一対のフェンダー側内側パネル22の前端部上部を連結している。前側下部フレーム26は、前後方向端部車体構成部材に対応する。
【0023】
さらに、平板部44は、車両前後方向一端部であり、車室側端部である後端部(図1、図2の右端部)を、ダッシュパネル20の前側面に、水平方向に溶接等により直接結合固定している。また、平板部44は、車両幅方向両端部を、一対のフェンダー側内側パネル22の幅方向内側面に、水平方向に溶接等により直接結合固定している。平板部44の後端部と幅方向両端部とは、ダッシュパネル20とフェンダー側内側パネル22とに、ほぼ隙間がない状態または一部に隙間が存在する状態で直接結合する。このようなベースパネル42の上側に、燃料電池スタック12及び電力制御ユニット14を上下に重なるように配置し、ベースパネル42の下側に走行用モータ16及びエアコンプレッサ18を配置している。なお、ベースパネル42の前端部下端縁を、前側下部フレーム26の下端部後側面に溶接等により直接結合固定することもできる。なお、ベースパネル42の前端部は、フェンダー側内側パネル22の前端部に、幅方向内側に曲げるように一体に設けたパネル構成部分の、後側に向いた面に、溶接等により直接結合固定してもよい。
【0024】
このような本実施の形態の燃料電池車によれば、モータルーム10を、車両の前後方向中間部に設けられたダッシュパネル20と、車両の幅方向両側に設けられた一対のフェンダー側内側パネル22とを含み、枠状に構成し、モータルーム10に設けられ、モータルーム10内を上部空間と下部空間とに仕切るベースパネル42を備え、ベースパネル42は、後端部をダッシュパネル20に水平方向に結合固定し、幅方向両端部を一対のフェンダー側内側パネル22に水平方向に結合固定している。このため、例えば、図2に矢印αで示す方向に、衝突等により外部から外力が加わった場合に、ベースパネル42を含む部材で外力を分担して受けることができ、車体を構成する各部材に加わる力が過度に大きくなることを防止しやすくできる。すなわち、各構成部材に図2の矢印β´方向に加わる力が過度に大きくなるのを防止しやすくできる。また、このように車両の幅方向片側(図2の上側)に外力が加わった場合でも、車両の幅方向反対側(図2の下側)に設けたフェンダー側内側パネル22にもベースパネル42を介して力を分担させることができる。このため、衝突等により外部から力が加わることにより、ベースパネル42が潰れた場合でも、燃料電池スタック12等の、ベースパネル42に載置した部品等、モータルーム10内の部品に外部から大きな力が加わることを防止しやすくでき、部品の損傷を有効に防止しやすくできる。
【0025】
また、エンジン付車にベースパネル42を設ける場合と異なり、モータルーム10内のベースパネル42を介して上下に位置する、燃料電池スタック12及び電力制御ユニット14と、走行用モータ16及びエアコンプレッサ18等との、ベースパネル両側に位置する上下の部品同士を接続する電線や配管等を通すための小さい連通部分をベースパネル42部分に設けることができればよく、ベースパネル42の断面積を十分に大きくできる。このため、ベースパネル42に大きな外力が加わっても、ベースパネル42の強度を十分に大きくできる。
【0026】
また、ベースパネル42は、車室反対側端部である前端部を、車両の前端部に設けられ、フェンダー側内側パネル22の端部に結合される前側下部フレーム26に直接結合固定しているので、衝突等により車体に外部から外力が加わった場合に、ベースパネル42に外力を、より分担させやすくできる。このため、モータルーム10内の部品の損傷をより有効に防止しやすくできる。
【0027】
また、モータルーム10内を上部空間と下部空間とに仕切るベースパネル42の上側に燃料電池スタック12を、下側に走行用モータ16及びエアコンプレッサ18を、それぞれ配置しているため、走行用モータ16及びエアコンプレッサ18が発生する音及び熱及び電磁波を、モータルーム10上側の空間を介して車室側に伝わりにくくできる。
【0028】
[第2の発明の実施の形態]
図3は、本発明に係る第2の実施の形態において、ベースパネル42aの部分断面図である。本実施の形態では、ベースパネル42aを構成する平板部44は衝撃吸収部48を有する。衝撃吸収部48は、平板部44の前後方向(図3の左右方向)中間部に設けられる、下方に谷形に折れる折れ部50を含む。折れ部50は、前側傾斜板部52の後端と、後側傾斜板部54の前端とから連続する、水平方向に対し傾斜した一対の傾斜板部により構成している。このため、折れ部50の下端の直線状の谷部は、車両の幅方向(図3の表裏方向)に伸びている。このような折れ部50は、平板部44の前後方向の複数個所に設けることもできる。このような衝撃吸収部48を有するベースパネル42aを備える本実施の形態の電動車両によれば、衝突時に、平板部44が前後方向に潰れることにより、衝撃を吸収しやすくできる。なお、折れ部50は、谷部が車両の幅方向以外の別の方向に伸びるように平板部44に形成することもできる。その他の構成及び作用は、上記の第1の実施の形態と同様であるため、重複する図示及び説明を省略する。
【0029】
[第3の発明の実施の形態]
図4は、本発明に係る第3の実施の形態において、ベースパネル42bの部分断面図である。本実施の形態では、ベースパネル42bを構成する平板部44は衝撃吸収部48を有する。衝撃吸収部48は、平板部44の前後方向(図4の左右方向)中間部に設けられる、断面形状が波形の波形部56を含む。波形の直線状の頂部及び底部は、車両の幅方向(図4の表裏方向)に伸びている。このような衝撃吸収部48を有するベースパネル42bを備える本実施の形態の電動車両の場合も、衝突時に、平板部44が前後方向に潰れることにより、衝撃を吸収しやすくできる。なお、波形部56は、頂部及び底部が、車両の幅方向以外の別の方向に伸びるように平板部44に形成することもできる。その他の構成及び作用は、上記の図1から図2に示した第1の実施の形態と同様であるため、重複する図示及び説明を省略する。
【0030】
[第4の発明の実施の形態]
図5は、本発明に係る第4の実施の形態の電動車両である燃料電池車において、モータルーム内の部品搭載構造を示す略透視図であり、図6は、図5の上方から下方に見た場合の略透視図である。本実施の形態の場合、ベースパネル42cは、平板部44と、平板部44の前側に連続し、水平方向に対し傾斜した断面直線状の傾斜板部58とを備える。傾斜板部58の下端部前側面(図5の左側面)は、前側下部フレーム26の下端縁に溶接等により直接結合固定している。また。傾斜板部58の下端縁を、サブフレーム30の前端部上側面に、溶接等により直接結合固定している。
【0031】
また、車輪懸架装置である前側サスペンション(図示せず)を構成する複数の部品の最上端を、モータルーム10内のベースパネル42cよりも低くしている。例えば、前側サスペンションを、ダブルウイッシュボーン型サスペンションとし、上部アーム(図示せず)またはショックアブソーバ(図示せず)等の前側サスペンションの構成部品の最上端を、ベースパネル42cの平板部44の上面よりも低くしている。このため、モータルーム10内において、例えばストラットタワー部28(図2参照)を低くする、またはなくす等により、ベースパネル42よりも上方にストラットタワー部28が突出することを防止でき、ベースパネル42上に載置する燃料電池スタック12の幅方向長さLb(図6)を、上記の各実施の形態の場合での燃料電池スタック12の幅方向長さLa(図2)よりも大きくできる(Lb>La)。
【0032】
また、ベースパネル42の前端部を直接サブフレーム30に結合固定し、ベースパネル42の前端部下端を下げることができる。このため、上記各実施の形態の場合に比べて、走行用モータ16及びエアコンプレッサ18からの音及び熱及び電磁波がモータルーム10上側の空間に漏れるのを、より少なく抑えることができ、車室内の乗員にとって不快な音が生じるのを抑えて、快適性を高くできる。また、モータルーム10内の燃料電池スタック12及び電力制御ユニット14の冷却性能を有効に高くできる。その他の構成及び作用は、上記の図1から図2に示した第1の実施の形態と同様であるため、同等部分には同一符号を付して重複する説明を省略する。
【0033】
図7は、本実施の形態において、燃料電池スタック12の幅方向長さLcをより大きくした別例を示す、上記の図6に対応する図である。図7に示す別例の場合、燃料電池スタック12の幅方向(図7の上下方向)両端は、フェンダー側内側パネル22の幅方向内側面の最も幅方向中央寄りの位置よりも幅方向外側に位置するようにし、燃料電池スタック12の幅方向長さLcを、上記の図6に示した燃料電池スタック12の幅方向長さLbよりも大きくしている。その他の構成及び作用は、上記の図5から図6に示した第4の実施の形態と同様である。また、本実施の形態において、ベースパネル42cを、上記の図3、図4に示した衝撃吸収部48を有する構造とすることもできる。
【0034】
なお、図示は省略するが、上記の図5から図6に示した第4の実施の形態または図7に示した第4の実施の形態の別例において、Aピラーと呼ばれる前側ピラーの下端部を、フェンダー側内側パネル22の前後方向中間部に直接結合することもできる。また、この場合に、ボンネット等、燃料電池スタック12の上側を覆う部材として、従来から知られているボンネットよりも剛性が低い材料または構造により構成する、燃料電池スタック上側カバーを備える構成とすることもできる。この場合、燃料電池スタック上側カバーは、車両の衝突に対する強度が低くなる可能性があるが、車両の衝突に対する強度は、ベースパネル42を含む部材により十分に確保できる。ただし、車両の前側上部や前端部に、例えば100kgの歩行者等が衝突した場合でも、歩行者に与えられる衝撃を低くできるように、燃料電池スタック上側カバーを弾性変形しやすい、すなわち衝撃を吸収しやすい材料により構成したり、衝撃を吸収しやすい形状に構成する。例えば、燃料電池スタック上側カバーを略椀状の形状に構成し、歩行者が乗った場合に、大きく変形しやすい構造とする。燃料電池スタック上側カバーは、バンパーや、バンパー上側の前側パネル等のラジエータ38前側を覆う部材の代わりに設けることもできる。また、燃料電池スタック上側パネルを、ボンネットとフェンダーとの機能を有する一体形状に形成し、燃料電池スタック上側パネルの全体を、歩行者保護構造とすることもできる。また、上記の図5から図6に示した第4の実施の形態または図7に示した第4の実施の形態の別例において、燃料電池スタック12及び電力制御ユニット14も、走行用モータ16と同様に、ベースパネル42,42a、42b、42cの下側に配置することもできる。
【0035】
なお、図示は省略するが、上記の各実施の形態において、走行用モータ16をトランクルーム等、車両の後端部に設けたモータルーム内に搭載し、車両の後側に設けたモータルーム内に、上記の各実施の形態と同様に、補強部材であり補強板部であるベースパネルを設けることもできる。この場合に、例えば、ベースパネルの前端部を、車両前後方向中間部である、車室側パネルに直接結合固定し、ベースパネルの幅方向両端部を、一対の後側フェンダー側パネルまたは一対のフェンダー側内側パネルよりも車両幅方向内側のパネルに直接結合固定することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明に係る第1の実施の形態の電動車両である燃料電池車において、モータルーム内の部品搭載構造を示す略透視図である。
【図2】同じく図1の上方から下方に見た場合の略透視図である。
【図3】本発明に係る第2の実施の形態において、ベースパネルの部分断面図である。
【図4】同じく第3の実施の形態において、ベースパネルの部分断面図である。
【図5】本発明に係る第4の実施の形態の電動車両である燃料電池車において、モータルーム内の部品搭載構造を示す略透視図である。
【図6】図5の上方から下方に見た場合の略透視図である。
【図7】第4の実施の形態の別例を示す、図6に対応する図である。
【図8】従来から考えられている電動車両である、燃料電池車において、モータルーム内の部品搭載構造の1例を示す略透視図である。
【図9】図8の上方から下方に見た場合の略透視図である。
【図10】図9に示した燃料電池車の車体において、モータルームを含む前部を、一部を省略して示す略斜視図である。
【符号の説明】
【0037】
10 モータルーム、12 燃料電池スタック、14 電力制御ユニット(PCU)、16 走行用モータ、18 エアコンプレッサ、20 ダッシュパネル、22 フェンダー側内側パネル、24 前側上部パネル、26 前側下部フレーム、28 ストラットタワー部、29 コイルばね、30 サブフレーム、32 台座部、34 脚部、36 載置板部、38 ラジエータ、40 車輪、42,42a、42b ベースパネル、44 平板部、46 湾曲板部、48 衝撃吸収部、50 折れ部、52 前側傾斜板部、54 後側傾斜板部、56 波形部、58 傾斜板部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の前後方向中間部に設けられた車室側パネルと、車両の幅方向両側に設けられた一対の幅方向外側パネルとを含み、枠状に構成され、回転電機が搭載される動力源室と、
動力源室に設けられ、動力源室内を上部空間と下部空間とに仕切る補強部材とを備え、
補強部材は、車両前後方向一端部である車室側端部を車室側パネルに水平方向に結合固定し、車両幅方向両端部を一対の幅方向外側パネルに水平方向に結合固定していることを特徴とする電動車両。
【請求項2】
請求項1に記載の電動車両において、
補強部材は、車両前後方向他端部である車室反対側端部を、車両の前後方向他端部に設けられ、幅方向外側パネルの端部に結合される前後方向端部車体構成部材に直接結合固定していることを特徴とする電動車両。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の電動車両において、
補強部材は、車両前後方向一端部である車室側端部を車室側パネルの水平方向側面に直接結合固定し、車両幅方向両端部を一対の幅方向外側パネルの水平方向側面に直接結合固定していることを特徴とする電動車両。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか1に記載の電動車両において、
補強部材の上側に燃料電池を、補強部材の下側に回転電機を、それぞれ配置していることを特徴とする電動車両。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか1に記載の電動車両において、
車輪懸架装置を構成する部品の最上端を、動力源室内の補強部材よりも低くしていることを特徴とする電動車両。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれか1に記載の電動車両において、
補強部材は、波形部または折れ部を含む衝撃吸収部を有することを特徴とする電動車両。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−137443(P2009−137443A)
【公開日】平成21年6月25日(2009.6.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−316034(P2007−316034)
【出願日】平成19年12月6日(2007.12.6)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】