説明

電動駆動車

【課題】乗員の筋力維持或いは筋力向上を図りつつ走行可能とされるとともに、バッテリの充電を走行時においても逐次図ることができる電動駆動車を提供する。
【解決手段】モータMにより駆動輪7を駆動させて走行可能な電動駆動車において、モータMに電力を供給するバッテリ1と、乗員が所定の負荷を持って回転動作させ得るペダル2と、ペダル2に対して乗員が動作させることにより発電可能なオルタネータ3とを備え、オルタネータ3で発電された電力をバッテリ1に供給して当該バッテリ1にて蓄電可能とされたものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モータにより駆動輪を駆動させて走行可能な電動駆動車に関するものである。
【背景技術】
【0002】
高齢者等が使用する移動手段としてシルバーカーや電動車いす等が挙げられ、従来より、モータ等の駆動源により駆動輪を駆動させて走行可能なものが提案されるに至っている。例えば、従来の電動車いすは、充電及び放電可能なバッテリを搭載し、当該バッテリから供給された電力にてモータを駆動させて駆動輪を駆動させ、所定速度で走行可能とされていた。尚、かかる先行技術は、文献公知発明に係るものでないため、記載すべき先行技術文献情報はない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記従来の電動駆動車においては、専らバッテリの電力により移動可能とされているため、長期に亘って使用する場合、乗員の筋力が衰えてしまう虞があり、体力を積極的に向上若しくは維持させようとする人にとっては不都合があった。また、バッテリの充電量に限りがあるため、その充電による蓄電が走行途中においてなくなった場合、全く走行が不可能となってしまうという不具合もあった。
【0004】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、乗員の筋力維持或いは筋力向上を図りつつ走行可能とされるとともに、バッテリの充電を走行時においても逐次図ることができる電動駆動車を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1記載の発明は、モータにより駆動輪を駆動させて走行可能な電動駆動車において、前記モータに電力を供給するバッテリと、乗員が所定の負荷を持って動作させ得るトレーニング手段と、該トレーニング手段に対して乗員が動作させることにより発電可能な発電手段とを備え、前記発電手段で発電された電力を前記バッテリに供給して当該バッテリにて蓄電可能とされたことを特徴とする。
【0006】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の電動駆動車において、前記トレーニング手段は、乗員が踏力を付与して回転させ得るペダルであることを特徴とする。
【0007】
請求項3記載の発明は、請求項1又は請求項2記載の電動駆動車において、車両の前方にハンドルによる操舵が可能な一対の前輪が配設されるとともに、後方に単一の駆動輪が配設された三輪車から成ることを特徴とする。
【0008】
請求項4記載の発明は、請求項1〜3の何れか1つに記載の電動駆動車において、前記モータは、前記駆動輪内に配設されたインホイール型モータから成ることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
請求項1の発明によれば、乗員が所定の負荷を持って動作させ得るトレーニング手段と、トレーニング手段に対して乗員が動作させることにより発電可能な発電手段とを備え、当該発電手段で発電された電力をバッテリに供給して当該バッテリにて蓄電可能とされたので、乗員の筋力維持或いは筋力向上を図りつつ走行可能とされるとともに、バッテリの充電を走行時においても逐次図ることができる。
【0010】
請求項2の発明によれば、トレーニング手段は、乗員が踏力を付与して回転させ得るペダルであるので、乗員の筋力維持を図ることができるとともに、自転車を漕ぐ如く扱うことができる。
【0011】
請求項3の発明によれば、車両の前方にハンドルによる操舵が可能な一対の前輪が配設されるとともに、後方に単一の駆動輪が配設された三輪車から成るので、より安定した走行を行わせることができる。
【0012】
請求項4の発明によれば、モータは、駆動輪内に配設されたインホイール型モータから成るので、駆動系の小型化を図ることができるとともに、チェーン等を介して駆動力を伝達するものに比べ、構成を簡素化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施形態に係る電動駆動車を示す側面図
【図2】同電動駆動車を示す平面図
【図3】同電動駆動車を示す斜視図
【図4】同電動駆動車におけるバッテリ近傍を示す拡大図
【図5】同電動駆動車の電気的接続関係を示すブロック図
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら具体的に説明する。
本実施形態に係る電動駆動車は、モータにより駆動輪を駆動させて走行可能なものであり、図1〜5に示すように、モータMと、バッテリ1と、トレーニング手段としてのペダル2と、発電手段としてのオルタネータ3とを具備し、車両の前方にハンドル5による操舵が可能な一対の前輪(6a、6b)が配設されるとともに、後方に単一の駆動輪7が配設された三輪車から成るものである。
【0015】
モータMは、駆動輪7を駆動して電動駆動車を走行可能とするための駆動源を成すものであり、本実施形態においては、当該駆動輪7内(具体的には、駆動輪7を構成するホイール内)に配設されたインホイール型モータから成るものとされている。尚、本実施形態に係るモータMは、所定速度以下の走行となるよう、その駆動力が設定されているとともに、後述するペダル2の回転数に一切関係せず駆動可能とされている。
【0016】
バッテリ1は、電動駆動車に搭載されるとともに、モータMと電気的に接続されて当該モータMに電力を供給するためのものである。かかるバッテリ1は、図3、4に示すように、車両のサドル4の下方においてホルダHにて保持されており、当該ホルダHから取り外し自在とされている。これにより、充電作業を行うべくバッテリ1の取り外しが容易とされるとともに、バッテリ1の新品のものへの交換が容易とされている。
【0017】
ペダル2(トレーニング手段)は、サドル4に着座した乗員が足を載せつつ踏力を付与することにより、所定の負荷を持って回転動作させ得るものである。かかるペダル2は、前進側へ回転(順方向への回転動作)させ得るとともに後退側へ回転(逆方向への回転動作)させ得るよう構成されており、乗員が任意に筋力トレーニングし得るよう構成されている。尚、ペダル2を逆回転させることにより、普段使用しない筋肉を使用することとなり、筋力向上を更に良好に行わせることができる。
【0018】
ペダル2は、ギアG1と共に回転可能とされるとともに、当該ギアG1とギアG2とが噛み合って構成されている。このギアG2は、発電手段としてのオルタネータ3の入力軸に形成されており、ペダル2の回転に対して所定の負荷を付与しつつ当該回転により発電可能とされている。即ち、オルタネータ3は、ペダル2に対して乗員が回転動作させることにより発電可能とされているのである。
【0019】
かかるオルタネータ3は、図5に示すように、バッテリ1と電気的に接続されており、当該オルタネータ3で発電された電力をバッテリ1に供給して当該バッテリ1にて蓄電可能とされている。即ち、オルタネータ3によりバッテリ1に対して充電可能とされているのである。而して、乗員がペダル2を踏み込んで回転動作させることによりオルタネータ3にて発電させ、バッテリ1を充電させる一方、当該バッテリ1の電力がリレー回路8を介してモータMに供給されて駆動輪7を駆動させるよう構成されている。
【0020】
尚、本実施形態によれば、ペダル2に対する回転動作に関係なくモータMが駆動するよう構成されているので、ペダル2の回転動作を一時的に停止させて休息を取る過程においても、電動駆動車の走行を維持させることができる。即ち、ペダル2の回転動作による充電量は極めて小さいものである故、それのみで走行可能とされるものではないのである。よって、電動駆動車の走行と乗員の筋力向上を目的とした動作とを切り離して独立させることができる。勿論、ペダル2を逆回転させた場合、モータMに対する駆動方向を変更させない限り、電動駆動車は前方へ走行することとなる。
【0021】
上記実施形態によれば、乗員が所定の負荷を持って動作させ得るペダル2(トレーニング手段)と、ペダル2に対して乗員が回転動作させることにより発電可能なオルタネータ3(発電手段)とを備え、当該オルタネータ3で発電された電力をバッテリ1に供給して当該バッテリ1にて蓄電可能とされたので、乗員の筋力維持を図りつつ走行可能とされるとともに、バッテリ1の充電を走行時においても逐次図ることができる。
【0022】
また、トレーニング手段は、乗員が踏力を付与して回転させ得るペダル2であるので、乗員の筋力維持を図ることができるとともに、自転車を漕ぐ如く扱うことができる。然るに、健常者が使用しても違和感なく扱うことができる。更に、車両の前方にハンドル5による操舵が可能な一対の前輪(6a、6b)が配設されるとともに、後方に単一の駆動輪7が配設された三輪車から成るので、より安定した走行を行わせることができる。
【0023】
また更に、モータMは、駆動輪7内に配設されたインホイール型モータから成るので、駆動系の小型化を図ることができるとともに、チェーン等を介して駆動力を伝達するものに比べ、構成を簡素化することができる。尚、ペダル2を逆転可能としているので、普段使用しない筋肉の筋力向上を図ることができるとともに、消費カロリーをより大きくして効果的な運動を可能とすることができ、更には脳の活性化を図ることができる。
【0024】
以上、本実施形態について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば4輪車(前方に一対の前輪と後方に一対の駆動輪)としてもよく、モータMを駆動輪7から離間させて配設しつつ動力を伝達し得る動力伝達機構を別個に配設したものとしてもよい。また、本実施形態においては、乗員がペダル2を回転動作させることにより筋力向上を図っているが、これに代えて乗員が所定の負荷を持って動作させ得る他の手段を具備させて乗員の筋力向上を図るものとしてもよい。
【0025】
更に、オルタネータ3とバッテリ1との間に電圧コンバータの如き電圧変換手段を介在させるようにしてもよい。また更に、回生ブレーキなどを組み合わせるようにしてもよい。尚、モータMで作動する前照灯等を配設してもよく、或いはペダル2の回転動作で作動する前照灯等を具備させてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0026】
モータに電力を供給するバッテリと、乗員が所定の負荷を持って動作させ得るトレーニング手段と、トレーニング手段に対して乗員が動作させることにより発電可能な発電手段とを備え、発電手段で発電された電力をバッテリに供給して当該バッテリにて蓄電可能とされた電動駆動車であれば、外観形状が異なるもの或いは他の機能が付加されたもの等に適用してもよい。
【符号の説明】
【0027】
1 バッテリ
2 ペダル(トレーニング手段)
3 オルタネータ(発電手段)
4 サドル
5 ハンドル
6a、6b 前輪
7 駆動輪
8 リレー回路
M モータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータにより駆動輪を駆動させて走行可能な電動駆動車において、
前記モータに電力を供給するバッテリと、
乗員が所定の負荷を持って動作させ得るトレーニング手段と、
該トレーニング手段に対して乗員が動作させることにより発電可能な発電手段と、
を備え、前記発電手段で発電された電力を前記バッテリに供給して当該バッテリにて蓄電可能とされたことを特徴とする電動駆動車。
【請求項2】
前記トレーニング手段は、乗員が踏力を付与して回転させ得るペダルであることを特徴とする請求項1記載の電動駆動車。
【請求項3】
車両の前方にハンドルによる操舵が可能な一対の前輪が配設されるとともに、後方に単一の駆動輪が配設された三輪車から成ることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の電動駆動車。
【請求項4】
前記モータは、前記駆動輪内に配設されたインホイール型モータから成ることを特徴とする請求項1〜3の何れか1つに記載の電動駆動車。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−284044(P2010−284044A)
【公開日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−136580(P2009−136580)
【出願日】平成21年6月5日(2009.6.5)
【出願人】(510160982)公立大学法人静岡文化芸術大学 (1)
【Fターム(参考)】