説明

電圧制御発振器および電圧制御発振器の発振周波数制御方法

【課題】電圧制御発振器で使用される可変容量において、回路のグラウンド電位から電源電位以上に広い可変容量の線形領域を使用することが可能な電圧制御発振器を提供する。
【解決手段】共振回路を構成するインダクタ2a、2bと可変容量10a、10b、11a、11b、12a、12bと、共振回路の共振周波数を制御するための周波数制御端子5とを備えた発振部200に加え、共振回路にバイアス電圧を与えるバイアス回路201と、周波数制御電圧に応じてバイアス回路201のバイアス電圧を切り替え制御するバイアス制御回路202を設ける。バイアス制御回路202は周波数制御電圧が変化してしきい値を超えたときに、周波数制御電圧を目的の制御電圧に近づける方向にバイアス電圧を切り替える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線通信の送受信機に利用される電圧制御発振器および電圧制御発振器の発振周波数制御方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電圧制御発振器は、無線通信機の局部発振信号を発生させる手段として広く使用されている。このような従来の電圧制御発振器の構成例を図11に示す。
【0003】
同図において、符号1a、1bは負性抵抗素子である発振トランジスタを示し、符号2a、2bはインダクタを示し、符号3a、3bは自己の両端子間に印加される直流電圧の大きさに応じて容量値が変化する可変容量を示す。また、符号4は電源端子を示し、符号5は周波数制御端子を示し、符号6は電流源を示す。
【0004】
以下、図11を参照しながら従来の電圧制御発振器の動作について説明する。図11において、インダクタ2a、2bと可変容量3a、3bとは並列共振回路を構成している。可変容量素子3a、3bの容量値は、その両端子間の電位差によって変化する。そのため、周波数制御端子5に加えられる周波数制御電圧によって可変容量3a、3bの容量値が変化し、その結果並列共振回路の共振周波数が変化することになる。
【0005】
電圧制御発振器の発振周波数は、共振回路の共振周波数近傍で発振するので、制御電圧を調整することで、電圧制御発振器の発振周波数を所望の周波数に制御することができる。発振トランジスタ1a、1bは負性抵抗を発生して共振回路の寄生抵抗成分による損失をキャンセルし、発振条件を満足させる。
【0006】
ここで、電圧制御発振器の制御電圧と発振周波数との関係は、可変容量3a、3bの特性でほぼ決定される。そのため、使用する可変容量3a、3bとしては、広い制御電圧範囲にわたって緩やかに容量変化することが望ましい。なぜなら、電圧制御発振器を用いてPLL(Phase Locked Loop)回路を構成した場合、PLL回路の過渡応答特性や雑音帯域特性は制御電圧に対する周波数感度に依存するので、周波数によって周波数感度が異なると、PLL回路自身の特性が周波数によって変動するからである。また、周波数制御電圧に対する周波数感度が高い領域では、周波数制御端子に加わるわずかな雑音によっても周波数が変動するため、位相雑音特性が劣化するという問題もある。
【0007】
しかしながら、電圧制御発振器を半導体基板上に実現する際、可変容量素子を形成するために特殊なプロセスを導入するとコストアップにつながるため、実際には線形性の高い可変容量素子を利用することが難しい。
【0008】
図12(a)は、CMOSプロセスで広く用いられるMOSトランジスタのゲート容量を利用した可変容量素子を示す。図12(b)は、MOSトランジスタのゲートに基準電圧(基準電位)を加え、ドレイン・ソース側に周波数制御電圧を印加した場合のゲート容量値の変化を示している。図12(b)において、横軸には、MOSトランジスタのゲートに加わる電圧とドレイン・ソース側に加わる電圧との電圧差をとり、縦軸にはMOSトランジスタのゲート容量の容量値をとっている。
【0009】
このように、一般的に用いられるMOSトランジスタのゲート容量を利用した可変容量素子ではしきい値電圧近傍で容量が急峻に変化するため、発振周波数もしきい値電圧近傍の領域で急峻に変化する。その結果、本電圧制御発振器を用いたPLL回路の過渡応答特性や雑音帯域特性は、周波数によって大きく変動するといった問題が生じる。
【0010】
このような問題を解決するために、以下に述べる回路がすでに提案されている。
【0011】
図13は、従来の可変容量の線形性を改善する回路例を示す(特許文献1を参照)。同図において、図8と同様の部分には同じ符号を付しており説明は省略する。図13において、符号10a、10b、11a、11b、12a、12bは可変容量素子を示し、符号13a、13b、14a、14b、15a、15bは直流分を遮断する直流阻止コンデンサを示し、符号16a、16b、17a、17b、18a、18bは抵抗を示し、符号50は基準電圧発生回路を示す。
【0012】
この回路では、インダクタ2a、2bが直列接続され、インダクタ2a、2bの直列回路に対して、直流阻止コンデンサ13a、可変容量素子10a、可変容量素子10bおよび直流阻止コンデンサ13bの直列回路が並列に接続され、同様に直流阻止コンデンサ14a、可変容量素子11a、可変容量素子11bおよび直流阻止コンデンサ14bの直列回路が並列に接続され、さらに直流阻止コンデンサ15a、可変容量素子12a、可変容量素子12bおよび直流阻止コンデンサ15bの直列回路が並列に接続されている。
【0013】
そして、直流阻止コンデンサ13aと可変容量素子10aの接続点と可変容量素子10bと直流阻止コンデンサ13bの接続点との間に抵抗16a、16bの直列回路が接続されている。同様に、直流阻止コンデンサ14aと可変容量素子11aの接続点と可変容量素子11bと直流阻止コンデンサ14bの接続点との間に抵抗17a、17bの直列回路が接続されている。さらに、直流阻止コンデンサ15aと可変容量素子12aの接続点と可変容量素子12bと直流阻止コンデンサ15bの接続点との間に抵抗18a、18bの直列回路が接続されている。
【0014】
さらに、可変容量素子10a、10bの接続点、可変容量素子11a、11bの接続点、および可変容量素子12a、12bの接続点に周波数制御端子5が共通に接続されている。また、抵抗16a、16bの接続点に基準電圧発生回路50の出力端子50aが接続されている。同様に、抵抗17a、17bの接続点に基準電圧発生回路50の出力端子50bが接続されている。さらに、抵抗18a、18bの接続点に基準電圧発生回路50の出力端子50cが接続されている。
【0015】
バイアス回路である基準電圧発生回路50の3つの出力端子50a、50b、50cからは、それぞれVb、Vb−Vd、Vb−2Vd、のように電圧Vdずつシフトした電圧が出力されることになる。また、周波数制御端子5には周波数制御電圧Vcが与えられる。したがって、可変容量素子10a、10bの両端子間の電位差は、それぞれ周波数制御電圧Vcと電圧Vbとの差電圧となる。同様に、可変容量素子11a、11bの両端子間の電位差は、それぞれ周波数制御電圧Vcと電圧Vb−Vdとの差電圧となる。さらに、可変容量素子12a、12bの両端子間の電位差は、それぞれ周波数制御電圧Vcと電圧Vb−2Vdとの差電圧となる。
【0016】
図14は周波数制御電圧に対する各可変容量素子10a、10b、11a、11b、12a、12bの容量値の特性と各可変容量素子10a、10b、11a、11b、12a、12bの合計の特性とを示している。図14において、曲線X1は可変容量素子10a、10bの容量値の特性を示し、曲線X2は可変容量素子11a、11bの容量値の特性を示し、曲線X3は可変容量素子12a、12bの容量値の特性を示し、曲線X4は可変容量素子の合計の特性を示している。図14において、横軸には、周波数制御電圧Vcをとり、縦軸には、各可変容量素子またはその合計の容量値をとっている。
【0017】
したがって、図14に示すように電圧Vdずつ各可変容量素子の特性をシフトさせることができ、それらを合成することができる。そのため、周波数制御電圧に対する容量の変化を緩やかにすることができる。結果として、PLL回路の過渡応答特性や雑音帯域特性の周波数依存性を無くすことができる。
【特許文献1】特開2004−147310号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
しかしながら、上記電圧制御発振器をPLL回路に組み込んだ場合、回路のグラウンド電位から回路の電源電位までの電圧範囲を超える範囲に可変容量の線形領域があったとしても、周波数制御電圧の範囲に制限があるため、可変容量の線形領域を全て使用できないという課題がある。その理由を以下に示す。
【0019】
PLL回路は、一般的に図15に示すように、電圧制御発振器(VCO)100と、電圧制御発振器100の出力を分周する分周器(DIV)101と、分周器101の出力と基準周波数信号とを比較する位相比較器(PD)102と、位相比較器102の出力に応じて電流を出し入れするチャージポンプ(CP)103と、チャージポンプ103の出力を平均化するローパスフィルタ(LPF)104とから構成され、そして、ローパスフィルタ104の出力を周波数制御電圧として、電圧制御発振器100の電圧制御端子にフィードバックするクローズドループ回路である。
【0020】
チャージポンプ103は、その出力が自回路のグラウンド電位もしくは電源電位に近づくと、出力される電流値が0に近づき、PLL回路の特性が不安定になってしまう。チャージポンプ103の出力電圧とローパスフィルタ104の出力電圧とが等しく、このため周波数制御端子の電圧がグラウンド電位もしくは電源電位付近になるということは、チャージポンプ103の出力電圧もグラウンド電位もしくは電源電位付近になるということであり、PLL回路の特性が不安定になってしまうため、周波数制御電圧としてグラウンド電位もしくは電源電位の近傍の電圧は使用することができない。
【0021】
また、上記電圧制御発振器では可変容量の温度特性は一切考慮されておらず、温度変化により可変容量値が変化すると、通信時の周波数は固定されるので容量値を一定に保持するため周波数制御端子の電圧が変動する。このとき周波数制御端子の電圧がグラウンド電位もしくは電源電位付近になるとPLL回路の特性が不安定になってしまう。
【0022】
また、一般的に用いられるMOSトランジスタのゲート容量を可変容量として使用する場合、可変容量両端の電位差が大きくなると電荷の充放電に時間がかかるというデバイス的な欠点も考慮しなければならない。
【0023】
本発明は上記の課題に鑑み、回路のグラウンド電位から電源電位までの範囲を超える広い制御電圧範囲を有する可変容量の線形領域を有効に使用することができる電圧制御発振器および電圧制御発振器の発振周波数制御方法を提供することを目的とする。
【0024】
また、本発明は、可変容量の温度特性をキャンセルし温度変化があっても、周波数制御端子の電圧が変動しない電圧制御発振器を提供することを他の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0025】
上記課題を解決するために、本発明の電圧制御発振器は、インダクタおよび可変容量で構成され、共振周波数を制御するための周波数制御電圧と共振周波数を制御するための基準となるバイアス電圧とが与えられ、バイアス電圧を基準として周波数制御電圧が変化することにより、周波数制御電圧対共振周波数特性曲線に従って共振周波数が変化する共振回路と、共振回路に接続された負性抵抗回路とを有する発振部と、共振回路にバイアス電圧を与えるバイアス回路と、バイアス回路から出力されるバイアス電圧を周波数制御電圧に応じて切り替えるバイアス制御回路とを備えている。
【0026】
ここで、バイアス制御回路は、バイアス電圧を切り替え可能とすることにより、周波数制御電圧が順次シフトした複数の周波数制御電圧対共振周波数特性曲線を共振回路で切り替え可能とし、周波数制御電圧が変化することによって共振回路の共振周波数が変化する過程で、周波数制御電圧が所定のしきい値電圧に達したときにバイアス電圧を切り替えることによって、共振回路の周波数制御電圧対共振周波数特性曲線を、現在の周波数制御電圧対共振周波数特性曲線から周波数制御電圧を目的の制御電圧に近づける方向にシフトした周波数制御電圧対共振周波数特性曲線へ切り替えるようにしている。
【0027】
この構成によれば、回路のグラウンド電位から電源電位までの電圧範囲を超える広い制御電圧範囲を有する可変容量の線形領域を使用することができる。しかも、回路のグラウンド電位から電源電位までの電圧範囲より狭い範囲で変化する周波数制御電圧で上記の広い可変容量の線形領域を制御できる。
【0028】
上記本発明の構成において、可変容量は、直流阻止容量素子と可変容量素子とからなる直列回路を複数並列接続した構成を有し、直流阻止容量素子と可変容量素子とからなる複数の直列回路のそれぞれにおいて、可変容量素子の一端に周波数制御端子が設けられ、可変容量素子の他端にバイアス端子が設けられ、バイアス回路は、直流阻止容量素子と可変容量素子とからなる複数の直列回路のそれぞれにおいて、バイアス端子に各々異なるバイアス電圧を与えることが好ましい。
【0029】
上記本発明の構成において、バイアス制御回路は、ヒステリシス特性を有するコンパレータを備え、コンパレータは、周波数制御電圧をしきい値電圧と比較し、その比較結果に応じてバイアス回路が出力するバイアス電圧を切り替えることが好ましい。
【0030】
上記本発明の構成において、バイアス制御回路は、ヒステリシス特性を有し、かつ各々異なるしきい値電圧を有する複数のコンパレータを備え、複数のコンパレータは、周波数制御電圧を各々のしきい値電圧と比較し、その比較結果に応じてバイアス回路の出力するバイアス電圧を切り替えることが好ましい。
【0031】
上記本発明の構成において、バイアス回路は、ダイオードまたはダイオードと抵抗の直列回路を複数段縦積み接続した構成を有し、複数段のダイオードの段間点または複数段のダイオードと抵抗の直列回路の段間点からバイアス電圧を出力する構成を有することが好ましい。
【0032】
上記本発明の構成においては、バイアス回路は、出力するバイアス電圧に温度特性を有し、バイアス電圧の温度特性によって可変容量の温度特性をキャンセルすることが好ましい。なお、バイアス回路に温度特性を持たせるには、バイアス回路をダイオードで構成し、ダイオードの温度特性を利用するか、もしくは演算増幅器で構成したバイアス回路に温度特性をもたせることでも実現可能である。
【0033】
この構成によれば、可変容量の温度特性をキャンセルし温度変化があっても、周波数制御電圧が変動しない電圧制御発振器を提供することができる。
【0034】
また、本発明の構成においては、タイマ回路を備え、電源電圧投入後の任意の時間バイアス回路を複数あるバイアス状態のうちのいずれか一つの状態に固定し、その後バイアス状態の固定を解除する機能を有することが好ましい。
【0035】
また、本発明の構成においては、バイアス制御回路は、タイマ回路を備え、電源電圧投入後の第1の任意の時間バイアス回路を複数あるバイアス状態のうちのいずれか一つの状態に固定し、その後の第2の任意の時間バイアス状態の固定を解除し、その後バイアス状態の固定の解除期間の最後の状態でバイアス状態を固定する機能を有することが好ましい。
【0036】
また、電圧制御発振器がPLL回路に含まれる場合、バイアス制御回路は、PLL回路のロック状態を検出するPLLロック検出信号を入力とし、PLLロック検出信号がPLL非ロック状態を示す期間(PLLロック検出期間)バイアス回路を複数あるバイアス状態のうちのいずれか一つの状態に固定し、PLLロック検出信号がPLL非ロック状態を示す状態からPLLロック状態を示す状態への変化に応答してバイアス状態の固定を解除する機能を有することが好ましい。
【0037】
本発明の電圧制御発振器を含んで構成されるPLL回路は、上記本発明の電圧制御発振器と、電圧制御発振器の出力を分周する分周器と、分周器の信号と外部からの基準周波数信号とを比較する位相比較器と、位相比較器の出力を入力するチャージポンプと、チャージポンプの出力を入力するローパスフィルタ回路と、ローパスフィルタ回路の出力を電圧制御発振器の電圧制御端子に与えるPLL回路であって、分周回路の出力信号と基準周波数信号とを用いてPLLのロック状態を検出するPLLロック検出回路を設け、PLLロック検出回路のロック検出信号に応じてバイアス状態を固定状態から固定解除状態にすることによりロック後PLLを安定的に動作させることができる。
【0038】
上記のダイオードは、例えばコレクタとベースとを結合したトランジスタから形成される。また、上記可変容量は、例えばCMOSプロセスにより形成されるMOSトランジスタのゲート容量で構成される。
【0039】
本発明の電圧制御発振器の発振周波数制御方法は、インダクタおよび可変容量で構成される共振回路に対して、共振周波数を制御するための基準となるバイアス電圧と共振周波数を制御するための周波数制御電圧とを与え、バイアス電圧を基準として周波数制御電圧を変化させることにより、周波数制御電圧対共振周波数特性曲線に従って共振回路の共振周波数を変化させる電圧制御発振器の発振周波数制御方法であって、
バイアス電圧を切り替え可能とすることにより、周波数制御電圧が順次シフトした複数の周波数制御電圧対共振周波数特性曲線を共振回路で切り替え可能とし、
周波数制御電圧を変化させることによって共振回路の共振周波数を変化させる過程で、周波数制御電圧が所定のしきい値電圧に達したときにバイアス電圧を切り替えることによって、共振回路の周波数制御電圧対共振周波数特性曲線を、現在の周波数制御電圧対共振周波数特性曲線から周波数制御電圧を目的の制御電圧に近づける方向にシフトした周波数制御電圧対共振周波数特性曲線へ切り替える。
【0040】
この方法によれば、回路のグラウンド電位から電源電位までの電圧範囲を超える広い制御電圧範囲を有する可変容量の線形領域を使用することができる。しかも、回路のグラウンド電位から電源電位までの電圧範囲より狭い範囲で変化する周波数制御電圧で上記の広い可変容量の線形領域を制御できる。
【発明の効果】
【0041】
本発明の電圧制御発振器およびその発振周波数制御方法によれば、回路のグラウンド電位から電源電位までの電圧範囲を超える広い制御電圧範囲を有する可変容量の線形領域を使用することができる。しかも、回路のグラウンド電位から電源電位までの電圧範囲より狭い範囲で変化する周波数制御電圧で上記の広い可変容量の線形領域を制御できる。
【0042】
また、本発明の電圧制御発振器によれば、可変容量の温度特性をキャンセルし温度変化があっても、周波数制御電圧が変動しないこと特徴とする電圧制御発振器を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0043】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照しながら説明する。
【0044】
(実施の形態1)
図1は本発明の実施の形態1における電圧制御発振器のブロック図を示したものである。この電圧制御発振器は、発振部200と、発振部200の可変容量へバイアスを与えるバイアス回路201と、バイアス回路201のバイアスを制御するバイアス制御回路202とから構成されている。発振部200については、図13に示した先行技術と同様の構成である。
【0045】
周波数制御端子5が発振部200とバイアス制御回路202とに接続されている。例として、バイアス回路201の出力端子201a、201b、201cから発振部200の可変容量への3つのバイアス電圧Vb1、Vb2、Vb3が与えられ、バイアス制御回路202の出力端子202a、202bからバイアス回路201の入力端子201d、201eへの2つの出力信号Vbc1、Vbc2が与えられているものとする。
【0046】
図1における発振部200とバイアス回路201とバイアス制御回路202の具体的な回路図を図2に示す。
【0047】
発振部200は、先行技術と同様に、負性抵抗回路としての発振トランジスタ1a、1bと、インダクタ2a、2bと、可変容量素子10a、10b、11a、11b、12a、12bと可変容量素子10a、10b、11a、11b、12a、12bに直列に接続される直流阻止コンデンサ13a、13b、14a、14b、15a、15bとから構成される。可変容量素子10a、10b、11a、11b、12a、12bの一方の端子をそれぞれバイアス電圧Vb1、Vb2、Vb3に固定し、他方の端子には周波数制御端子5からそれぞれ抵抗16a、16b、17a、17b、18a、18bを介して周波数制御電圧Vcが印加される。
【0048】
バイアス回路201は、グラウンド電位と電源電位との間にダイオードD0、D1、D2、D3と抵抗Rxとを直列に接続して構成されている。バイアス電圧Vb1は、ダイオードD3のアノードから出力される。バイアス電圧Vb2はダイオードD2のアノード(ダイオードD3のカソード)から出力される。バイアス電圧Vb3は、ダイオードD1のアノード(ダイオードD2のカソード)から出力される。バイアス電圧Vb2は、バイアス電圧Vb1に比べて、ダイオードD3の順電圧Vd分低い値となっている。また、バイアス電圧Vb3は、バイアス電圧Vb2に比べてダイオードD2の順電圧Vd分低い値となっている。この構成により図14に示したような特性の合成が行われる。
【0049】
バイアス制御回路202は、周波数制御端子5に加えられる周波数制御電圧Vcと基準電圧(しきい値電圧)Vref1、Vref2とをそれぞれ比較するコンパレータCom1、Com2と、コンパレータCom1、Com2の出力の状態に応じてオンオフするスイッチS1、S2とから構成されている。スイッチS1、S2は一端がダイオードD1、D0のアノードに接続され、他端がグラウンドに接続されている。コンパレータCom1、Com2は各々ヒステリシス特性を有している。スイッチS1、S2は例えば、MOSトランジスタからなる。
【0050】
コンパレータCom1、Com2の出力は、それぞれスイッチS1、S2の制御端子と接続されている。スイッチS1、S2の状態によって、発振部200の可変容量に与えられるバイアス電圧Vb1、Vb2、Vb3は、電圧Vdまたは電圧2Vd分シフトすることになる。
【0051】
したがって、発振部200の可変容量の容量値と周波数制御電圧の特性は、図2の回路では、3種類できることになり、バイアス電圧Vb1、Vb2、Vb3をスイッチS1、S2のオンオフによって切り替えることで、3つの特性のうち、いずれか一つを選択することができる。
【0052】
ここで、3つの特性をband1、band2、band3と表す。スイッチS1、S2の状態が、S1=任意(ONまたはOFF)、S2=ONの場合をband1とし、S1=ON、S2=OFFの状態をband2とし、S1=OFF、S2=OFFの状態をband3として、周波数制御電圧Vcに対する可変容量の容量値の変化を図3に示す。図3において、横軸には周波数制御電圧をとり、縦軸には可変容量の容量値をとっている。また、図3には、コンパレータCom1、Com2に与えられる基準電圧Vref1、Vref2を、グラウンド電位および回路電源電圧と合わせて示している。先行技術では、周波数制御端子の電圧範囲は、グラウンド電位から回路電源電圧までの範囲であったが、本発明の実施の形態1では、周波数制御端子の電圧範囲は、先行技術よりも狭い基準電圧Vref1から基準電圧Vref2(Vref1<Vref2)までの範囲である。
【0053】
上記のように、周波数制御端子の電圧範囲は、先行技術よりも狭く設定しても、上記のように、3つの特性のいずれかを周波数制御電圧の変化に応じて選択することにより、先行技術の場合と同等以上の広い範囲にわたって容量値を変化させることが可能となる。ここで、基準電圧Vref1をグラウンド電位より十分高くし、基準電圧Vref2を回路電源電圧より十分低くすることにより、先行技術で説明した、PLL回路の動作の不安定という課題を解決できるものである。なお、基準電圧Vref1、Vref2は任意に設定可能である。例としてはグラウンド電位及び回路電源電圧から0.5V程度離れた電圧が好ましい。
【0054】
すると、たとえば先行技術では可変容量の特性はband2のみであったが、本発明の実施の形態1を使用することにより、3つの特性band1〜band3を選択的に利用することができ、従来ではグラウンド電位から回路電源電圧(VCC電位)まで周波数制御電圧を変化させなければ得られなかった可変容量値を、グラウンド電位からVCC電位の範囲の内側で得ることができる。したがって前述しているようにPLL回路の特性を安定させることができる。
【0055】
また、PLL回路として使用する場合は、周波数制御端子電圧は目的の周波数へ自動で調整されるが、コンパレータがヒステリシスを持っているため、目的の周波数の調整を失敗することはない。つまり、コンパレータがヒステリシスをもっているため、しきい値付近で動作が不安定にならない。
【0056】
図4に目的の周波数を高いほうから低いほうへ変化させていったとき、つまり可変容量の値が小さいほうから大きいほうへ変化させていったときの周波数制御電圧の変化を、太い実線の矢印で示す。また、目的の周波数を低いほうから高いほうへ変化させていったとき、つまり可変容量の値が大きいほうから小さいほうへ変化させていったときの周波数制御電圧の変化を、太い破線の矢印で示す。
【0057】
ここで、コンパレータCom1、Com2のヒステリシス動作と周波数制御電圧の変化の関連について、以下に説明する。一般に、電源電圧投入後、周波数制御電圧はグラウンド電位からスタートする。そのため、周波数制御電圧がグラウンド電位のとき、特性band3からスタートするようにスイッチS1とスイッチS2を設定している。そして、目的の周波数つまり目的の容量になるまで周波数制御電圧が変化していくが、このとき周波数制御電圧が基準電圧Vref1もしくはVref2付近になってしまうと、ヒステリシスがない場合、温度変動や電源電圧変動によるわずかな容量変化で特性の切り替わりが起こってしまい動作が不安定になる。本回路では、ヒステリシスにより、基準電圧Vref1を超えた電圧Vref1′で特性band3から特性band2へ移動する。移動後はコンパレータがヒステリシスをもつので、しきい値は電圧Vref1となる。また、特性band2から特性band1へは基準電圧Vref2を超えると移動し、移動後はコンパレータがヒステリシスをもつのでしきい値は電圧Vref2′になる。
【0058】
周波数制御電圧が回路電源電圧からスタートする場合には、以下のようになる。周波数制御電圧が回路電源電圧のとき、特性band1からスタートするようにスイッチS1とスイッチS2を設定している。そして、目的の周波数つまり目的の容量になるまで周波数制御電圧が変化していくが、このとき周波数制御電圧が基準電圧Vref1もしくはVref2付近になってしまうと、ヒステリシスがない場合、温度変動や電源電圧変動によるわずかな容量変化で特性の切り替わりが起こってしまい動作が不安定になる。本回路では、ヒステリシスにより、基準電圧Vref2を下回った電圧Vref2′で特性band1から特性band2へ移動する。移動後はコンパレータがヒステリシスをもつので、しきい値は電圧Vref2となる。また、特性band2から特性band3へは基準電圧Vref1を下回ると移動し、移動後はコンパレータがヒステリシスをもつのでしきい値は電圧Vref1′になる。
【0059】
上記動作において、電圧Vref1’ - Vref1 がコンパレータCom1のヒステリシス量になり、また同様に Vref2 - Vref2’ がコンパレータCom2のヒステリシス量になる。
【0060】
ここで、図4において、バイアス電圧の切り替えによって、周波数制御電圧が急激に変化している理由について説明する。バイアス電圧の切り替えによって周波数制御電圧が急変するのは、PLL周波数シンセサイザは目的の周波数になるようなクローズドループ回路を形成しているからである。周波数制御電圧対容量曲線が変化すると、容量を元に戻そうと周波数制御電圧が変化していく。例えば、いま目的の周波数で安定動作しているとき、特性band2から特性band3へ容量曲線を変化させると、周波数制御電圧が変化しなければ容量が変わってしまい目的の周波数ではなくなってしまう。
【0061】
(実施の形態2)
図5は本発明の実施の形態2における電圧制御発振器を示し、図6はその具体回路を示している。この実施の形態では、電圧制御回路200の可変容量の正または負の温度特性による発振周波数の温度変動をキャンセルするために、温度変動に応じてバイアス電圧を変化させるバイアス回路301と、バイアス回路301におけるバイアス電圧の変化量を制御する温度特性補正信号6を出力するバイアス制御回路302が、図1および図2のバイアス回路201およびバイアス制御回路202に代えて設けられている。温度特性補正信号6はバイアス回路301に供給され、それによって可変容量の温度補償を行うことができる。
【0062】
図6において、バイアス回路301は、図2とは異なり、ダイオードと抵抗の直列回路を複数段縦積みした構造となっているが、図2と同様にダイオードのみ縦積みした構造でもよい。図6において、符号R0〜R3はそれぞれ抵抗を示す。
【0063】
電流源から電流をバイアス回路301へ流すことよりバイアス電圧を微調整することができる。バイアス電圧が変化すると、容量曲線も変化し、制御電圧も変化する。またバイアス回路301及び可変容量は温度特性がある。つまり容量曲線が温度特性を持ってしまうので、制御電圧の値も温度特性がある。この可変容量の温度特性をキャンセルするために、バイアス回路301へ電流を供給する電流源を含む温度特性調整回路400を使用し、バイアス回路301へ供給する電流に温度特性をもたせている。
【0064】
この温度特性調整回路400は、NPNバイポーラトランジスタ20と、NPNバイポーラトランジスタ20のN倍の並列数であるバイポーラトランジスタ21とでカレントミラーが構成され、バイポーラトランジスタ21のエミッタに抵抗Rvが接続されている。
【0065】
具体的には、NPNバイポーラトランジスタ20のベースとNPNバイポーラトランジスタ21のベースとが接続されて共通化され、共通化されたベースがバイポーラトランジスタ20のコレクタに接続されて、カレントミラーを構成している。また、ベースが共通化されてもう一つのカレントミラーを構成するPNPトランジスタ30、31、32において、PNPトランジスタ30、31のコレクタがそれぞれNPNトランジスタ20、21のコレクタに接続されている。そしてPNPトランジスタ32のコレクタから可変電流Ivが出力されて、スイッチS10を介してバイアス回路301に供給される。
【0066】
ここで、温度特性調整回路400の動作について説明する。補正信号6、つまり温度特性調整回路400からバイアス回路301に供給される電流は、トランジスタの電流利得hFEを無限大であると仮定し、PNPトランジスタ30、31、32のミラー比が同じ、つまり1対1対1ならば、電流は、
Iv=(Vt/Rv)×lnN
Vt=kT/q
ただし、 k:ボルツマン定数
T:温度(K)
q:素電荷
さらに、
Vb3-Vb2 = R3×(Vt/Rv)×lnN + VD3
ただし、VD3はダイオードD3のベース-エミッタ間電圧である。
【0067】
このとき右辺第1項は温度に対して正の傾きを持ち、第2項は負の傾きを持つ。したがって右辺第1項の係数 (R3/Rv) による重み付けで、Vb3-Vb2は温度に対して正もしくは負の傾きを持たせることができるし、温度依存性を無くすこともできる。つまり可変容量の温度特性をキャンセルするように、バイアス電圧の温度特性を設定すればよい。
【0068】
上式でわかるように、バイアス電圧の差Vb3-Vb2に温度特性をもたせることが可能であり、このバイアス電圧の差Vb3-Vb2に応じて、バイアス電圧も温度により変化していく。また、可変容量の温度特性をキャンセルする方向にバイアス電圧を調整することによって、可変容量の温度特性をキャンセルすることができる。
【0069】
ここで、MOS容量の温度特性の補償について簡単に説明する。バイアス電圧が一定でも、MOS容量の温度特性によって、温度が変化すると、容量−制御電圧特性が図7(a)に示すように、破線の特性から実線の状態へシフトする。そこで、バイアス回路301による温度補償動作によって、図7(b)に示すように容量−制御電圧特性をもとに戻すのである。図7(c)にシンボルを示したMOS容量は、図7(d)に示すような温度特性を有していると想定している。なお、図7(d)には、MOS容量の両端に印加される電圧をVgbとしたときの、容量−電圧Vgbの特性を、温度をパラメータとして3つ示している。
【0070】
この実施の形態によれば、温度特性調整回路400を設けて、温度特性を有する電流Ivをバイアス回路301に供給するので、バイアス電圧が発振部200の可変容量の温度特性をキャンセルするように変化する。したがって、温度変動による発振部200の発振周波数の変動を防止することができ、したがって、周波数制御電圧の温度変動を防止することができる。
【0071】
(実施の形態3)
図8は、本発明の実施の形態3における電圧制御発振器の要部の回路図を示している。発振部の図示は省いている。この電圧制御発振器は、図8に示すように、初期設定回路401と、タイマ回路402と、スイッチS11−S14とを設け、バイアス制御回路202とバイアス回路201とをスイッチS11、S12を介して接続し、初期設定回路402をバイアス回路201にスイッチS13、S14を介して接続している。また、タイマ回路402は、スイッチS11〜S14のオンオフを切り替えるために設けられている。その他の構成は図2と同様である。
【0072】
この電圧制御発振器は、電源投入後の任意の期間、つまり、タイマ回路402のタイマ時間が経過するまでは、スイッチS11、S12がオフで、スイッチS13、14がオンとなっている。このとき、初期設定回路401により、バイアス回路201が複数のバイアス状態のうちのいずれか一つの状態に固定される。具体的には、初期設定回路401は例えばバイアス回路201のダイオードD1、D0のアノードを例えばそれぞれ接地する状態に回路設定されていて、スイッチS13、S14がオンとなることにより有効に作用する。
【0073】
上記タイマ時間の経過後は、スイッチS11、S12がオンとなり、スイッチS13、14がオフとなる。その結果、タイマ回路402により、初期設定回路401によるバイアス状態の固定が解除され、バイアス制御回路202によりバイアス回路201のバイアス電圧が周波数制御電圧に応じて制御される。
【0074】
この実施の形態によれば、上記電圧制御発振器をPLL回路(図15参照)において使用すると、バイアス状態の固定を解除した後は、バンド切り替えが1回ですむため、目的の周波数へロックするロックアップタイムを高速化することができる。
【0075】
(実施の形態4)
図9は、本発明の実施の形態4における電圧制御発振器の要部の回路図を示している。発振部の図示は省いている。この電圧制御発振器は、図9に示すように、初期設定回路401と、第1のタイマ時間と第2のタイマ時間とを設定するタイマ回路402と、外部基準周波数403によって動作するラッチ回路404と、スイッチS13〜S18とを設け、バイアス制御回路202とバイアス回路201とをスイッチS15、S16、ラッチ回路404およびスイッチS17、S18を介して接続し、初期設定回路402をバイアス回路201にスイッチS13、S14を介して接続している。また、タイマ回路402は、スイッチS13〜S18のオンオフを切り替えるために設けられている。その他の構成は図2と同様である。
【0076】
この電圧制御発振器は、電源投入後の任意の期間(第1のタイマ時間)は、スイッチS13、S14がオンで、スイッチS15−S18はオフとなっている。このとき、初期設定回路401により、バイアス回路201が複数のバイアス状態のうちのいずれか一つの状態に固定される。具体的には、初期設定回路401は例えばバイアス回路201のダイオードD1、D0のアノードをそれぞれ例えば接地する状態に回路設定されていて、スイッチS13、S14がオンとなることにより有効に作用する。
【0077】
上記第1のタイマ時間の経過後は、スイッチS13、S14がオフとなり、スイッチS15−S18がオンとなる。その結果、タイマ回路402により、初期設定回路401によるバイアス状態の固定が解除され、バイアス制御回路202によりバイアス回路201のバイアス電圧が周波数制御電圧に応じて制御される。このとき、バイアス制御回路202とバイアス回路201との間に設けたラッチ回路404が、外部基準周波数の周期の間隔でバイアス制御回路202の出力をラッチして、バイアス回路201へ与える。この期間は第2のタイマ時間継続する。
【0078】
第2のタイマ時間の経過後は、スイッチS13、S14、S15、S16がオフとなり、スイッチS17−S18がオンとなる。これによって、バイアス回路201のバイアス状態が再びタイマ回路402により固定される。つまり、バイアス回路201のバイアス状態の固定が解除されている状態における最後にラッチされたバイアス状態で、バイアス回路201のバイアス状態が固定される。
【0079】
この実施の形態によれば、上記電圧制御発振器をPLL回路(図15参照)において使用すると、バイアス回路は、最後にラッチされたバイアス状態で固定されるため、PLL回路のロック後の動作を安定的に行わせることができる。
【0080】
(実施の形態5)
図10は、本発明の実施の形態5における電圧制御発振器の要部の回路図を示している。発振部の図示は省いている。この電圧制御発振器は、図10に示すように、初期設定回路401と、PLL回路のロックを検出したときにPLLロック検出信号をアクティブにするPLLロック検出回路405と、スイッチS11−S14とを設け、バイアス制御回路202とバイアス回路201とをスイッチS11、S12を介して接続し、初期設定回路402をバイアス回路201にスイッチS13、S14を介して接続している。また、PLLロック検出回路405は、スイッチS11〜S14のオンオフを切り替えるために設けられている。その他の構成は図2と同様である。
【0081】
また、この電圧制御発振器を含んで構成されるPLL回路は、発振部と、発振部の出力を分周する分周器と、分周器の出力と基準周波数信号とを比較する位相比較器と、位相比較器の出力に応じて電流を出し入れするチャージポンプと、チャージポンプの出力を平均化するローパスフィルタとを備え、ローパスフィルタの出力を周波数制御電圧として周波数制御端子から電圧制御発振器とバイアス制御回路にフィードバックする構成である。また、PLLロック検出回路は、分周器の出力と基準周波数信号とをもとに、PLLロックを検出する構成になっている。
【0082】
この電圧制御発振器は、ロック検出回路405のロック検出期間中(非ロック検出状態)は、スイッチS11、S12がオフで、スイッチS13、14がオンとなっている。このとき、初期設定回路401により、バイアス回路201が複数のバイアス状態のうちのいずれか一つの状態に固定される。具体的には、初期設定回路401は例えばバイアス回路201のダイオードD1、D0のアノードを例えばそれぞれ接地する状態に回路設定されていて、スイッチS13、S14がオンとなることにより有効に作用する。
【0083】
上記ロック検出回路405のPLLロック検出信号がアクティブとなると、スイッチS11、S12がオンとなり、スイッチS13、14がオフとなる。その結果、初期設定回路401によるバイアス状態の固定が解除され、バイアス制御回路202によりバイアス回路201のバイアス電圧が周波数制御電圧に応じて制御される。
【0084】
この実施の形態によれば、上記電圧制御発振器をPLL回路(図15参照)において使用すると、PLL回路のロック後のロック検出信号によりバイアス状態の固定を解除するので、その後はバンド切り替えが1回ですみ、そのため目的の周波数へロックするロックアップタイムを高速化することができる。
【産業上の利用可能性】
【0085】
本発明にかかる、電圧制御発振器は、回路のグラウンド電位から電源電位までの範囲を超える広い制御電圧範囲を有する可変容量の線形領域を使用することが可能であり、特に無線通信機器で利用される電圧制御発振器に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0086】
【図1】本発明の実施の形態1の電圧制御発振器の構成を示す回路図である。
【図2】本発明の実施の形態1の電圧制御発振器のさらに具体的な回路構成を示す回路図である。
【図3】本発明の実施の形態1における電圧制御発振器の可変容量の周波数制御弾圧に対する容量値の特性図である。
【図4】本発明の実施の形態1における周波数制御電圧の変化を示す特性図である。
【図5】本発明の実施の形態2の電圧制御発振器の構成を示すブロック図である。
【図6】本発明の実施の形態2の電圧制御発振器のさらに具体的な構成を示す回路図である。
【図7】ゲート容量の温度特性の補正の様子を示す図である。
【図8】本発明の実施の形態3の電圧制御発振器の要部の構成を示すブロック図である。
【図9】本発明の実施の形態4の電圧制御発振器の要部の構成を示すブロック図である。
【図10】本発明の実施の形態5の電圧制御発振器の要部の構成を示すブロック図である。
【図11】先行技術の電圧制御発振器の構成を示す回路図である。
【図12】(a)は可変容量素子のシンボルを示す図、(b)は可変容量素子の両端子間の電圧差と容量値の関係を示す特性図である。
【図13】他の先行技術の電圧制御発振器の構成を示す回路図である。
【図14】電圧制御発振器の可変容量の周波数制御電圧に対する容量値の特性図である。
【図15】PLL回路の構成を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0087】
1a、1b 発振トランジスタ
2a、2b インダクタ
4 電源端子
5 周波数制御端子
6 電流源
10a、10b、11a、11b、12a、12b 可変容量素子
13a、13b、14a、14b、15a、15b 直流阻止コンデンサ
16a、16b、17a、17b、18a、18b 抵抗
D0〜D3 ダイオード
Com1、Com2 コンパレータ
S1、S2 スイッチ
101 分周器
102 位相比較器
103 チャージポンプ
104 ローパスフィルタ
105 ロック検出器
200 発振部
201 バイアス回路
202 バイアス制御回路
301 バイアス回路
302 バイアス制御回路
400 温度特性調整回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
インダクタおよび可変容量で構成され、共振周波数を制御するための周波数制御電圧と共振周波数を制御するための基準となるバイアス電圧とが与えられ、前記バイアス電圧を基準として前記周波数制御電圧が変化することにより、周波数制御電圧対共振周波数特性曲線に従って共振周波数が変化する共振回路と、前記共振回路に接続された負性抵抗回路とを有する発振部と、
前記共振回路に前記バイアス電圧を与えるバイアス回路と、
前記バイアス回路から出力される前記バイアス電圧を前記周波数制御電圧に応じて切り替えるバイアス制御回路とを備え、
前記バイアス制御回路は、前記バイアス電圧を切り替え可能とすることにより、周波数制御電圧が順次シフトした複数の周波数制御電圧対共振周波数特性曲線を前記共振回路で切り替え可能とし、前記周波数制御電圧が変化することによって前記共振回路の共振周波数が変化する過程で、前記周波数制御電圧が所定のしきい値電圧に達したときに前記バイアス電圧を切り替えることによって、前記共振回路の周波数制御電圧対共振周波数特性曲線を、現在の周波数制御電圧対共振周波数特性曲線から前記周波数制御電圧を目的の制御電圧に近づける方向にシフトした周波数制御電圧対共振周波数特性曲線へ切り替える電圧制御発振器。
【請求項2】
前記可変容量は、直流阻止容量素子と可変容量素子とからなる直列回路を複数並列接続した構成を有し、前記直流阻止容量素子と前記可変容量素子とからなる複数の直列回路のそれぞれにおいて、前記可変容量素子の一端に周波数制御端子が設けられ、前記可変容量素子の他端にバイアス端子が設けられ、
前記バイアス回路は、前記直流阻止容量素子と前記可変容量素子とからなる複数の直列回路のそれぞれにおいて、前記バイアス端子に各々異なるバイアス電圧を与える請求項1記載の電圧制御発振器。
【請求項3】
前記バイアス制御回路は、ヒステリシス特性を有するコンパレータを備え、前記コンパレータは、前記周波数制御電圧をしきい値電圧と比較し、その比較結果に応じて前記バイアス回路が出力するバイアス電圧を切り替える請求項1記載の電圧制御発振器。
【請求項4】
前記バイアス制御回路は、ヒステリシス特性を有し、各々異なるしきい値電圧を有する複数のコンパレータを備え、前記複数のコンパレータは、前記周波数制御電圧を各々のしきい値電圧と比較し、その比較結果に応じて前記バイアス回路の出力するバイアス電圧を切り替える請求項1記載の電圧制御発振器。
【請求項5】
前記バイアス回路は、ダイオードまたはダイオードと抵抗の直列回路を複数段縦積み接続した構成を有し、複数段のダイオードの段間点または複数段のダイオードと抵抗の直列回路の段間点からバイアス電圧を出力する構成を有する請求項1記載の電圧制御発振器。
【請求項6】
前記バイアス回路は、出力するバイアス電圧に温度特性を有し、バイアス電圧の温度特性によって前記可変容量の温度特性をキャンセルするようにしている請求項1記載の電圧制御発振器。
【請求項7】
前記バイアス制御回路は、タイマ回路を備え、電源電圧投入後の任意の時間前記バイアス回路を複数あるバイアス状態のうちのいずれか一つの状態に固定し、その後バイアス状態の固定を解除する機能を有する請求項1記載の電圧制御発振器。
【請求項8】
前記バイアス制御回路は、タイマ回路を備え、電源電圧投入後の第1の任意の時間前記バイアス回路を複数あるバイアス状態のうちのいずれか一つの状態に固定し、その後の第2の任意の時間バイアス状態の固定を解除し、その後バイアス状態の固定の解除期間の最後の状態でバイアス状態を固定する機能を有する請求項1記載の電圧制御発振器。
【請求項9】
PLL回路に含まれる電圧制御発振器であって、
前記バイアス制御回路は、前記PLL回路のロック状態を検出するPLLロック検出信号を入力とし、前記PLLロック検出信号がPLL非ロック状態を示す期間前記バイアス回路を複数あるバイアス状態のうちのいずれか一つの状態に固定し、前記PLLロック検出信号がPLL非ロック状態を示す状態からPLLロック状態を示す状態への変化に応答してバイアス状態の固定を解除する機能を有する請求項1記載の電圧制御発振器。
【請求項10】
前記ダイオードはコレクタとベースとを結合したトランジスタから形成される請求項5記載の電圧制御発振器。
【請求項11】
前記可変容量は、CMOSプロセスにより形成されるMOSトランジスタのゲート容量で構成される請求項1記載の電圧制御発振器。
【請求項12】
インダクタおよび可変容量で構成される共振回路に対して、共振周波数を制御するための基準となるバイアス電圧と共振周波数を制御するための周波数制御電圧とを与え、前記バイアス電圧を基準として前記周波数制御電圧を変化させることにより、周波数制御電圧対共振周波数特性曲線に従って前記共振回路の共振周波数を変化させる電圧制御発振器の発振周波数制御方法であって、
前記バイアス電圧を切り替え可能とすることにより、周波数制御電圧が順次シフトした複数の周波数制御電圧対共振周波数特性曲線を前記共振回路で切り替え可能とし、
前記周波数制御電圧を変化させることによって前記共振回路の共振周波数を変化させる過程で、前記周波数制御電圧が所定のしきい値電圧に達したときに前記バイアス電圧を切り替えることによって、前記共振回路の周波数制御電圧対共振周波数特性曲線を、現在の周波数制御電圧対共振周波数特性曲線から前記周波数制御電圧を目的の制御電圧に近づける方向にシフトした周波数制御電圧対共振周波数特性曲線へ切り替えることを特徴とする電圧制御発振器の発振周波数制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2008−172470(P2008−172470A)
【公開日】平成20年7月24日(2008.7.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−3065(P2007−3065)
【出願日】平成19年1月11日(2007.1.11)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】