説明

電子ビーム記録装置

【課題】電子ビームを高い位置精度で試料の所定の位置に照射して情報を記録することができる電子ビーム記録装置を提供する。
【解決手段】電子ビーム記録装置10は、電子ビームを用いて試料の表面上に情報を記録するものであって、電子ビームbを放射する電子源と、電子ビームの照射軸線上に進入または退避可能に設けられ、照射軸線上における磁界情報を得る磁気検出器36と、この磁気検出器による磁界情報から、試料の表面に対する電子ビームの収束位置を補正するための補正量を求める収束位置制御部21と、電子ビームの試料表面に対する収束位置を調整する収束位置調整手段78とを有する。さらに、収束位置制御部は、補正量に基づいて、収束位置調整手段に電子ビームの試料表面に対する収束位置を調整させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子ビームを試料の所定の位置に照射して情報を記録する電子ビーム記録装置に関し、特に、電子ビームを用いてパターンを描画する光ディスク原盤などの作製に用いられる電子ビーム記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、光ディスク原盤の露光技術または半導体技術に代表されるように微細加工の高精度化の要求が高まっている。例えば、光ディスクは、ガラス原板からスタンパを製作するディスク原盤工程と、スタンパを組込んだ成形金型によってディスクを形成するディスク化工程とを経て製作される。
このディスク原盤工程は、主面にフォトレジスト層を形成したガラス原板に記録すべき情報信号等に対応したピットパターン潜像を、ディスク原盤作製装置によって、大気雰囲気中で光源から出射される可視光または紫外線レーザ等を高倍率の対物レンズによって波長レベルのスポット径まで集束して形成し、フォトレジスト層のカッティングを行った後に、現像処理または電鋳処理を施してスタンパを形成している。
【0003】
そして、ディスク原盤作製装置のディスク原盤のカッティング動作は、ディスク原盤を回転駆動しながら、可視光または紫外線レーザの照射位置をディスク原盤の半径方向に相対的に移動させながら行う。上述のような可視光または紫外線レーザによるディスク原盤のカッティングは、記録用光のスポット径の限界によって、記録すべき情報信号の記録分解能が制限され、高密度記録化が阻害されてしまう。
【0004】
一方、電子ビームを用いたカッティングでは、レーザ光線によるカッティングよりも微細なパターンを形成できる利点がある。
しかしながら、電子ビームを用いるディスク原盤作製装置においては、装置内外の磁場の変動によって電子ビームが偏向させられてフォーカス部によって集束される電子ビームのスポット位置が変動する。従って、作製されたディスク原盤のトラックピッチの精度または再生ジッタが劣化するという問題点がある。
【0005】
装置内外における磁場の変動の原因は、車両またはエレベータ等の移動による地磁気の乱れ、分電盤等の電源設備から発生される電磁波、ディスク原盤作製装置内の回転駆動機構または原盤移動機構等から発生する磁気等である。
特に、ディスク原盤作製装置内の回転駆動機構または原盤移動機構等から発生する磁気等は電子ビーム照射位置を大きく乱す要因となる。このため、回転駆動機構または原盤移動機構等から発生する磁気の影響を抑制するための方法が種々提案されている(特許文献1〜特許文献3参照)。
【0006】
特許文献1には、装置内への磁気ノイズをなくす方法として、箱状で高透磁率部材からなる壁を有する磁気シールドルームに侵入する磁気ノイズをシールドする磁気シールド装置が開示されている。
この特許文献1の磁気シールド装置は、壁に設けられた貫通孔を通して壁に巻き回され、磁気ノイズの変化に対応する誘導電圧を検知信号として出力する検出コイルと、外部から電流を供給され、検出コイルで検出された磁気ノイズをキャンセルする磁場を発生させるキャンセルコイルと、この検出コイルの出力に基づいてキャンセルコイルに流す電流を制御する制御部装置とを有するものである。このキャンセルコイルとして、検出コイルが検出する磁束と同一方向の磁場を発生させる1対のヘルムホルツコイルが用いられる。
【0007】
また、特許文献2には、情報記録媒体用原盤を回転駆動する回転駆動部と、情報記録媒体用原盤の記録面上に情報記録用電子ビームを照射する照射部と、情報記録媒体用原盤と照射部との間に記録面に平行な方向における相対的移動を行わしめる移動部と、回転駆動部、照射部および移動部を真空雰囲気下に置く真空雰囲気形成部とを備える情報記録装置が開示されている。
【0008】
特許文献2の情報記録装置において、回転駆動部は、情報記録媒体用原盤を担持するターンテーブルと、このターンテーブルを支持するスピンドルシャフトと、このスピンドルシャフトを回転駆動する電磁モータと、この電磁モータに生じる磁気をシールドする磁気シールド部とからなるものである。
この特許文献2の情報記録装置においては、電磁モータからの磁気ノイズ低減方法として、電磁モータ全体を、磁気をシールドする磁性筐体(高透磁率材料)にて囲み、電磁モータから発生する電磁場の影響が電子ビームに及ぼすことを防止している。
【0009】
さらに、特許文献3の電子ビーム照射装置には、回転駆動機構または原盤移動機構等から発生する磁気及び電子銃近傍の磁気の影響を除去する方法が開示されている。この特許文献3の電子ビーム照射装置は、電子ビーム発生装置の近傍または真空槽の内部に設置した複数の磁気検出器の出力に応じて電子ビーム偏向電極を駆動し、磁場変動による電子ビームの偏向を打消す方向へ電子ビームを偏向させることによって、磁場変動による電子ビーム集束スポットの原盤上の位置ずれを補正するものである。
【0010】
【特許文献1】特開2003−124683号公報
【特許文献2】特開平6−131706号公報
【特許文献3】特開2002−217086号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
特許文献1の磁気シールド装置に開示されているように、ヘルムホルツコイルで囲む方法は、大型のコイルを精度よく設置することが必要である。しかしながら、ヘルムホルツコイルを高い精度で設置することは難しく、理想的な形状以外のヘルムホルツコイルでは発生する磁場が一様でないために精度が出難いという問題点がある。また、特許文献1の磁気シールド装置においては、設備が大きくなり、高価になるという問題点がある。
【0012】
また、特許文献2の情報記録装置に開示されているように、電磁モータ全体を、磁気をシールドする磁性筐体(高透磁率材料)にて囲む場合、電磁モータが回転部分を含むために、電磁モータ全体を完全に磁気シールドすることが難しいという問題点がある。
また、特許文献2の情報記録装置に開示されているように、多量の高透磁率材料を用いると回転駆動部の質量が増加するという問題点がある。
【0013】
さらに、特許文献2の情報記録装置において、装置全体の磁気シールドと併用した場合電子ビーム照射部の磁気シールド開口と回転駆動部の磁性筐体の開口と、照射軸方向に磁界を発生して電子ビームが影響を受けるため、正確な焦点補正ができず露光品質が劣化するという問題点がある。
【0014】
また、特許文献3の電子ビーム照射装置における磁場変動による電子ビーム集束スポットの原盤上の位置ずれ、および電子ビームの対象物に対する焦点を調整する方法は、電子ビーム照射点近傍の磁界を複数の磁気検出器により推定するため、電子ビーム出射部の外乱磁界を正確に計算できない。このため、特許文献3の電子ビーム照射装置においては、正確な焦点補正ができず露光品質が劣化するという問題点がある。
【0015】
また、特許文献3の電子ビーム照射装置に開示されているように、装置全体を磁気シールドする方法では、地磁気の影響を除くために、装置構成上必ず設けなければならない。しかしながら、作業性、排気および空調設備等の構造上の制約が多く存在し、シールドされた装置の内部で発生した磁気変動に対して効果が少ないという問題点もある。また、特許文献3の電子ビーム照射装置にように、装置全体を磁気シールドする場合には、装置が大きくなり、高価になるという問題点もある。
【0016】
本発明の目的は、電子ビームを高い位置精度で試料の所定の位置に照射して情報を記録することができる電子ビーム記録装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記目的を達成するために、本発明は、電子ビームを用いて試料の表面上に情報を記録する電子ビーム記録装置であって、前記電子ビームを放射する電子源と、前記電子ビームの照射軸線上に進入または退避可能に設けられ、前記照射軸線上における磁界情報を得る磁気検出器と、前記磁気検出器による前記磁界情報から、前記試料の表面に対する前記電子ビームの収束位置を補正するための補正量を求める収束位置制御部と、前記電子ビームの試料表面に対する収束位置を調整する収束位置調整手段とを有し、さらに、前記収束位置制御部は、前記補正量に基づいて、収束位置調整手段に前記電子ビームの試料表面に対する収束位置を調整させることを特徴とする電子ビーム記録装置を提供するものである。
【0018】
本発明においては、前記収束位置には、前記電子ビームの焦点位置が含まれており、前記収束位置調整手段は、前記電子ビームの試料表面に対する焦点位置を調整するものであり、前記収束位置制御部は、前記照射軸線が延びる方向における前記電子ビームの焦点位置を補正するための補正量を求め、前記焦点位置の補正量に基づいて、前記収束位置調整手段に前記電子ビームの試料表面に対する焦点位置を調整させるものであることが好ましい。
【0019】
また、本発明においては、前記収束位置には、前記照射軸線が延びる方向に対して、互いに直交する2方向のうち、少なくとも一の方向における前記電子ビームの照射位置が含まれており、前記収束位置調整手段は、互いに直交する2方向のうち、少なくとも一の方向における前記電子ビームの試料表面に対する照射位置を調整するものであり、前記収束位置制御部は、前記直交する2方向のうち、少なくとも一の方向における前記電子ビームの照射位置を補正するための補正量を求め、前記電子ビームの前記直交する2方向のうち、少なくとも一の方向における照射位置の補正量に基づいて、前記収束位置調整手段に前記電子ビームの試料表面に対する前記直交する2方向のうち、少なくとも一の方向の照射位置を調整させるものであることが好ましい。
【0020】
さらに、本発明においては、さらに、前記試料を載置し、かつ回転自在な回転テーブルを備える回転機構ユニットと、前記電子ビームの照射軸線に対して直交する面内に前記回転機構ユニットの前記回転テーブルを移動させる送り機構ユニットと、前記送り機構ユニットに設けられ、前記試料の位置を検出する位置検出センサと、前記回転機構ユニットによる前記試料の回転時、および前記送り機構ユニットの送り駆動時における前記試料の表面の高さを検出する高さ検出センサとを有し、前記収束位置には、前記電子ビームの焦点位置が含まれており、前記収束位置調整手段は、前記電子ビームの試料表面に対する焦点位置を調整するものであり、前記収束位置制御部は、前記高さ検出センサによる前記試料の高さ情報および前記位置検出センサによる前記試料の位置情報に対する前記磁気検出器による前記照射軸線方向における磁界情報から、前記電子ビームの焦点位置を補正するための補正量を求め、前記焦点位置の補正量に基づいて、前記収束位置調整手段に前記電子ビームの試料表面に対する焦点位置を調整させるものであることが好ましい。
【0021】
さらにまた、本発明においては、さらに、前記試料を載置し、かつ回転自在な回転テーブルを備える回転機構ユニットと、前記電子ビームの照射軸線に対して直交する面内に前記回転機構ユニットの前記回転テーブルを移動させる送り機構ユニットと、前記送り機構ユニットに設けられ、前記試料の位置を検出する位置検出センサと、前記回転機構ユニットによる前記試料の回転時、および前記送り機構ユニットの送り駆動時における前記試料の表面の高さを検出する高さ検出センサとを有し、前記収束位置には、前記照射軸線が延びる方向に対して、互いに直交する2方向のうち、少なくとも一の方向における前記電子ビームの照射位置が含まれており、前記収束位置調整手段は、互いに直交する2方向のうち、少なくとも一の方向における前記電子ビームの試料表面に対する照射位置を調整するものであり、前記収束位置制御部は、前記高さ検出センサによる前記試料の高さ情報および前記位置検出センサによる前記試料の位置情報に対する前記磁気検出器による前記照射軸線が延びる方向に対して、前記直交する2方向のうち、少なくとも一の方向における磁界情報から、前記直交する2方向のうち、少なくとも一の方向における前記電子ビームの照射位置を補正するための補正量を求め、前記直交する2方向のうち、少なくとも一の方向における前記電子ビームの照射位置の補正量に基づいて、前記収束位置調整手段に前記電子ビームの試料表面に対する前記直交する2方向のうち、少なくとも一の方向の照射位置を調整させるものであることが好ましい。
【0022】
また、本発明においては、さらに、前記試料を載置し、かつ回転自在な回転テーブルを備える回転機構ユニットと、前記電子ビームの照射軸線に対して直交する面内に前記回転機構ユニットの前記回転テーブルを移動させる送り機構ユニットと、前記送り機構ユニットに設けられ、前記試料の位置を検出する位置検出センサとを有し、前記収束位置には、前記電子ビームの焦点位置が含まれており、前記収束位置調整手段は、前記電子ビームの試料表面に対する焦点位置を調整するものであり、前記収束位置制御部は、前記回転テーブルに、表面に粒子が設けられた検査用基板を載置し、前記検査用基板上の前記粒子に対して、前記電子ビームの焦点位置を調整することにより得られる焦点位置調整情報を前記試料の各位置について取得するものであり、さらに、前記収束位置制御部は、前記焦点位置調整情報に基づいて、前記収束位置調整手段に前記電子ビームの焦点位置を調整させることが好ましい。
【0023】
さらに、本発明においては、さらに、前記収束位置には、前記照射軸線が延びる方向に対して、互いに直交する2方向のうち、少なくとも一の方向における前記電子ビームの照射位置が含まれており、前記収束位置調整手段は、互いに直交する2方向のうち、少なくとも一の方向における前記電子ビームの試料表面に対する照射位置を調整するものであり、前記収束位置制御部は、前記検査用基板上の前記粒子に対して、前記電子ビームの照射位置を調整することにより得られる照射位置調整情報を前記試料の各位置について取得するものであり、さらに、前記収束位置制御部は、前記照射位置調整情報に基づいて、前記収束位置調整手段に、互いに直交する2方向のうち、少なくとも一の方向における前記電子ビームの照射位置を調整させることが好ましい。
【0024】
本発明においては、前記収束位置調整手段は、前記電子ビームの焦点位置を調整する電界レンズを有するものであることが好ましい。
【発明の効果】
【0025】
本発明の電子ビーム記録装置によれば、試料に対して電子ビームの照射軸線上における磁界による収束位置変動を求めることにより、電子ビームの収束位置制御を高い精度で行うことができる。これにより、電子ビームを高い位置精度で試料の所定の位置に照射して情報を記録することができる。さらには、高い位置精度で電子ビームを試料の所定の位置に照射できるため、高い描画形状精度を実現でき、試料の表面上に高い精度で描画することができる。
【0026】
また、本発明の電子ビーム記録装置によれば、試料に対して電子ビームの照射軸線上における磁界による焦点位置変動を、表面に粒子を設けた検査用基板の粒子に対して、焦点位置を調整した際に得られた焦点位置調整情報に基づいて、実験的に求めることにより、電子ビームの焦点位置制御を高い精度で行うことができる。これにより、電子ビームを高い位置精度で試料の所定の位置に照射して情報を記録することができる。さらには、高い位置精度で電子ビームを試料の所定の位置に照射できるため、高い描画形状精度を実現でき、試料の表面上に高い精度で描画することができる。また、表面に粒子を設けた検査用基板を用いて、収束位置変動を実験的に求めるため、簡便で安価な電子ビーム記録装置を提供できる。
【0027】
さらに、本発明の電子ビーム記録装置によれば、電子ビームの焦点位置制御に加えて、試料に対して電子ビームの照射位置変動を、表面に粒子を設けた検査用基板の粒子に対して、電子ビームの照射位置を調整することにより得られた照射位置調整情報に基づいて、実験的に求めることにより、電子ビームの照射位置制御を高い精度で行うこともできる。これにより、電子ビームをより一層高い位置精度で試料の所定の位置に照射して情報を記録することができる。さらには、より一層高い位置精度で電子ビームを試料の所定の位置に照射できるため、より一層高い描画形状精度を実現でき、試料の表面上により一層高い精度で描画することができる。
【0028】
さらにまた、本発明の電子ビーム記録装置において、収束位置調整手段に電界レンズを設けることにより、応答性の高い収束位置調整(焦点位置調整)が可能となり、高速駆動による描画(記録)でも高い描画形状精度で描画ができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
以下、本発明に係る電子ビーム記録装置について添付の図面を参照して詳細に説明する。
図1は、本発明の電子ビーム記録装置の第1の実施例を示す模式図である。
【0030】
本実施例の電子ビーム記録装置10は、例えば、ガラス原板にパターンを描画する光ディスク原盤などの作製に用いられるものである。
電子ビーム記録装置10は、描画部12と電子ビーム照射装置14と、ホストコントローラ20と、焦点位置制御部21と、送り制御部22と、位置検出部23と、回転制御部24と、回転角度検出部25とを有する。
ホストコントローラ20に、焦点位置制御部(収束位置制御部)21、送り制御部22、および回転制御部24が接続されており、これらの焦点位置制御部21、送り制御部22、および回転制御部24は、ホストコントローラ20に制御される。
また、ホストコントローラ20は、例えば、後述する電子源62に接続されており、この電子源62を制御するものでもある。
【0031】
描画部12は、例えば、電子ビーム照射装置14(後述する電子源62)の下方に配置されており、この描画部12は、真空チャンバ30内に、送り機構ユニット32、回転機構ユニット34、磁気検出器36、高さ検出センサ38が設けられている。この真空チャンバ30は、例えば、空気圧によるサーボマウンタなどの除振機構部(図示せず)上に設けられている。
また、真空チャンバ30は、上部に開口部30aが形成されており、この開口部30aに電子ビーム照射装置14(鏡筒60の先端部60a)が接続されている。
真空チャンバ30の内面全面に磁気シールド板40が設けられている。この磁気シールド板40は、パーマロイなどの高透磁率材料からなるのものであり、これらの磁気シールド板40により地磁気等の外乱が抑制される。
【0032】
送り機構ユニット32は、送り駆動モータ42、ベース43、基台44、移動体45、送りネジ46、および位置検出センサ47を有するものである。
ベース43が真空チャンバ30の底部30bに磁気シールド板40を介して設けられている。このベース43上に、基台44が設けられている。この基台44の上部に、例えば、球体、円筒ローラ等を送り方向(X方向)に配置したころがり軸受(図示せず)を介して移動体45が設けられている。
【0033】
また、移動体45は、その下部にガイド47aが設けられている。このガイド47aとともに、位置検出センサ47を構成する検出部47bが設けられている。ガイド47aが移動体45に設けられており、検出部47bが基台44に設けられている。この位置検出センサ47は、例えば、レーザースケール等のリニアスケールである。
また、位置検出センサ47は、位置検出部23に接続されており、位置検出センサ47の移動体45(試料S)の位置を表わす検出信号(試料Sの位置情報)が位置検出部23に出力される。さらに、この位置検出部23から検出信号(試料Sの位置情報)が焦点位置制御部21に出力される。
【0034】
移動体45には、めねじ部(図示せず)が形成されている。このめねじ部に、送りネジ46が螺合されている。また、送りネジ46の端部は、真空チャンバ30から突出しており、真空チャンバ30の外部に設けられた駆動モータ42に接続されている。送りネジ46は、例えば、ボールネジにより構成されるものである。
【0035】
駆動モータ42は、送り制御部22に接続されている。この送り制御部22は、駆動モータ42の回転を制御するものである。
また、送り制御部22により、駆動モータ42の回転が制御されて、移動体45がX方向に移動する。なお、送り機構ユニット32においては、位置検出センサ47の検出信号が位置検出部23に出力されて、移動体45の現在位置情報が得られ、さらに位置検出部23が移動体45の現在位置情報を送り制御部22に出力する。送り制御部22の現在位置情報に基づく出力信号により、駆動モータ42の回転が制御され、移動体45がX方向に移動される。また、送り機構ユニット32に回転機構ユニット34が設けられている。
【0036】
回転機構ユニット34は、エアスピンドル50、光学式ロータリーエンコーダ51、回転駆動モータ52、回転テーブル53、回転機構ユニット34、および磁性流体シール54を有するものである。この回転機構ユニット34は、移動体45とともにX方向に移動されるものである。回転テーブル53に試料Sが載置されるとともに、試料Sが回転される。
【0037】
回転機構ユニット34において、エアスピンドル50が、移動体45に固定されている。このエアスピンドル50は、圧縮空気により、ラジアル方向およびスラスト方向に静圧浮上するものである。エアスピンドル50への圧縮空気は、真空チャンバ30の外部から供給される。
【0038】
また、エアスピンドル50の上部に、回転テーブル53が設けられている。さらに、エアスピンドル50の下部には回転駆動モータ52が設けられている。この回転駆動モータ52は、回転制御部24に接続されており、この回転制御部24により、回転駆動モータ52の回転が制御される。回転制御部24は、ホストコントローラ20に接続されており、この回転制御部24は、ホストコントローラ20に制御される。
さらに、回転駆動モータ52の下部に光学式ロータリーエンコーダ51が固定されている。この光学式ロータリーエンコーダ51は、一般的にその出力が一周を数千等分割したA相、B相パルスと一周に1回発生するZ相パルスから構成されるものである。
【0039】
また、光学式ロータリーエンコーダ51は、光学式ロータリーエンコーダ51の出力信号から回転角度位置を検出する回転角度検出部25に接続されており、この回転角度検出部25は、回転数情報を得るものである。また、この回転角度検出部25は、回転制御部24に接続されている。回転角度検出部25の回転数情報に基づいて、回転制御部24においては、回転駆動モータ52の回転を制御する。この回転駆動モータ52の回転により、回転テーブル53が回転する。なお、送り機構ユニット32により、移動体45とともに、回転テーブル53が照射軸線Cに対して直交するX方向(面内)に移動する。
ここで、照射軸線Cとは、電子源62から下ろした垂線のことである。
【0040】
また、真空チャンバ30の内部は真空にされる。このように真空中にエアスピンドル50を設ける場合は、真空シールのためにエアスピンドル50外周囲に磁性流体シール54を設けるのが一般的である。また、エアスピンドル50外周囲に磁性流体シール54以外には、一般的に差動排気等のシール機構を設けている。
【0041】
また、真空チャンバ30には磁気検出器36が設けられている。この磁気検出器36は、照射軸線C上に進入することができるとともに、退避することができ、照射軸線C上における磁気情報を得ることができるものである。
この磁気検出器36は、真空チャンバ30の上面部30cに設けられた回転器48の垂直方向に延びた回転軸48aに設けられたアーム48bの先端部に接続されている。
この回転器48の回転軸48aは、空気圧により回動可能である。また、磁気検出器36は、磁界測定時のみ電子ビームbの照射軸線C上に進入して磁界測定を行い、それ以外のときには、退避している。
また、磁気検出器36は、焦点位置制御部21に接続されており、測定した移動体45の各位置における磁束密度(磁気情報)を焦点位置制御部21に出力するものである。
この磁気検出器36は、照射軸線C上において、焦点位置が調整されるフォーカス方向(以下、Z方向ともいう)、このZ方向と直交し、前述の移動体45の移動方向であるX方向、ならびにZ方向およびX方向と直交するY方向の各3方向における磁束密度(磁気情報)を取得することができるものである。この磁気検出器36は、特に限定されるものではなく、公知のセンサを用いることができる。
また、磁気検出器36としては、3方向(X方向、Y方向、Z方向)測定することができるものに限定されるものではない。本実施例においては、後述するように、Z方向における電子ビームbの焦点位置を制御するものであるため、磁気検出器36としては、少なくともZ方向における磁束密度(磁気情報)を取得することができるものであれば良い。
【0042】
さらに、真空チャンバ30の上面部30cに高さ検出センサ38が設けられている。この高さ検出センサ38は、試料Sの回転、または試料Sの送り駆動時において、試料S表面高さ、または試料Sの高さ変動を検出するものであり、レーザ光の三角測量を原理とするものである。
この試料S表面高さは、例えば、回転テーブル53の表面を基準面として得られるZ方向における距離のことである。また、試料Sの高さ変動は、例えば、回転テーブル53の表面を基準面として得られるZ方向における距離の変動量のことである。
この高さ検出センサ38は、発光部38aおよび受光部38bを有するものである。
発光部38aは、例えば、半導体レーザ(図示せず)により構成されるものである。また、受光部38bは、発光部38aから出射されたレーザ光が試料S表面で反射した反射光を受光し、その受光位置により試料Sの高さ(試料Sの高さの変動)を算出するものである。この受光部38bは、位置検出素子(PSD)(図示せず)と高さを算出する演算部(図示せず)とを有する。
また、受光部38bが、焦点位置制御部21に接続されており、高さ検出センサ38の高さの算出結果が出力信号(高さ情報)として、焦点位置制御部21に出力される。
【0043】
次に、電子ビーム発生装置14について説明する。
電子ビーム発生装置14は、試料Sの表面上に情報を記録するために電子ビームbを試料Sの表面上に照射するものである。
この電子ビーム発生装置14は、鏡筒60内に各機器が設けられている。この鏡筒60は、先端部60aが円錐状に絞られ、かつその先端が開口されている。また、鏡筒60は、後端部60bが閉塞されている。
電子ビーム発生装置14においては、鏡筒60内に、後端部60b側から電子源62、ブランキング電極64、軸合わせコイル66、集束レンズ68、制限絞り70、非点補正コイル72、静電偏向電極(収束位置調整手段)74、対物レンズ76、および電界レンズ(収束位置調整手段)78が収納されている。鏡筒60の先端部60aが真空チャンバ30の開口部30aに接続されている。
また、鏡筒60の先端部60aの外周面には、地磁気等の外乱を抑制するために磁気シールド板41が設けられている。この磁気シールド板41は、パーマロイなどの高透磁率材料により形成されている。
【0044】
電子ビーム発生装置14において、電子源(電子銃)62は、例えば、熱電界放射型のもので、超高真空内に配置されている。電子源62からは、電子ビームbが回転テーブル53に向かって放射される。
この電子源62による電子ビームbの放射は、ホストコントローラ20により制御される。
【0045】
熱電界放射型の電子源62から放射される電子ビームbは、そのビーム径が20〜50nm程度の充分微小なビーム径である。このため、微小ビーム径の電子ビームを得るという点では、電子源62から放射される電子ビームのビーム径に対する、試料Sの表面上に集束される電子ビームbのビーム径の縮小率を大きく設定する必要はない。
【0046】
ブランキング電極64は、描画パターンを形成する場合、電子ビームbの走査に同期して、電子ビームbの試料Sへの照射(オン)、非照射(オフ)の制御に用いられるものである。すなわち、ブランキング電極64によって電子ビームbを偏向しなければ、電子ビームbは、試料Sの表面上に照射される(オン)。一方、ブランキング電極64により電子ビームbを偏向することによって、電子ビームbは、試料Sの表面に照射されない(オフ)。
【0047】
このブランキング電極64は、ブランキング駆動回路26に接続されている。このブランキング駆動回路26に、ホストコントローラ20から試料Sの表面に形成する描画パターンに対応した描画ブランキング信号が入力され、ブランキング駆動回路26から制御信号により、電子ビームbの試料Sへの照射、非照射が制御される。
【0048】
また、ブランキング電極64の下方に軸合わせコイル66が配置されている。この軸合わせコイル66は、集束レンズ68に入射される電子ビームbの軸ずれを補正するものである。
【0049】
集束レンズ68は、軸合わせコイル66により軸ずれが補正された電子ビームbをクロスオーバポイントCPに集束させる磁界レンズ(電磁レンズ)である。また、対物レンズ76は、集束レンズ68によりクロスオーバポイントCPに集束された電子ビームを試料Sの表面上に集束させる磁界レンズである。集束レンズ68および対物レンズ76は、それぞれこの順に軸合わせコイル66の下方に配置されている。
【0050】
制限絞り70は、情報を書き込む場合、書き込むべき情報に応じて電子ビームbのオン(書き込み)/オフ(書き込み停止)を制御するものである。すなわち、ブランキング電極64によって電子ビームbを偏向しなければ、電子ビームbは、制限絞り70の開孔部60aを通過して試料Sの表面上に入射される(オン)。一方、ブランキング電極64により電子ビームbを偏向することによって、電子ビームbは、制限絞り70で遮蔽される(オフ)。
【0051】
また、非点補正コイル72は、電子ビームbの非点収差を補正するものであり、制限絞り70の下方に配置されている。
【0052】
静電偏向電極74は、照射軸線Cが延びる方向(Z方向)に対して、互いに直交する2方向(X方向、Y方向)のうち、少なくとも一の方向(X方向、またはY方向)における電子ビームbの照射位置を調整するものである。この静電偏向電極74により、収束位置のうち、照射位置について調整することができる。
また、静電偏向電極74は、情報を書き込む場合、書き込むべき情報に応じて電子ビームを偏向することによって、試料Sの表面上における電子ビームbの照射(スポット)位置を制御するものである。この静電偏向電極74は、非点補正コイル72と対物レンズ76との間に設けられている。
【0053】
図2に示すように、静電偏向電極74は、X方向に対向して配置された1対の第1の偏向電極板74aと、Y方向に対向して配置された1対の第2の偏向電極板74bとを有するものである。1対の第1の偏向電極板74aおよび1対の第2の偏向電極板74bは、それぞれ、ホストコントローラ20に接続されている。
本実施例においては、電子ビームbをX方向に偏向する場合には、1対の第1の偏向電極板74bに、偏向量に応じた電圧が、ホストコントローラ20により印加される。これにより、電子ビームbの試料Sに対するX方向における照射位置が調整される。また、電子ビームbをY方向に偏向する場合には、1対の第2の偏向電極板に、偏向量に応じた電圧がホストコントローラ20により印加される。これにより、電子ビームbの試料Sに対するY方向における照射位置が調整される。このように、電子ビームbの偏向方向および偏向量は、ホストコントローラ20により制御される。
【0054】
また、電界レンズ(収束位置調整手段)78は、収束位置のうち、電子ビームbの焦点位置を試料Sの表面上に一致させるように調整するものである。この電界レンズ78には、焦点距離を変える焦点制御部(図示せず)が設けられている。この焦点制御部により、電界レンズ78の焦点距離が自在に変えられる。
また、焦点制御部は、焦点位置制御部21に接続されており、この焦点位置制御部21からの出力信号(印加電圧)により電界レンズ78の焦点距離が制御され、電子ビームの試料Sの表面に対する焦点位置が調整される。
なお、電界レンズ78は、磁界により電子ビームbを収束させる磁界レンズに比較して、電界にて電子ビームbを収束させるので応答性が高い。
【0055】
本実施例の電子ビーム発生装置14においては、電子源62から放射される電子ビームは、軸合わせコイル66により、その軸ずれが補正され、集束レンズ68により、クロスオーバポイントCPに集束される。そして、制限絞り70の開孔部を通過した電子ビームbは、非点補正コイル72により、その非点収差が補正され、対物レンズ76および電界レンズ78により、その焦点が補正され、試料Sの表面上に集束される。
【0056】
また、本実施例の電子ビーム発生装置14においては、情報を書き込む場合、ブランキング制御回路26を介して、ブランキング電極64および制限絞り70により、電子源62から放射される電子ビームbがオンまたはオフに制御される。また、制限絞り70の開孔部60aを通過し、対物レンズ76に入射される電子ビームbは、静電偏向電極74により、書き込むべき情報に応じて、X方向またはY方向に偏向され、試料Sの表面上におけるスポット位置が制御される。すなわち、試料Sの表面(X−Y平面)を電子ビームbが走査され、試料Sの表面の所定箇所に情報が書き込まれる。
【0057】
次に、焦点位置制御部21の構成について説明する。この焦点位置制御部21は、位置検出センサ47により得られる移動体45(回転テーブル53)の位置、および磁気検出器36により得られる移動体45の各位置における磁束密度情報(磁気情報)に基づいて、電子ビームbの焦点位置を制御するための補正電圧(補正量)を算出し、この補正電圧に基づいて、電界レンズ78により、電子ビームbの焦点位置を適正な位置に調整させるものである。
図3は、本実施例の電子ビーム記録装置の焦点位置制御部の構成を示すブロック図である。
図3に示すように、焦点位置制御部21は、CPU80、収束位置特性演算式の算出プログラムが書き込まれたROM81、RAM82、磁束密度計測回路83、D/A変換回路85、加算器86、増幅器87および駆動回路88を有するものである。
CPU80にバスを介して、ROM81、RAM82、磁束密度計測回路83、D/A変換回路85、ホストコントローラ20および位置検出部23(位置検出センサ47)が接続されている。
【0058】
CPU80は、ROM81から収束位置特性演算式の算出プログラムを読み出し、この収束位置特性演算式の算出プログラムを用いて、位置検出部23(位置検出センサ47)の出力信号と、移動体45の各位置における磁束密度情報とから収束位置特性演算式を求める。この収束位置特性演算式は、例えば、5次関数などにより表わされる高次多項式であり、CPU80においては、高次多項式における各係数が算出される。
磁束密度計測回路83は、磁気検出器36の出力信号から、例えば、Z方向の磁束密度を計測するものである。
【0059】
RAM82は、CPU80により、得られた収束位置特性演算式(高次多項式)の各係数を記憶するものである。
【0060】
さらに、D/A変換回路85は、CPU80により算出された電界レンズ78に必要なデジタル印加電圧データをアナログ電圧データに変換するものである。
焦点位置制御部21においては、D/A変換回路85に加算器86が接続されており、この加算器86に増幅器87が接続され、さらには駆動回路88が接続されている。
【0061】
加算器86は、D/A変換回路85からのアナログ電圧データ(出力信号)と、高さ検出センサ38からの試料Sの表面高さの出力信号とを加算し、加算信号を出力するものである。
【0062】
増幅器87は、加算器86から加算信号を電界レンズ78に必要なレベルまで増幅するものであり、所定の増幅倍率に設定されている。また、電界レンズ78に駆動回路88が接続されている。この駆動回路88からの出力信号(補正電圧)により電界レンズ78の焦点距離が変わり、電界レンズ78の焦点が調整されて、試料Sの表面上に電子ビームbが集束される。
【0063】
次に、電子ビーム発生装置14における電子ビームの焦点制御方法について説明する。
先ず、電子ビームbが磁界Bzの影響を受けたときの焦点位置について図4に基づいて説明する。
図4において、フォーカス方向(Z方向)における軸をZ軸として、Z軸を中心とした収束半角θの電子ビーム流を示す。速度Vの電子eは,速度成分VRと磁界Bzとによりローレンツの作用を受けてZ軸を中心に回転を始める。速度成分VRは、収束半角θ(θ<<1)に比例するのでローレンツの力はZ軸からの距離rに比例する。回転する電子eは磁界BzによりZ軸と直角方向の力を受けδθ軌道が曲げられる。δθは電子ビーム流径Rに比例し収束点Zに収束する。全電子ビーム流の収束点Zは一様に、フォーカス方向(Z方向)においてずれ量δZだけずれる。
従って、磁界の大きさ、すなわち、磁束密度が分かれば、半径方向及びZ方向に積分して、各位置におけるずれ量δZを求めることができる。
【0064】
次に、電子ビームbの収束点のずれ量の補正について説明する。
ここで、図5は、縦軸にZ方向磁束密度をとり、横軸に移動体位置をとって、移動体位置に対するZ方向磁束密度の特性曲線を示すグラフである。図5に示す移動体の各位置におけるZ方向磁束密度を表わす曲線を特性曲線という。
なお、移動体位置とは、回転ステージ53(回転機構ユニット34)の回転中心に、磁界の影響を受けていない状態における電子ビームbが照射される位置を基準(すなわち、X=0mm)として、X方向における回転テーブル53の位置を示すものである。
【0065】
本実施例においては、図5に示す特性曲線に対して、磁束密度について半径方向及びZ方向に積分をした結果、図6に示すように、移動体各位置における電界レンズ78への補正電圧を求めることができる。この補正電圧は、駆動回路88から電界レンズ78に印加されるものである。
【0066】
なお、本実施例において、焦点位置制御部21で補正電圧(電界レンズ78への印加電圧)を求めるには、予め、図7に示す高さ検出センサ38の高さ検出出力の感度特性、および図8に示す電界レンズ78の感度特性を測定しておく必要がある。
また、本実施例において、移動体45の位置によって磁界の影響が異なるため、補正電圧は、移動体45の位置により変更する必要がある。このため、焦点位置制御部21で移動体位置情報に基づいて、補正電圧が逐次計算される。
例えば、図6に示す特性を多項式近似(移動体位置の関数)した各係数をRAM82に記憶させておき、その多項式近似式を用いて現在の移動体位置情報における補正電圧を算出する。このとき、補正電圧の計算は、ROM81から呼び出された算出プログラムに従い、各係数の係数データをRAM82から呼び出して、さらに位置検出部23の出力データを用いてCPU80で計算される。この計算結果は、D/A変換回路86に出力される。ここで、増幅器87の増幅倍率が1であれば、図6に示す補正電圧そのものをD/A変換回路85から増幅器87に出力させる。しかし、増幅器87の増幅倍率が10であれば、図6に示す補正電圧の1/10の電圧をD/A変換回路85から増幅器87に出力させる。
【0067】
本実施例の電子ビーム記録装置10の電子ビーム発生装置14においては、試料Sに記録(描画)するために必要な電子源62の電流量が決定されると、記録前に事前に、磁気検出器36を電子ビームbの照射軸線C上の略ワークディスタンス位置近傍に進入させ、各移動体位置におけるZ方向の磁束密度を計測しておき、収束位置特性(図6参照)を計算しておく。
記録(描画)時においては、高さ検出センサ38の出力信号に、磁界(磁場)による焦点位置ずれ相当量にあたる出力信号とが加算器86で加算され、増幅器87および駆動回路88を経て電界レンズ78に印加される。これにより、電界レンズ78による電子ビームbの焦点制御が行われる。この電子ビームbの焦点制御は、磁界の影響を抑制しているため、電子ビームbを高い焦点位置精度で試料Sの所定の位置に照射して情報を記録することができる。さらには、描画パターンについても、電子ビームbの焦点位置精度が高いため、描画形状精度についても同様に高い精度で試料Sに記録することができる。
【0068】
次に、本は発明の第2の実施例について説明する。
図9は、本発明の電子ビーム記録装置の第2の実施例を示す模式図である。また、図10は、本実施例の電子ビーム記録装置の照射位置制御部の構成を示すブロック図である。図11は、本実施例の電子ビーム記録装置の静電偏向電極の構成を示す模式図である。
なお、図1〜図8に示す本発明の第1の実施例の電子ビーム記録装置10と同一構成物には同一符号を付して、その詳細な説明は省略する。
【0069】
本実施例の電子ビーム記録装置10aは、第1の実施例の電子ビーム記録装置10(図1参照)に比して、電子ビームbの焦点位置(収束位置)の調整ができることに加えて電子ビームbのX方向およびY方向における照射位置(収束位置)の調整ができるものである。
本実施例の電子ビーム記録装置10aは、第1の実施例の電子ビーム記録装置10の焦点位置のずれ(デフォーカス)を補正することに加えて、X方向およびY方向における照射位置のずれを調整する機能を有する。
また、焦点位置ずれ、ならびにX方向およびY方向における照射位置ずれは、互いに独立して生じる現象であり、それぞれ個別に補正しても、互いに影響を与えることなく、焦点位置ずれ、および照射位置ずれを補正することができることを本発明者が見出した。このため、焦点位置ずれ、および照射位置ずれを補正する順序は、特に限定されるものではない。
【0070】
また、図9に示すように、本実施例の電子ビーム記録装置10aは、第1の実施例の電子ビーム記録装置10(図1参照)に比して、真空チャンバ30に二次電子検出器49を設けた点、電子ビームbをX−Y平面内に走査したときの二次電子検出器49の信号出力に基づいて画像を形成する画像取込部27を設けた点、画像取込部27により形成された画像について、画像処理を行う画像処理部28を設けた点、および画像を表示する表示器29を設けた点、ならびに電子ビームbの照射位置を制御する照射位置制御部(収束位置制御部)100を設けた点が異なり、それ以外の構成は、第1の実施例の電子ビーム記録装置10(図1参照)と同様であるため、その詳細な説明は省略する。
【0071】
本実施例の電子ビーム記録装置10aにおいて、照射位置制御部100は、直交するX方向、Y方向の2方向のうち、少なくとも一の方向における電子ビームbの照射位置を補正するための補正量を求め、X方向、Y方向のうち、少なくとも一の方向における照射位置を制御するための補正電圧(補正量)を算出し、この補正電圧に基づいて、静電偏向電極74(収束位置調整手段)により、電子ビームbの試料S表面において、X方向、Y方向の2方向のうち、少なくとも一の方向の照射位置を調整させるものものである。
照射位置制御部100においては、ホストコントローラ20による、電子ビームbを試料Sの表面についてX−Y面内での走査に際して、照射位置の補正を行うことができる。
また、二次電子検出器49は、電子ビームbを試料Sの表面についてX−Y面内で走査し、このときに発生する二次電子を検出するものである。
さらに、画像取込部27は、二次電子検出器49による電子ビームbの走査時の二次電子の検出結果に基づいて、二次電子反射像を形成するものである。
【0072】
本実施例の電子ビーム記録装置10aにおいては、ホストコントローラ20により、電子ビームbを試料Sの表面についてX−Y面内で走査し、このときに発生する二次電子を二次電子検出器49により検出し、電子ビームbの走査時の二次電子反射像を画像取込部27により形成し、さらに、この二次電子反射像を表示器29に表示させるものである。
【0073】
画像処理部28は、画像取込部27により形成され、表示器29に表示された二次電子反射像の各被写体について距離を測定する機能を備える測長機能を有するものである。
また、画像処理部28としては、二次電子反射像に対して、画像処理を行い、後述するように、収束点のずれ量、ならびにX方向およびY方向における照射位置ずれ量を算出するものである。また、画像処理部28により得られた画像処理結果(収束点のずれ量、ならびにX方向およびY方向における照射位置ずれ量)は、表示部29に出力して、表示させることができる。
また、画像処理部28により得られた画像処理結果(収束点のずれ量)は、後述するように、焦点位置制御部21に出力され、焦点位置がジャストフォーカスの状態となるような補正量が算出される。
さらに、画像処理部28により得られた画像処理結果(X方向およびY方向における照射位置ずれ量)は、後述するように、照射位置制御部100に出力されて、この照射位置が適正な位置となるような補正量が算出される。
【0074】
照射位置制御部100は、位置検出センサ47により得られる移動体45(回転テーブル53)の位置、および磁気検出器36により得られる移動体45の各位置におけるX方向の磁束密度情報(磁気情報)、およびY方向の磁束密度情報(磁気情報)に基づいて、電子ビームbの照射位置を制御するための補正電圧を算出し、この補正電圧を、ホストコントローラ20から偏向するために印加される電圧に加えて、電子ビームbの照射位置を適正な位置にするものである。
【0075】
この照射位置制御部100は、図10に示すように、焦点位置制御部21(図3参照)に比して、高さセンサ38に接続されておらず、また、加算器86がなく、さらには、ROM81aに照射位置特性演算式の算出プログラムが書き込まれている点が異なり、それ以外の構成は、基本的に焦点位置制御部21の構成と同様である。
照射位置制御部100においても、焦点位置制御部21と同様に、CPU80aにバスを介して、ROM81a、RAM82a、磁束密度計測回路83a、D/A変換回路85a、位置検出部23(位置検出センサ47)および画像処理部28が接続されている。
【0076】
CPU80aは、ROM81aから照射位置特性演算式の算出プログラムを読み出し、この照射位置特性演算式の算出プログラムを用いて、位置検出部23(位置検出センサ47)の出力信号と、移動体45の各位置におけるX方向の磁束密度情報およびY方向の磁束密度情報とから照射位置特性演算式を求める。この照射位置特性演算式は、例えば、5次関数などにより表わされる高次多項式であり、CPU80aにおいては、高次多項式における各係数が算出される。
磁束密度計測回路83aは、磁気検出器36の出力信号から、例えば、X方向の磁束密度、およびY方向の磁束密度を計測するものである。
【0077】
RAM82aは、CPU80aにより、得られた照射位置特性演算式(高次多項式)の各係数を記憶するものである。
【0078】
さらに、CPU80aにより算出された照射位置を補正するために必要な静電偏向電極74(第1の偏向電極板74aおよび第2の偏向電極板74b)(図11参照)に印加する補正デジタル電圧を、D/A変換回路85aにより、所定のアナログの補正電圧に変換される。
照射位置制御部100においては、D/A変換回路85aに増幅器87aが接続され、更に増幅器87aに駆動回路88aが接続されている。
【0079】
増幅器87aは、D/A変換回路85aからの補正電圧(アナログ電圧)を静電偏向電極74に必要なレベルまで増幅するものであり、所定の増幅倍率に設定されている。
また、静電偏向電極74に駆動回路88aが接続されている。この駆動回路88aからの出力信号(補正電圧)により静電偏向電極74による電子ビームbの照射位置が変わり、電子ビームbの照射位置が調整されて、試料Sの表面上において、磁気の影響を受けることがなければ照射される所定の照射位置に電子ビームbが集束される。
本実施例の電子ビーム記録装置10aにおいては、ホストコントローラ20により電子ビームbを偏向する際に、照射位置制御部100による照射位置の補正がなされる。
また、焦点位置については、焦点位置制御部21により、第1の実施例と同様に制御されて、試料Sの表面上に電子ビームbが集束される。
【0080】
先ず、本実施例の電子ビーム記録装置10aにおける焦点位置制御方法について説明する。
本実施例の電子ビーム記録装置10aにおける焦点位置制御方法は、第1の実施例の電子ビーム記録装置10に比して、焦点位置ずれを目視にて確認する方法を用いている点が異なり、それ以外の焦点位置制御方法は、第1の実施例の電子ビーム記録装置10と同様であるため、その詳細な説明は省略する。
ここで、図12(a)は、検査用基板を示す模式的側面図であり、(b)は、図12(a)に示す検査用基板を示す模式的平面図である。図13は、縦軸に収束位置をとり、横軸に移動体位置をとって、第2の実施例の電子ビーム記録装置の収束位置特性を示すグラフである。
【0081】
本実施例の電子ビーム記録装置10aの焦点位置制御方法においては、例えば、図12(a)および(b)に示すように、検査用基板90として、平板状の基体92の表面に、例えば、金粒子、ラテックス球等の直径が数十〜数百nm程度の粒子94を塗布したものを用いる。
【0082】
本実施例の電子ビーム記録装置10aの焦点位置制御方法において、ホストコントローラ20により、静電偏向電極74を用いて、検査用基板90の表面について電子ビームbをX−Y面内で走査して、二次電子検出器49により走査時の二次電子反射像を画像取込部27で形成し、この二次電子反射像を表示器29に表示させる。この表示器29に表示された二次電子反射像を用いて、回転ステージ53(回転機構ユニット34)の各位置における磁場(磁界)による焦点位置ずれ(デフォーカス)を目視にて確認し、電界レンズ78に電圧を手動で印加してジャストフォーカス状態となるように焦点位置を調整する。このときに、ジャストフォーカス状態とするために印加した電圧が、焦点位置調整情報(デフォーカス量)として得られる。そして、図13に示すような電子ビームの収束位置特性が求められる。電子ビームの収束位置特性に基づいて、焦点位置制御部21において補正電圧を算出し、この補正電圧に基づいて、電界レンズ78の焦点距離を調整し、電子ビームの試料Sの表面に対する焦点位置を調整することにより、電子ビームbの焦点位置を適正な位置にすることができる。
本実施例の電子ビーム記録装置10aにおいては、回転テーブル53をX=0mmの位置に移動させ、この状態で、先ず、電子ビームbのフォーカスを粒子94に合わせる。
次に、基体92表面の各粒子94について、収束位置、すなわち、デフォーカス量(ジャストフォーカス状態とするために印加した電圧)を求める。得られた複数のデフォーカス量を用いて、近似式を算出し、ROM81にプログラムとして書き込む。
【0083】
また、本実施例の電子ビーム記録装置10aにおいては、焦点位置制御部21のROM81を、フラッシュROM等にて構成しておき、デフォーカス量を求めて、得られた収束位置特性の係数データを、例えば、試料Sへの記録(露光)時に書き込む構成とすることが好ましい。さらには、焦点位置制御部21に入力手段を設け、この入力手段から近似式の係数を入力する構成としてもよい。
【0084】
次に、本実施例の電子ビーム記録装置10aの電子ビーム発生装置14における電子ビームの照射位置制御方法について説明する。
先ず、電子ビームbが磁界Bの影響を受けたときの照射位置のずれについて図14に基づいて説明する。
図14において、加速電圧Vaで加速された質量mの電子eが、磁束密度Bの偏向磁界領域を通過するものとする。この時、サイクロトロン半径をRとするとき、このサイクロトロン半径Rは、R=(2m・Va/e)1/2×1/Bのように表わすことができる。
また、電子eが位置Z〜位置Zまでの区間δZ移動する間に、電子eは、Z軸からずれ量δSだけずれてしまう。
区間δZとずれ量δSとの関係は、幾何学関係により、δS=(δZ/2Rと表わすことができる。
これらのサイクロトロン半径Rと、δZおよびずれ量δSとの関係から、ずれ量δSは、次のように、表わすことができる。
δS=((δZ×B)/(2・(2m・Va/e)1/2
したがって、磁束密度分布が分かれば、Z方向に積分することにより、電子ビームbの照射位置のずれ量δSを求めることができる。
【0085】
次に、電子ビームbの照射位置のずれ量の補正について説明する。
ここで、図15は、縦軸にX方向磁束密度およびY方向磁束密度をとり、横軸に移動体位置をとって、移動体位置に対するX方向磁束密度およびY方向磁束密度の特性曲線を示すグラフである。図15に示す移動体の各位置におけるX方向磁束密度を表す曲線を特性曲線Dといい、Y方向磁束密度を表す曲線を特性曲線Dという。
なお、移動体位置とは、上述のように、回転ステージ53(回転機構ユニット34)の回転中心に、電子ビームbが照射される位置を基準(すなわち、X=0mm)として、X方向における回転テーブル53の位置を示すものである。
【0086】
本実施例においては、図15に示す特性曲線D、Dに対して、磁束密度に対してZ方向に積分した結果、図16に示すように、移動体各位置おける静電偏向電極74への補正電圧を求めることができる。この補正電圧は、駆動回路88aから静電偏向電極74に印加されるものである。なお、照射位置について補正電圧を求める際には、回転ステージ53を停止した状態で行う。
また、本実施例において、照射位置制御部100で補正電圧(静電偏向電極74(第1の偏向電極板74aおよび第2の偏向電極板74b)への印加電圧)を求めるためには、予め静電偏向電極74(第1の偏向電極板74aおよび第2の偏向電極板74b)の感度特性を測定しておく必要がある。本実施例において、静電偏向電極74(第1の偏向電極板74aおよび第2の偏向電極板74b)の感度特性は、例えば、1〜5μm/Vの範囲である。
【0087】
本実施例において、移動体45の位置によって、照射位置のずれに対する磁界の影響が異なるため、静電偏向電極74(第1の偏向電極板74aおよび第2の偏向電極板74b)に対する補正電圧は、移動体45の位置により変更する必要がある。このため、照射位置制御部21で移動体位置情報に基づいて、静電偏向電極74(第1の偏向電極板74aおよび第2の偏向電極板74b)に対する補正電圧が逐次計算される。例えば、図16に示す特性を多項式近似(移動体位置の関数)した各係数をRAM82aに記憶させておき、その多項式近似式を用いて現在の移動体位置情報における照射位置の補正電圧を算出する。このとき、照射位置の補正電圧の計算は、ROM81aから呼び出された算出プログラムに従い、各係数の係数データをRAM82aから呼び出して、さらに位置検出部23の出力データを用いてCPU80aで計算される。この計算結果はD/A変換回路85aに出力される。ここで、増幅器87aの増幅倍率が1であれば、図16に示す補正電圧そのものをD/A変換回路85aから増幅器87aに出力させる。しかし、増幅器87aの増幅倍率が10であれば、図16に示す補正電圧の1/10の電圧をD/A変換回路85aから増幅器87aに出力させる。このようにして、電子ビームbの照射位置のずれを補正することができる。
【0088】
本実施例の電子ビーム記録装置10aによる照射位置制御方法においては、電子ビームbの照射位置のずれを補正できるが、さらに、表示部29に表示された二次電子反射像を用いても照射位置のずれを補正することができる。
この場合、鏡筒60の先端部60aの開口に固定試料台(図示せず)を吊り下げ、この固定試料台に検査用基板90を配置する。
次に、ホストコントローラ20により、静電偏向電極74を用いて、検査用基板90の表面について電子ビームbをX−Y面内で走査して、二次電子検出器49により走査時の二次電子反射像を画像取込部27に形成し、この二次電子反射像を表示器29に表示させる。
検査用基板90の粒子94の位置を予め測定しておき、画像処理部28により、検査用基板90の粒子94の位置と、表示器29に表示された二次電子反射像における粒子の位置とを比較し、粒子94の位置の変化を、画像処理部28の測長機能を用いて測定する。
【0089】
回転ステージ53(回転機構ユニット34)の各位置における磁場(磁界)による照射位置ずれを目視にて、画像処理部28の測長機能を用いて測定し、静電偏電極74に電圧を手動で印加して、磁気の影響を受けることがなければ、二次電子反射像において粒子が表れる位置となるように、適正な照射位置を調整する。なお、照射位置について補正電圧を求める際には、回転ステージ53を停止した状態で行う。
このときに、適正な照射位置とするために印加した電圧が、照射位置調整情報として得られる。そして、図17に示すような電子ビームの移動量特性が求められる。電子ビームの移動量特性に基づいて、照射位置制御部100において補正電圧を算出し、電子ビームbの照射位置を適正な照射位置とすることができる。
【0090】
本実施例の電子ビーム記録装置10aにおいては、回転テーブル53をX=0mmの位置に移動させ、この状態で、先ず、二次電子像を得る。
次に、基体92表面の各粒子94について、測長機能を用いて、粒子94の位置の変化、すなわち、照射位置ずれ量(適正な照射位置とするために印加した電圧)を求める。
回転テーブル53の位置を変えて、照射位置ずれ量(適正な照射位置とするために印加した電圧)を逐次求める。そして、得られた複数の照射位置ずれ量を用いて、近似式を算出し、ROM81aにプログラムとして書き込む。
【0091】
また、本実施例の電子ビーム記録装置10aにおいては、照射位置制御部100のROM81aを、フラッシュROM等にて構成しておき、照射位置ずれ量を求めて、得られた照射位置特性の係数データを、例えば、試料Sへの記録(露光)時に書き込む構成とすることが好ましい。さらには、照射位置制御部100に入力手段を設け、この入力手段から近似式の係数を入力する構成としてもよい。
【0092】
また、検査用基板90を先端部60aの開口に固定試料台(図示せず)を吊り下げたが、これに限定されるものではなく、磁気検出器36を固定試料台として利用してもよい。この場合、電子ビームbが照射される磁気検出器36の表面に、例えば、金粒子、ラテックス球等の直径が数十〜数百nm程度の粒子を塗布して、二次電子像を観察する。
また、回転テーブル53の表面に、例えば、金粒子、ラテックス球等の直径が数十〜数百nm程度の粒子を、例えば、十字状、または正方形状に配置し、この回転テーブル53の表面上の粒子の二次電子像を観察してもよい。
【0093】
本実施例においては、このようにして、収束位置特性を求めた場合であっても、第1の実施例と同様の効果を得ることができるとともに、X方向およびY方向における照射位置を補正をすることができるため、第1の実施例に比して、電子ビームbを高い焦点位置精度および高い照射位置精度で試料Sの所定の位置に照射して情報を記録することができる。さらには、描画パターンについても、同様に、試料Sに高品位に記録することができる。
また、本実施例においては、表面に粒子を設けた検査用基板を用いて、収束位置変動を実験的に求めるため、簡便で安価な電子ビーム記録装置を提供できる。
【0094】
上述のように、本発明においては、試料Sに対して電子ビームbの出射直下の磁界による収束位置変動を計算または実験的に求めることにより、電子ビームbの焦点位置制御を高い精度で行うことができる。さらには、試料Sに対して電子ビームbの出射直下の磁界による照射位置変動を計算または実験的に求めることにより、電子ビームbの照射位置制御を高い精度で行うことができる。これらのことにより、電子ビームを高い焦点位置精度および照射位置精度で試料の所定の位置に照射して情報を記録することができる。
【0095】
また、本実施例の電子ビーム記録装置10aにおける焦点位置制御方法および照射位置制御方法については、目視にて確認する方法に限定されるものではない。例えば、本実施例の電子ビーム記録装置10aにおける焦点位置制御方法および照射位置制御方法を、画像処理部28を用いて自動化することもできる。
先ず、本実施例の電子ビーム記録装置10aの電子ビーム発生装置14における電子ビームの他の焦点制御方法について説明する。
本実施例の電子ビーム記録装置10aにおける他の焦点位置制御方法は、本実施例の電子ビーム記録装置10aの焦点位置制御方法に比して、焦点位置ずれを、画像処理を用いて補正する点が異なり、それ以外の焦点位置制御方法は同様であるため、その詳細な説明は省略する。
【0096】
他の焦点制御方法においては、例えば、鏡筒60の先端部60aの開口に、固定試料台(図示せず)を吊り下げ、この固定試料台に検査用基板90を配置する。この検査用基板90としては、例えば、図12(a)および(b)に示すものを用いることができる。
【0097】
次に、ホストコントローラ20により、検査用基板90の表面について電子ビームbをX−Y面内で走査して、二次電子検出器49により走査時の二次電子反射像を画像取込部27に形成し、この二次電子反射像を画像処理部28により、解析する。
この場合、画像処理部28においては、二次電子反射像における粒子94の大きさを求め、この粒子94の大きさと、予め測定しておいた粒子を大きさとを比較し、焦点位置ずれ量(デフォーカス量)を算出する。
そして、回転テーブル53の各位置について、二次電子反射像における粒子94の大きさを求め、各位置おける磁場(磁界)による焦点位置ずれ量(デフォーカス量)を算出する。
回転テーブル53の各位置において、ジャストフォーカス状態とするために印加した電圧を算出し、焦点位置調整情報(デフォーカス量)として得る。これにより、電子ビームの収束位置特性が求められる。電子ビームの収束位置特性に基づいて、焦点位置制御部21において補正電圧を算出し、電子ビームbの焦点位置を適正な位置にすることができる。
【0098】
本実施例の電子ビーム記録装置10aにおいては、回転テーブル53をX=0mmの位置に移動させ、この状態で、先ず、電子ビームbのフォーカスを粒子94に合わせる。
次に、基体92表面の各粒子94について、収束位置、すなわち、デフォーカス量(ジャストフォーカス状態とするために印加した電圧)を求める。得られた複数のデフォーカス量を用いて、近似式を算出し、ROM81にプログラムとして書き込む。
【0099】
次に、本実施例の電子ビーム記録装置10aの電子ビーム発生装置14における電子ビームの他の照射位置制御方法について説明する。
本実施例の電子ビーム記録装置10aにおける他の照射位置制御方法は、本実施例の電子ビーム記録装置10aの照射位置制御方法に比して、照射位置ずれを、画像処理を用いて補正する点が異なり、それ以外の焦点位置制御方法は同様であるため、その詳細な説明は省略する。
この場合においても、鏡筒60の先端部60aの開口に固定試料台(図示せず)を吊り下げ、この固定試料台に検査用基板90を配置する。
【0100】
次に、ホストコントローラ20により、検査用基板90の表面について電子ビームbをX−Y面内で走査して、二次電子検出器49により走査時の二次電子反射像を画像取込部27で形成し、この二次電子反射像を画像処理部28に出力する。
また、検査用基板90の粒子94の大きさおよび位置を予め測定しておき、画像処理部28に、粒子94の大きさおよび位置を記憶させておく。
この画像処理部28においては、記憶された粒子94の大きさおよび位置と、二次電子反射像における粒子の位置とを比較し、粒子の位置の変化量を算出する。
次に、粒子の位置の変化量から粒子が本来の位置となる静電偏電極74に印加する電圧を算出し、各位置における補正電圧を求めることができる。なお、照射位置について補正電圧を求める際には、回転ステージ53を停止した状態で行う。
これにより、電子ビームの移動量特性を求めることができ、電子ビームの移動量特性に基づいて、照射位置制御部100において補正電圧を算出し、電子ビームbの照射位置を適正な照射位置とすることができる。
【0101】
本実施例の電子ビーム記録装置10aにおいては、回転テーブル53をX=0mmの位置に移動させ、この状態で、先ず、二次電子像を得る。
次に、基体92表面の粒子94について、画像処理部28により、粒子94の位置の変化、すなわち、照射位置ずれ量(適正な照射位置とするために印加した電圧)を求める。
回転テーブル53の位置を変えて、照射位置ずれ量(適正な照射位置とするために印加した電圧)を逐次求める。そして、得られた複数の照射位置ずれ量を用いて、近似式を算出し、ROM81aにプログラムとして書き込む。
以上の本実施例の電子ビーム記録装置10aにおける他の焦点位置制御方法および他の照射位置制御方法においても、第2の実施例と同様の効果が得られる。
【0102】
以上、本発明の電子ビーム記録装置について説明したが、本発明は上述の実施例に限定はされず、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、各種の改良または変更を行ってもよいのは、もちろんである。
【図面の簡単な説明】
【0103】
【図1】本発明の電子ビーム記録装置の第1の実施例を示す模式図である。
【図2】本実施例の電子ビーム記録装置の静電偏向電極の構成を示す模式図である。
【図3】本実施例の電子ビーム記録装置の焦点位置制御部の構成を示すブロック図である。
【図4】電子ビームの収束位置を説明する模式図である。
【図5】縦軸にZ方向磁束密度をとり、横軸に移動体位置をとって、移動体位置に対するZ方向磁束密度の特性曲線を示すグラフである。
【図6】縦軸に補正電圧をとり、横軸に移動体位置をとって、移動体位置に対する電子ビームの収束位置特性を示すグラフである。
【図7】縦軸に高さ検出出力をとり、横軸に検出変位量をとって、高さ検出センサの感度特性を示すグラフである。
【図8】縦軸に電界レンズの印加電圧をとり、横軸に焦点位置調整量をとって、電界レンズの感度特性を示すグラフである。
【図9】本発明の電子ビーム記録装置の第2の実施例を示す模式図である。
【図10】本実施例の電子ビーム記録装置の照射位置制御部の構成を示すブロック図である。
【図11】本実施例の電子ビーム記録装置の静電偏向電極の構成を示す模式図である。
【図12】(a)は、検査用基板を示す模式的側面図であり、(b)は、図12(a)に示す検査用基板の模式的平面図である。
【図13】縦軸に収束位置をとり、横軸に移動体位置をとって、移動体位置に対する電子ビームの収束位置特性を示すグラフである。
【図14】電子ビームの照射位置ずれを説明する模式図である。
【図15】縦軸にX方向磁束密度およびY方向磁束密度をとり、横軸に移動体位置をとって、移動体位置に対するX方向磁束密度およびY方向磁束密度の特性曲線を示すグラフである。
【図16】縦軸に補正電圧をとり、横軸に移動体位置をとって、移動体位置に対する電子ビームの照射位置特性を示すグラフである。
【図17】縦軸に電子ビームの移動量をとり、横軸に移動体位置をとって、移動体位置に対する電子ビームの移動量特性を示すグラフである。
【符号の説明】
【0104】
10、10a 電子ビーム記録装置
12 描画部
14 電子ビーム照射装置
20 ホストコントローラ
21 焦点位置制御部
22 送り制御部
23 位置検出部
24 回転制御部
25 回転角度検出部
27 画像取込部
28 画像処理部
29 表示部
30 真空チャンバ
32 送り機構
34 回転機構
36 磁気検出器
38 高さ検出センサ
38a 発光部
38b 受光部
40 磁気シールド板
41 磁気シールド板
42 駆動モータ
43 ベース
44 基台
45 移動体
46 送りネジ
47 位置検出センサ
47a 検出部
47b ガイド
48 回転器
48a 回転軸
48b アーム
50 エアスピンドル
51 光学式ロータリーエンコーダ
52 回転駆動モータ
53 回転テーブル
54 磁性流体シール
62 電子源
64 ブランキング電極
66 軸合わせコイル
68 集束レンズ
70 制限絞り
72 非点補正コイル
74 静電偏向電極
74a 第1の静電偏向電極板
74b 第2の静電偏向電極板
76 対物レンズ
78 電界レンズ
80、80a CPU
81、81a ROM
82、82a RAM
83、83a 磁束密度計測回路
85、85a D/A変換回路
86 加算器
87、87a 増幅器
88、88a 駆動回路
94 粒子
100 照射位置制御部
C 照射軸線
S 試料

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子ビームを用いて試料の表面上に情報を記録する電子ビーム記録装置であって、
前記電子ビームを放射する電子源と、
前記電子ビームの照射軸線上に進入または退避可能に設けられ、前記照射軸線上における磁界情報を得る磁気検出器と、
前記磁気検出器による前記磁界情報から、前記試料の表面に対する前記電子ビームの収束位置を補正するための補正量を求める収束位置制御部と、
前記電子ビームの試料表面に対する収束位置を調整する収束位置調整手段とを有し、
さらに、前記収束位置制御部は、前記補正量に基づいて、収束位置調整手段に前記電子ビームの試料表面に対する収束位置を調整させることを特徴とする電子ビーム記録装置。
【請求項2】
前記収束位置には、前記電子ビームの焦点位置が含まれており、
前記収束位置調整手段は、前記電子ビームの試料表面に対する焦点位置を調整するものであり、
前記収束位置制御部は、前記照射軸線が延びる方向における前記電子ビームの焦点位置を補正するための補正量を求め、前記焦点位置の補正量に基づいて、前記収束位置調整手段に前記電子ビームの試料表面に対する焦点位置を調整させるものである請求項1に記載の電子ビーム記録装置。
【請求項3】
前記収束位置には、前記照射軸線が延びる方向に対して、互いに直交する2方向のうち、少なくとも一の方向における前記電子ビームの照射位置が含まれており、
前記収束位置調整手段は、互いに直交する2方向のうち、少なくとも一の方向における前記電子ビームの試料表面に対する照射位置を調整するものであり、
前記収束位置制御部は、前記直交する2方向のうち、少なくとも一の方向における前記電子ビームの照射位置を補正するための補正量を求め、前記電子ビームの前記直交する2方向のうち、少なくとも一の方向における照射位置の補正量に基づいて、前記収束位置調整手段に前記電子ビームの試料表面に対する前記直交する2方向のうち、少なくとも一の方向の照射位置を調整させるものである請求項1または2に記載の電子ビーム記録装置。
【請求項4】
さらに、前記試料を載置し、かつ回転自在な回転テーブルを備える回転機構ユニットと、
前記電子ビームの照射軸線に対して直交する面内に前記回転機構ユニットの前記回転テーブルを移動させる送り機構ユニットと、
前記送り機構ユニットに設けられ、前記試料の位置を検出する位置検出センサと、
前記回転機構ユニットによる前記試料の回転時、および前記送り機構ユニットの送り駆動時における前記試料の表面の高さを検出する高さ検出センサとを有し、
前記収束位置には、前記電子ビームの焦点位置が含まれており、
前記収束位置調整手段は、前記電子ビームの試料表面に対する焦点位置を調整するものであり、
前記収束位置制御部は、前記高さ検出センサによる前記試料の高さ情報および前記位置検出センサによる前記試料の位置情報に対する前記磁気検出器による前記照射軸線方向における磁界情報から、前記電子ビームの焦点位置を補正するための補正量を求め、前記焦点位置の補正量に基づいて、前記収束位置調整手段に前記電子ビームの試料表面に対する焦点位置を調整させるものである請求項1に記載の電子ビーム記録装置。
【請求項5】
さらに、前記試料を載置し、かつ回転自在な回転テーブルを備える回転機構ユニットと、
前記電子ビームの照射軸線に対して直交する面内に前記回転機構ユニットの前記回転テーブルを移動させる送り機構ユニットと、
前記送り機構ユニットに設けられ、前記試料の位置を検出する位置検出センサと、
前記回転機構ユニットによる前記試料の回転時、および前記送り機構ユニットの送り駆動時における前記試料の表面の高さを検出する高さ検出センサとを有し、
前記収束位置には、前記照射軸線が延びる方向に対して、互いに直交する2方向のうち、少なくとも一の方向における前記電子ビームの照射位置が含まれており、
前記収束位置調整手段は、互いに直交する2方向のうち、少なくとも一の方向における前記電子ビームの試料表面に対する照射位置を調整するものであり、
前記収束位置制御部は、前記高さ検出センサによる前記試料の高さ情報および前記位置検出センサによる前記試料の位置情報に対する前記磁気検出器による前記照射軸線が延びる方向に対して、前記直交する2方向のうち、少なくとも一の方向における磁界情報から、前記直交する2方向のうち、少なくとも一の方向における前記電子ビームの照射位置を補正するための補正量を求め、前記直交する2方向のうち、少なくとも一の方向における前記電子ビームの照射位置の補正量に基づいて、前記収束位置調整手段に前記電子ビームの試料表面に対する前記直交する2方向のうち、少なくとも一の方向の照射位置を調整させるものである請求項1に記載の電子ビーム記録装置。
【請求項6】
さらに、前記試料を載置し、かつ回転自在な回転テーブルを備える回転機構ユニットと、
前記電子ビームの照射軸線に対して直交する面内に前記回転機構ユニットの前記回転テーブルを移動させる送り機構ユニットと、
前記送り機構ユニットに設けられ、前記試料の位置を検出する位置検出センサとを有し、
前記収束位置には、前記電子ビームの焦点位置が含まれており、
前記収束位置調整手段は、前記電子ビームの試料表面に対する焦点位置を調整するものであり、
前記収束位置制御部は、前記回転テーブルに、表面に粒子が設けられた検査用基板を載置し、前記検査用基板上の前記粒子に対して、前記電子ビームの焦点位置を調整することにより得られる焦点位置調整情報を前記試料の各位置について取得するものであり、
さらに、前記収束位置制御部は、前記焦点位置調整情報に基づいて、前記収束位置調整手段に前記電子ビームの焦点位置を調整させる請求項1に記載の電子ビーム記録装置。
【請求項7】
さらに、前記収束位置には、前記照射軸線が延びる方向に対して、互いに直交する2方向のうち、少なくとも一の方向における前記電子ビームの照射位置が含まれており、
前記収束位置調整手段は、互いに直交する2方向のうち、少なくとも一の方向における前記電子ビームの試料表面に対する照射位置を調整するものであり、
前記収束位置制御部は、前記検査用基板上の前記粒子に対して、前記電子ビームの照射位置を調整することにより得られる照射位置調整情報を前記試料の各位置について取得するものであり、
さらに、前記収束位置制御部は、前記照射位置調整情報に基づいて、前記収束位置調整手段に、互いに直交する2方向のうち、少なくとも一の方向における前記電子ビームの照射位置を調整させる請求項1または6に記載の電子ビーム記録装置。
【請求項8】
前記収束位置調整手段は、前記電子ビームの焦点位置を調整する電界レンズを有するものである請求項1〜7のいずれか1項に記載の電子ビーム記録装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2007−279686(P2007−279686A)
【公開日】平成19年10月25日(2007.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−5045(P2007−5045)
【出願日】平成19年1月12日(2007.1.12)
【出願人】(395006823)株式会社クレステック (12)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】