説明

電子写真用ローラ部材の製造方法

【課題】寸法精度の高い電子写真用ローラ部材の製造方法を提供することにある。
【解決手段】所定の弾性層の外周面にプラズマCVD法により被膜を形成する工程を有する弾性ローラの製造方法であって、(1)チャンバーの内部に平行に配置した第1及び第2の平板電極の間に、前記弾性層の表面と前記第1の平板電極との距離が20mm以上、100mm以下となるように配置する工程と、(2)前記チャンバー内に圧力が13.3Pa以上、666.6Pa以下となるように原料ガスを導入する工程と、(3)前記原料ガスを導入したチャンバー内で前記ローラ基体を、被処理面の周速が6mm/s以上、170mm/s以下となるように回転させつつ、出力0.3W/cm2以上、2.0W/cm2以下の電力でチャンバー内にプラズマを発生させ、前記弾性層の表面に被膜を形成する工程と、を含むことを特徴とする電子写真用ローラ部材の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真画像形成装置において用いられるトナーを担持する現像ローラなどに用いられる電子写真用ローラ部材(以降、単に「ローラ部材」ともいう)の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、複写機やレーザープリンター等の電子写真画像形成装置は現像ローラを具備している。
【0003】
電子写真画像形成装置においては、非磁性一成分接触現像方式、磁性一成分非接触現像方式が広く使用されている。非磁性一成分接触現像方式とは、非磁性トナーを現像ローラ上に弾性ブレード等でコーティングし、現像ローラと感光ドラムが接触した状態で、電圧を印加し、トナーを感光ドラム上の静電潜像に転移させて現像を行う方式である。磁性一成分非接触現像方式とは、磁性トナーを内部のマグネットの磁気力によって現像ローラ上に拘束し、そのトナーの量を規制手段で調整し、現像ローラと感光ドラムが非接触の状態で、電圧を印加し、トナーを感光ドラムに飛翔させて現像を行う方式である。
【0004】
たとえば、非磁性一成分接触現像方式においては、感光ドラムに当接して回転する現像ローラの表面に非磁性トナーを担持させて非磁性トナーを現像領域に搬送する。そして、当接部において、静電潜像のパターンにしたがって非磁性トナーが現像ローラから感光ドラムに移る。感光ドラムが一般的な円柱状のドラムである場合、現像ローラとしては、感光ドラムとの間で安定した当接幅を確保するために、通常、芯金の外周面上に導電性弾性層を成形した導電性ゴムローラが用いられる。
【0005】
そして、このような導電性ゴムローラには、弾性層の磨耗を防止し、現像ローラの表面にトナーが固着し、フィルミングが発生することを防止するために、弾性層の上に更に単層または複層の被膜を形成することが広く知られている。この被膜を形成する方法の一つとして特許文献1では、ディップコートにより被覆層を形成してなる、寸法精度の良好な現像ローラを開示している。
【0006】
しかし、塗工法によって被膜を形成する場合、通常、塗膜の乾燥、硬化工程が必要となる。また、硬化工程において加熱を必要とする場合、弾性層の材料にも耐熱性が求められる。このため、弾性層の材料が制約されてしまうことがある。また、溶剤が使用される場合、使用後の溶剤の処理に手間がかかることがある。
【0007】
一方、特許文献2は、比抵抗104Ω・cm以上、1012Ω・cm以下のセラミックで形成された半導電層をプラズマ溶射により形成し、さらに封孔処理をした被膜を表面に有するトナー担持体を開示している。また、特許文献3は、プラズマを形成してコーティングされた0.1μm乃至5.0μmの、プラズマCVD法等で形成してなるセラミックコーティング層を有するトナー保持体を開示している。
【0008】
しかし、特許文献2及び特許文献3は、いずれもステンレスやアルミニウムなどの基体上に被膜を形成することを開示しており、弾性層の表面に被膜を形成することを開示も示唆もしていない。
【特許文献1】特開2007−10764号公報
【特許文献2】特開平01−257970号公報
【特許文献3】特開平01−144078号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
近年の電子写真画像形成装置の高精細化及び高速化に対して、電子写真用ローラ部材の性能にも、より高度なものが要求されるようになってきている。特に、真円度などの寸法精度についてはより一層の向上が求められている。したがって、本発明の目的は、寸法精度の高い電子写真用ローラ部材の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の目的に鑑み、本発明者等は、被膜の形成方法として、プラズマCVD法により、弾性層上に被膜を形成することについて検討を重ねた。その結果、弾性層上にプラズマCVD法により被覆層を形成し、寸法精度の高い電子写真用ローラル部材を得るために好適な製膜条件を見出すに至った。
【0011】
本発明にかかる電子写真用ローラ部材の製造方法は、導電性軸芯体と、その外周面に形成した厚さが0.5mm以上、5.0mm以下であり、引張弾性率が1MPa以上、100MPa以下の弾性層とを有するローラ基体の該弾性層の外周面にプラズマCVD法により被膜を形成する工程を有する電子写真用ローラ部材の製造方法であって、該工程は、
(1)チャンバー内の一組の平行に配置した第1及び第2の平板電極の間に、前記弾性層の表面と前記各平板電極との距離がそれぞれ20mm以上、100mm以下となるように配置する工程と、
(2)前記チャンバー内に圧力が13.3Pa以上、666.6Pa以下となるように原料ガスを導入する工程と、
(3)前記原料ガスを導入したチャンバー内で前記ローラ基体を、該弾性層の表面の周速が6mm/s以上、170mm/s以下となるように回転させつつ、出力0.3W/cm2以上、2.0W/cm2以下の電力を前記第1の平板電極に印加して該チャンバー内にプラズマを発生させ、前記弾性層の表面に被膜を形成する工程と、を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、真円度が高く、寸法安定性に優れ、また被膜のムラが少ない現像ローラ等に用いることのできる高品質な電子写真用ローラ部材を製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
次に、本発明にかかる電子写真用ローラ部材の一例としての現像ローラの製造方法を例にとって詳細に説明する。
【0014】
本発明にかかる現像ローラの軸に直交する方向の概略断面図を図2に示す。図2に示したとおり、本発明に係る電子写真用ローラ部材は、導電性軸芯体9と、その外周面に設けられた弾性層10と、該弾性層10の外周面上にプラズマCVD法によって形成してなる被膜11とを具備している。
【0015】
該弾性層10はの厚さは0.5mm以上、5.0mm以下であり、引張弾性率が1MPa以上、100MPa以下とする。
【0016】
本発明において、導電性軸芯体9の外周面上に弾性層10を設ける方法は、特に限定されず、従来から知られている押出成形法、射出成形法、注型法などの方法によって設けることができる。
【0017】
弾性層の層構成は、本発明に記載された特徴を有すれば、特に限定されず、単層の構成としてもよいし、2層以上の構成としてもよい。
【0018】
本発明に使用される導電性軸芯体9としては、従来よりこの種の現像ローラに用いられているものが使用可能である。
【0019】
導電性軸芯体9を構成する材料の具体例としては例えば以下のものが挙げられる。銅、アルミニウム、チタン、ニッケル、又はこれらの金属を含む合金鋼(ステンレス(SUS、SUMなど)、ジュラルミン、真鍮又は青銅など)。カーボンブラックや炭素繊維を配合した樹脂等。ここで、合金鋼としては、ステンレス鋼、ニッケルクロム鋼、ニッケルクロムモリブテン鋼、クロム鋼、クロムモリブテン鋼、Al、Cr、Mo及び/又はVを添加した窒化用鋼などが挙げられる。これらのなかでは、強度の観点から、金属製のものが好ましい。更に防錆対策として導電性軸芯体にめっきや酸化処理を施すことができる。導電性軸芯体9の形状としては、例えば棒状体又はパイプ状体のものが使用できる。必要に応じて、その表面にプライマー処理層を形成してもよい。この導電性軸芯の外径は、通常、4mmから20mmの範囲であることが好ましい。
【0020】
前記弾性層10は、0.5mm以上、5.0mm以下の厚みを有する。厚さを上記範囲内とした場合、弾性層成形における制御が容易であり、現像ローラの寸法精度の向上に有利である。弾性層の厚みは、ローラ基体の半径から導電性軸芯体9の半径を差し引いて求めることができる。弾性層10の厚さは三次元座標測定機(商品名:ザイザックスRVF600A;株式会社東京精密製)等を用いて測定することができる。
【0021】
また、弾性層10は、1MPa以上、100MPa以下の引張弾性率を有する必要がある。弾性層の引張弾性率を上記数値範囲内とした場合、接触現像の際の現像ローラの過度の変形を抑制できる。また、トナーに対する機械的なストレスが過度となることがない。そのため、現像ローラ表面へのトナーの融着を抑制でき、トナー表面から外添剤が脱離するなどのトナーの経時的劣化を抑制できる。
【0022】
弾性層10の引張弾性率は、JIS−K−7113に記載の方法により測定することができる。具体的には、引張試験機のチャックへ前記ローラ基体の弾性層からサンプリングした被験試料を取り付け、チャック間の長さ80mm、測定速度20mm/minの条件で、測定環境を温度20℃、相対湿度50%で引張試験を行い測定することができる。本発明においては、ローラ基体の弾性層から切り出した図5(a)に示す形状を有する長さ100mm、ローラ半周分の弾性層を被験試料32として用いることができる。引張試験機としては、例えば、テンシロンRTC−1250A(商品名、オリエンテック社製)を使用することができる。
【0023】
さらに、弾性層10は、線膨張率が0.5×10-4/℃以上、5.0×10-4/℃以下であるものが好ましい。線膨張率が0.5×10-4/℃以上の場合、現像ローラの摺擦力が好ましい範囲となり、外添剤のトナーからの遊離、ワックスの漏出を防ぐことができる。これによりトナーの劣化や、画像形成時のカブリの発生を防ぐことができる。また、線膨張率が5.0×10-4/℃以下であると使用環境による現像ローラの寸法変化が小さく、画像不良の発生を抑制することができる。すなわち、弾性層の線膨張率が0.5×10-4/℃以上、5.0×10-4/℃以下であることによって、より画像形成性に優れた現像ローラを製造することができる。
【0024】
弾性層10の線膨張率は、たとえば、熱機械分析装置を用いて測定することができる。具体的には、熱機械分析装置へ前記ローラ基体の弾性層からサンプリングした被験試料を取り付け、窒素雰囲気下に昇温速度5℃/minで23℃から50℃まで昇温し、得られた熱線膨張曲線から線膨張率を求めることができる。本発明においては、ローラ基体の弾性層から切り出した図5(b)に示す形状を有する長さ20mmの弾性層を被験試料33として用いた。熱機械分析装置としては、例えば、TMA−60(商品名、島津製作所製)を使用することができる。
【0025】
本発明における弾性層に使用される材料は、特に限定されるものではないが、通常、熱可塑性樹脂やゴムが好ましい。
【0026】
熱可塑性樹脂の具体例を以下に列挙する。ポリエチレン系樹脂(低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合樹脂など)、ポリプロピレン系樹脂、アクリロニトリルーブタジエンースチレン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリイミド、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、フッ素樹脂、ポリアミド樹脂(ポリアミド6、ポリアミド66、MXD6など)、ポリオレフィン系エラストマー、スチレン系エラストマー、ポリエステル系エラストマーなど。これらの熱可塑性樹脂は、単独でまたは2以上を組み合わせて用いてよい。
【0027】
ゴムの具体例を以下に列挙する。スチレン−ブタジエンゴム、アクリロニトリル−ブタジエンゴム、エピクロロヒドリンゴム、イソプレンゴム、イソブチレン−イソプレンゴム、エチレン−プロピレンゴム(EPR)、エチレン−プロピレン−ジエン三元共重合体(EPDM)、クロロプレンゴム、アクリルゴム、天然ゴム、フッ素ゴムなど。これらのゴムは、単独でまたは2以上を組み合わせて用いてよい。
【0028】
熱可塑性樹脂や熱可塑性樹脂組成物は、ゴムに比較して添加剤が少ないため、弾性層としたときの当該弾性層からの低分子量物質の滲み出しが少ないため、弾性層10の構成材料としてはより好適である。特に、動的架橋熱可塑性樹脂組成物から形成されてなる弾性層は優れたセット性を示すため好ましい。弾性層がセット性に優れると、現像ローラは、感光ドラムや規制ブレードとの当接部に凹みなどの圧縮永久歪を生じにくく、長期にわたり使用が停止されても画像に影響を及ぼすことがない。動的架橋熱可塑性樹脂とは、熱可塑性樹脂マトリックス中に架橋したゴム成分を微分散させた樹脂である。具体例としては以下のものを挙げることができる。
・ポリプロピレン中にEPDMやEPRのオレフィン系ゴムの架橋粒子を微分散させたもの;
・スチレン−エチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体(SEBS)やスチレン−エチレンープロピレンースチレンブロック共重合体(SEPS)、スチレンーイソプレンースチレン共重合体(SIS)などのスチレン系ゴムの架橋粒子を微分散させたもの。
【0029】
さらに、弾性層10には必要に応じて導電剤、充填剤、増量剤、酸化防止剤、老化防止剤、加工助剤、加硫剤、加硫促進剤、又はスコーチ防止剤等の公知の各種添加剤を添加しすることができる。
【0030】
たとえば、導電剤としては以下のものが挙げられる。
【0031】
A:周期律表第1族金属の塩(LiCF3SO3、NaClO4、LiClO4、LiAsF6、LiBF4、NaSCN、KSCN、NaClなど);
B:アンモニウム塩(NH4Cl、NH4SO4、NH4NO3など);
C:周期律表第2族金属の塩(Ca(ClO42、Ba(ClO42など);
D:これらA〜Cの塩と多価アルコール(1,4−ブタンジオール、エチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ポリプロピレングリコールなど)やそれらの誘導体との錯体;
E:これらA〜Cの塩とモノオール(エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、ポリエチレングリコールモノメチルエーテル、ポリエチレングリコールモノエチルエーテルなど)との錯体;
F:陽イオン性界面活性剤(第四級アンモニウム塩など);
G:陰イオン性界面活性剤(脂肪族スルホン酸塩、アルキル硫酸エステル塩、アルキルリン酸エステル塩など);
H:両性界面活性剤(ベタインなど);
I:適当な粒子の表面に金属(アルミニウム、金、銀、銅、クロム、コバルト、鉄、鉛、白金、ロジウムなど)を電解処理、スプレー塗工、混合振とうにより付着させた粉体やカーボンブラック系の導電剤など。カーボンブラック系の導電剤としては、例えばアセチレンブラック、ケッチェンブラック、PAN系カーボンブラック、ピッチ系カーボンブラック、又はカーボンナノチューブが挙げられる。
【0032】
これらの導電剤の中でも特に前記カーボンブラック系の導電剤が、性能、品質、コストの面から好適である。
【0033】
充填剤又は増量剤の具体例を以下に列挙する。シリカ、石英微粉末、ケイソウ土、酸化亜鉛、塩基性炭酸マグネシウム、活性炭酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、ケイ酸アルミニウム、二酸化チタン、タルク、雲母粉末、硫酸アルミニウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、ガラス繊維、有機補強剤、有機充填剤など。これらの充填剤の表面を有機珪素化合物等で処理して疎水化してもよい。またこれらになんら限定されるものではなく公知の物が使用可能である。
【0034】
酸化防止剤としては、ヒンダードフェノール系酸化防止剤、フェノール系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、アミン系酸化防止剤、又は硫黄系酸化防止剤などの高分子化合物に対して使用される公知の材料が使用できる。
【0035】
加工助剤としては公知の材料が使用可能である。ステアリン酸やオレイン酸などの脂肪酸、あるいは脂肪酸の金属塩やエステル等が挙げられる。
【0036】
前記ローラ基体の外周面上に被膜を形成する前に、被膜の弾性層からの剥離が生じないように密着性を向上させるため、弾性層の外周面上をコロナ処理、フレーム処理、エキシマUV処理等の公知の表面改質方法にて改質してもよい。
【0037】
次に、前記ローラ基体の弾性層の表面にプラズマCVD法により被膜を形成する工程について図1に基づいて説明する。
【0038】
<<工程(1)>>
先ず、高周波プラズマCVD装置を用意する。この高周波プラズマCVD装置は、図1に示した通り、チャンバー7を備える。チャンバー7には、原料ガス供給部1、希ガス供給部2、一組の平板電極(第1の平板電極301、第2の平板電極303)、第1の平板電極301に接続された高周波電源4、減圧装置5、回転装置6が取り付けられている。第1及び第2の平板電極301、303は互いに平行に配置されている。平板電極301、303の形状は、特に限定されないが、通常、長方形が好ましい。これら平板電極の間には、回転装置6に接続した状態でローラ基体8が取り付けられる。ローラ基体8は、通常、その回転軸を、平板電極の電極の間の中央位置に、また、平板電極の表面と平行に配置することが好ましい。また、複数の基体を配置する場合は、平板電極と各基体の距離がそれぞれ等しくなる様に配置することが好ましい。前記の平板電極の一方には高周波電源4が接続されている。前記一組の平板電極には必要に応じて水、空気、液体窒素などを使用した冷却手段を設けても良い。
【0039】
上記、高周波プラズマCVD装置で使用する高周波電源の周波数はプラズマ放電が可能であれば、特に限定されないが、0.1KHz〜5.0GHz、特には13.56MHz〜108MHzの範囲の周波数とすることが好ましい。この範囲内であると、チャンバー内で発生するプラズマの状態が安定するため、より均一な被膜を形成することができる。
【0040】
次いで、平板電極301及び平板電極303の間にローラ基体8を回転可能に配置する。このとき、電力が印加される第1の平板電極301とローラ基体8の弾性層の表面との距離を20mm以上、100mm以下とする。この距離が20mmよりも小さいと被膜が不均一となることがあり、100mmよりも大きいと被膜の形成性が低下し、染み出しなどが発生する場合がある。
【0041】
<<工程(2)>>
チャンバー7の内部に圧力が13.3Pa以上、666.6Pa以下となるように原料ガスを導入する。原料ガスの圧力を上記の範囲内とすることにより、他の条件との関連において、チャンバー内でプラズマが安定に発生する。その結果、均一な被膜を弾性層上に形成することができる。
【0042】
<<工程(3)>>
ローラ基体8の被処理面(被膜が形成される面)の周速が6mm/秒以上、170mm/秒以下となるようにローラ基体を回転させつつ、出力0.3W/cm2以上、2.0W/cm2以下の電力を第1の平板電極301に印加する。そしてチャンバー7の内部にプラズマを発生させて弾性層10の表面に被膜を形成する。
【0043】
このように、本発明における被膜の形成は、所謂、高周波プラズマCVD(気相成長)法により行われる。高周波プラズマCVD法とは、原料ガスを高周波によってプラズマ化することで原料ガスをラジカル化し、該ラジカルを反応させて安定化し、処理面上に反応生成物からなる被膜を堆積させるプロセスを有する方法である。
【0044】
原料ガスのプラズマ化は、グロー放電によって実現される。このグロー放電の方式によって、直流グロー放電を利用する方法、高周波グロー放電を利用する方法、マイクロ波放電を利用する方法などが知られている。本発明は高周波グロー放電を利用するものである。プラズマCVD法は、高速電子による原料ガスの分解を利用するため、生成エネルギーの大きな原料ガスを解離することができる。生成したプラズマは、電子温度とガス温度が異なる熱的非平衡状態にあり、ローラ基体の処理面の温度が低くても比較的均一な被膜を形成することができるという利点を有する。
【0045】
本発明における平板電極の単位面積あたりの出力は0.3W/cm2以上、2.0W/cm2以下である。この出力が0.3W/cm2よりも小さいとプラズマ状態が不安定となり、被膜にムラが生じ、を引き起こす恐れがある。一方、この出力が2.0W/cm2よりも大きいとローラ基体表面への損傷が発生し変形が生じてしまい、寸法の安定性、外径の精度が低下することがある。なお、本発明における電極の面積とは平行におかれた平板電極一組の合計面積を意味する。本発明における一組の電極は、両者が同一の面積であることが好ましい。
【0046】
本発明におけるローラ基体に被膜を形成する際の処理面の周速は6mm/s以上、170mm/s以下となるように、ローラ基体を回転する。処理面の周速が6mm/sよりも小さいと被膜の厚みが不均一となり、170mm/sよりも大きいと弾性層外周への慣性が大きくなることにより、ローラ基体が変形し、寸法安定性や外径の精度が低減することがある。
【0047】
上記高周波プラズマCVD装置で使用する原料ガスとしては、例えば以下のものが挙げられる。ガス化し得る水素化硅素(シラン類)(SiH4等);ハロゲンで置換されたシラン誘導体(SiH2Cl2、SiH22等);ハロゲン化硅素(SiF4、Si26、SiC14、SiBr4等);シロキサン類(ヘキサメチルジシロキサン等);ボラン類(B26等);ハロゲンガス(フッ素、塩素、臭素、ヨウ素等);ハロゲン化合物(BrF、ClF、ClF5、BrF5、IBr等);水素ガス;ハロゲン化水素(HF、HCl、HBr、HI等);ガス状態の又はガス化しうる炭化水素化合物(CH4、C26、C38、C410、C22、C66等);ハロゲン化物(CF4等)等。
【0048】
本発明における被膜はこれらの原料ガスを使用して製膜される被膜である。好ましい被膜としては、SiOxを主成分とするもの、ダイヤモンドライクカーボン(Diamond like Carbon(DLCと表すことがある))からなるもの、パーフルオロ系高分子などの含フッ素被膜などが挙げられる。
【0049】
ここでSiOxからなる被膜とは、以下の条件を満たす被膜を指す:
・O―Si―Oを主骨格とすること;
・表面分析により全元素におけるSiとOの占める割合が60%以上であること;
・さらにはSi−O、及びSi―Cの化学結合を有し、かつSiとOの存在比率のO/Siが1.00以上、1.95以下、SiとCの存在比率のC/Siが0.05以上、1.00以下であること。
【0050】
DLCは、高硬度、電気絶縁性、赤外線透過性などを持つカーボンの総称である。具体的には、炭素を主骨格とし、かつ若干の水素を含有し,ダイヤモンド結合(SP3結合)とグラファイト結合(SP2結合)の両方の結合が混在しているアモルファス構造のカーボンを意味する。
【0051】
被膜の厚みとしては、弾性層を磨耗から保護し、弾性層からの染み出しを低減する観点から15nm以上、5000nm以下が好ましく、染み出し防止性の観点からさらに好ましくは300nm以上、3000nm以下である。被膜の厚みを15nm以上とすると被膜が十分に形成され、容易に均一な被膜を形成することができる。また、厚みを5000nm以下とすると被膜形成時間が短縮され生産性が向上し、被膜の剛性が好適な範囲となる。
【0052】
以上のような材料、導電性物質を使用して製造された現像ローラは、体積抵抗率が、1×104Ω・cm以上、1×1014Ω・cm以下であることが好ましい。現像ローラの体積抵抗率を1×104Ω・cm以上とすると電流のリークに起因する画像不良を容易に防ぐことができる。また、体積抵抗率を1×1014Ω・cm以上とするとベタ画像の濃度不足などの画像不良の発生を抑えることができる。
【0053】
次に上記本発明の製造方法によって得られた現像ローラを有する電子写真画像形成装置及び電子写真プロセスカートリッジについて図3を用いて説明する。図3は、本発明の製造方法によって得られた現像ローラを有する電子写真画像形成装置の一例の概略構成を示す断面図である。
【0054】
上記電子写真画像形成装置においては、潜像担持体としての感光ドラム12が矢印方向に回転し、感光ドラム12を帯電処理するための帯電部材19によって一様に帯電される。そして、感光ドラム12に静電潜像を書き込む露光手段であるレーザー光18により、その表面に静電潜像が形成される。上記静電潜像は、感光ドラム12に対して接触配置される現像装置17によってトナー15を付与されることにより現像され、トナー像として可視化される。
【0055】
現像は露光部にトナー像を形成するいわゆる反転現像を行っている。可視化された感光ドラム12上のトナー像は、転写部材である転写ローラ24によって記録媒体である紙29に転写される。トナー像を転写された紙29は、定着装置22により定着処理され、装置外に排紙されプリント動作が終了する。
【0056】
一方、転写されずに感光ドラム12上に残存した転写残トナーは、感光ドラム12表面をクリーニングするためのクリーニング部材であるクリーニングブレード21により掻き取られ廃トナー容器20に収納される。クリーニングされた感光ドラム12は上述作用を繰り返し行う。
【0057】
現像装置17は、一成分トナーとして非磁性トナーを収容した現像容器と、現像容器内の長手方向に延在する開口部に位置し感光ドラム12と対向設置されたトナー担持体としての現像ローラ13とを備えている。図3に示した電子写真画像形成装置においては、この現像ローラ13により感光ドラム12上の静電潜像を現像して可視化するようになっている。なお、図3において、27は、紙29を搬送するための転写搬送ベルトである。23、26及び28は各々、転写搬送ベルト27の回動に用いられる駆動ローラ、テンションローラ及び従動ローラである。25は、バイアス電源である。更に30は、不図示の給紙カセットから紙29を給紙する給紙ローラである。また、31は、給紙ローラ30により給紙された紙29を吸着して転写搬送ベルト27に担持させるための吸着ローラである。
【0058】
図4は、本発明の製造方法によって得られた現像ローラを有する電子写真プロセスカートリッジの一例の概略構成を示す断面図である。図4に示した電子写真プロセスカートリッジは、現像ローラ13と規制ブレード16とを備えた現像装置17を有している。かつ、少なくともトナー塗布部材14と帯電部材19とを有しており、これらが一体的に保持されてなるものであり、電子写真画像形成装置に着脱可能に設けられる。
【0059】
トナー塗布部材14の構造としては、発泡骨格状スポンジ構造や軸芯体上にレーヨン、ポリアミド等の繊維を植毛したファーブラシ構造のものが、現像ローラ13へのトナー供給および未現像トナーの剥ぎ取りの点から好ましい。例えば、軸芯体上にポリウレタンフォームを設けた弾性ローラをトナー塗布部材14として用いることができる。
【実施例】
【0060】
以下、実施例によりさらに本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらにより何ら限定されるものではない。
【0061】
本実施例において得られたローラ基体の弾性層の厚み、弾性層の引張弾性率および線膨張率の測定並びに本実施例において得られた現像ローラの被膜の厚みの測定、被膜形成性、寸法安定性及び被膜表面の成分分析は次のようにして行った。
【0062】
<弾性層の厚み>
本実施例におけるロ−ラ基体の弾性層の厚みは、次のようにして測定した。
【0063】
ザイザックスRVF600A(商品名、東京精密社製)にてローラ基体と導電性軸芯体の半径差を弾性層の厚みとして測定した。
【0064】
<弾性層の引張弾性率>
本実施例におけるローラ基体の弾性層の引張弾性率は、JIS−K−7113に記載の方法に準じて測定した。引張試験機はテンシロンRTC−1250A(商品名、オリエンテック社製)を使用した。本実施例にて得られたローラ基体から、図5(a)に示す形状を有する長さ100mm、ローラ半周分の弾性層をサンプリングして被験試料とした。被験試料の両端各10mmを上記引張試験機のチャックへ取り付けた。チャック間の長さ80mm、測定速度20mm/分の条件で、測定環境を温度20℃、相対湿度50%とし引張弾性率を求めた。5回の測定を行い、得られた引張弾性率の平均値を弾性層の引張弾性率とした。
【0065】
<弾性層の線膨張率>
本実施例にて得られたローラ基体の弾性層の線膨張率は次のようにして測定した。
【0066】
本実施例にて得られたローラ基体から、図5(b)に示す形状を有する長さ20mm、ローラ全周分の弾性層を繰り抜き取って被験試料とした。この被験試料を熱機械分析装置TMA−60(商品名、島津製作所製)に取り付け、窒素雰囲気下に昇温速度5℃/minで23℃から50℃まで昇温し、得られた熱線膨張曲線から線膨張率を求めた。なお、測定は5回行い、その平均値を弾性層の線膨張率とした。
【0067】
<被膜の厚み・被膜形成性>
本実施例にて得られた現像ローラの被膜の厚みは次のようにして測定した。
【0068】
本実施例にて得られた現像ローラの被膜の厚みは、薄膜測定装置F20−EXR(商品名、FILMETRICS社製)にて測定した。現像ローラの長手方向で等分された3箇所、周方向で等分された3箇所、合計9箇所における被膜の厚みを、温度20℃、相対湿度50%の環境下で測定し、得られた値の平均値を被膜の厚みとした。また、被膜の形成状態をデジタルマイクロスコープVHX−500(商品名、キーエンス社製)にて観察し、被覆状態を観察し、被覆面積を求め、被膜の形成性は以下の基準にて評価した。
5:被膜が形成されており、膜厚のバラツキは最大値/最小値が10%以下である。
4:被膜が形成されており、膜厚のバラツキは最大値/最小値が20%以下である。
3:被膜が形成されており、膜厚のバラツキは最大値/最小値が30%以下である。
2:被膜が形成されているが、被膜が平滑ではなく凹凸があり、膜厚のバラツキは最大値/最小値が30%よりも大きい。
1:被膜が形成されておらず、現像ローラの表面積の10%以上の範囲は膜で覆われていない。
【0069】
<被膜表面の成分分析>
本実施例にて得られた現像ローラの被膜表面の成分分析は、X線光電子分光装置Quantum2000(商品名、アルバック・ファイ社製)にて行った。X線源としてALKαを用い、元素の存在比率O/Si及びC/Siを求めた。
【0070】
本実施例にて得られた現像ローラについて下記の評価を行った。
【0071】
<寸法安定性>
本実施例にて得られた現像ローラの形状の真円度・振れを以下の方法にて測定し、評価した。なお、測定環境は温度20℃、相対湿度60%とした。
【0072】
<<真円度>>
真円度については、真円度・円筒形状測定機「ラウンドテストRA−726」(商品名、ミツトヨ社製)を用いて100本の現像ローラを測定し、その平均値を真円度とした。
5:真円度最大値−真円度最小値が10μm以下で、極めて優れており現像ローラの真円度として最適である。
4:真円度最大値−真円度最小値が10μmより大きく、20μm以下で良好であり実用上問題がない。
3:真円度最大値−真円度最小値が20μmより大きく、30μm以下で現像ローラとして使用可能なレベルである。
2:真円度最大値−真円度最小値が30μmより大きく、40μmより小さく現像ローラとして実用上問題がある。
1:真円度最大値−真円度最小値が40μm以上で現像ローラとして使用が困難である。
【0073】
<<振れ>>
振れについては外径・振れ測定機「レーザースキャンマイクロメーター」(商品名、ミツトヨ社製)を用いて、振れの値の中において長手方向でもっとも大きな値をそのローラの振れとし、100本計測した値を平均し、振れとした。
5:振れが20μm以下で、極めて優れており現像ローラとして最適である。
4:振れが20μmより大きく、30μm以下で良好であり実用上問題がない。
3:振れが30μmより大きく、40μm以下で現像ローラとして使用可能なレベルである。
2:振れが40μmより大きく、45μm以下で実用上問題がある。
1:振れが45μmよりも大きく現像ローラとして使用が困難。
【0074】
原材料について、本実施例において特に記載が無い場合、市販の高純度品を使用した。
【0075】
[実施例1]
(弾性層の作製)
下記の材料を上記原材料を直径(D)30mm、長さ(L)960mm、L/D=32の2軸押出機にて混練し、熱可塑性樹脂組成物のペレットを調製した。
・熱可塑性樹脂(動的架橋熱可塑性樹脂(TPVと表す)(商品名:サントプレーン8211−35;エーイーエスジャパン社製)):100質量部、
・プロセスオイル(商品名:PW380;出光興産社製):30質量部、
・導電剤(MTカーボンブラック(商品名:Thermax Floform N990;CANCARB社製)):30質量部。
【0076】
クロスヘッドに接続した押出成形機(商品名:ケムロック459X;ロード社製)を用いて上記のペレットを熔融押出しし、プライマー処理を施した導電性軸芯体(SUM製、直径6mm、長さ240mm)の外周面上に弾性層を形成した。両端部の弾性層を切断して取り除き、両端部に軸受部を設けた。これにより、軸芯体方向の弾性層部の長さを232mmとした後、該弾性層部を回転砥石で研磨し、直径12mm、厚みが3.0mmの弾性層を有するローラ基体を得た。
【0077】
得られたローラ基体の弾性層の厚み、弾性層の引張弾性率および線膨張率を前記方法にて測定した。測定結果を表1に示す。
【0078】
(被膜の作製)
図1に示した構成の高周波プラズマCVD装置を用意した。平板電極301及び303は、長さ(図1において左右方向の長さ)が300mm、幅20mmの長方形のステンレス(SUS316)製とした。これらの平板電極は、互いの間隔が112mmとなるように平行にチャンバー内に配置した。次いで、上記の方法で得られたローラ基体を、平板電極301と303との間に配置した。ここで、該ローラ基体の回転軸と該平板電極の表面とが平行となるように、かつ、該ローラ基体の被処理面と平板電極301との距離(電力印加側の電極表面とローラ基体処理面との最短距離)が50mmとなるように配置した。その後、真空ポンプを用いて該チャンバー内を1.0Paまで減圧した。次いで、ヘキサメチルジシロキサン蒸気1.0sccm、酸素1.5sccm及びアルゴンガス22.5sccmの混合ガスをチャンバー内に導入した。ここで「sccm」は、前記原料ガスが温度0℃、1気圧のときの毎分あたりの体積流量を表す(体積の単位はcm3)。チャンバー内の反応ガスの圧力は、25.3Paになるように調整した。
【0079】
チャンバー内の圧力が一定になった後、高周波電源により周波数13.56MHz、120wの電力を、平板電極301に印加し、出力1W/cm2の電力を投じて、平板電極301及び303の間にプラズマを発生させた。チャンバー内に設置したローラ基体は被処理面の周速が30mm/秒となるように回転させて、3分間処理を行った。処理が終了後、電力印加を停止し、チャンバー内に大気圧になるまで空気を導入し被膜が形成された現像ローラを取り出した。この現像ローラについて、上記した各種の評価を行った。
【0080】
また、本実施例にかかる現像ローラの被膜表面の元素の原子数比O/Si及びC/Siを上記成分分析により求めたところ、それぞれ1.56及び0.32であり、被膜はSiOxであった。また、被膜の厚みは1000nmであった。被膜の成膜条件を表2に示す。また、得られた弾性ローラの評価結果を表3に示す。
【0081】
[実施例2]
導電剤の使用量を50質量部とし、さらに、充填剤としてタルクを50質量部使用した。それ以外は、実施例1と同様にしてローラ基体を作製し、該ローラ基体を用いて実施例1と同様にして現像ローラを作製した。弾性層の物性、被膜の成膜条件並びに得られた現像ローラの評価結果を表1〜3に示す。なお、被膜の厚みは1000nmであった。
【0082】
[実施例3]
プロセスオイルの使用量を100質量部とした。それ以外は、実施例1と同様にしてローラ基体を作製し、該ローラ基体を用いて実施例1と同様にして現像ローラを作製した。弾性層の物性、被膜の成膜条件並びに得られた現像ローラの評価結果を表1〜3に示す。なお、被膜の厚みは1000nmであった。
【0083】
[実施例4]
実施例1と同様にしてローラ基体を作製した。原料ガスとしてのヘキサメチルジシロキサン蒸気をトルエン蒸気に変え、アルゴンガスの導入量を24.0sccmに変えて被膜をDLC被膜とした。それ以外は実施例1と同様にして現像ローラを得た。弾性層の物性、被膜の成膜条件並びに得られた現像ローラの評価結果を表1〜3に示す。なお、被膜の厚みは1020nmであった。
【0084】
[実施例5]
下記の弾性層の原材料を10リットルニーダーで混練した後に、これに上記加硫促進剤及び加硫剤を添加して2本ロールを用いて混練し、ゴム組成物とした。
・ゴム(NBR(商品名:N235S;JSR社製;アクリロニトリル36wt%)):100質量部、
・導電剤(MTカーボンブラック(商品名:Thermax Floform N990;CANCARB社製)):50質量部、
・充填剤(酸化亜鉛):5質量部、
・加工助剤(ステアリン酸):1質量部、
・加硫剤(硫黄):1質量部、
・加硫促進剤(メルカプトベンゾチアゾール):1質量部。
【0085】
このゴム組成物を用いたこと以外は、実施例1と同様にしてローラ基体を作製し、当該ローラ基体を用いて実施例1と同様にして現像ローラを得た。弾性層の物性、被膜の成膜条件並びに得られた現像ローラの評価結果を表1〜3に示す。被膜の厚みは1000nmであった。
【0086】
[実施例6]
熱可塑性樹脂をエチレン酢酸ビニル共重合樹脂(EV170(商品名、三井デュポンポリケミカル社製))(表1中においてEVAと表示した)に変えた。それ以外は実施例1と同様にしてローラ基体を作製し、当該ローラ基体を用いて実施例1と同様にして現像ローラを得た。弾性層の物性、被膜の成膜条件並びに得られた現像ローラの評価結果を表1〜3に示す。被膜の厚みは1000nmであった。
【0087】
[実施例7]
導電性軸芯体を直径11.0mmの導電性軸芯体に変え、弾性層の厚みを0.5mmとした以外は実施例1と同様にしてローラ基体を作製し、当該ローラ基体を用いて実施例1と同様にして現像ローラを得た。弾性層の物性、被膜の成膜条件並びに得られた現像ローラの評価結果を表1〜3に示す。被膜の厚みは1000nmであった。
【0088】
[実施例8]
導電性軸芯体を直径2.0mmの導電性軸芯体に変え、弾性層の厚みを5.0mmとした以外は実施例1と同様にしてローラ基体を作製し、当該ローラ基体を用いて実施例1と同様にして現像ローラを得た。弾性層の物性、被膜の成膜条件並びに得られた現像ローラの評価結果を表1〜3に示す。被膜の厚みは1000nmであった。
【0089】
[実施例9]
プロセスオイルの使用量を150質量部、導電剤の使用量を10質量部に変えた以外は実施例1と同様にしてローラ基体を作製し、当該ローラ基体を用いて実施例1と同様にして現像ローラを得た。弾性層の物性、被膜の成膜条件並びに得られた現像ローラの評価結果を表1〜3に示す。被膜の厚みは1000nmであった。
【0090】
[実施例10]
熱可塑性樹脂を動的架橋熱可塑性樹脂(TPVと表す)(サントプレーン8211−87(商品名)、エーイーエスジャパン社製)に変え、また、プロセスオイルの使用量を0質量部に変えた以外は実施例1と同様にしてローラ基体を作製した。そして、当該ローラ基体を用いて実施例1と同様にして現像ローラを得た。弾性層の物性、被膜の成膜条件並びに得られた現像ローラの評価結果を表1〜3に示す。被膜の厚みは1000nmであった。
【0091】
[実施例11]
真空チャンバー内の反応ガスの圧力を13.3Paに変えた以外は実施例1と同様にして、現像ローラを得た。弾性層の物性、被膜の成膜条件並びに得られた現像ローラの評価結果を表1〜3に示す。被膜の厚みは800nmであった。
【0092】
[実施例12]
真空チャンバー内の反応ガスの圧力を666.6Paに変えた以外は実施例1と同様にして現像ローラを得た。弾性層の物性、被膜の成膜条件並びに得られた現像ローラの評価結果を表1〜3に示す。被膜の厚みは1100nmであった。
【0093】
[実施例13]
ローラ基体の被処理面の周速を6.0mm/sとした以外は実施例1と同様にして現像ローラを得た。弾性層の物性、被膜の成膜条件並びに得られた現像ローラの評価結果を表1〜3に示す。被膜の厚みは1000nmであった。
【0094】
[実施例14]
ローラ基体の被処理面の周速を170.0mm/sとした以外は実施例1と同様にして現像ローラを得た。弾性層の物性、被膜の成膜条件並びに得られた現像ローラの評価結果を表1〜3に示す。被膜の厚みは1000nmであった。
【0095】
[実施例15]
出力を0.3W/cm2となるように調整した以外は実施例1と同様にして現像ローラを得た。弾性層の物性、被膜の成膜条件並びに得られた現像ローラの評価結果を表1〜3に示す。被膜の厚みは800nmであった。
【0096】
[実施例16]
出力を2.0w/cm2となるように調整した以外は実施例1と同様にして現像ローラを得た。弾性層の物性、被膜の成膜条件並びに得られた現像ローラの評価結果を表1〜3に示す。被膜の厚みは1100nmであった。
【0097】
[実施例17]
平板電極の間隔が52mmとなるように平行にチャンバー内に配置し、電極とローラ基体との距離を20mmに変えた以外は実施例1と同様にして現像ローラを得た。弾性層の物性、被膜の成膜条件並びに得られた現像ローラの評価結果を表1〜3に示す。被膜の厚みは1100nmであった。
【0098】
[実施例18]
平板電極の間隔が212mmとなるように平行にチャンバー内に配置し、電極とローラ基体との距離を100mmとした以外は実施例1と同様にして現像ローラを得た。弾性層の物性、被膜の成膜条件並びに得られた現像ローラの評価結果を表1〜3に示す。被膜の厚みは800nmであった。
【0099】
[比較例1]
反応ガスの圧力を6.66Paとした以外は実施例1と同様にして現像ローラを得た。弾性層の物性、被膜の成膜条件並びに得られた現像ローラの評価結果を表1〜3に示す。被膜の厚みは700nmであった。
【0100】
[比較例2]
反応ガスの圧力を733.3Paに変えた以外は実施例1と同様にして現像ローラを得た。弾性層の物性、被膜の成膜条件並びに得られた現像ローラの評価結果を表1〜3に示す。被膜の厚みは1500nmであった。
【0101】
[比較例3]
ローラ基体の被処理面の周速を5.0mm/sとした以外は実施例1と同様にして現像ローラを得た。弾性層の物性、被膜の成膜条件並びに得られた現像ローラの評価結果を表1〜3に示す。被膜の厚みは1000nmであった。
【0102】
[比較例4]
ローラ基体の被処理面の周速を180mm/sとした以外は実施例1と同様にして現像ローラを得た。弾性層の物性、被膜の成膜条件並びに得られた現像ローラの評価結果を表1〜3に示す。被膜の厚みは1000nmであった。
【0103】
[比較例5]
出力を0.2w/cm2とした以外は実施例1と同様にして現像ローラを得た。弾性層の物性、被膜の成膜条件並びに得られた現像ローラの評価結果を表1〜3に示す。被膜の厚みは600nmであった。
【0104】
[比較例6]
出力を2.5w/cm2とした以外は実施例1と同様にして現像ローラを得た。弾性層の物性、被膜の成膜条件並びに得られた現像ローラの評価結果を表1〜3に示す。被膜の厚みは1500nmであった。
【0105】
[比較例7]
平板電極の間隔が42mmとなるように平行にチャンバー内に配置し、電極とローラ基体との距離を15mmとした以外は実施例1と同様にして現像ローラを得た。弾性層の物性、被膜の成膜条件並びに得られた現像ローラの評価結果を表1〜3に示す。被膜の厚みは1300nmであった。
【0106】
[比較例8]
平板電極の間隔が232mmとなるように平行にチャンバー内に配置し、電極とローラ基体との距離を110mmとした以外は実施例1と同様にして現像ローラを得た。弾性層の物性、被膜の成膜条件並びに得られた現像ローラの評価結果を表1〜3に示す。被膜の厚みは600nmであった。
【0107】
【表1】

【0108】
【表2】

【0109】
【表3】

【0110】
次に、上記実施例1〜18に係る現像ローラを用いて以下の評価を行った。結果を表4に示す。
【0111】
[トナー劣化]
各実施例にて得られた現像ローラの各々を組み込んだ電子写真プロセスカートリッジ(商品名:CRG−311BLK;キヤノン株式会社製)を作製した。この電子写真プロセスカートリッジをカラーレーザープリンター(商品名:サテラLBP5400;キヤノン株式会社製)に搭載した。温度30℃、相対湿度80%の高温、高湿条件下で、A4サイズの用紙(商品名:キヤノンカラーレーザーコピアペーパー;坪量81.4g/m2、厚さ92μm、白色度92%)へ20ppmの印刷速度で1%印字物の画像を連続して3500枚印刷した。それに引き続いて全白画像を1枚印刷し、当該全白画像についてカブリの有無を目視で検査した。得られた結果に基づき、下記の基準でトナー劣化を評価した。
5:肉眼ではトナー劣化によるカブリを確認できなかった。
4:トナー劣化によるカブリが少なく画像上問題がないもの。
3:トナー劣化によるカブリが確認されるが実用可能なレベル。
2:トナー劣化によるカブリが確認され、実用上問題があるもの。
1:ひどいカブリが確認されトナー劣化が大きいもの。
【0112】
[セット性]
本実施例にて得られた現像ローラを電子写真プロセスカートリッジ(CRG−311BLK(商品名、キヤノン株式会社製))に組み込んだ。これを、過酷高温/高湿環境の恒温槽内(温度40℃、相対湿度95%)で30日放置した。この後に、温度20℃、相対湿度50%の環境へ移動し一日放置し、この電子写真プロセスカートリッジをカラーレーザープリンターLBP5400(商品名、キヤノン社製)本体に搭載しハーフトーン画像を印刷した。得られた画像を目視で検査し、圧接跡の画像への影響を下記の基準に基づき評価した。尚、ハーフトーン画像は濃度計(商品名:マクベスカラーチェッカーRD−1255;マクベス株式会社製)を用いた測定による濃度が0.7である画像を使用した。
5:圧接跡の画像不良無し。
4:圧接跡の画像不良が極めて薄く見受けられるが画像に影響なし。
3:圧接跡が薄く見られるが、実用上問題とならない程度の画像不良がある。
2:圧接跡が見られ、画像不良が見受けられ実用上問題がある。
1:圧接跡による画像に明らかな問題があり、実用できない。
【0113】
[画像評価]
本実施例にて得られた現像ローラを電子写真プロセスカートリッジ(CRG−311BLK(商品名、キヤノン株式会社製))に組み込んだ。これを、カラーレーザープリンターLBP5400(商品名、キヤノン社製)本体に搭載し、温度20℃、相対湿度50%の環境下で、非磁性一成分ブラックトナーで上記と同じハーフトーン画像を100枚出力した。得られた画像を目視にて検査し画像不良の有無を総合的に確認し実用性の判断を行い下記基準に基づき画像評価を行った。尚、ハーフトーン画像は濃度計マクベスカラーチェッカーRD−1255(商品名、マクベス株式会社製を用いた測定による濃度が0.7である画像を使用した。)
5:画像不良無し。
4:画像不良がほぼ見られない。
3:実用上問題とならない程度の画像不良がある。
2:画像不良が見受けられ実用上問題がある。
1:画像に明らかな問題があり、実用できない。
【0114】
[染み出し]
本実施例にて得られた現像ローラを、温度40℃、相対湿度95%の環境試験機内に1ヶ月放置した後に、目視にて現像ローラ表面の染み出しを検査した。さらに該現像ローラを電子写真プロセスカートリッジ(商品名:CRG−311BLK;キヤノン株式会社製)に組み込んだ。これを、カラーレーザープリンター(商品名:LBP5400;キヤノン社製)の本体に装着し、温度20℃、相対湿度50%の環境下にて上記と同じハーフトーン画像を出力し、画像を目視にて検査し画像への影響を確認し以下の基準にて染み出しを評価した。尚、ハーフトーン画像は濃度計マクベスカラーチェッカーRD−1255(商品名、マクベス株式会社製を用いた測定による濃度が0.7である画像を使用した。)
5:現像ローラ表面に染み出しが無く、画像への影響も無い。
4:現像ローラ表面に僅かに染み出しがみられるが画像上何ら問題はない。
3:現像ローラ表面に染み出しがみられ、画像上にわずかに画像損失が見られるが実用上問題ない。
2:現像ローラ表面に染み出しがみられ、画像上に画像損失がみられ、実用上問題がある。
1:染み出しが非常に多く、実用不可。
【0115】
【表4】

【0116】
これらの結果から、実施例1〜18に係るローラ部材の被膜が、現像ローラとしての実使用に十分に耐え得る性能を有していることが分った。
【図面の簡単な説明】
【0117】
【図1】本発明における高周波プラズマCVD装置の一例の概略構成を示す断面図である。
【図2】本発明により製造される現像ローラの一例の概略構成を示す模式図である。
【図3】本発明により製造される現像ローラを備えた電子写真画像形成装置の一例の概略構成を示す断面図である。
【図4】本発明により製造される現像ローラを備えた電子写真プロセスカートリッジの一例の概略構成を示す断面図である。
【図5】ローラ基体の弾性層から切り出した引張弾性率及び線膨張率の測定に用いる被験試料の形状を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0118】
1 原料ガス供給部
2 希ガス供給部
301、303 平板電極
4 高周波電源
5 減圧装置
6 回転装置
7 真空チャンバー
8 ローラ基体
9 導電性軸芯体
10 弾性層
11 被膜
12 感光ドラム
13 現像ローラ
14 トナー塗布部材
15 トナー
16 規制ブレード
17 現像装置
18 レーザー光
19 帯電部材
20 廃トナー容器
21 クリーニングブレード
22 定着装置
23 駆動ローラ
24 転写ローラ
25 バイアス電源
26 テンションローラ
27 転写搬送ベルト
28 従動ローラ
29 紙
30 給紙ローラ
31 吸着ローラ
32 引張弾性率測定用被験試料
33 線膨張率測定用被験試料

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性軸芯体と、その外周面に形成した厚さが0.5mm以上、5.0mm以下であり、引張弾性率が1MPa以上、100MPa以下の弾性層とを有するローラ基体の該弾性層の外周面にプラズマCVD法により被膜を形成する工程を有する電子写真用ローラ部材の製造方法であって、該工程は、
(1)チャンバーの内部に平行に配置した第1及び第2の平板電極の間に、前記弾性層の表面と前記各平板電極との距離がそれぞれ20mm以上、100mm以下となるように配置する工程と、
(2)前記チャンバー内に圧力が13.3Pa以上、666.6Pa以下となるように原料ガスを導入する工程と、
(3)前記原料ガスを導入したチャンバー内で前記ローラ基体を、被処理面の周速が6mm/s以上、170mm/s以下となるように回転させつつ、出力0.3W/cm2以上、2.0W/cm2以下の電力を前記第1の平板電極に印加して該チャンバー内にプラズマを発生させ、前記弾性層の表面に被膜を形成する工程と、を含むことを特徴とする電子写真用ローラ部材の製造方法。
【請求項2】
前記弾性層が、0.5×10-4/℃以上、5.0×10-4/℃以下の線膨張率を有する請求項1記載の電子写真用ローラ部材の製造方法。
【請求項3】
前記被膜が、SiOxを主成分とするものである請求項1または2記載の電子写真用ローラ部材の製造方法。
【請求項4】
前記弾性層が、熱可塑性樹脂組成物から形成されたものである請求項1乃至3のいずれか1項に記載の電子写真用ローラ部材の製造方法。
【請求項5】
前記熱可塑性樹脂組成物が、動的架橋熱可塑性樹脂組成物である請求項4記載の電子写真用ローラ部材の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−291349(P2008−291349A)
【公開日】平成20年12月4日(2008.12.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−102582(P2008−102582)
【出願日】平成20年4月10日(2008.4.10)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】