説明

電子機器

【課題】この発明は、基板との間の接続状態を長期間にわたって良好に維持できるフィルムセンサーを備えた電子機器を提供することを課題とする。
【解決手段】複数の接続箇所3で、フィルムセンサー2の周縁部にL字形のプリント回路基板4が接続される。フィルムセンサー2の周縁部には、隣接する2つの接続箇所3、3の中心に、それぞれ、長孔2aが形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えばフィルム状のタッチセンサーなどのフィルムセンサーをディスプレイに重ねた電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、絶縁フィルム側の電極対の配線の端部と絶縁基板側の配線の端部を導電性接着剤によって接続したタッチパネルについて開示されている。このタッチパネルは、絶縁フィルム側の配線の端部と絶縁基板側の配線の端部を電気的に接続する接続部に近接して、絶縁フィルムの角部近くにスリットを有する。
【0003】
この絶縁フィルムのスリットは、タッチパネルが加熱されて絶縁フィルムと絶縁基板との間の熱膨張率の違いに起因した応力が生じたとき、上述した接続部に応力が集中するのを防止するため、この応力による絶縁フィルムの変形を吸収するよう機能する。これにより、熱膨張に起因した応力による接続部の剥離を防止している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−234470号公報([0038]段落、図1、図2)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、絶縁フィルムは、その面に沿ったあらゆる方向に膨張するため、例えば他の基板との間の接続部と上述した配線同士の接続部との間でも応力が生じる。つまり、このような応力は、絶縁フィルムの固定箇所となる2つの接続部にそれぞれ作用し、上述した剥離の問題が生じる。特に、タッチパネルが大きくなると、絶縁フィルムの基板に対する相対的な変形量が大きくなり、基板との間の接続部における剥離の問題も顕著になる。
【0006】
この発明の目的は、回路基板との間の接続状態を長期間にわたって良好に維持できるフィルムセンサーを備えた電子機器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、実施形態の電子機器は、ディスプレイと、前記ディスプレイに重ねられたフィルムセンサーと、を備え、前記フィルムセンサーが、隣り合う1組の長辺および短辺を含み電子部品が実装された回路基板に重ねられるとともに、前記長辺と前記短辺とが交わる角部の位置とこの角部から離れた位置とで其々接続され、これらの接続箇所の間に孔部が設けられている。
【0008】
上記発明によると、フィルムセンサーと回路基板の複数の接続箇所間でフィルムセンサーに孔部を形成したため、フィルムセンサーと回路基板が異なる熱膨張率で熱膨張して、変形量の差に基づく応力が発生した場合であっても、この応力を孔部が吸収する。これにより、応力集中による接続箇所の剥離を防止できる。
【発明の効果】
【0009】
この発明の電子機器は、上記のような構成および作用を有しているので、フィルムセンサーと回路基板との間の接続状態を長期間にわたって良好に維持できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】図1は、この発明の実施の形態に係る電子機器の一例としてのPDAを示す外観図である。
【図2】図2は、図1のPDAの構成ブロック図である。
【図3】図3は、図2の表示制御アプリケーションを示すブロック図である。
【図4】図4は、図1のPDAのディスプレイを構成するフィルムセンサーの組立体を示す分解斜視図である。
【図5】図5は、図4のセンサー組立体のフィルムセンサーを示す概略図である。
【図6】図6は、図4のセンサー組立体のプリント回路基板を示す概略図である。
【図7】図7は、図5のフィルムセンサーの周縁部に図6のプリント回路基板を貼り合せた構造を裏面側から見た概略図である。
【図8】図8は、図7の線VIII-VIIIで切断した断面図である。
【図9】図9は、図5のフィルムセンサーの周縁部に形成した長孔の第1の変形例を示す部分拡大図である。
【図10】図10は、図5のフィルムセンサーの周縁部に形成した長孔を切欠きに変えた第2の変形例を示す部分拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照しながらこの発明の実施の形態について詳細に説明する。
図1には、この発明の実施の形態に係る電子機器の一例として、PDA10(Personal Digital Assistants)の外観図を示してある。
【0012】
図1に示すように、PDA10は、フィルム状のタッチセンサー(フィルムセンサー)を重ねたディスプレイ15を有する。このディスプレイ15は、ユーザーに対して各種操作画面を表示するとともに、指12やタッチペン(図示せず)等で表面をタッチすることで、例えば、表示した画面上にある項目をユーザーに選択させるためのユーザーインターフェースとして機能する。ディスプレイ15の表面に設けられたフィルムセンサーについては後に詳述する。
【0013】
図2には、上記PDA10の構成ブロック図を示してある。
図2に示すように、PDA10は、PDA10の各デバイスを総合的に制御するCPU14、後述するフィルムセンサーを備えたディスプレイ15、データを一時的に記憶するフラッシュメモリ等のメモリ16、インターネット等に接続するための接続インターフェースとして機能する通信部17、およびメモリ16より大容量のHDDやフラッシュメモリなどの記憶媒体18を有する。
【0014】
CPU14は、記憶媒体18に記憶されているOS(オペレーティングシステム)や表示制御アプリケーション100などの各種アプリケーションをメモリ16にロードして、ディスプレイ15のフィルムセンサーを介して入力されるコマンドに従って、PDA10の動作を制御する。
【0015】
表示制御アプリケーション100は、図3に示すように、検出制御部101、表示選択部102、実行部103、および記憶部104を有する。検出制御部101は、後述するフィルムセンサーに接続して、ディスプレイ15の画面に表示されている項目にユーザーの指12やタッチペンなどが接触したことを検出する。表示選択部102は、例えば、ディスプレイ15を介してテキストデータが選択された場合に、選択されたテキストデータをハイライト(強調)表示する。実行部103は、選択されたテキストデータのコピー、削除、貼り付け、切り取り、検索などの処理を行う。選択されたテキストデータを検索する場合、内蔵している辞書データや通信部17を介したインターネット検索を実行する。記憶部104は、ディスプレイ15を介して表示する表示メニューや項目データ(コピー、削除、貼り付け、切り取り、検索等)を記憶する。
【0016】
図4には、上記ディスプレイ15に重ねられたセンサー組立体20の分解斜視図を示してある。センサー組立体20は、ディスプレイ15の表面に配置されるフィルムセンサー2、フィルムセンサー2の裏面側に貼り付けられるプリント回路基板4、スペーサー6、および固定枠8を有する。
【0017】
フィルムセンサー2は、矩形のビニールフィルムにマトリックス状のXYパターン(図示せず)を形成し、各パターンの端部をフィルム端辺まで引き出した構造を有する。フィルムセンサー2として、例えば、ピエゾフィルムセンサーが知られている。フィルムセンサー2のフィルム材料として、例えば、ポリエチレン系のフィルム材料が使用される。
【0018】
プリント回路基板4は、上述したフィルムセンサー2の隣り合う1組の長辺および短辺に沿って配置されるL字形に形成され、フィルムセンサー2のXYパターンに対向する面に図示しない回路パターンを有し、他方の面に図示しないICチップを実装している。プリント回路基板4は、ガラスエポキシにより形成されている。
【0019】
プリント回路基板4とフィルムセンサー2を貼り合せる場合、プリント回路基板4の回路パターンを導電性接着剤を介してフィルムセンサー2のXYパターンに接続するように、プリント回路基板4をフィルムセンサー2の端辺に貼り合せる。これにより、プリント回路基板4に実装されたICチップとXYパターンが電気的に接続される。
【0020】
スペーサー6は、プリント回路基板4が対向されないフィルムセンサー2の残りの2辺に沿って配置されるL字形に形成されている。また、固定枠8は、プリント回路基板4およびスペーサー6の裏面を覆う矩形枠状に形成されている。
【0021】
つまり、センサー組立体20は、フィルムセンサー2の裏面側周縁部にプリント回路基板4とスペーサー6を挟んで固定枠8を貼り合せた構造を有する。このとき、スペーサー6は、フィルムセンサー2の2辺に対向せしめてプリント回路基板4を貼り合せた状態で両者の間に形成される段差を無くすために設けられている。
【0022】
上記構造のPDA10は、図1に示すように矩形の筐体内に全てのデバイスを収容配置している。このため、PDA10に電源投入して使用することにより、筐体内の温度は、経時的に昇温される。特に、この場合の主な熱源として、LCD(Liquid Crystal Display)などのディスプレイ15のバックライトなどが考えられる。
【0023】
このように、PDA10が経時的に加熱されると、センサー組立体20のフィルムセンサー2やプリント回路基板4も加熱され、それぞれ固有の熱膨張係数に応じた変形量で熱膨張する。一方で、フィルムセンサー2とプリント回路基板4は、上述したように、導電性接着剤を介して複数個所で電気的に接続されている。このため、これらの接続箇所に、各部材間の熱膨張率の差に起因した応力が集中して、接続箇所が剥離してしまう不具合を生じる場合がある。
【0024】
より具体的には、図6に示すように、本実施の形態のL字形のプリント回路基板4は、その長手方向に沿って離間した複数個所で、導電性接着剤3を介して、フィルムセンサー2と電気的に接続されている。以下、導電性接着剤3による接続箇所に符号3を付して説明する。これら複数の接続箇所3は、プリント回路基板4の回路パターンによって予め決まっている。
【0025】
なお、本実施の形態のフィルムセンサー2はビニールフィルムによって形成されており、本実施の形態のプリント回路基板4はガラスエポキシにより形成されている。つまり、複数の接続箇所3で接続されたフィルムセンサー2とプリント回路基板4は、熱膨張率の異なる材料によって形成されている。
【0026】
このため、2つの部材が同じ温度まで同時に加熱されると、両者間の熱膨張率の違いによって、それぞれの部材の変形量に差を生じる。本実施の形態の材料の組み合わせ(ビニールとガラスエポキシとの組み合わせ)では、昇温によって両者が同じ条件で熱膨張した場合、フィルムセンサー2の方がプリント回路基板4より大きな割合で熱膨張する。
【0027】
すなわち、この場合、プリント回路基板4に沿って隣接して設けられた任意の2つの接続箇所3、3間で、プリント回路基板4よりフィルムセンサー2の方がより多く膨張するため、2つの接続箇所3に応力が集中する。そして、PDA10のON/OFFを繰り返して熱膨張および熱収縮を繰り返すと、上述した応力集中によって接続箇所3に剪断力が作用して、最悪の場合、接続箇所3が剥離してしまう。
【0028】
このような不具合を防止するため、本実施の形態では、フィルムセンサー2の周縁部に、上述した応力を逃がすための複数の長孔2a(図5)を形成した。これら複数の長孔2aは、図7に示すように、プリント回路基板4をフィルムセンサー2の周縁部に貼り付けたときに、それぞれ、互いに隣接する接続箇所3の概ね中心位置に配置されるように位置決めされて形成されている。
【0029】
また、各長孔2aの長さ(長孔の並び方向と交差する方向に沿った長さ)は、両側の2つの接続箇所3間でフィルムセンサー2に引っ張り力或いは圧縮力が作用したとき、フィルムセンサー2の変形を十分に吸収できる長さに設計されている。具体的には、各長孔2aの長さは、少なくとも接続箇所3の幅を超える長さにされている。
【0030】
なお、各長孔2aの形状は、他の如何なる形状であっても良いが、フィルムセンサー2が応力集中によって変形した際に、孔周縁部に切れなどを生じないよう周縁部は湾曲されていることが望ましい。
【0031】
ここで、図8を参照して、フィルムセンサー2の長孔2aの機能について、より具体的に説明する。
図8には、ガラスエポキシによって形成されたL字形のプリント回路基板4を、複数の接続箇所で導電性接着剤3を介して、ビニールフィルムによって形成されたフィルムセンサー2の周縁部に接続した状態の断面図を示してある。
【0032】
このように構成されたセンサー組立体20が加熱されると、熱膨張率の比較的小さいプリント回路基板4と比較して、熱膨張率の比較的大きいフィルムセンサー2の方がより大きく膨張して変形する。このとき、隣接する2つの接続箇所3の間における2つの部材2、4の熱膨張の状態に着目すると、2つの接続箇所3間でフィルムセンサー2に図中矢印a方向の圧縮力が作用する。
【0033】
本実施の形態のようにフィルムセンサー2に長孔2aを形成しない場合、フィルムセンサー2に作用した上述した圧縮力が応力として2つの接続箇所3に作用する。これに対し、本実施の形態のように、2つの接続箇所3の中心に長孔2aを形成すると、この長孔2aが圧縮力を吸収するように変形し、長孔2aの並び方向に沿った幅が狭くなる。よって、本実施の形態では、2つの接続箇所3に応力が作用することはない。
【0034】
逆に、この状態からセンサー組立体20が冷却されると、フィルムセンサー2およびプリント回路基板4が共に収縮して変形するが、比較的収縮率の大きいフィルムセンサー2が縮んでも、長孔2aの幅を広げることで、2つの接続箇所3に作用する応力を無くすことができる。
【0035】
以上のように、本実施の形態によると、プリント回路基板4を接続するフィルムセンサー2の周縁部に上述した複数の長孔2aを形成することにより、熱膨張に起因した接続箇所3に対する応力集中を防止でき、フィルムセンサー2とプリント回路基板4との間の接続状態を長期間にわたって良好に維持することができる。特に、本実施の形態のように、フィルムセンサー2の周縁部に複数の長孔2aを形成するだけの簡単な構成の変更によって、プリント回路基板4との間の接続状態を改善することができ、追加コストを抑えることができる。
【0036】
なお、この発明は、上述した実施の形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上述した実施の形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより種々の発明を形成できる。例えば、上述した実施の形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除しても良い。
【0037】
図9には、上述した実施の形態の第1の変形例を示してある。
この変形例によると、フィルムセンサー2の周縁部に沿って設けられた任意の2つの接続箇所3、3の間に2つの長孔2aが形成されている。隣接する2つの接続箇所3、3が離れている場合には、このように、接続箇所3の間に2つ或いはそれ以上の長孔2aを形成しても良い。
【0038】
図10には、第2の変形例として、長孔2aの代りに切欠き2bを形成した例を示してある。このように、フィルムセンサー2に形成する孔は、必ずしも全周が閉じている必要はなく、熱膨張に起因した応力集中を防止することができれば良い。
【0039】
また、上述した実施の形態では、隣接する全ての組の2つの接続箇所3、3の間それぞれに長孔2a(或いは切欠き2b)を形成した場合について説明したが、これに限らず、2つの接続箇所3、3が近接している場合などには、それら接続箇所3、3間に長孔2aを形成しなくても良い。
【産業上の利用可能性】
【0040】
この発明は、PDAやパーソナルコンピューターなどの電子機器に適用可能であることに加え、例えば、金融機関の現金自動支払機やゲーム機のタッチパネルに適用することができる。特に、比較的大型のデジタイザーなどのフィルムタイプのセンサーに本発明を適用することが有効である。
【符号の説明】
【0041】
2…フィルムセンサー、2a…長孔、2b…切欠き、3…導電性接着剤、接続箇所、4…プリント回路基板、6…スペーサー、8…固定枠、10…PDA、15…ディスプレイ、20…センサー組立体。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ディスプレイと、
前記ディスプレイに重ねられたフィルムセンサーと、を備え、
前記フィルムセンサーが、隣り合う1組の長辺および短辺を含み電子部品が実装された回路基板に重ねられるとともに、前記長辺と前記短辺とが交わる角部の位置とこの角部から離れた位置とで其々接続され、これらの接続箇所の間に孔部が設けられた電子機器。
【請求項2】
上記孔部は、上記2つの接続箇所の中心に設けられた請求項1に記載の電子機器。
【請求項3】
上記孔部は、上記接続箇所の幅を超える長さの長孔である請求項1に記載の電子機器。
【請求項4】
上記孔部は、上記2つの接続箇所の間に複数個設けられた請求項1に記載の電子機器。
【請求項5】
上記フィルムセンサーと回路基板は、導電性接着剤によって電気的に接続されている請求項1に記載の電子機器。
【請求項6】
ディスプレイと、
前記ディスプレイに重ねられたフィルムセンサーと、
電子部品が実装され、前記フィルムセンサーの周縁部に重ねられるとともに、少なくとも角部と辺部とで接続された回路基板と、
前記角部の接続箇所と前記辺部の接続箇所との間でこれら接続箇所の並び方向と交差する方向に延びて上記フィルムセンサーの周縁部に形成された長孔と、
を有する電子機器。
【請求項7】
上記長孔は、上記2つの接続箇所の中心に設けられた請求項6に記載の電子機器。
【請求項8】
上記長孔は、上記接続箇所の幅を超える長さを有する請求項6に記載の電子機器。
【請求項9】
上記長孔は、上記2つの接続箇所の間に複数個設けられた請求項6に記載の電子機器。
【請求項10】
上記フィルムセンサーと回路基板は、導電性接着剤によって電気的に接続されている請求項6に記載の電子機器。
【請求項11】
ディスプレイと、
電子部品が実装された回路基板と、
前記ディスプレイに重ねられ、前記回路基板の辺部と角部とで接続され、該辺部と該角部との間に切り欠き部が設けられたフィルムセンサーと、
を有する電子機器。
【請求項12】
上記切り欠き部は、孔部である請求項11に記載の電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−248902(P2011−248902A)
【公開日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−125258(P2011−125258)
【出願日】平成23年6月3日(2011.6.3)
【分割の表示】特願2011−25003(P2011−25003)の分割
【原出願日】平成21年12月14日(2009.12.14)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】