説明

電子素子

【課題】簡便な方法で製造することができる電子素子を提供する。
【解決手段】第1の電極及び第2の電極を有し、該第1の電極と該第2の電極との間に有機材料を含む有機層を有し、該有機材料が該第1の電極又は該第2の電極と直接又は他の層を介して電子の授受を行う電子素子において、該第1の電極が金属又は金属の合金を含み、該金属又は金属の合金の融点が100℃以下であることを特徴とする電子素子。金属の合金がガリウムを含むことが好ましい。電子素子としては、有機エレクトロルミネッセンス素子、光電変換素子等が挙げられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属又は金属の合金を電極とする電子素子に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、地球温暖化防止のため、大気中に放出されるCO2の削減が求められている。自然エネルギーの利用以外に、電子素子の製造に必要なエネルギーを小さくすることも大いに関心が持たれている。有機材料を用いた有機エレクトロルミネッセンス素子、有機薄膜太陽電池などの電子素子は、構成する部品点数が少ないことや、製造に高温条件を用いる工程を必要としないなど、従来の液晶ディスプレイやシリコン等の無機半導体をもとにした電子素子の代替として注目されている。
【0003】
有機材料を用いた電子素子の一種である有機太陽電池の製造において、有機材料を含む層と積層し、該層中の有機材料に電子を授受する金属電極(陰極又は陽極)を製造する方法としては、真空蒸着法やスパッター法などの真空中で製造する方法が知られている(非特許文献1)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】Synthtic Met.,(2008),Vol.158,908−911頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記の電子素子の製法方法は、真空装置を用いるため、製造工程が複雑であり、製造に用いるエネルギーが大きいという課題がある。本発明の目的は、製造に用いるエネルギーが小さく簡便な製造方法で製造しうる電子素子を提案することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
即ち、本発明は第一に、第1の電極及び第2の電極を有し、該第1の電極と該第2の電極との間に有機材料を含む有機層を有し、該有機材料が該第1の電極又は該第2の電極と直接又は他の層を介して電子の授受を行う電子素子において、該第1の電極が金属又は金属の合金を含み、該金属又は金属の合金の融点が100℃以下であることを特徴とする電子素子を提供する。
【0007】
本発明は第二に、有機エレクトロルミネッセンス素子であることを特徴とする前記電子素子を提供する。
【0008】
本発明は第三に、前記有機エレクトロルミネッセンス素子を含むディスプレイを提供する。
【0009】
本発明は第四に、前記有機エレクトロルミネッセンス素子を含む照明を提供する。
【0010】
本発明は第五に、光電変換素子であることを特徴とする前記電子素子を提供する。
【0011】
本発明は第六に、前記光電変換素子を含む太陽電池モジュールを提供する。
【0012】
本発明は第七に、前記光電変換素子を含むイメージセンサーを提供する。
【0013】
本発明は第八に、第1の基板、第1の電極、第2の電極及び第2の基板を有し、該第1の電極と該第2の電極との間に有機材料を含む有機層を有し、該有機材料が該第1の電極又は該第2の電極と直接又は他の層を介して電子の授受を行う電子素子の製造方法であって、金属又は金属の合金を含む溶液を塗布法により該第1の基板又は有機層上に塗布して該第1の電極を形成する工程を有し、該金属又は金属の合金の融点が100℃以下であることを特徴とする電子素子の製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0014】
本発明の電子素子は、簡便な方法で製造することができるため、有用である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0016】
本発明は、金属又は金属の合金を第1の電極に用いた電子素子であって、該金属又は金属の合金の融点が100℃以下である電子素子に関する。
【0017】
本発明に用いられる金属又は金属の合金は、融点が100℃以下であればよく、Ga又はGaの合金、Biの合金等が例示される。Gaと合金を形成する金属としては、In、Cd、Sn、Alなどが挙げられ、特にGaとInとの合金が好適に用いることができる。GaとInとの合金の組成は、該合金中の全原子の数の合計を100とした場合、インジウム原子の数が80以下であることが好ましく、より好ましくは、24.5から80である。GaとInとの合金には、さらに、GaとInとの合金の融点に大きな影響を与えない第3成分を合金に含ませることができ、第3成分を含む合金は25℃で固体であっても液体であってもよい。該第3成分としては、Snなどが挙げられる。
Biの合金としては、Biを56.8%、Snを21.6%、Pbを21.6%含むニュートン合金(融点95℃)、Biを50%、Snを22%、Pbを28%含むローズ合金(融点100℃)、Biを50.0%、Snを13.3%、Pbを26.7%、Cdを10.0%含むウッド合金(融点70℃)等が挙げられる。
【0018】
第1の電極が有機材料を含む有機層と電子の授受を行うためには、金属又は金属の合金の仕事関数が、2eVから4eVの範囲であることが好ましい。合金の仕事関数を調整するために、合金には、微量の金属成分として、アルカリ金属、アルカリ土類金属等を含んでいてもよい。合金中に含まれる微量の金属成分の量は、合金中の全原子の数の合計を100とした場合、該微量の金属成分の原子数が10以下であることが好ましい。さらに好ましくは1以上5以下である。
【0019】
本発明に用いられる金属又は金属の合金の製膜し、第1の電極を製造する方法は、印刷法が挙げられ、その具体例としては、スリットコート法、キャピラリーコート法、グラビアコート法、マイクログラビアコート法、バーコート法、ナイフコート法、ノズルコート法、インクジェットコート法、スピンコート法、フレキソ等の凸版印刷法、グラビア等の凹版印刷法、平版印刷法、スクリーン印刷等の孔版印刷法、オフセット法等が例示される。製膜方法の中でも、好ましくはスリットコート法、キャピラリーコート法、平版印刷法、孔版印刷法である。
融点が100℃以下の金属又は金属の合金を用いることで、低エネルギーで該金属又は金属の合金を溶解し、該金属又は金属の合金を含む溶液を製造できる。そのため、電子素子を製造するためのエネルギーが小さくなる。
【0020】
本発明の電子素子は、第1の電極及び第2の電極を有し、該第1の電極と該第2の電極との間に有機材料を含む有機層を有する。該電子素子の製造において、基板上に、金属又は金属の合金を製膜して形成した第1の電極、有機材料を含む有機層、第2の電極等を順次積層し、電子素子を製造してもよく、有機材料を含む有機層を有する基板とは別の基板上に金属又は金属の合金を製膜して第1の電極を形成したのち、2つの基板を貼合せて電子素子を製造してもよい。基板としては、ガラス、金属、プラスチック等の基板が使用できる。
【0021】
本発明の電子素子に含まれる有機層は、第1の電極又は第2の電極と直接又は他の層を介して電子の授受を行う有機材料を含む。ここで電子の授受を行う有機材料とは、電気抵抗率ρが1000以下である有機材料を意味する。電気抵抗率は、下式により求めることができる。
R=ρl/S(R:電気抵抗、S:断面積、l:長さ)
上式中、電気抵抗は、印加する電圧と流れる電流から求めることができる。
【0022】
本発明の電子素子としては、有機エレクトロルミネッセンス素子(有機EL素子)、光電変換素子、有機トランジスタ素子等が挙げられる。
【0023】
本発明の電子素子が有機エレクトロルミネッセンス素子である場合、有機層に用いる有機材料には、低分子材料や高分子材料が使用でき、該低分子材料又は高分子材料として、公知の正孔注入材料、正孔輸送材料、発光材料、電子輸送材料、電子注入材料等が使用できる。発光材料には、ホスト材料、発光性ゲスト材料も含まれ、発光性ゲスト材料には、一重項から発光する材料とともに、三重項から発光する材料も使用できる。発光層にゲスト材料が含まれる場合、ゲスト材料とともにホスト材料も発光層に含まれる。また、ゲスト材料及びホスト材料とともに、その他の材料を組み合わせて発光層に用いてもよい。
【0024】
発光材料が低分子材料である場合、その具体例としては、ナフタレン誘導体、アントラセン若しくはその誘導体、ペリレン若しくはその誘導体、ポリメチン系、キサンテン系、クマリン系、シアニン系などの色素類、8−ヒドロキシキノリン若しくはその誘導体の金属錯体、芳香族アミン若しくはその誘導体、テトラフェニルシクロペンタジエン若しくはその誘導体、又はテトラフェニルブタジエン若しくはその誘導体などが挙げられる。
具体的には、例えば特開昭57−51781号、同59−194393号公報に記載されている材料等、公知の材料が使用可能である。
【0025】
発光材料が高分子材料である場合、その具体例としては、ポリフェニレン、ポリフルオレン、ポリチオフェン等が挙げられる。
【0026】
三重項から発光する材料である三重項発光錯体としては、例えば、イリジウムを中心金属とするIr(ppy)3、Btp2Ir(acac)、白金を中心金属とするPtOEP、ユーロピウムを中心金属とするEu(TTA)3phen等が挙げられる。
【0027】

【0028】

【0029】

【0030】

【0031】
三重項発光錯体は具体的には、例えばNature,(1998),395,151、Appl.Phys.Lett.(1999),75(1),4、Proc.SPIE−Int.Soc.Opt.Eng.(2001),4105(Organic Light−Emitting Materials and Devices IV),119、J.Am.Chem.Soc.,(2001),123,4304、Appl.Phys.Lett.,(1997),71(18),2596、Adv.Mater.,(1999),11(10),852、Jpn.J.Appl.Phys.,34,1883(1995)などに記載されている。
【0032】
有機EL素子において、有機材料を含む発光層の成膜方法としては、有機材料である発光材料を含む溶液を基体の上又は上方に塗布する方法、真空蒸着法、転写法などを用いることができる。
発光材料を含む溶液を基板の上又は基板の上方に塗布する方法としては、スピンコート法、ディップコート法、ノズルコート法、インクジェット法、フレキソ印刷法、グラビア印刷法、スリットコート法などの印刷法を適宜用いることができる。また、発光材料が昇華性の低分子化合物の場合は、真空蒸着法を用いることができる。さらには、レーザーによる転写や熱転写により、基板上の所望のところのみに発光層を形成する方法も用いることができる。
成膜方法の中では、印刷法が好ましい。
【0033】
有機EL素子において、第1の電極が陽極で第2の電極が陰極であってもよく、第1の電極が陰極で第2の電極が陽極であってもよい。陰極、陽極、発光層以外の層としては、陰極と発光の間に設ける層、陽極と発光層の間に設ける層が挙げられる。
陰極と発光層の間に設ける層としては、電子注入層、電子輸送層、正孔ブロック層等が挙げられる。
例えば陰極と発光層の間に一層のみ設けた場合は電子注入層であり、陰極と発光層の間に二層以上設けた場合は陰極に接している層を電子注入層とし、それ以外の層は電子輸送層と称する。
【0034】
電子注入層は、陰極からの電子注入効率を改善する機能を有する層であり、電子輸送層は、電子注入層又は陰極により近い電子輸送層からの電子注入を改善する機能を有する層である。また、電子注入層又は電子輸送層が正孔の輸送を堰き止める機能を有する場合には、これらの層を正孔ブロック層と称することがある。正孔の輸送を堰き止める機能を有することは、例えば、正孔電流のみを流す素子を作製し、その電流値の減少で堰き止める効果を確認することが可能である。
【0035】
陽極と発光層の間に設ける層としては、正孔注入層、正孔輸送層、電子ブロック層等があげられる。
陽極と発光層の間に一層のみ設けた場合は正孔注入層であり、陽極と発光層の間に二層以上設けた場合は陽極に接している層を正孔注入層とし、それ以外の層は正孔輸送層と称する。正孔注入層は、陽極からの正孔注入効率を改善する機能を有する層であり、正孔輸送層とは、正孔注入層又は陽極により近い正孔輸送層からの正孔注入を改善する機能を有する層である。また、正孔注入層又は正孔輸送層が電子の輸送を堰き止める機能を有する場合には、これらの層を電子ブロック層と称することがある。
電子の輸送を堰き止める機能を有することは、例えば、電子電流のみを流す素子を作製し、その電流値の減少で堰き止める効果を確認することが可能である。
【0036】
また、本発明のディスプレイの発光部に用いる有機EL素子としては、陰極と発光層との間に、電子注入層を設けた有機EL素子、陽極と発光層との間に、正孔注入層を設けた有機EL素子、陰極と発光層との間に、電子注入層を設け、かつ陽極と発光層との間に、正孔注入層を設けた有機EL素子等が挙げられる。
例えば、具体的には、以下のa)〜d)の構造が例示される。
a)陽極/発光層/陰極
b)陽極/正孔注入層/発光層/陰極
c)陽極/発光層/電子注入層/陰極
d)陽極/正孔注入層/発光層/電子注入層/陰極
(ここで、/は各層が隣接して積層されていることを示す。以下同じ。)
【0037】
さらに電極との密着性向上や電極からの電荷注入の改善のために、電極に隣接して膜厚2nm以下の絶縁層を設けてもよく、また、界面の密着性向上や混合の防止等のために電荷輸送層や発光層の界面に薄いバッファー層を挿入してもよい。
積層する層の順番や数、及び各層の厚さについては、発光効率や素子寿命を勘案して適宜用いることができる。
【0038】
本発明において、電荷輸送層(電子輸送層、正孔輸送層)を設けた有機EL素子としては、陰極と発光層との間に電荷輸送層を設けた有機EL素子、陽極と発光層との間電荷輸送層を設けた有機EL素子が挙げられる。
例えば、具体的には、以下のe)〜i)の構造が挙げられる。
e)陽極/正孔注入層/正孔輸送層/発光層/陰極
f)陽極/正孔注入層/正孔輸送層/発光層/電子注入層/陰極
g)陽極/発光層/電子輸送層/電子注入層/陰極
h)陽極/正孔注入層/発光層/電子輸送層/電子注入層/陰極
i)陽極/正孔注入層/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/電子注入層/陰極
【0039】
有機EL素子中、発光層、正孔輸送層、電子輸送層は、それぞれ独立に2層以上用いてもよい。
【0040】
第2の電極としては、透明電極、または、半透明電極であることが望ましく、電気伝導度の高い金属酸化物、金属硫化物や金属の薄膜を用いることができる。透過率が高い材料が好適に利用でき、用いる有機層により適宜、選択して用いる。具体的には、酸化インジウム、酸化亜鉛、酸化スズ、およびそれらの複合体であるインジウム・スズ・オキサイド(ITO)、インジウム・亜鉛・オキサイド等からなる導電性材料を用いて作成された膜(NESAなど)や、金、白金、銀、銅等が用いられ、ITO、インジウム・亜鉛・オキサイド、酸化スズが好ましい。作製方法としては、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、メッキ法等が挙げられる。また、第2の電極が陽極である場合、該陽極として、ポリアニリンもしくはその誘導体、ポリチオフェンもしくはその誘導体などの有機の透明導電膜を用いてもよい。
【0041】
第2の電極の膜厚は、光の透過性と電気伝導度とを考慮して、適宜選択することができるが、例えば10nm〜10μmであり、好ましくは20nm〜1μmであり、さらに好ましくは50nm〜500nmである。
【0042】
本発明の有機エレクトロルミネッセス素子に用いる基板は、電極を形成し、有機物の層を形成する際に変化しないものであればよく、例えばガラス、プラスチック、高分子フィルム、シリコン基板、これらを積層したものなどが用いられる。
本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子は、ディスプレイ、照明等に用いることができる。
【0043】
本発明の電子素子に含まれる有機層には、高いキャリア(電子又はホール)輸送性を発揮し得る有機層も好適に用いることができ、該有機層は電極から注入された電子やホール、或いは、光吸収によって発生した電荷を輸送することができる。これらの特性を活かして有機薄膜トランジスタ、有機太陽電池、光センサ等の種々の有機薄膜素子に適用することができる。以下、これらの有機薄膜素子について個々に説明する。
【0044】
本発明の電子素子は、光電変換素子として好適に用いることができる。光電変換素子において、少なくとも一方が透明又は半透明である一対の電極間に、1層以上の有機層を有する。
本発明の光電変換素子の好ましい形態としては、少なくとも一方が透明又は半透明である一対の電極と、p型の有機半導体とn型の有機半導体との有機組成物から形成される有機層を有する。該有機層は、光電変換素子の活性層として作用する。この形態の光電変換素子の動作機構を説明する。透明又は半透明の電極から入射した光エネルギーが電子受容性化合物(n型の有機半導体)及び/又は電子供与性化合物(p型の有機半導体)で吸収され、電子とホールが結合した励起子を生成する。生成した励起子が移動して、電子受容性化合物と電子供与性化合物が隣接しているヘテロ接合界面に達すると、界面でのそれぞれのHOMOエネルギー及びLUMOエネルギーの違いにより電子とホールが分離し、独立に動くことができる電荷(電子とホール)が発生する。発生した電荷は、それぞれ電極へ移動することにより外部へ電気エネルギー(電流)として取り出すことができる。
本発明の光電変換素子は、通常、基板上に形成される。この基板は、電極を形成し、有機物の層を形成する際に変化しないものであればよい。基板の材料としては、例えば、ガラス、プラスチック、高分子フィルム、シリコン等が挙げられる。不透明な基板の場合には、反対の電極(即ち、基板から遠い方の電極)が透明又は半透明であることが好ましい。
【0045】
光電変換素子に用いられる透明又は半透明の電極は、第2の電極であることが好ましい。第2の電極が透明又は半透明の電極である場合、該電極の材料としては、導電性の金属酸化物膜、半透明の金属薄膜等が挙げられる。具体的には、酸化インジウム、酸化亜鉛、酸化スズ、及びそれらの複合体であるインジウム・スズ・オキサイド(ITO)、インジウム・亜鉛・オキサイド等からなる導電性材料を用いて作製された膜(NESA等)や、金、白金、銀、銅等が用いられ、ITO、インジウム・亜鉛・オキサイド、酸化スズが好ましい。電極の作製方法としては、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、メッキ法等が挙げられる。また、該電極の材料として、ポリアニリン及びその誘導体、ポリチオフェン及びその誘導体等の有機の透明導電膜を用いてもよい。また、光電変換効率を向上させるための手段として前記有機層以外の付加的な中間層を使用してもよい。中間層として用いられる材料としては、フッ化リチウム等のアルカリ金属、アルカリ土類金属のハロゲン化物、酸化チタン等の酸化物、PEDOT(ポリ−3,4−エチレンジオキシチオフェン)等を用いることができる。また、酸化チタン等の無機半導体は、微粒子の状態で用いてもよい。
【0046】
本発明の電子素子が光電変換素子である場合、活性層に用いる有機材料は、公知の光電変換能を有する低分子材料や高分子材料が使用できる。活性層の形成方法としては、光電変換能を有する低分子材料や高分子材料を含む層と、電子受容性化合物及び/又は電子供与性化合物を含む層とを積層して活性層を形成する方法や光電変換能を有する低分子材料若しくは高分子材料と電子受容性化合物及び/又は電子供与性化合物とを混合して活性層を形成する方法がある。
【0047】
このような電子受容性化合物として、具体的には、炭素材料、酸化チタン等の金属酸化物、オキサジアゾール誘導体、アントラキノジメタン及びその誘導体、ベンゾキノン及びその誘導体、ナフトキノン及びその誘導体、アントラキノン及びその誘導体、テトラシアノアンスラキノジメタン及びその誘導体、フルオレノン誘導体、ジフェニルジシアノエチレン及びその誘導体、ジフェノキノン誘導体、8−ヒドロキシキノリン及びその誘導体の金属錯体、ポリキノリン及びその誘導体、ポリキノキサリン及びその誘導体、ポリフルオレン及びその誘導体、2、9−ジメチル−4、7−ジフェニル−1、10−フェナントロリン(バソクプロイン)等のフェナントレン誘導体、フラーレン、フラーレン誘導体等が挙げられ、好ましくは、酸化チタン、カーボンナノチューブ、フラーレン、フラーレン誘導体であり、特に好ましくはフラーレン、フラーレン誘導体である。フラーレン及びフラーレン誘導体としてはC60、C70、C84及びその誘導体が挙げられる。フラーレン誘導体の具体的構造としては、以下のような誘導体が挙げられる。

【0048】
電子供与性化合物としては、例えば、ピラゾリン誘導体、アリールアミン誘導体、スチルベン誘導体、トリフェニルジアミン誘導体、オリゴチオフェン及びその誘導体、ポリビニルカルバゾール及びその誘導体、ポリシラン及びその誘導体、側鎖又は主鎖に芳香族アミンを有するポリシロキサン誘導体、ポリアニリン及びその誘導体、ポリチオフェン及びその誘導体、ポリピロール及びその誘導体、ポリフェニレンビニレン及びその誘導体、ポリチエニレンビニレン及びその誘導体等が挙げられる。
【0049】
活性層には、電子受容性化合物、電子供与性化合物の他にも、本発明の目的を妨げない限りにおいて任意の化合物を含んでいてもよい。
【0050】
光電変換素子に含まれる有機層の製造方法は、如何なる方法で製造してもよく、例えば、高分子化合物を含む溶液から成膜する方法や、真空蒸着法による成膜方法が挙げられる。
【0051】
有機層が有機化合物と溶媒との組成物を用いて製造される場合、溶媒としては、有機化合物の溶解性の観点からは、芳香族炭化水素溶媒、ハロゲン置換芳香族炭化水素溶媒、脂肪族炭化水素溶媒、ハロゲン置換脂肪族炭化水素溶媒、エーテル系溶媒、環状エーテル系溶媒などが挙げられるが、好ましくは芳香族炭化水素溶媒であり、更に好ましくはハロゲン置換芳香族炭化水素溶媒である。ハロゲン置換芳香族炭化水素溶媒としてはクロロベンゼン、ジクロロベンゼン、トリクロロベンゼンなどを挙げることが出来るが、好ましくはジクロロベンゼンであり、特に好ましくはオルトジクロロベンゼンである。
【0052】
前記組成物を用いて成膜する場合、スピンコート法、キャスティング法、マイクログラビアコート法、グラビアコート法、バーコート法、ロールコート法、ワイアーバーコート法、ディップコート法、スプレーコート法、スクリーン印刷法、グラビア印刷、フレキソ印刷法、オフセット印刷法、インクジェット印刷法、ディスペンサー印刷法、ノズルコート法、キャピラリーコート法等の塗布法を用いることができ、スピンコート法、フレキソ印刷法、グラビア印刷法、インクジェット印刷法、ディスペンサー印刷法が好ましい。
成膜性の観点からは、組成物の表面張力は、10mN/mから100mN/mが好ましく、15mN/mから25mN/mがより好ましい。
【0053】
有機層の厚さは、通常、1nm〜100μmが好ましく、より好ましくは2nm〜1000nmであり、さらに好ましくは5nm〜500nmであり、より好ましくは20nm〜200nmである。
【0054】
本発明の光電変換素子は、透明又は半透明の電極から太陽光等の光を照射することにより、電極間に光起電力が発生し、有機薄膜太陽電池として動作させることができる。有機薄膜太陽電池を複数集積することにより有機薄膜太陽電池モジュールとして用いることもできる。
有機薄膜太陽電池は、従来の太陽電池モジュールと基本的には同様のモジュール構造をとりうる。太陽電池モジュールは、一般的には金属、セラミック等の支持基板の上にセルが構成され、その上を充填樹脂や保護ガラス等で覆い、支持基板の反対側から光を取り込む構造をとるが、支持基板に強化ガラス等の透明材料を用い、その上にセルを構成してその透明の支持基板側から光を取り込む構造とすることも可能である。具体的には、スーパーストレートタイプ、サブストレートタイプ、ポッティングタイプと呼ばれるモジュール構造、アモルファスシリコン太陽電池などで用いられる基板一体型モジュール構造等が知られている。本発明の有機薄膜太陽電池も使用目的や使用場所および環境により、適宜これらのモジュール構造を選択できる。
代表的なスーパーストレートタイプあるいはサブストレートタイプのモジュールは、片側または両側が透明で反射防止処理を施された支持基板の間に一定間隔にセルが配置され、隣り合うセル同士が金属リードまたはフレキシブル配線等によって接続され、外縁部に集電電極が配置されており、発生した電力を外部に取り出される構造となっている。基板とセルの間には、セルの保護や集電効率向上のため、目的に応じエチレンビニルアセテート(EVA)等様々な種類のプラスチック材料をフィルムまたは充填樹脂の形で用いてもよい。また、外部からの衝撃が少ないところなど表面を硬い素材で覆う必要のない場所において使用する場合には、表面保護層を透明プラスチックフィルムで構成し、または上記充填樹脂を硬化させることによって保護機能を付与し、片側の支持基板をなくすことが可能である。支持基板の周囲は、内部の密封およびモジュールの剛性を確保するため金属製のフレームでサンドイッチ状に固定し、支持基板とフレームの間は封止材料で密封シールする。また、セルそのものや支持基板、充填材料および封止材料に可撓性の素材を用いれば、曲面の上に太陽電池を構成することもできる。
ポリマーフィルム等のフレキシブル支持体を用いた太陽電池の場合、ロール状の支持体を送り出しながら順次セルを形成し、所望のサイズに切断した後、周縁部をフレキシブルで防湿性のある素材でシールすることにより電池本体を作製できる。また、Solar Energy Materials and Solar Cells, 48,p383-391記載の「SCAF」とよばれるモジュール構造とすることもできる。更に、フレキシブル支持体を用いた太陽電池は曲面ガラス等に接着固定して使用することもできる。
【0055】
本発明の光電変換素子は、短絡電流密度が大きくなる特徴がある。
【0056】
また、本発明の電子素子に、電極間に電圧を印加した状態、あるいは無印加の状態で、透明又は半透明の電極から光を照射することにより、光電流が流れ、有機光センサーとして動作させることができる。有機光センサーを複数集積することにより有機イメージセンサーとして用いることもできる。
【0057】
本発明の電子素子の第1の電極は、有機トランジスタやその他の電子素子の電子注入電極としても使用できる。有機薄膜トランジスタとしては、ソース電極及びドレイン電極と、これらの電極間の電流経路となる有機半導体層と、この電流経路を通る電流量を制御するゲート電極とを備えた構成を有するものが挙げられ、このような有機薄膜トランジスタとしては、電界効果型、静電誘導型等が挙げられる。有機薄膜トランジスタにおいて、本発明の電子素子が有する有機層は、有機半導体層である。
【0058】
電界効果型有機薄膜トランジスタは、ソース電極及びドレイン電極、これらの間の電流経路となる有機半導体層、この電流経路を通る電流量を制御するゲート電極、並びに、有機半導体層とゲート電極との間に配置される絶縁層を備えることが好ましい。
特に、ソース電極及びドレイン電極が、有機半導体層に接して設けられており、さらに有機半導体層に接した絶縁層を挟んでゲート電極が設けられていることが好ましい。
【0059】
静電誘導型有機薄膜トランジスタは、ソース電極及びドレイン電極、これらの間の電流経路となる有機半導体層、並びに電流経路を通る電流量を制御するゲート電極を有し、このゲート電極が有機半導体層中に設けられていることが好ましい。特に、ソース電極、ドレイン電極及び有機半導体層中に設けられたゲート電極が、有機半導体層に接して設けられていることが好ましい。ここで、ゲート電極の構造としては、ソース電極からドレイン電極へ流れる電流経路が形成され、且つゲート電極に印加した電圧で電流経路を流れる電流量が制御できる構造であればよく、例えば、くし形電極が挙げられる。
【0060】
本発明の電子素子の製造方法は、第1の基板、第1の電極、第2の電極及び第2の基板を有し、該第1の電極と該第2の電極との間に有機材料を含む有機層を有し、該有機材料が該第1の電極又は該第2の電極と直接又は他の層を介して電子の授受を行う電子素子の製造方法であって、金属又は金属の合金を含む溶液を塗布法により該第1の基板又は有機層上に塗布して該第1の電極を形成する工程を有する。電子素子中、該金属又は金属の合金の融点が100℃以下である。
【0061】
本発明の電子素子の製造方法は、金属又は金属の合金を含む溶液を塗布法により第1の基板上に塗布して第1の電極を形成する工程、第2の基板上に第2の電極を形成する工程、該第2の電極上に有機層を形成する工程、該第1の電極と該有機層とが接するよう該第1の基板と該第2の基板とを張り合わせる工程を有することが好ましい。第1の基板と第1の電極との間に、ITO等の中間層があり、該中間層上に第1の電極を形成してもよい。また、第2の電極と有機層との間に、正孔注入層、電子注入層等の中間層があり、該中間層上に有機層を形成してもよい。
【実施例】
【0062】
以下、本発明をさらに詳細に説明するために実施例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0063】
参考例1
(重合体Aの製造)
2−メトキシー5−(2’−エチルヘキシルオキシ)―p−キシリレンジクロライド 6.6gを脱水テトラヒドロフラン 1200gに溶解した後、窒素ガスでバブリングすることにより、反応系内を窒素置換した。次に、この溶液に、あらかじめカリウム−tert−ブトキシド 13.5gを、窒素ガスでバブリングすることにより脱気した脱水テトラヒドロフラン 160mlに溶解した溶液を、室温で滴下した。滴下後、引き続き、室温で約1時間反応したところ、反応溶液の粘度が高くなったので、この反応溶液に、窒素ガスでバブリングすることにより脱気した脱水テトラヒドロフラン 300gを加えた後、引き続き、室温で20時間反応させた。なお、反応は窒素雰囲気下で行った。
反応後、この反応溶液に氷酢酸を加え、反応溶液を中和した。次に、得られた反応溶液をメタノール中にそそぎこみ、再沈し、生成した赤色の沈殿をろ過して回収した。
次に、この赤色沈殿である重合体をメタノールで洗浄した後、減圧乾燥して、重合体を得た。得られた重合体を、テトラヒドロフラン 1200gに溶解した後、得られた溶液をメタノール溶液中に注ぎ込み、再沈し、生成した重合体を回収した。得られた重合体をエタノールで洗浄した後、減圧乾燥して重合体A 2.4gを得た。
【0064】
実施例1
(有機EL素子の作製、評価)
スパッタ法により150nmの厚みで第2の電極であるITO膜を付けたガラス基板をオゾンUV処理して表面処理を行った。ポリ(3,4)エチレンジオキシチオフェン/ポリスチレンスルホン酸(スタルク社製、商品名:AI4083)の懸濁液を該基板上にスピンコートにより塗布し、膜厚が65nmの薄膜を形成した。大気雰囲気下においてホットプレート上で、200℃で15分間熱処理し、正孔注入層を形成した。参考例1で得た重合体Aの0.3重量%のクロロホルム溶液をスピンコート法により正孔注入層上に製膜し、有機層を形成した。別途上記と同様に洗浄したITO膜付き基板に液状のGa−In合金(Aldrich社製、商品名Gallium-Indium eutectic、99.99+%、485425−5G、融点15.7℃、Ga−In=75.5%−24.5%)を薄く引き延ばして成膜し、第1の電極を形成した。In-Ga合金の表面張力により、該合金はITO付ガラス基板から流れ出さなかった。Ga−In合金層を形成した基板と上記の重合体Aを含む有機層を製膜した基板とを、Ga−In合金層と有機層とが接触するように張り合わせた。第2の電極を負極とし、第1の電極を正極として電圧を15V印加したところ、重合体Aの蛍光色に相当する橙色の発光を観察し、重合体Aからの電界発光を確認した。なお、In−Ga合金層には、ITO付ガラス基板を介して電圧印加装置から電圧を印加した。
【0065】
測定例1
(仕事関数の測定)
ガラス基板上に液状のGa−In合金を薄く引き延ばして成膜して形成した電極の仕事関数を、光電子分光装置AC−II(RIKEN KEIKI製)を用いて測定した。仕事関数は3.8eVであった。
【0066】
実施例2
(有機薄膜太陽電池の作製、評価)
スパッタ法により150nmの厚みで第2の電極であるITO膜を付けたガラス基板をオゾンUV処理して表面処理を行った。次に、分子量45000から65000でレジオレギュラーなポリ3ヘキシルチオフェン(Aldrich社製)とフラーレン誘導体であるC60PCBM(フェニルC61−酪酸メチルエステル)(phenyl C61-butyric acid methyl ester、フロンティアカーボン社製)を含むオルトジクロロベンゼン溶液(ポリ3ヘキシルチオフェン/C60PCBMの重量比=1/1、ポリ3ヘキシルチオフェン及びC60PCBMの濃度2.2wt%)を用い、スピンコートにより塗布して有機膜を作製し、有機層を形成した(膜厚約100nm)。実施例1と同様に、ITO付き基板に液状のGa−In合金を薄く引き延ばして成膜し、第1の電極を形成した。Ga−In合金層を形成した基板と上記有機層を形成した基板とを、Ga−In合金層と有機層とが接触するように張り合わせ、有機薄膜太陽電池を作成した。得られた有機薄膜太陽電池にソーラシミュレーター(分光計器製、商品名OTENTO-SUNII:AM1.5Gフィルター、放射照度100mW/cm2)を用いて一定の光を照射し、発生する電流と電圧を測定して光電変換効率、短絡電流密度、開放電圧、フィルファクターを求めた。Jsc(短絡電流密度)= 7.44mA/cm2、Voc(開放電圧)= 0.54V、ff(フィルファクター)=0.36、光電変換効率(η)は、1.5%であった。
【0067】
比較例1
(有機薄膜太陽電池の作製、評価)
第1の電極として真空蒸着機によりフッ化リチウムを厚さ2nmで蒸着し、次いでAlを厚さ100nmで蒸着した有機薄膜太陽電池を作製した。第1の電極を蒸着する工程以外は実施例2と同様に作製した。真空蒸着機を用いて電極を製造したため、簡便に製造することができなかった。
短絡電流密度Jsc(短絡電流密度)は6.42mA/cm2であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の電極及び第2の電極を有し、該第1の電極と該第2の電極との間に有機材料を含む有機層を有し、該有機材料が該第1の電極又は該第2の電極と直接又は他の層を介して電子の授受を行う電子素子において、該第1の電極が金属又は金属の合金を含み、該金属又は金属の合金の融点が100℃以下であることを特徴とする電子素子。
【請求項2】
金属の合金がガリウムを含むことを特徴とする請求項1に記載の電子素子。
【請求項3】
金属の合金の仕事関数が、4eV以下であることを特徴とする請求項1又は2に記載の電子素子。
【請求項4】
金属の合金が、ガリウムとインジウムとの合金であり、該合金中の全原子の数の合計を100とした場合、インジウム原子の数が80以下であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の電子素子。
【請求項5】
金属がガリウムであることを特徴とする請求項1に記載の電子素子。
【請求項6】
有機エレクトロルミネッセンス素子であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の電子素子。
【請求項7】
請求項6に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子を含むディスプレイ。
【請求項8】
請求項6に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子を含む照明。
【請求項9】
光電変換素子であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の電子素子。
【請求項10】
請求項9に記載の光電変換素子を含む太陽電池モジュール。
【請求項11】
請求項9に記載の光電変換素子を含むイメージセンサー。
【請求項12】
第1の基板、第1の電極、第2の電極及び第2の基板を有し、該第1の電極と該第2の電極との間に有機材料を含む有機層を有し、該有機材料が該第1の電極又は該第2の電極と直接又は他の層を介して電子の授受を行う電子素子の製造方法であって、金属又は金属の合金を含む溶液を塗布法により該第1の基板又は有機層上に塗布して該第1の電極を形成する工程を有し、該金属又は金属の合金の融点が100℃以下であることを特徴とする電子素子の製造方法。
【請求項13】
金属又は金属の合金を含む溶液を塗布法により第1の基板上に塗布して第1の電極を形成する工程、第2の基板上に第2の電極を形成する工程、該第2の電極上に有機層を形成する工程、該第1の電極と該有機層とが接するよう該第1の基板と該第2の基板とを張り合わせる工程を有することを特徴とする請求項12に記載の電子素子の製造方法。
【請求項14】
塗布法が、コーティング法または印刷法であることを特徴とする請求項12又は13に記載の電子素子の製造方法。

【公開番号】特開2010−251235(P2010−251235A)
【公開日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−101789(P2009−101789)
【出願日】平成21年4月20日(2009.4.20)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】