電子装置、電子機器及び電子装置の製造方法
【課題】MEMS構造体が内在する空洞部を覆う被覆部の外にエッチング液が流出し難い構造の電子装置を提供する。
【解決手段】基板2上の空洞部33内に位置し電気駆動される振動素子5と、空洞部33の周囲を取り巻く絶縁層29と空洞部33とを画成する電気伝導性の包囲壁25と、振動素子5と接続し包囲壁25を貫通する第1配線8及び第2配線9と、を有し、第1配線8及び第2配線9が包囲壁25を貫通する場所には絶縁層29を溶解するエッチング液が空洞部33から絶縁層29に流動することを防止し包囲壁25と第1配線8及び第2配線9とを絶縁する第1耐食絶縁膜19及び第2耐食絶縁膜20を備える。
【解決手段】基板2上の空洞部33内に位置し電気駆動される振動素子5と、空洞部33の周囲を取り巻く絶縁層29と空洞部33とを画成する電気伝導性の包囲壁25と、振動素子5と接続し包囲壁25を貫通する第1配線8及び第2配線9と、を有し、第1配線8及び第2配線9が包囲壁25を貫通する場所には絶縁層29を溶解するエッチング液が空洞部33から絶縁層29に流動することを防止し包囲壁25と第1配線8及び第2配線9とを絶縁する第1耐食絶縁膜19及び第2耐食絶縁膜20を備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子装置、電子機器及び電子装置の製造方法にかかわり、特に、空洞部を有する電子装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)技術を利用して形成した機能素子が基板上に設けられた空洞部に配置された電子装置が知られている。機能素子はマイクロ振動子やマイクロセンサー等であり、微小な構造体が振動や変形等の動作を行う。そして、機能素子が動作し易くするために空洞部内は減圧されている。
【0003】
空洞部を形成する方法が特許文献1に開示されている。これによると、基板上にMEMS構造体を形成しその上に層間絶縁膜を形成する。その後、貫通孔を有する第1被覆層がMEMS構造体の周囲の層間絶縁膜を覆うように形成する。続いて、第1被覆層の貫通孔を通してエッチング液を流動させることにより層間絶縁膜を除去してMEMS構造体の可動部を可動可能にする。最後に第1被覆層の貫通孔を第2被覆層で覆うことにより、MEMS構造体の周囲に密閉された空洞が形成される。以下第1被覆層を被覆部と称す。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−105411号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
MEMS構造体が電気駆動される形態のとき、被覆部は電気伝導性のある材料を用いて電磁波ノイズの空洞への侵入を防ぐ構造がとられる。従って、MEMS構造体と接続する配線と被覆部とは絶縁させて電気信号を被覆部の外側に取り出す必要がある。
【0006】
そして、配線と被覆部との間に層間絶縁膜を配置するとき、層間絶縁膜がエッチング液により溶解される。これにより、エッチング液が被覆部の周囲に流出する。そして、エッチング液が被覆部の周囲に位置する構造物に損傷を与える危険性がある。例えば、被覆部の周囲に層間絶縁膜が配置されるときには、被覆部の周囲の層間絶縁膜が損傷を受ける。その結果、被覆部の強度が低下して空洞部が維持できなくなる。そこで、被覆部の外にエッチング液が流出し難い構造の電子装置が望まれていた。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態または適用例として実現することが可能である。
【0008】
[適用例1]
本適用例にかかる電子装置であって、基板上の空洞部内に位置し電気駆動される機能素子と、前記空洞部の周囲を取り巻く層間絶縁膜と前記空洞部とを画成する電気伝導性を有する被覆部と、前記機能素子と接続し前記被覆部を貫通する配線と、を有し、前記配線が前記被覆部を貫通する場所には前記層間絶縁膜を溶解するエッチング液が前記空洞部から前記層間絶縁膜に流動することを防止し前記被覆部と前記配線とを絶縁する液流動防止部を備えることを特徴とする。
【0009】
この電子装置によれば、基板上において層間絶縁膜と空洞部とが被覆部により画成されている。空洞部には機能素子が位置し、機能素子と接続して配線が設置されている。配線は被覆部を貫通している。配線と被覆部との間には液流動防止部が配置されている。液流動防止部は被覆部と配線とを絶縁するので、被覆部と配線との間では電流が流されない。
【0010】
エッチング液により層間絶縁膜が溶解されることにより、被覆部内の空洞部が形成される。被覆部はエッチング液により溶解され難く、エッチング液が溶解する範囲を被覆部が制御する。空洞部内に位置する配線もエッチング液により溶解され難い。そして、配線は被覆部を貫通している。空洞部を形成するときに配線と被覆部との間からエッチング液が流出するときには、被覆部を取り巻く層間絶縁膜は溶解する。本適用例では配線と被覆部との間に液流動防止部が配置されているので、配線と被覆部との間からエッチング液が被覆部の外側に流出することを防止することができる。
【0011】
[適用例2]
上記適用例にかかる電子装置において、前記液流動防止部は前記層間絶縁膜より前記エッチング液に対して腐食され難い耐食性絶縁膜を有し、前記耐食性絶縁膜は前記配線と前記被覆部との間に位置することを特徴とする。
【0012】
この電子装置によれば、配線と被覆部との間に耐食性絶縁膜が配置されている。この耐食性絶縁膜は層間絶縁膜よりエッチング液に対して腐食され難い性質を有している。従って、耐食性絶縁膜は配線と被覆部とを絶縁するとともに、配線と被覆部との間からエッチング液が被覆部の外側に流出することを防止することができる。
【0013】
[適用例3]
上記適用例にかかる電子装置において、前記層間絶縁膜は二酸化シリコンであり、前記耐食性絶縁膜はアルミナであることを特徴とする。
【0014】
この電子装置によれば、層間絶縁膜は二酸化シリコンであり、耐食性絶縁膜はアルミナであることから、層間絶縁膜及び耐食性絶縁膜は絶縁性を有している。そして、エッチングにHF(フッ化水素)ベーパーエッチングを選択することにより、耐食性絶縁膜は層間絶縁膜より耐エッチング性を確実に有することができる。
【0015】
[適用例4]
上記適用例にかかる電子装置において、前記液流動防止部は前記被覆部から前記層間絶縁膜へ突出する側壁延長部を有し、前記側壁延長部と前記配線とで前記層間絶縁膜を挟むように配置されたことを特徴とする。
【0016】
この電子装置によれば、液流動防止部は被覆部から層間絶縁膜へ突出する側壁延長部を有している。そして、側壁延長部と配線との間には層間絶縁膜が位置している為、側壁延長部と配線とは電気的に絶縁されている。そして、空洞部を形成するとき被覆部の空洞部側からエッチング液が側壁延長部と配線との間の層間絶縁膜を溶解する。層間絶縁膜を溶解したエッチング液は層間絶縁膜を溶解し難くなるので、エッチング液が移動し難い場所では層間絶縁膜が溶解され難くなる。側壁延長部は突出している為、側壁延長部と配線との間に流入したエッチング液は移動し難くなり層間絶縁膜を溶解し難くなる。その結果、側壁延長部はエッチング液が空洞部から層間絶縁膜に流動することを防止することができる。
【0017】
[適用例5]
上記適用例にかかる電子装置において、前記側壁延長部及び前記配線に挟まれた前記層間絶縁膜は屈曲部を有することを特徴とする。
【0018】
この電子装置によれば、側壁延長部及び配線に覆われた層間絶縁膜は屈曲部を有している。屈曲部では直線となっている場所よりエッチング液が移動するときの流体抵抗が大きくなる。従って、屈曲部ではエッチング液が移動し難いので、側壁延長部と配線とに挟まれた層間絶縁膜が溶解され難くなる。その結果、側壁延長部はエッチング液が空洞部から層間絶縁膜に流動することを防止することができる。
【0019】
[適用例6]
本適用例にかかる電子機器は、発振回路を備えた電子機器であって、前記発振回路に上記に記載の電子装置を用いたことを特徴とする。
【0020】
この電子機器によれば、電子機器は発振回路に上記の電子装置を備えており、電子装置が波形を形成している。この電子装置はエッチング液が被覆部から流出することのない品質の良い電子装置になっている。従って、電子機器は品質の良い電子装置を備えた電子機器とすることができる。
【0021】
[適用例7]
本適用例にかかる電子装置の製造方法であって、基板上に形成された機能素子と接続して配線を形成する配線形成工程と、前記配線を覆って耐食性絶縁膜を形成する耐食性絶縁膜形成工程と、前記基板、前記配線、前記耐食性絶縁膜上に層間絶縁膜を形成する層間絶縁膜形成工程と、前記機能素子を囲むように前記層間絶縁膜を筒状に除去し、除去した場所に側壁部を形成する側壁形成工程と、前記側壁部と前記側壁部に囲まれた前記層間絶縁膜とに重ねて開口部を有する蓋部を形成する蓋部形成工程と、前記側壁部を取り巻く前記層間絶縁膜上に保護膜を形成する保護膜形成工程と、前記開口部からエッチング液を流入させて前記基板と前記側壁部と前記蓋部とに囲まれた場所の前記層間絶縁膜をエッチングして除去し空洞部を形成する空洞部形成工程と、前記開口部を封止する封止工程と、を有し、前記耐食性絶縁膜形成工程では前記層間絶縁膜よりエッチングされ難い前記耐食性絶縁膜を前記配線と前記側壁部との間に形成することを特徴とする。
【0022】
この電子装置の製造方法によれば、配線形成工程において基板上に形成された機能素子と接続して配線が形成される。耐食性絶縁膜形成工程では配線上に耐食性絶縁膜が形成される。そして、層間絶縁膜形成工程では基板、配線、耐食性絶縁膜上に層間絶縁膜が形成される。側壁形成工程では層間絶縁膜が機能素子を囲むように筒状に除去され、除去された場所に側壁部が形成される。これにより、側壁部に囲まれた場所には層間絶縁膜が位置する。
【0023】
蓋部形成工程では側壁部と側壁部に囲まれた層間絶縁膜とに重ねて開口部を有する蓋部が形成される。保護膜形成工程では側壁部を取り巻く層間絶縁膜上に保護膜が形成される。これにより、側壁部を取り巻く層間絶縁膜はエッチングされないようになる。空洞部形成工程では開口部から基板と側壁部と蓋部とに囲まれた場所の層間絶縁膜がエッチングされて除去され空洞部が形成される。尚、開口部からエッチング液を流入させるのは、エッチング液を霧状にて流入させる場合と液状にて流入させる場合とがある。封止工程では開口部が封止される。これにより、空洞部は密閉される。
【0024】
基板上には機能素子が形成されており、機能素子と接続して配線が形成される。配線を覆って耐食性絶縁膜が形成され、耐食性絶縁膜上には側壁部が形成される。これにより、配線と側壁部とが絶縁される。耐食性絶縁膜は層間絶縁膜よりエッチングされ難い膜である為、側壁部に囲まれた層間絶縁膜をエッチングするときに耐食性絶縁膜は配線と側壁部との間に残留する。従って、側壁部に囲まれた場所から配線と側壁部との間を抜けてエッチング液が流出することを防止することができる。
【0025】
[適用例8]
本適用例にかかる電子装置の製造方法であって、基板上に形成された機能素子と接続して配線を形成する配線形成工程と、前記基板及び前記配線を覆って層間絶縁膜を形成する層間絶縁膜形成工程と、前記機能素子を囲むように前記層間絶縁膜を筒状に除去し、除去した場所に側壁部を形成する側壁形成工程と、前記側壁部と前記配線とが交差する場所から前記側壁部の周囲の前記配線に沿って側壁延長部を形成する側壁延長部形成工程と、前記側壁部と前記側壁部に囲まれた前記層間絶縁膜とに重ねて開口部を有する蓋部を形成する蓋部形成工程と、前記側壁部を取り巻く前記層間絶縁膜上に保護膜を形成する保護膜形成工程と、前記開口部からエッチング液を流入させて前記基板と前記側壁部と前記蓋部とに囲まれた場所の前記層間絶縁膜をエッチングして除去し空洞部を形成する空洞部形成工程と、前記開口部を封止する封止工程と、を有し、前記層間絶縁膜形成工程では前記配線を覆って前記層間絶縁膜を形成し、前記側壁延長部形成工程では、前記配線を覆う前記層間絶縁膜をさらに側壁延長部が覆うことを特徴とする。
【0026】
この電子装置の製造方法によれば、配線形成工程において基板上に形成された機能素子と接続して配線が形成される。層間絶縁膜形成工程では基板及び配線を覆って層間絶縁膜が形成される。そして、側壁形成工程では機能素子を囲むように基板及び配線上の層間絶縁膜が筒状に除去され、除去した場所に側壁部が形成される。
【0027】
側壁延長部形成工程では側壁部と配線とが交差する場所から側壁部の周囲の配線に沿って配線を覆う層間絶縁膜がさらに側壁延長部に覆われる。これにより配線と側壁延長部とが絶縁される。蓋部形成工程では側壁部と側壁部に囲まれた層間絶縁膜とに重ねて開口部を有する蓋部が形成される。保護膜形成工程では、側壁部を取り巻く層間絶縁膜上に保護膜が形成される。これにより、側壁部を取り巻く層間絶縁膜はエッチングされないようになる。空洞部形成工程では開口部から基板と側壁部と蓋部とに囲まれた場所の層間絶縁膜がエッチングされて除去され空洞部が形成される。そして、封止工程では開口部が封止される。これにより、空洞部は密閉される。
【0028】
基板上には機能素子が形成されており、機能素子と接続して配線が形成される。配線上には層間絶縁膜が形成され、層間絶縁膜を覆って側壁部及び側壁延長部が形成される。これにより、側壁延長部が無いときに比べて、側壁部に囲まれた場所から配線と側壁延長部との間を抜けてエッチング液が流出し難くなる。従って、側壁部に囲まれた場所から配線と側壁延長部との間を抜けてエッチング液が流出することを防止することができる。
【0029】
[適用例9]
上記適用例にかかる電子装置の製造方法において、前記基板上にはMOS素子が形成され、前記配線と前記層間絶縁膜とのうち少なくとも一方は前記MOS素子を形成する工程にて形成されることを特徴とする。
【0030】
この電子装置の製造方法によれば、MOS(Metal Oxide Semiconductor)素子に配線と層間絶縁膜とが設置されている。そして、機能素子に配線を形成する工程とMOS素子に配線を形成する工程とは同じ工程にて行われる。さらに、機能素子に層間絶縁膜を形成する工程とMOS素子に層間絶縁膜を形成する工程とは同じ工程にて行われる。従って、基板上の機能素子を形成する工程とMOS素子を形成する工程とを別々に行う場合に比べて生産性良く機能素子及びMOS素子を形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】第1の実施形態にかかわるレゾネーターの構成を示す概略分解斜視図。
【図2】(a)は図1のレゾネーターのA−A’線に沿う模式断面図、(b)は図1のレゾネーターのB−B’線に沿う模式断面図。
【図3】(a)はレゾネーターの回路構成を示すブロック図、(b)は、レゾネーターの製造方法を示すフローチャート。
【図4】レゾネーターの製造方法を説明するための模式図。
【図5】レゾネーターの製造方法を説明するための模式図。
【図6】レゾネーターの製造方法を説明するための模式図。
【図7】レゾネーターの製造方法を説明するための模式図。
【図8】第2の実施形態にかかわるレゾネーターの構成を示す概略分解斜視図。
【図9】(a)は図8のレゾネーターのC−C’線及びE−E’線に沿う模式断面図、(b)は図8のレゾネーターのD−D’線及びF−F’線に沿う模式断面図、(c)及び(d)は側壁延長部を示す要部拡大図。
【図10】レゾネーターの製造方法を示すフローチャート。
【図11】レゾネーターの製造方法を説明するための模式図。
【図12】第3の実施形態にかかわる駆動回路におけるMOS素子の構造を示す模式図。
【図13】第4の実施形態にかかわる時計の構成を示す電気ブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、本発明を具体化した実施形態について図面に従って説明する。尚、各図面における各部材は、各図面上で認識可能な程度の大きさとするため、各部材毎に縮尺を異ならせて図示している。
(第1の実施形態)
本実施形態では、振動素子を空洞内に備えて所定の周波数の波形を出力するレゾネーターとこのレゾネーターを製造する特徴的な例について、図1〜図7に従って説明する。
【0033】
(レゾネーター)
図1はレゾネーターの構成を示す概略分解斜視図である。図2(a)は図1のレゾネーターのA−A’線に沿う模式断面図であり、図2(b)は図1のレゾネーターのB−B’線に沿う模式断面図である。最初にレゾネーター1について図1及び図2に従って説明する。電子装置としてのレゾネーター1は長方形の基板2を備えている。基板2の長手方向をX方向とし、基板2の平面方向でX方向と直交する方向をY方向とする。基板2の厚み方向をZ方向とする。基板2の材質は特に限定されないが、シリコン基板等の半導体基板、セラミックス基板、ガラス基板、サファイア基板、合成樹脂基板等の各種の基板を用いることができる。基板2上に半導体による集積回路を形成するときには、シリコン基板等の半導体基板を用いる。本実施形態では、例えば、シリコン基板を採用している。基板2の厚みは特に限定されないが本実施形態では例えば、200μm〜600μmの厚みを採用している。
【0034】
基板2上には第1下地層3が形成されている。第1下地層3としては、例えば、トレンチ絶縁層、LOCOS(Local oxidation of silicon)絶縁層、セミリセスLOCOS絶縁層を用いることができる。第1下地層3は、基板2上に形成された複数の素子間を電気的に絶縁する絶縁層となっている。
【0035】
第1下地層3上の一部には第2下地層4が形成されている。第2下地層4の材質は、特に限定されないが二酸化シリコンの膜をエッチングするエッチング液に対して腐食され難い材質であれば良い。例えば、第2下地層4の材質にアルミナを用いることができる。これにより、第2下地層4は、第2下地層4上にてエッチング処理を行なうときのエッチングストッパー層として機能することができる。
【0036】
第2下地層4上の中央付近には機能素子としての振動素子5が設置されている。振動素子5は固定電極6と可動電極7とを備えている。固定電極6は第2下地層4上に設置されている。可動電極7は固定部7aと可動部7bと支持部7cとを有する。固定部7aは第2下地層4上に形成され、可動部7bは固定電極6に対向する場所に配置されている。そして、支持部7cは、可動部7bと固定部7aとを連結するように配置され可動部7bを支持している。可動部7bは支持部7cにより支持された片持ち梁の構造になっている。これにより、可動部7bを振動させることにより、可動部7bと固定電極6との距離を変動させることができる。
【0037】
第2下地層4上には配線としての第1配線8と配線としての第2配線9とが設置されている。そして、第1配線8は固定電極6と接続され、第2配線9は可動電極7と接続されている。第1下地層3上には駆動回路10が設置され、第1下地層3上には第1中間端子11及び第2中間端子12が設置されている。第1配線8の一端は駆動回路10と接続され、第1配線8の別の他端は第1中間端子11と接続されている。第2配線9の一端は駆動回路10と接続され、第2配線9の別の他端は第2中間端子12と接続されている。そして、第1中間端子11と第2中間端子12との間の電圧を検出することにより、振動素子5に印加される電圧信号を検出することができる。
【0038】
駆動回路10はトランジスターやキャパシター等の電気素子によって構成され、振動素子5に駆動信号を出力する。第1下地層3上には第3中間端子13、第4中間端子14及び第5中間端子15が設置されている。そして、第3中間端子13と駆動回路10とは配線13aにより接続され、第4中間端子14と駆動回路10とは配線14aにより接続されている。同様に、第5中間端子15と駆動回路10とは配線15aにより接続されている。第3中間端子13はグランドライン用の端子であり、第4中間端子14は電源供給用の端子である。そして、第5中間端子15は信号出力用の端子である。駆動回路10は所定の周波数の電圧信号を形成する回路であり、電圧信号を第5中間端子15に出力する。換言すれば、レゾネーター1は、振動素子5と駆動回路10とが同じ基板2上に併設された発振器となっている。レゾネーター1のうち駆動回路10以外の部分を発振装置1aとする。
【0039】
第2下地層4上において振動素子5のY方向側には第1包囲壁16が配置され、振動素子5の−Y方向側には第2包囲壁17が配置されている。第1包囲壁16の一端は第1配線8の近くの場所まで延在し、第1包囲壁16の別の他端は第2配線9の近くの場所まで延在して配置されている。同様に、第2包囲壁17の一端は第1配線8の近くの場所まで延在し、第2包囲壁17の別の他端は第2配線9の近くの場所まで延在して配置されている。第2包囲壁17の近くには第6中間端子18が設置され、第2包囲壁17と第6中間端子18とは配線18aによって接続されている。
【0040】
そして、振動素子5のX方向側では第1配線8を跨いで第1包囲壁16と第2包囲壁17とを接続するように耐食性絶縁膜及び液流動防止部としての第1耐食絶縁膜19が配置されている。詳しくは、第1耐食絶縁膜19は第1包囲壁16の上から第1包囲壁16と第1配線8との間の第2下地層4上を経て第1配線8上に配置されている。続いて、第1耐食絶縁膜19は第1配線8の上から第1配線8と第2包囲壁17との間の第2下地層4上を経て第2包囲壁17上に配置されている。尚、第2下地層4は第1包囲壁16と第2包囲壁17とに囲まれた場所とその周囲に設置されている。これにより、第1包囲壁16及び第2包囲壁17とに囲まれた場所の基板2は第2下地層4に覆われた状態となっている。振動素子5の−X方向側では第2配線9を跨いで第1包囲壁16と第2包囲壁17とを接続するように耐食性絶縁膜及び液流動防止部としての第2耐食絶縁膜20が配置されている。第2耐食絶縁膜20が配置される形態の詳細は第1耐食絶縁膜19の形態と同じ形態となっており、説明を省略する。
【0041】
振動素子5、第1配線8、第2配線9、第1中間端子11〜第5中間端子15、配線13a、配線14a、配線15a、第1包囲壁16、第2包囲壁17、第6中間端子18及び配線18aの各部材の材質は、電気伝導性があり二酸化シリコンのエッチング液に対して腐食され難ければ良く特に限定されない。これらの材質には金属や電気伝導性のあるシリコン等を採用することができる。本実施形態では例えば、燐やホウ素等の不純物をドーピングすることにより電気伝導性が付与された多結晶シリコンや、アルミニウム銅合金を用いている。
【0042】
第1耐食絶縁膜19及び第2耐食絶縁膜20の材質は電気絶縁性があり、二酸化シリコンをエッチングするエッチング液に対してエッチングされ難い材質であえば良い。これらの材質にはアルミナ、Si3N4、ポリイミド樹脂、アクリル系樹脂、ノボラック樹脂、ジアゾナストキノン樹脂等を好適に用いることができる。本実施形態では、例えば、アルミナを採用している。
【0043】
第1包囲壁16、第2包囲壁17、第1耐食絶縁膜19及び第2耐食絶縁膜20と重ねて第3包囲壁22が配置され、第3包囲壁22と重ねて第4包囲壁23が配置されている。さらに、第4包囲壁23と重ねて第5包囲壁24が配置されている。第3包囲壁22〜第5包囲壁24は四角形の枠形状をしており、振動素子5の周囲を取り囲むように配置されている。第1包囲壁16、第2包囲壁17、第1耐食絶縁膜19、第2耐食絶縁膜20、第3包囲壁22、第4包囲壁23、第5包囲壁24は振動素子5を取り囲む包囲壁25を構成している。
【0044】
第3包囲壁22〜第5包囲壁24の材質としては、電気伝導性と構造的強度とがあり、二酸化シリコンのエッチング液に対して腐食され難い材質で有れば良く、多結晶シリコン、アルミニウム、銅、タングステン、チタン等の金属やその合金を用いることができる。本実施形態では例えば、アルミニウムと銅との合金を採用している。
【0045】
包囲壁25の周囲には第1絶縁層26、第2絶縁層27、第3絶縁層28がこの順に積層された層間絶縁膜としての絶縁層29が配置されている。絶縁層29の材質は電気絶縁性があってエッチング液によって除去可能であれば良く、例えば、二酸化シリコンを用いることができる。
【0046】
第1包囲壁16、第2包囲壁17、第3包囲壁22、第4包囲壁23、第5包囲壁24は共に電気伝導性のある材料からなり、電気的に接続している。そして、第6中間端子18は第2包囲壁17と電気的に接続している。従って、第1包囲壁16、第2包囲壁17、第3包囲壁22、第4包囲壁23、第5包囲壁24及び第6中間端子18は同じ電位となる。第1配線8は第1耐食絶縁膜19を介して第1包囲壁16、第2包囲壁17、第3包囲壁22に囲まれている。第1耐食絶縁膜19は電気絶縁性のある材質からなっている。これにより、第1配線8は第1包囲壁16、第2包囲壁17、第3包囲壁22と電気的に絶縁されている。同様に、第2配線9は第2耐食絶縁膜20を介して第1包囲壁16、第2包囲壁17、第3包囲壁22に囲まれている。第2耐食絶縁膜20は電気絶縁性のある材質からなっている。これにより、第2配線9は第1包囲壁16、第2包囲壁17、第3包囲壁22と電気的に絶縁されている。
【0047】
包囲壁25の上側には包囲壁25に蓋をするように被覆部及び蓋部としての第1封止層30が配置されている。第1封止層30には開口部としての貫通孔30aが複数形成されている。貫通孔30aの数及び大きさは特に限定されない。本実施形態では例えば、第1封止層30に16個の貫通孔30aが形成されている。第1封止層30の材質は電気伝導性や構造的強度があり、二酸化シリコンのエッチング液に対して腐食され難い材質で有れば良く特に限定されない。本実施形態では例えば、チタン層、窒化チタン層、アルミニウム−銅合金層、窒化チタン層がこの順で積層された積層構造を採用している。
【0048】
第1封止層30上の外周に位置する部分と第3絶縁層28とに重ねて保護膜31が積層されている。この保護膜31は貫通孔30aを塞がないように配置される。保護膜31の材質は二酸化シリコンをエッチングするエッチング液に対して腐食され難い材料であれば良く、特に限定されない。保護膜31の材質としてTEOS(テトラ・エトキシ・シラン)酸化膜、窒化シリコン等を用いることができる。本実施形態では例えば、保護膜31の材質にTEOS酸化膜と窒化シリコンの積層膜を採用している。
【0049】
第1封止層30と重ねて第2封止層32が積層されている。第2封止層32は第1封止層30の貫通孔30aを塞いでいる。第2封止層32の材質としては貫通孔30aを塞げる強度のある膜を形成できれば良く、例えば、アルミニウム、チタン、タングステン、チタンニッケル合金等の金属を用いることができる。本実施形態では例えば、第2封止層32の材質にアルミニウムを採用している。第2封止層32の膜厚は特に限定されないが本実施形態では例えば、3μm程度に設定している。
【0050】
第2下地層4、包囲壁25、第1封止層30に囲まれた場所は空洞部33となっている。包囲壁25、第1封止層30は空洞部33を覆う被覆部に対応する。そして、振動素子5は空洞部33に設置されている。空洞部33の気圧は減圧されており、可動電極7の可動部7bが振動し易くなっている。そして、第1封止層30及び第2封止層32は、空洞部33が減圧した状態で空洞部33を封止する封止部材として機能している。
【0051】
第1中間端子11、第2中間端子12、第3中間端子13、第4中間端子14、第5中間端子15、第6中間端子18の上には各端子と重ねて第1貫通電極34が配置され、第1貫通電極34と重ねて第2貫通電極35が配置されている。さらに、第2貫通電極35と重ねて第3貫通電極36が配置されている。第1貫通電極34、第2貫通電極35、第3貫通電極36はそれぞれ第1絶縁層26、第2絶縁層27、第3絶縁層28を貫通する電極となっている。
【0052】
第3貫通電極36上には電極パッド37が設置され、保護膜31は電極パッド37を露出するように配置されている。保護膜31及び第2封止層32上には樹脂層38が積層されている。樹脂層38は電極パッド37の上方を避けて配置される。樹脂層38の材質としては、ポリイミド樹脂、シリコーン変性ポリイミド樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン変性エポキシ樹脂、BCB(ベンゾシクロブテン)、PBO(ポリベンゾオキサゾール)等の樹脂を好適に用いることができる。樹脂層38の膜厚は特に限定されないが、例えば、10μm以上が好ましい。これにより、レゾネーターを実装する際に破損しないように応力を吸収することができる。
【0053】
電極パッド37上から樹脂層38上にかけて配線39が設置されている。配線39の材質は特に限定されず電気伝導性を有する材質であれば良い。配線39には、例えば、チタン−タングステン合金層、銅層がこの順で積層された金属層や銅層、クロム層、アルミニウム層等の金属層の単層構造やこれらの層を積層した積層構造を用いてもよい。
【0054】
配線39上には外部端子40が設置されている。外部端子40は、配線39と電気的に接続されている。外部端子40の材質は特に限定されないが、電気伝導性を有していれば良く、各種類の金属を用いることができる。本実施形態では例えばハンダを採用している。外部端子40は略球状に形成されている。
【0055】
配線39及び樹脂層38上にレジスト層41が積層されている。レジスト層41は外部端子40の一部が露出するように形成されている。レジスト層41は配線39の酸化や腐食を防止し、電気的な不良を防ぐことができる。
【0056】
レゾネーター1は例えば上記のようにチップ状にした半導体基板からなる基板2の上方に外部端子40を直接設けることができる。そのため、レゾネーター1のパッケージサイズを、半導体チップとほぼ等しくすることができる。
【0057】
駆動回路10は第1配線8を介して固定電極6と接続され、第2配線9を介して可動電極7と接続されている。駆動回路10が振動素子5に電圧を印加することにより、固定電極6と可動電極7との間には静電気が作用する。そして、振動素子5に印加する電圧を変動させることにより可動電極7が振動する。これにより、固定電極6と可動電極7との間の静電容量を変動させることができる。そして、静電容量が変動する特性は可動電極7の固有振動数によって設定される。従って、振動素子5を用いて特定の周波数の電圧波形を形成することが可能になっている。
【0058】
空洞部33内は減圧されていることから、空気が充填されているときに比べて可動電極7は振動し易くなっている。さらに、包囲壁25及び第1封止層30は電気伝導性があり、第6中間端子18を通じて所定の電圧に維持されている。従って、レゾネーター1の外部から雑音となる電磁波が伝播するときにも、包囲壁25及び第1封止層30が電磁波の伝播を遮ることができる。その結果、振動素子5は雑音となる電磁波の影響を受け難くすることができる。
【0059】
図3(a)はレゾネーターの回路構成を示すブロック図である。図3(a)に示すように、レゾネーター1が備える駆動回路10は発振回路44と波形形成回路45とを有している。発振回路44は振動素子5と接続され、所定の周波数の波形を形成する回路となっている。そして、波形形成回路45は発振回路44が出力する波形を分周して波形の周波数を変えたり、波形の形状を変える機能を備えている。例えば、三角波、矩形波、パルス波等の波形を出力する。波形形成回路45は、発振回路44が出力する周波数より低い周波数の波形を出力することが可能となっている。
【0060】
(レゾネーターの製造方法)
次に上述したレゾネーター1の製造方法について図3〜図7にて説明する。図3(b)は、レゾネーターの製造方法を示すフローチャートであり、図4〜図7はレゾネーターの製造方法を説明するための模式図である。尚、駆動回路10、第3中間端子13、第4中間端子14、第5中間端子15、配線13a,14a,15aの製造方法は公知であり、説明を省略する。
【0061】
図3(b)のフローチャートにおいて、ステップS1は配線形成工程に相当し、基板上に振動素子、配線、中間端子、第1包囲壁及び第2包囲壁を形成する工程である。次にステップS2に移行する。ステップS2は耐食性絶縁膜形成工程に相当し、配線に重ねて第1耐食絶縁膜及び第2耐食絶縁膜を形成する工程である。次にステップS3に移行する。ステップS3は第1層間絶縁膜形成工程に相当し、振動素子上に第1絶縁層を形成する工程である。次にステップS4に移行する。ステップS4は第1側壁形成工程に相当し、第3包囲壁を形成する工程である。次にステップS5に移行する。
【0062】
ステップS5は第2層間絶縁膜形成工程に相当し、第1絶縁層に重ねて第2絶縁層を形成する工程である。次にステップS6に移行する。ステップS6は第2側壁形成工程に相当し、第3包囲壁に重ねて第4包囲壁を形成する工程である。次にステップS7に移行する。ステップS7は第3層間絶縁膜形成工程に相当し、第2絶縁層に重ねて第3絶縁層を形成する工程である。ステップS3の第1層間絶縁膜成工程、ステップS5の第2層間絶縁膜形成工程、ステップS7の第3層間絶縁膜形成工程により層間絶縁膜形成工程が構成されている。次にステップS8に移行する。ステップS8は第3側壁形成工程に相当し、第4包囲壁に重ねて第5包囲壁を形成する工程である。ステップS4の第1側壁形成工程、ステップS6の第2側壁形成工程、ステップS8の第3側壁形成工程により側壁形成工程が構成されている。次にステップS9に移行する。ステップS9は蓋部形成工程に相当し、第5包囲壁及び第5包囲壁に囲まれた場所に第1封止層を積層して形成する工程である。次にステップS10に移行する。
【0063】
ステップS10は保護膜形成工程に相当し、第1封止層の周囲に保護膜を形成する工程である。次にステップS11に移行する。ステップS11は空洞部形成工程に相当し、包囲壁及び第1封止層に覆われた層間絶縁層をエッチングして空洞を形成する工程である。次にステップS12に移行する。ステップS12は封止工程に相当し、第1封止層に重ねて第2封止層を形成し、空洞を封止する工程である。次にステップS13に移行する。ステップS13は端子部形成工程に相当し、中間端子と接続する外部端子を形成する工程である。次にステップS14に移行する。ステップS14はダイシング工程に相当し、マザー基板を切断してチップ状に分割する工程である。以上の製造工程にてレゾネーターが完成する。
【0064】
次に、図4〜図7を用いて、図3(b)に示したステップと対応させて、製造方法を詳細に説明する。まず、図4(a)〜図4(c)はステップS1の配線形成工程に対応する図である。図4(a)に示すように、マザー基板46を用意し、マザー基板46上に第1下地層3及び第2下地層4を形成する。第2下地層4は包囲壁25を形成する予定の場所に形成する。マザー基板46は、例えば、シリコンウェハーであり、レゾネーター1を複数配置可能な広さを備えている。そして、マザー基板46を分割したものが基板2に相当する。第1下地層3は、例えば、STI(Shallow Trench Isolation)法、LOCOS法により形成される。第2下地層4は、例えば、CVD(Chemical Vaper Deposition)法、スパッタ法を用いて形成される。
【0065】
次に、第2下地層4上に固定電極6を形成し、第1下地層3及び第2下地層4上に第1配線8を形成する。この時、同時に第1中間端子11も形成する。固定電極6、第1配線8、第1中間端子11はCVD法やスパッタ法等による成膜処理と、フォトリソグラフィー技術及びエッチング技術によるパターニング処理とを用いて形成される。多結晶シリコンからなるパターンを形成した後でこのパターンに電気伝導性を付与するために所定の不純物をドーピングする。ドーピングは例えば、POCL3やBBr3等のガス中でドーパントを堆積させ、熱拡散させることにより行うことができる。続いて、固定電極6及び第1配線8を熱酸化することにより、固定電極6の表面に絶縁膜6aを形成し、第1配線8の表面に絶縁膜8aを形成する。このとき、第1中間端子11にも酸化膜が形成される。
【0066】
次に、図4(b)及び図4(c)に示すように、可動電極7、第2配線9、第2中間端子12、第1包囲壁16、第2包囲壁17を形成する。このとき、同時に第6中間端子18も形成する。可動電極7、第2配線9、第2中間端子12、第1包囲壁16、第2包囲壁17、第6中間端子18の形成方法は固定電極6及び第1配線8と同様な方法であり、説明を省略する。続いて、熱酸化することにより、可動電極7、第2配線9、第2中間端子12、第1包囲壁16、第2包囲壁17の各表面に絶縁膜7d,9d,12a,16a,17aを形成する。このとき、第6中間端子18にも酸化膜が形成される。
【0067】
次に、第1耐食絶縁膜19及び第2耐食絶縁膜20を形成する予定の場所の絶縁膜6a,7d,16a,17aを除去する。絶縁膜の除去にはフォトリソグラフィー技術及びエッチング技術によるパターニング処理が用いられる。
【0068】
図4(d)〜図4(e)はステップS2の耐食性絶縁膜形成工程に対応する図である。図4(d)及び図4(e)に示すように、第1包囲壁16の端から第2包囲壁17の端にかけて第1耐食絶縁膜19及び第2耐食絶縁膜20を形成する。第1耐食絶縁膜19は第1配線8上の一部を覆って配置され、第2耐食絶縁膜20は第2配線9上の一部を覆って配置される。第1耐食絶縁膜19及び第2耐食絶縁膜20はCVD法やスパッタ法等による成膜処理及びフォトリソグラフィー技術及びエッチング技術によるパターニング処理により形成される。
【0069】
図5(a)はステップS3の第1層間絶縁膜形成工程に対応する図である。図5(a)に示すように、第1下地層3、第2下地層4上に第1絶縁層26を積層する。このとき、第1配線8、第2配線9、第1耐食絶縁膜19、第2耐食絶縁膜20に重ねて第1絶縁層26を積層する。第1絶縁層26はCVD法やスパッタ法等による成膜処理やスピンコート等の塗布法を用いて形成する。第1絶縁層26を形成した後に、第1絶縁層26の表面を平坦化する処理を行ってもよい。第1絶縁層26のうち第1包囲壁16、第2包囲壁17、第1耐食絶縁膜19、第2耐食絶縁膜20に囲まれている場所の第1絶縁層26を第1犠牲層47とする。
【0070】
図5(b)及び図5(c)はステップS4の第1側壁形成工程に対応する図である。図5(b)及び図5(c)に示すように、第1絶縁層26をパターニングする。これにより、第3包囲壁22及び第1貫通電極34を設置する場所の第1絶縁層26を貫通する開口部を形成する。そして、該開口部にアルミニウム等の金属を埋め込むことで第3包囲壁22及び第1貫通電極34が形成される。第3包囲壁22及び第1貫通電極34はCVD法やスパッタ法等による成膜処理をした後にフォトリソグラフィー技術及びエッチング技術によるパターニング処理を行なうことにより形成される。尚、第3包囲壁22及び第1貫通電極34は、同一の工程で形成されてもよいし、別々の工程で形成されてもよい。
【0071】
電気伝導性のある第3包囲壁22は第1包囲壁16及び第2包囲壁17と接触して形成される。これにより、第1包囲壁16と第2包囲壁17との間は第3包囲壁22を介して導通可能となる。第3包囲壁22と第1配線8及び第2配線9との間には第1耐食絶縁膜19及び第2耐食絶縁膜20が配置されている。従って、第3包囲壁22と第1配線8との間は絶縁され、第3包囲壁22と第2配線9との間も絶縁されている。
【0072】
第1貫通電極34も第1中間端子11、第2中間端子12、第3中間端子13、第4中間端子14、第5中間端子15と接触して形成される。これにより、第1貫通電極34はこれらの端子との間で導通が可能になる。
【0073】
図6(a)及び図6(b)はステップS5の第2層間絶縁膜形成工程〜ステップS10の保護膜形成工程に対応する図である。図6(a)に示すように、ステップS5の第2層間絶縁膜形成工程では第1絶縁層26に重ねて第2絶縁層27を形成する。そして、ステップS6の第2側壁形成工程では第2絶縁層27に開口部を形成する。続いて、該開口部にアルミニウム等の金属を埋め込むことで第4包囲壁23及び第2貫通電極35を形成する。
【0074】
ステップS7の第3層間絶縁膜形成工程では第2絶縁層27に重ねて第3絶縁層28を形成する。そして、ステップS8の第3側壁形成工程では第3絶縁層28に開口部を形成する。続いて、該開口部にアルミニウム等の金属を埋め込むことで第5包囲壁24及び第3貫通電極36を形成する。
【0075】
第2絶縁層27のうち第1包囲壁16、第2包囲壁17、第1耐食絶縁膜19、第2耐食絶縁膜20に囲まれている場所の第2絶縁層27を第2犠牲層49とする。同様に、第3絶縁層28のうち第1包囲壁16、第2包囲壁17、第1耐食絶縁膜19、第2耐食絶縁膜20に囲まれている場所の第3絶縁層28を第3犠牲層50とする。そして、第1犠牲層47、第2犠牲層49及び第3犠牲層50を合わせて犠牲層51と称す。
【0076】
第2絶縁層27及び第3絶縁層28の形成方法は第1絶縁層26と同様の方法であり、説明を省略する。第4包囲壁23及び第5包囲壁24の形成方法も第3包囲壁22の形成方法と同様の方法であり説明を省略する。そして、第2貫通電極35及び第3貫通電極36の形成方法は第1貫通電極34の形成方法と同様の方法であり説明を省略する。
【0077】
ステップS9の蓋部形成工程では第3絶縁層28に重ねてチタン層、窒化チタン層、アルミニウム−銅合金層、窒化チタン層をこの順で積層した金属層52を形成する。続いて、図6(b)に示すように金属層52をパターニングして第1封止層30を形成する。このとき、第1封止層30に貫通孔30aを形成する。さらに、金属層52をパターニングして第3貫通電極36上に電極パッド37を形成する。
【0078】
第1封止層30及び電極パッド37は、例えば、スパッタ法やCVD法等により成膜した後、フォトリソグラフィー技術及びエッチング技術によるパターニングによって形成される。尚、第1封止層30及び電極パッド37は、同一の工程で形成されてもよいし、別々の工程で形成されてもよい。さらに、ステップS8の第3側壁形成工程とステップS9の蓋部形成工程とは同一工程にて実施しても良い。
【0079】
ステップS10の保護膜形成工程では、第1封止層30の少なくとも一部を避けて、第3絶縁層28上に保護膜31を形成する。保護膜31は、例えば、スパッタ法やCVD法等により成膜した後、フォトリソグラフィー技術及びエッチング技術によるパターニングによって形成される。
【0080】
図6(c)はステップS11の空洞部形成工程に対応する図である。図6(c)に示すように、貫通孔30aを通して振動素子5の周囲の犠牲層51をエッチングし、空洞部33を形成する。エッチングには、HFベーパーエッチングを採用している。
【0081】
包囲壁25、第1封止層30、保護膜31はエッチング液に腐食され難い材料から構成されている。従って、包囲壁25及び第1封止層30に囲まれた犠牲層51のみがエッチングされる。そして、包囲壁25を取り囲む絶縁層29はエッチングされずに残留する。
【0082】
第3包囲壁22と第1配線8との間、第1包囲壁16と第1配線8との間、第2包囲壁17と第1配線8との間には第1耐食絶縁膜19が配置されている。従って、犠牲層51をエッチングするエッチング液が第1配線8に沿って包囲壁25から絶縁層29に漏洩しないようになっている。同様に、第3包囲壁22と第2配線9との間、第1包囲壁16と第2配線9との間、第2包囲壁17と第2配線9との間には第2耐食絶縁膜20が配置されている。従って、犠牲層51をエッチングするエッチング液が第2配線9に沿って包囲壁25から絶縁層29に漏洩しないようになっている。
【0083】
図7(a)はステップS12の封止工程に対応する図である。図7(a)に示すように、第1封止層30上及び保護膜31上に第2封止層32を形成する。これにより、貫通孔30aを塞いで空洞部33を封止する。第2封止層32は、例えば、スパッタ法、CVD法等の気相成長法により形成することができる。このとき、減圧状態において第2封止層32を形成する。これにより、空洞部33を減圧状態のまま封止することができる。
【0084】
図7(b)及び図7(c)はステップS13の端子部形成工程に対応する図である。図7(b)に示すように、電極パッド37の上面を除いて、保護膜31上及び第2封止層32上に樹脂層38を形成する。より具体的には、まず、電極パッド37の上面の保護膜31をフォトリソグラフィー技術及びエッチング技術によってパターニングして開口する。次に、スピンコート法により樹脂を塗布し窒素雰囲気中で300℃〜400℃程度の熱処理を行う。これにより塗布した樹脂を硬化させて樹脂の膜を形成する。次に、フォトリソグラフィー技術及びエッチング技術によって樹脂の膜をパターニングして樹脂層38を形成する。
【0085】
電極パッド37上、樹脂層38上に、配線39を形成する。配線39は、スパッタ法やめっき法等による成膜処理と、フォトリソグラフィー技術及びエッチング技術によるパターニング処理と、により形成される。
【0086】
次に、図7(c)に示すように、樹脂層38上及び配線39上に、レジスト層41を形成する。レジスト層41は、配線39の外部端子40が形成される予定の場所を避けて形成される。レジスト層41は、例えば、スピンコート法等による成膜処理と、フォトリソグラフィー技術及びエッチング技術によるパターニング処理と、により形成される。
【0087】
次に、配線39上に外部端子40を形成する。外部端子40は、例えば、配線39上にハンダ膜を形成した後、180℃〜300℃程度に加熱してハンダ膜を溶融することで形成される。
【0088】
ステップS14のダイシング工程では、マザー基板46を切断予定線にて切断する。マザー基板46を粘着性のあるシートに貼る。続いて、先端にダイヤモンド粉が塗布された回転刃を用いて切断予定線に沿って切り込みを入れる。この後、シートを広げることにより切断予定線に沿ってマザー基板46が破断されて基板2の大きさに分割される。これにより、各レゾネーター1がチップ状に分離する。その結果、図1に示すように、レゾネーター1が完成する。
【0089】
上述したように、本実施形態によれば、以下の効果を有する。
(1)本実施形態によれば、ステップS11の空洞部形成工程において、エッチング液により犠牲層51が溶解されることにより、包囲壁25内に空洞部33が形成される。包囲壁25はエッチング液により溶解され難く、エッチング液が溶解する範囲を包囲壁25が制御する。第1配線8及び第2配線9は包囲壁25を貫通している。空洞部33を形成するときに第1配線8や第2配線9と包囲壁25との間からエッチング液が流出すると、包囲壁25を取り巻く絶縁層29は溶解する。本実施形態では第1配線8や第2配線9と包囲壁25との間に第1耐食絶縁膜19及び第2耐食絶縁膜20が配置されている。従って、第1配線8や第2配線9と包囲壁25との間からエッチング液が包囲壁25の外側に流出することを防止することができる。
【0090】
(2)本実施形態によれば、第1配線8や第2配線9と包囲壁25との間に第1耐食絶縁膜19及び第2耐食絶縁膜20が配置されている。この第1耐食絶縁膜19及び第2耐食絶縁膜20は犠牲層51よりエッチング液に対して腐食され難い性質を有している。従って、第1配線8や第2配線9と包囲壁25とを絶縁するとともに、第1配線8や第2配線9と包囲壁25との間からエッチング液が包囲壁25の外側に流出することを防止することができる。
【0091】
(3)本実施形態によれば、犠牲層51の材質は二酸化シリコンであり、第1耐食絶縁膜19及び第2耐食絶縁膜20の材質はアルミナである。従って、第1耐食絶縁膜19及び第2耐食絶縁膜20は絶縁性を有している。そして、エッチングにHFベーパーエッチング等を選択することにより、第1耐食絶縁膜19及び第2耐食絶縁膜20は犠牲層51より腐食され難くすることができる。
【0092】
(4)本実施形態によれば、レゾネーター1は振動素子5と発振回路44とを備えており、発振回路44が形成する波形を出力する。レゾネーター1はエッチング液が包囲壁25から流出することのない品質の良い電子装置になっている。従って、このレゾネーター1は品質良く波形を出力する電子装置とすることができる。
【0093】
(5)本実施形態によれば、包囲壁25及び第1封止層30は導電体により形成されている。従って、例えば接地して導電体の電位を固定することによって、包囲壁25及び第1封止層30により振動素子5は電磁波の伝播を遮られている。その結果、振動素子5は雑音となる電磁波の影響を受け難くすることができる。
【0094】
(6)本実施形態によれば、空洞部33内は減圧されていることから、空気が充填されているときに比べて可動電極7は振動し易くなっている。従って、振動素子5を品質良く振動させることができる。
【0095】
(7)本実施形態によれば、第1耐食絶縁膜19及び第2耐食絶縁膜20と重ねて包囲壁25が配置されている。そして、第1耐食絶縁膜19及び第2耐食絶縁膜20にアルミナを採用し、包囲壁25にアルミニウムと銅との合金を採用している。従って、熱膨張係数の近い金属を配置しているので、過熱されるときにも剥離し難くすることができる。
【0096】
(第2の実施形態)
次に、レゾネーターの一実施形態について図8〜図11を用いて説明する。本実施形態が第1の実施形態と異なるところは、エッチング液の漏洩を防止する構造が異なる点にある。尚、第1の実施形態と同じ点については説明を省略する。
【0097】
(レゾネーター)
図8はレゾネーターの構成を示す概略分解斜視図である。図9(a)は図8のレゾネーターのC−C’線及びE−E’線に沿う模式断面図であり、図9(b)は図8のレゾネーターのD−D’線及びF−F’線に沿う模式断面図である。図9(c)及び図9(d)は側壁延長部を示す要部拡大図である。すなわち、本実施形態では、図8及び図9に示すように、電子装置としてのレゾネーター55は振動素子5と振動素子5を駆動する駆動回路10とを備えている。レゾネーター55のうち駆動回路10以外の部分を発振装置55aとする。
【0098】
レゾネーター55は基板2を備え、基板2上に第1下地層3及び第2下地層4がこの順に積層されている。第2下地層4の材質はアルミナに加えて窒化シリコンを用いることができる。第2下地層4上の中央付近には機能素子としての振動素子5が設置されている。第2下地層4上には配線としての第3配線56と配線としての第4配線57とが設置されている。そして、第3配線56は固定電極6と接続され、第4配線57は可動電極7と接続されている。
【0099】
第2下地層4上において振動素子5のY方向側には第6包囲壁58が配置され、振動素子5の−Y方向側には第7包囲壁59が配置されている。第6包囲壁58の一端は第3配線56の近くの場所まで延在し、第6包囲壁58の他端は第4配線57の近くの場所まで延在して配置されている。同様に、第7包囲壁59の一端は第3配線56の近くの場所まで延在し、第7包囲壁59の他端は第4配線57の近くの場所まで延在して配置されている。
【0100】
第3配線56は固定電極6からX方向に延在して配置され、4箇所の屈曲部56aにて折れ曲がった折れ線状となっている。第6包囲壁58が第3配線56と接近する場所から振動素子5と離れる方向に向けて第1側壁右延長部60が配置されている。第1側壁右延長部60は第3配線56に沿って配置され、第3配線56と第1側壁右延長部60とが隣合う場所では第3配線56と第1側壁右延長部60との間隔は略同じ間隔となっている。従って、第1側壁右延長部60は第6包囲壁58からX方向に延在して配置され、4箇所の屈曲部60aにて折れ曲がった折れ線状となっている。
【0101】
同様に、第7包囲壁59が第3配線56と接近する場所から振動素子5と離れる方向に向けて第1側壁左延長部61が配置されている。第1側壁左延長部61は第3配線56に沿って配置され、第3配線56と第1側壁左延長部61とが隣合う場所では第3配線56と第1側壁左延長部61との間隔は略同じ間隔となっている。従って、第1側壁左延長部61は第6包囲壁58からX方向に延在して配置され、4箇所の屈曲部61aにて折れ曲がった折れ線状となっている。
【0102】
第1側壁右延長部60と第3配線56との間隔は漏電しない程度に狭く配置されている。従って、第3配線56は第1側壁右延長部60と絶縁状態となっている。同様に、第1側壁左延長部61と第3配線56との間隔も漏電しない程度に狭く配置されている。従って、第3配線56は第1側壁左延長部61とも絶縁状態となっている。
【0103】
第4配線57は可動電極7から−X方向に延在して配置され、4箇所の屈曲部57aにて折れ曲がった折れ線状となっている。第6包囲壁58が第4配線57と接近する場所から振動素子5と離れる方向に向けて第2側壁右延長部62が配置されている。第2側壁右延長部62は第4配線57に沿って配置され、第4配線57と第2側壁右延長部62とが隣合う場所では第4配線57と第2側壁右延長部62との間隔は略同じ間隔となっている。従って、第2側壁右延長部62は第6包囲壁58から−X方向に延在して配置され、4箇所の屈曲部62aにて折れ曲がった折れ線状となっている。
【0104】
同様に、第7包囲壁59が第4配線57と接近する場所から振動素子5と離れる方向に向けて第2側壁左延長部63が配置されている。第2側壁左延長部63は第4配線57に沿って配置され、第4配線57と第2側壁左延長部63とが隣合う場所では第4配線57と第2側壁左延長部63との間隔は略同じ間隔となっている。従って、第2側壁左延長部63は第7包囲壁59から−X方向に延在して配置され、4箇所の屈曲部63aにて折れ曲がった折れ線状となっている。
【0105】
第2側壁右延長部62と第4配線57との間隔は漏電しない程度に狭く配置されている。従って、第4配線57は第2側壁右延長部62と絶縁状態となっている。同様に、第2側壁左延長部63と第4配線57との間隔も漏電しない程度に狭く配置されている。従って、第4配線57は第2側壁左延長部63とも絶縁状態となっている。
【0106】
第6包囲壁58、第7包囲壁59、第1側壁右延長部60、第1側壁左延長部61、第2側壁右延長部62、第2側壁左延長部63の材質は第1包囲壁16及び第2包囲壁17と同じ材質を用いることができる。つまり、電気伝導性があり二酸化シリコンのエッチング液に対して腐食され難い性質があれば良く、特に限定されない。これらの材質には金属や電気伝導性のあるシリコン等を採用することができる。本実施形態では例えば、燐やホウ素等の不純物をドーピングすることにより電気伝導性が付与された多結晶シリコンを用いている。
【0107】
第3配線56と第6包囲壁58との間には層間絶縁膜としての第4絶縁層64が配置され、第3配線56と第1側壁右延長部60との間にも第4絶縁層64が配置されている。さらに、第3配線56と第7包囲壁59との間に第4絶縁層64が配置され、第3配線56と第1側壁左延長部61との間にも第4絶縁層64が配置されている。このとき、屈曲部56aと屈曲部60aとの間や屈曲部56aと屈曲部61aとの間の屈曲部64aでは第4絶縁層64も折れ曲がった折れ線状となっている。そして、第3配線56の上にも第4絶縁層64が配置されている。
【0108】
同様に、第4配線57と第6包囲壁58との間には層間絶縁膜としての第5絶縁層65が配置され、第4配線57と第2側壁右延長部62との間にも第5絶縁層65が配置される。さらに、第4配線57と第7包囲壁59との間にも第5絶縁層65が配置され、第4配線57と第2側壁左延長部63との間にも第5絶縁層65が配置される。このとき、屈曲部57aと屈曲部62aとの間や屈曲部57aと屈曲部63aとの間の屈曲部65aでは第5絶縁層65も折れ曲がった折れ線状となっている。そして、第4配線57の上にも第5絶縁層65が配置されている。
【0109】
第4絶縁層64及び第5絶縁層65は第1犠牲層47及び第1絶縁層26と接続する。そして、第4絶縁層64及び第5絶縁層65の材質は第1犠牲層47及び第1絶縁層26と同じ材質である二酸化シリコンとなっている。
【0110】
そして、第6包囲壁58、第7包囲壁59、第4絶縁層64、第5絶縁層65の上に被覆部及び側壁部としての第8包囲壁66が配置される。第8包囲壁66上には第4包囲壁23、第5包囲壁24が積層されている。第6包囲壁58、第7包囲壁59、第8包囲壁66、第4包囲壁23、第5包囲壁24は振動素子5を取り囲む被覆部及び側壁部としての包囲壁67を構成している。第8包囲壁66は第1の実施形態における第3包囲壁22に相当する壁であり、包囲壁67は第1の実施形態における包囲壁25に相当する壁である。
【0111】
第1側壁右延長部60及び第1側壁左延長部61の上と第1側壁右延長部60及び第1側壁左延長部61の間の第4絶縁層64の上とには第1側壁上延長部68が配置されている。つまり、第1側壁上延長部68は第1側壁右延長部60及び第1側壁左延長部61に架橋され、第4絶縁層64を覆うように配置されている。そして、第1側壁右延長部60、第1側壁左延長部61、第1側壁上延長部68により液流動防止部及び側壁延長部としての第1側壁延長部69が構成されている。
【0112】
同様に、第2側壁右延長部62及び第2側壁左延長部63の上と第2側壁右延長部62及び第2側壁左延長部63の間の第5絶縁層65との上には第2側壁上延長部70が配置されている。つまり、第2側壁上延長部70は第2側壁右延長部62及び第2側壁左延長部63に架橋され、第5絶縁層65を覆うように配置されている。そして、第2側壁右延長部62、第2側壁左延長部63、第2側壁上延長部70により液流動防止部及び側壁延長部としての第2側壁延長部71が構成されている。
【0113】
つまり、包囲壁67からX方向の絶縁層29に突出する第1側壁延長部69と第3配線56とで第4絶縁層64を挟むように配置されている。同様に、包囲壁67から−X方向の絶縁層29に突出する第2側壁延長部71と第4配線57とで第5絶縁層65を挟むように配置されている。
【0114】
(レゾネーターの製造方法)
次に上述したレゾネーター55の製造方法について図10及び図11にて説明する。図10は、レゾネーターの製造方法を示すフローチャートであり、図11はレゾネーターの製造方法を説明するための模式図である。
【0115】
図10のフローチャートにおいて、ステップS21は配線形成工程に相当し、基板上に振動素子、配線、中間端子、第6包囲壁及び第7包囲壁を形成する工程である。次にステップS22に移行する。ステップS22は第1層間絶縁膜形成工程に相当し、第1絶縁層、第4絶縁層、第5絶縁層を形成する工程である。ステップS22の第1層間絶縁膜形成工程、ステップS5の第2層間絶縁膜形成工程、ステップS7の第3層間絶縁膜形成工程により層間絶縁膜形成工程が構成されている。次にステップS23に移行する。ステップS23は第1側壁形成工程に相当し、第8包囲壁、第1側壁上延長部、第2側壁上延長部を形成する工程である。ステップS23の第1側壁形成工程、ステップS6の第2側壁形成工程、ステップS8の第3側壁形成工程により側壁形成工程が構成されている。次にステップS5に移行する。ステップS5以降は第1の実施形態と同じであり説明を省略する。以上の製造工程にてレゾネーターが完成する。
【0116】
次に、図11を用いて、図10に示したステップと対応させて、製造方法を詳細に説明する。図11(a)〜図11(b)はステップS21の配線形成工程に対応する図である。図11(a)に示すように、マザー基板46を用意し、マザー基板46上に第1下地層3及び第2下地層4を形成する。第1下地層3及び第2下地層4の形成方法は第1の実施形態と同様の方法を用いることができる。
【0117】
次に、図11(b)に示すように、第2下地層4上に第4配線57、第6包囲壁58、第7包囲壁59を形成する。このとき、第1側壁右延長部60、第1側壁左延長部61、第2側壁右延長部62、第2側壁左延長部63も同じ工程にて形成する。これらの配線、包囲壁、延長部はCVD法やスパッタ法等による成膜処理と、フォトリソグラフィー技術及びエッチング技術によるパターニング処理とを用いて形成される。多結晶シリコンからなるパターンを形成した後でこのパターンに電気伝導性を付与するために所定の不純物をドーピングする。
【0118】
図11(c)はステップS22の第1層間絶縁膜形成工程に対応する図である。図11(c)に示すように、第4配線57、第6包囲壁58、第7包囲壁59に重ねて第1絶縁層26を積層する。このとき、第3配線56上にも第1絶縁層26を積層する。第1絶縁層26はCVD法やスパッタ法等による成膜処理を用いて形成する。第1絶縁層26のうち第6包囲壁58、第7包囲壁59に囲まれている場所の第1絶縁層26を第1犠牲層47とする。第3配線56の周囲に位置する第1絶縁層26が第4絶縁層64であり、第4配線57の周囲に位置する第1絶縁層26が第5絶縁層65となっている。
【0119】
図11(d)〜図11(f)はステップS23の第1側壁形成工程に対応する図である。図11(d)に示すように、第6包囲壁58及び第7包囲壁59上に位置する第1絶縁層26をパターニングして第1絶縁層26を貫通する開口部を形成する。さらに、第1側壁右延長部60、第1側壁左延長部61、第2側壁右延長部62、第2側壁左延長部63上に位置する第1絶縁層26をパターニングして第1絶縁層26を貫通する開口部を形成する。尚、第4絶縁層64及び第5絶縁層65は除去せずに残しておく。
【0120】
次に、図11(e)及び(f)に示すように、開口部にアルミニウム等の金属を埋め込むことで第8包囲壁66、第2側壁上延長部70が形成される。尚、第1側壁上延長部68も同様に形成される。これにより、第2側壁延長部71が第5絶縁層65を覆い、第1側壁延長部69が第4絶縁層64を覆う形態となる。
【0121】
第8包囲壁66、第1側壁上延長部68、第2側壁上延長部70はCVD法やスパッタ法等による成膜処理とフォトリソグラフィー技術及びエッチング技術によるパターニング処理により形成される。
【0122】
ステップS23の次に行うステップS5の第2層間絶縁膜形成工程〜ステップS10の保護膜形成工程は第1の実施形態と同じであり、説明を省略する。ステップS11の空洞部形成工程では包囲壁67の内部に位置する貫通孔30aを通して振動素子5の周囲の犠牲層51をエッチングし、空洞部33を形成する。犠牲層51をエッチングするエッチング液にはフッ化水素酸や他のシリコン酸化膜を溶解するエッチング液を使うことができる。
【0123】
第3配線56が包囲壁67を貫通する場所には第1側壁延長部69が形成されている。第1側壁延長部69と第3配線56との間は漏電しない程度に接近して配置され、第1側壁延長部69と第3配線56との間には第4絶縁層64が設置されている。犠牲層51をエッチングするエッチング液が第3配線56に沿って移動するときエッチング液は第4絶縁層64を溶解する。エッチング液が循環しない場所ではエッチング液はエッチングの進行にともないエッチングする能力が低下する。そして、エッチング液は第1側壁延長部69と第3配線56との間から移動し難くなっている。従って、第4絶縁層64を溶解するエッチング液は第4絶縁層64を溶解し難くなる。その結果、エッチング液は第1側壁延長部69における第4絶縁層64をエッチングし難くなるので、エッチング液が包囲壁67から絶縁層29に漏洩し難くなるようになっている。
【0124】
同様に、第4配線57が包囲壁67を貫通する場所には第2側壁延長部71が形成されている。第2側壁延長部71は第1側壁延長部69と同様の構造となっている。従って、エッチング液は第2側壁延長部71における第5絶縁層65をエッチングし難くなるので、エッチング液が包囲壁67から絶縁層29に漏洩し難くなるようになっている。
【0125】
ステップS11の次に行われるステップS12の封止工程以降の工程は第1の実施形態と同じであり、説明を省略する。その結果、図8に示すように、レゾネーター55が完成する。
【0126】
上述したように、本実施形態によれば、以下の効果を有する。
(1)本実施形態によれば、第1側壁延長部69と第3配線56との間には第4絶縁層64が位置している為、第1側壁延長部69と第3配線56とは電気的に絶縁されている。同様に、第2側壁延長部71と第4配線57との間には第5絶縁層65が位置している為、第2側壁延長部71と第4配線57とは電気的に絶縁されている。従って、包囲壁67は第3配線56及び第4配線57と絶縁させることができる。
【0127】
(2)本実施形態によれば、包囲壁67の犠牲層51側からエッチング液が第1側壁延長部69と第3配線56との間の第4絶縁層64を溶解する。エッチングの進行にともなって第4絶縁層64を溶解したエッチング液は第4絶縁層64を溶解し難くなるので、エッチング液が移動し難い場所では第4絶縁層64が溶解され難くなる。第1側壁延長部69は突出している為、第1側壁延長部69と第3配線56との間に流入したエッチング液は第4絶縁層64を溶解し難くなる。その結果、第1側壁延長部69はエッチング液が包囲壁67から絶縁層29に流動することを防止することができる。第2側壁延長部71は第1側壁延長部69と同じ構造である為、第2側壁延長部71もエッチング液が包囲壁67から絶縁層29に流動することを防止することができる。
【0128】
(3)本実施形態によれば、第1側壁延長部69と第3配線56とに挟まれた第4絶縁層64は屈曲部64aを有している。屈曲部64aでは直線となっている場所よりエッチング液が移動するときの流体抵抗が大きくなる。従って、屈曲部64aではエッチング液が移動し難いので、第4絶縁層64が溶解され難くなる。その結果、第1側壁延長部69はエッチング液が包囲壁67から絶縁層29に流動することを防止することができる。第2側壁延長部71は第1側壁延長部69と同じ構造となっており、第5絶縁層65も屈曲部65aを有している。従って、第2側壁延長部71もエッチング液が包囲壁67から絶縁層29に流動することを防止することができる。
【0129】
(4)本実施形態によれば、第1側壁右延長部60、第1側壁左延長部61、第2側壁右延長部62及び第2側壁左延長部63は第6包囲壁58及び第7包囲壁59を形成する工程と同じ工程にて形成することができる。そして、第1の実施形態における第1耐食絶縁膜19及び第2耐食絶縁膜20が不要であることから、アルミナの層を形成してパターニングする工程を省くことができる。従って、生産性良くレゾネーター55を製造することができる。
【0130】
(第3の実施形態)
次に、レゾネーターの一実施形態について図12を用いて説明する。本実施形態が第1の実施形態と異なるところは、振動素子5及び包囲壁25を形成する工程と駆動回路10を形成する工程の一部が並行して行われる点にある。尚、第1の実施形態と同じ点については説明を省略する。
【0131】
図12は駆動回路におけるMOS素子の構造を示す模式図である。図12に示すように、駆動回路10にはMOS(Metal Oxide Semiconductor)素子が形成されている。基板2にドーピング処理が行なわれることによりソース領域74及びドレイン領域75が形成されている。ソース領域74とドレイン領域75との間にはゲート絶縁膜76が配置されている。ゲート絶縁膜76は絶縁できる膜であればよく、本実施形態では例えば酸化シリコンの膜を用いている。ゲート絶縁膜76はシリコン熱酸化またはスパッタ法、CVD法等の気相成長法により形成することができる。
【0132】
ゲート絶縁膜76と積層してゲート電極層77が配置されている。ゲート電極層77を形成するには多結晶シリコンからなるパターンを形成した後でこのパターンに電気伝導性を付与するために所定の不純物をドーピングする。この工程は、レゾネーター1の第2配線9、第1包囲壁16、第2包囲壁17を形成する工程と同じ工程にて形成することができる。
【0133】
ゲート電極層77上には第1絶縁層26が設置されている。この第1絶縁層26は包囲壁25の周囲に配置された第1絶縁層26と同じ絶縁層である。従って、本実施形態の第1絶縁層26と第1の実施形態の第1絶縁層26とは同じ工程にて形成することができる。
【0134】
ソース領域74上にはソース電極78が配置され、ドレイン領域75上にはドレイン電極79が配置されている。そして、ゲート電極層77にはゲート電極80が配置されている。ソース電極78、ドレイン電極79及びゲート電極80を形成するには、まず、第1絶縁層26をフォトリソグラフィー技術及びエッチング技術によるパターニング処理により開口部を形成する。次に、該開口部にアルミニウム等の金属を埋め込むことにより貫通電極を形成することができる。貫通電極はCVD法やスパッタ法等による成膜処理とフォトリソグラフィー技術及びエッチング技術によるパターニング処理により形成される。
【0135】
第1絶縁層26上には配線81が形成されている。配線81は第1の実施形態における第1貫通電極34を形成する方法を用いて形成することができる。そして、配線81上には第2絶縁層27、第3絶縁層28、保護膜31、樹脂層38、レジスト層41が積層されている。これらの層は第1の実施形態における層と同じ層であり、同じ工程にて形成することができる。
【0136】
上述したように、本実施形態によれば、以下の効果を有する。
(1)本実施形態によれば、MOS素子にゲート電極層77と第1絶縁層26とが設置されている。そして、第2配線9を形成する工程とMOS素子のゲート電極層77を形成する工程とは同じ工程にて行われる。さらに、絶縁層29の第1絶縁層26、第2絶縁層27、第3絶縁層28を形成する工程とMOS素子の第1絶縁層26、第2絶縁層27、第3絶縁層28を形成する工程とは同じ工程にて行われる。従って、基板2上に振動素子5を形成する工程とMOS素子を形成する工程とを別々に行う場合に比べて生産性良く振動素子5及びMOS素子を形成することができる。
【0137】
(第4の実施形態)
次に、レゾネーターを用いた電子機器の1つである時計の一実施形態について図13を用いて説明する。本実施形態が第1の実施形態と異なるところは、レゾネーターを活用した電子機器である点にある。尚、第1の実施形態と同じ点については説明を省略する。
【0138】
図13は、時計の構成を示す電気ブロック図である。図13に示すように、電子機器としての時計82は制御部83を備えている。制御部83はレゾネーター1と接続され、レゾネーター1は一定の周波数の矩形波信号を制御部83に出力する。制御部83は演算部を備え、演算部は矩形波信号と同期して各種の演算を行う。
【0139】
制御部83は表示部84及び入力部85を備えている。表示部84は制御部83の演算部が演算結果を表示する装置であり、液晶表示装置、有機EL(Electro−Luminescence)表示装置、時針分針等アナログ式表示装置等を用いることができる。入力部85は押しボタン式のスイッチや回転式のダイヤル等を用いることができる。
【0140】
時計82は現在時刻を表示する機能を備えている。入力部85を用いて操作者は所定の時刻における時刻を入力する。制御部83はレゾネーター1の出力を用いて時間の経過を演算する。そして、時刻を入力された時からの経過時間を加算して現在時刻を算出した結果を表示部84に出力する。表示部84は制御部83の信号を受けて現在時刻を表示する。
【0141】
時計82はストップウォッチの機能を備えている。入力部85を用いて操作者はボタン式のスイッチを押すことにより計時開始の指示信号を入力する。制御部83はレゾネーター1の出力を用いて時間の経過を演算する。そして、計時開始の信号を入力された時からの経過時間を算出し、算出した結果を表示部84に出力する。表示部84は制御部83の信号を受けて経過時間を表示する。
【0142】
上述したように、本実施形態によれば、以下の効果を有する。
(1)本実施形態によれば、時計82はレゾネーター1を備えている。このレゾネーター1はエッチング液が包囲壁25から流出することのない品質の良い装置になっている。従って、時計82は品質の良いレゾネーター1を備えた機器とすることができる。
【0143】
尚、本実施形態は上述した実施形態に限定されるものではなく、種々の変更や改良を加えることも可能である。変形例を以下に述べる。
(変形例1)
前記第1の実施形態では、包囲壁25内の空洞部33に電気駆動される機能素子として振動素子5を設置した。電気駆動される機能素子は振動素子5に限らず他の素子でも良い。例えば、梁の自由端に錘が配置された加速度センサー、ジャイロセンサー、水晶振動子、SAW(弾性表面波)素子、櫛歯電極等により可動するマイクロアクチュエーターを設置することができる。このときにもエッチング液が包囲壁25から流出することのない構造となっている為、品質良く機能素子を駆動させることができる。
【0144】
(変形例2)
前記第1の実施形態では、犠牲層51のエッチングにはHFベーパーエッチングを行ったが、他の方法を用いても良い。例えば、エッチング液にフッ化水素酸や緩衝フッ酸等の薬液を用いて犠牲層51をエッチングしても良い。このとき、第2下地層4上にエッチング液に対して腐食され難い膜を形成するのが好ましい。エッチング液に対して腐食され難い膜の材質はとくに限定されないが例えば、SiN、チタン、アルミニウム、金を用いることができる。これにより、犠牲層51を品質良く除去することができる。
【0145】
(変形例3)
前記第1の実施形態では、包囲壁25は第1包囲壁16及び第2包囲壁17の上に第3包囲壁22、第4包囲壁23、第5包囲壁24の3層の包囲壁を配置した。絶縁層29は第1絶縁層26、第2絶縁層27、第3絶縁層28の3層の絶縁層を配置した。包囲壁の数、絶縁層の数は特に限定されず、1〜2層でも良く、4層以上でも良い。振動素子5の大きさや製造工程の要因に応じて決定してもよい。これにより、振動素子5が大きいときにも対応することができる。また、工程設計の自由度を高めることができる。
【0146】
(変形例4)
前記第1の実施形態では、包囲壁25の平面形状は図1に示すように四角形の枠形状とした。包囲壁25の平面形状は振動素子5を囲む形状であれば特に限定されず、例えば、円形、楕円形、多角形の枠形状等の任意の形状にすることができる。これにより、配線、端子、駆動回路10を設定する配置の自由度を高めることができる。尚、変形例1〜4は前記第2の実施形態にも適用することができる。
【0147】
(変形例5)
前記第4の実施形態では、レゾネーター1を用いたがレゾネーター1の代わりにレゾネーター55を用いても良い。このときにも、品質良く所定の周波数の波形を活用することができる。
【0148】
(変形例6)
前記第4の実施形態では、レゾネーター1を用いる電子機器として時計82の例を示したが、電子機器は時計82に限らない。レゾネーター1を各種の電子機器に適用することができる。例えば、携帯電話、パーソナルコンピューター、電子辞書、デジタルカメラ、デジタル録音再生装置等に用いることができる。このとき、レゾネーター1は品質良く所定の周波数の波形を出力する為、品質の良い発振器を備えた電子機器とすることができる。
【0149】
(変形例7)
前記第3の実施形態では、駆動回路10のMOS素子を形成する工程の一部と第1の実施形態におけるレゾネーター1を形成する工程の一部とが同じ工程にて行われた。これに限らず、駆動回路10のMOS素子を形成する工程の一部と第2の実施形態におけるレゾネーター55を形成する工程の一部とが同じ工程にて行われても良い。具体的には、第4配線57を形成する工程とMOS素子のゲート電極層77を形成する工程とを同じ工程にて行っても良い。さらに、絶縁層29の第1絶縁層26、第2絶縁層27、第3絶縁層28を形成する工程とMOS素子の第1絶縁層26、第2絶縁層27、第3絶縁層28を形成する工程とは同じ工程にて行われる。従って、基板2上に振動素子5を形成する工程とMOS素子を形成する工程とを別々に行う場合に比べて生産性良く振動素子5及びMOS素子を形成することができる。
【符号の説明】
【0150】
1,55…電子装置としてのレゾネーター、1a,55a…電子装置としての発振装置、2…基板、5…機能素子としての振動素子、8…配線としての第1配線、9…配線としての第2配線、19…耐食性絶縁膜及び液流動防止部としての第1耐食絶縁膜、20…耐食性絶縁膜及び液流動防止部としての第2耐食絶縁膜、22…被覆部及び側壁部としての第3包囲壁、23…被覆部及び側壁部としての第4包囲壁、24…被覆部及び側壁部としての第5包囲壁、25,67…被覆部及び側壁部としての包囲壁、26…層間絶縁膜としての第1絶縁層、27…層間絶縁膜としての第2絶縁層、28…層間絶縁膜としての第3絶縁層、29…層間絶縁膜としての絶縁層、30…被覆部及び蓋部としての第1封止層、30a…開口部としての貫通孔、31…保護膜、33…空洞部、56…配線としての第3配線、57…配線としての第4配線、64…層間絶縁膜としての第4絶縁層、64a,65a…屈曲部、65…層間絶縁膜としての第5絶縁層、66…被覆部及び側壁部としての第8包囲壁、69…側壁延長部及び液流動防止部としての第1側壁延長部、71…側壁延長部及び液流動防止部としての第2側壁延長部、82…電子機器としての時計。
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子装置、電子機器及び電子装置の製造方法にかかわり、特に、空洞部を有する電子装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)技術を利用して形成した機能素子が基板上に設けられた空洞部に配置された電子装置が知られている。機能素子はマイクロ振動子やマイクロセンサー等であり、微小な構造体が振動や変形等の動作を行う。そして、機能素子が動作し易くするために空洞部内は減圧されている。
【0003】
空洞部を形成する方法が特許文献1に開示されている。これによると、基板上にMEMS構造体を形成しその上に層間絶縁膜を形成する。その後、貫通孔を有する第1被覆層がMEMS構造体の周囲の層間絶縁膜を覆うように形成する。続いて、第1被覆層の貫通孔を通してエッチング液を流動させることにより層間絶縁膜を除去してMEMS構造体の可動部を可動可能にする。最後に第1被覆層の貫通孔を第2被覆層で覆うことにより、MEMS構造体の周囲に密閉された空洞が形成される。以下第1被覆層を被覆部と称す。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−105411号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
MEMS構造体が電気駆動される形態のとき、被覆部は電気伝導性のある材料を用いて電磁波ノイズの空洞への侵入を防ぐ構造がとられる。従って、MEMS構造体と接続する配線と被覆部とは絶縁させて電気信号を被覆部の外側に取り出す必要がある。
【0006】
そして、配線と被覆部との間に層間絶縁膜を配置するとき、層間絶縁膜がエッチング液により溶解される。これにより、エッチング液が被覆部の周囲に流出する。そして、エッチング液が被覆部の周囲に位置する構造物に損傷を与える危険性がある。例えば、被覆部の周囲に層間絶縁膜が配置されるときには、被覆部の周囲の層間絶縁膜が損傷を受ける。その結果、被覆部の強度が低下して空洞部が維持できなくなる。そこで、被覆部の外にエッチング液が流出し難い構造の電子装置が望まれていた。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態または適用例として実現することが可能である。
【0008】
[適用例1]
本適用例にかかる電子装置であって、基板上の空洞部内に位置し電気駆動される機能素子と、前記空洞部の周囲を取り巻く層間絶縁膜と前記空洞部とを画成する電気伝導性を有する被覆部と、前記機能素子と接続し前記被覆部を貫通する配線と、を有し、前記配線が前記被覆部を貫通する場所には前記層間絶縁膜を溶解するエッチング液が前記空洞部から前記層間絶縁膜に流動することを防止し前記被覆部と前記配線とを絶縁する液流動防止部を備えることを特徴とする。
【0009】
この電子装置によれば、基板上において層間絶縁膜と空洞部とが被覆部により画成されている。空洞部には機能素子が位置し、機能素子と接続して配線が設置されている。配線は被覆部を貫通している。配線と被覆部との間には液流動防止部が配置されている。液流動防止部は被覆部と配線とを絶縁するので、被覆部と配線との間では電流が流されない。
【0010】
エッチング液により層間絶縁膜が溶解されることにより、被覆部内の空洞部が形成される。被覆部はエッチング液により溶解され難く、エッチング液が溶解する範囲を被覆部が制御する。空洞部内に位置する配線もエッチング液により溶解され難い。そして、配線は被覆部を貫通している。空洞部を形成するときに配線と被覆部との間からエッチング液が流出するときには、被覆部を取り巻く層間絶縁膜は溶解する。本適用例では配線と被覆部との間に液流動防止部が配置されているので、配線と被覆部との間からエッチング液が被覆部の外側に流出することを防止することができる。
【0011】
[適用例2]
上記適用例にかかる電子装置において、前記液流動防止部は前記層間絶縁膜より前記エッチング液に対して腐食され難い耐食性絶縁膜を有し、前記耐食性絶縁膜は前記配線と前記被覆部との間に位置することを特徴とする。
【0012】
この電子装置によれば、配線と被覆部との間に耐食性絶縁膜が配置されている。この耐食性絶縁膜は層間絶縁膜よりエッチング液に対して腐食され難い性質を有している。従って、耐食性絶縁膜は配線と被覆部とを絶縁するとともに、配線と被覆部との間からエッチング液が被覆部の外側に流出することを防止することができる。
【0013】
[適用例3]
上記適用例にかかる電子装置において、前記層間絶縁膜は二酸化シリコンであり、前記耐食性絶縁膜はアルミナであることを特徴とする。
【0014】
この電子装置によれば、層間絶縁膜は二酸化シリコンであり、耐食性絶縁膜はアルミナであることから、層間絶縁膜及び耐食性絶縁膜は絶縁性を有している。そして、エッチングにHF(フッ化水素)ベーパーエッチングを選択することにより、耐食性絶縁膜は層間絶縁膜より耐エッチング性を確実に有することができる。
【0015】
[適用例4]
上記適用例にかかる電子装置において、前記液流動防止部は前記被覆部から前記層間絶縁膜へ突出する側壁延長部を有し、前記側壁延長部と前記配線とで前記層間絶縁膜を挟むように配置されたことを特徴とする。
【0016】
この電子装置によれば、液流動防止部は被覆部から層間絶縁膜へ突出する側壁延長部を有している。そして、側壁延長部と配線との間には層間絶縁膜が位置している為、側壁延長部と配線とは電気的に絶縁されている。そして、空洞部を形成するとき被覆部の空洞部側からエッチング液が側壁延長部と配線との間の層間絶縁膜を溶解する。層間絶縁膜を溶解したエッチング液は層間絶縁膜を溶解し難くなるので、エッチング液が移動し難い場所では層間絶縁膜が溶解され難くなる。側壁延長部は突出している為、側壁延長部と配線との間に流入したエッチング液は移動し難くなり層間絶縁膜を溶解し難くなる。その結果、側壁延長部はエッチング液が空洞部から層間絶縁膜に流動することを防止することができる。
【0017】
[適用例5]
上記適用例にかかる電子装置において、前記側壁延長部及び前記配線に挟まれた前記層間絶縁膜は屈曲部を有することを特徴とする。
【0018】
この電子装置によれば、側壁延長部及び配線に覆われた層間絶縁膜は屈曲部を有している。屈曲部では直線となっている場所よりエッチング液が移動するときの流体抵抗が大きくなる。従って、屈曲部ではエッチング液が移動し難いので、側壁延長部と配線とに挟まれた層間絶縁膜が溶解され難くなる。その結果、側壁延長部はエッチング液が空洞部から層間絶縁膜に流動することを防止することができる。
【0019】
[適用例6]
本適用例にかかる電子機器は、発振回路を備えた電子機器であって、前記発振回路に上記に記載の電子装置を用いたことを特徴とする。
【0020】
この電子機器によれば、電子機器は発振回路に上記の電子装置を備えており、電子装置が波形を形成している。この電子装置はエッチング液が被覆部から流出することのない品質の良い電子装置になっている。従って、電子機器は品質の良い電子装置を備えた電子機器とすることができる。
【0021】
[適用例7]
本適用例にかかる電子装置の製造方法であって、基板上に形成された機能素子と接続して配線を形成する配線形成工程と、前記配線を覆って耐食性絶縁膜を形成する耐食性絶縁膜形成工程と、前記基板、前記配線、前記耐食性絶縁膜上に層間絶縁膜を形成する層間絶縁膜形成工程と、前記機能素子を囲むように前記層間絶縁膜を筒状に除去し、除去した場所に側壁部を形成する側壁形成工程と、前記側壁部と前記側壁部に囲まれた前記層間絶縁膜とに重ねて開口部を有する蓋部を形成する蓋部形成工程と、前記側壁部を取り巻く前記層間絶縁膜上に保護膜を形成する保護膜形成工程と、前記開口部からエッチング液を流入させて前記基板と前記側壁部と前記蓋部とに囲まれた場所の前記層間絶縁膜をエッチングして除去し空洞部を形成する空洞部形成工程と、前記開口部を封止する封止工程と、を有し、前記耐食性絶縁膜形成工程では前記層間絶縁膜よりエッチングされ難い前記耐食性絶縁膜を前記配線と前記側壁部との間に形成することを特徴とする。
【0022】
この電子装置の製造方法によれば、配線形成工程において基板上に形成された機能素子と接続して配線が形成される。耐食性絶縁膜形成工程では配線上に耐食性絶縁膜が形成される。そして、層間絶縁膜形成工程では基板、配線、耐食性絶縁膜上に層間絶縁膜が形成される。側壁形成工程では層間絶縁膜が機能素子を囲むように筒状に除去され、除去された場所に側壁部が形成される。これにより、側壁部に囲まれた場所には層間絶縁膜が位置する。
【0023】
蓋部形成工程では側壁部と側壁部に囲まれた層間絶縁膜とに重ねて開口部を有する蓋部が形成される。保護膜形成工程では側壁部を取り巻く層間絶縁膜上に保護膜が形成される。これにより、側壁部を取り巻く層間絶縁膜はエッチングされないようになる。空洞部形成工程では開口部から基板と側壁部と蓋部とに囲まれた場所の層間絶縁膜がエッチングされて除去され空洞部が形成される。尚、開口部からエッチング液を流入させるのは、エッチング液を霧状にて流入させる場合と液状にて流入させる場合とがある。封止工程では開口部が封止される。これにより、空洞部は密閉される。
【0024】
基板上には機能素子が形成されており、機能素子と接続して配線が形成される。配線を覆って耐食性絶縁膜が形成され、耐食性絶縁膜上には側壁部が形成される。これにより、配線と側壁部とが絶縁される。耐食性絶縁膜は層間絶縁膜よりエッチングされ難い膜である為、側壁部に囲まれた層間絶縁膜をエッチングするときに耐食性絶縁膜は配線と側壁部との間に残留する。従って、側壁部に囲まれた場所から配線と側壁部との間を抜けてエッチング液が流出することを防止することができる。
【0025】
[適用例8]
本適用例にかかる電子装置の製造方法であって、基板上に形成された機能素子と接続して配線を形成する配線形成工程と、前記基板及び前記配線を覆って層間絶縁膜を形成する層間絶縁膜形成工程と、前記機能素子を囲むように前記層間絶縁膜を筒状に除去し、除去した場所に側壁部を形成する側壁形成工程と、前記側壁部と前記配線とが交差する場所から前記側壁部の周囲の前記配線に沿って側壁延長部を形成する側壁延長部形成工程と、前記側壁部と前記側壁部に囲まれた前記層間絶縁膜とに重ねて開口部を有する蓋部を形成する蓋部形成工程と、前記側壁部を取り巻く前記層間絶縁膜上に保護膜を形成する保護膜形成工程と、前記開口部からエッチング液を流入させて前記基板と前記側壁部と前記蓋部とに囲まれた場所の前記層間絶縁膜をエッチングして除去し空洞部を形成する空洞部形成工程と、前記開口部を封止する封止工程と、を有し、前記層間絶縁膜形成工程では前記配線を覆って前記層間絶縁膜を形成し、前記側壁延長部形成工程では、前記配線を覆う前記層間絶縁膜をさらに側壁延長部が覆うことを特徴とする。
【0026】
この電子装置の製造方法によれば、配線形成工程において基板上に形成された機能素子と接続して配線が形成される。層間絶縁膜形成工程では基板及び配線を覆って層間絶縁膜が形成される。そして、側壁形成工程では機能素子を囲むように基板及び配線上の層間絶縁膜が筒状に除去され、除去した場所に側壁部が形成される。
【0027】
側壁延長部形成工程では側壁部と配線とが交差する場所から側壁部の周囲の配線に沿って配線を覆う層間絶縁膜がさらに側壁延長部に覆われる。これにより配線と側壁延長部とが絶縁される。蓋部形成工程では側壁部と側壁部に囲まれた層間絶縁膜とに重ねて開口部を有する蓋部が形成される。保護膜形成工程では、側壁部を取り巻く層間絶縁膜上に保護膜が形成される。これにより、側壁部を取り巻く層間絶縁膜はエッチングされないようになる。空洞部形成工程では開口部から基板と側壁部と蓋部とに囲まれた場所の層間絶縁膜がエッチングされて除去され空洞部が形成される。そして、封止工程では開口部が封止される。これにより、空洞部は密閉される。
【0028】
基板上には機能素子が形成されており、機能素子と接続して配線が形成される。配線上には層間絶縁膜が形成され、層間絶縁膜を覆って側壁部及び側壁延長部が形成される。これにより、側壁延長部が無いときに比べて、側壁部に囲まれた場所から配線と側壁延長部との間を抜けてエッチング液が流出し難くなる。従って、側壁部に囲まれた場所から配線と側壁延長部との間を抜けてエッチング液が流出することを防止することができる。
【0029】
[適用例9]
上記適用例にかかる電子装置の製造方法において、前記基板上にはMOS素子が形成され、前記配線と前記層間絶縁膜とのうち少なくとも一方は前記MOS素子を形成する工程にて形成されることを特徴とする。
【0030】
この電子装置の製造方法によれば、MOS(Metal Oxide Semiconductor)素子に配線と層間絶縁膜とが設置されている。そして、機能素子に配線を形成する工程とMOS素子に配線を形成する工程とは同じ工程にて行われる。さらに、機能素子に層間絶縁膜を形成する工程とMOS素子に層間絶縁膜を形成する工程とは同じ工程にて行われる。従って、基板上の機能素子を形成する工程とMOS素子を形成する工程とを別々に行う場合に比べて生産性良く機能素子及びMOS素子を形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】第1の実施形態にかかわるレゾネーターの構成を示す概略分解斜視図。
【図2】(a)は図1のレゾネーターのA−A’線に沿う模式断面図、(b)は図1のレゾネーターのB−B’線に沿う模式断面図。
【図3】(a)はレゾネーターの回路構成を示すブロック図、(b)は、レゾネーターの製造方法を示すフローチャート。
【図4】レゾネーターの製造方法を説明するための模式図。
【図5】レゾネーターの製造方法を説明するための模式図。
【図6】レゾネーターの製造方法を説明するための模式図。
【図7】レゾネーターの製造方法を説明するための模式図。
【図8】第2の実施形態にかかわるレゾネーターの構成を示す概略分解斜視図。
【図9】(a)は図8のレゾネーターのC−C’線及びE−E’線に沿う模式断面図、(b)は図8のレゾネーターのD−D’線及びF−F’線に沿う模式断面図、(c)及び(d)は側壁延長部を示す要部拡大図。
【図10】レゾネーターの製造方法を示すフローチャート。
【図11】レゾネーターの製造方法を説明するための模式図。
【図12】第3の実施形態にかかわる駆動回路におけるMOS素子の構造を示す模式図。
【図13】第4の実施形態にかかわる時計の構成を示す電気ブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、本発明を具体化した実施形態について図面に従って説明する。尚、各図面における各部材は、各図面上で認識可能な程度の大きさとするため、各部材毎に縮尺を異ならせて図示している。
(第1の実施形態)
本実施形態では、振動素子を空洞内に備えて所定の周波数の波形を出力するレゾネーターとこのレゾネーターを製造する特徴的な例について、図1〜図7に従って説明する。
【0033】
(レゾネーター)
図1はレゾネーターの構成を示す概略分解斜視図である。図2(a)は図1のレゾネーターのA−A’線に沿う模式断面図であり、図2(b)は図1のレゾネーターのB−B’線に沿う模式断面図である。最初にレゾネーター1について図1及び図2に従って説明する。電子装置としてのレゾネーター1は長方形の基板2を備えている。基板2の長手方向をX方向とし、基板2の平面方向でX方向と直交する方向をY方向とする。基板2の厚み方向をZ方向とする。基板2の材質は特に限定されないが、シリコン基板等の半導体基板、セラミックス基板、ガラス基板、サファイア基板、合成樹脂基板等の各種の基板を用いることができる。基板2上に半導体による集積回路を形成するときには、シリコン基板等の半導体基板を用いる。本実施形態では、例えば、シリコン基板を採用している。基板2の厚みは特に限定されないが本実施形態では例えば、200μm〜600μmの厚みを採用している。
【0034】
基板2上には第1下地層3が形成されている。第1下地層3としては、例えば、トレンチ絶縁層、LOCOS(Local oxidation of silicon)絶縁層、セミリセスLOCOS絶縁層を用いることができる。第1下地層3は、基板2上に形成された複数の素子間を電気的に絶縁する絶縁層となっている。
【0035】
第1下地層3上の一部には第2下地層4が形成されている。第2下地層4の材質は、特に限定されないが二酸化シリコンの膜をエッチングするエッチング液に対して腐食され難い材質であれば良い。例えば、第2下地層4の材質にアルミナを用いることができる。これにより、第2下地層4は、第2下地層4上にてエッチング処理を行なうときのエッチングストッパー層として機能することができる。
【0036】
第2下地層4上の中央付近には機能素子としての振動素子5が設置されている。振動素子5は固定電極6と可動電極7とを備えている。固定電極6は第2下地層4上に設置されている。可動電極7は固定部7aと可動部7bと支持部7cとを有する。固定部7aは第2下地層4上に形成され、可動部7bは固定電極6に対向する場所に配置されている。そして、支持部7cは、可動部7bと固定部7aとを連結するように配置され可動部7bを支持している。可動部7bは支持部7cにより支持された片持ち梁の構造になっている。これにより、可動部7bを振動させることにより、可動部7bと固定電極6との距離を変動させることができる。
【0037】
第2下地層4上には配線としての第1配線8と配線としての第2配線9とが設置されている。そして、第1配線8は固定電極6と接続され、第2配線9は可動電極7と接続されている。第1下地層3上には駆動回路10が設置され、第1下地層3上には第1中間端子11及び第2中間端子12が設置されている。第1配線8の一端は駆動回路10と接続され、第1配線8の別の他端は第1中間端子11と接続されている。第2配線9の一端は駆動回路10と接続され、第2配線9の別の他端は第2中間端子12と接続されている。そして、第1中間端子11と第2中間端子12との間の電圧を検出することにより、振動素子5に印加される電圧信号を検出することができる。
【0038】
駆動回路10はトランジスターやキャパシター等の電気素子によって構成され、振動素子5に駆動信号を出力する。第1下地層3上には第3中間端子13、第4中間端子14及び第5中間端子15が設置されている。そして、第3中間端子13と駆動回路10とは配線13aにより接続され、第4中間端子14と駆動回路10とは配線14aにより接続されている。同様に、第5中間端子15と駆動回路10とは配線15aにより接続されている。第3中間端子13はグランドライン用の端子であり、第4中間端子14は電源供給用の端子である。そして、第5中間端子15は信号出力用の端子である。駆動回路10は所定の周波数の電圧信号を形成する回路であり、電圧信号を第5中間端子15に出力する。換言すれば、レゾネーター1は、振動素子5と駆動回路10とが同じ基板2上に併設された発振器となっている。レゾネーター1のうち駆動回路10以外の部分を発振装置1aとする。
【0039】
第2下地層4上において振動素子5のY方向側には第1包囲壁16が配置され、振動素子5の−Y方向側には第2包囲壁17が配置されている。第1包囲壁16の一端は第1配線8の近くの場所まで延在し、第1包囲壁16の別の他端は第2配線9の近くの場所まで延在して配置されている。同様に、第2包囲壁17の一端は第1配線8の近くの場所まで延在し、第2包囲壁17の別の他端は第2配線9の近くの場所まで延在して配置されている。第2包囲壁17の近くには第6中間端子18が設置され、第2包囲壁17と第6中間端子18とは配線18aによって接続されている。
【0040】
そして、振動素子5のX方向側では第1配線8を跨いで第1包囲壁16と第2包囲壁17とを接続するように耐食性絶縁膜及び液流動防止部としての第1耐食絶縁膜19が配置されている。詳しくは、第1耐食絶縁膜19は第1包囲壁16の上から第1包囲壁16と第1配線8との間の第2下地層4上を経て第1配線8上に配置されている。続いて、第1耐食絶縁膜19は第1配線8の上から第1配線8と第2包囲壁17との間の第2下地層4上を経て第2包囲壁17上に配置されている。尚、第2下地層4は第1包囲壁16と第2包囲壁17とに囲まれた場所とその周囲に設置されている。これにより、第1包囲壁16及び第2包囲壁17とに囲まれた場所の基板2は第2下地層4に覆われた状態となっている。振動素子5の−X方向側では第2配線9を跨いで第1包囲壁16と第2包囲壁17とを接続するように耐食性絶縁膜及び液流動防止部としての第2耐食絶縁膜20が配置されている。第2耐食絶縁膜20が配置される形態の詳細は第1耐食絶縁膜19の形態と同じ形態となっており、説明を省略する。
【0041】
振動素子5、第1配線8、第2配線9、第1中間端子11〜第5中間端子15、配線13a、配線14a、配線15a、第1包囲壁16、第2包囲壁17、第6中間端子18及び配線18aの各部材の材質は、電気伝導性があり二酸化シリコンのエッチング液に対して腐食され難ければ良く特に限定されない。これらの材質には金属や電気伝導性のあるシリコン等を採用することができる。本実施形態では例えば、燐やホウ素等の不純物をドーピングすることにより電気伝導性が付与された多結晶シリコンや、アルミニウム銅合金を用いている。
【0042】
第1耐食絶縁膜19及び第2耐食絶縁膜20の材質は電気絶縁性があり、二酸化シリコンをエッチングするエッチング液に対してエッチングされ難い材質であえば良い。これらの材質にはアルミナ、Si3N4、ポリイミド樹脂、アクリル系樹脂、ノボラック樹脂、ジアゾナストキノン樹脂等を好適に用いることができる。本実施形態では、例えば、アルミナを採用している。
【0043】
第1包囲壁16、第2包囲壁17、第1耐食絶縁膜19及び第2耐食絶縁膜20と重ねて第3包囲壁22が配置され、第3包囲壁22と重ねて第4包囲壁23が配置されている。さらに、第4包囲壁23と重ねて第5包囲壁24が配置されている。第3包囲壁22〜第5包囲壁24は四角形の枠形状をしており、振動素子5の周囲を取り囲むように配置されている。第1包囲壁16、第2包囲壁17、第1耐食絶縁膜19、第2耐食絶縁膜20、第3包囲壁22、第4包囲壁23、第5包囲壁24は振動素子5を取り囲む包囲壁25を構成している。
【0044】
第3包囲壁22〜第5包囲壁24の材質としては、電気伝導性と構造的強度とがあり、二酸化シリコンのエッチング液に対して腐食され難い材質で有れば良く、多結晶シリコン、アルミニウム、銅、タングステン、チタン等の金属やその合金を用いることができる。本実施形態では例えば、アルミニウムと銅との合金を採用している。
【0045】
包囲壁25の周囲には第1絶縁層26、第2絶縁層27、第3絶縁層28がこの順に積層された層間絶縁膜としての絶縁層29が配置されている。絶縁層29の材質は電気絶縁性があってエッチング液によって除去可能であれば良く、例えば、二酸化シリコンを用いることができる。
【0046】
第1包囲壁16、第2包囲壁17、第3包囲壁22、第4包囲壁23、第5包囲壁24は共に電気伝導性のある材料からなり、電気的に接続している。そして、第6中間端子18は第2包囲壁17と電気的に接続している。従って、第1包囲壁16、第2包囲壁17、第3包囲壁22、第4包囲壁23、第5包囲壁24及び第6中間端子18は同じ電位となる。第1配線8は第1耐食絶縁膜19を介して第1包囲壁16、第2包囲壁17、第3包囲壁22に囲まれている。第1耐食絶縁膜19は電気絶縁性のある材質からなっている。これにより、第1配線8は第1包囲壁16、第2包囲壁17、第3包囲壁22と電気的に絶縁されている。同様に、第2配線9は第2耐食絶縁膜20を介して第1包囲壁16、第2包囲壁17、第3包囲壁22に囲まれている。第2耐食絶縁膜20は電気絶縁性のある材質からなっている。これにより、第2配線9は第1包囲壁16、第2包囲壁17、第3包囲壁22と電気的に絶縁されている。
【0047】
包囲壁25の上側には包囲壁25に蓋をするように被覆部及び蓋部としての第1封止層30が配置されている。第1封止層30には開口部としての貫通孔30aが複数形成されている。貫通孔30aの数及び大きさは特に限定されない。本実施形態では例えば、第1封止層30に16個の貫通孔30aが形成されている。第1封止層30の材質は電気伝導性や構造的強度があり、二酸化シリコンのエッチング液に対して腐食され難い材質で有れば良く特に限定されない。本実施形態では例えば、チタン層、窒化チタン層、アルミニウム−銅合金層、窒化チタン層がこの順で積層された積層構造を採用している。
【0048】
第1封止層30上の外周に位置する部分と第3絶縁層28とに重ねて保護膜31が積層されている。この保護膜31は貫通孔30aを塞がないように配置される。保護膜31の材質は二酸化シリコンをエッチングするエッチング液に対して腐食され難い材料であれば良く、特に限定されない。保護膜31の材質としてTEOS(テトラ・エトキシ・シラン)酸化膜、窒化シリコン等を用いることができる。本実施形態では例えば、保護膜31の材質にTEOS酸化膜と窒化シリコンの積層膜を採用している。
【0049】
第1封止層30と重ねて第2封止層32が積層されている。第2封止層32は第1封止層30の貫通孔30aを塞いでいる。第2封止層32の材質としては貫通孔30aを塞げる強度のある膜を形成できれば良く、例えば、アルミニウム、チタン、タングステン、チタンニッケル合金等の金属を用いることができる。本実施形態では例えば、第2封止層32の材質にアルミニウムを採用している。第2封止層32の膜厚は特に限定されないが本実施形態では例えば、3μm程度に設定している。
【0050】
第2下地層4、包囲壁25、第1封止層30に囲まれた場所は空洞部33となっている。包囲壁25、第1封止層30は空洞部33を覆う被覆部に対応する。そして、振動素子5は空洞部33に設置されている。空洞部33の気圧は減圧されており、可動電極7の可動部7bが振動し易くなっている。そして、第1封止層30及び第2封止層32は、空洞部33が減圧した状態で空洞部33を封止する封止部材として機能している。
【0051】
第1中間端子11、第2中間端子12、第3中間端子13、第4中間端子14、第5中間端子15、第6中間端子18の上には各端子と重ねて第1貫通電極34が配置され、第1貫通電極34と重ねて第2貫通電極35が配置されている。さらに、第2貫通電極35と重ねて第3貫通電極36が配置されている。第1貫通電極34、第2貫通電極35、第3貫通電極36はそれぞれ第1絶縁層26、第2絶縁層27、第3絶縁層28を貫通する電極となっている。
【0052】
第3貫通電極36上には電極パッド37が設置され、保護膜31は電極パッド37を露出するように配置されている。保護膜31及び第2封止層32上には樹脂層38が積層されている。樹脂層38は電極パッド37の上方を避けて配置される。樹脂層38の材質としては、ポリイミド樹脂、シリコーン変性ポリイミド樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン変性エポキシ樹脂、BCB(ベンゾシクロブテン)、PBO(ポリベンゾオキサゾール)等の樹脂を好適に用いることができる。樹脂層38の膜厚は特に限定されないが、例えば、10μm以上が好ましい。これにより、レゾネーターを実装する際に破損しないように応力を吸収することができる。
【0053】
電極パッド37上から樹脂層38上にかけて配線39が設置されている。配線39の材質は特に限定されず電気伝導性を有する材質であれば良い。配線39には、例えば、チタン−タングステン合金層、銅層がこの順で積層された金属層や銅層、クロム層、アルミニウム層等の金属層の単層構造やこれらの層を積層した積層構造を用いてもよい。
【0054】
配線39上には外部端子40が設置されている。外部端子40は、配線39と電気的に接続されている。外部端子40の材質は特に限定されないが、電気伝導性を有していれば良く、各種類の金属を用いることができる。本実施形態では例えばハンダを採用している。外部端子40は略球状に形成されている。
【0055】
配線39及び樹脂層38上にレジスト層41が積層されている。レジスト層41は外部端子40の一部が露出するように形成されている。レジスト層41は配線39の酸化や腐食を防止し、電気的な不良を防ぐことができる。
【0056】
レゾネーター1は例えば上記のようにチップ状にした半導体基板からなる基板2の上方に外部端子40を直接設けることができる。そのため、レゾネーター1のパッケージサイズを、半導体チップとほぼ等しくすることができる。
【0057】
駆動回路10は第1配線8を介して固定電極6と接続され、第2配線9を介して可動電極7と接続されている。駆動回路10が振動素子5に電圧を印加することにより、固定電極6と可動電極7との間には静電気が作用する。そして、振動素子5に印加する電圧を変動させることにより可動電極7が振動する。これにより、固定電極6と可動電極7との間の静電容量を変動させることができる。そして、静電容量が変動する特性は可動電極7の固有振動数によって設定される。従って、振動素子5を用いて特定の周波数の電圧波形を形成することが可能になっている。
【0058】
空洞部33内は減圧されていることから、空気が充填されているときに比べて可動電極7は振動し易くなっている。さらに、包囲壁25及び第1封止層30は電気伝導性があり、第6中間端子18を通じて所定の電圧に維持されている。従って、レゾネーター1の外部から雑音となる電磁波が伝播するときにも、包囲壁25及び第1封止層30が電磁波の伝播を遮ることができる。その結果、振動素子5は雑音となる電磁波の影響を受け難くすることができる。
【0059】
図3(a)はレゾネーターの回路構成を示すブロック図である。図3(a)に示すように、レゾネーター1が備える駆動回路10は発振回路44と波形形成回路45とを有している。発振回路44は振動素子5と接続され、所定の周波数の波形を形成する回路となっている。そして、波形形成回路45は発振回路44が出力する波形を分周して波形の周波数を変えたり、波形の形状を変える機能を備えている。例えば、三角波、矩形波、パルス波等の波形を出力する。波形形成回路45は、発振回路44が出力する周波数より低い周波数の波形を出力することが可能となっている。
【0060】
(レゾネーターの製造方法)
次に上述したレゾネーター1の製造方法について図3〜図7にて説明する。図3(b)は、レゾネーターの製造方法を示すフローチャートであり、図4〜図7はレゾネーターの製造方法を説明するための模式図である。尚、駆動回路10、第3中間端子13、第4中間端子14、第5中間端子15、配線13a,14a,15aの製造方法は公知であり、説明を省略する。
【0061】
図3(b)のフローチャートにおいて、ステップS1は配線形成工程に相当し、基板上に振動素子、配線、中間端子、第1包囲壁及び第2包囲壁を形成する工程である。次にステップS2に移行する。ステップS2は耐食性絶縁膜形成工程に相当し、配線に重ねて第1耐食絶縁膜及び第2耐食絶縁膜を形成する工程である。次にステップS3に移行する。ステップS3は第1層間絶縁膜形成工程に相当し、振動素子上に第1絶縁層を形成する工程である。次にステップS4に移行する。ステップS4は第1側壁形成工程に相当し、第3包囲壁を形成する工程である。次にステップS5に移行する。
【0062】
ステップS5は第2層間絶縁膜形成工程に相当し、第1絶縁層に重ねて第2絶縁層を形成する工程である。次にステップS6に移行する。ステップS6は第2側壁形成工程に相当し、第3包囲壁に重ねて第4包囲壁を形成する工程である。次にステップS7に移行する。ステップS7は第3層間絶縁膜形成工程に相当し、第2絶縁層に重ねて第3絶縁層を形成する工程である。ステップS3の第1層間絶縁膜成工程、ステップS5の第2層間絶縁膜形成工程、ステップS7の第3層間絶縁膜形成工程により層間絶縁膜形成工程が構成されている。次にステップS8に移行する。ステップS8は第3側壁形成工程に相当し、第4包囲壁に重ねて第5包囲壁を形成する工程である。ステップS4の第1側壁形成工程、ステップS6の第2側壁形成工程、ステップS8の第3側壁形成工程により側壁形成工程が構成されている。次にステップS9に移行する。ステップS9は蓋部形成工程に相当し、第5包囲壁及び第5包囲壁に囲まれた場所に第1封止層を積層して形成する工程である。次にステップS10に移行する。
【0063】
ステップS10は保護膜形成工程に相当し、第1封止層の周囲に保護膜を形成する工程である。次にステップS11に移行する。ステップS11は空洞部形成工程に相当し、包囲壁及び第1封止層に覆われた層間絶縁層をエッチングして空洞を形成する工程である。次にステップS12に移行する。ステップS12は封止工程に相当し、第1封止層に重ねて第2封止層を形成し、空洞を封止する工程である。次にステップS13に移行する。ステップS13は端子部形成工程に相当し、中間端子と接続する外部端子を形成する工程である。次にステップS14に移行する。ステップS14はダイシング工程に相当し、マザー基板を切断してチップ状に分割する工程である。以上の製造工程にてレゾネーターが完成する。
【0064】
次に、図4〜図7を用いて、図3(b)に示したステップと対応させて、製造方法を詳細に説明する。まず、図4(a)〜図4(c)はステップS1の配線形成工程に対応する図である。図4(a)に示すように、マザー基板46を用意し、マザー基板46上に第1下地層3及び第2下地層4を形成する。第2下地層4は包囲壁25を形成する予定の場所に形成する。マザー基板46は、例えば、シリコンウェハーであり、レゾネーター1を複数配置可能な広さを備えている。そして、マザー基板46を分割したものが基板2に相当する。第1下地層3は、例えば、STI(Shallow Trench Isolation)法、LOCOS法により形成される。第2下地層4は、例えば、CVD(Chemical Vaper Deposition)法、スパッタ法を用いて形成される。
【0065】
次に、第2下地層4上に固定電極6を形成し、第1下地層3及び第2下地層4上に第1配線8を形成する。この時、同時に第1中間端子11も形成する。固定電極6、第1配線8、第1中間端子11はCVD法やスパッタ法等による成膜処理と、フォトリソグラフィー技術及びエッチング技術によるパターニング処理とを用いて形成される。多結晶シリコンからなるパターンを形成した後でこのパターンに電気伝導性を付与するために所定の不純物をドーピングする。ドーピングは例えば、POCL3やBBr3等のガス中でドーパントを堆積させ、熱拡散させることにより行うことができる。続いて、固定電極6及び第1配線8を熱酸化することにより、固定電極6の表面に絶縁膜6aを形成し、第1配線8の表面に絶縁膜8aを形成する。このとき、第1中間端子11にも酸化膜が形成される。
【0066】
次に、図4(b)及び図4(c)に示すように、可動電極7、第2配線9、第2中間端子12、第1包囲壁16、第2包囲壁17を形成する。このとき、同時に第6中間端子18も形成する。可動電極7、第2配線9、第2中間端子12、第1包囲壁16、第2包囲壁17、第6中間端子18の形成方法は固定電極6及び第1配線8と同様な方法であり、説明を省略する。続いて、熱酸化することにより、可動電極7、第2配線9、第2中間端子12、第1包囲壁16、第2包囲壁17の各表面に絶縁膜7d,9d,12a,16a,17aを形成する。このとき、第6中間端子18にも酸化膜が形成される。
【0067】
次に、第1耐食絶縁膜19及び第2耐食絶縁膜20を形成する予定の場所の絶縁膜6a,7d,16a,17aを除去する。絶縁膜の除去にはフォトリソグラフィー技術及びエッチング技術によるパターニング処理が用いられる。
【0068】
図4(d)〜図4(e)はステップS2の耐食性絶縁膜形成工程に対応する図である。図4(d)及び図4(e)に示すように、第1包囲壁16の端から第2包囲壁17の端にかけて第1耐食絶縁膜19及び第2耐食絶縁膜20を形成する。第1耐食絶縁膜19は第1配線8上の一部を覆って配置され、第2耐食絶縁膜20は第2配線9上の一部を覆って配置される。第1耐食絶縁膜19及び第2耐食絶縁膜20はCVD法やスパッタ法等による成膜処理及びフォトリソグラフィー技術及びエッチング技術によるパターニング処理により形成される。
【0069】
図5(a)はステップS3の第1層間絶縁膜形成工程に対応する図である。図5(a)に示すように、第1下地層3、第2下地層4上に第1絶縁層26を積層する。このとき、第1配線8、第2配線9、第1耐食絶縁膜19、第2耐食絶縁膜20に重ねて第1絶縁層26を積層する。第1絶縁層26はCVD法やスパッタ法等による成膜処理やスピンコート等の塗布法を用いて形成する。第1絶縁層26を形成した後に、第1絶縁層26の表面を平坦化する処理を行ってもよい。第1絶縁層26のうち第1包囲壁16、第2包囲壁17、第1耐食絶縁膜19、第2耐食絶縁膜20に囲まれている場所の第1絶縁層26を第1犠牲層47とする。
【0070】
図5(b)及び図5(c)はステップS4の第1側壁形成工程に対応する図である。図5(b)及び図5(c)に示すように、第1絶縁層26をパターニングする。これにより、第3包囲壁22及び第1貫通電極34を設置する場所の第1絶縁層26を貫通する開口部を形成する。そして、該開口部にアルミニウム等の金属を埋め込むことで第3包囲壁22及び第1貫通電極34が形成される。第3包囲壁22及び第1貫通電極34はCVD法やスパッタ法等による成膜処理をした後にフォトリソグラフィー技術及びエッチング技術によるパターニング処理を行なうことにより形成される。尚、第3包囲壁22及び第1貫通電極34は、同一の工程で形成されてもよいし、別々の工程で形成されてもよい。
【0071】
電気伝導性のある第3包囲壁22は第1包囲壁16及び第2包囲壁17と接触して形成される。これにより、第1包囲壁16と第2包囲壁17との間は第3包囲壁22を介して導通可能となる。第3包囲壁22と第1配線8及び第2配線9との間には第1耐食絶縁膜19及び第2耐食絶縁膜20が配置されている。従って、第3包囲壁22と第1配線8との間は絶縁され、第3包囲壁22と第2配線9との間も絶縁されている。
【0072】
第1貫通電極34も第1中間端子11、第2中間端子12、第3中間端子13、第4中間端子14、第5中間端子15と接触して形成される。これにより、第1貫通電極34はこれらの端子との間で導通が可能になる。
【0073】
図6(a)及び図6(b)はステップS5の第2層間絶縁膜形成工程〜ステップS10の保護膜形成工程に対応する図である。図6(a)に示すように、ステップS5の第2層間絶縁膜形成工程では第1絶縁層26に重ねて第2絶縁層27を形成する。そして、ステップS6の第2側壁形成工程では第2絶縁層27に開口部を形成する。続いて、該開口部にアルミニウム等の金属を埋め込むことで第4包囲壁23及び第2貫通電極35を形成する。
【0074】
ステップS7の第3層間絶縁膜形成工程では第2絶縁層27に重ねて第3絶縁層28を形成する。そして、ステップS8の第3側壁形成工程では第3絶縁層28に開口部を形成する。続いて、該開口部にアルミニウム等の金属を埋め込むことで第5包囲壁24及び第3貫通電極36を形成する。
【0075】
第2絶縁層27のうち第1包囲壁16、第2包囲壁17、第1耐食絶縁膜19、第2耐食絶縁膜20に囲まれている場所の第2絶縁層27を第2犠牲層49とする。同様に、第3絶縁層28のうち第1包囲壁16、第2包囲壁17、第1耐食絶縁膜19、第2耐食絶縁膜20に囲まれている場所の第3絶縁層28を第3犠牲層50とする。そして、第1犠牲層47、第2犠牲層49及び第3犠牲層50を合わせて犠牲層51と称す。
【0076】
第2絶縁層27及び第3絶縁層28の形成方法は第1絶縁層26と同様の方法であり、説明を省略する。第4包囲壁23及び第5包囲壁24の形成方法も第3包囲壁22の形成方法と同様の方法であり説明を省略する。そして、第2貫通電極35及び第3貫通電極36の形成方法は第1貫通電極34の形成方法と同様の方法であり説明を省略する。
【0077】
ステップS9の蓋部形成工程では第3絶縁層28に重ねてチタン層、窒化チタン層、アルミニウム−銅合金層、窒化チタン層をこの順で積層した金属層52を形成する。続いて、図6(b)に示すように金属層52をパターニングして第1封止層30を形成する。このとき、第1封止層30に貫通孔30aを形成する。さらに、金属層52をパターニングして第3貫通電極36上に電極パッド37を形成する。
【0078】
第1封止層30及び電極パッド37は、例えば、スパッタ法やCVD法等により成膜した後、フォトリソグラフィー技術及びエッチング技術によるパターニングによって形成される。尚、第1封止層30及び電極パッド37は、同一の工程で形成されてもよいし、別々の工程で形成されてもよい。さらに、ステップS8の第3側壁形成工程とステップS9の蓋部形成工程とは同一工程にて実施しても良い。
【0079】
ステップS10の保護膜形成工程では、第1封止層30の少なくとも一部を避けて、第3絶縁層28上に保護膜31を形成する。保護膜31は、例えば、スパッタ法やCVD法等により成膜した後、フォトリソグラフィー技術及びエッチング技術によるパターニングによって形成される。
【0080】
図6(c)はステップS11の空洞部形成工程に対応する図である。図6(c)に示すように、貫通孔30aを通して振動素子5の周囲の犠牲層51をエッチングし、空洞部33を形成する。エッチングには、HFベーパーエッチングを採用している。
【0081】
包囲壁25、第1封止層30、保護膜31はエッチング液に腐食され難い材料から構成されている。従って、包囲壁25及び第1封止層30に囲まれた犠牲層51のみがエッチングされる。そして、包囲壁25を取り囲む絶縁層29はエッチングされずに残留する。
【0082】
第3包囲壁22と第1配線8との間、第1包囲壁16と第1配線8との間、第2包囲壁17と第1配線8との間には第1耐食絶縁膜19が配置されている。従って、犠牲層51をエッチングするエッチング液が第1配線8に沿って包囲壁25から絶縁層29に漏洩しないようになっている。同様に、第3包囲壁22と第2配線9との間、第1包囲壁16と第2配線9との間、第2包囲壁17と第2配線9との間には第2耐食絶縁膜20が配置されている。従って、犠牲層51をエッチングするエッチング液が第2配線9に沿って包囲壁25から絶縁層29に漏洩しないようになっている。
【0083】
図7(a)はステップS12の封止工程に対応する図である。図7(a)に示すように、第1封止層30上及び保護膜31上に第2封止層32を形成する。これにより、貫通孔30aを塞いで空洞部33を封止する。第2封止層32は、例えば、スパッタ法、CVD法等の気相成長法により形成することができる。このとき、減圧状態において第2封止層32を形成する。これにより、空洞部33を減圧状態のまま封止することができる。
【0084】
図7(b)及び図7(c)はステップS13の端子部形成工程に対応する図である。図7(b)に示すように、電極パッド37の上面を除いて、保護膜31上及び第2封止層32上に樹脂層38を形成する。より具体的には、まず、電極パッド37の上面の保護膜31をフォトリソグラフィー技術及びエッチング技術によってパターニングして開口する。次に、スピンコート法により樹脂を塗布し窒素雰囲気中で300℃〜400℃程度の熱処理を行う。これにより塗布した樹脂を硬化させて樹脂の膜を形成する。次に、フォトリソグラフィー技術及びエッチング技術によって樹脂の膜をパターニングして樹脂層38を形成する。
【0085】
電極パッド37上、樹脂層38上に、配線39を形成する。配線39は、スパッタ法やめっき法等による成膜処理と、フォトリソグラフィー技術及びエッチング技術によるパターニング処理と、により形成される。
【0086】
次に、図7(c)に示すように、樹脂層38上及び配線39上に、レジスト層41を形成する。レジスト層41は、配線39の外部端子40が形成される予定の場所を避けて形成される。レジスト層41は、例えば、スピンコート法等による成膜処理と、フォトリソグラフィー技術及びエッチング技術によるパターニング処理と、により形成される。
【0087】
次に、配線39上に外部端子40を形成する。外部端子40は、例えば、配線39上にハンダ膜を形成した後、180℃〜300℃程度に加熱してハンダ膜を溶融することで形成される。
【0088】
ステップS14のダイシング工程では、マザー基板46を切断予定線にて切断する。マザー基板46を粘着性のあるシートに貼る。続いて、先端にダイヤモンド粉が塗布された回転刃を用いて切断予定線に沿って切り込みを入れる。この後、シートを広げることにより切断予定線に沿ってマザー基板46が破断されて基板2の大きさに分割される。これにより、各レゾネーター1がチップ状に分離する。その結果、図1に示すように、レゾネーター1が完成する。
【0089】
上述したように、本実施形態によれば、以下の効果を有する。
(1)本実施形態によれば、ステップS11の空洞部形成工程において、エッチング液により犠牲層51が溶解されることにより、包囲壁25内に空洞部33が形成される。包囲壁25はエッチング液により溶解され難く、エッチング液が溶解する範囲を包囲壁25が制御する。第1配線8及び第2配線9は包囲壁25を貫通している。空洞部33を形成するときに第1配線8や第2配線9と包囲壁25との間からエッチング液が流出すると、包囲壁25を取り巻く絶縁層29は溶解する。本実施形態では第1配線8や第2配線9と包囲壁25との間に第1耐食絶縁膜19及び第2耐食絶縁膜20が配置されている。従って、第1配線8や第2配線9と包囲壁25との間からエッチング液が包囲壁25の外側に流出することを防止することができる。
【0090】
(2)本実施形態によれば、第1配線8や第2配線9と包囲壁25との間に第1耐食絶縁膜19及び第2耐食絶縁膜20が配置されている。この第1耐食絶縁膜19及び第2耐食絶縁膜20は犠牲層51よりエッチング液に対して腐食され難い性質を有している。従って、第1配線8や第2配線9と包囲壁25とを絶縁するとともに、第1配線8や第2配線9と包囲壁25との間からエッチング液が包囲壁25の外側に流出することを防止することができる。
【0091】
(3)本実施形態によれば、犠牲層51の材質は二酸化シリコンであり、第1耐食絶縁膜19及び第2耐食絶縁膜20の材質はアルミナである。従って、第1耐食絶縁膜19及び第2耐食絶縁膜20は絶縁性を有している。そして、エッチングにHFベーパーエッチング等を選択することにより、第1耐食絶縁膜19及び第2耐食絶縁膜20は犠牲層51より腐食され難くすることができる。
【0092】
(4)本実施形態によれば、レゾネーター1は振動素子5と発振回路44とを備えており、発振回路44が形成する波形を出力する。レゾネーター1はエッチング液が包囲壁25から流出することのない品質の良い電子装置になっている。従って、このレゾネーター1は品質良く波形を出力する電子装置とすることができる。
【0093】
(5)本実施形態によれば、包囲壁25及び第1封止層30は導電体により形成されている。従って、例えば接地して導電体の電位を固定することによって、包囲壁25及び第1封止層30により振動素子5は電磁波の伝播を遮られている。その結果、振動素子5は雑音となる電磁波の影響を受け難くすることができる。
【0094】
(6)本実施形態によれば、空洞部33内は減圧されていることから、空気が充填されているときに比べて可動電極7は振動し易くなっている。従って、振動素子5を品質良く振動させることができる。
【0095】
(7)本実施形態によれば、第1耐食絶縁膜19及び第2耐食絶縁膜20と重ねて包囲壁25が配置されている。そして、第1耐食絶縁膜19及び第2耐食絶縁膜20にアルミナを採用し、包囲壁25にアルミニウムと銅との合金を採用している。従って、熱膨張係数の近い金属を配置しているので、過熱されるときにも剥離し難くすることができる。
【0096】
(第2の実施形態)
次に、レゾネーターの一実施形態について図8〜図11を用いて説明する。本実施形態が第1の実施形態と異なるところは、エッチング液の漏洩を防止する構造が異なる点にある。尚、第1の実施形態と同じ点については説明を省略する。
【0097】
(レゾネーター)
図8はレゾネーターの構成を示す概略分解斜視図である。図9(a)は図8のレゾネーターのC−C’線及びE−E’線に沿う模式断面図であり、図9(b)は図8のレゾネーターのD−D’線及びF−F’線に沿う模式断面図である。図9(c)及び図9(d)は側壁延長部を示す要部拡大図である。すなわち、本実施形態では、図8及び図9に示すように、電子装置としてのレゾネーター55は振動素子5と振動素子5を駆動する駆動回路10とを備えている。レゾネーター55のうち駆動回路10以外の部分を発振装置55aとする。
【0098】
レゾネーター55は基板2を備え、基板2上に第1下地層3及び第2下地層4がこの順に積層されている。第2下地層4の材質はアルミナに加えて窒化シリコンを用いることができる。第2下地層4上の中央付近には機能素子としての振動素子5が設置されている。第2下地層4上には配線としての第3配線56と配線としての第4配線57とが設置されている。そして、第3配線56は固定電極6と接続され、第4配線57は可動電極7と接続されている。
【0099】
第2下地層4上において振動素子5のY方向側には第6包囲壁58が配置され、振動素子5の−Y方向側には第7包囲壁59が配置されている。第6包囲壁58の一端は第3配線56の近くの場所まで延在し、第6包囲壁58の他端は第4配線57の近くの場所まで延在して配置されている。同様に、第7包囲壁59の一端は第3配線56の近くの場所まで延在し、第7包囲壁59の他端は第4配線57の近くの場所まで延在して配置されている。
【0100】
第3配線56は固定電極6からX方向に延在して配置され、4箇所の屈曲部56aにて折れ曲がった折れ線状となっている。第6包囲壁58が第3配線56と接近する場所から振動素子5と離れる方向に向けて第1側壁右延長部60が配置されている。第1側壁右延長部60は第3配線56に沿って配置され、第3配線56と第1側壁右延長部60とが隣合う場所では第3配線56と第1側壁右延長部60との間隔は略同じ間隔となっている。従って、第1側壁右延長部60は第6包囲壁58からX方向に延在して配置され、4箇所の屈曲部60aにて折れ曲がった折れ線状となっている。
【0101】
同様に、第7包囲壁59が第3配線56と接近する場所から振動素子5と離れる方向に向けて第1側壁左延長部61が配置されている。第1側壁左延長部61は第3配線56に沿って配置され、第3配線56と第1側壁左延長部61とが隣合う場所では第3配線56と第1側壁左延長部61との間隔は略同じ間隔となっている。従って、第1側壁左延長部61は第6包囲壁58からX方向に延在して配置され、4箇所の屈曲部61aにて折れ曲がった折れ線状となっている。
【0102】
第1側壁右延長部60と第3配線56との間隔は漏電しない程度に狭く配置されている。従って、第3配線56は第1側壁右延長部60と絶縁状態となっている。同様に、第1側壁左延長部61と第3配線56との間隔も漏電しない程度に狭く配置されている。従って、第3配線56は第1側壁左延長部61とも絶縁状態となっている。
【0103】
第4配線57は可動電極7から−X方向に延在して配置され、4箇所の屈曲部57aにて折れ曲がった折れ線状となっている。第6包囲壁58が第4配線57と接近する場所から振動素子5と離れる方向に向けて第2側壁右延長部62が配置されている。第2側壁右延長部62は第4配線57に沿って配置され、第4配線57と第2側壁右延長部62とが隣合う場所では第4配線57と第2側壁右延長部62との間隔は略同じ間隔となっている。従って、第2側壁右延長部62は第6包囲壁58から−X方向に延在して配置され、4箇所の屈曲部62aにて折れ曲がった折れ線状となっている。
【0104】
同様に、第7包囲壁59が第4配線57と接近する場所から振動素子5と離れる方向に向けて第2側壁左延長部63が配置されている。第2側壁左延長部63は第4配線57に沿って配置され、第4配線57と第2側壁左延長部63とが隣合う場所では第4配線57と第2側壁左延長部63との間隔は略同じ間隔となっている。従って、第2側壁左延長部63は第7包囲壁59から−X方向に延在して配置され、4箇所の屈曲部63aにて折れ曲がった折れ線状となっている。
【0105】
第2側壁右延長部62と第4配線57との間隔は漏電しない程度に狭く配置されている。従って、第4配線57は第2側壁右延長部62と絶縁状態となっている。同様に、第2側壁左延長部63と第4配線57との間隔も漏電しない程度に狭く配置されている。従って、第4配線57は第2側壁左延長部63とも絶縁状態となっている。
【0106】
第6包囲壁58、第7包囲壁59、第1側壁右延長部60、第1側壁左延長部61、第2側壁右延長部62、第2側壁左延長部63の材質は第1包囲壁16及び第2包囲壁17と同じ材質を用いることができる。つまり、電気伝導性があり二酸化シリコンのエッチング液に対して腐食され難い性質があれば良く、特に限定されない。これらの材質には金属や電気伝導性のあるシリコン等を採用することができる。本実施形態では例えば、燐やホウ素等の不純物をドーピングすることにより電気伝導性が付与された多結晶シリコンを用いている。
【0107】
第3配線56と第6包囲壁58との間には層間絶縁膜としての第4絶縁層64が配置され、第3配線56と第1側壁右延長部60との間にも第4絶縁層64が配置されている。さらに、第3配線56と第7包囲壁59との間に第4絶縁層64が配置され、第3配線56と第1側壁左延長部61との間にも第4絶縁層64が配置されている。このとき、屈曲部56aと屈曲部60aとの間や屈曲部56aと屈曲部61aとの間の屈曲部64aでは第4絶縁層64も折れ曲がった折れ線状となっている。そして、第3配線56の上にも第4絶縁層64が配置されている。
【0108】
同様に、第4配線57と第6包囲壁58との間には層間絶縁膜としての第5絶縁層65が配置され、第4配線57と第2側壁右延長部62との間にも第5絶縁層65が配置される。さらに、第4配線57と第7包囲壁59との間にも第5絶縁層65が配置され、第4配線57と第2側壁左延長部63との間にも第5絶縁層65が配置される。このとき、屈曲部57aと屈曲部62aとの間や屈曲部57aと屈曲部63aとの間の屈曲部65aでは第5絶縁層65も折れ曲がった折れ線状となっている。そして、第4配線57の上にも第5絶縁層65が配置されている。
【0109】
第4絶縁層64及び第5絶縁層65は第1犠牲層47及び第1絶縁層26と接続する。そして、第4絶縁層64及び第5絶縁層65の材質は第1犠牲層47及び第1絶縁層26と同じ材質である二酸化シリコンとなっている。
【0110】
そして、第6包囲壁58、第7包囲壁59、第4絶縁層64、第5絶縁層65の上に被覆部及び側壁部としての第8包囲壁66が配置される。第8包囲壁66上には第4包囲壁23、第5包囲壁24が積層されている。第6包囲壁58、第7包囲壁59、第8包囲壁66、第4包囲壁23、第5包囲壁24は振動素子5を取り囲む被覆部及び側壁部としての包囲壁67を構成している。第8包囲壁66は第1の実施形態における第3包囲壁22に相当する壁であり、包囲壁67は第1の実施形態における包囲壁25に相当する壁である。
【0111】
第1側壁右延長部60及び第1側壁左延長部61の上と第1側壁右延長部60及び第1側壁左延長部61の間の第4絶縁層64の上とには第1側壁上延長部68が配置されている。つまり、第1側壁上延長部68は第1側壁右延長部60及び第1側壁左延長部61に架橋され、第4絶縁層64を覆うように配置されている。そして、第1側壁右延長部60、第1側壁左延長部61、第1側壁上延長部68により液流動防止部及び側壁延長部としての第1側壁延長部69が構成されている。
【0112】
同様に、第2側壁右延長部62及び第2側壁左延長部63の上と第2側壁右延長部62及び第2側壁左延長部63の間の第5絶縁層65との上には第2側壁上延長部70が配置されている。つまり、第2側壁上延長部70は第2側壁右延長部62及び第2側壁左延長部63に架橋され、第5絶縁層65を覆うように配置されている。そして、第2側壁右延長部62、第2側壁左延長部63、第2側壁上延長部70により液流動防止部及び側壁延長部としての第2側壁延長部71が構成されている。
【0113】
つまり、包囲壁67からX方向の絶縁層29に突出する第1側壁延長部69と第3配線56とで第4絶縁層64を挟むように配置されている。同様に、包囲壁67から−X方向の絶縁層29に突出する第2側壁延長部71と第4配線57とで第5絶縁層65を挟むように配置されている。
【0114】
(レゾネーターの製造方法)
次に上述したレゾネーター55の製造方法について図10及び図11にて説明する。図10は、レゾネーターの製造方法を示すフローチャートであり、図11はレゾネーターの製造方法を説明するための模式図である。
【0115】
図10のフローチャートにおいて、ステップS21は配線形成工程に相当し、基板上に振動素子、配線、中間端子、第6包囲壁及び第7包囲壁を形成する工程である。次にステップS22に移行する。ステップS22は第1層間絶縁膜形成工程に相当し、第1絶縁層、第4絶縁層、第5絶縁層を形成する工程である。ステップS22の第1層間絶縁膜形成工程、ステップS5の第2層間絶縁膜形成工程、ステップS7の第3層間絶縁膜形成工程により層間絶縁膜形成工程が構成されている。次にステップS23に移行する。ステップS23は第1側壁形成工程に相当し、第8包囲壁、第1側壁上延長部、第2側壁上延長部を形成する工程である。ステップS23の第1側壁形成工程、ステップS6の第2側壁形成工程、ステップS8の第3側壁形成工程により側壁形成工程が構成されている。次にステップS5に移行する。ステップS5以降は第1の実施形態と同じであり説明を省略する。以上の製造工程にてレゾネーターが完成する。
【0116】
次に、図11を用いて、図10に示したステップと対応させて、製造方法を詳細に説明する。図11(a)〜図11(b)はステップS21の配線形成工程に対応する図である。図11(a)に示すように、マザー基板46を用意し、マザー基板46上に第1下地層3及び第2下地層4を形成する。第1下地層3及び第2下地層4の形成方法は第1の実施形態と同様の方法を用いることができる。
【0117】
次に、図11(b)に示すように、第2下地層4上に第4配線57、第6包囲壁58、第7包囲壁59を形成する。このとき、第1側壁右延長部60、第1側壁左延長部61、第2側壁右延長部62、第2側壁左延長部63も同じ工程にて形成する。これらの配線、包囲壁、延長部はCVD法やスパッタ法等による成膜処理と、フォトリソグラフィー技術及びエッチング技術によるパターニング処理とを用いて形成される。多結晶シリコンからなるパターンを形成した後でこのパターンに電気伝導性を付与するために所定の不純物をドーピングする。
【0118】
図11(c)はステップS22の第1層間絶縁膜形成工程に対応する図である。図11(c)に示すように、第4配線57、第6包囲壁58、第7包囲壁59に重ねて第1絶縁層26を積層する。このとき、第3配線56上にも第1絶縁層26を積層する。第1絶縁層26はCVD法やスパッタ法等による成膜処理を用いて形成する。第1絶縁層26のうち第6包囲壁58、第7包囲壁59に囲まれている場所の第1絶縁層26を第1犠牲層47とする。第3配線56の周囲に位置する第1絶縁層26が第4絶縁層64であり、第4配線57の周囲に位置する第1絶縁層26が第5絶縁層65となっている。
【0119】
図11(d)〜図11(f)はステップS23の第1側壁形成工程に対応する図である。図11(d)に示すように、第6包囲壁58及び第7包囲壁59上に位置する第1絶縁層26をパターニングして第1絶縁層26を貫通する開口部を形成する。さらに、第1側壁右延長部60、第1側壁左延長部61、第2側壁右延長部62、第2側壁左延長部63上に位置する第1絶縁層26をパターニングして第1絶縁層26を貫通する開口部を形成する。尚、第4絶縁層64及び第5絶縁層65は除去せずに残しておく。
【0120】
次に、図11(e)及び(f)に示すように、開口部にアルミニウム等の金属を埋め込むことで第8包囲壁66、第2側壁上延長部70が形成される。尚、第1側壁上延長部68も同様に形成される。これにより、第2側壁延長部71が第5絶縁層65を覆い、第1側壁延長部69が第4絶縁層64を覆う形態となる。
【0121】
第8包囲壁66、第1側壁上延長部68、第2側壁上延長部70はCVD法やスパッタ法等による成膜処理とフォトリソグラフィー技術及びエッチング技術によるパターニング処理により形成される。
【0122】
ステップS23の次に行うステップS5の第2層間絶縁膜形成工程〜ステップS10の保護膜形成工程は第1の実施形態と同じであり、説明を省略する。ステップS11の空洞部形成工程では包囲壁67の内部に位置する貫通孔30aを通して振動素子5の周囲の犠牲層51をエッチングし、空洞部33を形成する。犠牲層51をエッチングするエッチング液にはフッ化水素酸や他のシリコン酸化膜を溶解するエッチング液を使うことができる。
【0123】
第3配線56が包囲壁67を貫通する場所には第1側壁延長部69が形成されている。第1側壁延長部69と第3配線56との間は漏電しない程度に接近して配置され、第1側壁延長部69と第3配線56との間には第4絶縁層64が設置されている。犠牲層51をエッチングするエッチング液が第3配線56に沿って移動するときエッチング液は第4絶縁層64を溶解する。エッチング液が循環しない場所ではエッチング液はエッチングの進行にともないエッチングする能力が低下する。そして、エッチング液は第1側壁延長部69と第3配線56との間から移動し難くなっている。従って、第4絶縁層64を溶解するエッチング液は第4絶縁層64を溶解し難くなる。その結果、エッチング液は第1側壁延長部69における第4絶縁層64をエッチングし難くなるので、エッチング液が包囲壁67から絶縁層29に漏洩し難くなるようになっている。
【0124】
同様に、第4配線57が包囲壁67を貫通する場所には第2側壁延長部71が形成されている。第2側壁延長部71は第1側壁延長部69と同様の構造となっている。従って、エッチング液は第2側壁延長部71における第5絶縁層65をエッチングし難くなるので、エッチング液が包囲壁67から絶縁層29に漏洩し難くなるようになっている。
【0125】
ステップS11の次に行われるステップS12の封止工程以降の工程は第1の実施形態と同じであり、説明を省略する。その結果、図8に示すように、レゾネーター55が完成する。
【0126】
上述したように、本実施形態によれば、以下の効果を有する。
(1)本実施形態によれば、第1側壁延長部69と第3配線56との間には第4絶縁層64が位置している為、第1側壁延長部69と第3配線56とは電気的に絶縁されている。同様に、第2側壁延長部71と第4配線57との間には第5絶縁層65が位置している為、第2側壁延長部71と第4配線57とは電気的に絶縁されている。従って、包囲壁67は第3配線56及び第4配線57と絶縁させることができる。
【0127】
(2)本実施形態によれば、包囲壁67の犠牲層51側からエッチング液が第1側壁延長部69と第3配線56との間の第4絶縁層64を溶解する。エッチングの進行にともなって第4絶縁層64を溶解したエッチング液は第4絶縁層64を溶解し難くなるので、エッチング液が移動し難い場所では第4絶縁層64が溶解され難くなる。第1側壁延長部69は突出している為、第1側壁延長部69と第3配線56との間に流入したエッチング液は第4絶縁層64を溶解し難くなる。その結果、第1側壁延長部69はエッチング液が包囲壁67から絶縁層29に流動することを防止することができる。第2側壁延長部71は第1側壁延長部69と同じ構造である為、第2側壁延長部71もエッチング液が包囲壁67から絶縁層29に流動することを防止することができる。
【0128】
(3)本実施形態によれば、第1側壁延長部69と第3配線56とに挟まれた第4絶縁層64は屈曲部64aを有している。屈曲部64aでは直線となっている場所よりエッチング液が移動するときの流体抵抗が大きくなる。従って、屈曲部64aではエッチング液が移動し難いので、第4絶縁層64が溶解され難くなる。その結果、第1側壁延長部69はエッチング液が包囲壁67から絶縁層29に流動することを防止することができる。第2側壁延長部71は第1側壁延長部69と同じ構造となっており、第5絶縁層65も屈曲部65aを有している。従って、第2側壁延長部71もエッチング液が包囲壁67から絶縁層29に流動することを防止することができる。
【0129】
(4)本実施形態によれば、第1側壁右延長部60、第1側壁左延長部61、第2側壁右延長部62及び第2側壁左延長部63は第6包囲壁58及び第7包囲壁59を形成する工程と同じ工程にて形成することができる。そして、第1の実施形態における第1耐食絶縁膜19及び第2耐食絶縁膜20が不要であることから、アルミナの層を形成してパターニングする工程を省くことができる。従って、生産性良くレゾネーター55を製造することができる。
【0130】
(第3の実施形態)
次に、レゾネーターの一実施形態について図12を用いて説明する。本実施形態が第1の実施形態と異なるところは、振動素子5及び包囲壁25を形成する工程と駆動回路10を形成する工程の一部が並行して行われる点にある。尚、第1の実施形態と同じ点については説明を省略する。
【0131】
図12は駆動回路におけるMOS素子の構造を示す模式図である。図12に示すように、駆動回路10にはMOS(Metal Oxide Semiconductor)素子が形成されている。基板2にドーピング処理が行なわれることによりソース領域74及びドレイン領域75が形成されている。ソース領域74とドレイン領域75との間にはゲート絶縁膜76が配置されている。ゲート絶縁膜76は絶縁できる膜であればよく、本実施形態では例えば酸化シリコンの膜を用いている。ゲート絶縁膜76はシリコン熱酸化またはスパッタ法、CVD法等の気相成長法により形成することができる。
【0132】
ゲート絶縁膜76と積層してゲート電極層77が配置されている。ゲート電極層77を形成するには多結晶シリコンからなるパターンを形成した後でこのパターンに電気伝導性を付与するために所定の不純物をドーピングする。この工程は、レゾネーター1の第2配線9、第1包囲壁16、第2包囲壁17を形成する工程と同じ工程にて形成することができる。
【0133】
ゲート電極層77上には第1絶縁層26が設置されている。この第1絶縁層26は包囲壁25の周囲に配置された第1絶縁層26と同じ絶縁層である。従って、本実施形態の第1絶縁層26と第1の実施形態の第1絶縁層26とは同じ工程にて形成することができる。
【0134】
ソース領域74上にはソース電極78が配置され、ドレイン領域75上にはドレイン電極79が配置されている。そして、ゲート電極層77にはゲート電極80が配置されている。ソース電極78、ドレイン電極79及びゲート電極80を形成するには、まず、第1絶縁層26をフォトリソグラフィー技術及びエッチング技術によるパターニング処理により開口部を形成する。次に、該開口部にアルミニウム等の金属を埋め込むことにより貫通電極を形成することができる。貫通電極はCVD法やスパッタ法等による成膜処理とフォトリソグラフィー技術及びエッチング技術によるパターニング処理により形成される。
【0135】
第1絶縁層26上には配線81が形成されている。配線81は第1の実施形態における第1貫通電極34を形成する方法を用いて形成することができる。そして、配線81上には第2絶縁層27、第3絶縁層28、保護膜31、樹脂層38、レジスト層41が積層されている。これらの層は第1の実施形態における層と同じ層であり、同じ工程にて形成することができる。
【0136】
上述したように、本実施形態によれば、以下の効果を有する。
(1)本実施形態によれば、MOS素子にゲート電極層77と第1絶縁層26とが設置されている。そして、第2配線9を形成する工程とMOS素子のゲート電極層77を形成する工程とは同じ工程にて行われる。さらに、絶縁層29の第1絶縁層26、第2絶縁層27、第3絶縁層28を形成する工程とMOS素子の第1絶縁層26、第2絶縁層27、第3絶縁層28を形成する工程とは同じ工程にて行われる。従って、基板2上に振動素子5を形成する工程とMOS素子を形成する工程とを別々に行う場合に比べて生産性良く振動素子5及びMOS素子を形成することができる。
【0137】
(第4の実施形態)
次に、レゾネーターを用いた電子機器の1つである時計の一実施形態について図13を用いて説明する。本実施形態が第1の実施形態と異なるところは、レゾネーターを活用した電子機器である点にある。尚、第1の実施形態と同じ点については説明を省略する。
【0138】
図13は、時計の構成を示す電気ブロック図である。図13に示すように、電子機器としての時計82は制御部83を備えている。制御部83はレゾネーター1と接続され、レゾネーター1は一定の周波数の矩形波信号を制御部83に出力する。制御部83は演算部を備え、演算部は矩形波信号と同期して各種の演算を行う。
【0139】
制御部83は表示部84及び入力部85を備えている。表示部84は制御部83の演算部が演算結果を表示する装置であり、液晶表示装置、有機EL(Electro−Luminescence)表示装置、時針分針等アナログ式表示装置等を用いることができる。入力部85は押しボタン式のスイッチや回転式のダイヤル等を用いることができる。
【0140】
時計82は現在時刻を表示する機能を備えている。入力部85を用いて操作者は所定の時刻における時刻を入力する。制御部83はレゾネーター1の出力を用いて時間の経過を演算する。そして、時刻を入力された時からの経過時間を加算して現在時刻を算出した結果を表示部84に出力する。表示部84は制御部83の信号を受けて現在時刻を表示する。
【0141】
時計82はストップウォッチの機能を備えている。入力部85を用いて操作者はボタン式のスイッチを押すことにより計時開始の指示信号を入力する。制御部83はレゾネーター1の出力を用いて時間の経過を演算する。そして、計時開始の信号を入力された時からの経過時間を算出し、算出した結果を表示部84に出力する。表示部84は制御部83の信号を受けて経過時間を表示する。
【0142】
上述したように、本実施形態によれば、以下の効果を有する。
(1)本実施形態によれば、時計82はレゾネーター1を備えている。このレゾネーター1はエッチング液が包囲壁25から流出することのない品質の良い装置になっている。従って、時計82は品質の良いレゾネーター1を備えた機器とすることができる。
【0143】
尚、本実施形態は上述した実施形態に限定されるものではなく、種々の変更や改良を加えることも可能である。変形例を以下に述べる。
(変形例1)
前記第1の実施形態では、包囲壁25内の空洞部33に電気駆動される機能素子として振動素子5を設置した。電気駆動される機能素子は振動素子5に限らず他の素子でも良い。例えば、梁の自由端に錘が配置された加速度センサー、ジャイロセンサー、水晶振動子、SAW(弾性表面波)素子、櫛歯電極等により可動するマイクロアクチュエーターを設置することができる。このときにもエッチング液が包囲壁25から流出することのない構造となっている為、品質良く機能素子を駆動させることができる。
【0144】
(変形例2)
前記第1の実施形態では、犠牲層51のエッチングにはHFベーパーエッチングを行ったが、他の方法を用いても良い。例えば、エッチング液にフッ化水素酸や緩衝フッ酸等の薬液を用いて犠牲層51をエッチングしても良い。このとき、第2下地層4上にエッチング液に対して腐食され難い膜を形成するのが好ましい。エッチング液に対して腐食され難い膜の材質はとくに限定されないが例えば、SiN、チタン、アルミニウム、金を用いることができる。これにより、犠牲層51を品質良く除去することができる。
【0145】
(変形例3)
前記第1の実施形態では、包囲壁25は第1包囲壁16及び第2包囲壁17の上に第3包囲壁22、第4包囲壁23、第5包囲壁24の3層の包囲壁を配置した。絶縁層29は第1絶縁層26、第2絶縁層27、第3絶縁層28の3層の絶縁層を配置した。包囲壁の数、絶縁層の数は特に限定されず、1〜2層でも良く、4層以上でも良い。振動素子5の大きさや製造工程の要因に応じて決定してもよい。これにより、振動素子5が大きいときにも対応することができる。また、工程設計の自由度を高めることができる。
【0146】
(変形例4)
前記第1の実施形態では、包囲壁25の平面形状は図1に示すように四角形の枠形状とした。包囲壁25の平面形状は振動素子5を囲む形状であれば特に限定されず、例えば、円形、楕円形、多角形の枠形状等の任意の形状にすることができる。これにより、配線、端子、駆動回路10を設定する配置の自由度を高めることができる。尚、変形例1〜4は前記第2の実施形態にも適用することができる。
【0147】
(変形例5)
前記第4の実施形態では、レゾネーター1を用いたがレゾネーター1の代わりにレゾネーター55を用いても良い。このときにも、品質良く所定の周波数の波形を活用することができる。
【0148】
(変形例6)
前記第4の実施形態では、レゾネーター1を用いる電子機器として時計82の例を示したが、電子機器は時計82に限らない。レゾネーター1を各種の電子機器に適用することができる。例えば、携帯電話、パーソナルコンピューター、電子辞書、デジタルカメラ、デジタル録音再生装置等に用いることができる。このとき、レゾネーター1は品質良く所定の周波数の波形を出力する為、品質の良い発振器を備えた電子機器とすることができる。
【0149】
(変形例7)
前記第3の実施形態では、駆動回路10のMOS素子を形成する工程の一部と第1の実施形態におけるレゾネーター1を形成する工程の一部とが同じ工程にて行われた。これに限らず、駆動回路10のMOS素子を形成する工程の一部と第2の実施形態におけるレゾネーター55を形成する工程の一部とが同じ工程にて行われても良い。具体的には、第4配線57を形成する工程とMOS素子のゲート電極層77を形成する工程とを同じ工程にて行っても良い。さらに、絶縁層29の第1絶縁層26、第2絶縁層27、第3絶縁層28を形成する工程とMOS素子の第1絶縁層26、第2絶縁層27、第3絶縁層28を形成する工程とは同じ工程にて行われる。従って、基板2上に振動素子5を形成する工程とMOS素子を形成する工程とを別々に行う場合に比べて生産性良く振動素子5及びMOS素子を形成することができる。
【符号の説明】
【0150】
1,55…電子装置としてのレゾネーター、1a,55a…電子装置としての発振装置、2…基板、5…機能素子としての振動素子、8…配線としての第1配線、9…配線としての第2配線、19…耐食性絶縁膜及び液流動防止部としての第1耐食絶縁膜、20…耐食性絶縁膜及び液流動防止部としての第2耐食絶縁膜、22…被覆部及び側壁部としての第3包囲壁、23…被覆部及び側壁部としての第4包囲壁、24…被覆部及び側壁部としての第5包囲壁、25,67…被覆部及び側壁部としての包囲壁、26…層間絶縁膜としての第1絶縁層、27…層間絶縁膜としての第2絶縁層、28…層間絶縁膜としての第3絶縁層、29…層間絶縁膜としての絶縁層、30…被覆部及び蓋部としての第1封止層、30a…開口部としての貫通孔、31…保護膜、33…空洞部、56…配線としての第3配線、57…配線としての第4配線、64…層間絶縁膜としての第4絶縁層、64a,65a…屈曲部、65…層間絶縁膜としての第5絶縁層、66…被覆部及び側壁部としての第8包囲壁、69…側壁延長部及び液流動防止部としての第1側壁延長部、71…側壁延長部及び液流動防止部としての第2側壁延長部、82…電子機器としての時計。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上の空洞部内に位置し電気駆動される機能素子と、
前記空洞部の周囲を取り巻く層間絶縁膜と前記空洞部とを画成する電気伝導性を有する被覆部と、
前記機能素子と接続し前記被覆部を貫通する配線と、を有し、
前記配線が前記被覆部を貫通する場所には前記層間絶縁膜を溶解するエッチング液が前記空洞部から前記層間絶縁膜に流動することを防止し前記被覆部と前記配線とを絶縁する液流動防止部を備えることを特徴とする電子装置。
【請求項2】
請求項1に記載の電子装置であって、
前記液流動防止部は前記層間絶縁膜より前記エッチング液に対して腐食され難い耐食性絶縁膜を有し、前記耐食性絶縁膜は前記配線と前記被覆部との間に位置することを特徴とする電子装置。
【請求項3】
請求項2に記載の電子装置であって、
前記層間絶縁膜は二酸化シリコンであり、前記耐食性絶縁膜はアルミナであることを特徴とする電子装置。
【請求項4】
請求項1に記載の電子装置であって、
前記液流動防止部は前記被覆部から前記層間絶縁膜へ突出する側壁延長部を有し、
前記側壁延長部と前記配線とで前記層間絶縁膜を挟むように配置されたことを特徴とする電子装置。
【請求項5】
請求項4に記載の電子装置であって、
前記側壁延長部及び前記配線に挟まれた前記層間絶縁膜は屈曲部を有することを特徴とする電子装置。
【請求項6】
発振回路を備えた電子機器であって、
前記発振回路に請求項1〜5のいずれか一項に記載の電子装置を用いたことを特徴とする電子機器。
【請求項7】
基板上に形成された機能素子と接続して配線を形成する配線形成工程と、
前記配線を覆って耐食性絶縁膜を形成する耐食性絶縁膜形成工程と、
前記基板、前記配線、前記耐食性絶縁膜上に層間絶縁膜を形成する層間絶縁膜形成工程と、
前記機能素子を囲むように前記層間絶縁膜を筒状に除去し、除去した場所に側壁部を形成する側壁形成工程と、
前記側壁部と前記側壁部に囲まれた前記層間絶縁膜とに重ねて開口部を有する蓋部を形成する蓋部形成工程と、
前記側壁部を取り巻く前記層間絶縁膜上に保護膜を形成する保護膜形成工程と、
前記開口部からエッチング液を流入させて前記基板と前記側壁部と前記蓋部とに囲まれた場所の前記層間絶縁膜をエッチングして除去し空洞部を形成する空洞部形成工程と、
前記開口部を封止する封止工程と、を有し、前記耐食性絶縁膜形成工程では前記層間絶縁膜よりエッチングされ難い前記耐食性絶縁膜を前記配線と前記側壁部との間に形成することを特徴とする電子装置の製造方法。
【請求項8】
基板上に形成された機能素子と接続して配線を形成する配線形成工程と、
前記基板及び前記配線を覆って層間絶縁膜を形成する層間絶縁膜形成工程と、
前記機能素子を囲むように前記層間絶縁膜を筒状に除去し、除去した場所に側壁部を形成する側壁形成工程と、
前記側壁部と前記配線とが交差する場所から前記側壁部の周囲の前記配線に沿って側壁延長部を形成する側壁延長部形成工程と、
前記側壁部と前記側壁部に囲まれた前記層間絶縁膜とに重ねて開口部を有する蓋部を形成する蓋部形成工程と、
前記側壁部を取り巻く前記層間絶縁膜上に保護膜を形成する保護膜形成工程と、
前記開口部からエッチング液を流入させて前記基板と前記側壁部と前記蓋部とに囲まれた場所の前記層間絶縁膜をエッチングして除去し空洞部を形成する空洞部形成工程と、
前記開口部を封止する封止工程と、を有し、
前記層間絶縁膜形成工程では前記配線を覆って前記層間絶縁膜を形成し、前記側壁延長部形成工程では、前記配線を覆う前記層間絶縁膜をさらに側壁延長部が覆うことを特徴とする電子装置の製造方法。
【請求項9】
請求項7または8に記載の電子装置の製造方法であって、
前記基板上にはMOS素子が形成され、前記配線と前記層間絶縁膜とのうち少なくとも一方は前記MOS素子を形成する工程にて形成されることを特徴とする電子装置の製造方法。
【請求項1】
基板上の空洞部内に位置し電気駆動される機能素子と、
前記空洞部の周囲を取り巻く層間絶縁膜と前記空洞部とを画成する電気伝導性を有する被覆部と、
前記機能素子と接続し前記被覆部を貫通する配線と、を有し、
前記配線が前記被覆部を貫通する場所には前記層間絶縁膜を溶解するエッチング液が前記空洞部から前記層間絶縁膜に流動することを防止し前記被覆部と前記配線とを絶縁する液流動防止部を備えることを特徴とする電子装置。
【請求項2】
請求項1に記載の電子装置であって、
前記液流動防止部は前記層間絶縁膜より前記エッチング液に対して腐食され難い耐食性絶縁膜を有し、前記耐食性絶縁膜は前記配線と前記被覆部との間に位置することを特徴とする電子装置。
【請求項3】
請求項2に記載の電子装置であって、
前記層間絶縁膜は二酸化シリコンであり、前記耐食性絶縁膜はアルミナであることを特徴とする電子装置。
【請求項4】
請求項1に記載の電子装置であって、
前記液流動防止部は前記被覆部から前記層間絶縁膜へ突出する側壁延長部を有し、
前記側壁延長部と前記配線とで前記層間絶縁膜を挟むように配置されたことを特徴とする電子装置。
【請求項5】
請求項4に記載の電子装置であって、
前記側壁延長部及び前記配線に挟まれた前記層間絶縁膜は屈曲部を有することを特徴とする電子装置。
【請求項6】
発振回路を備えた電子機器であって、
前記発振回路に請求項1〜5のいずれか一項に記載の電子装置を用いたことを特徴とする電子機器。
【請求項7】
基板上に形成された機能素子と接続して配線を形成する配線形成工程と、
前記配線を覆って耐食性絶縁膜を形成する耐食性絶縁膜形成工程と、
前記基板、前記配線、前記耐食性絶縁膜上に層間絶縁膜を形成する層間絶縁膜形成工程と、
前記機能素子を囲むように前記層間絶縁膜を筒状に除去し、除去した場所に側壁部を形成する側壁形成工程と、
前記側壁部と前記側壁部に囲まれた前記層間絶縁膜とに重ねて開口部を有する蓋部を形成する蓋部形成工程と、
前記側壁部を取り巻く前記層間絶縁膜上に保護膜を形成する保護膜形成工程と、
前記開口部からエッチング液を流入させて前記基板と前記側壁部と前記蓋部とに囲まれた場所の前記層間絶縁膜をエッチングして除去し空洞部を形成する空洞部形成工程と、
前記開口部を封止する封止工程と、を有し、前記耐食性絶縁膜形成工程では前記層間絶縁膜よりエッチングされ難い前記耐食性絶縁膜を前記配線と前記側壁部との間に形成することを特徴とする電子装置の製造方法。
【請求項8】
基板上に形成された機能素子と接続して配線を形成する配線形成工程と、
前記基板及び前記配線を覆って層間絶縁膜を形成する層間絶縁膜形成工程と、
前記機能素子を囲むように前記層間絶縁膜を筒状に除去し、除去した場所に側壁部を形成する側壁形成工程と、
前記側壁部と前記配線とが交差する場所から前記側壁部の周囲の前記配線に沿って側壁延長部を形成する側壁延長部形成工程と、
前記側壁部と前記側壁部に囲まれた前記層間絶縁膜とに重ねて開口部を有する蓋部を形成する蓋部形成工程と、
前記側壁部を取り巻く前記層間絶縁膜上に保護膜を形成する保護膜形成工程と、
前記開口部からエッチング液を流入させて前記基板と前記側壁部と前記蓋部とに囲まれた場所の前記層間絶縁膜をエッチングして除去し空洞部を形成する空洞部形成工程と、
前記開口部を封止する封止工程と、を有し、
前記層間絶縁膜形成工程では前記配線を覆って前記層間絶縁膜を形成し、前記側壁延長部形成工程では、前記配線を覆う前記層間絶縁膜をさらに側壁延長部が覆うことを特徴とする電子装置の製造方法。
【請求項9】
請求項7または8に記載の電子装置の製造方法であって、
前記基板上にはMOS素子が形成され、前記配線と前記層間絶縁膜とのうち少なくとも一方は前記MOS素子を形成する工程にて形成されることを特徴とする電子装置の製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2012−119820(P2012−119820A)
【公開日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−266215(P2010−266215)
【出願日】平成22年11月30日(2010.11.30)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年11月30日(2010.11.30)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
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