説明

電子部品及びその製造方法

【課題】拘束層材料と素子層材料の電子特性との相対的な関係を選択することにより、側電極の深さを全体的な電気の影響を最小限に抑える。
【解決手段】電子部品およびその製造方法は、まず、第二電子特性を有する拘束層を第一電子特性を有する素子層に形成する。前記電子部品の特性は、前記第一電子特性によって主に影響される。その後、両方の拘束層及び素子層を焼結温度で焼結する。第一電子特性と第二電子特性との関係を選択することにより、電子部品の特性が安定になる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願と優先権主張の相互参照
本出願は、台湾知的財産局での2011年6月17日に出願された特許出願第100121324号に基づく利益を主張し、当該特許出願の開示は、参照によって本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は、電子部品及びその製造方法に関し、特に、拘束層及び素子層を焼結することにより、焼結された素子層の収縮を抑制しながら、拘束層が全体的な電子特性に与える影響を留意する電子部品に関する。
【背景技術】
【0003】
情報と無線通信を組み合わせた市場動向において、人々が電子製品に対し、多機能及び利便性を要求し、電子製品における部品は、よりコンパクトなサイズになる傾向がある。その中にある受動部品から見れば、積層セラミック部品の応用範囲が非常に広い。しかし、コンパクトなサイズを達成しながら、良好な電気特性を維持するために、原材料の性質から改善するだけでなく、プロセスの改善によって優れた電子部品の特性を達成できる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の積層セラミック部品1は、図1に示すようなものである。その製造方法は、積層セラミック層11を焼結プロセスを経て、積層セラミック層11の両端に側電極12を提供することで、積層セラミック部品1が外部回路(図示されない)と接続される。しかし、側電極12の浸漬(dipping)等のプロセスにおいて、側電極12の電極深さd121の形成を制御しにくいので、電極深さd121のサイズは、小さくない差が生じやすい。様々な電子部品の特性は、電極間の距離に密接な関係があるため(例えば、抵抗器の抵抗値が電極間の距離に正比例し、平板コンデンサの静電容量が電極間の距離に反比例する)、すべての電子部品の電極深さd121の差が大きくなると、側電極間の距離も大きくなることを表し、電子部品の歩留りに深刻な影響を与える。
【0005】
又、図2に示すように、積層セラミック部品を焼結する方法は、積層セラミック生地21をセラミック基板24上に焼結する。しかし、高温焼結プロセスにおいて、積層セラミック生地21とセラミック基板24との間にいくつかの反応を起こし、電子部品の全体特性に深刻な影響を与える。更に、積層セラミック生地21を焼結する時、セラミック焼結における緻密化プロセスにより、収縮現象が発生するため、焼結した積層セラミック層11は、内部の収縮等により、電子部品の全体に不安定性を加える。
【0006】
したがって、本発明はこのような従来の課題を解決するため、実験と研究を重ねた結果を通じて、得られたものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、拘束層を結合することで焼結収縮を抑制し、且つ拘束層の選択によって全体の電気的差異に対する電極深さの差を最小限に抑えることができる。結果として、すべての電子部品の電気的差異を最小限に減らすことができ、全体的な歩留りを更に高める。
【0008】
積層セラミック部品の歩留りを高めるために、本発明は、特殊の相対的な電気を有する材料を選択して素子層の収縮を抑制する拘束層とする。本発明では、拘束層材料と素子層材料の電子特性との相対的な関係を選択することにより、側電極の深さを全体的な電気の影響を最小限に抑える。
【0009】
上述の目的を達成するために、電子部品を提供する。特定電子特性を有する前記電子部品であって、第一電子特性を有する焼結素子層と、第二電子特性を有し、前記焼結素子層と並列される焼結拘束層と、を含み、前記第二電子特性の大きさは、前記電子部品を並列状態にする必要があり、前記特定電子特性が前記第一電子特性によって主に影響される、ことを特徴とする。
【0010】
上述の目的を達成するために、電子部品を提供する。前記電子部品は、第一電子特性及び第一焼結収縮量を有する素子層と、第二電子特性及び第二焼結収縮量を有し、前記素子層上に位置する拘束層と、を含み、前記電子部品が抵抗器又はインダクタであれば、前記第一電子特性が前記第二電子特性よりも小さくなり、前記電子部品がコンデンサであれば、前記第一電子特性が前記第二電子特性よりも大きくなる、ことを特徴とする。
【0011】
上述の目的を達成するために、電子部品の製造方法を提供する。前記電子部品の製造方法は、第一電子特性を有する焼結素子層に第二電子特性を有する焼結拘束層を形成する工程と、焼結温度で前記焼結素子層及び前記焼結拘束層を焼結する工程と、を含み、前記電子部品が抵抗器又はインダクタであれば、前記第一電子特性が前記第二電子特性よりも小さくなり、前記電子部品がコンデンサであれば、前記第一電子特性が前記第二電子特性よりも大きくなる、ことを特徴とする。
【0012】
上述の目的を達成するために、電子部品を提供する。素子の電子特性を有する前記電子部品であって、第一電子特性を有する焼結素子層と、第二電子特性を有する焼結拘束層と、を含み、前記第二電子特性の大きさは、前記素子の電子特性が前記第一電子特性によって主に影響される、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明は、拘束層材料と素子層材料の電子特性との相対的な関係を選択することにより、側電極の深さを全体的な電気の影響を最小限に抑える。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】従来の積層セラミック部品を示す概略図である。
【図2】従来の積層セラミック部品を焼結することを示す概略図である。
【図3A】本発明の実施形態に係る電子部品を示す概略図である。
【図3B】本発明の実施形態に係る電子部品における各々の要素の間の電気関係を示す概略図である。
【図4】本発明に係る焼結工程における電子部品生地を示す概略図である。
【図5】本発明の実施形態に係る電子部品の製造方法を示すフローチャートである。
【図6】本発明の実施形態に係る拘束層があるかないかという条件での抵抗が異なる電極深さにおける抵抗値を示す図である。
【図7】本発明の実施形態に係る拘束層があるかないかという条件での抵抗の抵抗値を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下のように、本発明を実施例に基づいて詳述するが、あくまでも例示であって、本発明の範囲はこれらの実施形態に限定されない。本発明の範囲は、特許請求の範囲に記載されており、さらに特許請求の範囲の記載と均等な意味及び範囲内での全ての変更を含んでいる。
【0016】
図3Aは、本発明の実施形態に係る電子部品3を示す概略図である。電子部品3の全体構成を充分に把握するために、図3Aの電子部品3は、一部を断面として示す。電子部品3は、素子層31、側電極32、第一拘束層331及び第二拘束層332を含む。全体の電子部品3は特定の電子特性を有し、素子層31は、第一電子特性を有し、第二拘束層332は、第二電子特性を有する。左側電極の深さは、電極深さd321であり、右側電極と左側電極との間の距離は、電極距離d322である。右側電極の深さと左側電極の深さとは異なるが、両者は電極間の距離に影響を与えて、電子部品3の全体の特定電子特性に影響を与える。左右両側の電極深さは、全体の特定電子特性に与える影響が異なっていないため、左側電極の深さだけを代表として説明する。同様に、第一拘束層331及び第二拘束層332の電子特性は、互いに異なっているが、両者は全体の特定電子特性に与える影響が異なっていないため、第二拘束層332の第二電子特性だけを代表として説明する。さらに、電子部品3にある側電極32の位置を容易に理解するように、側電極32の厚さは実際よりも大げさに表現する。実際には、側電極32は、薄膜方法で電子部品3の両端にメッキされる。
【0017】
側電極32は外部回路に電気的に接続することに使用するため、素子層31、第一拘束層331及び第二拘束層332の共通側の表面に位置し且つ同時に電気的に接続される。従って、本発明の実施形態に係る電子部品3の各々の要素間の電気関係は、図3Bのように示される。図3Bにおける要素符号は、図3Aと対応する要素に対し同一の符号が付されている。素子層31、第一拘束層331及び第二拘束層332は、並列的に電気的に接続されており、全体の電子部品3の特定電子特性を形成する。
【0018】
図3Aと図3Bにおいて、第二拘束層332は素子層31上に形成し、側電極32は全体の電子部品3に対して浸漬メッキ等工程を行って形成する。従って、側電極32は、周囲から第一拘束層331、第二拘束層332及び素子層31の両端を覆う。故に、素子層31は、その両端だけが側電極32と接触されるため、電極深さd321は、素子層31の電子特性に影響しないが、第一拘束層331及び第二拘束層332は、それらの両端が側電極32と接触されるのみならず、それぞれの一部の下面又は上面が側電極32によって覆われる。従って、電極深さd321は、第一拘束層331及び第二拘束層332の電子特性に影響を与える。
【0019】
従来技術では、素子層31自体の上面及び下面が側電極によって覆われるため、全体の電気部品を代表する素子層31の電子特性が受ける電極深さd121の影響を取り除くことができない。したがって、本発明の実施形態に係る電子部品3は、電極深さd321による影響を第一拘束層331及び第二拘束層332に移転し、且つ第一拘束層331及び第二拘束層332の電気的な大きさに対して材料の選択を行うことにより、全体の電気部品の電子特性が、第一拘束層331及び第二拘束層332の影響を受けず、素子層31によって影響される。故に、特定電子特性は、素子層31の電子特性を制御することだけを留意し、電極深さd321の影響を無視することができる。
【0020】
一つの実施形態において、電子部品3は、積層セラミック部品であり、前記積層セラミック部品は、抵抗器として使用されているので、前記特定電子特性、前記第一電子特性及び前記第二電子特性のそれぞれが特定抵抗値、第一抵抗値及び第二抵抗値である。並列状態での特定抵抗値の逆数は、前記第一抵抗値の逆数と前記第二抵抗値の逆数との和に等しいため、前記第二抵抗値は、前記第一抵抗値によって特定抵抗値の大きさが影響されるように、前記第一抵抗値よりも大きい必要がある。好ましくは、前記第二抵抗値は、前記第一抵抗値よりもはるかに大きいため、前記第二抵抗値を無視することができる。
【0021】
一つの実施形態において、前記積層セラミック部品は、コンデンサとして使用されているので、前記特定電子特性、前記第一電子特性及び前記第二電子特性のそれぞれが特定キャパシタンス、第一キャパシタンス及び第二キャパシタンスである。並列状態での特定キャパシタンスは、前記第一キャパシタンスと前記第二キャパシタンスとの和に等しいため、前記第二キャパシタンスは、前記第一キャパシタンスによって特定キャパシタンスの大きさが影響されるように、前記第一キャパシタンスよりも小さい必要がある。好ましくは、前記第二キャパシタンスは、前記第一キャパシタンスよりもはるかに小さいため、前記第二キャパシタンスを無視することができる。
【0022】
一つの実施形態において、前記積層セラミック部品は、インダクタとして使用されているので、前記特定電子特性、前記第一電子特性及び前記第二電子特性のそれぞれが特定インダクタンス、第一インダクタンス及び第二インダクタンスである。並列状態でのインダクタンスの計算公式は、並列状態での抵抗値の計算公式に対応するから、前記第一インダクタンスと前記第二インダクタンスとの関係は、前記第一抵抗値と前記第二抵抗値との関係が同じである。
【0023】
第一拘束層331及び第二拘束層332の電子特性を選択してその電子特性を無視できるため、電気部品3の特定電子特性が、素子層31によって主に影響され、電極深さd321の影響による拘束層331、332と特定電子特性の大きさとは関係がない。
【0024】
上記実施形態では、電子部品3は第一拘束層331だけを有してもよい。これにより、素子層31を焼結する時の収縮量を抑制しながら、電極深さd321が電子部品3の電子特性に対する影響量を減らす。
【0025】
図4は、本発明に係る焼結工程における電子部品生地4を示す概略図である。電子部品生地4は、素子層生地41、第一拘束層生地431及び第二拘束層生地432を有する。第一拘束層生地431と第二拘束層生地432との間には素子層生地41がある。電子部品生地4は、第一拘束層生地431によって積載基板44と接触し、積載基板44を介して加熱炉(図示しない)に配置されることにより、焼結温度で焼結工程が行われる。
【0026】
焼結した後、素子層生地41は、図3Aにおける素子層31となり、第一拘束層生地431及び第二拘束層生地432のそれぞれは、図3Aにおける第一拘束層331及び第二拘束層332となる。素子層31は、焼結工程によって拘束層331、332と共に形成されるため、それぞれは焼結素子層及び焼結拘束層と呼ばれている。
【0027】
素子層生地41が前記焼結温度で焼結されることにより形成された素子層31は、第一収縮量を有し、第二拘束層生地432が前記焼結温度で焼結されることにより形成された第二拘束層332は、第二収縮量を有する。第一拘束層生地431は、焼結された後にも収縮量を有し、その効果は前記第二収縮量と同じであるため、第二拘束層生地432及び前記第二収縮量を代表として説明する。
【0028】
一つの実施形態において、素子層生地41には、セラミック生地及び電極生地が含まれる。セラミック生地及び電極生地は、焼結された後の収縮量がそれぞれ異なるため、焼結された後の素子層に形成されるセラミック層及び電極層は、異なる収縮量によって電極層に電極が連続していない現象を表す。セラミック層の収縮を抑制するために、セラミック層と電極層の収縮量との間の差を減らし、第二拘束層生地432の前記第二収縮量が、素子層生地41の前記第一収縮量よりも小さくなる必要がある。前記第二収縮量が前記第一収縮量よりも小さくなることで、素子層生地41における第二拘束層生地432と接触する部分は、第二拘束層生地432の収縮抑制を受けて接触表面の収縮量を減らす。同様に、比較的外側にある素子層生地41が受けている抑制効果は比較的内側にある素子層生地41に伝わって、全体の抑制効果をもたらす。
【0029】
一つの実施形態において、前記第二収縮量は前記第一収縮量よりも小さいため、素子層生地41は、収縮プロセスで第二拘束層生地432と接触する平面が収縮抑制力を受ける。前記収縮抑制力の効果により、平面全体の微細構造分布がより均一になる。更に、素子層生地41の内側は収縮抑制力によって影響され、素子層31全体の微細構造分布がより均一になる。セラミック粒子の電気的特性は、自体粒径の影響を受けて変化するため、均一な微細構造分布は、素子層31全体の電気的特性をより安定させ、すべての電子部品の電気的特性がより近くなり、より高い歩留りを有する。
【0030】
一つの実施形態において、素子層31は第一焼結開始温度を有し、第二拘束層332は第二焼結開始温度を有する。前記第一焼結開始温度は、前記第二焼結開始温度よりも低くなってもよい。これにより、第二拘束層生地432がまだ収縮していない時に素子層生地41を焼結して収縮させる。このように、第二拘束層生地432がまだ収縮していないため、素子層生地41の収縮に対する抵抗を強化する。
【0031】
一つの実施形態において、第一拘束層生地431の材料は、積載基板44と反応しにくいものを選択してもよい。これにより、焼結プロセスでの素子層生地41は、第一拘束層生地431のブロックによって積載基板44と反応を避けることができる。第一拘束層生地431の一部が積載基板44と反応しても、電子部品3の前記特定電子特性は、素子層31の前記第一電子特性によって主に影響されるため、その反応の存在は、前記特定電子特性に影響を与えることがない。
【0032】
図5は、本発明の実施形態に係る電子部品の製造方法を示すフローチャートである。前記製造方法は、(S51)第一電子特性を有する焼結素子層を形成する工程と、(S52)前記焼結素子層に第二電子特性を有する焼結拘束層を形成する工程と、(S53)焼結温度に加熱して焼結を行う工程と、(S54)前記焼結素子層及び前記焼結拘束層の両方の同じ側の表面に側電極を形成する工程と、を含む。
【0033】
工程S51は、焼結されていない焼結素子層(図4に示す素子層生地41)を先に形成する。焼結されていない焼結素子層は、第一電子特性及び第一収縮量を有する。
【0034】
工程S52は、焼結されていない焼結素子層に焼結されていない焼結拘束層(図4に示す拘束層生地431又は432)を形成する。焼結されていない焼結拘束層は、第二電子特性及び第二収縮量を有する。焼結拘束層は、前記第二電子特性が全体的な電子部品に対する影響が比較的に小さく、且つ前記第一電子特性によって主に影響される材料を選択する。例えば、前記電子部品が抵抗器又はインダクタであれば、前記第一電子特性が前記第二電子特性よりも小さくなり、前記電子部品がコンデンサであれば、前記第一電子特性が前記第二電子特性よりも大きくなる。
【0035】
工程S53は、焼結プロセスにおいて、前記焼結素子層及び前記焼結拘束層のそれぞれが、焼結温度で第一収縮量及び前記第一収縮量より小さい第二収縮量を有することにより、前記焼結拘束層は、前記焼結温度で前記焼結素子層の収縮を抑制する。又、前記焼結温度は、前記焼結素子層が焼結収縮を発生させるように、焼結素子層の第一焼結開始温度よりも高くなる。
【0036】
前記焼結拘束層の前記第二収縮量が前記焼結素子層の前記第一収縮量よりも小さくなれば、前記焼結拘束層自体も焼結収縮を行わなくてもよい(すなわち、前記第二収縮量はゼロである)。したがって、一つの実施形態において、前記焼結温度は、前記焼結拘束層の前記第二焼結開始温度よりも高くてもよい。他の実施形態において、前記焼結温度は、前記第二焼結開始温度よりも低くてもよい。別の実施形態において、前記第二焼結開始温度は、前記焼結拘束層が前記焼結素子層に対する収縮を抑制する効果を向上させるように、前記第一焼結開始温度よりも高い。
【0037】
本発明の一つの実施形態において、拘束層の材料は、まだ焼結されていない状態に基づいて選択される。即ち、拘束層生地と素子層生地との電子特性関係に基づいて選択する。他の実施形態において、拘束層の材料は、焼結された状態に基づいて選択される。即ち、拘束層と素子層との電子特性関係に基づいて選択する。別の実施形態では、まだ焼結されていない拘束層生地と素子層生地との電子特性関係と、焼結された拘束層と素子層との電子特性関係とは変化がないため、まだ焼結されていない拘束層生地或いは焼結された拘束層に基づいて拘束層の材料を選択してもよい。
【0038】
図6は、拘束層があるかないかという条件で、抵抗が異なる電極深さにおける抵抗値を示す図である。図6に示すように、曲線61は、拘束層のない抵抗が異なる電極深さにおける抵抗値を表し、曲線62は、拘束層がある抵抗が異なる電極深さにおける抵抗値を表す。図6から明らかなように、曲線62は、異なる電極深さにおける抵抗値が大きく変化せず、曲線61は、電極深さの増加と共に抵抗値が有意に変化する。したがって、拘束層がない抵抗は、電極深さの増加により、電極間の距離を減少させ、抵抗値も低下させる。対照的に、拘束層がある抵抗は、電極間の距離が抵抗値に対する影響を拘束層に移転する。また、拘束層の抵抗値が素子層の抵抗値よりも大きいため、拘束層と素子層との並列状態において、電極間の距離が全体の抵抗値に対する影響は、拘束層によって大きな変化がない。よって、曲線62は電極深さの増加によって大きな変化がない。
【0039】
更に、電極深さの制御は容易ではないので、電極深さが500μmに設定されても、製造された各抵抗は、電極深さが異なる可能性がある。500μmの電極深さの一例としては、曲線61の抵抗値が大幅に変化し、曲線62の抵抗値が相対的に安定する。したがって、電極深さの制御は容易ではなく、拘束層がない各抵抗の電極深さとの間の差は、直接抵抗値に反映される。更に、拘束層がないため、素子層内部の粒子サイズは相対的に不均一であり、素子層の電子特性も異常な変化を引き起こす。相対的に、拘束層がある各抵抗の間の電極深さは、拘束層を介して抵抗値に反映される。又、拘束層の抵抗値がより大きいため、並列状態での電極深さの影響を相対的に明らかにしない。更に、拘束層は、素子層内部の粒子サイズが相対的に均一であり、素子層の電子特性が異なる可能性が低い。
【0040】
表1には、抵抗の一例として、拘束層があるかないかという状況での抵抗値を比較する。表1の実験データは、無作為標本抽出で、数5000の抵抗から20つの抵抗を抽出し、温度25℃でそれらの抵抗値を測定したものである。抵抗1は、拘束層がない抵抗であり、抵抗2は、拘束層がある抵抗である。
【0041】
【表1】

【0042】
上記表1によれば、抵抗1の最大値(11280Ω)は、抵抗2の最大値(11110Ω)よりも大きい。抵抗1の最小値(9800Ω)は、抵抗2の最小値(10460Ω)よりも小さい。従って、拘束層がない抵抗1の抵抗値は、拘束層がある抵抗2の抵抗値より大きい。図7は、抵抗値の分布範囲を表すために、表1のデータに基づいて描かれている。図7から明らかなように、拘束層がある抵抗2の抵抗値は、狭い分布範囲を有し、拘束層がない抵抗1に比べてより高い歩留りを有する。
【0043】
他の実施形態は、次のように記載されている。
【0044】
1、特定電子特性を有する電子部品であって、第一電子特性を有する焼結素子層と、第二電子特性を有し、前記焼結素子層と並列に接続される焼結拘束層と、を含み、前記第二電子特性の大きさは、前記電子部品を並列状態にする必要があり、前記特定電子特性が前記第一電子特性によって主に影響される。すなわち、前記第二電子特性の大きさは、前記特定電子特性に与える影響が小さく、前記特定電子特性が前記第一電子特性によって主に影響される。
【0045】
2、実施形態1において、前記電子部品が抵抗器であれば、前記特定電子特性、前記第一電子特性及び前記第二電子特性のいずれかが抵抗値であり、前記第二電子特性が前記第一電子特性よりも大きく、前記特定電子特性が前記第一電子特性によって主に影響される。
【0046】
3、実施形態1において、前記電子部品がインダクタであれば、前記特定電子特性、前記第一電子特性及び前記第二電子特性のいずれかがインダクタンスであり、前記第二電子特性が前記第一電子特性よりも大きく、前記特定電子特性が前記第一電子特性によって主に影響される。
【0047】
4、実施形態1において、前記電子部品がコンデンサであれば、前記特定電子特性、前記第一電子特性及び前記第二電子特性のいずれかがキャパシタンスであり、前記第二電子特性が前記第一電子特性よりも小さく、前記特定電子特性が前記第一電子特性によって主に影響される。
【0048】
5、実施形態1〜4のいずれかにおいて、前記焼結素子層が焼結温度で第一収縮量を有し、前記焼結拘束層が焼結温度で前記第一収縮量よりも小さい第二収縮量を有することにより、前記焼結拘束層は、前記焼結温度で前記焼結素子層の収縮を抑制する。
【0049】
6、実施形態1〜5のいずれかにおいて、前記焼結素子層は、第一焼結開始温度を有し、前記焼結拘束層は、第一焼結開始温度よりも高い第二焼結開始温度を有する。
【0050】
7、実施形態1〜6のいずれかにおいて、両方の前記焼結素子層及び前記焼結拘束層の同じ側の表面にある側電極を更に含む。
【0051】
8、電子部品は、第一電子特性及び第一焼結収縮量を有する素子層と、第二電子特性及び第二焼結収縮量を有し、前記素子層上に位置する拘束層と、を含み、前記電子部品が抵抗器又はインダクタであれば、前記第一電子特性が前記第二電子特性よりも小さく、前記電子部品がコンデンサであれば、前記第一電子特性が前記第二電子特性よりも大きい。
【0052】
9、実施形態8において、前記素子層は、第一焼結開始温度を有し、前記拘束層は、第一焼結開始温度よりも高い第二焼結開始温度を有する。
【0053】
10、実施形態8または9において、両方の前記素子層及び前記拘束層の同じ側の表面にある側電極を更に含む。
【0054】
11、実施形態8〜10のいずれかにおいて、前記第一焼結収縮量は前記素子層が焼結温度で生成する収縮量であり、前記第二焼結収縮量は前記拘束層が焼結温度で生成する収縮量である。
【0055】
12、実施形態8〜11のいずれかにおいて、前記第一焼結収縮量は、前記第二焼結収縮量よりも大きい。
【0056】
13、電子部品の製造方法は、第一電子特性を有する焼結素子層に第二電子特性を有する焼結拘束層を形成する工程と、焼結温度で前記焼結素子層及び前記焼結拘束層を焼結する工程と、を含み、前記電子部品が抵抗器又はインダクタであれば、前記第一電子特性が前記第二電子特性よりも小さく、前記電子部品がコンデンサであれば、前記第一電子特性が前記第二電子特性よりも大きい。
【0057】
14、実施形態13において、両方の前記焼結素子層及び前記焼結拘束層の同じ側の表面にある側電極を更に含む。
【0058】
15、実施形態13または14において、前記第一焼結収縮量は前記素子層が焼結温度で生成する収縮量であり、前記第二焼結収縮量は前記拘束層が焼結温度で生成する収縮量である。
【0059】
16、実施形態13〜15のいずれかにおいて、前記焼結素子層は、第一焼結開始温度を有し、前記焼結拘束層は、第一焼結開始温度より高い第二焼結開始温度を有する。
【0060】
17、実施形態13〜16のいずれかにおいて、前記焼結温度は、第一焼結開始温度より高い。
【0061】
18、実施形態13〜17のいずれかにおいて、前記焼結温度は、第二焼結開始温度より高い。
【0062】
19、実施形態13〜18のいずれかにおいて、前記焼結素子層が前記焼結温度で第一収縮量よりも小さい第二収縮量を有し、また、前記焼結拘束層が前記焼結温度で前記第一収縮量よりも小さい第二収縮量を有することにより、前記焼結拘束層は、前記焼結温度で前記焼結素子層の収縮を抑制する。
【0063】
20、素子の電子特性を有する電子部品であって、第一電子特性を有する焼結素子層と、第二電子特性を有する焼結拘束層と、を含み、前記第二電子特性の大きさは、前記素子の電子特性が前記第一電子特性によって主に影響される。すなわち、前記第二電子特性の大きさは前記素子の電子特性に与える影響が小さく、前記素子の電子特性が前記第一電子特性によって主に影響される。
【0064】
以上の説明によると、当業者であれば本発明の技術思想を逸脱しない範囲で、多様な変更及び修正が可能であることが分かる。従って、本発明の技術的な範囲は、明細書の詳細な説明に記載された内容に限らず、特許請求の範囲によって定めなければならない。
【符号の説明】
【0065】
1 積層セラミック部品
11 積層セラミック層
12 側電極
d121、d321 電極深さ
d122、d322 電極距離
21 積層セラミック生地
24 セラミック基板
3 電子部品
31 素子層
32 側電極
331 第一拘束層
332 第二拘束層
4 電子部品生地
41 素子層生地
431 第一拘束層生地
432 第二拘束層生地
44 積載基板
61、62 曲線
S51〜S54 工程

【特許請求の範囲】
【請求項1】
特定電子特性を有する電子部品であって、
第一電子特性を有する焼結素子層と、
第二電子特性を有し、前記焼結素子層と並列される焼結拘束層と、を含み、
前記第二電子特性の大きさは、前記電子部品を並列状態にする必要があり、前記特定電子特性が前記第一電子特性によって主に影響される、ことを特徴とする電子部品。
【請求項2】
前記電子部品が抵抗器であり、前記特定電子特性、前記第一電子特性及び前記第二電子特性のいずれかが抵抗値であり、または、前記電子部品がインダクタであり、前記特定電子特性、前記第一電子特性及び前記第二電子特性のいずれかがインダクタンスであり、
前記第二電子特性が前記第一電子特性よりも大きくなることで、前記特定電子特性が前記第一電子特性によって主に影響される、ことを特徴とする請求項1に記載の電子部品。
【請求項3】
前記電子部品がコンデンサであり、前記特定電子特性、前記第一電子特性及び前記第二電子特性のいずれかがキャパシタンスであり、
前記第二電子特性が前記第一電子特性よりも小さくなることで、前記特定電子特性が前記第一電子特性によって主に影響される、ことを特徴とする請求項1に記載の電子部品。
【請求項4】
前記焼結素子層及び前記焼結拘束層のそれぞれは、焼結温度で第一収縮量及び前記第一収縮量よりも小さい第二収縮量を有することにより、前記焼結拘束層は、前記焼結温度で前記焼結素子層の収縮を抑制する、ことを特徴とする請求項1に記載の電子部品。
【請求項5】
両方の前記焼結素子層及び前記焼結拘束層の同じ側の表面にある側電極を更に含む、ことを特徴とする請求項1に記載の電子部品。
【請求項6】
第一電子特性及び第一焼結収縮量を有する素子層と、
第二電子特性及び第二焼結収縮量を有し、前記素子層上に位置する拘束層と、を含み、
前記電子部品が抵抗器又はインダクタであり、前記第一電子特性が前記第二電子特性よりも小さくなり、または、前記電子部品がコンデンサであり、前記第一電子特性が前記第二電子特性よりも大きくなる、ことを特徴とする電子部品。
【請求項7】
両方の前記素子層及び前記拘束層の同じ側の表面にある側電極を更に含む、ことを特徴とする請求項6に記載の電子部品。
【請求項8】
前記第一焼結収縮量及び前記第二焼結収縮量のそれぞれは、前記素子層及び前記拘束層が焼結温度で生成する収縮量である、ことを特徴とする請求項6に記載の電子部品。
【請求項9】
第一電子特性を有する焼結素子層に第二電子特性を有する焼結拘束層を形成する工程と、
焼結温度で前記焼結素子層及び前記焼結拘束層を焼結する工程と、を含み、
前記電子部品が抵抗器又はインダクタであり、前記第一電子特性が前記第二電子特性よりも小さくなり、または、前記電子部品がコンデンサであり、前記第一電子特性が前記第二電子特性よりも大きくなる、ことを特徴とする電子部品の製造方法。
【請求項10】
焼結された前記焼結素子層及び前記焼結拘束層の両方の同じ側の表面に側電極を形成する工程と、を更に含む、ことを特徴とする請求項9に記載の電子部品の製造方法。
【請求項11】
前記焼結素子層は、第一焼結開始温度を有し、
前記焼結拘束層は、第一焼結開始温度より高い第二焼結開始温度を有する、ことを特徴とする請求項9に記載の電子部品の製造方法。
【請求項12】
前記焼結素子層及び前記焼結拘束層のそれぞれは、焼結温度で第一収縮量及び前記第一収縮量よりも小さい第二収縮量を有することにより、前記焼結拘束層は、前記焼結温度で前記焼結素子層の収縮を抑制する、ことを特徴とする請求項9に記載の電子部品の製造方法。
【請求項13】
素子の電子特性を有する電子部品であって、
第一電子特性を有する焼結素子層と、
第二電子特性を有する焼結拘束層と、を含み、
前記第二電子特性の大きさは、前記素子の電子特性が前記第一電子特性によって主に影響される、ことを特徴とする電子部品。

【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−4985(P2013−4985A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−137205(P2012−137205)
【出願日】平成24年6月18日(2012.6.18)
【出願人】(502250743)國立成功大學 (16)
【氏名又は名称原語表記】NATIONAL CHENG KUNG UNIVERSITY
【住所又は居所原語表記】No.1,Ta−Hsueh Road,East District,Tainan City,Taiwan(R.O.C.)
【Fターム(参考)】