説明

電気光学装置、及び電子機器

【課題】不良の発生が抑制され高いコストパフォーマンスを有する電気光学装置、及び電子機器を提供する。
【解決手段】素子基板上に設けられた、TFT30と、TFT30に対応して設けられた画素電極15と、TFT30と画素電極15との間に設けられたデータ線6aと、データ線6aと画素電極15との間に設けられた第1容量電極16aと、第1容量電極16aと画素電極15との間に設けられ、第1容量電極16aの一部に誘電体層を介して対向配置されると共に、電気的にTFT30と画素電極15とに接続された第2容量電極16bと、を備え、第2容量電極16bは、アモルファスタングステンシリサイド膜からなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気光学装置、及び電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
上記電気光学装置として、画素ごとに薄膜トランジスターなどのスイッチング素子が設けられたアクティブ駆動型の液晶装置が知られている。アクティブ駆動型の液晶装置は、一対の電極間に液晶層を有し、画素ごとに書き込まれた画像信号は、該一対の電極と液晶層とからなる電気容量において一時的に保持される。これに加えて、該画像信号を所定の期間電気的に保持する保持容量が画素ごとに設けられている。
【0003】
例えば、特許文献1には、素子基板上において保持容量と画素電極との間に、Al(アルミニウム)を用いたデータ線が配置された配線構造が開示されている。また、特許文献2には、容量線(シールド電極)と画素電極との間に容量素子を設けた構造が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−178650号公報
【特許文献2】特開2010−39212号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、AlやTiN(窒化チタン)など導電膜をパターニングするには、塩酸などの塩素系エッチャントが用いられることが多い。このようなエッチャントの成分がエッチング後の基板に残留していると、水分などと結びついてアフターコロージョン(電蝕)が起り、形成された配線や電極が断線したり、短絡(ショート)したりする不具合が発生するおそれがある。したがって、製造工程では、これらのエッチャントを用いる工程を、付加価値が付いた後に採用することを避けたいという課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態又は適用例として実現することが可能である。
【0007】
[適用例1]本適用例に係る電気光学装置は、基板上にトランジスターと、前記トランジスターに対応する画素電極と、前記トランジスターと前記画素電極との間に配置されたデータ線と、前記データ線と前記画素電極との間に配置された第1容量電極と、前記第1容量電極と前記画素電極との間に配置され、前記第1容量電極の一部に誘電体層を介して対向配置されると共に、電気的に前記トランジスターと前記画素電極とに接続された第2容量電極と、を備え、前記第2容量電極は、アモルファス金属シリサイド膜からなることを特徴とする。
【0008】
この構成によれば、基板上において、例えば遮光性の金属配線材料が用いられるデータ線や第1容量電極が形成された後に、アモルファス金属シリサイド膜を用いて第2容量電極が形成される。その後に、例えば透明導電膜が用いられる画素電極が形成されることになる。また、第2容量電極がアモルファス金属シリサイド膜からなるため、塩素系のエッチャントを用いずに第2容量電極をパターニング可能となる。これにより、当該エッチャントの成分の残留に起因する配線や電極の断線あるいは短絡(ショート)などの不具合が、トランジスターや配線などを設けた後に発生することを低減できる。言い換えれば、付加価値が付いた状態で不良が発生することが低減されるので、高いコストパフォーマンスを有する電気光学装置を提供できる。
【0009】
なお、「トランジスターと画素電極との間」「データ線と画素電極との間」「第1容量電極と画素電極との間」は、物理的に間にあるだけでなく、層構造として間の層にあることも含む。また、「少なくとも一部が平面視で重なる構成」や「平面視で重ならない構成」も含んでいる。
【0010】
[適用例2]上記適用例に係る電気光学装置において、前記データ線と交差するように配置された走査線を備え、前記トランジスターは、前記データ線と前記走査線との交差部に設けられ、前記第2容量電極は、前記トランジスターの半導体層と平面的に重なるように設けられていることが好ましい。
【0011】
この構成によれば、アモルファス金属シリサイド膜からなる第2容量電極は遮光性を有している。したがって、データ線や走査線を、同じく遮光性の金属材料を用いて形成すれば、トランジスターの半導体層に対して複数段の遮光構造を実現することができる。つまり、不必要な光が半導体層に侵入して光リーク電流が流れるなどトランジスターの動作が不安定になることを確実に防止できる。
【0012】
[適用例3]上記適用例に係る電気光学装置において、前記トランジスターの半導体層は、前記データ線と交差する方向に延在して設けられていることが好ましい。
【0013】
この構成によれば、トランジスターとデータ線とを電気的に接続させるコンタクトホールをデータ線の延在部分に設けなくてもよいので、当該コンタクトホールが第1容量電極や第2容量電極を設けることに邪魔になり難い。言い換えれば、蓄積容量を構成する一対の容量電極の面積を比較的に大きくできるので、所望の電気容量を有する蓄積容量を構成し易い。
【0014】
[適用例4]上記適用例に係る電気光学装置において、前記画素電極と前記第2容量電極とを電気的に接続させるコンタクトホールを有し、前記コンタクトホールは、前記トランジスターのゲート電極、前記データ線、前記第1容量電極と平面的に重なる位置に設けられていることが好ましい。
【0015】
この構成によれば、ゲート電極、データ線、第1容量電極はいずれも遮光性の金属材料を用いることができるので、これらと平面的に重なるように画素電極と第2容量電極とを電気的に接続させるコンタクトホールを設ければ、画素における開口率が当該コンタクトホールを設けることで低下しない。言い換えれば、遮光性のアモルファス金属シリサイド膜を用いて第2容量電極を形成したとしても、開口率を低下させることなく、所望の光学特性が得られる電気光学装置を提供できる。
【0016】
[適用例5]上記適用例に係る電気光学装置において、前記第2容量電極は、アモルファスタングステンシリサイド膜からなることが好ましい。
【0017】
この構成によれば、タングステン(W)を用いることにより、他の金属に比べて比抵抗を低くすることができる。
【0018】
[適用例6]本適用例に係る電子機器は、上記に記載の電気光学装置を備えたことを特徴とする。
【0019】
この構成によれば、上記適用例の電気光学装置を備えているので、高いコストパフォーマンスを有する電子機器を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】(a)は液晶装置の構成を示す模式平面図、(b)は(a)のH−H’線に沿う模式断面図。
【図2】液晶装置の電気的な構成を示す等価回路図。
【図3】液晶装置における画素の配置を示す概略平面図。
【図4】液晶装置における画素の構成を具体的に示す概略平面図。
【図5】図4のA−A’線に沿う画素の構造を示す概略断面図。
【図6】電子機器としての投射型表示装置の構成を示す概略図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明を具体化した実施形態について図面に従って説明する。なお、使用する図面は、説明する部分が認識可能な状態となるように、適宜拡大または縮小して表示している。
【0022】
本実施形態では、薄膜トランジスター(Thin Film Transistor;TFT)を画素のスイッチング素子として備えた電気光学装置としてのアクティブマトリクス型の液晶装置を例に挙げて説明する。この液晶装置は、例えば後述する投射型表示装置(液晶プロジェクター)の光変調素子(液晶ライトバルブ)として好適に用いることができるものである。
【0023】
<電気光学装置(液晶装置)の構成>
図1(a)は、電気光学装置としての液晶装置の構成を示す模式平面図である。図1(b)は、図1(a)に示す液晶装置のH−H’線に沿う模式断面図である。図2は、液晶装置の電気的な構成を示す等価回路図である。以下、液晶装置の構造を、図1及び図2を参照しながら説明する。
【0024】
図1(a)及び(b)に示すように、本実施形態の液晶装置100は、対向配置された素子基板10および対向基板20と、これら一対の基板によって挟持された液晶層50とを有する。素子基板10および対向基板20は、透明な例えば石英などのガラス基板が用いられている。
【0025】
素子基板10は対向基板20よりも一回り大きく、両基板は、額縁状に配置されたシール材40を介して接合され、その隙間に正または負の誘電異方性を有する液晶が封入されて液晶層50を構成している。シール材40は、例えば熱硬化性又は紫外線硬化性のエポキシ樹脂などの接着剤が採用されている。シール材40には、一対の基板の間隔を一定に保持するためのスペーサー(図示省略)が混入されている。
【0026】
額縁状に配置されたシール材40の内側には、同じく額縁状に遮光膜21が設けられている。遮光膜21は、例えば遮光性の金属あるいは金属酸化物などからなり、遮光膜21の内側が複数の画素Pを有する表示領域Eとなっている。なお、図1では図示省略したが、表示領域Eにおいても複数の画素Pを平面的に区分する遮光部が設けられている。
【0027】
素子基板10の1辺部に沿ったシール材40との間にデータ線駆動回路101が設けられている。また、該1辺部に対向する他の1辺部に沿ったシール材40の内側に検査回路103が設けられている。さらに、該1辺部と直交し互いに対向する他の2辺部に沿ったシール材40の内側に走査線駆動回路102が設けられている。該1辺部と対向する他の1辺部のシール材40の内側には、2つの走査線駆動回路102を繋ぐ複数の配線105が設けられている。
【0028】
これらデータ線駆動回路101、走査線駆動回路102に繋がる配線は、該1辺部に沿って配列した複数の外部接続端子104に接続されている。以降、該1辺部に沿った方向をX方向とし、該1辺部と直交し互いに対向する他の2辺部に沿った方向をY方向として説明する。なお、検査回路103の配置はこれに限定されず、データ線駆動回路101と表示領域Eとの間のシール材40の内側に沿った位置に設けてもよい。
【0029】
図1(b)に示すように、素子基板10の液晶層50側の表面には、画素Pごとに設けられた光透過性を有する画素電極15およびスイッチング素子としての薄膜トランジスター(TFT;Thin Film Transistor)30と、信号配線と、これらを覆う配向膜18とが形成されている。また、TFT30における半導体層に光が入射してスイッチング動作が不安定になることを防ぐ遮光構造が採用されている。当該遮光構造については後述する。
【0030】
対向基板20の液晶層50側の表面には、遮光膜21と、これを覆うように成膜された層間膜層22と、層間膜層22を覆うように設けられた共通電極23と、共通電極23を覆う配向膜24とが設けられている。
【0031】
遮光膜21は、図1(a)に示すように平面的にデータ線駆動回路101や走査線駆動回路102、検査回路103と重なる位置において額縁状に設けられている。これにより対向基板20側から入射する光を遮蔽して、これらの駆動回路を含む周辺回路の光による誤動作を防止する役目を果たしている。また、不必要な迷光が表示領域Eに入射しないように遮蔽して、表示領域Eの表示における高いコントラストを確保している。
【0032】
層間膜層22は、例えば酸化シリコンなどの無機材料からなり、光透過性を有して遮光膜21を覆うように設けられている。このような層間膜層22の形成方法としては、例えばプラズマCVD法などを用いて成膜する方法が挙げられる。
【0033】
共通電極23は、例えばITO(Indium Tin Oxide)などの透明導電膜からなり、層間膜層22を覆うと共に、図1(a)に示すように対向基板20の四隅に設けられた上下導通部106により素子基板10側の配線に電気的に接続している。
【0034】
画素電極15を覆う配向膜18および共通電極23を覆う配向膜24は、液晶装置100の光学設計に基づいて選定される。例えば、ポリイミドなどの有機材料を成膜して、その表面をラビングすることにより、液晶分子に対して略水平配向処理が施されたものや、SiOx(酸化シリコン)などの無機材料を気相成長法を用いて成膜して、液晶分子に対して略垂直配向させたものが挙げられる。
【0035】
図2に示すように、液晶装置100は、少なくとも表示領域Eにおいて互いに絶縁されて直交する信号線としての複数の走査線3aおよび複数のデータ線6aと、データ線6aに沿って平行に配置された容量線3bとを有する。走査線3aが延在する方向がX方向であり、データ線6aが延在する方向がY方向である。
【0036】
走査線3aとデータ線6aならびに容量線3bと、これらの信号線類により区分された領域に、画素電極15と、TFT30と、保持容量16とが設けられ、これらが画素Pの画素回路を構成している。
【0037】
走査線3aはTFT30のゲートに電気的に接続され、データ線6aはTFT30のデータ線側ソースドレイン領域に電気的に接続されている。画素電極15はTFT30の画素電極側ソースドレイン領域に電気的に接続されている。
【0038】
データ線6aはデータ線駆動回路101(図1参照)に接続されており、データ線駆動回路101から供給される画像信号D1,D2,…,Dnを画素Pに供給する。走査線3aは走査線駆動回路102(図1参照)に接続されており、走査線駆動回路102から供給される走査信号SC1,SC2,…,SCmを各画素Pに供給する。
【0039】
データ線駆動回路101からデータ線6aに供給される画像信号D1〜Dnは、この順に線順次で供給してもよく、互いに隣り合う複数のデータ線6a同士に対してグループごとに供給してもよい。走査線駆動回路102は、走査線3aに対して、走査信号SC1〜SCmを所定のタイミングでパルス的に線順次で供給する。
【0040】
液晶装置100は、スイッチング素子であるTFT30が走査信号SC1〜SCmの入力により一定期間だけオン状態とされることで、データ線6aから供給される画像信号D1〜Dnが所定のタイミングで画素電極15に書き込まれる構成となっている。そして、画素電極15を介して液晶層50に書き込まれた所定レベルの画像信号D1〜Dnは、画素電極15と液晶層50を介して対向配置された共通電極23との間で一定期間保持される。
【0041】
保持された画像信号D1〜Dnがリークするのを防止するため、画素電極15と共通電極23との間に形成される液晶容量と並列に保持容量16が接続されている。保持容量16は、TFT30のドレインと容量線3bとの間に設けられている。
【0042】
保持容量16は、遮光性の第1容量電極および第2容量電極との間に誘電体層を有するものである。また、上記第1容量電極が上記容量線3bの機能を果たしている。
【0043】
これにより、双方が同じ形状の容量電極である場合に比べて実質的な表面積を増やすことができ、保持容量16において所望の電気容量が確保されている。また、容量線3b(第1容量電極)は、固定電位に接続されている。
【0044】
なお、図1(a)に示した検査回路103には、データ線6aが接続されており、液晶装置100の製造過程において、上記画像信号を検出することで液晶装置100の動作欠陥などを確認できる構成となっているが、図2の等価回路では省略している。
【0045】
また、検査回路103は、上記画像信号をサンプリングしてデータ線6aに供給するサンプリング回路、データ線6aに所定電圧レベルのプリチャージ信号を画像信号に先行して供給するプリチャージ回路を含むものとしてもよい。
【0046】
このような液晶装置100は透過型であって、画素Pが非駆動時に明表示となるノーマリーホワイトモードや、非駆動時に暗表示となるノーマリーブラックモードの光学設計が採用される。光の入射側と射出側とにそれぞれ偏光素子が光学設計に応じて配置されて用いられる。
【0047】
図3は、液晶装置における画素の配置を示す模式平面図である。図4(a)及び(b)は、液晶装置における画素の構成を示す模式平面図である。図5は、図4に示す画素のA−A’線に沿う模式断面図である。以下、画素の平面的な配置と断面構造について、図3〜図5を参照しながら説明する。
【0048】
図3に示すように、液晶装置100における画素Pは、例えば平面的に略四角形の開口領域を有する。開口領域は、X方向とY方向とに延在し格子状に設けられた遮光性の非開口領域により囲まれている。
【0049】
X方向に延在する非開口領域には、図2に示した走査線3aが設けられている。走査線3aは遮光性の導電部材が用いられており、走査線3aによって非開口領域の少なくとも一部が構成されている。
【0050】
同じく、Y方向に延在する非開口領域には、図2に示したデータ線6aと容量線3bが設けられている。データ線6aおよび容量線3bも遮光性の導電部材が用いられており、これらによって非開口領域の少なくとも一部が構成されている。
【0051】
非開口領域は、素子基板10側に設けられた上記信号線類によって構成されるだけでなく、対向基板20側において格子状にパターニングされた遮光膜21(図1参照)によっても構成することができる。
【0052】
非開口領域の交差部付近には、図2に示したTFT30や保持容量16が設けられている。遮光性を有する非開口領域の交差部付近にTFT30を設けることにより、TFT30の光誤動作を防止すると共に、開口領域における開口率を確保している。詳しい画素Pの構造については後述するが、交差部付近にTFT30や保持容量16を設ける関係上、交差部付近の非開口領域の幅は、他の部分に比べて広くなっている。
【0053】
図4(a)は、走査線3aが設けられた層から、データ線6aが設けられた層までの平面的な構造を示している。図4(b)は、データ線6aが設けられた層から、画素電極15が設けられた層までの平面的な構造を示している。
【0054】
図4に示すように、画素Pは、走査線3aとデータ線6aの交差部に設けられたTFT30を有している。TFT30は、データ線側ソースドレイン領域30sと、画素電極側ソースドレイン領域30dと、チャネル領域30cと、データ線側ソースドレイン領域30sとチャネル領域30cとの間に設けられた接合領域30eと、チャネル領域30cと画素電極側ソースドレイン領域30dとの間に設けられた接合領域30fとを有するLDD(Lightly Doped Drain)構造の半導体層30aを有している。半導体層30aは上記交差部を通過して、走査線3aと重なるように配置されている。
【0055】
走査線3aはデータ線6aとの交差部において、X,Y方向に拡張された平面視で四角形の拡張部を有している。当該拡張部に平面的に重なると共に接合領域30fおよび画素電極側ソースドレイン領域30dと重ならない開口部を有する折れ曲がった形状のゲート電極30gが設けられている。
【0056】
ゲート電極30gは、Y方向に延在した部分が平面的にチャネル領域30cと重なっている。また、チャネル領域30cと重なった部分から折り曲げられてX方向に延在し、互いに対向する部分がそれぞれ走査線3aの拡張部との間に設けられたコンタクトホールCNT5,CNT6によって、電気的に走査線3aと接続している。
【0057】
コンタクトホールCNT5,CNT6は、平面視でX方向が長い矩形状(長方形)であって、半導体層30aのチャネル領域30cと接合領域30fとに沿って接合領域30fを挟むように両側に設けられている。
【0058】
データ線6aは、Y方向に延在すると共に、走査線3aとの交差部において同じく拡張部を有し、当該拡張部からX方向に突出した部分に設けられたコンタクトホールCNT1によってデータ線側ソースドレイン領域30sと電気的に接続している。コンタクトホールCNT1を含む部分がデータ線側ソースドレイン電極31となっている。一方、画素電極側ソースドレイン領域30dの端部にもコンタクトホールCNT2,CNT3が設けられており、コンタクトホールCNT2を含む部分が画素電極側ソースドレイン電極32(図5参照)となっている。
【0059】
拡張部の一部と平面的に重なるようにコンタクトホールCNT4が設けられており、コンタクトホールCNT2とコンタクトホールCNT3とは島状に設けられた中継電極6bによって電気的に接続している。コンタクトホールCNT3とコンタクトホールCNT4とは、保持容量16の第2容量電極16bによって中継されて電気的に接続されている。詳しいコンタクトホールCNT1,CNT2,CNT3,CNT4の構造については、後述する。
【0060】
画素電極15は、走査線3aやデータ線6aと外縁部が重なるように設けられており、本実施形態では走査線3aと重なる位置に設けられた2つのコンタクトホールCNT3,CNT4を介して画素電極側ソースドレイン電極32に電気的に接続されている。
【0061】
図4(b)に示すように、保持容量16は、第1容量電極16aと、第1容量電極16aに対向配置された第2容量電極16bとを有している。第1容量電極16aは、走査線3aの拡張部と重なる部分と、該拡張部と重なった部分から走査線3aの延在方向とデータ線6aの延在方向とに延出された部分とを有しており、非開口領域(図3参照)に配置されている。
【0062】
一方、第2容量電極16bは、画素Pごとに独立して島状に設けられている。1つの画素Pを囲むようにして当該画素Pの第2容量電極16bと隣り合う画素Pの第2容量電極16bとが配置され、遮光性の非開口領域(図3参照)を構成している。
【0063】
より具体的には、第2容量電極16bは、データ線6aと走査線3aとの交差部における拡張部と平面的に重なる四角形部分と、四角形部分からデータ線6aに沿ってY方向に突出した突出部と、同じく四角形部分から走査線3aに沿って突出した突出部とを有している。突出部の一部はコンタクトホールCNT4と重なる位置まで突出し、コンタクトホールCNT3とコンタクトホールCNT4とを電気的に接続させる中継層としても機能している。
【0064】
次に、図5を参照して、画素Pの構造について、さらに詳しく説明する。図5に示すように、素子基板10上には、まず走査線3aが形成される。走査線3aは、例えばAl、Ti(チタン)、Cr(クロム)、W(タングステン)、Ta(タンタル)、Mo(モリブデン)などの金属のうちの少なくとも1つを含む金属単体、合金、金属シリサイド、ポリシリサイド、ナイトライド、あるいはこれらが積層されたものを用いることができ、遮光性を有している。
【0065】
走査線3aを覆うように例えば酸化シリコンなどからなる下地絶縁膜11aが形成され、下地絶縁膜11a上に島状に半導体層30aが形成される。半導体層30aは例えば多結晶シリコン膜からなり、不純物イオンが注入されて、前述したデータ線側ソースドレイン領域30s、接合領域30e、チャネル領域30c、接合領域30f、画素電極側ソースドレイン領域30dを有するLDD構造が形成されている。
【0066】
半導体層30aを覆うように第1絶縁膜(ゲート絶縁膜)11bが形成される。さらに第1絶縁膜11bを挟んでチャネル領域30cに対向する位置にゲート電極30gが形成される。
【0067】
ゲート電極30gと第1絶縁膜11bとを覆うようにして第2絶縁膜11cが形成され、半導体層30aのそれぞれの端部と重なる位置に第1絶縁膜11b、第2絶縁膜11cを貫通する2つのコンタクトホールCNT1,CNT2が形成される。
【0068】
そして、2つのコンタクトホールCNT1,CNT2を埋めると共に第2絶縁膜11cを覆うようにAl(アルミニウム)などの遮光性の導電部材料を用いて導電膜を成膜し、これをパターニングすることにより、コンタクトホールCNT1を介してデータ線側ソースドレイン領域30sに繋がるデータ線側ソースドレイン電極31ならびにデータ線6aが形成される。同時にコンタクトホールCNT2を介して画素電極側ソースドレイン領域30dに繋がる画素電極側ソースドレイン電極32(中継電極6b)が形成される。
【0069】
次に、データ線6aおよび中継電極6bと第2絶縁膜11cを覆って層間絶縁膜12が形成される。層間絶縁膜12は、例えばシリコンの酸化物や窒化物からなり、TFT30が設けられた領域を覆うことによって生ずる表面の凹凸を平坦化する平坦化処理が施される。平坦化処理の方法としては、例えば化学的研磨処理(Chamical Mechanical Polishing:CMP処理)やスピンコート処理などが挙げられる。
【0070】
層間絶縁膜12を覆うように導電膜が形成され、これを後にコンタクトホールCNT3が形成される部分を除去してパターニングすることにより、第1容量電極16aが形成される。
【0071】
第1容量電極16aを覆って誘電体層13bが成膜される。誘電体層13bとしては、シリコン窒化膜や、酸化ハウニュウム(HfO2)、アルミナ(Al23)、酸化タンタル(Ta25)などの単層膜、またはこれらの単層膜のうち少なくとも2種の単層膜を積層した多層膜を用いてもよい。
【0072】
平面的に中継電極6bと重なる位置に層間絶縁膜12と誘電体層13bとを貫通するコンタクトホールCNT3が形成される。このコンタクトホールCNT3を埋めるとともに誘電体層13bを覆う導電膜が形成され、これをパターニングすることにより、第1容量電極16aに対向配置され、コンタクトホールCNT3を介して中継電極6bに繋がる第2容量電極16bが形成される。
【0073】
次に、第2容量電極16bと誘電体層13bとを覆う層間絶縁膜14が形成される。層間絶縁膜14も例えばシリコンの酸化物や窒化物からなり、層間絶縁膜12と同様に平坦化処理を施してもよい。
【0074】
層間絶縁膜14を貫通するコンタクトホールCNT4が第2容量電極16bと重なる位置に形成され、このコンタクトホールCNT4を埋めるようにしてITOなどの透明導電膜が成膜される。この透明導電膜をパターニングしてコンタクトホールCNT4を介して第2容量電極16bと繋がる画素電極15が形成される。
【0075】
上述したように第2容量電極16bはコンタクトホールCNT3および中継電極6bを介してTFT30の画素電極側ソースドレイン電極32と電気的に接続すると共に、コンタクトホールCNT4を介して画素電極15と電気的に接続している。
【0076】
第1容量電極16aの本線部は上述したようにデータ線6aの延在方向(Y方向)において複数の画素Pに跨るように形成され、等価回路(図2参照)における容量線3bとしても機能している。これにより、TFT30の画素電極側ソースドレイン電極32を介して画素電極15に与えられた電位を第1容量電極16aと第2容量電極16bとの間において保持することができる。
【0077】
第1容量電極16aは、例えば、低抵抗配線材料であるAl(アルミニウム)を用いて形成され、厚みはおよそ300nm〜500nmである。
【0078】
第2容量電極16bを構成する導電膜は、例えば、アモルファス金属シリサイドを用いることができる。具体的には、例えば、アモルファスタングステンシリサイド(aWSi)である。厚みはおよそ200nmである。第2容量電極16bの形成方法としては、例えば、ターゲットとしてWSiを用いたスパッタ法、成膜温度はアルミニウム配線が溶解しにくい400℃以下とする。
【0079】
このように、アルミニウムなどが用いられるデータ線6aや第1容量電極16aが形成された後に、アモルファスタングステンシリサイド膜を用いて第2容量電極16bを形成するので、塩素系のエッチャントを用いずに第2容量電極16bをパターニング可能となり、エッチャントの成分の残留に起因する配線や電極の断線あるいは短絡(ショート)などの不具合が、TFT30や配線などを設けた後に発生することを抑えることができる。
【0080】
<電子機器の構成>
図6は、上記した液晶装置を備えた電子機器としての投射型表示装置の構成を示す概略図である。以下、液晶装置を備えた投射型表示装置の構成を、図6を参照しながら説明する。
【0081】
図6に示すように、本実施形態の電子機器としての投射型表示装置1000は、システム光軸Lに沿って配置された偏光照明装置1100と、光分離素子としての2つのダイクロイックミラー1104,1105と、3つの反射ミラー1106,1107,1108と、5つのリレーレンズ1201,1202,1203,1204,1205と、3つの光変調手段としての透過型の液晶ライトバルブ1210,1220,1230と、光合成素子としてのクロスダイクロイックプリズム1206と、投射レンズ1207とを備えている。
【0082】
偏光照明装置1100は、超高圧水銀灯やハロゲンランプなどの白色光源からなる光源としてのランプユニット1101と、インテグレーターレンズ1102と、偏光変換素子1103とから概略構成されている。
【0083】
ダイクロイックミラー1104は、偏光照明装置1100から射出された偏光光束のうち、赤色光(R)を反射させ、緑色光(G)と青色光(B)とを透過させる。もう1つのダイクロイックミラー1105は、ダイクロイックミラー1104を透過した緑色光(G)を反射させ、青色光(B)を透過させる。
【0084】
ダイクロイックミラー1104で反射した赤色光(R)は、反射ミラー1106で反射した後にリレーレンズ1205を経由して液晶ライトバルブ1210に入射する。ダイクロイックミラー1105で反射した緑色光(G)は、リレーレンズ1204を経由して液晶ライトバルブ1220に入射する。ダイクロイックミラー1105を透過した青色光(B)は、3つのリレーレンズ1201,1202,1203と2つの反射ミラー1107,1108とからなる導光系を経由して液晶ライトバルブ1230に入射する。
【0085】
液晶ライトバルブ1210,1220,1230は、クロスダイクロイックプリズム1206の色光ごとの入射面に対してそれぞれ対向配置されている。液晶ライトバルブ1210,1220,1230に入射した色光は、映像情報(映像信号)に基づいて変調されクロスダイクロイックプリズム1206に向けて射出される。このプリズムは、4つの直角プリズムが貼り合わされ、その内面に赤色光を反射する誘電体多層膜と青色光を反射する誘電体多層膜とが十字状に形成されている。これらの誘電体多層膜によって3つの色光が合成されて、カラー画像を表す光が合成される。合成された光は、投射光学系である投射レンズ1207によってスクリーン1300上に投射され、画像が拡大されて表示される。
【0086】
液晶ライトバルブ1210は、上述した液晶装置100が適用されたものである。液晶装置100は、色光の入射側と射出側とにおいてクロスニコルに配置された一対の偏光素子の間に隙間を置いて配置されている。他の液晶ライトバルブ1220,1230も同様である。
【0087】
このような投射型表示装置1000によれば、上記した液晶装置100が採用された液晶モジュールを介すことによって、かかるコストを抑え、効率よく組み立てることができる。
【0088】
以上詳述したように、本実施形態の電気光学装置としての液晶装置100、及び電子機器によれば、以下に示す効果が得られる。
【0089】
(1)本実施形態の液晶装置100によれば、例えば、遮光性の金属配線材料としてアルミニウムが用いられるデータ線6aや第1容量電極16aが形成された後に、アモルファスタングステンシリサイド膜を用いて第2容量電極16bを形成し、その後に、透明導電膜が用いられる画素電極15を形成する。第2容量電極16bをアモルファスタングステンシリサイド膜から形成するため、塩素系のエッチャントを用いずに第2容量電極16bをパターニング可能となる。これにより、当該エッチャントの成分の残留に起因する配線や電極の断線あるいは短絡(ショート)などの不具合が、TFT30や配線などを設けた後に発生することを低減できる。言い換えれば、付加価値が付いた状態で不良が発生することが低減されるので、高いコストパフォーマンスを有する液晶装置100を提供できる。加えて、第2容量電極16bの材料としてアモルファスタングステンシリサイドを用いるので、他の金属に比べて比抵抗を低くすることができる。
【0090】
(2)本実施形態の電子機器によれば、上記のような液晶装置100を備えているので、高いコストパフォーマンスを有する電子機器を提供することができる。
【0091】
なお、実施形態は上記に限定されず、以下のような形態で実施することもできる。
【0092】
(変形例1)
上記したように、画素Pごとに設けられる第2容量電極16bは、画素Pが高精細になると電極面積を稼ぐことが難しくなる。よって、データ線6aと走査線3aの交差部と重ねるだけでなく、当該部分から隣接する画素Pに沿うデータ線6aや走査線3aの延在方向に突出させた突出部を設けることが好ましい。
【0093】
(変形例2)
上記したように、TFT30における半導体層30aの配置は、上記実施形態のように走査線3aと重ねる配置に限定されない。例えば、データ線6aと重ねる配置や半導体層30aを途中で折り曲げて、走査線3aとデータ線6aとに重ねるように配置したとしても、本願の保持容量16の構成を適用することができる。
【0094】
(変形例3)
上記したように、液晶装置100が適用される電子機器は、上記実施形態の投射型表示装置1000に限定されない。例えば、投射型のHUD(ヘッドアップディスプレイ)や直視型のHMD(ヘッドマウントディプレイ)、または電子ブック、パーソナルコンピューター、デジタルスチルカメラ、液晶テレビ、ビューファインダー型あるいはモニター直視型のビデオレコーダー、カーナビゲーションシステム、電子手帳、POSなどの情報端末機器の表示部として好適に用いることができる。
【0095】
(変形例4)
上記素子基板10の配線構造を適用可能な電気光学装置は、上記液晶装置100に限定されない。例えば、トランジスターを備えたアクティブ駆動型の電気光学装置であって、有機EL(Electro Luminessence)装置、電気泳動装置などの表示装置にも適用することができる。
【符号の説明】
【0096】
3a…走査線、3b…容量線、6a…データ線、6b…中継電極、10…素子基板、11a…下地絶縁膜、11b…第1絶縁膜(ゲート絶縁膜)、11c…第2絶縁膜、12…層間絶縁膜、13b…誘電体層、14…層間絶縁膜、15…画素電極、16…保持容量、16a…第1容量電極、16b…第2容量電極、18…配向膜、20…対向基板、21…遮光膜、22…層間膜層、23…共通電極、24…配向膜、30…TFT、30a…半導体層、30s…データ線側ソースドレイン領域、30c…チャネル領域、30e,30f…接合領域、30d…画素電極側ソースドレイン領域、30g…ゲート電極、31…データ線側ソースドレイン電極、32…画素電極側ソースドレイン電極、40…シール材、50…液晶層、100…液晶装置、101…データ線駆動回路、102…走査線駆動回路、103…検査回路、104…外部接続端子、105…配線、106…上下導通部、1000…投射型表示装置、1100…偏光照明装置、1101…ランプユニット、1102…インテグレーターレンズ、1103…偏光変換素子、1104,1105…ダイクロイックミラー、1106,1107,1108…反射ミラー、1201,1202,1203,1204,1205…リレーレンズ、1206…クロスダイクロイックプリズム、1207…投射レンズ、1210,1220,1230…液晶ライトバルブ、1300…スクリーン。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上にトランジスターと、
前記トランジスターに対応する画素電極と、
前記トランジスターと前記画素電極との間に配置されたデータ線と、
前記データ線と前記画素電極との間に配置された第1容量電極と、
前記第1容量電極と前記画素電極との間に配置され、前記第1容量電極の一部に誘電体層を介して対向配置されると共に、電気的に前記トランジスターと前記画素電極とに接続された第2容量電極と、を備え、
前記第2容量電極は、アモルファス金属シリサイド膜からなることを特徴とする電気光学装置。
【請求項2】
請求項1に記載の電気光学装置であって、
前記データ線と交差するように配置された走査線を備え、
前記トランジスターは、前記データ線と前記走査線との交差部に設けられ、
前記第2容量電極は、前記トランジスターの半導体層と平面的に重なるように設けられていることを特徴とする電気光学装置。
【請求項3】
請求項2に記載の電気光学装置であって、
前記トランジスターの半導体層は、前記データ線と交差する方向に延在して設けられていることを特徴とする電気光学装置。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の電気光学装置であって、
前記画素電極と前記第2容量電極とを電気的に接続させるコンタクトホールを有し、
前記コンタクトホールは、前記トランジスターのゲート電極、前記データ線、前記第1容量電極と平面的に重なる位置に設けられていることを特徴とする電気光学装置。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載の電気光学装置であって、
前記第2容量電極は、アモルファスタングステンシリサイド膜からなることを特徴とする電気光学装置。
【請求項6】
請求項1乃至請求項5のいずれか一項に記載の電気光学装置を備えたことを特徴とする電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−3492(P2013−3492A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−137074(P2011−137074)
【出願日】平成23年6月21日(2011.6.21)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】