説明

電気自動車のモータルーム内構成部品搭載構造

【課題】電気自動車のモータルーム内構成部品搭載構造を提供する。
【解決手段】本発明は、一対のサイドメンバ4から立設し、懸架装置の緩衝装置を固定するストラットタワー5と、ダッシュパネル3と、から区画され、燃料電池モジュール20を設置する電気自動車のモータルームにおいて、前記サイドメンバ間及び前記ストラットタワー間にそれぞれ掛け渡される複数のマウントメンバ6を備え、前記燃料電池モジュールを前記マウントメンバに固定することを特徴とする電気自動車のモータルーム内構成部品搭載構造である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気自動車のモータルーム内構成部品搭載構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の電気自動車のモータルーム内構成部品搭載構造として特許文献1に記載の技術がある。この技術は、電気自動車のバキュームポンプに接続するバキューム配管の配置に関するもので、バキューム配管をコントロールユニットを搭載するマウントメンバに配策するものである。ここで、マウントメンバはストラットタワーとサイドメンバに固定される。
【0003】
また特許文献2に記載の技術は、部品車載フレームの上面にコントロールユニットとモータ補機類を固定し、下面にモータユニットを固定したユニットアッセンブリをサイドメンバに固定するものである。
【0004】
特許文献3に記載の技術は、サイドメンバに跨って結合し、前後にオフセットして配置される一対のクロスメンバに前後に跨ってコントロールユニットを取り付け、コントロールユニットの底部に棚部を車幅方向に延設し、モータルーム内の部品をこの棚部を介してクロスメンバに取り付けたものである。
【特許文献1】特開平10−329701号公報
【特許文献2】特開平8−310252号公報
【特許文献3】特開平8−67150号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、これら特許文献に開示の従来技術では、モータルーム内にコントローラやモータ等を搭載する場合の技術であって、モータの電力供給源としての燃料電池をモータルーム内に搭載することを前提としておらず、コントローラ等とともに燃料電池を搭載する場合には、これら従来技術では、コントローラ等の下端をマウントメンバに固定しているのみとなり、燃料電池をマウントメンバに強固に固定することができないという問題がある。
【0006】
したがって、本発明の目的は、電気自動車のモータルーム内にコントロ−ラとともに燃料電池を搭載する場合に、燃料電池やコントローラを確実に搭載することができる電気自動車のモータルーム内構成部品搭載構造を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、車両前後方向に延設される一対のサイドメンバと、このサイドメンバから立設し、懸架装置の緩衝装置を固定するストラットタワーと、客室との隔壁としてのダッシュパネルと、から区画され、車両の駆動源としてのモータと、このモータに電力を供給する燃料電池スタックと、前記モータ及び前記燃料電池スタックの運転状態を制御するコントローラとを備える燃料電池モジュールを設置する電気自動車のモータルームにおいて、前記サイドメンバ間及び前記ストラットタワー間にそれぞれ掛け渡される複数のマウントメンバを備え、前記燃料電池モジュールを前記マウントメンバに固定することを特徴とする電気自動車のモータルーム内構成部品搭載構造である。
【発明の効果】
【0008】
本発明では、燃料電池モジュールをサイドメンバ間及びストラットタワー間に掛け渡されるマウントメンバに固定することで、マウントメンバ設置によるモータルーム内のスペースの減少を抑制しつつ、マウントメンバに燃料電池モジュールを強固に固定することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
図1は、本発明の燃料電池車のモータルーム内構成部品搭載構造を適用するモータルームの構成図である。
【0010】
図1において、1は車両駆動源のモータを搭載するモータルームであり、モータルーム1は左右一対のフードリッジパネル2と、フードリッジパネル2後端側に接合され、客室を区画するダッシュパネル3、およびラジエータを支持する図示しないラジエータコアサポートパネルとで区画される。左右のフードリッジパネル2の下部には前後方向に延設された強度骨格部材としてのサイドメンバ4が接合されるとともに、フードリッジパネル2とダッシュパネル3との連接部近傍のフードリッジパネル2には、図示しないフロントサスペンションを構成するショックアブソーバを支持する上下方向の強度骨格部材であるストラットタワー5が配置される。
【0011】
図2、図3は、本発明の第1の実施形態の燃料電池ユニットを搭載するために設置するマウントメンバを説明する図である。図2は、モータルーム1の正面図(ストラットタワー5の断面図)であり、図3は、平面図である。
【0012】
ここで、マウントメンバは、燃料電池スタックを含む燃料電池ユニット21、燃料電池の運転状態を制御するとともに、車両を駆動する駆動用モータの運転状態を制御するコントローラ22及び駆動用モータ23をモジュール化した燃料電池モジュール20をモータルーム1内に設置、固定するために用いる構造部材である。
【0013】
本実施形態のマウントメンバは、左右方向に計4本設置され、具体的にはストラットタワー5間に掛け渡される第1マウントメンバ6aと、サイドメンバ4間に掛け渡され、サイドメンバ上面に設置される第2マウントメンバ6bと、同じくサイドメンバ4間に掛け渡され、サイドメンバ下面に前後にオフセットして設置される2本の第3、第4マウントメンバ6c、6dとから構成される。
【0014】
第1、第2マウントメンバ6a、6bはモータルーム1の上方から取付可能に構成され、対して第3、第4マウントメンバ6c、6dはモータルーム1の下方からサイドメンバ4に取付可能に構成される。次に、燃料電池モジュール20の固定手順としては、第3、第4マウントメンバを6c、6dをサイドメンバ4の下面に取り付け、燃料電池モジュール20をモータルーム1上方より第3、第4マウントメンバ6c、6dに設置、固定し、その後第1、第2マウントメンバ6a、6bをストラットタワー5及びサイドメンバ4の上面に固定の上、燃料電池モジュール20を第1、第2マウントメンバ6a、6bに固定する。または、まず、第1、第2マウントメンバ6a、6bを固定し、燃料電池モジュール20を下方より第1、第2マウントメンバ6a、6bに設置、固定し、最後に第3、第4マウントメンバ6c、6dを固定するようにしてもよい。このような方法により、燃料電池モジュール20の上下をマウントメンバを用いて固定することで、燃料電池モジュール20をモータルーム1内に強固に固定することができる。
【0015】
さらに、燃料電池モジュ−ル20の他の固定方法として、ラジエータコアサポートパネルを脱着可能としておき、ラジエータコアサポートパネルを脱離し、第3、第4マウントメンバ6c、6dを取り付けた状態で、燃料電池モジュール20を前方からモータルーム1内に設置する方法がある。この場合、第3、第4マウントメンバ6c、6dに渡って平板状のメンバを設け、燃料電池モジュール20が前方から後方へと平板上のメンバ上を滑べって所定位置まで移動する。そして、第3、第4マウントメンバ6c、6dに固定され、その後第1、第2マウントメンバ6a、6bを設置、固定することで燃料電池モジュール20がモータルーム1に確実に固定できる。また、燃料電池モジュール20を滑らせて移動できるため、作業性が向上する効果が期待できる。また、モータルーム1へ燃料電池モジュール20を上方から設置する場合には、フードが邪魔となり、また下方から設置する場合にはサイドメンバ4の間隔により燃料電池モジュール20の大きさが限定される。これに対して、車両前方から設置する場合には、燃料電池モジュール20の大きさに対する規制が他方向より設置する場合に比して小さく、より大きなモジュールをモータルーム1内に設置することが可能となる。
【0016】
このように本実施形態においては、モータルーム内に左右方向に掛け渡されるマウントメンバをストラットタワー5間、サイドメンバー4間に複数設け、このマウントメンバに燃料電池モジュール20を固定することで、確実に燃料電池モジュール20の上部と下部とを固定することができる。また、第1から第4マウントメンバ6a〜6dをサイドメンバ4間やストラットタワー5間の設置することにより車体剛性を向上することができる。
【0017】
さらに第1、第2マウントメンバ6a、6bはモータルーム1上方から、第3、第4マウントメンバ6c、6dはモータルーム1下方から取り付けられるため、これらマウントメンバ6a〜6dの取付作業性を向上することができる。
【0018】
また、第3、第4マウントメンバ6c、6dをサイドメンバ4下面に取り付けるため、燃料電池モジュール20の設置スペースを減少させることがない。
【0019】
図4、図5は、第2の実施形態のマウントメンバを説明する図である。この実施形態のマウントメンバの構成の第1の実施形態との相違は、車両前後方向に延設する前後マウントメンバ7aを第3、第4マウントメンバ6c、6d間に追加し、井桁状に構成した点である。この構成は、前述した燃料電池モジュール20を前方からモータルーム1内に設置する場合の平板状のメンバに代えてこの前後マウントメンバ7aを用いることで、同様の効果を維持しつつ、軽量化を図ることができるものである。
【0020】
図6から図8は、第3の実施形態としてのマウントメンバを説明する図である。この実施形態のマウントメンバの構成は、第2の実施形態のマウントメンバに対して、第1、第2マウントメンバ6a、6bと第3、第4マウントメンバ6c、6d間に上下に延設された第1、第2上下マウントメンバ8a、8bを追加したことを特徴とする。
【0021】
また、これまでの実施形態では第2マウントメンバ6bは棒状であったが、この実施形態では、下向きに開口するコの字形状のマウントメンバ6eに変更する。このマウントメンバ6eとその下方に位置する第3マウントメンバ6cとを上下方向に連結する第1上下マウントメンバ8aを左右に一対設ける。また、第1マウントメンバ6aとその下方に位置する第4マウントメンバ6dとを上下方向に連結する第2上下マウントメンバ8bを左右に一対設ける。さらに第1上下マウントメンバ8a間を左右方向に連結する左右マウントメンバ9を設ける。このように、上下、左右方向にマウントメンバを追加することで、マウントメンバの剛性を高め、結果として車体剛性を向上することができる。また、マウントメンバが大型化し、かつ剛性が高まることにより、マウントメンバを燃料電池モジュール20の構造部材として用いて、燃料電池モジュール20の簡素化、軽量化を図ることができる。なお、第2上下マウントメンバ8b間にも左右マウントメンバを設けるようにしてもよい。
【0022】
また、燃料電池モジュール20の前方に第1上下マウントメンバ8a及び左右メンバマウント9が配置されるため、これらにより燃料電池モジュール20の衝突時の安全性を高めることができる。この第1上下マウントメンバ8aは、車両前端に位置する図示しないラジエータ近傍に位置するため、ラジエータの給排水の配管をマウントするために用いることも可能であり、モータルーム1内のスペースを有効に活用することができる。
【0023】
また、燃料電池モジュール20は、モータルーム1内に配設されたマウントメンバにボルト等に用いて固定される。ここで、ボルトの向きを前後方向または上下方向に統一とすることで作業性を向上することができる。
【0024】
図9は、第1上下マウントメンバ8aと第3マウントメンバ6cとを連結する構成を説明する図である。第3マウントメンバ6cにコの字状のブラケット10を固定し、このブラケット10間に第1上下マウントメンバ8aを配置して、図示しないボルトにより固定する構成である。
【0025】
図10は、モータルーム1内に配置される燃料電池モジュール20の構成を説明する外観図である。燃料電池モジュール20は、前述のように燃料電池ユニット21とコントローラ22と駆動用モータ23とから構成される。燃料電池スタックを含む燃料電池ユニット21は、これら構成の中で最も大きく、車両前方に配置する。そしてコントローラ22は燃料電池ユニット21の後方に接続され、駆動用モータ23はこれらの下部に配置される。
【0026】
モータルーム1内への配置の手順としては、まず駆動用モータ23とコントローラ22とを配置して、駆動用モータ23とコントローラ22間の配線を繋ぐ。燃料電池ユニット21の配置前であり、モータルーム1内には十分なスペースがあり、配線結合の作業性がよく、また駆動用モータ23とコントローラ22は上下方向に隣接しており、配線も短くすることができる。配線結合後に燃料電池ユニット21をモータルーム1内に配置して、コントローラ22と固定する。
【0027】
燃料電池ユニット21は燃料電池スタックを内装するためのケースを備え、一方、コントローラ22も内部に配置されるCPU等の電子部品を格納するケースを備え、これらケースがモータルーム1内の配設されたマウントメンバに固定される。ここで、これらケースが十分な剛性を備えることで、構造部材として機能し、結果として車体剛性を向上することができる。
【0028】
コントローラ22と駆動用モータ23とを設置した後に、燃料電池ユニット21をモータルーム1の上下方向または前方より所定位置に配置するため、燃料電池ユニット21脱着時の作業性がよく、メンテナンス性を向上することができる。燃料電池ユニット21とコントローラ22とを接続する配線は、それぞれの上面に設けられた接続端子を接続するため、前後方向で燃料電池モジュール20からはみ出すことがなく、衝突時に配線や接続端子を損傷することがなく、安全性を高めることができる。さらには接続端子を燃料電池ユニット21とコントローラ22の上面に配置することで、配線の接続が容易となり、作業性を向上することができる。
【0029】
以上説明した実施形態に限定されることなく、その技術的思想の範囲内において種々の変形や変更が可能であり、それらも本発明と均等であることは明白である。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明を適用するモータルームの構成図である。
【図2】第1の実施形態のマウントメンバの構成を説明する正面図である。
【図3】第1の実施形態のマウントメンバの構成を説明する平面図である。
【図4】第2の実施形態のマウントメンバの構成を説明する正面図である。
【図5】第2の実施形態のマウントメンバの構成を説明する平面図である。
【図6】第3の実施形態のマウントメンバの構成を説明する正面図である。
【図7】第3の実施形態のマウントメンバの構成を説明する平面図である。
【図8】第3の実施形態のマウントメンバの構成を説明する、図7のA−A断面図である。
【図9】第1上下マウントメンバと第3マウントメンバとの連結を説明する図である。
【図10】モータルームに設置される燃料電池モジュールの外観図である。
【符号の説明】
【0031】
1:モータルーム
2:フードリッジパネル
3:ダッシュパネル
4:サイドメンバー
5:ストラットタワー
6a、6b:第1、第2マウントメンバ
6c、6d:第3、第4マウントメンバ
7a:前後マウントメンバ
8a、8b:第1、第2上下マウントメンバ
9:左右メンバマウント
10:ブラケット
20:燃料電池モジュール
21:燃料電池ユニット
22:コントローラ
23:駆動用モータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両前後方向に延設される一対のサイドメンバと、
このサイドメンバから立設し、懸架装置の緩衝装置を固定するストラットタワーと、
客室との隔壁としてのダッシュパネルと、から区画され、
車両の駆動源としてのモータと、このモータに電力を供給する燃料電池スタックと、前記モータ及び前記燃料電池スタックの運転状態を制御するコントローラとを備える燃料電池モジュールを設置する電気自動車のモータルームにおいて、
前記サイドメンバ間及び前記ストラットタワー間にそれぞれ掛け渡される複数のマウントメンバを備え、
前記燃料電池モジュールを前記マウントメンバに固定することを特徴とする電気自動車のモータルーム内構成部品搭載構造。
【請求項2】
前記燃料電池モジュールの上部及び下部を前記マウントメンバに固定することを特徴とする請求項1に記載の電気自動車のモータルーム内構成部品搭載構造。
【請求項3】
前記マウントメンバは、前記ストラットタワー間に掛け渡される第1マウントメンバと、
前記サイドメンバの上面に上方向から取り付けられる第2マウントメンバと、
前記サイドメンバの下面に下方向から取り付けられ、前後にオフセットして配置される第3、第4マウントメンバとからなることを特徴とする請求項1に記載の電気自動車のモータルーム内構成部品搭載構造。
【請求項4】
前記第3、第4マウントメンバを前後に連結する前後連結部材を設けたことを特徴とする請求項3に記載の電気自動車のモータルーム内構成部品搭載構造。
【請求項5】
前記前後連結部材は、平板状に形成されることを特徴とする請求項4に記載の電気自動車のモータルーム内構成部品搭載構造。
【請求項6】
前記前後連結部材は、左右方向にオフセット配置された一対の棒状部材であることを特徴とする請求項4に記載の電気自動車のモータルーム内構成部品搭載構造。
【請求項7】
前記第2マウントメンバとその下方に配置される前記第3マウントメンバとを上下に連結し、左右方向にオフセット配置された一対の第1上下連結部材と、
前記第1マウントメンバとその下方に配置される前記第4マウントメンバとを上下に連結し、左右方向にオフセット配置された一対の第2上下連結部材と、
前記第1上下連結部材間、及び前記第2上下連結部材間の少なくとも一方を左右方向に連結する左右連結部材とを設けたことを特徴とする請求項4に記載の電気自動車のモータルーム内構成部品搭載構造。
【請求項8】
前記燃料電池スタックと前記コントローラは前後方向に連結され、前記燃料電池スタックが前側に、前記コントローラが後側に位置し、前記ダッシュパネルと間隙を持って配置され、
前記燃料電池スタックと前記コントローラとを結ぶ配線がそれぞれの上面で接続されることを特徴とする請求項1に記載の電気自動車のモータルーム内構成部品搭載構造。
【請求項9】
前記モータは、前記燃料電池スタック及び前記コントローラの下方に設置され、前記モータと前記コントローラを結ぶ配線が上下方向に配線されることを特徴とする請求項8に記載の電気自動車のモータルーム内構成部品搭載構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2007−331634(P2007−331634A)
【公開日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−167102(P2006−167102)
【出願日】平成18年6月16日(2006.6.16)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】