説明

電流シフト領域を有する半導体デバイスおよび関連方法

半導体デバイスは、第1の伝導形を有する半導体バッファ層と、バッファ層の表面上にあって第1の伝導形を有する半導体メサとを含む。さらに第2の伝導形を有する電流シフト領域が半導体メサと半導体バッファ層との間の隅に隣接して設けられ、第1と第2の伝導形が互いに異なる伝導形である。関連する方法も開示される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(背景)
本発明は、電子デバイスに関するものであって、さらに詳細には半導体メサ構造を含む電子デバイスとそれに関連する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
(政府権益の声明)
本発明は、米国陸軍研究所によって与えられた契約W911NF−04−2−0022号のもとで政府の支援によって行われた。米国政府は本発明に対してある一定の権利を有する。
【0003】
(関連出願)
本出願は、「Stable Power Devices On Low−Angle Off−Cut Silicon Carbide Crystals(小角度だけ軸から外して切断された炭化珪素結晶の上の安定なパワー・デバイス)」と題する2008年12月1日付けの米国特許仮出願第61/118,825号の優先権を主張する。この開示は、ここに参照によってその全体が取り込まれ援用される。
【0004】
高電圧炭化珪素(SiC)デバイスは、約600ボルトおよびそれ以上の電圧で使用することができる。そのようなデバイスは、能動領域の面積に依存して約100アンペア又はそれ以上の電流を制御できる。高電圧SiCデバイスは、特に、電力の調整、分配および制御の分野において多くの重要な用途を有する。ショットキ・ダイオード、MOSFET(金属酸化物半導体電界効果トランジスタ)、GTO(ゲート・ターンオフ・サイリスタ)、IGBT(絶縁ゲート・バイポーラ・トランジスタ)、BJT(バイポーラ接合トランジスタ)等のような高電圧半導体デバイスが、炭化珪素を用いて作製されている。
【0005】
従来のSiCパワー・デバイス、例えばSiCショットキ・ダイオード構造は、n形SiC基板を有しており、その上にドリフト領域として機能するn−エピタキシャル層が形成される。このデバイスは、n−層の上に直接形成されたショットキ・コンタクトを含むのが一般的である。ショットキ・コンタクトを囲んで、一般にイオン注入で形成されたp形JTE(接合終端エクステンション)領域が位置する。注入は、アルミニウム、ホウ素又は任意のその他の適当なp形ドーパントを用いて行われる。JTE領域の目的は、接合端に集中する電界を低減し、空乏領域がデバイスの表面と干渉することを防止又は軽減することである。表面効果は、空乏領域が不均一に広がる原因となり、それがデバイスの絶縁破壊電圧に悪影響を及ぼす。その他の終端技術には、保護リングおよび浮遊電界リングがあるが、これらは、表面効果によってより強く影響される。デバイスの端部に向かう空乏層の拡がりを低減する目的で、窒素やリンのようなn形ドーパントの注入によるチャネル・ストップ領域の形成が行われる。
【0006】
接合終端エクステンション(JTE)のほか、多重浮遊保護リング(MFGR)や電界プレート(FP)も高電圧炭化珪素デバイスで一般に使用される終端方式である。別の従来の終端技術は、メサ終端である。しかし、接合終端エクステンションや保護リングがあったとしても、メサ終端の存在によってメサの隅に高い電界が生じる。メサの過剰エッチは、メサの隅に集中する電界による問題を悪化させる。メサの隅における高い電界は、それがない場合に、与えられたドリフト層厚およびドーピングに対して期待される値よりもずっと低い絶縁破壊電圧をもたらす。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許仮出願第61/118,825号
【特許文献2】米国特許第7,279,115号
【特許文献3】米国特許出願第2009/0121319号
【発明の概要】
【0008】
従来のメサ終端型のPINダイオードが図1に示されている。ここに示されたように、PINダイオード10は、p+層16とn+基板14との間にn−ドリフト層12を含む。図1は、PIN構造の半分を示している。すなわち、この構造は、鏡像部分(図示されていない)を含む。アノード・コンタクト23は、p+層16の上にあり、カソード・コンタクト25は、n+基板14上にある。p+層16は、n−ドリフト層12の上にメサとして形成される。複数のJTEゾーン20A、20B、20Cを含む接合終端エクステンション(JTE)領域20がp+メサ16に隣接するn−ドリフト層12中に設けられる。JTEゾーン20A、20B、20Cは、p形領域であり、それは、p+メサ16とn−ドリフト層12との間のPN接合位置から外に向かって距離とともに減衰する電荷レベルを有する。3つのJTEゾーン20A、20B、20Cを示したが、より多くの、あるいはより少ないJTEゾーンを設けることも可能である。
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
図1に示されたように、p+メサ16に隣接するn−ドリフト層12は、例えばエッチ・プロセス制御における困難のせいでわずかに過剰エッチされ、それによってp+メサ16の下のn−ドリフト層12の側壁12Aが露出する。いくつかの場合には、約3000Å(オングストローム)にも及ぶ過剰エッチングが発生する。露出した側壁12Aを保護するために、側壁注入を実行できるが、その場合には、p形不純物を側壁12Aに注入して側壁注入領域22を形成する。
【0010】
図1に示されたPINダイオード構造10のような従来のメサ終端構造においては、メサの隅29あるいはその付近に電界集中が発生し、その結果、隅29に高い電界強度が生ずる。このような高い電界強度は、デバイスの絶縁破壊電圧を低下させかねない。例えば、ドリフト層の厚さおよびドーピングとJTEの設計に基づけば理論上12kVの絶縁破壊電圧を有するはずの従来のメサ終端PINダイオード構造の有効絶縁破壊電圧が、ほんの8kVになってしまう。
【0011】
電界集中に加えて、SiCパワー・バイポーラ接合トランジスタ(BJT)の開発における別の課題は、電流利得の劣化現象、すなわちデバイス中で電流利得が時間とともに低下する現象である。電流利得劣化の原因は、一般に基底面転位(BPD)などの材料欠陥や、特にエミッタ側壁およびデバイスのベース表面に沿う表面再結合によるものとされる。BPDのないウエハ上に作製されたSiC−BJTにおいて電流利得劣化がわずかに軽減されることが観察されている。さらに、SiC−BJTのエミッタ・フィンガは、一般に反応性イオン・エッチング(RIE)によって形成される。RIEエッチング・レートの不均一性のせいで、ウエハ周辺周りから基盤材料が部分的又は完全に取り去られるため、歩留まりが大きく悪化する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
(概要)
本発明のいくつかの実施の形態に従えば、バイポーラ半導体デバイスは、第1の伝導形を有する半導体バッファ層と、バッファ層の表面にあって第1の伝導形を有する半導体メサとを含む。半導体メサと半導体バッファ層との間の隅に隣接して第2の伝導形を有する電流シフト領域が設けられる。さらに、第1と第2の伝導形は、互いに異なっており、また電流シフト領域は、半導体バッファ層部分と半導体メサ部分との間にあって第1の伝導形を有する。
【0013】
さらに、半導体メサの表面に金属電極が設けられるため、半導体メサは、金属電極と半導体バッファ層との間に位置することになる。半導体バッファ層に隣接する半導体メサの中央部分は、金属電極から半導体メサに対向する半導体バッファ層の表面への第1の伝導形の電流経路を提供し、および/又は半導体メサに対向する半導体バッファ層の表面から金属電極への第1の伝導形の電流経路を提供する電流シフト領域を含まない。電流シフト領域は、半導体メサを含まない半導体バッファ層部分へ延びる。
【0014】
半導体メサに隣接して半導体ステップが設けられ、半導体ステップの厚さは、半導体メサの厚さよりも小さくされる。さらに、半導体ステップに隣接するバッファ層中への電流シフト領域の深さは、半導体ステップを含まないバッファ層部分への電流シフト領域の深さよりも小さい。
【0015】
第2の伝導形を有する半導体制御層が半導体バッファ層の上に設けられて、半導体バッファ層が半導体制御層と半導体メサとの間に位置するため、半導体バッファ層は、電流シフト領域と半導体制御層との間に位置することになる。さらに、第2の伝導形を有する制御コンタクト領域は、半導体バッファ層を貫通して延びて半導体制御層に電気的に結合するが、また制御コンタクト領域は、電流シフト領域から分離される。
【0016】
第1の伝導形を有する半導体ドリフト層が設けられるため、半導体制御層は、半導体ドリフト層と半導体バッファ層との間に位置することになる。半導体メサの上に第1の金属電極が設けられるため、半導体メサは、第1の金属電極と半導体バッファ層との間に位置することになる。第2の金属電極が制御コンタクト領域上に設けられるため、制御コンタクト領域は、第2の金属電極と半導体制御層との間に位置することになる。第3の金属電極が設けられて、半導体ドリフト層が第3の金属電極と半導体制御層との間に位置することになる。
【0017】
第2の伝導形を有する半導体アノード/カソード層が半導体ドリフト層と第3の金属電極との間に設けられる。
【0018】
炭化珪素基板の上に半導体制御、ドリフトおよび/又はアノード/カソード層が設けられるため、半導体制御、ドリフトおよび/又はアノード/カソード層は、炭化珪素基板と半導体バッファ層との間に位置することになる。さらに、炭化珪素基板は、約4度よりも大きくない角度だけ軸から外して切断されるか、あるいは軸に沿って切断された表面を定義する。さらに、半導体制御層、半導体バッファ層および半導体メサの結晶構造は、炭化珪素基板の結晶構造と揃えられる。
【0019】
本発明のその他の実施の形態に従えば、バイポーラ半導体デバイスの作製方法は、第1の伝導形を有する半導体バッファ層を形成する工程およびバッファ層の表面上に第1の伝導形を有する半導体メサを形成する工程を含む。半導体メサと半導体バッファ層との間の隅に隣接して第2の伝導形を有する電流シフト領域が形成される。さらに、第1と第2の伝導形は、互いに異なる伝導形であり、また電流シフト領域は、半導体バッファ層部分と半導体メサ部分との間にあって第1の伝導形を有する。
【0020】
電流シフト領域の形成は、半導体メサを形成したあとで半導体メサに隣接する半導体バッファ層の露出部分を、第2の伝導形を有するドーパントでドーピング(例えば、注入)する工程を含む。半導体バッファ層および半導体メサは、熱処理されて、ドーパントの一部が半導体メサと半導体バッファ層との間に拡散するようにされる。
【0021】
半導体メサの形成は、半導体バッファ層全体の上に半導体メサ層をエピタキシャル形成させる工程を含む。半導体メサ層の一部が選択的に除去されて(例えば、反応性イオン・エッチング又はRIEを用いて)半導体メサが定義され、また半導体バッファ層の一部が露出される。
【0022】
金属電極が半導体メサの表面に形成されるため、半導体メサは、金属電極と半導体バッファ層との間に位置することになる。半導体バッファ層に隣接する半導体メサの中央部分は、金属電極から半導体メサに対向する半導体バッファ層の表面への第1の伝導形の電流経路を提供し、および/又は半導体メサに対向する半導体バッファ層の表面から金属電極への第1の伝導形の電流経路を提供する電流シフト領域を含まない。
【0023】
電流シフト領域は、半導体メサを含まない半導体バッファ層の部分に延びる。
【0024】
電流シフト領域を形成する前に、半導体メサに隣接して半導体ステップが形成され、半導体ステップの厚さは、半導体メサの厚さよりも小さくされる。半導体ステップに隣接するバッファ層中への電流シフト領域の深さは、半導体ステップを含まないバッファ層部分への電流シフト領域の深さよりも小さい。半導体ステップの形成は、半導体メサの形成後に半導体メサから分離された半導体バッファ層の部分を選択的に除去して(例えば、反応性イオン・エッチング又はRIEを用いて)、半導体メサに隣接して半導体ステップを定義する工程を含む。
【0025】
電流シフト領域の形成は、半導体メサの形成後、および半導体ステップの形成後に、半導体ステップに隣接する半導体バッファ層の部分を、第2の伝導形を有するドーパントでドーピングする(例えば、イオン注入を用いて)工程を含む。半導体バッファ層および半導体メサは、熱処理されて、ドーパントの一部が半導体メサと半導体バッファ層との間に拡散するようにされる。
【0026】
半導体バッファ層を形成する前に、第2の伝導形を有する半導体制御層が形成され、半導体バッファ層の形成には、半導体制御層の上への半導体バッファ層の形成が含まれる。従って、半導体バッファ層が半導体制御層と半導体メサとの間に位置するため、半導体バッファ層は、電流シフト領域と半導体制御層との間に位置することになる。半導体メサを形成したあとで、第2の伝導形を有する制御コンタクト領域が形成されるが、制御コンタクト領域は、半導体バッファ層を貫通して延びて半導体制御層に電気的に結合する。制御コンタクト領域は、電流シフト領域から分離される。
【0027】
半導体制御層を形成する前に、第1の伝導形を有する半導体ドリフト層が形成され、半導体制御層の形成には、半導体ドリフト層の上への半導体制御層の形成が含まれる。従って、半導体制御層は、半導体ドリフト層と半導体バッファ層との間に位置することになる。半導体メサの上に第1の金属電極が形成されるため、半導体メサは、第1の金属電極と半導体バッファ層との間に位置することになる。制御コンタクト領域の上に第2の金属電極が形成されるため、制御コンタクト領域は、第2の金属電極と半導体制御層との間に位置することになる。半導体ドリフト層の上に第3の金属電極が形成されるため、半導体ドリフト層は、第3の金属電極と半導体制御層との間に位置することになる。
【0028】
半導体ドリフト層を形成する前に、半導体アノード/カソード層が形成され、半導体ドリフト層の形成には、半導体アノード/カソード層の上に半導体ドリフト層を形成して、半導体アノード/カソード層が半導体ドリフト層と第3の金属電極との間に位置するようにする工程が含まれる。
【0029】
半導体制御、ドリフトおよび/又はアノード/カソード層の形成は、炭化珪素基板上に半導体制御、ドリフトおよび/又はアノード/カソード層を形成して、半導体制御、ドリフトおよび/又はアノード/カソード層が炭化珪素基板と半導体バッファ層との間に位置するようにする工程を含む。炭化珪素基板は、約4度よりも大きくない角度だけ軸から外して切断されるか、あるいは軸に沿って切断された表面を定義しており、半導体制御層、半導体バッファ層および半導体メサの結晶構造は、炭化珪素基板の結晶構造と揃えられる。言い換えれば、半導体メサ、バッファ、制御および/又はアノード/カソード層が炭化珪素基板上にエピタキシャル形成される。
【0030】
発明のよりよい理解のためにここに含められる添付図面は、本出願の一部を構成しており、発明の特定の実施の形態を示している。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】従来のメサ終端したPINダイオード構造を示す断面図。
【図2A】本発明のいくつかの実施の形態に従う、櫛形電極を含む半導体デバイスを示す平面図。
【図2B】本発明のいくつかの実施の形態に従うバイポーラ接合トランジスタ(BJT)の構造を示す図2Aの切断線i−i’に沿って取った断面図。
【図2C】本発明のいくつかの実施の形態に従うゲート・ターンオフ・サイリスタ(GTO)の構造を示す図2Aの切断線i−i’に沿って取った別の断面図。
【図3A】本発明のいくつかの実施の形態に従ってメサおよび電流シフト領域の構造を形成する操作を示す拡大断面図。
【図3B】本発明のいくつかの実施の形態に従ってメサおよび電流シフト領域の構造を形成する操作を示す拡大断面図。
【図4A】本発明のいくつかの実施の形態に従ってメサ、ステップおよび電流シフト領域の構造を形成する操作を示す拡大断面図。
【図4B】本発明のいくつかの実施の形態に従ってメサ、ステップおよび電流シフト領域の構造を形成する操作を示す拡大断面図。
【図5A】本発明のいくつかの実施の形態に従ってメサ、ステップおよび電流シフト領域の構造を形成する操作を示す拡大断面図。
【図5B】本発明のいくつかの実施の形態に従ってメサ、ステップおよび電流シフト領域の構造を形成する操作を示す拡大断面図。
【図6A】従来のBJT構造中での模擬電流密度を示す図。
【図6B】本発明のいくつかの実施の形態に従うステップ状電流シフト領域を含むBJT中での模擬電流密度を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0032】
(詳細な説明)
ここからは、発明の実施の形態を示している添付図面を参照しながら本発明の実施の形態についてより詳しく説明する。ただし、本発明は、多くの異なる形態として実現でき、ここに提示する実施の形態に限定すべきではない。むしろ、これらの実施の形態は、この開示が完全なものとなるように与えられるものであって、当業者に対して発明の範囲を完全に伝えるものである。全体を通して、同様な要素に対して同じ参照符号が用いられる。
【0033】
第1とか第2とかの用語がここで各要素を説明するために用いられているが、それらの要素は、これらの用語によって限定されるべきでないことを理解すべきである。これら用語は、単にそれぞれの要素を区別するために用いられている。例えば、第1の要素を第2の要素と表現し、同様に、第2の要素を第1の要素と表現しても本発明の範囲から外れることはない。ここで用いられている「および/又は」という表現には、関連する列挙された項目の1つ又は複数のものの任意およびあらゆる組合せが含まれる。
【0034】
ここで用いられる用語は、単に特定の実施の形態を説明するために用いられるものであって、発明を限定することを意図していない。ここで用いられるように、名詞が単数(“a”,“an”,“the”)として表現されている場合でも、特に断らない限り、複数の意味も含む。さらに、ここで用いられている「成っている(comprise)」および/又は「含んでいる(include)」という表現は、言及される(特徴(features)、完全体(integers)、ステップ、操作、要素および/又はコンポネントの存在を明記するものであるが、1又は複数のその他の構造、完全体、工程、操作、要素、コンポネントおよび/又はそれらのグループの存在又は追加を排除するものではない。
【0035】
別に定義しない限り、ここで用いられるすべての用語(技術的および科学的用語を含む)は、本発明が属する技術分野の業者によって共通的に理解されるのと同じ意味を持つ。さらに、ここで用いられる用語は、この明細書の文脈および関連技術分野でそれらが意味するものと整合する意味を持つものとして解釈されるべきであること、および特に別の意味で定義されていない限り、理想化あるいは過大に形式化された意味で解釈されるべきでないことを理解すべきである。
【0036】
層、領域又は基板などの要素が別の要素の「中へ」延びたり、「上に」あると表現されるとき、それは、直接的にそれら他の要素の上にあったり、中に延びたりすることができるし、あるいは仲介物が存在することもあることを理解すべきである。これとは対照的に、要素が別の要素の「直接上に」あったり、「直接中に」延びたりすると表現されるときは、仲介物は存在しない。さらに、要素が別の要素に「接続」又は「結合」されると表現されるとき、それはその別の要素と直接的に接続又は結合することもできるが、仲介する要素が存在することもできることを理解すべきである。これと対照的に、要素が別の要素と「直接接続」又は「直接結合」されると表現されるときは、仲介する要素は存在しない。
【0037】
相対的な用語、例えば「より小さい」、「上に」、「より上」、「より下」、「水平に」、「横に」、「縦に」、「下側に」、「上方に」、「上に載って」等は、ここで図面に示される1つの要素、層又は領域と、別の要素、層又は領域との関係を述べるために用いられる。これらの用語は、図面に示された方向に加えて、デバイスの異なる向きを包含する意図で用いられていることを理解すべきである。
【0038】
発明の実施の形態について、ここで断面図を参照しながら説明する。それら断面図は、発明の理想化された実施の形態(および中間構造)を模式的に示している。図面中の層や領域の厚さは、分かりやすくするために誇張して描かれている。さらに、例えば、製造技術および/又は許容範囲の結果として図面の形状からの変形も期待される。従って、発明の実施の形態は、ここに示された領域の特定の形状に限定されるべきでなく、例えば、製造から生ずる形状の変形を包含する。例えば、矩形として示された注入領域は、一般に丸みのある、あるいはカーブした構造を有することができ、および/又は注入領域から非注入領域への端部における注入濃度の変化は、非連続的でなく、勾配を有することができる。同様に、イオン注入によって形成される埋め込み領域は、注入を行う表面と埋め込み領域との間の領域中に何らかの注入効果をもたらす。このように、図面に示された領域は、基本的に模式的なものであって、それらの形状は、デバイスの領域の実際の形状を示すものではなく発明の範囲を限定する意図もない。
【0039】
層および/又は領域中の多数キャリア濃度を意味するn形又はp形という伝導形を有するとして特徴付けられる半導体の層および/又は領域を参照しながら、発明のいくつかの実施の形態について説明する。すなわち、n形材料は、多数平衡濃度の負に帯電した電子を有し、他方、p形材料は、多数平衡濃度の正に帯電した正孔を有する。いくつかの材料では、「+」「−」を添えて(n+、n−、p+、p−、n++、n−−、p++、p−−などのように)、別の層や領域と比べて多数キャリア濃度がより多い(「+」)か、より少ない(「−」)ことを示すように指定される。しかし、そのような表記は、層又は領域中に特定の具体的な濃度の多数キャリア又は少数キャリアが存在することを意味しない。
【0040】
半導体パワー・デバイスは、融合型PiN−ショットキ・ダイオード(MPS)、PiNダイオード(PN)、バイポーラ接合トランジスタ(BJT)、絶縁ゲート・バイポーラ・トランジスタ(IGBT)、ゲート・ターンオフ・サイリスタ(GTO)、MOS制御サイリスタ(MCT)等のバイポーラ型パワー・デバイスと、高濃度にドープされたP+領域を含むショットキ・ダイオードやポリシリコンなどその他の材料を含むヘテロ接合ダイオードのようなユニポーラ型パワー・デバイス(サージ性能を実現するために伝導形変調を採用できる)を含む。軸から8度外れた(オフ角が8度の)方位の炭化珪素(SiC)上に作製されたとき、それらの半導体パワー・デバイスは、順方向電圧降下(Vdrift)の増加、電流利得の減少、逆方向リーク電流の増加などの性能劣化を蒙る。
【0041】
軸から8度ずれた方位のSiC上に作製されたデバイスにおける性能劣化は、接合を順方向バイアスしたときに、電子と正孔との間での再結合を介して能動領域中で基底面転位(BPD)が積層欠陥(SF)に成長することに起因する。これらの再結合は、基底面で積層欠陥を取り囲む部分転位の滑りを促進する。SFの存在は、SiC結晶内部およびすべての界面において、局所的なキャリア寿命の短縮、過剰な界面欠陥の生成等を引き起こす。
【0042】
(0001)基底面から2度ないし6度ずれた方位のSiC基板上へ高品質で低欠陥密度(低BPD密度を含む)の成長を実現するための進歩したエピタキシャル厚層成長条件が考案された。この方式で成長させたエピタキシャル層は、低減されたBPD密度とそれに伴うVdriftの低減を示し、それによって例えば、その開示がここに参照によってその全体を取り込まれ援用される「Method To Reduce Stacking Fault Nucleation Sites And Reduce VDrift In Bipolar Devices(積層欠陥生成サイトを低減し、バイポーラ・デバイスのVdriftを下げるための方法)」と題する米国特許第7,279,115号に述べられている多段エッチング処理を用いることなしに、その他の性能特性を改善させる。
【0043】
本発明の実施の形態に従えば、安定した性能を提供する半導体パワー・デバイスは、[0001]軸に平行に切断された表面を有するSiC基板、あるいは、[0001]軸から小角度だけ外して切断されたSiC基板上に作製される。小角度だけ軸から外して切断されたSiC基板については、その開示がここに参照によってその全体を取り込まれ援用される「Stable Power Devices On Low−Angle Off−Cut Silicon Carbide Crystals(小角度だけ軸から外して切断された炭化珪素結晶上の安定したパワー・デバイス)」と題する2008年12月1日付の米国特許仮出願第61/118,825号に述べられている。SiC−BJTで、例えば電流利得の劣化は、特にエミッタ・メサの隅におけるキャリア再結合および/又は表面再結合による積層欠陥(SF)などの欠陥の生成に起因する。本発明の実施の形態に従えば、エミッタ・メサの隅における表面再結合は、集中する電流をメサの隅からSiCのバルクに向けてシフトさせることによって低減される。集中電流をメサの隅から遠ざけるようにシフトすることによって、電流利得の劣化が低減される。
【0044】
図2Aは、本発明のいくつかの実施の形態に従う、櫛形電極を含む半導体デバイスを示す部分平面図である。特に、第1の櫛形電極201は、第1の伝導形を有する半導体メサ203の上に設けられ、第2の櫛形電極205は、第1の伝導形と異なる第2の伝導形を有する制御コンタクト領域207の上に設けられる。さらに、第1の伝導形を有する半導体バッファ層209の上に半導体メサ203が設けられ、半導体メサ203に隣接する半導体バッファ層209中には、第2の伝導形を有する電流シフト領域211が設けられる。図2Aの平面図には示されていないが、電流シフト領域211は、半導体メサ203の周辺部分と半導体シフト層209との間に広がる。半導体デバイスの能動領域に半導体のメサ、バッファ、電流シフトおよびコンタクト領域203、211、211および207が設けられ、また、半導体デバイスの終端領域(図示されていない)が能動領域を取り囲む。バッファ層209は、メサ203を形成する際の過剰エッチに対するマージンとなるため、メサ203を形成するために用いられるエッチが第2の伝導形を有する下層の半導体制御層(例えば、図2Bのベース層215’、あるいは図2Cのゲート層215’’)の一部をうっかり露出させることがない。
【0045】
図2Aの平面図に示された構造は、以下で詳しく説明するように異なるタイプの半導体パワー・デバイスのために用いられる。例えば、図2Aの構造を用いて、本発明の実施の形態に従う、バイポーラ接合トランジスタおよび/又はゲート・ターンオフ・サイリスタを実現できる。
【0046】
図2Bは、本発明のいくつかの実施の形態に従うバイポーラ接合トランジスタ(BJT)の構造を示す図2Aの切断線i−i’に沿って取った断面図である。BJTにおいて、第1の金属電極201’は、エミッタ/コレクタ電極と呼ばれ、第2の金属電極205’は、ベース電極と呼ばれ、また制御コンタクト領域207’は、ベース・コンタクト領域と呼ばれる。図2Aに関して上で述べた要素に加えて、図2BのBJTは、第2の伝導形を有するベース層215’、第1の伝導形を有するドリフト層217’および第1の伝導形を有する基板219’を含む。基板219’は、コレクタ/エミッタとして機能し、また第3の金属電極221’は、コレクタ/エミッタ電極と呼ばれる。従って、電極205’(又はベース電極)に供給される電流を用いて、電極201’と221’との間(あるいは、エミッタ電極とコレクタ電極との間)の電流が制御される。
【0047】
さらに半導体メサ203’は、領域203a’および203b’を含み(両方とも第1の伝導形を有する)、領域203b’は、領域203a’よりも高い多数キャリア濃度を有する。例えば、領域203b’は、電極201’との間でオーミック・コンタクトを提供できるように高いドーパント濃度を有する。
【0048】
従って、図2BのBJTは、電極205’に与えられる電気信号に応じて、電極201’と221’との間の比較的大きい電流をスイッチング/制御できる。このため、図2BのBJTは、「縦型」パワー・デバイスと呼ばれる。それは、スイッチング/制御された電流が基板219’をはさんで対向する電極201’と電極221’との間で「縦」方向に流れるからである(ここで「縦」というのは、図2Bに示された構造の向きに相対的に決められる)。「縦」電流が連続した電極221’全体に広がったのちに櫛形電極201’のフィンガで集中するため、半導体メサ203’とバッファ層209’との間の隅に電流集中が発生する。電流シフト領域211’を設けることによって、この電流集中を半導体メサ203’とバッファ層209’との間の隅から離れるように移動させることができる。さらに詳細には、バッファ層209’(第1の伝導形を有する)と電流シフト領域211’(第2の伝導形を有する)との間に定義されるp−n接合および/又は半導体メサ203’(第1の伝導形を有する)と電流シフト領域211’(第2の伝導形を有する)との間に定義されるp−n接合は、電流シフト領域211’を流れる電流を低減/禁止する。
【0049】
基板219’は、基底面転位(BPD)を減らすために約4度よりも大きくない角度だけ軸から外して切断された表面、あるいは軸に沿って切断された表面を有する炭化珪素基板(SiC)である。例えば、基板219’は、軸から外す角度(オフ角)α(アルファ)を約4度よりも大きくない角度とした場合、


(<ワン、ワン、ツーバー、ゼロ>)方向に向かって角度α(アルファ)だけ外して切断された一般に炭化珪素結晶のC面に対応する表面を有する結晶多形4HのSiC基板(4H−polytype SiC)である。約4度よりも大きくない角度だけ軸から外して切断された表面には、軸に沿って切断された表面(すなわち、角度0だけ軸から外して切断された表面)も含まれる。小角度だけ軸から外して切断されたSiC基板については、例えば、その開示がここに参照によってその全体を取り込まれ援用される「Stable Power Devices On Low−Angle Off−Cut Silicon Carbide Crystals(小角度だけ軸から外して切断された炭化珪素結晶上の安定したパワー・デバイス)」と題する2008年12月1日付けの米国特許仮出願第61/118,825号に述べられている。基板219’上の半導体層/領域の各々(例えば、ドリフト層217’、ベース層215’、バッファ層209’、メサ203’、ベース・コンタクト領域207’および電流シフト領域211’)は、エピタキシャル堆積、注入/拡散および/又はエッチングを用いて形成されるSiC層/領域である。従って、基板219’上の半導体層/領域の各々(例えば、ドリフト層217’、ベース層215’、バッファ層209’、メサ203’、ベース・コンタクト領域207’および電流シフト領域211’)は、基板219’の結晶構造に揃った単結晶構造を有する。
【0050】
本発明のいくつかの実施の形態に従えば、図2BのBJTは、第1の伝導形がn形で、第2の伝導形がp形のNPN−BJTである。その場合、メサ203’は、n形エミッタであり、領域203a’は、高濃度にドープされたn形領域(N+)で、領域203b’は、非常に高濃度にドープされたn形領域(N++)であって、基板219’は、高濃度にドープされたn形(N+)コレクタを提供する。ドリフト層217’は、n形伝導性(N)を有し、ベース層215’は、p形伝導性(P)を有し、バッファ層209’は、n形伝導性(N)を有し、電流シフト領域211’は、高濃度にドープされたp形伝導性(P+)を有し、ベース・コンタクト領域207’は、高濃度にドープされたp形伝導性(P+)を有する。図2Bには図示されていないが、電極221’との間でオーミック・コンタクトを提供するために、電極221’に隣接して基板219’上に非常に高濃度にドープされたn形層(N++)が設けられる。
【0051】
本発明のその他の実施の形態に従えば、図2BのBJTは、第1の伝導形がp形で、第2の伝導形がn形のPNP−BJTである。その場合、メサ203’は、p形エミッタであり、領域203a’は、高濃度にドープされたp形領域(P+)で、領域203b’は、非常に高濃度にドープされたp形領域(P++)であって、基板219’は、高濃度にドープされたp形(P+)コレクタを提供する。ドリフト層217’は、p形伝導性(P)を有し、ベース層215’は、n形伝導性(N)を有し、バッファ層209’は、p形伝導性(P)を有し、電流シフト領域211’は、高濃度にドープされたn形伝導性(N+)を有し、ベース・コンタクト領域207’は、高濃度にドープされたn形伝導性(N+)を有する。図2Bには図示されていないが、電極221’との間でオーミック・コンタクトを提供するために、電極221’に隣接して基板219’上に非常に高濃度にドープされたp形層(P++)が設けられる。
【0052】
図2Cは、本発明のいくつかの実施の形態に従うゲート・ターンオフ・サイリスタ(GTO)の構造を示す図2Aの切断線i−i’に沿って取った別の断面図を示す。GTOにおいて、第1の金属電極201’’は、アノード/カソード電極と呼ばれ、第2の金属電極205’’は、ゲート電極と呼ばれ、制御コンタクト領域207’’は、ゲート・コンタクト領域と呼ばれる。さらに、上で図2Aに関連して説明した要素に加えて、図2CのGTOは、第2の伝導形を有する半導体ゲート層215’’、第1の伝導形を有する半導体ドリフト層217’’および218’’と、第2の伝導形を有する半導体基板219’’を含む。基板219’’は、アノード/カソードとして機能し、第3の金属電極221’’は、アノード/カソード電極と呼ばれる。従って、電極205’’(又はゲート電極)に供給される電流を用いて、電極201’’と221’’との間(あるいはアノード電極とカソード電極との間)の電流が制御される。
【0053】
さらに半導体メサ203’’は、領域203a’’および203b’’(両方とも第1の伝導形を有する)を含み、領域203b’’は、領域203a’’よりも多い多数キャリア濃度を有する。例えば、領域203b’’は、電極201’’との間でオーミック・コンタクトを提供できる高いドーパント濃度を有する。
【0054】
従って、図2CのGTOは、電極205’’に与えられる電気信号に応じて、電極201’’と221’’との間の比較的大きい電流をスイッチング/制御できる。このため、図2CのBJTは、「縦型」パワー・デバイスと呼ばれる。それは、スイッチング/制御された電流が基板219’’をはさんで対向する電極201’’と電極221’’との間を「縦」方向に流れるからである(ここで「縦」というのは、図2Cに示された構造の向きに相対的に決められる)。「縦」電流は、連続した電極221’’全体に広がったのちに櫛形電極201’’のフィンガで集中するため、半導体メサ203’’とバッファ層209’’との間の隅に電流集中が発生する。電流シフト領域211’’を設けることによって、この電流集中を半導体メサ203’’とバッファ層209’’との間の隅から離れるように移動させることができる。さらに詳細には、バッファ層209’’(第1の伝導形を有する)と電流シフト領域211’’(第2の伝導形を有する)との間に定義されるp−n接合および/又は半導体メサ203’’(第1の伝導形を有する)と電流シフト領域211’’(第2の伝導形を有する)との間に定義されるp−n接合は、電流シフト領域211’’を流れる電流を低減/禁止する。
【0055】
基板219’’は、基底面転位(BPD)を減らすために約4度よりも大きくない角度だけ軸から外して切断された表面、あるいは軸に沿って切断された表面を有する炭化珪素基板(SiC)である。例えば、基板219’’は、軸から外す角度α(アルファ)を約4度よりも大きくない角度とした場合、


(<ワン、ワン、ツーバー、ゼロ>)方向に向かって角度α(アルファ)だけ外して切断された一般に炭化珪素結晶のC面に対応する表面を有する4H結晶多形のSiC基板である。小角度だけ軸から外して切断されたSiC基板については、例えば、その開示がここに参照によってその全体を取り込まれ援用される「Stable Power Devices On Low−Angle Off−Cut Silicon Carbide Crystals(小角度だけ軸から外して切断された炭化珪素結晶上の安定したパワー・デバイス)」と題する2008年12月1日付けの米国特許仮出願第61/118,825号に述べられている。基板219’’上の半導体層/領域の各々(例えば、ドリフト層217’’と218’’、ゲート層215’’、バッファ層209’’、メサ203’’、ゲート・コンタクト領域207’’および電流シフト領域211’’)は、エピタキシャル堆積、注入/拡散および/又はエッチングを用いて形成されたSiC層/領域である。従って、基板219’’上の半導体層/領域の各々(例えば、ドリフト層217’’、ゲート層215’’、バッファ層209’’、メサ203’’、ゲート・コンタクト領域207’’および電流シフト領域211’’)は、基板219’’の結晶構造に揃った単結晶構造を有する。
【0056】
本発明のいくつかの実施の形態に従えば、図2CのGTOは、第1の伝導形がn形で、第2の伝導形がp形のn形GTOである。その場合、メサ203’’は、n形カソードであり、領域203a’’は、高濃度にドープされたn形領域(N+)で、領域203b’’は、非常に高濃度にドープされたn形領域(N++)であって、基板219’’は、高濃度にドープされたp形(P+)アノードを提供する。ドリフト層217’’は、低濃度にドープされたn形伝導性(N−)を有し、ドリフト層218’’は、n形伝導性(N)を有し、ゲート層215’’は、p形伝導性(P)を有し、バッファ層209’’は、n形伝導性(N)を有し、電流シフト領域211’’は、高濃度にドープされたp形伝導性(P+)を有し、ゲート・コンタクト領域207’’は、高濃度にドープされたp形伝導性(P+)を有する。図2Cには図示されていないが、電極221’’との間でオーミック・コンタクトを提供するために、電極221’’に隣接して基板219’’上に非常に高濃度にドープされたp形層(P++)が設けられる。
【0057】
本発明のその他の実施の形態に従えば、図2CのGTOは、第1の伝導形がp形で、第2の伝導形がn形のp形GTOである。その場合、メサ203’’は、p形アノードであり、領域203a’’は、高濃度にドープされたp形領域(P+)で、領域203b’’は、非常に高濃度にドープされたp形領域(P++)であって、基板219’’は、高濃度にドープされたn形(N+)カソードを提供する。ドリフト層217’’は、低濃度にドープされたp形伝導性(P−)を有し、ドリフト層218’’は、p形伝導性(P)を有し、ゲート層215’’は、n形伝導性(N)を有し、バッファ層209’’は、p形伝導性(P)を有し、電流シフト領域211’’は、高濃度にドープされたn形伝導性(N+)を有し、ゲート・コンタクト領域207’’は、高濃度にドープされたn形伝導性(N+)を有する。図2Cには図示されていないが、電極221’’との間でオーミック・コンタクトを提供するために、電極221’’に隣接して基板219’’上に非常に高濃度にドープされたn形層(N++)が設けられる。
【0058】
図3A−3B、4A−4Bおよび5A−5Bは、本発明の実施の形態に従って、メサおよび電流シフト領域の構造を形成する操作を示す拡大断面図である。各断面図で、要素は、一般に上で図2Bおよび2Cに関して説明したBJTおよびGTO構造に関連して説明される。従って、図3A−3B、4A−4Bおよび5A−5Bの操作および/又は構造は、BJT、GTO又は本発明の実施の形態に従うメサ構造を含む任意のその他の半導体デバイスに適用される。
【0059】
図3Aに示されたように、構造には、半導体基板219(例えば、図2Bの基板219’又は図2Cの基板219’’)、半導体ドリフト層217(例えば、図2Bのドリフト層217’又は図2Cのドリフト層217’’および218’’)、半導体制御層215(例えば、図2Bのベース層215’又は図2Cのゲート層215’’)、半導体バッファ層209(例えば、図2Bのバッファ層209’又は図2Cのバッファ層209’’)および半導体メサ203(例えば、図2Bのメサ203’又は図2Cのメサ203’’)が含まれる。
【0060】
特に、半導体ドリフト層217、半導体制御層215および半導体バッファ層209は、半導体基板219上へエピタキシャル堆積によって形成される。メサ層は、バッファ層209上へのエピタキシャル堆積によって形成され、その後で、半導体メサ203にパターニング(例えば、反応性イオン・エッチング又はRIEを用いて)される。材料成長時のその場ドーピング、材料成長後のその場拡散および/又は事後の注入を用いて、図3Aの半導体層の伝導形および多数キャリアの濃度が提供される。例えば、材料成長時のその場ドーピングによって、ドリフト層217、制御層215、バッファ層209およびメサ領域203aの伝導形/濃度が提供され、事後の注入によって、メサ領域203bの多数キャリア濃度が増加する。メサ203は、バッファ層209の位置で正確に終端しているように示されているが、いくらかの過剰エッチが生じる可能性があり、そうなるとバッファ層209の一部がメサ203に含まれることになる。さらに、拡散によってキャリア濃度の遷移がぼかされるため、バッファ層209とメサ領域203aとの間で、ドーパント濃度は、勾配を持って変化する。言い換えると、バッファ層209とメサ領域203aとの間のキャリア濃度(同じ伝導形のもの)の遷移位置は、メサ203の基部と必ずしも一致しない。
【0061】
半導体メサ203を形成したあとで、選択的注入307および311(第2の伝導形のもの)が実行されて、制御コンタクト領域207および電流シフト領域211のための望ましい伝導形のドーパントがバッファ層209中に導入される。注入を希望しないバッファ層209およびメサ203の領域を覆うためにマスク(単数又は複数)が使用される。さらに、制御コンタクト領域207および電流シフト領域211を得るために異なる深さを与えるように、注入307と311とに対して、異なる分布、エネルギー、ドーズおよび/又はドーパントを用いることができる。例えば、注入307のためのドーズおよび/又はエネルギーは、注入311のためのドーズおよび/又はエネルギーよりも大きくすることができる。さらに、領域307の注入を行う間、注入領域311は、マスクされる。
【0062】
図3Bに示されたように、熱活性化/拡散操作を行って、注入307および311のドーパントを活性化および拡散させることによって、制御コンタクト領域207(例えば、図2Bのベース・コンタクト領域207’又は図2Cのゲート・コンタクト領域207’’)および電流シフト領域211(例えば、図2Bの電流シフト領域211’又は図2Cの電流シフト領域211’’)が形成される。図3Aおよび3Bには示されていないが、両方の注入を完了する前にも何らかの熱活性化/拡散が起こり得る。例えば、領域311に対するすべての注入を完了する前に、注入領域307で何らかの拡散が発生し得る。拡散処理(単数又は複数)の結果、電流シフト領域211は、メサ203とバッファ層209との間のメサ203の周辺領域の下側で距離dだけ広がる。距離dは、例えば、少なくとも約0.5μm(マイクロメートル)であり、さらに詳細には、少なくとも約1μm(マイクロメートル)である。距離dは、約0.8μm(マイクロメートル)から約1.2μm(マイクロメートル)の範囲にあり、さらに詳細には、距離dは、約1μm(マイクロメートル)である。本発明のいくつかの実施の形態に従えば、距離dは、本質的に0であって、その場合の隅(メサ203とバッファ層209との間)の下で電流シフト領域211の深さは、隅における電流集中を十分低減できるものである。
【0063】
電流シフト領域211の深さがバッファ層209の厚さよりも小さいため、バッファ層209の一部分(第1の伝導形のもの)が電流シフト領域211と制御層215(第2の伝導形のもの)との間に残る。従って、電流シフト領域211は、制御コンタクト領域207および制御層215から電気的に分離される。制御コンタクト領域207の深さがバッファ層209の厚さよりも大きいため、制御コンタクト領域207は、バッファ層209を貫通して制御層215に電気的結合する。
【0064】
制御コンタクト領域207および電流シフト領域211を形成したあと、図3Bに示すように金属電極201、205および221(例えば、図2Bの金属電極201’、205’および221’又は図2Cの金属電極201’’、205’’および221’’)が形成される。金属電極は、金属電極への損傷を回避するために、高温での熱活性化/拡散操作が完了したあとで形成される。このように、図3Aおよび3Bの操作は、メサ構造を含む図2B又は2C又はその他の半導体デバイスのいずれかの構造を提供するために用いられる。
【0065】
図4Aに示されたように、構造には、半導体基板219(例えば、図2Bの基板219’又は図2Cの基板219’’)、半導体ドリフト層217(例えば、図2Bのドリフト層217’又は図2Cのドリフト層217’’と218’’)、半導体制御層215(例えば、図2Bのベース層215’又は図2Cのゲート層215’’)、半導体バッファ層209x(例えば、図2Bのバッファ層209’又は図2Cのバッファ層209’’)および半導体メサ203(例えば、図2Bのメサ203’又は図2Cのメサ203’’)が含まれる。
【0066】
特に、半導体ドリフト層217および半導体制御層215は、半導体基板219上へのエピタキシャル堆積によって形成される。バッファおよびメサ層は、エピタキシャル堆積によって形成され、そのあと2つのマスク/エッチ操作によって(例えば、2つの反応性イオン・エッチング又はRIE操作を用いて)バッファ層209x中に半導体メサ203およびステップ401が形成される。例えば、第1のマスクおよび反応性イオン・エッチ操作を用いて、メサ層をエッチしてメサ203を形成し、次に第2のマスクおよび反応性イオン・エッチ操作を用いて、バッファ層をエッチして、メサ203に隣接してバッファ層209x中にステップ401が形成される。メサ203は、バッファ層209xの位置で正確に終端しているように示されているが、いくらかの過剰エッチが発生する可能性があり、そうなるとメサ203中にバッファ層209xの一部が含まれることになる。さらに、拡散によってキャリア濃度の遷移がぼかされるため、バッファ層209xとメサ領域203aとの間で、ドーパント濃度は、勾配を持って変化する。言い換えると、バッファ層209xとメサ領域203aとの間のキャリア濃度(同じ伝導形のもの)の遷移位置は、メサ203の基部と必ずしも一致しない。メサ・ステップおよび関連する構造の形成については、その開示がここに参照によって全体を取り込まれ援用される「Power Devices With Mesa Structures And Buffer Layers Including Mesa Steps(メサ構造およびメサ・ステップを含むバッファ層を備えたパワー半導体デバイス)」と題する米国特許出願第2009/0121319号に述べられている。
【0067】
材料成長時のその場ドーピング、材料成長後のその場拡散および/又は事後の注入を用いて、図4Aの半導体層の伝導形および多数キャリアの濃度が提供される。例えば、材料成長時のその場ドーピングによって、ドリフト層217、制御層215、バッファ層209xおよびメサ領域203aの伝導形/濃度が提供され、事後の注入によって、メサ領域203bの多数キャリア濃度が増加する。
【0068】
半導体メサ203を形成したあとで、選択的注入307および311x(第2の伝導形のもの)が実行されて、制御コンタクト領域207および電流シフト領域211xのための第2の伝導形のドーパントがバッファ層209x中に導入される。さらに詳細には、注入311xは、メサ203に隣接するバッファ層209x中でステップ401の両側に行われる。注入を望まないバッファ層209xおよびメサ203の領域を覆うためにマスク(単数又は複数)が用いられる。さらに、制御コンタクト領域207および電流シフト領域211xを得るために異なる深さを与えるように、注入307と311とに対して、異なる分布、エネルギー、ドーズおよび/又はドーパントを用いることができる。例えば、注入307のドーズおよび/又はエネルギーは、注入311xのドーズおよび/又はエネルギーよりも大きくすることができる。さらに、領域307の注入を行う間、注入領域311xは、マスクされる。
【0069】
図4Bに示されたように、熱活性化/拡散操作を行って、注入307および311xのドーパントを活性化および拡散させることによって、制御コンタクト領域207(例えば、図2Bのベース・コンタクト領域207’又は図2Cのゲート・コンタクト領域207’’)および電流シフト領域211x(例えば、図2Bの電流シフト領域211’又は図2Cの電流シフト領域211’’)が形成される。図4Aおよび4Bには示されていないが、両方の注入が完了する前にも何らかの熱活性化/拡散が起こり得る。例えば、領域311xに対するすべての注入が完了する前に、注入領域307で何らかの拡散が発生し得る。拡散処理(単数又は複数)の結果、電流シフト領域211xは、メサ203とバッファ層209xとの間のメサ203の周辺領域の下側で距離dだけ広がる。距離dは、例えば、少なくとも約0.5μm(マイクロメートル)であり、さらに詳細には、少なくとも約1μm(マイクロメートル)である。距離dは、約0.8μm(マイクロメートル)から約1.2μm(マイクロメートル)の範囲にあり、さらに詳細には、距離dは、約1μm(マイクロメートル)である。本発明のいくつかの実施の形態に従えば、距離dは、本質的に0であって、その場合の隅(メサ203とバッファ層209xとの間)の下での電流シフト領域211の深さは、隅における電流集中を十分低減できるものである。
【0070】
電流シフト領域211xの深さがバッファ層209xの厚さよりも小さいため、バッファ層209xの一部(第1の伝導形のもの)が電流シフト領域211xと制御層215(第2の伝導形のもの)との間に残る。従って、電流シフト領域211xは、制御コンタクト領域207および制御層215から電気的に分離される。制御コンタクト領域207の深さがバッファ層209xの厚さよりも大きいため、制御コンタクト領域207は、バッファ層209xを貫通して制御層215に電気的に結合する。
【0071】
制御コンタクト領域207および電流シフト領域211xを形成したあと、図4Bに示すように金属電極201、205および221(例えば、図2Bの金属電極201’、205’および221’又は図2Cの金属電極201’’、205’’および221’’)が形成される。金属電極は、金属電極への損傷を回避するために、高温での熱活性化/拡散操作が完了したあとで形成される。このように、図4Aおよび4Bの操作は、メサ構造を含む図2B又は2C又はその他の半導体デバイスのいずれかの構造を提供するために用いられる。
【0072】
図5Aに示されたように、構造には、半導体基板219(例えば、図2Bの基板219’又は図2Cの基板219’’)、半導体ドリフト層217(例えば、図2Bのドリフト層217’又は図2Cのドリフト層217’’および218’’)、半導体制御層215(例えば、図2Bのベース層215’又は図2Cのゲート層215’’)、半導体バッファ層209xx(例えば、図2Bのバッファ層209’又は図2Cのバッファ層209’’)および半導体メサ203xx(例えば、図2Bのメサ203’又は図2Cのメサ203’’)が含まれる。
【0073】
特に、半導体ドリフト層217および半導体制御層215は、半導体基板219上へのエピタキシャル堆積によって形成される。バッファおよびメサ層は、エピタキシャル堆積によって形成され、そのあと2つのマスク/エッチ操作によって(例えば、2つの反応性イオン・エッチング又はRIE操作を用いて)ステップ状基部およびバッファ層209xxを備えた半導体メサ203が形成される。例えば、第1のマスクおよび反応性イオン・エッチ操作を用いて、メサ・ステップ501の上部までメサ層を下方にエッチしてメサ203xx部分が形成される。言い換えると、第1のエッチは、バッファ層209xxを露出することなくメサ層のほとんどを貫通してエッチする。次に、第2のマスク(第1のマスクよりも広い)および反応性イオン・エッチ操作を用いて、バッファ層209xx上に残っているメサ層の露出部分をエッチして、メサ203xxの基部にメサ・ステップ501を形成する。メサ203xxは、バッファ層209xxの位置で正確に終端しているように示されているが、いくらかの過剰エッチが発生する可能性があり、そうなるとバッファ層209xxの一部がメサ203xxおよび/又はステップ501に含まれることになる。さらに、拡散によってキャリア濃度の遷移がぼかされるため、バッファ層209xxとメサ領域203axxとの間で、ドーパント濃度は、勾配を持って変化する。言い換えると、バッファ層209xxとメサ領域203axxとの間のキャリア濃度(同じ伝導形のもの)の遷移位置は、メサ203xx(ステップ501を含む)の基部と必ずしも正確に一致しない。メサ・ステップおよび関連する構造の形成については、その開示がここに参照によって全体を取り込まれ援用される「Power Devices With Mesa Structures And Buffer Layers Including Mesa Steps(メサ構造およびメサ・ステップを含むバッファ層を備えたパワー半導体デバイス)」と題する米国特許出願第2009/0121319号に述べられている。
【0074】
材料成長時のその場ドーピング、材料成長後のその場拡散および/又は事後の注入を用いて、図5Aの半導体層の伝導形および多数キャリアの濃度が提供される。例えば、材料成長時のその場ドーピングによって、ドリフト層217、制御層215、バッファ層209xxおよびメサ領域203axxの伝導形/濃度が提供され、事後の注入によって、メサ領域203bの多数キャリア濃度が増加する。
【0075】
半導体メサ203xxを形成したあとで、選択的注入307および311xx(第2の伝導形のもの)が実行されて、制御コンタクト領域207および電流シフト領域211xxのための第2の伝導形のドーパントがバッファ層209xx中に導入される。さらに詳細には、注入311xxは、メサ・ステップ203に隣接して実行される。注入を望まないバッファ層209xxおよびメサ203xx(ステップ501を含む)の領域を覆うためにマスク(単数又は複数)が用いられる。さらに、制御コンタクト領域207および電流シフト領域211xxを得るために異なる深さを与えるように、注入307と311xxとに対して、異なる分布、エネルギー、ドーズおよび/又はドーパントを用いることができる。例えば、注入307のドーズおよび/又はエネルギーは、注入311xxのドーズおよび/又はエネルギーよりも大きくすることができる。さらに、領域307の注入を行う間、注入領域311xxは、マスクされる。
【0076】
図5Bに示されたように、熱活性化/拡散操作を行って、注入307および311xxのドーパントを活性化および拡散させることによって、制御コンタクト領域207(例えば、図2Bのベース・コンタクト領域207’又は図2Cのゲート・コンタクト領域207’’)および電流シフト領域211xx(例えば、図2Bの電流シフト領域211’又は図2Cの電流シフト領域211’’)が形成される。図5Aおよび5Bには示されていないが、両方の注入が完了する前にも何らかの熱活性化/拡散が起こり得る。例えば、領域311xに対するすべての注入が完了する前に、注入領域307に対する何らかの拡散を実行できる。拡散処理(単数又は複数)の結果、電流シフト領域211xxは、メサ203xxとバッファ層209xxとの間のメサ203xxのステップ501の下で距離dだけ広がる。距離dは、例えば、少なくとも約0.5μm(マイクロメートル)であり、さらに詳細には、少なくとも約1μm(マイクロメートル)である。距離dは、約0.8μm(マイクロメートル)から約1.2μm(マイクロメートル)の範囲にあり、さらに詳細には、距離dは、約1μm(マイクロメートル)である。本発明のいくつかの実施の形態に従えば、距離dは、本質的に0であって、その場合の隅(メサ203とバッファ層209xとの間)の下で電流シフト領域211xの深さは、隅における電流集中を十分低減できるものである。図5Bに示されたように、距離dは、ステップ501の幅とほぼ同じである。
【0077】
電流シフト領域211xxの深さがバッファ層209xxの厚さよりも小さいため、バッファ層209xxの一部(第1の伝導形のもの)が電流シフト領域211xxと制御層215(第2の伝導形のもの)との間に残る。従って、電流シフト領域211xxは、制御コンタクト領域207および制御層215から電気的に分離される。制御コンタクト領域207の深さがバッファ層209xxの厚さよりも大きいため、制御コンタクト領域207は、バッファ層209xxを貫通して制御層215に電気的に結合する。
【0078】
制御コンタクト領域207および電流シフト領域211xxを形成したあと、図5Bに示すように金属電極201、205および221(例えば、図2Bの金属電極201’、205’および221’又は図2Cの金属電極201’’、205’’および221’’)が形成される。金属電極は、金属電極への損傷を回避するために、高温での熱活性化/拡散操作が完了したあとで形成される。このように、図5Aおよび5Bの操作は、メサ構造を含む図2B又は2C又はその他の半導体デバイスのいずれかの構造を提供するために用いられる。
【0079】
図6Aは、従来のBJT構造中で模擬された電流密度を示す。図6Aで、N+SiCメサ・エミッタ503、N SiCバッファ層509、P SiCベース層515、P+SiCベース・コンタクト領域507、N SiCドリフト層517およびN+SiC基板層519は、従来のNPN SiCバイポーラ接合トランジスタを定義する。さらに金属エミッタ電極501、金属ベース電極505および金属コレクタ電極521は、それらとの電気的コンタクトを提供する。模擬の都合で、バッファ層509は、2つの部分に分けて示されているが、バッファ層509の両方の区分ともに同じN伝導形およびキャリア濃度を有するとして模擬されている。さらに、図示の便宜上、各種の層/領域(例えば、P SiCベース層515、P+SiCベース・コンタクト領域507、N SiCドリフト層517、N+SiC基板層519および金属コレクタ電極521)は、別々に図示/定義されていないが、それは、別々に図示/定義しても模擬に関して顕著な効果を持たないからである。
【0080】
図6Aの模擬に示されたように、最も電流密度の高い領域は、メサ503とバッファ層509で定義される隅531に現れる。さらに、この隅における電流集中は、キャリア再結合および/又は表面再結合によって欠陥発生を増加させ、この欠陥発生が性能劣化を引き起こす。
【0081】
図6Bは、上で図2Bおよび図5Bに関して説明した本発明のいくつかの実施の形態に従う、メサ・ステップおよび電流シフト領域を含むBJT中で模擬された電流密度を示す。図6Bで、N+SiCメサ・エミッタ203xx(ステップ501を含む)、N SiCバッファ層209xx、P+SiC電流シフト領域211xx、P SiCベース層215、P+SiCベース・コンタクト領域207、N SiCドリフト層217およびN+SiC基板層219は、本発明のいくつかの実施の形態に従うNPN−SiCバイポーラ接合トランジスタを定義する。さらに金属エミッタ電極201、金属ベース電極205および金属コレクタ電極221は、それらとの電気的コンタクトを提供する。電流シフト領域211xxと電極205との間に空隙が示されているが、バッファ層209xxおよびベース・コンタクト領域207の一部がこの空隙を埋めても模擬の結果は変わらない。さらに図示の便宜上、各種の層/領域(例えば、P SiCベース層215、P+SiCベース・コンタクト領域207、N SiCドリフト層217、N+SiC基板層219および金属コレクタ電極221)は、別々に図示/定義されていないが、それは、別々に図示/定義しても模擬に関して顕著な効果を持たないからである。
【0082】
図6Bに示されたように、最も電流密度の高い領域は、電流シフト領域211xxとベース層215との間のバッファ層209xx中に現れる。言い換えれば、電流シフト領域211xxが、最も電流密度が高い領域をメサ203xxの基部に定義される隅から分離する。隅における電流集中を低減することで、キャリア再結合および/又は表面再結合による欠陥発生が低減される。従って、本発明のいくつかの実施の形態に従って、電流シフト領域および/又はステップを含めることによって性能劣化を緩和できる。
【0083】
発明の実施の形態について、以上のようにバイポーラ接合トランジスタ(BJT)およびゲート・ターンオフ・サイリスタ(GTO)を例に挙げて説明してきた。しかし、発明は、メサ構造を含むその他の半導体デバイスに実施することができる。
【0084】
図面および明細書において、発明の典型的な好適な実施の形態が開示されてきた。特別な用語が用いられているが、それらは、一般的な記述のための意味を持って使用されており、限定的な意図を有しない。発明の範囲は、以下の請求の範囲によって定義される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体デバイスであって、
第1の伝導形を有する半導体バッファ層と、
バッファ層の上にあって第1の伝導形を有する半導体メサと、
隅に隣接し、半導体バッファ層中にあって第2の伝導形を有する電流シフト領域であって、第1と第2の伝導形が互いに異なる伝導形である電流シフト領域と、
を含む半導体デバイス。
【請求項2】
請求項1に記載の半導体デバイスであって、さらに
半導体メサの表面上に位置する金属電極であって、半導体メサが金属電極と半導体バッファ層との間に位置し、また半導体バッファ層に隣接する半導体メサの中央部分は、金属電極から半導体メサに対向する半導体バッファ層の表面への第1の伝導形の電流経路を提供し、および/又は半導体メサに対向する半導体バッファ層の表面から金属電極への第1の伝導形の電流経路を提供する電流シフト領域を含まない金属電極、
を含む前記半導体デバイス。
【請求項3】
請求項1に記載の半導体デバイスであって、電流シフト領域が、半導体メサと半導体バッファ層との間の隅から電流を遠ざけるようにシフトするように構成されている前記半導体デバイス。
【請求項4】
請求項1に記載の半導体デバイスであって、電流シフト領域が、半導体メサを含まない半導体バッファ層部分へ広がっている前記半導体デバイス。
【請求項5】
請求項1に記載の半導体デバイスであって、さらに
半導体メサに隣接する半導体ステップであって、バッファ層の表面に対して垂直な方向での半導体ステップの厚さがバッファ層の表面に対して垂直な方向での半導体メサの厚さよりも小さい半導体ステップ、
を含む前記半導体デバイス。
【請求項6】
請求項1に記載の半導体デバイスであって、さらに
半導体バッファ層の上にあって第2の伝導形を有する半導体制御層であって、そのため半導体バッファ層が半導体制御層と半導体メサとの間に位置し、そのため半導体バッファ層が電流シフト領域と半導体制御層との間に位置する半導体制御層と、
第2の伝導形を有する制御コンタクト領域であって、制御コンタクト領域が半導体バッファ層を貫通して延びて半導体制御層に電気的に結合しており、制御コンタクト領域が電流シフト領域から分離されている制御コンタクト領域と、
を含む前記半導体デバイス。
【請求項7】
請求項6に記載の半導体デバイスであって、さらに
半導体制御層の上にあって第1の伝導形を有する半導体ドリフト層であって、そのため半導体制御層が半導体ドリフト層と半導体バッファ層との間に位置する半導体ドリフト層と、
半導体メサの上にある第1の金属電極であって、そのため半導体メサが第1の金属電極と半導体バッファ層との間に位置する第1の金属電極と、
制御コンタクト領域の上にある第2の金属電極であって、そのため制御コンタクト領域が第2の金属電極と半導体制御層との間に位置する第2の金属電極と、
半導体ドリフト層の上にある第3の金属電極であって、そのため半導体ドリフト層が第3の金属電極と半導体制御層との間にある第3の金属電極と、
を含む前記半導体デバイス。
【請求項8】
請求項7に記載の半導体デバイスであって、さらに
半導体ドリフト層と第3の金属電極との間にあって第2の伝導形を有する半導体アノード/カソード層、
を含む前記半導体デバイス。
【請求項9】
請求項6に記載の半導体デバイスであって、さらに
半導体制御層の上にある炭化珪素基板であって、そのため半導体制御層が炭化珪素基板と半導体バッファ層との間に位置する炭化珪素基板を含み、炭化珪素基板が、約4度よりも大きくない角度だけ軸から外して切断されるか、あるいは軸に沿って切断された表面を定義しており、また半導体制御層、半導体バッファ層および半導体メサの結晶構造が、炭化珪素基板の結晶構造と揃っている炭化珪素基板、
を含む前記半導体デバイス。
【請求項10】
半導体デバイス作製方法であって、
第1の伝導形を有する半導体バッファ層を形成する工程と、
バッファ層の上にあって第1の伝導形を有する半導体メサを形成する工程と、
半導体メサと半導体バッファ層との間の隅に隣接して第2の伝導形を有する電流シフト領域を形成する工程であって、第1と第2の伝導形が互いに異なる伝導形である電流シフト領域を形成する工程と、
を含む半導体デバイス作製方法。
【請求項11】
請求項10に記載の方法であって、さらに
半導体メサの表面に金属電極を形成する工程であって、半導体メサが金属電極と半導体バッファ層との間に位置しており、また半導体バッファ層に隣接する半導体メサの中央部分が、金属電極から半導体メサに対向する半導体バッファ層の表面への第1の伝導形の電流経路を提供し、および/又は半導体メサに対向する半導体バッファ層の表面から金属電極への第1の伝導形の電流経路を提供する電流シフト領域を含んでいない金属電極を形成する工程、
を含む前記方法。
【請求項12】
請求項10に記載の方法であって、電流シフト領域が、半導体メサと半導体バッファ層との間の隅から電流を遠ざけるようにシフトするように構成されている、
前記方法。
【請求項13】
請求項10に記載の方法であって、電流シフト領域を形成する工程が、
半導体メサを形成したあとで、半導体メサに隣接する半導体バッファ層の露出部分に第2の伝導形を有するドーパントをドープする工程と、
半導体バッファ層および半導体メサを熱処理して、ドーパントの一部が半導体メサと半導体バッファ層との間に拡散するようにする工程と、
を含んでいる前記方法。
【請求項14】
請求項10に記載の方法であって、半導体メサを形成する工程が、
半導体バッファ層全体の上に半導体メサ層をエピタキシャル的に形成する工程と、
半導体メサ層の一部を選択的に除去して、半導体メサを定義し、半導体バッファ層の一部を露出させる工程と、
を含んでいる前記方法。
【請求項15】
請求項10に記載の方法であって、さらに
電流シフト領域を形成する前に、半導体メサに隣接して半導体ステップを形成して、半導体ステップの厚さが半導体メサの厚さよりも小さくなるように形成する工程、
を含む前記方法。
【請求項16】
請求項15に記載の方法であって、半導体ステップを形成する工程が、
半導体メサを形成したあとで、半導体メサから離れて位置する半導体バッファ層の一部を選択的に除去して、半導体メサに隣接して半導体ステップを定義する工程、
を含んでいる前記方法。
【請求項17】
請求項15に記載の方法であって、電流シフト領域を形成する工程が、
半導体メサを形成し、そして半導体ステップを形成したあとで、半導体ステップにずっと隣接する半導体バッファ層部分に第2の伝導形を有するドーパントをドープする工程と、
半導体バッファ層および半導体メサを熱処理して、ドーパントの一部が半導体メサと半導体バッファ層との間に拡散するようにする工程と、
を含んでいる前記方法。
【請求項18】
請求項10に記載の方法であって、電流シフト領域が半導体バッファ層部分と半導体メサ部分との間にあって第1の伝導形を有する、
前記方法。
【請求項19】
半導体デバイスであって、
第1の伝導形を有する半導体バッファ層と、
バッファ層の上にあって第1の伝導形を有する半導体メサと、
半導体メサと半導体バッファ層との間の隅に隣接して第2の伝導形を有する電流シフト領域であって、第1と第2の伝導形が互いに異なる伝導形であり、また電流シフト領域が半導体バッファ層部分と半導体メサ部分との間にあって第1の伝導形を有する電流シフト領域と、
を含む半導体デバイス。
【請求項20】
請求項19に記載の半導体デバイスであって、さらに
半導体メサの表面に位置する金属電極であって、半導体メサが金属電極と半導体バッファ層との間に位置し、また半導体バッファ層に隣接する半導体メサの中央部分が、金属電極から半導体メサに対向する半導体バッファ層の表面への第1の伝導形の電流経路を提供し、および/又は半導体メサに対向する半導体バッファ層の表面から金属電極への第1の伝導形の電流経路を提供する電流シフト領域を含まない金属電極、
を含む前記半導体デバイス。
【請求項21】
請求項19に記載の半導体デバイスであって、さらに
半導体メサに隣接する半導体ステップであって、バッファ層の表面に対して垂直な方向での半導体ステップの厚さがバッファ層の表面に対して垂直な方向での半導体メサの厚さよりも小さい半導体ステップ、
を含む前記半導体デバイス。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図2C】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4A】
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【図4B】
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【図5A】
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【図5B】
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【図6A】
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【図6B】
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【公表番号】特表2012−510718(P2012−510718A)
【公表日】平成24年5月10日(2012.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−538639(P2011−538639)
【出願日】平成21年11月20日(2009.11.20)
【国際出願番号】PCT/US2009/065251
【国際公開番号】WO2010/065334
【国際公開日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【出願人】(592054856)クリー インコーポレイテッド (468)
【氏名又は名称原語表記】CREE INC.
【Fターム(参考)】