説明

電流検出装置

【課題】正確に検出電流を出力することができる電流検出装置を提供する。
【解決手段】メインFETQ11が車載バッテリVBと負荷10との間に接続されている。センスFETQ12のドレイン及びゲートがそれぞれメインFETQ11のドレイン及びゲートに接続されている。OPアンプOP1は、メインFETQ11及びセンスFETQ12のソース電圧がそれぞれ正相入力及び逆相入力に接続されると共にその出力が逆相入力にフィードバックされている。OPアンプOP2は、センスFETQ12のソース電圧が正相入力に供給されると共に出力が逆相入力にフィードバックされている。そして、OPアンプOP2の出力をOPアンプOP1の逆相入力に接続して、センスFETQ12のソース電圧がOPアンプOP2を介してOPアンプOP1の逆相入力に供給されるように設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電流検出装置に係り、特に、直流電源から負荷に流れる負荷電流に応じた検出電流を出力する電流検出装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、車両において、直流電源としての車載バッテリからの電源はパワーMOSFETと絶縁被膜により覆われた電源線とを介して車両の各部に配されている負荷に供給されている。上述した電源線は、常時振動しているエンジンルーム内等において車体に沿って配索されるが、このとき、車体の角部に接近して位置されていると、振動により角部と断続的な接触を繰り返すようになり、これが長期間続くと電源線の被覆が車体の角部により徐々に削られて内部導線が微少ではあるが露出するようになる。
【0003】
この電源線の露出部が車体と接触することに伴って、電源線にデッドショートやレアショートが起こり、過電流が流れるとパワーMOSFETや電源線が加熱して熱破壊する事態に至るようになる。そこで、このような事態に至ることを未然に防止するために、特許文献1に記載された異常検出装置が知られている。
【0004】
図2に示すように、異常検出装置1は、マルチソース型のMOSFETQ1と、トランジスタTr1と、第1演算増幅器としてのOPアンプOP1と、コンデンサC1と、カレントミラー回路11と、コンパレータCPと、を備えている。上記MOSFETQ1は、第1電界効果トランジスタとしてのメインFETQ11と、第2電界効果トランジスタとしてのセンスFETQ12と、から構成されている。メインFETQ11は、直流電源としての車載バッテリVBと負荷10との間に設けられている。センスFETQ12は、ドレイン及びゲートがそれぞれメインFETQ11のドレイン及びゲートに接続されている。メインFETQ11及びセンスFETQ12のゲートには、入力端T1から駆動信号が供給されている。
【0005】
上述したメインFETQ11及びセンスFETQ12は、素子面積がn:1の比率となるように、同一の半導体基板上に作られている。このMOSFETQ1は、メインFETQ11及びセンスFETQ12のゲート−ソース間電圧を互いに等しくすると、メインFETQ11のソースから流れる電流とセンスFETQ12のソースから流れる電流の比、すなわち分流比がnとなる特性がある。上記トランジスタTr1は、センスFETQ12のソース−グランド間に設けられている。上記OPアンプOP1は、メインFETQ11のソース電圧Vsmが正相入力に供給され、センスFETQ12のソース電圧Vssが逆相入力に供給されている。このOPアンプOP1の出力は、トランジスタTr1のベース−コレクタ間を介して逆相入力にフィードバックされている。
【0006】
このようにOPアンプOP1の出力をフィードバックすると、OPアンプOP1の正相入力と逆相入力との電圧がほとんど同じになるイマジナリーショート状態となる。よって、メインFETQ11及びセンスFETQ12のゲート−ソース間電圧を等しくすることができ、車載バッテリVBから負荷10に流れる負荷電流ILをn:1で主流IMと副流ISとに分流することができる。そして、センスFETQ12のソースからは、上記副流ISが負荷電IL流に応じた検出電流として出力される。
【0007】
上記コンデンサC1は、センスFETQ12のソースとグランドとの間に設けられ、副流ISによって充電される。上記カレントミラー回路11は、コンデンサC1に蓄積された電荷から定電流ICCを発生する。負荷電流ILに異常がなく、副流ISが定電流ICC以下である場合は、コンデンサC1に蓄積される電荷はカレントミラー回路11により全て放電されてしまう。このため、副流ISによってコンデンサC1は充電されず、コンデンサC1の両端電圧は0Vのままである。これに対して、電源線にデッドショートやレアショートが生じ、負荷電流ILが上昇すると、これに伴い副流ISも上昇する。そして、その結果、副流ISが定電流ICCを超えると、カレントミラー回路11により放電しきれなかった電荷がコンデンサC1に蓄積され始め、コンデンサC1の両端電圧が上昇する。結果、コンデンサC1の両端電圧が基準電圧Vrefを上回るとコンパレータCPの出力がLレベルからHレベルに転じる。これにより、トランジスタTr4がオンして、出力端T2から異常信号が出力される。
【0008】
今、上述した従来の異常検出装置1において、例えばメインFETQ11のオン抵抗Romnが10mΩ、メインFETQ11とセンスFETQ12とのオン抵抗の比を1:n=1000とする。イマジナリーショートによりOPアンプOP1の正相入力と逆相入力とが同電圧であれば、主流IMが10Aのとき、副流ISは下記の式(1)に示す値となる。
Ronm×IM=Ronm×n×IS
IS=IM/n=10A/1000=1mA …(1)
よって、主流IMが10Aを超えて流れ続けたときに異常検出するには、定電流ICC=1mAに設定すればよい。しかしながら、OPアンプOP1の正相入力と逆相入力との間に入力オフセット電圧Vos1が±10mV生じていると、メインFETQ11のソース電圧VsmがセンスFETQ12のソース電圧Vssよりも入力オフセット電圧Vos1だけ高くなるため、副流ISは下記の式(2)に示す値となる。
Ronm×IM+Vos1=Ronm×n×IS
IS=(IM/n)+Vos1/(Ronm×n) …(2)
上記式(2)にIM=10A、n=1000、Vos1=±10mV、Ronm=10mΩの数値を代入すると、副流ISは1±0.1mAとなり10%ばらついてしまい、正確に検出電流を出力することができない、という問題があった。また、ここでは簡素化のためにメインFETQ11及びセンスFETQ12のオン抵抗の比を一定としたが、入力オフセット電圧Vos1のばらつきによりオン抵抗比もずれるので、実際の検出電流のばらつきはさらに大きくなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2005−102474号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
そこで、本発明は、第1演算増幅器の入力オフセット電圧のばらつきの影響を受けない検出電流を出力することにより、電流検出精度の向上を図ることができる電流検出装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上述した課題を解決するためになされた請求項1に記載の発明は、直流電源と負荷との間に接続された第1電界効果トランジスタと、ドレイン及びゲートがそれぞれ前記第1電界効果トランジスタのドレイン及びゲートに接続された第2電界効果トランジスタと、前記第1電界効果トランジスタ及び前記第2電界効果トランジスタのソース電圧がそれぞれ正相入力及び逆相入力に供給されると共に出力が逆相入力にフィードバックされた第1演算増幅器と、を備え、前記直流電源から負荷に流れる負荷電流に応じた検出電流が前記第2電界効果トランジスタのソースから出力される電流検出装置において、前記第2電界効果トランジスタのソース電圧が正相入力に供給されると共に出力が逆相入力にフィードバックされた増幅率1の第2演算増幅器をさらに備え、前記第2演算増幅器の出力を前記第1演算増幅器の逆相入力に接続して、前記第2電界効果トランジスタのソース電圧が前記第2演算増幅器を介して前記第1演算増幅器の逆相入力に供給されるように設けられたことを特徴とする電流検出装置に存する。
【0012】
請求項2記載の発明は、前記第1演算増幅器及び前記第2演算増幅器が、同一の内部回路から構成され、かつ、同一の半導体基板上に設けられていることを特徴とする請求項1に記載の電流検出装置に存する。
【発明の効果】
【0013】
以上説明したように請求項1記載の発明によれば、検出電流に含まれる第1演算増幅器の入力オフセット電圧成分から第2演算増幅器の入力オフセット電圧成分を差し引いて第1演算増幅器の入力オフセット電圧成分を打ち消すことができる。このため、第1演算増幅器の入力オフセット電圧のばらつきの影響を受けない検出電流を出力することができ、電流検出精度の向上を図ることができる。
【0014】
請求項2記載の発明によれば、第1演算増幅器の入力オフセット電圧と第2演算増幅器の入力オフセット電圧とをほぼ同じ値にすることができるため、より一層、第1演算増幅器の入力オフセット電圧のばらつきの影響を受けない検出電流を出力することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の電流検出装置を組み込んだ異常検出装置の一実施形態を示す回路図である。
【図2】従来の異常検出装置の一例を示す回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の電流検出装置を組み込んだ異常検出装置を図1に基づいて説明する。同図に示すように、異常検出装置1は、マルチソース型のMOSFETQ1と、トランジスタTr1と、第2演算増幅器としてのOPアンプOP2と、第1演算増幅器としてのOPアンプOP1と、カレントミラー回路11と、コンパレータCPと、トランジスタTr4と、を備えている。上記MOSFETQ1は、第1電界効果トランジスタとしてのメインFETQ11と、第2電界効果トランジスタとしてのセンスFETQ12と、から構成されている。メインFETQ11は、直流電源としての車載バッテリVBと負荷10との間に設けられている。センスFETQ12は、ドレイン及びゲートがそれぞれメインFETQ11のドレイン及びゲートに接続されている。
【0017】
上述したメインFETQ11及びセンスFETQ12は、素子面積がn:1の比率となるように、同一の半導体基板上に作られている。このMOSFETQ1は、メインFETQ11及びセンスFETQ12のゲート−ソース間電圧を互いに等しくすると、メインFETQ11のソースから流れる電流とセンスFETQ12のソースから流れる電流の比、すなわち分流比がnとなる特性がある。上記トランジスタTr1は、センスFETQ12のソース−グランド間に設けられている。
【0018】
上述したOPアンプOP1及びOP2は、同一の内部回路から構成され、かつ、同一の半導体基板上に設けられている。上記OPアンプOP2は、センスFETQ12のソース電圧Vssが正相入力に接続され、出力が逆相入力にフィードバックされている増幅率1の増幅器である。このようにOPアンプOP2の出力をフィードバックすることによって、OPアンプOP2の正相入力と逆相入力との電圧がほとんど同じになるイマジナリーショート状態となり、OPアンプOP2の出力からは増幅率1で増幅されたセンスFETQ12のソース電圧Vssが出力される。
【0019】
また、上記OPアンプOP1は、メインFETQ11のソース電圧Vsmが正相入力に供給され、上述したOPアンプOP2を介してセンスFETQ12のソース電圧Vssが逆相入力に供給されている。このOPアンプOP1の出力は、トランジスタTr1のベース−コレクタ間、OPアンプOP2を介して逆相入力にフィードバックされている。このようにOPアンプOP1の出力をフィードバックすることによって、OPアンプOP1の正相入力と逆相入力との電圧がほとんど同じになるイマジナリーショート状態となる。このため、メインFETQ11及びセンスFETQ12のゲート−ソース間電圧を等しくすることができ、センスFETQ12のソースからメインFETQ11のソース電流の1/nの電流を出力できる。
【0020】
コンデンサC1は、センスFETQ12とグランドとの間に設けられ、副流ISによって充電される。上記カレントミラー回路11は、コンデンサC1に蓄積された電荷によって定電流ICCを発生する。カレントミラー回路11は、コレクタにコンデンサC1の車載バッテリVB側の一端が接続され、エミッタがグランドに接続されているトランジスタTr2と、ベースにトランジスタTr2のベースが接続され、コレクタに抵抗R2を介して電源Vccが接続され、エミッタがグランドに接続されているトランジスタTr3と、から構成されている。上述した定電流ICCは以下の式(3)で表される。
ICC=(Vcc−Vbe)/R2 …(3)
但しVbeはトランジスタTr3のベース−エミッタ間順方向電圧。
【0021】
さらに、コンデンサC1の車載バッテリVB側の一端は、コンパレータCPの正相入力に接続されている。このコンパレータCPの逆相入力には、基準電圧Vrefが供給されている。コンパレータCPの出力は、トランジスタTr4のベースが抵抗R3を介して接続されている。このトランジスタTr4は、コレクタに抵抗R4を介して電源Vccが接続され、エミッタがグランドに接続されている。また、上述した抵抗R4とトランジスタTr4のコレクタとの間には異常信号S2の出力端T2が設けられている。従って、コンデンサC1の両端が基準電圧Vrefを超え、コンパレータCPがHレベルの信号を出力すると、トランジスタTr4がオンして、出力端T2からHレベルの異常信号S2を出力する。
【0022】
次に、上述した構成の異常検出装置1の動作について説明する。まず、入力端T1に駆動信号S1を入力すると、メインFETQ11及びセンスFETQ12のドレイン−ソース間が通電する。これにより、メインFETQ11及びセンスFETQ12のドレインには、車載バッテリVBからの負荷電流ILが流れ込む。このとき、OPアンプOP1及びOP2は、メインFETQ11及びセンスFETQ12のソース電圧が同一になるように働く。これにより、上述したメインFETQ11及びセンスFETQ12は、負荷電流ILを分流比nで主流IMと副流ISとに分流する。そして、メインFETQ11のソースからは主流IMが負荷10に向かって供給され、センスFETQ12のソースからは副流ISがコンデンサC1に向かって供給される。
【0023】
なお、上述した負荷電流IL、副流IS、主流IMの関係は以下の式(4)で表される。
IL=IM+IS …(4)
また、主流IMと副流ISと分流比nとの関係は以下の式(5)で表される。
IS=IM/n …(5)
以上のことから明らかなようにコンデンサC1には、負荷10に流れ込む主流IMの1/nの副流ISが供給される。
【0024】
今、負荷電流ILに異常がなく、副流ISが定電流ICC以下である場合は、コンデンサC1に蓄積される電荷はカレントミラー回路11により全て放電されてしまう。このため、副流ISによってコンデンサC1は充電されず、コンデンサC1の両端電圧は0Vのままである。これに対して、車載バッテリVBから負荷10までの間の電源線にデッドショートやレアショートが生じ、負荷電流ILが上昇すると、これに伴い副流ISも上昇する。そして、その結果、副流ISが定電流ICCを超えると、カレントミラー回路11の放電能力を超えた副流ISが供給されるため、カレントミラー回路11により放電しきれなかった電荷がコンデンサC1に蓄積され始め、コンデンサC1の両端電圧が上昇する。
【0025】
なお、副流ISが定電流ICCを越え始めてから時間t経過後のコンデンサC1の両端電圧VC1は以下の式(6)で表される。
VC1=(IS−ICC)×t/C1 …(6)
両端電圧VC1の上昇の結果、両端電圧VC1が基準電圧Vrefを上回ると、コンパレータCPの出力がLレベルからHレベルに転じる。これにより、トランジスタTr4がオンして、出力端T2からHレベルの異常信号S2が出力される。
【0026】
このとき、副流ISが定電流ICCを越え始めてから異常信号S2を出力するまでの時間tstは、以下の式(7)で表される。
tst=Vref×C1/{IS−ICC}
=Vref×C1/{IM/n−ICC} …(7)
【0027】
ところで、上述した式(5)は、OPアンプOP1の入力オフセット電圧Vos1、OPアンプOP2の入力オフセット電圧Vos2が0のときの値であった。次に、OPアンプOP1、OP2にそれぞれ入力オフセット電圧Vos1、Vos2が生じているときの副流ISを求めてみる。今、メインFETQ11のオン抵抗をRonm、センスFETQ12のオン抵抗をRonsとすると、メインFETQ11のソース電圧Vsmは下記の式(8)で表される。
Vsm=VB−Ronm×IM …(8)
また、センスFETQ12のソース電圧Vssは下記の式(9)で表される。
Vss=VB−Rons×IS …(9)
【0028】
上述したセンスFETQ12のソース電圧Vssは、OPアンプOP2により1倍に増幅されて、OPアンプOP1の逆相入力に供給される。このとき、OPアンプOP2に入力オフセット電圧Vos2が生じていると、OPアンプOP2の出力は、ソース電圧Vssを1倍に増幅してさらに入力オフセット電圧Vos2を加算した値となる。結果、下記の式(10)に示すOPアンプOP2の出力がOPアンプOP1の逆相入力Vin(−)に供給される。
Vin(−)=Vss+Vos2 …(10)
式(10)に式(9)を代入すると式(11)が得られる。
Vin(−)=VB−Rons×IS+Vos2 …(11)
【0029】
一方、OPアンプOP1の正相入力Vin(+)には、メインFETQ11のソース電圧Vsmが供給されている。よって、下記の式(12)が得られる。
Vin(+)=Vsm …(12)
OPアンプOP1とトランジスタTr1とのフィードバック作用により、OPアンプOP1の逆相入力Vin(−)と正相入力Vin(+)と電圧が一致するようにOPアンプOP1が動作するが、下記の式(13)に示すように実際にはOPアンプOP1の逆相入力Vin(−)と正相入力Vin(+)との間に入力オフセット電圧Vos1の電圧差が生じる。
Vin(−)=Vin(+)+Vos1…(13)
この式(13)に式(12)を代入すると式(14)が得られる。
Vin(−)=Vsm+Vos1 …(14)
上記式(14)に式(8)、(11)を代入してまとめると、下記の式(15)が得られる。
IS=(Ronm/Rons)×IM+(Vos2−Vos1)/Rons …(15)
【0030】
上述した入力オフセット電圧Vos1、Vos2は、主に素子の配向のズレと素子を形成するための不純物の濃度がズレることにより生じる。そのため、上述したようにOPアンプOP1及びOP2を同一の内部回路から構成し、かつ、同一の半導体基板上に設けることにより、OPアンプOP1及びOP2が互いにごく近い場所で同じ配向とされる。これにより、OPアンプOP1とOPアンプOP2とには同じような入力オフセット電圧が生じる(∵Vos1≒Vos2)。そのため、式(15)の第2項は消えて副流ISはメインFETQ11とセンスFETQ12のオン抵抗比(Ronm/Rons)のみによって決まり、OPアンプOP1の入力オフセット電圧Vos1のバラツキの影響を受けなくなる。
【0031】
また、式(9)、(11)、(14)より、
Vss+Vos1=Vsm+Vos2 …(16)
となるが、上述したようにVos1とVos2とが等しいのでVssとVsmも等しくなることがわかる。同一の半導体基板上に作られたMOSFETQ1は同一工程を経て作られるため、同じチャンネル温度で同じゲート電圧が与えられていればすべて同じオン抵抗を持つとみなすことができる。メインFETQ11とセンスFETQ12はゲートが共通で、ソース電圧も等しくなるので、オン抵抗の比がセル数の比nの逆数と一致する。そのため式(15)は
IS=IM/n …(17)
となり、nは設計で決まる値なので副流ISはMOSFETQ1のオン抵抗のばらつきの影響も受けなくなる。ゲート電圧が大きいときはオン抵抗のばらつきに対する入力オフセット電圧の影響は小さいが、ゲート電圧が小さくMOSFETQ1が飽和領域で動作しているようなときは入力オフセット電圧の影響が無視できなくなるので、本発明の効果が大きい。
【0032】
なお、上述した実施形態では、定電流ICCが温度によりほとんど変化しないようにしている。しかしながら、例えば抵抗R2に正の温度特性を持たせるなどして、周囲温度が高くなったときは定電流ICCを減少させて、カレントミラー回路11による放電量を低くし、早めに異常検出ができるようにしてもよい。
【0033】
また、MOSFETQ1として、加熱遮断機能をもたせたものを用いてもよい。具体的には、メインFETQ11及びセンスFETQ12のゲート−ソース間に遮断用FETを設ける。さらに、温度が上がるに従って下がるダイオードの順方向電圧と基準電圧とを比較するコンパレータの出力を遮断用FETのゲートに供給する。これにより、温度が上がってダイオードの順方向電圧が基準電圧を下回るとコンパレータが遮断用FETを導通して、メインFETQ11及びセンスFETQ12のゲート−ソース間が短絡される。そして、メインFETQ11及びセンスFETQ12がオフになるため、負荷電流ILの供給が遮断される。一方、温度が下がってダイオードの順方向電圧が基準電圧を上回るとコンパレータが遮断用FETを非導通状態にする。これにより、メインFETQ11及びセンスFETQ12のゲート−ソース間の短絡が解除されるため、再びメインFETQ11及びセンスFETQ12がオンになって、負荷電流ILが供給される。
【0034】
また、上述した実施形態では、過電流が流れると異常信号S2を発生するものであったが、本発明はこれに限ったものではない。例えば、コンパレータCPの出力をフリップフロップ回路に入力し、フリップフロップ回路のQ出力を入力端T1とグランドとの間に設けたトランジスタのベースに供給するようにしてもよい。以上のように構成することにより、コンパレータCPからHレベルの異常信号S2が出力されると、フリップフロップ回路のQ出力もHレベルとなり、トランジスタがオンして入力端T1がグランドに短絡される。これにより、メインFETQ11及びセンスFETQ12がオフ状態となり、負荷電流ILが遮断される。Q出力はリセット信号が供給されるまでHレベルを維持するので、一旦異常が検出されると負荷電流ILの供給が遮断され、その状態を保持することができる。また、異常検出装置1の一部又は全部をシリコンチップに集積化してもよい。
【0035】
また、前述した実施形態は本発明の代表的な形態を示したに過ぎず、本発明は、実施形態に限定されるものではない。即ち、本発明の骨子を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。
【符号の説明】
【0036】
10 負荷
Q11 メインFET(第1電界効果トランジスタ)
Q12 センスFET(第2電界効果トランジスタ)
VB 車載バッテリ(直流電源)
OP1 OPアンプ(第1演算増幅器)
OP2 OPアンプ(第2演算増幅器)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
直流電源と負荷との間に接続された第1電界効果トランジスタと、ドレイン及びゲートがそれぞれ前記第1電界効果トランジスタのドレイン及びゲートに接続された第2電界効果トランジスタと、前記第1電界効果トランジスタ及び前記第2電界効果トランジスタのソース電圧がそれぞれ正相入力及び逆相入力に供給されると共に出力が逆相入力にフィードバックされた第1演算増幅器と、を備え、前記直流電源から負荷に流れる負荷電流に応じた検出電流が前記第2電界効果トランジスタのソースから出力される電流検出装置において、
前記第2電界効果トランジスタのソース電圧が正相入力に供給されると共に出力が逆相入力にフィードバックされた増幅率1の第2演算増幅器をさらに備え、
前記第2演算増幅器の出力を前記第1演算増幅器の逆相入力に接続して、前記第2電界効果トランジスタのソース電圧が前記第2演算増幅器を介して前記第1演算増幅器の逆相入力に供給されるように設けられた
ことを特徴とする電流検出装置。
【請求項2】
前記第1演算増幅器及び前記第2演算増幅器が、同一の内部回路から構成され、かつ、同一の半導体基板上に設けられている
ことを特徴とする請求項1に記載の電流検出装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−199829(P2010−199829A)
【公開日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−40890(P2009−40890)
【出願日】平成21年2月24日(2009.2.24)
【出願人】(000006895)矢崎総業株式会社 (7,019)
【Fターム(参考)】