説明

電磁駆動装置及びこれを用いた光量調整装置

【課題】中空筒状に形成した磁石ロータの外周に配置した外側ヨークと中空内に配置した内側ヨークで励磁コイルに生起した磁界を誘導して回転力を付与する際に、ロータの軸受構造が簡単で、かつ好適な磁気回路を形成する。
【解決手段】中央を回転中心とする中空円筒形状の永久磁石から成るロータと、ロータの内周側に配置された内側ヨークと、ロータの外周側に配置された外側ヨークと、内側ヨークと外側ヨークとを励磁するコイルとを備え、外側ヨークは断面凹形状を成し上記永久磁石の磁極を挟む位置に対峙した2つの磁極誘導片を有し、内側ヨークは一端が前記外側ヨークの断面凹形状底部に固定され、他端に上記ロータの内周側を貫通する断面円形状の軸部を有し、ロータはその中空円筒内周壁に前記内側ヨークの軸部と係合する軸受部を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はビデオカメラ、スチルカメラ等の撮像装置、又はプロジェクタ、その他の各種光学機器に用いられるシャッタ、絞り装置などの光量調整装置に係わり、例えば光学レンズの鏡筒に組み込まれた羽根部材で撮影光量若しくは投影光量を遮閉するシャッタ装置或いは撮影光量若しくは投影光量を大小調整する光量調整装置およびこの羽根部材を開閉する電磁駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般にこれら光学機器に搭載されるシャッタ装置、絞り装置等の光量調整装置は、レンズ鏡筒に組み込まれた基板(地板)に薄板状の羽根部材を開閉自在に取付け、この羽根部材を開閉することによって光量を遮蔽するシャッタ装置或いは羽根部材を開閉して光量を調整する絞り装置として広く知られている。
【0003】
そして、この羽根部材は1枚若しくは複数枚で構成され、基板の光軸開口の周囲にピンなどの軸で回動自在か若しくは摺動(スライド)自在に支持され、電磁駆動装置で開閉駆動されるようになっている。そして、この電磁駆動装置は永久磁石を備えたロータと、このロータに回転力を付与する励磁コイルとから構成されている。最近特にこれらの光量調整装置は光学機器の小型化、軽量化が進むに伴って消費電力が小さく、しかも小型で軽量なものが要求されるに至っている。
【0004】
従来このような駆動装置は外周にコイルを巻回するコイル枠の内部に円筒形状の永久磁石を回動自在に支持してロータを構成し、このコイル枠の外周にコイルを巻き、そのコイルの外周をヨークで磁気的にシールドする構造が広く採用されている。このような構成の装置は大型化、特に外周にコイル、その内側に磁石ロータ、更にその内側にロータの回転軸が配置されるコア部分の外径が大きくなる問題を有している。
【0005】
そこで中空筒状に形成した磁石ロータと、環状に巻回した励磁コイルとを軸方向上下に並べて配置し、この磁石ロータの周囲に軟磁性材のヨークで励磁コイルの磁界を誘導して磁極を形成する方法が例えば特許文献1及び特許文献2などで提案されている。これらの特許文献に提案されている装置は磁石ロータを中空円筒形状に形成し、このロータの中心開口部に内側ヨークを、ロータ外周部に外側ヨークをそれぞれロータの磁石を囲むように配置している。そして磁石ロータと異なる位置に配置したコイルから磁力を内側ヨークと外側ヨークで磁石ロータの周囲に誘導して回転力を生起するようにしている。
【0006】
このような電磁駆動装置は、薄板筒状の外側ヨークの内側に中空の磁石ロータを配置し、この磁石ロータの内側に棒状の内側ヨークを設ける構造のため、装置の外径を小さく小型化することが可能である。同時に磁石ロータは許容される装置外径に近い外周部で回転トルクを得る為小型でより大きい回転力を生起することが出来る。また外側ヨーク、磁石ロータ、内側ヨークの順に構成される磁気回路は外側ヨークと磁石ロータとの間のギャップ及び磁石ロータと内側ヨークとの間のギャップはロータの回転を許容する最小限に小さくすることが出来るため、磁気回路全体のパーミアンスが高く消費電力を小さくすることができる特徴がある。
【0007】
かゝる構造の電磁駆動装置にあっては磁石ロータを回転自在に支持するために次の構造を採用している。前掲特許文献1のものは中空筒状の永久磁石の中心部に配置した内側ヨークを中空に形成し、この内側ヨークの中心孔に磁石ロータの回転軸を貫通させ、この回転軸の両端を基板と外側ヨークとで軸受支持している。また前掲特許文献2のものは中空筒状の永久磁石の中心孔に円柱形状の内側ヨークを配置しこの内側ヨークの先端に位置する端面に軸受用の凹溝を形成している。そしてこの内側ヨークの端面に形成した凹溝と基板に形成した軸受孔とで磁石ロータの中心部に設けた回転軸の両端を軸受支持している。
【特許文献1】特開2001−298936号公報
【特許文献2】特開2002−049076号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
前述の特許文献1に開示されている軸受構造は磁石ロータの内側に内側ヨークを設け、更にこの内側ヨークの内側にロータの回転軸を設けている為、装置は比較的大径で大型となる。また環状に形成した内側ヨークとロータ中心に形成した回転軸との位置合せが困難でロータの回転によって磁石と内側ヨークとの磁気ギャップが変化する等装置の小型化には問題を有していた。
【0009】
また前掲特許文献2に提案される軸受構造は円柱形状の内側ヨークの軸端面に軸受用の凹溝を形成している。この為内側ヨーク先端の端面がV字状に切欠かれて外側ヨークとの間でループ状に形成される磁力線が減衰する。つまりこの凹溝によって磁気回路のパーミアンスが著しく低下し、外側ヨークと内側ヨークとの間に形成される磁気回路に問題を生ずる欠点があった。更に特許文献1及び2のいずれの軸受構造であってもロータ軸径を小さくすると軸受部の加工が困難であり、摩擦など耐久性にも問題がある。
【0010】
そこで本発明は、中空円筒形状の磁石ロータを内側ヨークで回動自在に支持する際に、その軸受構造を磁石ロータと内側及び外側ヨークそれぞれに形成される磁気ギャップを安定して正確に維持することができ、また磁気回路のパーミアンスも低下することがなく小型で大きな出力の得られる電磁駆動装置の提供をその課題としている。更に本発明は電磁駆動装置の小型化を図り、以って小型コンパクトで特に装置外径の小さい光量調整装置の提供をその課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は上記課題を達成するため以下の構成を採用したものである。まず、本発明に係わる電磁駆動装置は、中央に回転中心を有する中空円筒形状の永久磁石から成るロータと、上記ロータの内周側に配置された内側ヨークと、上記ロータの外周側に配置された外側ヨークと、上記内側ヨークと外側ヨークとを励磁するコイルとから構成する。
【0012】
そして、上記外側ヨークは上記永久磁石の磁極を挟む位置で互いに対向する一対の磁極誘導片を有する軟磁性部材で構成する。また、上記内側ヨークは、少なくともその一部に断面円形状の軸部を設けて上記磁極誘導片の中央部に固定配置する。そこで上記ロータには外部に回転を伝達する伝動部材を一体に設けると共に、その内周面に上記内側ヨークの軸部に適合する軸受部を備え、上記ロータの軸受部を上記内側ヨークの軸部に回動自在に嵌合して支持する。斯かる構成によって上記課題を達成することが出来る。
【0013】
また、前記外側ヨークを磁極誘導片を有する断面凹形状の円筒部材で構成すると共に、前記内側ヨークを軸状部材で構成し、その一端を上記外側ヨークの底部に固定支持する。そしてこの内側ヨークの他端と上記外側ヨークの端部(断面凹形状の開放端)をフレーム部材に取付けて支持する。そこで前記ロータを前記軸受部を上記内側ヨークに形成した前記軸部に嵌合して支持する。このように駆動装置をユニット化することによってロータは比較的大径の内側ヨークに嵌合支持される。尚、ここでフレーム部材は装置を取付ける器機のシャーシ部材であったり駆動装置としてユニット化したりする場合にはキャップ部材であるなど適宜の部材で有ればよい。
【0014】
更に、前記コイルは前記内側ヨークに嵌合したコイル枠に巻回することによって構成し、前記ロータには前記フレーム部材と上記コイル枠にそれぞれ当接する係合面が設けられ、この係合面によってスラスト方向の移動を規制する。なおこの場合にこの係合面にリブなどの突起を構成することによって摩擦の小さい円滑な運動が得られる。
【0015】
また、前述の構成において、前記外側ヨークは非磁性体から成るフレーム部材に取付固定し、前記コイルは前記内側ヨークに嵌合したコイル枠に巻回する。その上で前記ロータは上記フレーム部材と上記コイル枠との間に配置され、該フレーム部材とコイル枠にそれぞれ摺動自在に当接する係合面を備えることによってスラスト方向の移動を規制する。
【0016】
尚、前記内側ヨークの軸部と前記ロータの軸受部との嵌合面は少なくとも一方が非磁性材料で構成することは勿論である。更に、前記ロータは中空円筒形状の永久磁石と、この永久磁石を保持する非磁性材料からなるホルダー部材で構成し、この場合前記軸受部はこのホルダー部材に形成する。また、前記ロータは、マグネット樹脂材料をモールド型で前記永久磁石と前記軸受部とを一体成形して構成し、この軸受部と嵌合する内側ヨークの軸受摺動面は非磁性材で形成することによってその製作も容易となる。
【0017】
次に本発明に係わる光量調整装置の構成は、光軸開口を有する基板と、この基板に取付けられ上記光軸開口を規制する羽根部材と、この羽根部材を駆動する電磁駆動装置とを備える。そしてこの電磁駆動装置に上述の構成を採用する。また、前記外側ヨークの2つの磁極誘導片先端部は非磁性体から成るフレーム部材にそれぞれ固定し、前記コイルは前記内側ヨークに嵌合されたコイル枠に巻回する。そして前記ロータは上記フレーム部材と上記コイル枠との間に配置する。
【発明の効果】
【0018】
本発明は中空円筒形状の永久磁石から成るロータと、このロータの中空内に配置した内側ヨークとの軸受構造を内側ヨークに断面円形状の軸部を形成し、この軸部をロータ中空内に形成した軸受部と嵌合し、その軸部に対し該軸受部が摺動自在に支持したものであるから次の効果を奏する。
【0019】
内側ヨークはロータ中空内を軸部が貫通し、その軸部外周面でロータの軸受部を摺動自在に支持することとなり、内側ヨークを小径にしても軸部はその製作が容易で、その軸部に対しロータの軸受部を摺動可能に嵌合支持することで中心ズレ等の位置ズレを抑え確実かつ円滑に軸受けされ、装置の小型化が可能である。また内側ヨークは軸受けの為に端面が切欠かれることがなく、磁気回路のパーミアンスの低下を招くことがない。更に内側ヨークの外周壁に形成される軸部と中空のロータ内周壁に形成される軸受部とを嵌合している為ロータの磁石と内側ヨークとの磁気ギャップを正確に保持することができ、ロータの円滑な運動を得ることが可能である。
【0020】
また、本発明はこのような電磁駆動装置の小型化によってこれを用いた光量調整装置を小型かつ軽量に構成することも可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下図示の好適な実施の形態に基づいて本発明を詳述する。図1は本発明を光量調整装置全体の光量調整部側から見た外観斜視図、図2は本発明を光量調整装置全体の図1の裏側で電磁駆動装置側から見た外観斜視図、図3は図1における光量調整部の分解斜視図、図4は図2における電磁駆動装置の分解斜視図、図5は図4において紙面手前から中心部より右側の1/4部分の断面を平面状に示した電磁駆動装置の中央縦断面図である。
【0022】
図示の光量調整装置は各種カメラ装置の撮像鏡筒に組込まれる光量調整部Aと、この光量調整部Aの羽根部材(絞り羽根20、シャッタ羽根30)を開閉駆動する電磁駆動装置B(絞り羽根駆動用電磁駆動装置B1、シャッタ羽根駆動用電磁駆動装置B2)とから構成されている。その光量調整部Aは図3で示す通りカメラ装置の鏡筒に組込まれる基板40と、この基板40に組込まれた絞り羽根20とシャッタ羽根30と、これら絞り羽根20とシャッタ羽根30を基板40内に保持する押え板10とから構成されている。
【0023】
その基板40は、樹脂のモールド成形或いはアルミニウム等の非磁性材料から成る金属板で適宜形状に形成され、撮像光軸Y−Yと一致する光軸開口41を備えている。この基板40はカメラ装置のレンズ鏡筒に撮影光軸Y−Yと直交するように組込まれ、光軸開口41の中心が撮影光軸Y−Yと一致する。そしてこの基板40には後述の電磁駆動装置Bが取付けられる取付部42(図2参照)と、絞り羽根20とシャッタ羽根30を案内するガイドリブ43とが一体に形成してある。従ってこの基板40には表面側に絞り羽根20とシャッタ羽根30が取付けられ、背面側に電磁駆動装置Bが取付けられることとなる。
【0024】
また押え板10は、前述のように絞り羽根20とシャッタ羽根30を基板40に対し回動可能状態に保持するとともに、撮像光軸と一致する基板40の光軸開口41と相似形で若干小さな光学系の開放径を決めるための光学開口11を形成している。
【0025】
また絞り羽根20は、押え板10の光学開口11の開口径を大小に規制する為に1枚若しくは複数枚の羽根部材で構成され、図示のものは1枚の絞り羽根20で撮影光軸の開口径を全開状態と小絞り状態の2段階に調整する場合を示している。この絞り羽根20は黒色顔料を含侵したポリエステル樹脂のフィルム状板材をプレス打抜きで形成され、小絞り開口21と後述の伝動部材を嵌合する伝動ピン連結孔22と羽根支持軸(後述)に嵌合する回動軸孔23が形成されている。
【0026】
このように絞り羽根20には押え板10の光学開口11の開口径より小さい口径の小絞り開口21が形成され、回動軸孔23を回転中心として基板40に回動可能に取付けられ、後述する電磁駆動装置B1の伝動ピン61が嵌合する長孔(伝動ピン連結孔)22がその伝動ピン61によって変位させられることで開閉動作されられることとなる。従って、絞り羽根20が回動軸孔23を中心に回動し、基板40の光軸開口41に位置するときは絞り羽根20の小絞り開口21で押え板10の光学開口11の開口径を絞った状態として撮影光量が規制され小絞り状態となる。逆に絞り羽根20が光軸開口41から退避した位置(姿勢)のとき撮影光量は押え板10の光学開口11の口径(全開状態)で規制される。
【0027】
尚、上述の絞り羽根20は図示のように1枚の羽根で構成する外、複数枚の羽根を選択的に光軸開口41に臨ませることによって大中小複数の開口径を形成するように構成しても、或いは光軸開口41に複数枚の羽根を除々に開閉することによって無段階に光軸開口41を大小調整するように構成しても良い。前者の複数枚の羽根を光軸開口41に選択的に臨ませる場合は、基板40に複数の羽根を重ね合せてピンなどで回動自在に取付け、この複数の羽根に後述する駆動装置を例えばカム機構で選択的に連結するように構成する。また後者の光軸開口41に臨ませた複数枚の羽根で無段階に光量を調整する場合は光軸開口41を複数の羽根の外縁で覆うように配列し、この羽根を同時に駆動装置で移動することによって撮影光量は大径から小径まで任意に調整することができる。
【0028】
またシャッタ羽根30には押え板10の光学開口11の開口径を覆い被せ得るだけの遮蔽域31を形成し、回動軸孔32を回転中心として基板40に回動可能に取付けられ、後述する電磁駆動装置B2の伝動ピン61が嵌合する長孔(伝動ピン連結孔)33がその伝動ピン61によって変位させられることで開閉動作されられることとなる。
【0029】
従って、シャッタ羽根30が回動軸孔32を中心に回動し、基板40の光軸開口41に位置するときはシャッタ羽根30の遮蔽域31で押え板10の光学開口11を閉鎖状態となる。逆にシャッタ羽根30が光軸開口41から退避した位置(姿勢)のとき押え板10の光学開口11を全開状態とする。尚、上述のシャッタ羽根30は図示のように1枚の羽根で構成する外、複数枚の羽根で構成しても良い。
【0030】
次に電磁駆動装置Bについて図4乃至図7により説明する。この電磁駆動装置Bは絞り羽根駆動用電磁駆動装置B1とシャッタ羽根駆動用電磁駆動装置B2とで構成され、図2で見る様に全く同一な電磁駆動装置が基板40に対し互いに向き合った方向で取付けられている。その電磁駆動装置B(B1、B2)は図4で示す様に、この電磁駆動装置Bを前述の光量調整部Aの基板40に取付けるためのフレーム部材50(以下取付部材と云う)と、永久磁石70とホルダー部材60(以下支持部材と云う)から成るロータMと、このロータMを回動自在に軸承する内側ヨーク90と、ロータMの周囲に磁界を形成する外側ヨーク100と、この内側ヨーク90と外側ヨーク100を適宜励磁する磁界を生起する励磁コイル81を巻廻するコイル枠体80とから構成されている。
【0031】
そこで、まずロータMの永久磁石70は例えばネオジウム希土類プラスチックなどの強磁性材料で中空円筒形状に形成する。そしてこのロータMは液晶ポリマー等の樹脂材料で支持部材60によりその中空内周壁を支持するようにインサート成形で一体に取付けられる。この支持部材60は永久磁石70を保持する為のフランジ部62と、円筒形状の永久磁石70の中心(図5X−X)が一致するように内側内周面が非磁性材料からなる摺動軸受部64を備えた軸受63と、中心(図5X−X)から適宜距離を隔てた位置に装置外部に突出するように立設されたピン状の伝動部材61(以下伝動ピンという)を樹脂成形で一体に備えている。
【0032】
従って、ロータMは中空円筒形状の永久磁石70を支持する軸受63の摺動軸受部64の中空内を内側ヨーク90が貫通し、ロータMはこの内側ヨーク90の軸部91の外周を回転軸として回動可能に支持される。尚、非磁性材料からなる摺動軸受部64を備えた軸受63が磁性材料からなる内側ヨーク90の軸部91の外周面を摺接回動することで、磁性材料同士の摺接状態と比較して回転を円滑にすることが出来る。また、摺動軸受部64側を非磁性材料としたが内側ヨーク90の軸部91の外周表面部を非磁性材料で形成しても良いし、両者摺接部を非磁性材料で形成しても良い。
【0033】
尚、このロータMは支持部材60と永久磁石70との2体構造となっているが樹脂マグネット材で一体成形し、その支持部材60に摺動軸受部64を形成しても良い。この様に一体成形することで、別体同士を接着、インサート成形等で一体化した構造のものに比べ強固で、特に成形管理のみで寸法精度を確保でき、内側ヨーク90の軸部91との嵌合精度を上げることが出来、両者の寸法精度を詰めることが出来、如いては装置の小型化することが出来る。
【0034】
また上記ヨーク90、100はロータMの永久磁石70を挟むように円筒中空内に位置する内側ヨーク90と永久磁石70の外周に位置する外側ヨーク100とで構成される。内側ヨーク90及び外側ヨーク100は鉄などの軟磁性材で形成され、外側ヨーク100は断面凹形状を成し対向する2つの磁極誘導片101、102を有している。内側ヨーク90はロータMの摺動軸受部64にその先端部が貫通し、その外周面を該摺動軸受部64が摺動回転し得る断面円形状の軸部91が形成され、その内側ヨーク90の一端が外側ヨーク100の断面凹形状の底面部となる固定部103(図5参照)でカシメ、溶接等によって一体的に連結されている。
【0035】
つまり外側ヨーク100は円筒形状に形成されるロータMを内包するような円筒形状に形成され底壁中央に内側ヨーク90が固定されている。また外側ヨーク100は永久磁石70の外周に対向した磁極を形成するように櫛歯形状に複数片で構成され、図示のものは永久磁石70のNS磁極と対峙しその永久磁石70を挟んで対向する位置に一対設けてある。このように内側ヨーク90と外側ヨーク100はロータMの永久磁石70の周囲に磁界を誘導するように鉄系材料などの軟磁性材料で形成され、また外側ヨーク100に内側ヨーク90をカシメその他の固定手段で固定することによりこの両者は磁気的に連結され、同時に内側ヨーク90を外側ヨーク100で支持して構造体としての強度を保っている。
【0036】
そしてこの内側ヨーク90には励磁コイル81が捲廻される。図示のものは液晶ポリマー等の樹脂材料で形成したコイル枠体80に導電線を捲廻して励磁コイル81を形成し、この励磁コイル81を内ヨーク90の固定部92に嵌合して励磁コイル81が構成してある。従って励磁コイル81に通電するとこの励磁コイル81に生起した磁界は外側ヨーク100と内側ヨーク90で誘導されロータMの永久磁石70を挟んで対向する磁極が形成されることとなる。
【0037】
尚、図示のコイル枠体80は軸形状の内側ヨーク90に挿入され、この内側ヨーク90の図5下端部93が外側ヨーク100にカシメ、溶接、その他固定手段によって固定されている。従ってコイル枠体80は内側ヨーク90に支持された状態で外側ヨーク100に取付けられることとなる。図示94は内側ヨーク90に形成されたコイル枠体80を支持するフランジである。そして外側ヨーク100の磁極誘導片101、102は取付部材50に次のように固定される。
【0038】
取付部材50は非磁性材からなる金属シート材をプレス加工により成形したもので、その取付部材50にはヨーク取付用切欠部51が形成され、このヨーク取付用切欠部51に磁極誘導片101、102の先端が嵌合され位置決めされる。またこの取付部材50は中央部位の孔53で内側ヨーク90の軸部91の先端部95を軸承する。尚、取付部材50を非磁性材料としているのは、図6で示す様に内側ヨーク90、外側ヨーク100、永久磁石70とで磁気回路を形成させる為である。
【0039】
従って、取付部材50に外側ヨーク100が固定され、この外側ヨーク100に内側ヨーク90とコイル枠体80とが固定されていることとなる。そこでロータMは取付部材50とコイル枠体80との間で上記内側ヨーク90に回動自在に軸承される。またこのロータMには取付部材50とコイル枠体80との対峙する当接面側の両平面部に中心(図5X−X)の軸心方向に突出し、また回転時の摺動摩擦を軽減し円滑に回転させるためにリブ65、66が形成されている。尚、このリブ65、66は三箇所に形成された突起以外にドーナツ状に突出したガイドであっても良い。
【0040】
またコイル枠体80は前述の励磁コイル81を巻廻する枠体部82の他に、励磁コイル81の巻き始めと巻き終わりの口出し端部を数回巻きつけ絡げる口出し処理アーム83、84を樹脂成形により一体成形している。
【0041】
次にヨークとロータとの磁気回路について説明する。前述のロータMは中空円筒状の永久磁石70の外周に図7に示すようにN−S4極に着磁してあり、この永久磁石70を挟んで内側ヨーク90と外側ヨーク100が対向するように配置されている。内側ヨーク90は永久磁石70の中央中空部に棒状でその外周面に磁極を形成し、外側ヨーク100は永久磁石70の外周面に互いに対向する位置で2つの磁極誘導片101、102が磁極を形成するように配置されている。そしてこの内側ヨーク90と外側ヨーク100とは励磁コイル81に生起した磁力を誘導して永久磁石70を挟んで磁極を形成するようになっている。
【0042】
図中、図7(a)において、励磁コイル81に一方向の電流を供給すると外側ヨーク100の2つの磁極誘導片101、102にはN極が、内側ヨーク90にはS極が形成され、ロータMを図示反時計方向に回転させる。逆に図7(b)に示すように励磁コイル81に逆方向の電流を供給すると、外側ヨーク100の2つの磁極誘導片101、102にS極、内側ヨーク90にN極が形成されロータMを図示時計方向に回転させる。そこで前記ロータMには内側ヨーク90に回転を外部に伝達する伝動ピン61が一体に形成され、この伝動ピン61は取付部材50の切り欠き部52を介し基板40の長孔(スリット)44、45を貫通して絞り羽根20、シャッタ羽根30の伝動ピン連結孔である長孔22、33に嵌合してある。
【0043】
従って励磁コイル81に一方向の電流を供給するとロータMは反時計方向に、逆方向の電流を供給するとロータMは時計方向に回転し、このロータMの正逆方向の回転は伝動ピン61によって絞り羽根20、シャッタ羽根30に伝達されることとなる。そこで絞り羽根20、シャッタ羽根30は羽根支持軸46、47を中心に時計方向若しくは反時計方向に回動することとなり、絞り羽根20は図7(a)の状態で光軸開口41に位置して小絞り開口21が撮像光量(小絞り状態)となり、図7(b)の状態で光軸開口41から退避した位置に移動し、光軸開口41が撮像光量(全開状態)となる。また、シャッタ羽根30は図7(a)の状態で光軸開口41に位置して押え板10の光学開口11を開放し、図7(b)の状態で光軸開口41から退避した位置に移動して押え板10の光学開口11を閉鎖する。
【0044】
また、基板40に形成した長孔(スリット)44、45は図7に示すようにロータMを所定角度内で正逆方向に往復回動させる運動規制領域を形成する位置に配置されている。従ってロータMは基板40に形成した長孔(スリット)44、45の端面の範囲内で所定角度揺動し、伝動ピン61が絞り羽根20を全開位置と小絞り位置との間で開閉駆動し、シャッタ羽根30を開放位置と閉鎖位置との間で開閉駆動することとなる。
【0045】
尚、図示しないが絞り羽根20は全開位置(図7(b)の状態)と小絞り位置(図7(a)の状態)とで静止させる必要があるが、励磁コイル81に微弱電流を通電して各位置に保持する方法と、クローズバネで一方向に付勢し励磁コイル81への通電で羽根の位置を規制する方法、或いは周囲に磁気的に吸着する鉄片などを設けることが知られているがその何れの方法も採用可能である。
【0046】
次に本発明の作用を説明する。図6において励磁コイル81に電流を供給するとコイルに生起した磁界によって外側ヨーク100と内側ヨーク90は磁化される。このとき内側ヨーク90と外側ヨーク100は磁気的に一端が連結され、他端はロータMを介して対峙し、外側ヨーク100がN極の場合は内側ヨーク90がS極となり、外側ヨーク100がS極の場合は内側ヨーク90はN極となる。つまり外側ヨーク100と内側ヨーク90とはカシメ、溶接によって固定された一端で磁気的に連結され、棒状の内側ヨーク90先端と外側ヨーク100の磁極誘導片101、102先端には永久磁石70を挟んで対向する磁極(N−S極)が形成される。
【0047】
そこでロータMは図7に示すように中空円筒形状の外周に4極着磁されており、また伝動ピン61は、この分極部の1箇所に位置するように配置されている。つまり4極に着磁されたロータMは分極位置を中心に所定角度時計方向及び反時計方向に揺動するように前記基板40の長孔(スリット)44、45によって回動領域が規制されている為、図7(a)の磁極誘導片101、102がN極、内側ヨーク90がS極の時、磁極誘導片101、102のN極とロータMのS極が磁気吸引され、同時にロータMのN極は磁気反発されるのでロータMは反時計方向に回転する。このロータMの回転は伝動ピン61が基板40の長孔(スリット)44、45に当接する位置で停止される。この位置では励磁コイル81への通電が遮断(OFF)されても磁極誘導片101、102に近い(近接)位置にロータMの磁極(S極)が位置している為、ロータMの永久磁石70が磁性体である磁極誘導片101、102に吸引されその位置にホールドされる。
【0048】
次に励磁コイル81に逆方向の電流を供給すると図7(b)に示すように外側ヨーク100の磁極誘導片101、102にS極、内側ヨーク90にN極が形成される。この状態では磁極誘導片101、102のS極とロータMのN極が磁気吸引され、ロータMのS極は磁気反発されるのでロータMは時計方向に回転し、伝動ピン61が基板40の長孔(スリット)44、45に規制され停止するまで回転する。この状態で励磁コイル81の通電が遮断されても前述と同様ロータMのN極が磁性体である磁極誘導片101、102に吸引され伝動ピン61が長孔(スリット)44、45の端縁に係止された状態で保持される。このように外側ヨーク100をロータMを構成する永久磁石70の外周全域に設けることなく、少なくとも1箇所、或いは対向する2箇所に配置することによって励磁コイル81への通電をOFFした際に絞り羽根20を所定位置に保持することが可能となる。
【0049】
以上説明した実施例では永久磁石70を4極に着磁したものを用いたが周方向4極分極着磁されていると共に径方向にもN−S極が形成されるように着磁しても良い。このような構成によってロータMの内周側の磁極と内側ヨーク90の楕円形状の近接部との磁気吸引によって生起する回転力方向はロータM外周側に生起する回転力方向と同一方向となるので電磁駆動装置の駆動トルクが向上する。特に図1のものと同様に棒軸状に内側ヨーク90の基端部93に励磁コイルを配置し、この内側ヨーク90の先端部をロータに近接するように配置し、中央部に軸部91を設けているので、磁極が大きく生起する内側ヨーク90の先端部とロータとの磁気吸引力が軸受構造によって影響を受けることがなく、小さな消費電力で大きな回転力を得ることが出来る。
【0050】
次に図8に示す変形実施例について説明する。図示のものは永久磁石70を一体に保持する支持部材60(ホルダー部材)を前述のものと同様に内側ヨーク90の軸部91に嵌合支持するに際し、前述のものが取付部材50とコイル枠体80との間でスラスト方向に移動しないように支持するのに対し、以下の構造を採用したものである。前述のものと同一構成同一機能の構成要素については同一番号を付してその説明を省略する。
【0051】
樹脂のモールド成形で永久磁石70と伝動部材61(伝動ピン)を一体に構成した支持部材60には取付部材50と当接する接合面65と内側ヨーク90に当接する接合面66が図示の位置に設けてある。そして接合面65は支持部材60から取付部材50側に突出するリブで構成してあり、接合面66は内側ヨーク90側に突出するリブで構成してある。これらのリブは支持部材の端面に少なくとも1箇所に形成されれば良く、好ましくは平面方向3箇所に形成される。
【0052】
また、先の説明で、ロータMを取付部材50とコイル81を巻廻するコイル枠体80との間で前記内側ヨーク90の軸部91に摺動自在に支持し、前記取付部材50と前記コイル枠体80との接合面にそれぞれリブ65、66を形成する場合について説明したが、これらの構造に限定されず図8で示す様に内側ヨーク90の軸部91に軸長方向(スラスト方向)上下の端面に適宜数カ所にリブを形成することによってロータ摺動時の摩擦負荷を軽減することが出来る。この場合にリブはスペースの関係で、取付部材50の当接面側のみに形成している。
【0053】
また上記実施例では各種カメラ装置の撮像鏡筒に組込まれる光量調整装置について説明したが、本願の光量調整装置はプロジェクタ等の投影装置、その他光学機器の光学系内に適用することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本発明に係わる光量調整装置の表側からの全体斜視図。
【図2】本発明に係わる光量調整装置の裏側からの全体斜視図。
【図3】図1の装置の組立て分解斜視図。
【図4】電磁駆動装置の組立て分解斜視図。
【図5】図4の装置における駆動部(駆動装置)の中央縦断断面図。
【図6】図4の装置における駆動部の磁気回路の説明図。
【図7】図4の装置の動作状態説明図であり、(a)は一方向の電流を供給した場合を示し、(b)は逆方向の電流を供給した場合を示す。
【図8】図5の装置と異なる駆動部(駆動装置)の変形例を示す中央縦断断面図。
【符号の説明】
【0055】
A 光量調整部
10 押え板
20 絞り羽根
30 シャッタ羽根
40 基板
B 電磁駆動装置
M ロータ
50 取付部材(フレーム部材)
60 支持体
64 軸受部
65 リブ
66 リブ
70 永久磁石
80 コイル枠体
81 励磁コイル
90 内側ヨーク
91 軸部
100 外側ヨーク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
中央に回転中心を有する中空円筒形状の永久磁石から成るロータと、
上記ロータの内周側に配置された内側ヨークと、
上記ロータの外周側に配置された外側ヨークと、
上記内側ヨークと外側ヨークとを励磁するコイルとを備えたて電磁駆動装置であって、
上記外側ヨークは上記永久磁石の磁極を挟む位置で互いに対向する一対の磁極誘導片を有する軟磁性部材で構成され、
上記内側ヨークは、少なくともその一部に断面円形状の軸部を設けて上記磁極誘導片の中央部に固定配置され、
上記ロータには外部に回転を伝達する伝動部材を一体に設けると共に、その内周面に上記内側ヨークの軸部に適合する軸受部を備え、
上記ロータの軸受部を上記内側ヨークの軸部に回動自在に嵌合して支持したことを特徴とする電磁駆動装置。
【請求項2】
前記外側ヨークは、前記磁極誘導片を有する断面凹形状の円筒部材で構成され、
この外側ヨークの端部を適宜のフレーム部材に取付け支持し、
前記内側ヨークは、軸状部材で一端を上記外側ヨークの底部に固定支持され、
前記ロータは、前記軸受部を上記内側ヨークに形成した前記軸部に嵌合して支持されていることを特徴とする請求項1に記載の電磁駆動装置。
【請求項3】
前記コイルは前記内側ヨークに嵌合したコイル枠に巻回され、
前記ロータには前記フレーム部材と当接する係合面が設けられ、この係合面でスラスト方向の移動を規制したことを特徴とする請求項1に記載の電磁駆動装置。
【請求項4】
前記外側ヨークは非磁性体から成るフレーム部材に取付け固定され、
前記ロータは前記内側ヨークに嵌合配置され、
このロータは前記フレーム部材と前記コイル枠との間に配置されると共に、軸方向上下端面の少なくとも一方の面には回動時の摩擦を軽減するリブが形成されていることを特徴とする請求項1に記載の電磁駆動装置。
【請求項5】
前記内側ヨークの軸部と前記ロータの軸受部との嵌合面は少なくとも一方が非磁性材で構成されていることを特徴とする請求項1乃至4の何れかの項に記載の電磁駆動装置。
【請求項6】
前記ロータは中空円筒形状の永久磁石と、この永久磁石を保持する非磁性材料からなるホルダー部材で構成され、前記軸受部はこのホルダー部材に構成されていることを特徴とする請求項1乃至4の何れかの項に記載の電磁駆動装置。
【請求項7】
前記ロータは、マグネット樹脂材料をモールド型で前記永久磁石と前記軸受部とを一体成形して構成し、この軸受部と嵌合する内側ヨークの軸部摺接面は非磁性材で形成されることを特徴とする請求項5に記載の電磁駆動装置。
【請求項8】
光軸開口を有する基板と、
この基板に取付けられ上記光軸開口を規制する羽根部材と、
この羽根部材を駆動する電磁駆動装置とを備えた光量調節装置に於いて、
上記電磁駆動装置は請求項1に記載の電磁駆動装置で構成されていることを特徴とする光量調整装置。
【請求項9】
前記外側ヨークの2つの磁極誘導片先端部は非磁性体から成るフレーム部材にそれぞれ固定され、
前記コイルは前記内側ヨークに嵌合されたコイル枠に巻回され、
前記ロータは上記フレーム部材と上記コイル枠との間に配置されていることを特徴とする請求項8に記載の光量調整装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−333606(P2006−333606A)
【公開日】平成18年12月7日(2006.12.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−152420(P2005−152420)
【出願日】平成17年5月25日(2005.5.25)
【出願人】(000231589)ニスカ株式会社 (568)
【Fターム(参考)】