説明

露光装置及び露光方法、並びにデバイス製造方法

【課題】従来の干渉計に比べて高精度な移動体の位置情報の計測を可能にする。
【解決手段】露光装置は、基板を保持して、XY平面内で移動し、XY平面に交差する反射面134を有するステージWSTと、計測装置20Y’とを備えている。計測装置は、ステージWSTの上方に配置され反射面134を介して入射した光ビームを回折させて反射面134に戻す固定スケール135と、反射面134に戻された光ビームを検出する検出部(124A、124B、126、28)と、を有する。計測装置は、固定スケール135からの戻りビームを、再度反射面134を経由させることで得られる前記光ビームの複数の回折ビームの干渉光を前記検出部で検出することで、ステージWSTのY軸方向の位置を計測する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、露光装置及び露光方法、並びにデバイス製造方法に係り、更に詳しくは、物体を露光してパターンを形成する露光装置及び露光方法、並びに前記露光装置又は前記露光方法を用いるデバイス製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体素子、液晶表示素子等のマイクロデバイス(電子デバイス)を製造するに際し、リソグラフィ工程では、ステップ・アンド・リピート方式の縮小投影露光装置(いわゆるステッパ)、又はステップ・アンド・スキャン方式の走査型投影露光装置(いわゆるスキャニング・ステッパ(スキャナとも呼ばれる))などが比較的多く用いられている。
【0003】
この種の露光装置では、ウエハ又はガラスプレートなどの基板(以下、「ウエハ」と総称する)上の複数のショット領域にレチクル(又はマスク)のパターンを転写するために、ウエハを保持するウエハステージはXY二次元方向に例えばリニアモータ等により駆動される。特に、スキャニング・ステッパの場合、ウエハステージのみならず、レチクルを保持するレチクルステージもリニアモータ等により走査方向に所定ストロークで駆動される。レチクルステージ及びウエハステージの位置計測は、長期に渡って計測の安定性が良好で、高分解能なレーザ干渉計を用いて行われるのが、一般的である。
【0004】
しかるに、半導体素子の高集積化に伴う、パターンの微細化により、より高精度なステージの位置制御性が要求されるようになり、今や、レーザ干渉計のビーム光路上の雰囲気の温度揺らぎに起因する計測値の短期的な変動が無視できなくなりつつある。
【0005】
一方、最近では、位置計測装置の一種であるエンコーダとして、計測分解能が、レーザ干渉計と同程度以上のものが出現しており、露光装置内において、エンコーダ(リニアスケールと測長装置を含む)をウエハステージの位置計測に用いる技術も提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0006】
しかるに、上記特許文献1に記載のエンコーダなどでは、リニアスケールを、ウエハステージ上のウエハ載置位置から(露光光が実際に照射される位置から)遠く離れた位置に設置する必要があったため、計測の際にアッベ誤差が発生するとともに、ウエハステージ全体の外形が大きくなるおそれがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2004-101362号公報
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は上述した事情の下になされたものであり、第1の観点からすると、物体を露光してパターンを形成する露光装置であって、前記物体を保持して、互いに直交する第1軸及び第2軸を含む所定平面内で移動し、その一部に、前記所定平面に対して鋭角で交差する第1の反射面を有する移動体と、前記移動体の上方に配置され、前記第1の反射面を介して入射した光ビームを回折又は反射させて前記第1の反射面に戻す光学素子と、前記第1の反射面に戻された光ビームを検出する検出部と、を有する計測装置と、を備え、前記第1の反射面及び前記光学素子の少なくとも一方は、回折格子を有し、前記計測装置は、前記第1の反射面を介して前記光学素子に入射した前記光ビームの前記光学素子からの戻りビームを再度前記第1の反射面を経由させることで得られる前記光ビームの複数の回折ビームの干渉光を前記検出部で検出することで、前記移動体の前記所定平面内の位置情報を計測する露光装置である。
【0009】
これによれば、光学素子で発生する、又は第1の反射面で発生し、光学素子を介して第1の反射面に戻る複数の回折光を近接させて検出部に導くことができる。このため、従来の干渉計に比べて周辺雰囲気の揺らぎによる影響が少なく、高精度な移動体の位置情報の計測が可能となる。また、移動体が、物体を保持して移動することから、物体を露光してパターンを形成する際に、高精度かつ高加速度での物体の移動が可能となり、これにより、高精度な露光を高スループットで行うことが可能となる。
【0010】
本発明は、第2の観点からすると、本発明の露光装置を用いて物体を露光し、該物体上にパターンを形成する工程と、前記パターンが形成された物体を現像する工程と、を含むデバイス製造方法である。
【0011】
本発明は第3の観点からすると、物体を露光して該物体上にパターンを形成する露光方法であって、前記物体を保持して、互いに直交する第1軸及び第2軸を含む所定平面に沿って移動する移動体の前記移動面に交差する第1の反射面に光ビームを照射し、前記第1の反射面において反射又は回折された光ビームの、前記移動体の上方に配置された光学素子による、反射又は回折ビームの干渉光を検出して前記移動体の前記所定平面内の位置情報を計測し、前記計測結果に基づいて、前記移動体を移動しつつ前記物体を露光する露光方法である。
【0012】
これによれば、移動体の高精度な位置決め及び高加速度化が可能となり、高スループットかつ高精度な露光を実現することが可能となる。
【0013】
本発明は第4の観点からすると、本発明の露光方法を用いて物体を露光し、該物体上にパターンを形成する工程と、前記パターンが形成された物体を現像する工程と、を含むデバイス製造方法である。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】第1の実施形態に係る露光装置の概略構成を示す図である。
【図2】ウエハステージ及びエンコーダを示す斜視図である。
【図3】図2のエンコーダ20Xを示す平面図である。
【図4】図4(A)は、第2の実施形態に係るエンコーダを説明するための斜視図であり、図4(B)は、図4(A)の反射面134近傍を+X方向から見た状態を示す図である。
【図5】図5(A)は、第3の実施形態のエンコーダを説明するための斜視図であり、図5(B)は、図5(A)のエンコーダの原理を説明するための図であり、図5(C)及び図5(D)は、図5(A)の固定スケールの変形例を示す図である。
【図6】図6(A)は、第3の実施形態の変形例(その1)を示す斜視図であり、図6(B)は、第3の実施形態の変形例(その2)を示す斜視図である。
【図7】図7(A)〜図7(C)は、第4の実施形態における、ウエハステージのZ軸方向に関する位置計測の原理を説明するための図である。
【図8】図8(A)〜図8(C)は、第4の実施形態における、ウエハステージのY軸方向に関する位置計測の原理を説明するための図である。
【図9】図9(A),図9(B)は、反射面134の変形例を示す図である。
【図10】6自由度計測を行うためのエンコーダの配置の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
《第1の実施形態》
以下、本発明の第1の実施形態を図1〜図3に基づいて説明する。
【0016】
図1には、第1の実施形態に係る露光装置10の概略的な構成が示されている。露光装置10は、ステッパ等の一括露光型の投影露光装置である。後述するように本実施形態では、投影光学系PLが設けられており、以下においては、この投影光学系PLの光軸AXと平行な方向をZ軸方向、これに直交する面内で図1おけるし面内左右方向をY軸方向、Z軸及びY軸に直交する方向(図1における紙面直交方向)をX軸方向とし、X軸、Y軸、及びZ軸回りの回転(傾斜)方向をそれぞれθx、θy、及びθz方向として説明を行う。
【0017】
露光装置10は、照明ユニットIOP、レチクルRを保持するレチクルホルダRH、投影光学系PL、ウエハWを保持して所定の平面(本実施形態では、互いに直交するX軸及びY軸を含むXY平面)に沿って二次元移動するウエハステージWSTを含むステージ装置50、及びこれらの制御系等を含んでいる。
【0018】
照明ユニットIOPは、光源及び照明光学系を含み、その内部に配置された視野絞り(マスクキングブレード又はレチクルブラインドとも呼ばれる)で規定される矩形(例えば、正方形)の照明領域に照明光ILを照射し、回路パターンが形成されたレチクルRを均一な照度で照明する。照明光ILとしては、例えば超高圧水銀ランプからの紫外域の輝線(波長436nmのg線、波長365nmのi線等)が用いられるものとする。ただし、それらに代えて、KrFエキシマレーザ光(波長248nm)、又はArFエキシマレーザ光(波長193nm)あるいはF2レーザ光(波長157nm)などの真空紫外光を用いることとしても良い。
【0019】
レチクルホルダRHは、照明ユニットIOPの下方に配置されている。レチクルホルダRHは、実際には、投影光学系PLの上面に載置されている(ただし、図1では図示の便宜上、レチクルホルダRHと投影光学系PLとが離間して示されている)。具体的には、レチクルホルダRHは、投影光学系PLの上面に固定されたベース上で、レチクルRを保持して不図示の制御装置によりX軸方向、Y軸方向、θz方向に微小駆動可能とされている。なお、レチクルホルダRHは、単にレチクルRを保持するだけの機能を有するように構成し、レチクルRの駆動は行わないようにしても良い。また、レチクルホルダRHと投影光学系PLとを分離して配置してもよい。
【0020】
レチクルRの一部には、一対のアライメントマーク(不図示)が設けられている。本第1の実施形態では、不図示の制御装置が、露光前に、この一対のアライメントマークとこれに対応するウエハステージWST上の基準マークとをレチクルアライメント系を用いて計測し、該計測結果を用いて、例えばレチクルホルダRHを微小駆動してレチクルRの位置決め(レチクルアライメント)を行う。
【0021】
投影光学系PLとしては、例えば、Z軸方向と平行な光軸AXに沿って配列される複数のレンズ(レンズエレメント)から成る屈折光学系が用いられている。投影光学系PLは、例えば、両側テレセントリックで所定の投影倍率(例えば1/4あるいは1/5)を有する。このため、照明ユニットIOPからの照明光ILによって照明領域が照明されると、投影光学系PLの第1面(物体面)とパターン面がほぼ一致して配置されるレチクルRを通過した照明光ILにより、投影光学系PLを介してその照明領域内のレチクルの回路パターンの縮小像が、その第2面(像面)側に配置され、表面にレジスト(感光剤)が塗布されたウエハW上の前記照明領域に共役な領域(露光領域)に形成される。
【0022】
投影光学系PLの近傍には、ウエハW上のアライメントマーク又はウエハステージWST上の基準マークを検出するためのアライメント系ALGが設けられている。このアライメント系ALGとしては、例えば画像処理方式のセンサを用いることができ、画像処理方式のセンサは、例えば特開平4−65603号公報及びこれに対応する米国特許第5,493,403号明細書などに開示されている。アライメント系ALGによる検出結果は、不図示の制御装置に送られる。
【0023】
ステージ装置50は、不図示のウエハホルダを介してウエハWを保持するウエハステージWST、及びウエハステージWSTを駆動するウエハステージ駆動系124等を備えている。ウエハステージWSTは、投影光学系PLの図1における下方に配置され、その底面に設けられた気体静圧軸受、例えばエアベアリングによって、不図示のベースの上面の上方に非接触で支持されている。ウエハステージWSTは、例えばリニアモータ及びボイスコイルモータなどを含むウエハステージ駆動系124によって、XY平面(移動面)内のX軸方向及びY軸方向に所定ストロークで駆動されるとともに、XY平面に直交するZ軸方向及び回転方向(θx方向、θy方向及びθz方向)に微小駆動される。
【0024】
上記のように、本第1の実施形態では、ウエハステージWSTが6自由度で駆動可能な単一のステージであるものとしたが、これに限らず、XY平面内で自在に移動可能なXYステージと、該XYステージ上で少なくともZ,θx,θy方向の3自由度方向で駆動されるテーブルとによってウエハステージWSTを構成しても勿論良い。
【0025】
ウエハステージWSTの位置情報は、図1に示されるリニアエンコーダシステム20によって、常時検出され、不図示の制御装置に送られる。
【0026】
これを更に詳述すると、リニアエンコーダシステム20は、図2に示されるような、いわゆる3格子干渉エンコーダから成るXエンコーダ20X、及びYZエンコーダ20YZを含んでいる。
【0027】
Xエンコーダ20Xは、図2及びエンコーダ20Xの平面図である図3に示されるように、ウエハステージWSTの−Y側の面に設けられた移動格子30Xに対して、光を照射する光源22と、光源22との間の位置関係が固定で、移動格子30Xで発生する回折光を集光させる固定スケール24A,24Bと、固定スケール24A,24Bにて集光された回折光を干渉させるインデックススケール26と、インデックススケール26にて干渉した光を検出する検出器28とを含んでいる。
【0028】
光源22は、例えばコヒーレントな光、例えば波長λ(=850nm)のレーザ光を図1における−Y方向から+Y方向に向けて射出する。この場合、光源22から射出されるレーザ光の光軸が投影光学系PLの投影中心(本実施形態では光軸AXと一致)を通るように光源22の位置が設定されている。
【0029】
移動格子30Xは、X軸方向を周期方向とする回折格子である。この移動格子30Xでは、入射した光に基づいて、次数が異なる複数の回折光を発生させる。図2では、それらの回折光のうち、移動格子30Xで発生した±1次回折光が示されている。
【0030】
固定スケール24A,24Bは、X軸方向を周期方向とする回折格子が形成されたプレートから成る透過型の位相格子であり、光源22よりも−Y側に配置されている。また、インデックススケール26は、X軸方向を周期方向とする回折格子が形成されたプレートから成る透過型の位相格子であり、固定スケール24A,24Bよりも−Y側に配置されている。
【0031】
固定スケール24Aは、移動格子30Xで発生した−1次回折光を回折して+1次回折光を生成し、この+1次回折光はインデックススケール26に向かう。また、固定スケール24Bは、移動格子30Xで発生した+1次回折光を回折して−1次回折光を生成し、この−1次回折光はインデックススケール26に向かう。
【0032】
ここで、固定スケール24A,24Bで生成された±1次回折光は、インデックススケール26上の同一位置で互いに重なり合う。すなわち、±1次回折光がインデックススケール26上で干渉する。
【0033】
本実施形態では、光源22から射出されるレーザ光の波長と移動格子30Xのピッチとに基づいて、移動格子30Xで発生する各回折光の回折角度が決まる。また、レーザ光の波長と固定スケール24A,24Bのピッチとに応じて、固定スケール24A,24Bで発生した±1次回折光の回折角度(すなわち、移動格子30Xで発生した±1次回折光の見かけ上の折り曲げ角度)が決まることから、レーザ光の波長、移動格子30Xのピッチ及び固定スケール24A,24Bのピッチを適切に設定する必要がある。例えば、上述したように移動格子30Xにおいて発生する±1次回折光を計測に用いる場合、インデックススケール26上の干渉縞の明暗周期は移動格子30Xの配列周期の2倍になるが、その干渉縞の明暗周期とわずかにピッチの異なるインデックススケール26を用いた場合には、検出器28上に正弦波状の光量分布を作り出すことができる。
【0034】
この光量分布は、移動格子30XのX軸方向の移動に伴って変化するので、この変化を検出器28を用いて検出することにより、ウエハステージWSTのX軸方向に関する位置情報を計測することが可能である。
【0035】
なお、上記に代えて、インデックススケール26をY軸を中心として微小量回転させてモアレ縞を発生させ、該モアレ縞を用いてウエハステージWSTの位置計測を行うことも可能である。
【0036】
なお、本実施形態においては、移動格子30Xのピッチを荒くすることにより回折角度を小さくすることができる。これにより、移動格子30Xを、光源22及び固定スケール24A,24Bから、比較的離れた位置に配置することが可能である。また、移動格子30Xから発生する±1次回折光を近接させた状態で固定スケール24A、24Bに導くことが可能となる。
【0037】
また、光源22から射出されるレーザ光の光束の太さ及び/又は固定スケール24A,24B、インデックススケール26の面積を適切に設定することにより、移動格子30Xまでの距離が変化した場合でも、高精度な計測を行うことが可能である。すなわち、本実施形態のような干渉型のエンコーダを採用することにより、エンコーダ20Xから移動格子30Xまでの距離(通常「スタンドオフ」と呼ぶ)の変化許容量を大きくすることが可能である。
【0038】
YZエンコーダ20YZは、図2に示されるように、ウエハステージWSTの+X側の面に設けられた移動格子30YZに対して、光を照射する光源42と、光源42との間の位置関係が固定で、移動格子30YZで発生する回折光を集光させる固定スケール44A、44B及び44C,44Dと、固定スケール44A、44B及び固定スケール44C,44Dのそれぞれにて集光された回折光を干渉させるインデックススケール46と、インデックススケール46にて干渉した光を検出する検出器48とを含んでいる。移動格子30YZは、Y軸方向を周期方向とする回折格子とZ軸方向を周期方向とする回折格子とが組み合わされた二次元格子である。また、光源42から射出されるレーザ光の光軸が投影光学系PLの投影中心(本実施形態では光軸AXと一致)を通るように、光源42の位置(及び姿勢)が設定されている。
【0039】
固定スケール44A、44Bは、前述した固定スケール24A,24Bと同様に、Y軸方向を周期方向とする回折格子が形成されたプレートから成る透過型の位相格子である。一方、固定スケール44C,44Dは、Z軸方向を周期方向とする回折格子が形成されたプレートから成る透過型の位相格子である。インデックススケール46は、Y軸方向を周期方向とする回折格子及びZ軸方向を周期方向とする回折格子が形成された透過型の二次元格子である。また、検出器48は、例えば4分割検出器又はCCDを含んでいる。
【0040】
固定スケール44Aは、移動格子30YZのY軸方向を周期方向とする回折格子で発生した−1次回折光を回折して+1次回折光を生成し、この+1次回折光はインデックススケール46に向かう。また、固定スケール44Bは、移動格子30YZのY軸方向を周期方向とする回折格子で発生した+1次回折光を回折して−1次回折光を生成し、この−1次回折光はインデックススケール46に向かう。
【0041】
ここで、固定スケール44A、44Bで生成された±1次回折光は、インデックススケール46上の同一位置で互いに重なり合う。すなわち、±1次回折光がインデックススケール46上で干渉する。
【0042】
一方、固定スケール44Cは、移動格子30YZのZ軸方向を周期方向とする回折格子で発生した−1次回折光を回折して+1次回折光を生成し、この+1次回折光はインデックススケール46に向かう。また、固定スケール44Dは、移動格子30YZのZ軸方向を周期方向とする回折格子で発生した+1次回折光を回折して−1次回折光を生成し、この−1次回折光はインデックススケール46に向かう。
【0043】
ここで、固定スケール44C、44Dで生成された±1次回折光は、インデックススケール46上の同一位置で互いに重なり合う。すなわち、±1次回折光がインデックススケール46上で干渉する。
【0044】
この場合においても、前述したXエンコーダ20Xと同様、光源42から射出されるレーザ光の波長と移動格子30YZのピッチとに基づいて、移動格子30YZの各格子で発生する回折光の回折角度が決まり、また、レーザ光の波長と固定スケール44A〜44Dのピッチを適切に決定することにより移動格子30YZで発生した±1次回折光の見かけ上の折り曲げ角度が決まる。
【0045】
ここで、YZエンコーダ20YZにおいては、検出器48上に二次元的な模様(市松模様)が現れる。この二次元的な模様は、ウエハステージWSTのY軸方向位置及びZ軸方向位置に応じて変化するので、この変化を、検出器48の少なくとも一部を構成する4分割素子又はCCDなどにより測定することによって、ウエハステージWSTのY軸方向及びZ軸方向の位置を計測することができる。
【0046】
なお、YZエンコーダ20YZにおいても、インデックススケール46をX軸を中心として微小量回転させてモアレ縞を発生させ、該モアレ縞をウエハステージWSTの計測に用いることとしても良い。
【0047】
上記のように構成される本第1の実施形態の露光装置では、通常のステッパと同様に、不図示の制御装置の指示の下、レチクルアライメント及びウエハアライメント系ALGのベースライン計測、並びに例えば特開昭61−44429号公報(対応する米国特許第4,780,617号明細書)などに開示されるエンハンスド・グローバル・アライメント(EGA)等のウエハアライメントが行われ、その後、ウエハアライメント結果に基づいて、ウエハ上のショット領域を投影光学系PLのパターンの投影領域(露光領域)に位置決めし露光することを繰り返す、いわゆるステップ・アンド・リピート方式の露光が行われ、レチクルRのパターンがウエハW上の複数のショット領域に順次転写される。これらの動作を行う間、不図示の制御装置は、前述したエンコーダ20X,20YZの計測結果に基づいて、ウエハステージ駆動系124を介してウエハステージWSTを駆動する。
【0048】
以上説明したように、本実施形態によると、ウエハステージWSTの側面に移動格子30X(30YZ)が設けられ、該移動格子30X(30YZ)に対して、光源22(42)から光を照射し、光源22(42)との間の位置関係が固定の固定スケール24A,24B(44A〜44D)及びインデックススケール26(46)により移動格子30X(30YZ)で発生する回折光が干渉され、検出器28(48)により該干渉された光が検出される。この場合、移動格子30X(30YZ)がウエハステージWSTの側面に設けられていることにより、従来の干渉計と同様、ウエハステージWSTの側面を用いた計測を行うことができるので、光源22から照射される光の光軸が投影光学系PLの光軸上を通るように設定することができ、これにより、アッベ誤差なくウエハステージWSTの位置計測を行うことができる。また、本実施形態のようなエンコーダでは、干渉は±1次回折光という非常に近接した光路を通る光の間で生じるので、移動鏡と固定鏡とに分かれた全く違った光路を通る光の干渉を用いる干渉計に比べて周辺雰囲気の温度揺らぎ(屈折率の変動)による影響、例えばビーム光路上の雰囲気の温度揺らぎに起因する計測値の短期的な変動による影響などを低減させることができる。また、本実施形態では、ウエハステージWSTの周辺に移動格子を別途設ける必要が無いので、ウエハステージWST全体の大型化を抑制することができ、これによりウエハステージWSTの高精度な位置決め及び高加速度化を図ることが可能となる。したがって、高精度なウエハステージWSTの位置計測、及びウエハステージWSTの高精度な位置決め及び高加速度化、ひいては高スループットかつ高精度な露光を実現することが可能となる。
【0049】
なお、上記実施形態では、ウエハステージWSTのX軸方向、Y軸方向及びZ軸方向の位置をエンコーダを用いて計測することとしたが、これに限らず、少なくとも一軸方向のみをエンコーダを用いて計測することとしても良い。この場合、その他の方向をレーザ干渉計等の別の計測装置を用いて計測することとすることができる。例えば、ウエハステージWSTのZ軸方向の位置を、ウエハ表面のZ位置を検出する多点焦点位置検出系を用いて計測することとしても良い。
【0050】
また、上記実施形態では、ウエハステージWSTが6自由度方向に移動可能とされているので、エンコーダ20X及び20YZを複数設けることにより、6自由度方向の計測を行うこととしても良い。また、エンコーダ20Xについても、2軸方向の計測が可能なように、エンコーダ20YZと同様の構成を採用することとしても良い。
【0051】
《第2の実施形態》
次に、本発明の第2の実施形態について、図4(A)、図4(B)に基づいて説明する。ここで、前述した第1の実施形態と同一若しくは同等の構成部分については、同一の符号を用いるとともにその説明を簡略にし、若しくは省略するものとする。
【0052】
図4(A)には、第1の実施形態の図2に対応する斜視図が示されている。この図4(A)に示されるように、本第2の実施形態では、ウエハステージWSTの−Y側端部に、反射面134が設けられており、また、エンコーダ本体20Y’の構成が第1の実施形態のエンコーダ20Xとは異なるものとされている。反射面134は、ウエハステージWSTの−Y端部に形成されたXY平面に対して45°傾いた面に、例えばアルミニウム等を蒸着して形成されている。すなわち、反射面134はYZ平面内でXY平面と鋭角で交差する。また、ウエハステージWSTの上方には、XY平面とほぼ平行にY軸方向を長手方向とする板状の第1の固定スケール135が設けられている。この第1の固定スケール135は、Y軸方向を周期方向とするパターン(例えば、回折格子)が形成された反射型のスケールであり、例えば、投影光学系PLを支持する不図示の支持定盤の下面に固定されている。第1の固定スケール135は、その下面側(−Z側)に回折格子を有することから、固定格子、あるいは格子部材などとも呼ぶことができる。また、本実施形態では、Y軸方向に沿って反射面134に入射するレーザ光はその光軸が投影光学系PLの投影中心を通るようにX軸方向の位置が設定され、第1の固定スケール135はX軸方向に関してその中心が反射面134に入射するレーザ光の光軸とほぼ同一の位置に設定されている。なお、投影光学系PLが搭載される支持定盤は、それぞれ防振機構が設けられる3本の支柱で支持されるが、例えば国際公開第2006/038952号に開示されているように、投影光学系PLの上方に配置される不図示のメインフレーム部材などに対してその支持定盤を吊り下げ支持しても良い。また、第1の固定スケール135はその支持定盤ではなく他のフレーム部材、例えばメインフレーム部材に吊り下げ支持される計測フレームなどに設けても良い。この場合、支持定盤(すなわち投影光学系PL)はメインフレーム部材に吊り下げ支持されていなくても良い。
【0053】
エンコーダ本体20Y’は、全体的には、前述した第1の実施形態のエンコーダ20Xとほぼ同様に構成されているが、第2の固定スケール124A,124Bが光源22から−Y方向かつ+Z方向又は−Z方向に離れた位置に配置されている点、第2の固定スケール124A,124Bのパターン(例えば、透過型の位相格子)がZ軸方向を周期方向とする点、及びインデックススケール126のパターン(例えば、透過型の位相格子)がZ軸方向を周期方向とする点が異なっている。
【0054】
このエンコーダ本体20Y’では、反射面134に対して、光源22からの光がY軸方向に沿って照射され、図4(B)に示されるように、反射面134において+Z方向に向けて反射され、第1の固定スケール135に入射する。この固定スケール135は、入射した光に基づいて、次数の異なる複数の回折光を発生させる。図4(A),図4(B)では、それらの回折光のうち、第1の固定スケール135で発生した±1次回折光が示されている。
【0055】
これら±1次回折光は、反射面134に入射し、図4(B)に示されるように、反射面134にて反射(入射角と同一の反射角で反射)された後、第1の実施形態と同様、第2の固定スケール124A,124B及びインデックススケール126を介して、検出器28に入射する。
【0056】
この場合、ウエハステージWSTのY軸方向の移動に伴って、第1の固定スケール135に対する光源22からの光の入射位置が変化するため、検出器28で検出される光量分布が変化する。したがって、この光量分布の変化を検出器28にて検出することにより、ウエハステージWSTのY軸方向に関する位置情報を計測することが可能である。本実施形態では、エンコーダ本体20Y’と第1の固定スケール135とを少なくとも含んでエンコーダが構成されている。
【0057】
なお、図4(A)では、ウエハステージWSTのY軸方向の位置計測を行うエンコーダ本体20Y’のみを図示したが、これに限らず、ウエハステージWSTの+X側端部(又は−X側端部)に反射面134と同様の反射面を設けるとともに、X軸方向計測用の第1の固定スケールを設け、これらに対応してエンコーダ本体20Y’と同様のX軸方向計測用のエンコーダ本体を設けることにより、ウエハステージWSTのX軸方向の位置計測を行うこととしても良い。この場合、ウエハステージWSTのX側端部に設けられる反射面はZX平面内でXY平面と鋭角(例えば45°)で交差し、X軸方向計測用の第1の固定スケールはX軸方向を周期方向とするパターンを有し、XY平面とほぼ平行にX軸方向を長手方向として設けられる。また、2つの反射面にそれぞれ入射するレーザ光の光軸が、例えば投影光学系PLの投影中心で直交するように配置してもよい。また、X軸方向の位置計測に用いる計測装置としてエンコーダを採用するのに代えて、例えば干渉計等の他の計測装置を採用することとしても良い。また、X軸方向の位置計測を本実施形態のエンコーダ本体を用いて行い、Y軸方向の位置計測をエンコーダ以外の計測装置で計測しても良い。
【0058】
以上説明したように、本第2の実施形態によると、ウエハステージWSTに設けられた反射面134を介してウエハステージWSTとは別に設けられた第1の固定スケール135を用いてウエハステージWSTの位置計測を行うので、ウエハステージWSTにスケールを設ける必要が無く、ウエハステージWSTの大型化を抑制することができる。また、第1の固定スケール135から発生する±1次回折光を近接させて第2の固定スケール124A,124Bに導くことが可能なので、高精度の位置計測を実現できる。
【0059】
なお、上記実施形態では、ウエハステージWSTの反射面134を用いて、ウエハステージWSTのY軸方向位置を計測するエンコーダ本体20Y’を一つのみ設けることとしたが、これに限らず、Y軸方向位置を計測するエンコーダ本体をX軸方向に所定距離隔てて2つ設けることとしても良い。この場合、2つのエンコーダ本体から照射される光の光軸が、X軸方向に関して投影光学系PLの光軸から等距離の位置を通るようにすることで、各エンコーダ本体の計測結果を平均化することにより、ウエハステージWSTのY軸方向位置をアッベ誤差なく計測することができ、また、各エンコーダ本体の計測結果の差分をとることにより、ウエハステージWSTのZ軸回りの回転を計測することが可能である。また、ウエハステージWSTの+Y側端部に反射面を設け、かつY軸方向計測用のエンコーダ本体をY軸方向に関して投影光学系PLの両側に配置してもよい。同様に、X軸方向計測用のエンコーダ本体を投影光学系PLの両側に配置してもよい。さらに、第1の固定スケール135を反射型ではなく透過型としてもよい。
【0060】
《第3の実施形態》
次に、本発明の第3の実施形態について、図5(A)、図5(B)に基づいて説明する。ここで、前述した第2の実施形態と同一若しくは同等の構成部分については、同一の符号を用いるとともにその説明を簡略にし、若しくは省略するものとする。
【0061】
図5(A)に示されるように、本第3の実施形態では、ウエハステージWSTの反射面134にX軸方向を周期方向とするパターン(例えば、回折格子)が形成され、ウエハステージWSTの上方には、X軸方向を周期方向とするパターン(例えば、回折格子)が形成され、XY平面とほぼ平行にY軸方向を長手方向とする固定スケール135’が設けられ、更にエンコーダ本体20X’の構成が上記第1、第2の実施形態と異なっている。
【0062】
固定スケール135’は、反射型のスケールであり、第2の実施形態と同様に、投影光学系PLを支持する不図示の支持定盤の下面に固定されている。一方、エンコーダ本体20X’は、光源22と、該光源22の+Y側に設けられたビームスプリッタ29と、該ビームスプリッタ29の下方(−Z側)に設けられた検出器28とを含んでいる。
【0063】
図5(B)には、本第3の実施形態のエンコーダの原理図が示されている。ここで、図5(A)のエンコーダでは、反射面134にパターンが形成された構成を採用しているが、図5(B)においては、説明の便宜上、図5(A)の反射面134が、これと実質的に等価な透過型のスケール134’に置き換えられている。
【0064】
この図5(B)に示されるように、本第3の実施形態のエンコーダ本体20X’では、光源22から射出されるレーザ光は、ビームスプリッタ29を透過して、透過型のスケール134’(反射面134)に入射する。そして、スケール134’(反射面134)上に形成されたパターン(回折格子)にて複数次数の回折光が生成される(なお、図5(A)、図5(B)では、そのうちの±1次回折光のみが示されている)。そして、固定スケール135’では、スケール134’(反射面134)上に形成されたパターンで発生した−1次回折光を更に回折して+1次回折光を生成し、また、スケール134’(反射面134)上に形成されたパターンで発生した+1次回折光を更に回折して−1次回折光を生成する。固定スケール135’で生成された±1次回折光は再度スケール134’(反射面134)に向かい、スケール134’(反射面134)上の同一位置で互いに重なり合い、干渉する。なお、回折格子を有する固定スケール135’に代えて、図5(C)に示されるような反射ミラー135a、135b、あるいは、図5(D)に示されるようなプリズム135cなどの光学素子を用いることとしても良い。光学素子として反射ミラー135a、135bあるいはプリズム135cを用いる場合、固定スケール135’と同様に、反射ミラーあるいはプリズムはY軸方向に延設される。
【0065】
そして、スケール134’(反射面134)で干渉した干渉光は、ビームスプリッタ29で検出器28に向けて折り曲げられ、検出器28にて受光される。
【0066】
検出器28では、干渉光の光量分布を検出することにより、ウエハステージWSTのX軸方向の位置情報を計測することが可能である。これまでの説明から分かるように、本第3の実施形態では、固定スケール135’とエンコーダ本体20X’を少なくとも含んでエンコーダが構成されている。
【0067】
なお、本第3の実施形態においても、固定スケール135’のパターンと反射面134上のパターンとを微小角度回転させることにより、モアレ縞を発生させ、該モアレ縞による光量分布を検出することにより、ウエハステージWSTのX軸方向の位置情報を計測するようにしても良い。
【0068】
本第3の実施形態のエンコーダでは、第1、第2の実施形態のエンコーダと比較して、光源22及び検出器28からウエハステージWSTが離間しても、その間の空気揺らぎなどの影響を更に受けにくい構成となっている。これは、上記干渉が反射面134と固定スケール135’との間で生じ、光源22及び検出器28と反射面134との間の光路は基本的に干渉状態に影響を与えないからである。
【0069】
以上説明したように、本第3の実施形態によると、ウエハステージWSTに設けられた反射面134上のパターン、及びウエハステージWSTとは別に設けられた固定スケール135’を用いてウエハステージWSTの位置計測を行うので、ウエハステージWSTに外付けでスケールを設ける必要が無く、ウエハステージWSTの大型化を抑制することが可能である。また、本実施形態においても、従来の干渉計に比べて空気揺らぎなどの影響を受けにくいので、ウエハステージWSTの位置計測を行うことができる。したがって、本実施形態においても高スループットで高精度な露光を実現することが可能である。
【0070】
なお、上記第3の実施形態では、X軸方向の位置情報のみを計測することとしたが、これに限らず、図6(A)に示されるような構成を採用することも可能である。すなわち、本例では、図6(A)に示されるように、固定スケール135に代えて、第1の固定スケール235を設け、エンコーダ本体20XYを採用することとする。第1の固定スケール235には、X軸方向を周期方向とするパターン(以下、「Xパターン」と呼ぶ)92a,92bと、該Xパターン92a,92bに挟まれた状態の、Y軸方向を周期方向とするパターン(以下「Yパターン」と呼ぶ)94とが設けられている。
【0071】
この場合、Yパターン94は、反射面134上のパターンにより生成される複数の回折光のうちの0次光(0次回折光、この場合正反射光)が入射する位置に配置され、Xパターン92a,92bは、+1次回折光及び−1次回折光のそれぞれが入射可能な位置に配置されている。
【0072】
一方、エンコーダ本体20XYは、図5(A)のエンコーダ本体20X’と、第2の実施形態のエンコーダ本体20Y’(図4(A)参照)とを組み合わせたような構成を有しており、具体的には、光源22と、ビームスプリッタ29と、検出器28と、第2の固定スケール224A,224Bと、インデックススケール226と、検出器228とを備えている。
【0073】
このようにして構成されたエンコーダ本体20XYでは、X軸方向の位置に関しては、上記第3の実施形態のエンコーダ本体(図5(A)のエンコーダ本体)20X’による計測と同様にして計測することができる。また、Y軸方向の位置に関しては、反射面134で発生する0次光を用いることとしている(図6(A)ではY軸方向の計測に用いる光が一点鎖線にて示されている)ので、上記第2の実施形態のエンコーダ本体(図4(A)のエンコーダ本体)20Y’と同様にして計測を行うことができる。
【0074】
このような図6(A)に示されるエンコーダを用いることにより、ウエハステージWSTのX軸方向の位置及びY軸方向の位置を計測することができ、かつ、上記第3の実施形態と同様、ウエハステージWSTに外付けで移動スケールを設けなくて良いので、ウエハステージWST全体の大型化を抑制することができる。また、干渉計に比べて空気揺らぎなどの影響が受けにくく、高精度な位置計測が可能となる。
【0075】
更に、上記第3の実施形態では、図6(B)に示されるような構成(固定スケール335と、エンコーダ本体20XY’とを少なくとも含むエンコーダ)を採用することも可能である。
【0076】
この図6(B)では、図6(A)と異なり、反射面134に2次元格子状のパターンを設けるとともに、固定スケール235に代えて、固定スケール335を設けることとしている。この固定スケール335には格子状の二次元パターンが設けられており、これら2次元パターンを用いることにより、XY二次元方向の位置を計測することができる。この場合、検出器28としては、第1の実施形態の検出器48(図2参照)と同様に、例えば四分割素子又はCCDなどを用いることで、検出器28上に現れる二次元的な模様を検出する。この二次元的な模様の変化を検出することにより、ウエハステージWSTのXY平面内の位置を計測することが可能である。
【0077】
なお、図5(A)では、ウエハステージWSTの−Y側端部のX軸方向を周期方向とするパターンを有する反射面134と、固定スケール135’と、エンコーダ本体20X’とを用いて、ウエハステージWSTのX軸方向の位置計測を行うものとしたが、これに限らず、ウエハステージWSTの+X側端部(又は−X側端部)にY軸方向を周期方向とするパターンを有する反射面134と同様の反射面を設けるとともに、Y軸方向計測用の固定スケールを設け、これらに対応してエンコーダ本体20X’と同様のY軸方向計測用のエンコーダ本体を設けることにより、ウエハステージWSTのY軸方向の位置計測を行うこととしても良い。
【0078】
同様に、図6(A)の例において、ウエハステージWSTの+X側端部(又は−X側端部)にY軸方向を周期方向とするパターンを有する反射面134と同様の反射面を設けるとともに、固定スケール235と同様の固定スケールをX軸方向を長手方向として配置し、エンコーダ本体20XYと同様のエンコーダ本体をウエハステージWSTの+X側端部(又は−X側端部)の反射面に対向して配置しても良い。同様に、図6(B)の例において、ウエハステージWSTの+X側端部(又は−X側端部)に2次元格子状のパターンが形成された反射面134と同様の反射面を設けるとともに、固定スケール335と同様の固定スケールをX軸方向を長手方向として配置し、エンコーダ本体20XY’をウエハステージWSTの+X側端部(又は−X側端部)の反射面に対向して配置しても良い。
【0079】
この他、図5(A)、図6(A)及び図6(B)でそれぞれ示される構成の3つのエンコーダのうち、任意の2つを組み合わせ、その一方をウエハステージWSTのX側に、他方をY側に配置しても良い。
【0080】
《第4の実施形態》
次に、本発明の第4の実施形態について図7(A)〜図8(C)に基づいて説明する。
【0081】
本第4の実施形態では、上述した図6(A)のエンコーダ本体20XY及び前述の第2の実施形態の第1の固定スケール135を用いて、ウエハステージWSTのZ軸方向の位置情報をも計測するものである。なお、第1の固定スケール135には、前述の第1の固定スケール235に形成されたパターン94と同様のY軸方向を周期方向とするパターン(以下、便宜上パターン94と記述する)が形成されているので、エンコーダ本体20XY及び第1の固定スケール235(パターン94部分)を用いていると考えることもできる。
【0082】
本第4の実施形態では、光源22から角度の異なる2つのレーザ光L1,L2(図7(B)参照)を反射面134に照射し、これら2つのレーザ光L1,L2による計測結果を用いてZ軸方向及びY軸方向の位置情報を計測する。
【0083】
図7(A)〜図7(C)には、第1の固定スケール135とウエハステージWSTの−Y端部(反射面134)近傍が簡略化して示されている。これらの図においては、図7(A)、図7(B)、図7(C)の順にウエハステージWSTのZ位置が−側から+側に変化している状態が示されている。なお、図7(A)と図7(C)では、図7(B)の状態が点線にて示されている。
【0084】
これらのうちの図7(B)に示されるように、光源からの角度の異なる2つのレーザ光(L1とL2)が反射面134に照射されると、レーザ光L1、L2はそれぞれ、反射面134にて入射角と同一の反射角で反射し、第1固定スケール135のパターン94に入射する。このとき、各レーザ光が第1の固定スケール135のパターン94に入射した位置がそれぞれ点A,点Bとして示されている。不図示ではあるが、入射したレーザ光はそれぞれ点A、点BでY軸方向に回折され、図6(A)の一点鎖線と同様の光路を通って、個別に用意された検出器(便宜上、検出器228A,228Bと記述する)にそれぞれ入射する。なお、第2の固定スケール224A,224Bと、インデックススケール226は、レーザ光L1,L2で共用しても良い。
【0085】
ここで、検出器228A,228Bでは、点A,点Bの位置に応じた計測結果を得ることができる。この場合、図7(A)〜図7(C)を比較するとわかるように、図7(B)の点AB間と図7(A)の点A’B’間とでは、点A’B’間の方が広くなり、図7(B)の点AB間と図7(C)の点A”B”間とでは、点A”B”間の方が狭くなる。したがって、各点間の距離がウエハステージWSTのZ軸方向の位置に関係していることから、レーザ光L1による計測結果をMa、レーザ光L2による計測結果をMbとすると、ウエハステージWSTのZ軸方向に関する位置Pzは、kを係数(該係数kは、レーザ光L1,L2の角度などで決まる)として次式(1)のように表すことができる。
【0086】
Pz=k(Ma−Mb) …(1)
本実施形態では、上式(1)を用いることにより、ウエハステージWSTのZ軸方向の位置を算出し、ウエハステージWSTの位置制御を行うこととしている。
【0087】
一方、図8(A)〜図8(C)には、ウエハステージWSTのY軸方向に関する位置がそれぞれ異なった状態が示されている。図8(B)には、前述した図7(B)と同一の状態が示され、図8(A)には、図8(B)のY位置を基準として(図8(B)の状態が点線にて示されている)、−Y側にずれた状態が示され、図8(C)には、図8(B)のY位置を基準として(図8(B)の状態が点線にて示されている)、+Y側にずれた状態が示されている。
【0088】
ここで、検出器228A,228Bでは、点A,B(点A’,A”又はB’,B”)の位置に応じた計測結果を得ることができる。この場合、図8(A)〜図8(C)を比較するとわかるように、図8(A)の点A’,B’は、点A,点BからウエハステージWSTの移動距離と同一距離だけ−Y側に移動しており、図8(C)の点A”,B”は、点A,点BからウエハステージWSTの移動距離と同一距離だけ+Y側に移動している。したがって、レーザ光L1による計測結果をMa、レーザ光L2による計測結果をMbとすると、ウエハステージWSTのY軸方向に関する位置Pyは、次式(2)のように表すことができる。
【0089】
Py=(Ma+Mb)/2 …(2)
本実施形態では、上式(2)を用いることにより、ウエハステージWSTのY軸方向の位置を算出し、ウエハステージWSTの位置制御を行うこととしている。
【0090】
以上説明したように、本実施形態によると、図6(A)のエンコーダと同様の構成のエンコーダを採用し、2つのレーザ光L1、L2を用いて計測し、該計測結果と、上記式(1)、式(2)を用いることにより、Y軸及びZ軸方向の位置を計測することができる。これにより、ウエハステージWST周辺に設ける固定スケールの数を増やすことなく計測を行うことが可能である。なお、2つの光を用いる代わりに、角度の異なる反射面を用意して同様にY、Z軸方向の位置情報を計測することとしても良い。
【0091】
なお、上記第4の実施形態では、図6(A)のエンコーダと同様の構成を用いて、ウエハステージWSTのY軸方向及びZ軸方向に関する位置を計測することとしたが、これに限らず、その他の実施形態の構成(例えば、図4(A)又は図6(B)の構成)を用いて、上記第4の実施形態と同様の方法により、Y軸方向及びZ軸方向に関する位置計測を行っても良い。
【0092】
なお、上記第4の実施形態で説明した角度の異なる2つのレーザ光L1,L2を用いるエンコーダを2つ、Y軸方向に関して投影光学系の一側と他側にそれぞれ配置し、その2つのエンコーダで計測されるウエハステージWSTのZ軸方向の位置情報から、ウエハステージWSTのチルト情報(θx方向の回転情報)を計測しても良い。同様に、上記第4の実施形態で説明した角度の異なる2つのレーザ光L1,L2を用いるエンコーダを2つ、X軸方向に関して投影光学系の一側と他側にそれぞれ配置し、その2つのエンコーダで計測されるウエハステージWSTのZ軸方向の位置情報から、ウエハステージWSTのチルト情報(θy方向の回転情報)を計測しても良い。あるいは、投影光学系の+X側、−X側、+Y側及び−Y側の少なくとも1つの方向に、上記第4の実施形態で説明した角度の異なる2つのレーザ光L1,L2を用いるエンコーダを2つ配置しても良い。勿論、上記各場合において、角度の異なる2つのレーザ光L1,L2を用いるエンコーダを用いる代わりに、角度の異なる反射面をそれぞれ用意しても良い。
【0093】
なお、上記第2〜第4の実施形態及び変形例では、ウエハステージWSTの端部にXY平面に対して45°傾斜した反射面を設ける場合について説明したが、これに限らず、図9に示されるような構成を採用することも可能である。すなわち、図9(A)に示されるように、ウエハステージWSTに2組の反射面25a,25bを設けることにより、45°傾斜した反射面と同等の機能を持たせることも可能である。このようにすることで、それぞれの反射面にX軸方向を周期方向とするパターン、Y軸方向を周期方向とするパターンを別々に設けることができる。これにより、パターンの生産・設計上の自由度が増すこととなる。
【0094】
なお、反射面25a,25bに代えて、図9(B)に示されるように、ウエハステージWSTにプリズム25を設けることとしても良い。この場合、反射面のみならず、透過面25c,25dの少なくとも一方にパターンを設けることもできる。このようなプリズム25を採用することにより、入出射光とプリズムの回転不感性を利用して、純粋にウエハステージWSTの平行移動を計測できるという利点もある。
【0095】
なお、上記各実施形態及び変形例に係るエンコーダは、適宜組み合わせて用いることが可能である。したがって、例えば、図10に示されるように、2つの図6(B)のエンコーダ本体20XY’と、第4の実施形態で説明した2軸方向の計測が可能なエンコーダ(図7(A)〜図8(C)参照)とを用いることにより、X,Y,Z、θx、θy、θz方向を同時に計測することが可能となる。この場合、2つのエンコーダ本体20XY’から照射される光の光軸が、投影光学系PLの光軸から等距離の位置を通るようにすることで、アッベ誤差なく高精度に計測することが可能となる。
【0096】
なお、上記各実施形態では、±1次回折光を用いて計測を行うこととしたが、これに限らず、±2次、3次…、n次回折光を用いて計測を行うこととしても良い。
【0097】
また、上記各実施形態及び変形例では、ウエハステージWSTの側面に対向して光源(22、42)を配置するものとしたが、例えば光源をウエハステージWSTから離して配置し、光源から射出されるレーザ光を光学部材(例えば、光ファイバー、及び/又はミラーなど)を用いて伝送することとしてもよい。さらに、複数のエンコーダ本体が設けられる場合、1つの光源からのレーザ光を複数に分岐して各エンコーダ本体に導くようにしても良い。
【0098】
なお、上記各実施形態及び変形例では、前述のエンコーダ本体の少なくとも一部(例えば、光源を除く)を、例えば投影光学系PLが載置される支持定盤、あるいは前述の計測フレームなどに設けても良い。また、上記各実施形態及び変形例では、ウエハステージWSTの反射面に直接、1次元及び/又は2次元の周期的なパターン(回折格子など)を形成してもよいし、例えば低熱膨張率の材料(セラミックスなど)から構成される板状部材に周期的なパターンを形成し、この板状部材をウエハステージに固定することとしてもよい。
【0099】
なお、上記各実施形態では、ウエハステージWSTの計測にエンコーダを用いた場合について説明したが、これに限らず、レチクルホルダRHの計測に用いることも可能である。
【0100】
なお、上記各実施形態において、照明光ILとして、例えば国際公開第1999/46835号(対応する米国特許第7,023,610号明細書)に開示されているように、DFB半導体レーザ又はファイバーレーザから発振される赤外域、又は可視域の単一波長レーザ光を、例えばエルビウム(又はエルビウムとイッテルビウムの両方)がドープされたファイバーアンプで増幅し、非線形光学結晶を用いて紫外光に波長変換した高調波を用いても良い。
【0101】
また、投影光学系は縮小系のみならず等倍および拡大系のいずれでも良い。投影光学系は屈折系のみならず、反射系及び反射屈折系のいずれでも良いし、その投影像は倒立像及び正立像のいずれでも良い。さらに、投影光学系PLを介して照明光ILが照射される露光領域は、投影光学系PLの視野内で光軸AXを含むオンアクシス領域であるが、例えば国際公開第2004/107011号に開示されるように、複数の反射面を有しかつ中間像を少なくとも1回形成する光学系(反射系または反屈系)がその一部に設けられ、かつ単一の光軸を有する、いわゆるインライン型の反射屈折系と同様に、その露光領域は光軸AXを含まないオフアクシス領域でも良い。この場合、露光領域の中心、すなわち投影光学系PLの投影中心は光軸AXと異なる。
【0102】
なお、上記各実施形態では、本発明がステップ・アンド・リピート方式の露光装置(いわゆるステッパ)に適用された場合について説明したが、これに限らず、本発明は、ステップ・アンド・スキャン方式の走査型露光装置に適用することも可能である。この場合、レチクルを保持して少なくとも1軸方向に移動可能なレチクルステージの位置を計測するのに、上記各実施形態のエンコーダを用いることも可能である。このエンコーダが図5(A)などに示した固定スケール(135、135’、235、335)を備える場合、その固定スケールをレチクルステージに対してその上方及び下方のいずれに配置してもよい。更に、本発明は、ステップ・アンド・スティッチ方式の露光装置、プロキシミティー方式の露光装置、ミラープロジェクション・アライナーなどにも好適に適用することができる。
【0103】
この他、例えば国際公開第2004/053955号などに開示される、投影光学系とウエハとの間に液体が満たされる液浸型露光装置などにも本発明を適用しても良い。この液浸型露光装置では、ウエハステージの反射面(134など)を例えば撥液性のカバー部材(例えば、ガラスプレート、あるいは薄膜など)で覆っても良いし、液体が反射面に到達するのを阻止する部材(例えば溝部など)をウエハステージの上面に設けても良い。また、遠紫外域又は真空紫外域などの露光用照明光を用いる露光装置だけでなく、例えばEUV光又はX線、あるいは電子線又はイオンビームなどの荷電粒子線を用いる露光装置などであっても、本発明を適用することは可能である。
【0104】
なお、上記各実施形態の露光装置は、例えば特開平10−163099号公報及び特開平10−214783号公報(対応する米国特許第6,590,634号明細書)、及び国際公開第98/40791号などに開示されているように、2つのウエハステージを用いて露光動作と計測動作(例えば、アライメント系によるマーク検出など)とをほぼ並行して実行可能なツイン・ウエハステージタイプでも良い。さらに、上記実施形態の露光装置は、例えば国際公開第2005/074014号などに開示されているように、ウエハステージとは別に、計測部材(例えば、基準マーク、及び/又はセンサなど)を含む計測ステージを備えるものでも良い。
【0105】
なお、上記各実施形態においては、光透過性の基板上に所定の遮光パターン(又は位相パターン・減光パターン)を形成した光透過型マスクを用いたが、このマスクに代えて、例えば米国特許第6,778,257号明細書に開示されているように、露光すべきパターンの電子データに基づいて、透過パターン又は反射パターン、あるいは発光パターンを形成する電子マスク(又は可変成形マスク、例えば非発光型画像表示素子(空間光変調器とも呼ばれる)の一種であるDMD(Digital Micro-mirror Device)などを含む)を用いても良い。また、例えば国際公開第2001/035168号に開示されているように、干渉縞をウエハ上に形成することによって、ウエハ上にデバイスパターンを形成する露光装置(リソグラフィシステム)にも本発明を適用することができる。
【0106】
さらに、例えば特表2004−519850号公報(対応する米国特許第6,611,316号明細書)に開示されているように、2つのレチクルパターンを投影光学系を介してウエハ上で合成し、1回のスキャン露光によってウエハ上の1つのショット領域をほぼ同時に二重露光する露光装置にも本発明を適用することができる。
【0107】
また、物体上にパターンを形成する装置は、前述の露光装置(リソグラフィシステム)に限られず、例えばインクジェット方式にて物体上にパターンを形成する装置にも本発明を適用することができる。
【0108】
また、本発明は、半導体デバイス製造用の露光装置への適用に限定されることなく、例えば、角型のガラスプレートに形成される液晶表示素子、若しくはプラズマディスプレイ等のディスプレイ装置用の露光装置、撮像素子(CCD等)、マイクロマシーン、有機EL、薄膜磁気ヘッド、及びDNAチップ等の各種デバイスを製造するための露光装置にも広く適用できる。更に、本発明は、各種デバイスのマスクパターンが形成されたマスク(フォトマスク、レチクル等)をリソグフィ工程を用いて製造する露光装置にも適用することができる。以上のように、上記各実施形態でエネルギビームが照射される露光対象の物体はウエハに限られるものではなく、ガラスプレート、セラミック基板、フィルム部材、あるいはマスクブランクスなど他の物体でも良い。
【0109】
また、上記各実施形態の露光装置(パターン形成装置)は、本願請求の範囲に挙げられた各構成要素を含む各種サブシステムを、所定の機械的精度、電気的精度、光学的精度を保つように、組み立てることで製造される。これら各種精度を確保するために、この組み立ての前後には、各種光学系については光学的精度を達成するための調整、各種機械系については機械的精度を達成するための調整、各種電気系については電気的精度を達成するための調整が行われる。各種サブシステムから露光装置への組み立て工程は、各種サブシステム相互の、機械的接続、電気回路の配線接続、気圧回路の配管接続等が含まれる。この各種サブシステムから露光装置への組み立て工程の前に、各サブシステム個々の組み立て工程があることはいうまでもない。各種サブシステムの露光装置への組み立て工程が終了したら、総合調整が行われ、露光装置全体としての各種精度が確保される。なお、露光装置の製造は温度およびクリーン度等が管理されたクリーンルームで行うことが望ましい。
【0110】
半導体デバイスは、デバイスの機能・性能設計を行うステップ、このステップに基づいてレチクルを製造するステップ、シリコン材料からウエハを形成するステップ、上記各実施形態の露光装置によりレチクルのパターンをウエハに転写するステップ、そのパターンが転写された(形成された)ウエハを現像するステップ、現像後のウエハにエッチングを施してレジストが残存している部分以外の部分の露出部材をり取り去ることで回路パターンを形成するステップ、エッチングが済んで不要となったレジストを取り除くステップ、デバイス組み立てステップ(ダイシング工程、ボンディング工程、パッケージ工程を含む)、及び検査ステップ等を経て製造される。
【産業上の利用可能性】
【0111】
以上説明したように、本発明の露光装置及び露光方法は、物体を露光してパターンを形成するのに適している。また、本発明のデバイス製造方法は、マイクロデバイスの製造に適している。
【符号の説明】
【0112】
20Y’…エンコーダ本体、28…検出器、100…露光装置、124A、124B…第2の固定スケール、126…インデックススケール、134…反射面、135…固定スケール、W…ウエハ、WST…ウエハステージ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
物体を露光してパターンを形成する露光装置であって、
前記物体を保持して、互いに直交する第1軸及び第2軸を含む所定平面内で移動し、その一部に、前記所定平面に対して鋭角で交差する第1の反射面を有する移動体と、
前記移動体の上方に配置され、前記第1の反射面を介して入射した光ビームを回折又は反射させて前記第1の反射面に戻す光学素子と、前記第1の反射面に戻された光ビームを検出する検出部と、を有する計測装置と、を備え、
前記第1の反射面及び前記光学素子の少なくとも一方は、回折格子を有し、
前記計測装置は、前記第1の反射面を介して前記光学素子に入射した前記光ビームの前記光学素子からの戻りビームを再度前記第1の反射面を経由させることで得られる前記光ビームの複数の回折ビームの干渉光を前記検出部で検出することで、前記移動体の前記所定平面内の位置情報を計測する露光装置。
【請求項2】
請求項1に記載の露光装置において、
前記移動体は、前記所定平面内の前記第1軸に平行な第1方向及び前記第2軸に平行な第2方向に移動し、
前記光学素子は、前記所定平面とほぼ平行に前記第1方向に延設されかつ回折格子を有する固定スケールであり、
前記計測装置は、前記第1の反射面を介して前記固定スケールに前記光ビームが入射することで、前記固定スケールから発生する複数の回折ビームの前記第1の反射面を介した干渉光を前記検出部で検出し、前記移動体の位置情報を計測する露光装置。
【請求項3】
請求項2に記載の露光装置において、
前記第1方向に沿って前記光ビームが前記第1の反射面に照射され、前記固定スケールは、前記第2方向に関する位置が前記光ビームと実質的に同一である露光装置。
【請求項4】
請求項2又は3に記載の露光装置において、
前記第1の反射面は、前記第1方向と平行かつ前記平面と直交する面内で前記平面と鋭角で交差する露光装置。
【請求項5】
請求項2〜4のいずれか一項に記載の露光装置において、
前記移動体は、前記第1の反射面が前記第2方向に沿って延設される露光装置。
【請求項6】
請求項2〜5のいずれか一項に記載の露光装置において、
前記回折格子は、少なくとも前記第1方向に周期的であり、
前記計測装置により、前記移動体の前記第1方向の位置情報が計測される露光装置。
【請求項7】
請求項2〜5のいずれか一項に記載の露光装置において、
前記回折格子は、少なくとも前記第2方向に周期的であり、
前記計測装置により、前記移動体の前記第2方向の位置情報が計測される露光装置。
【請求項8】
請求項2〜7のいずれか一項に記載の露光装置において、
前記回折格子は、前記第1方向を周期方向とする1次元の第1格子と、前記第2方向を周期方向とする1次元の第2格子とを含み、
前記計測装置により、前記移動体の前記第1及び第2方向の位置情報が計測される露光装置。
【請求項9】
請求項8に記載の露光装置において、
前記固定スケールは、前記第2方向に関して前記第1格子の一側と他側にそれぞれ配置された2つの前記第2格子を有し、前記計測装置は、前記2つの第2格子からそれぞれ発生する回折ビームの前記第1の反射面を介した干渉光を、前記検出部で検出することにより、前記移動体の前記第2方向の位置情報を計測する露光装置。
【請求項10】
請求項2〜7のいずれか一項に記載の露光装置において、
前記回折格子は、前記第1及び第2方向に周期的な2次元格子を含み、
前記計測装置により、前記移動体の前記第1及び第2方向の位置情報が計測される露光装置。
【請求項11】
請求項2〜10のいずれか一項に記載の露光装置において、
前記計測装置は、前記光ビームの入射によって前記固定スケールから異なる方向に発生する回折ビームの干渉光を前記検出部で検出する露光装置。
【請求項12】
請求項2〜11のいずれか一項に記載の露光装置において、
前記計測装置では、前記回折格子の周期方向に関して位置を異ならせて複数の光ビームが前記固定スケールに入射される露光装置。
【請求項13】
請求項12に記載の露光装置において、
前記計測装置は、前記複数の光ビームのうち対をなす2つの光ビームの入射によって前記固定スケールから発生する回折ビームの干渉光を前記検出部で検出する露光装置。
【請求項14】
請求項12又は13に記載の露光装置において、
前記移動体は、前記第1の反射面に回折格子が形成され、前記複数の光ビームは、前記反射面の回折格子から異なる方向に発生するビームを含む露光装置。
【請求項15】
請求項14に記載の露光装置において、
前記第1の反射面の前記回折格子はその周期方向が前記固定スケールの回折格子と実質的に同一である露光装置。
【請求項16】
請求項14又は15に記載の露光装置において、
前記第1の反射面の回折格子は、少なくとも前記第2方向に周期的である露光装置。
【請求項17】
請求項14〜16のいずれか一項に記載の露光装置において、
前記第1の反射面の回折格子は、前記第1及び第2方向に周期的な2次元格子を含む露光装置。
【請求項18】
請求項12に記載の露光装置において、
前記計測装置では、前記複数の光ビームが異なる方向から前記第1の反射面に照射されることで、前記複数の光ビームの前記固定スケールでの入射位置が異ならされる露光装置。
【請求項19】
請求項2〜18のいずれか一項に記載の露光装置において、
前記移動体は、前記第2方向に沿って延設された前記第1の反射面に加え、前記第1方向に沿って延設され、前記第2方向と平行かつ前記所定平面と直交する面内で前記所定平面と鋭角で交差する第2の反射面をさらに有し、
前記計測装置は、前記所定平面とほぼ平行に前記第2方向に延設されかつ回折格子を有する、前記固定スケールとは別の固定スケールを含み、前記第2の反射面を介して前記別の固定スケールに光ビームが入射することで、前記別の固定スケールから発生する複数の回折ビームの前記第2の反射面を介した干渉光を前記検出部で検出する露光装置。
【請求項20】
請求項19に記載の露光装置において、
前記第2方向に沿って光ビームが前記第2の反射面に照射され、前記別の固定スケールは、前記第1方向に関する位置が前記光ビームと実質的に同一である露光装置。
【請求項21】
請求項19又は20に記載の露光装置において、
前記別の固定スケールは、前記第1及び第2方向の少なくとも一方に関して周期的な回折格子を含む露光装置。
【請求項22】
請求項19〜21のいずれか一項に記載の露光装置において、
前記計測装置では、前記回折格子の周期方向に関して位置を異ならせて複数の光ビームが前記別の固定スケールに入射される露光装置。
【請求項23】
請求項22に記載の露光装置において、
前記移動体は、前記第2の反射面に回折格子が形成され、前記複数の光ビームは、前記第2の反射面の回折格子から異なる方向に発生するビームを含む露光装置。
【請求項24】
請求項22に記載の露光装置において、
前記計測装置は、前記複数の光ビームを異なる方向から前記第2の反射面に照射されることで、前記複数の光ビームの前記別の固定スケールでの入射位置が異ならされる露光装置。
【請求項25】
請求項1に記載の露光装置において、
前記移動体は、前記所定平面内の前記第1軸に平行な第1方向及び前記第2軸に平行な第2方向に移動し、
前記移動体は、前記第2方向に沿って延設され、前記第1方向と平行かつ前記所定平面と直交する面内で前記所定平面と鋭角で交差する前記第1の反射面と、前記第1方向に沿って延設され、前記第2方向と平行かつ前記所定平面と直交する面内で前記所定平面と鋭角で交差する第2の反射面とを有し、
前記光学素子は、前記所定平面とほぼ平行かつ前記第1方向に延設される第1反射部材から成り、
前記計測装置は、前記所定平面とほぼ平行かつ前記第2方向に延設される第2反射部材から成る別の光学素子をさらに有し、
前記第1の反射面及び前記第2の反射面にそれぞれ第1及び第2の光ビームを照射するとともに、前記第1反射部材及び前記第1反射面で反射する複数の第1回折ビームの干渉光、及び前記第2反射部材及び前記第2反射面で反射する複数の第2回折ビームの干渉光を、前記検出部で検出することにより、前記移動体の前記第1及び第2方向の位置情報を計測し、
前記第1の反射面及び前記第1反射部材の少なくとも一方、及び前記2の反射面及び前記第2反射部材の少なくとも一方に回折格子が設けられる露光装置。
【請求項26】
請求項1に記載の露光装置において、
前記移動体は、前記光ビームが順次経由する、前記第1の反射面を含む複数の面を有する露光装置。
【請求項27】
請求項26に記載の露光装置において、
前記移動体の前記複数の面の少なくとも1つには、回折格子が設けられている露光装置。
【請求項28】
請求項27に記載の露光装置において、
前記複数の面の少なくとも1つに設けられた回折格子の少なくとも1つは、透過型の回折格子である露光装置。
【請求項29】
請求項28に記載の露光装置において、
前記透過型の回折格子は、前記移動体の前記所定平面に平行な一面に設けられている露光装置。
【請求項30】
請求項1に記載の露光装置において、
前記光学素子は、前記一軸方向を周期方向とする一次元の回折格子を有し、前記反射面からの光が入射する固定スケールであり、
前記一次元の回折格子で発生し、前記第1の反射面を再度介した複数の回折光を干渉させる光学系をさらに備える露光装置。
【請求項31】
請求項1に記載の露光装置において、
前記第1の反射面は、一次元又は二次元の回折格子から成る第1の格子を有し、
前記光学素子は、前記第1の格子にて回折された光を回折又は反射して前記第1の格子に戻す露光装置。
【請求項32】
請求項31に記載の露光装置において、
前記光学素子は、前記一軸に平行な方向を周期方向とする一次元の回折格子から成る第2の格子を含み、
前記計測装置では、前記第1の格子に対して、前記一軸に平行な光ビームが照射される露光装置。
【請求項33】
請求項31に記載の露光装置において、
前記光学素子は、前記一軸に平行な方向を周期方向とする一次元の回折格子から成る第2の格子を含み、
前記計測装置では、前記第1の格子に対して、前記一軸を含む前記移動面に垂直な面内で前記一軸に対してそれぞれ異なる角度だけ傾斜した複数の光が照射され、前記複数の光から生じる各干渉光の前記検出部による検出結果に基づいて、前記移動体の前記移動面に垂直な方向の位置が算出される露光装置。
【請求項34】
請求項31〜33のいずれか一項に記載の露光装置において、
前記計測装置は、前記第1の格子において発生する0次光を用いて、前記移動体の前記移動面内の前記一軸と平行な方向に関する位置情報を計測し、前記0次光以外の回折光を用いて、前記移動体の前記移動面内の前記一軸と直交する方向に関する位置情報を計測する露光装置。
【請求項35】
請求項34に記載の露光装置において、
前記光学素子は、前記第1の格子において発生する0次光が入射する位置に配置された、前記一軸に平行な方向を周期方向とする第1の一次元回折格子と、前記0次光以外の回折光が入射する位置に配置された、前記一軸と直交する方向を周期方向とする第2の一次元回折格子と、を含む露光装置。
【請求項36】
請求項31に記載の露光装置において、
前記光学素子は、前記第1の格子において発生する0次光が入射する位置に配置された、前記移動面に平行に且つ前記一軸に平行な方向に延びる第1反射面部と、前記0次光以外の回折光がそれぞれ入射する位置に配置された、前記移動面に対して傾斜して前記一軸に平行な方向に延びる一対の第2反射面部と、を含む反射部材である露光装置。
【請求項37】
請求項1に記載の露光装置において、
前記移動体は、前記所定平面内の前記第1軸に平行な第1方向及び前記第2軸に平行な第2方向に移動し、
前記第1の反射面は、前記平面と鋭角で交差するとともに回折格子を有しており、
前記光学素子は、前記第1の反射面がその一部と対向し得る状態で、前記平面とほぼ平行に前記第1方向に延設され、
前記計測装置では、前記第1方向に沿って前記第1の反射面に光ビームが照射されることで前記第1の反射面から発生して前記光学素子及び前記第1の反射面で反射される複数の回折ビームを干渉させて前記検出部で検出することにより、前記移動体の位置情報が計測される露光装置。
【請求項38】
請求項37に記載の露光装置において、
前記移動体は、前記第1の反射面が前記第2方向に沿って延設される露光装置。
【請求項39】
請求項37又は38に記載の露光装置において、
前記回折格子は、少なくとも前記第2方向に周期的である露光装置。
【請求項40】
請求項37〜39のいずれか一項に記載の露光装置において、
前記光学素子は、前記第1方向に周期的な回折格子を含み、
前記計測装置により、前記移動体の前記第1方向の位置情報が計測される露光装置。
【請求項41】
請求項37〜40のいずれか一項に記載の露光装置において、
前記光学素子は、前記第2方向に周期的な回折格子を含み、
前記計測装置により、前記移動体の前記第2方向の位置情報が計測される露光装置。
【請求項42】
請求項1〜41のいずれか一項に記載の露光装置において、
前記計測装置による計測結果を用いて、前記移動体の位置を制御する制御装置を更に備える露光装置。
【請求項43】
請求項1〜42のいずれか一項に記載の露光装置を用いて物体を露光し、該物体上にパターンを形成する工程と、
前記パターンが形成された物体を現像する工程と、
を含むデバイス製造方法。
【請求項44】
物体を露光して該物体上にパターンを形成する露光方法であって、
前記物体を保持して、互いに直交する第1軸及び第2軸を含む所定平面に沿って移動する移動体の前記移動面に交差する第1の反射面に光ビームを照射し、前記第1の反射面において反射又は回折された光ビームの、前記移動体の上方に配置された光学素子による、反射又は回折ビームの干渉光を検出して前記移動体の前記所定平面内の位置情報を計測し、
前記計測結果に基づいて、前記移動体を移動しつつ前記物体を露光する露光方法。
【請求項45】
請求項44に記載の露光方法において、
前記第1の反射面には、回折格子が設けられている露光方法。
【請求項46】
請求項44又は45に記載の露光方法において、
前記光学素子には、回折格子が設けられ、
前記回折格子で回折された複数の回折ビームの前記第1の反射面を介した干渉光を検出して前記移動体の前記所定平面内の位置情報を計測する露光方法。
【請求項47】
請求項44〜46のいずれか一項に記載の露光方法を用いて物体を露光し、該物体上にパターンを形成する工程と、
前記パターンが形成された物体を現像する工程と、
を含むデバイス製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−256893(P2012−256893A)
【公開日】平成24年12月27日(2012.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−153443(P2012−153443)
【出願日】平成24年7月9日(2012.7.9)
【分割の表示】特願2008−520646(P2008−520646)の分割
【原出願日】平成19年6月11日(2007.6.11)
【出願人】(000004112)株式会社ニコン (12,601)
【出願人】(593152661)株式会社仙台ニコン (63)
【Fターム(参考)】