説明

静電チャック部材およびその製造方法

【課題】半導体加工装置に配設されている静電チャック自体が環境汚染物の発生源とならず、耐食性と耐プラズマ・エロージョン性に優れた静電チャックを提供する。
【解決手段】電極層と電気絶縁層とからなる静電チャック部材の外表面に、金属酸化物の超微粒子を含み、水素含有量が15〜40at%であるアモルファ状炭素・水素固形物の気相析出蒸着膜を有する静電チャック部材。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリコン半導体、化合物半導体、液晶等のフラットパネルディスプレイ、ハードディスク、ソーフィルターその他の電子デバイスの製造プロセスにおいて好適に用いられる静電チャック部材およびその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体や液晶の製造プロセス、なかでも半導体製造プロセスでは、ドライエッチングなどの処理が、自動化ならびに公害防止の見地から、湿式法から真空もしくは減圧雰囲気下で行われる乾式法による処理へと変化している。そして、この乾式法による処理において重要なことは、パターニング時のシリコンウエハーやガラス板などの基板の位置決め精度を上げることにある。こうした要請に応えるために、従来、基板の搬送や吸着固定に際して、真空チャックや機械チャックを採用していた。しかしながら、真空チャックは、真空下での処理になることから、圧力差が小さいため吸着効果が少なく、たとえ吸着できたとしても吸着部分が局部的となるため、基板に歪が生じるという欠点があった。その上、ウエハー処理の高温化に伴うガス冷却ができないため、最近の高性能半導体製造プロセスに適用できないという不便があった。一方、機械チャックの場合、装置が複雑となるうえ、保守点検に時間を要するなどの欠点があった。
【0003】
従来技術のこのような欠点を補うため、近年、静電気を利用した静電チャックが開発され、広く採用されている。しかし、この技術は、静電チャックによって基板を吸着保持した場合、印加圧電を切ったのちも、基板と静電チャックとの間の残留電荷のため、除電した後でなければ、該基板の取り外しができないという問題があった。
【0004】
その対策として、従来、該静電チャックに使用する絶縁性誘電体の材質そのものを改良する試みがなされている。例えば;
(1)特許文献1には、高絶縁物として、窒化アルミ粉末と窒化チタン粉末の混合物の焼結体または溶射皮膜を用いる技術が開示され、
(2)特許文献2には、高絶縁物に酸化チタンを被覆し、その上アルミニウムを被覆した後、さらにSi+SiCフレートを接触させる技術が開示され、
(3)特許文献3には、高絶縁体として、酸化アルミニウムを用いる技術が開示され、
(4)特許文献4には、高絶縁体として、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、酸化亜鉛、石英、窒化硼素、サイアロンなどを用いる技術が開示され、
(5)特許文献5、6には、高絶縁体に誘電率の高い酸化チタンを添加して、体積固有抵抗値を下げて静電力を向上させる技術が開示され、
(6)特許文献7、8には、酸化チタンを含む酸化アルミニウム絶縁体の欠点である残留電荷による吸着力を解決するため、電極の極性を反転させる技術が開示され、
(7)特許文献9には、シリコンウエハーの脱離を容易に行わせるために、絶縁層の一部に導電体を含有させた技術が開示され、
(8)特許文献10、11には、静電作業中における温度上昇とそれに伴う性能の低下を防ぐための水冷構造を備えた技術が開示されている。
【0005】
上記の従来技術と別に発明者自信も、次のような改善技術を提案してきた。
(9)高絶縁体である酸化アルミニウム中にTi2n−1で示される酸化チタンを混合した溶射皮膜(特許文献12)酸化アルミニウム中に酸化ニッケルを混合することによって高温における応答性を向上させた溶射皮膜の適用(特許文献13)、さらには、金属電極の上下に高絶縁体の酸化層を配した4層構造の静電チャック部材(特許文献14)を提案してきた。
【0006】
また、炭化水素化合物のガスから析出する炭素を主成分とするアモルファス状固形物であるダイアモンドライクカーボン(DLC)の開発に伴って、このDLC膜の静電チャックへの適用が提案されるようになってきた。例えば、
(10)特許文献17には、静電チャック基材の表面に、DLC薄膜を形成するに際して、炭化水素(C)のxが1〜10、yが2〜22の範囲にあるものを用いて、プラズマCVD法によってDLC膜を生成させる技術が開示され、
(11)特許文献18には、静電チャック基材表面に電気絶縁性のゴム、樹脂を取り付けた後、その上にDLC膜を積層する技術が開示され、
(12)特許文献19には、静電チャック基材の表面にSiウエハーに対して自らが接触しても汚染源とならないように、各種のケイ酸塩、ドープされたセラミックス、導電性酸化膜やDLC膜を配設した技術が開示され、
(13)特許文献20には、半導体加工装置部材に対する耐食性向上策として、DLC膜の利用する技術が開示されている。
【特許文献1】特開平6−008089号公報
【特許文献2】特開平6−302677号公報
【特許文献3】特公平6−036583号公報
【特許文献4】特開平5−235152号公報
【特許文献5】特開平3−147843号公報
【特許文献6】特開平3−204924号公報
【特許文献7】特開平11−111826号公報
【特許文献8】特開平11−069855号公報
【特許文献9】特開平8−064663号公報
【特許文献10】特開平8−330403号公報
【特許文献11】特開平11−026564号公報
【特許文献12】特開平9−069554号公報
【特許文献13】特開平10−154596号公報
【特許文献14】特開2001−203258号公報
【特許文献15】特開平5−144929号公報
【特許文献16】特開平6−200377号公報
【特許文献17】特開2001−373918号公報
【特許文献18】特開平10−158815号公報
【特許文献19】特開平10−064986号公報
【特許文献20】特開2002−246455号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来の特許文献1〜14に提案されている高絶縁層を備えた静電チャックには次のような課題がある。
(1)酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、サイアロンなどの高絶縁層を配設した静電チャックは、半導体ディバイス加工時代の初期には、その機能を発揮した。しかし、高精度で一段と緻密で微細な加工が要求される近年では、これらの静電チャックは環境のハロゲン系化合物やプラズマで励起されたイオンによって高絶縁層が腐食されやすく、その腐食生成物が原因となって発生する微細なパーティクルが却って環境汚染の源となるという問題がある。
【0008】
(2)一方、炭素を主成分とするDLC膜を適用した静電チャックには、次に示すような課題が顕在化したため、現在は余り利用されていない。
a.DLC膜自体は、非常に硬いうえに平滑であり、さらに電気抵抗率が10〜1013Ωcmの範囲に変化させることができるため、使用の初期には十分その機能を発揮した。しかし、高温加工時(80〜180℃)には、基材とDLC膜との間に大きな熱応力が発生するため容易に剥離する。また、硬質で電気抵抗率の高いDLC膜は、僅かな熱的・機械的衝撃や曲げ応力が負荷されても、皮膜自体が保有する残留応力が大きいため剥離することが多い。それは、時として、室内に放置しただけでも室温の変化によって剥離する。
b.DLC膜は、ハロゲン系ガスをはじめ装置を化学洗浄する際に使用される酸、アルカリに対しても優れた耐食性を発揮するが、基材がこの膜に存在するピンホールから侵入する腐食成分によって容易に腐食される。
c.DLC膜は、耐食性に優れているものの、Siウエハのプラズマ・エッチング環境下では、プラズマで励起されたハロゲンイオンの衝撃には予想以上に弱く簡単に剥離する。特に、最近の静電チャックでは、Siウエハーの配設面を清浄化する手段として、プラズマ・クリーニングすることが多く、かかる環境では従来のDLC膜は容易に剥離する。そして、剥離したDLC膜は、残留応力の影響を受けて丸い小さな筒状片となって周囲に飛散して、これが環境汚染源となる。その上、このようにして剥離して飛散したDLC膜は、ハロゲンによって腐食されず、また蒸気化もしないため、汎用されているHF、C1Fなどの薬液による化学洗浄によっても除去できないなどの新しい技術的課題を提起するようになってきた。
【0009】
本発明の目的は、高絶縁層やDLC膜を備えた従来の静電チャックが抱えている課題を解決できる静電チャックの被覆層に関する新しい構成とそれの製造方法を提案することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
高絶縁層や単純なDLC膜を被覆してなる静電チャックの上述した問題点を克服するために鋭意研究した結果、発明者らは、下記の要旨構成に係る本発明によれば、優れたジョンソン・ラーベック効果と基材や絶縁層の化学的損傷を効果的に防ぐ効果があることを知見し、本発明を開発するに到った。
【0011】
即ち、本発明は、基本的に、電極層と電気絶縁層とからなる静電チャック部材の外表面に、金属酸化物の超微粒子を含み、水素含有量が15〜40at%であるアモルファ状炭素・水素固形物の気相析出蒸着膜を有することを特徴とする静電チャック部材である。
【0012】
本発明はまた、
(1)基材の表面に、電気絶縁層を介して電極層を配設し、その電極層ならびに電気絶縁層をアモルファス状炭素・水素固形物の気相析出蒸着膜にて覆い、かつさらにその外表面を、金属酸化物の超微粒子を含み、水素含有量が15〜40at%であるアモルファス状炭素・水素固形物の気相析出蒸着膜にて被覆してなる静電チャック部材、
(2)電極を兼ねる電気導伝性基材の表面に、アモルファス状炭素・水素固形物の気相析出蒸着膜が設けられ、さらにこのアモルファス状炭素・水素固形物の気相析出蒸着膜の外表面を、金属酸化物の超微粒子を含み、水素含有量が15〜40at%であるアモルファス状炭素・水素固形物の気相析出蒸着膜にて被覆してなる静電チャック部材、
(3)電極を兼ねる電気導伝性基材の表面に、電気絶縁層が設けられ、さらにこの電気絶縁層の外表面を、金属酸化物の超微粒子を含み、水素含有量が15〜40at%であるアモルファス状炭素・水素固形物の気相析出蒸着膜にて被覆してなる静電チャック部材、
であってもよい。
【0013】
なお、本発明においては、
a.前記アモルファス状炭素・水素固形物の気相析出蒸着膜は、炭素含有量が85〜60at%、水素含有量が15〜40at%の微小固体粒子からなるプラズマCVD処理皮膜であること、
b.金属酸化物の超微粒子を含有するアモルファス状炭素・水素固形物の気相析出蒸着膜は、金属酸化物のナノオーダー級超微粒子を3〜30at%含有し、残部が炭素と水素からなるアモルファス状炭素・水素固形物のプラズマCVD薄膜であること、
c.前記金属酸化物の超微粒子を含む気相析出蒸着膜は、アモルファス状炭素・水素固形物皮膜のプラズマCVD薄膜を形成した後、そのプラズマCVD薄膜に酸素ガスプラズマを照射して、金属・合金の超微粒子の一部または全部を酸化処理して得られた膜であること、
d.前記気相析出蒸着膜中に含まれる金属酸化物は、Si、Y、Mg、Alおよび周期律表IIIA族のランタン系列金属から選ばれる1種以上の金属・合金の酸化物であって、×10−9m以下の超微粒子であること、
e.前記電気絶縁層は、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、窒化硼素およびサイアロンから選ばれるセラミックスであること、
f.炭素と水素からなる前記アモルファス状炭素・水素固形物のプラズマCVD薄膜は、電気絶縁性を有すること、
これらがより有効な解決手段を与えることとなる。
【0014】
また、本発明は、反応容器内に保持した電極層と電気絶縁層とからなる静電チャック部材の外表面に、この反応容器内に有機金属化合物のガスを導入してプラズマCVD処理することにより、炭素と水素の固相微粒子と共に金属の微粒子を共析させ、その後、その金属微粒子を酸化させることによって、金属の酸化物の超微粒子を含ませ、水素含有量が15〜40at%であるアモルファス状炭素・水素固形物からなる気相析出蒸着膜を形成することを特徴とする静電チャック部材の製造方法を提案する。
【0015】
本発明はまた、
(1)前記静電チャック部材が、基材の表面に電気絶縁層を介して電極層を配設してなるものにおいて、その電極層ならびに電気絶縁層の外表面を、プラズマCVD処理により形成されるアモルファス状炭素・水素固形物の気相析出蒸着膜にて覆い、次いで、その外表面を、有機金属化合物ガスを用いたプラズマCVD処理により、金属の超微粒子を含み、水素含有量が15〜40at%であるアモルファス状炭素・水素固形物の気相析出蒸着膜を被覆する方法、
(2)前記静電チャック部材が、電極を兼ねる電気導伝性基材によって形成されたものにおいて、その基材の表面に、プラズマCVD処理によりアモルファス状炭素・水素固形物の気相析出蒸着膜を被覆し、次いで、このアモルファス状炭素・水素固形物の気相析出蒸着膜の外表面に、有機金属化合物のガスを用いたプラズマCVD処理により、金属の超微粒子を含み、水素含有量が15〜40at%であるアモルファス状炭素・水素固形物の気相析出蒸着膜を被覆する方法、
(3)前記静電チャック部材が、電極を兼ねる電気導伝性基材によって形成されたものにおいて、その基材の表面に、まず、電気絶縁層を形成し、次いでその電気絶縁層の外表面に、有機金属化合物のガスを用いたプラズマCVD処理により、金属の超微粒子を含み、水素含有量が15〜40at%であるアモルファス状炭素・水素固形物の気相析出蒸着膜を被覆する方法、
がより有効な解決手段を与えることとなる。
【0016】
なお、本発明方法においては、
a.前記アモルファス状炭素・水素固形物の気相析出蒸着膜は、炭素含有量が85〜60at%、水素含有量が15〜40at%の微小固体粒子からなるプラズマCVD処理皮膜であること、
b.金属の超微粒子を含有するアモルファス状炭素・水素固形物の気相析出蒸着膜は、金属のナノオーダー級超微粒子を3〜30at%含有し、残部が炭素と水素からなるアモルファス状炭素・水素固形物のプラズマCVD薄膜であること、
c.前記金属は、Si、Y、Mg、Alおよび周期律表IIIA族のランタン系列金属から選ばれる1種以上の金属・合金であって、1×10−9m以下の大きさのナノオーダー級超微粒子であること、
d.前記気相析出蒸着膜に含まれる金属の超微粒子のみの蒸着は、プラズマCVD処理の他、PVD処理、イオンプレーティング処理、スパッタリング処理、有機金属化学気相成長法などによっても得られる薄膜であること、
e.前記金属の超微粒子を含むアモルファス状炭素・水素固形物皮膜を形成した後、その皮膜に酸素ガスプラズマを照射して、前記金属・合金の超微粒子の一部または全部を、酸化物粒子に変化させる酸化処理を行うこと、
f.前記金属の超微粒子を含むアモルファス状炭素・水素固形物皮膜の酸化処理は、前記皮膜を酸素ガスを含む環境で100℃〜500℃の温度域にて加熱することによって行うこと、
g.前記電気絶縁層は、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、窒化硼素およびサイアロンから選ばれるセラミックスであること、
h.前記電気絶縁層は、炭素と水素からなるアモルファス状炭素・水素固形物の皮膜であること、前記基材は、Alおよびその合金、Tiおよびその合金、Mg合金、ステンレス鋼、等方性炭素ならびにグラファイトから選ばれるいずれか1種以上からなること、
がより有効な解決手段を提供できる。
【発明の効果】
【0017】
(1)本発明は、基本的に、高絶縁層やDLC薄膜を被覆した従来の静電チャックが抱えている問題点を克服できる静電チャックを提供することができる。即ち、本発明によれば、Siウエハーなどの半導体の吸着機能を維持しつつ、各種のハロゲン化合物による化学的腐食作用およびプラズマによって励起された各種イオンによる損傷にもよく耐え、自ら(薄膜)が半導体加工環境の汚染源とならない静電チャック部材を提供することができる。
(2)本発明の静電チャック部材については、酸、アルカリ、有機溶剤によっても腐食することがないので、半導体加工装置全体を清浄化するために使用する高純度水や洗浄剤にもおかされず耐食性に優れ、それ故に洗浄化処理に支障を来たすことがなく、長期間にわたって安定して使用できるので、半導体製品などの生産性の向上に資するところが大きい。
(3)本発明のアモルファス状炭素・水素固形物の気相析出蒸着膜は、熱負荷や機械的負荷に対して強く、皮膜の剥離が起りにくいので、長期に亘って安定した状態で使用することができる。
(4)本発明によれば、基材の形状に影響を受けることなく、金属の超微粒子を含み炭素と水素とからなるアモルファス状炭素・水素固形物の気相析出蒸着膜を均等に成膜することができる。
(5)本発明によれば、気相析出蒸着膜中に含まれている金属の超微粒子を酸化物へ変化させることが容易であり、生産効率の高いプロセスを構築することができる。
(6)本発明によれば、前記アモルファス状炭素・水素固形物の気相析出蒸着膜中に各種の金属の超微粒子を容易に、また複数の金属超微粒子を同時に含ませることができ、多様な金属および金属酸化物の性質を該アモルファス状炭素・水素固形物皮膜に付与することができる。
(7)本発明において、前記アモルファス状炭素・水素固形物の気相析出蒸着膜によれば、高電圧パルスと高周波電力とを重畳する気相析出蒸着法による処理によって、基材の表面に、アモルファス状炭素と水素とかなる微小固体固体粒子を、その表面に被覆するのみならず気孔中にも侵入(充)させることにより、被処理基材が溶射皮膜のような場合には、その気孔などの欠陥を補修するとともにアモルファス状炭素・水素固形物の層を一定の厚さに容易に形成することができる。
(8)本発明によれば、被処理基材に負電圧を印加することによって、正に帯電したイオン、ラジカル状態の炭素と水素を主成分とする微小固体粒子を、この基材のあらゆる表面部分に均等に吸着・成長させることができるため、複雑な形状をした該基材のあらゆる部分、とくに隠れた部分にも、また微小な気孔内に対しても、均等な膜を形成することができる他、開気孔内に侵入してこれを確実に封孔することができるようになる。
(9)本発明によれば、基材表面に被覆されたアモルファス状の炭素・水素固形物の層(皮膜)は、緻密で密着性に優れるほか、成膜時の残留応力が小さく、化学的にも安定しているため、海水、酸、アルカリ、有機溶剤に冒されず化学的に安定しており、基材の封孔と耐食被覆を同時に実現できる。
(10)本発明によれば、電気抵抗率が10Ωcm未満の特性を有し、かつ硬度がHv:500〜2300と比較的低く、延性を示すため、基材に熱的・機械的な曲げ変形が加わっても剥離するようなことがない。
(11)本発明によれば、基材表面に被覆したアモルファス状炭素・水素固形物の膜が80μm以下(好ましくは0.5μm〜50μm)の厚さに成膜した場合であっても、耐剥離性に優れた皮膜を形成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
まず、静電チャック部材の構造およびその製造方法について説明する。
本発明に係る静電チャック部材は、断面構造の一例を示す図1(a)、図1(b)および図1(c)に示すとおりのものである。図示の1は、静電チャックの電気導伝性の基材である。この基材1に対してはその表面に、例えば、酸化アルミニウム、窒化硼素、窒化アルミニウムあるいはサイアロンなどのセラミックの焼結体等から電気絶縁層2が被覆されており、さらにその電気絶縁層2の表面にはMoやWなどの金属製の電極3が取り付けられる。そして、これら電極3を含めた外表面に対しては、アモルファス状炭素・水素固形物の気相析出蒸着膜(以下、単に「DLC膜」と略記する)が被覆され、さらに、外気に曝される最外層部分は、金属酸化物のナノオーダー級の大きさ(1×10−9m以下)超微細粒子を分散含有する炭素と水素からなるアモルファス状炭素・水素固形物皮膜(以下、単に「酸化物粒子含有DLC膜」と略記する)で被覆された構成となっている。
【0019】
一方、図1(b)に示す例は、図1(a)に示すのものに比べ電気絶縁層2がなく、電気導伝性基材1そのものが、電極を兼ねた構造の例である。また、図1(c)は、電極を兼ねる電気導伝性基材1の表面に、酸化アルミニウムなどの電気絶縁層2を設け、その上に酸化物粒子含有DLC膜5を形成して、全体を被覆した構造例である。なお、図示の5aは金属酸化物の超微粒子であり、それぞれの基材1には、図示しない通電用の配線が接続される。
【0020】
以下、本発明に係る静電チャックの構成について説明する。
a.基材1は、とくに電極を兼ねるものの場合、電気導伝性を有することが必要であり、Al、Al合金、Ti、Ti合金、Mg合金あるいはクロムス系テンレス鋼などの金属材料(合金材料を含めて、このように言う)がよく、また、炭素系の材料、具体的にはグラファイト、焼結炭素などの非金属材料がよく、特に特公平3−69845号公報に開示されているような等方性炭素などが好適に用いられる。
【0021】
b.電気絶縁層2の材料としては、その上に被覆するDLC膜4や酸化物粒子含有DLC膜5とともに高い電気絶縁性、具体的には10〜1013Ωcmの電気抵抗率を有するものが好適に用いられる。このような電気絶縁層2を設けることによって、前記DLC膜4の膜厚を薄くすることが可能となる。なお、この電気絶縁層2の材料としては、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、窒化硼素、サイアロンなどのセラミックスが好適であり、場合によっては、図1(b)に示すように、電気絶縁性を示すDLC膜4によってこの電気絶縁層2に代えてもよい。これらの電気絶縁層2、4の厚さは、電気絶縁層2+DLC膜4で電気伝導率10〜1013Ωcmが得られるように、厚さおよび両者の厚みを決定すればよい。
【0022】
c.DLC膜は上述した電気抵抗率(10〜1013Ωcm)を有し、例えば加工品のシリコンウエハーに対して、ジョンソン・ラーベック効果を発揮して、これをチャックする一方、基材1を作業環境中に含まれているハロゲンガスなどの腐食性のガスから保護するために形成されるものである。かかるDLC膜4、即ち、炭素と水素を主成分とするアモルファス状炭素・水素固形物皮膜は、酸、アルカリ、ハロゲンガスなどの腐食作用によく耐えるため、とくに膜中にピンホールがない場合には高い性能を発揮する。発明者等の実験によると、このDLC膜の水素含有量は15〜40at%の範囲がよく、15at%未満では硬く平滑であるものの、熱衝撃によって破壊されやすく、また40at%以上の水素量では電気抵抗率の制御が困難となる傾向があるからである。残部(85〜60at%)は炭素である。
【0023】
d.前記DLC膜の形成は、アモルファス状炭素・水素固形物の微粒子が、基材表面に堆積することによって形成された層であって、後で詳述するように、炭化水素系ガスプラズマ発生下において、高周波電圧と高電圧パルスとを重畳印加し、被処理部材である基材を負の電位にすることにより、この雰囲気中に化学反応を伴って気相析出した炭素と水素からなるアモルファス状微小固体粒子をこの基材表面に誘引吸着させる方法(プラズマCVD法と略称)によって形成が可能である。このような成膜環境は、成膜材料源としての炭化水素系ガスが、プラズマによって容易に分解するとともに、活性化された炭化水素をはじめ炭素や水素のイオンやラジカルを発生し、これが重合して高分子化して基材の表面を一定の厚さで被覆するものとなる。
【0024】
上記のプラズマCVD法では、炭化水素系ガスのプラズマによって分解生成した低分子の炭化水素をはじめ炭素や水素のイオンやラジカルは、気相状態のまま(雲状ないし霧状となって)基材全体を覆うように発生し、そして、これらが基材あるいは溶射皮膜で形成された電気絶縁層等の表面に誘引吸着され、さらには溶射皮膜の開気孔内にも侵入し充填され、やがて気相析出したこれらのアモルファス状の前記微小固体粒子は、処理時間の経過に伴って、基材や皮膜表面にも堆積して、皮膜全面を被覆するようになる。発明者らの実験によると、膜厚は80μm程度までに形成することが可能であり、このましくは0.5〜50μmである。
【0025】
なお、本発明のおいて、かかるDLC膜を静電チャックの最外層部に適用する場合、さらに次のような点についての検討が必要である。
(1)DLC膜の一般的な性質は、高電気抵抗性および化学的安定性には優れている。しかし、励起されたハロゲン系プラズマイオンの衝撃を受けると予想以上に損傷を受け、膜が破壊されることがある。
(2)DLC膜は、成膜時に大きな残留応力をもっていることが多く、熱衝撃や該プラズマイオンによって破壊され易い傾向がある。
(3)DLC膜は、破壊されると円筒状のように丸くなって飛散し、半導体製品(Siウエハー等)上に落下して、製品不良の原因となるおそれがある。
(4)DLC膜を単体で使用する場合、しばしば膜に存在するピンホールによって、腐食が加速されることがある。
【0026】
これに対して、発明者らは、上記のDLC膜の上述した問題点を克服するために、さらに、該DLC膜中に、金属酸化物のナノオーダー級超微細粒子(1×10−9m)を均一に分散含有させることにした。この金属酸化物の超微細粒子を分散含有させてなる酸化物粒子含有DLC膜は、次に示すような特徴を発揮する。
(1)金属酸化物の超微細粒子を含有させた結果、この酸化物粒子含有DLC膜は、残留応力が少ない上、電気抵抗率が10Ωcm未満であるため、この層を形成しても下層の電気絶縁層や通常のDLC膜のジョンソン・ラーベック作用に大きな影響を与えず、熱衝撃によっても剥離することがない。
(2)プラズマによって励起されたハロゲンイオンの衝撃に対して強く、高いプラズマ・エロージョン性を発揮する。
(3)現在の高精度・高清浄化が求められている半導体加工装置では、ウエハー材質のSi以外はすべて環境汚染物質であると極限されている環境でも、SiOなどの酸化物粒子含むDLC膜であれば、たとえプラズマエッチングされたとしても汚染物質の発生源とはならない。
【0027】
以下、かかる酸化物粒子含有DLC膜にについて説明する。この酸化物粒子含有DLC膜中に金属酸化物を混入させる方法としては、まず、この膜中に金属の超微粒子を含有させ、その後、この粒子を酸化させて酸化物に変化させる方法がある。このような目的に適した金属(合金)粒子としては、次のようなものが好適である。例えば、Si、Y、Mg、Alおよび周期律表IIIA族に属する原子番号51〜71までのランタン系列元素が適当である。具体的には、ランタンLa、セリウムCe、プラセオジムPr、ネオジムNd、プロメチウムPm、サマリウムSm、ユウロピウムEu、ガドリニウムGd、テルビウムTb、ジスプロシウムDy、ホルミウムHo、エルビウムEr、ツリウムTm、イッテルビウムYb、ルテチウムLu、15元素およびこれらの合金である。
【0028】
これらのランタン系列金属は、酸化されやすいと共に、水分とも容易に反応して水素ガスを発生し、また水素、窒素、ハロゲンとも反応するので、金属自体の耐食性は非常に低い。しかし、これらの金属・合金を酸化物に変化させると、耐食性が格段に向上するとともに、特にSi、Y、Mg、Alなどの金属・合金の酸化物が混在すると、DLC膜のみのものに比較して、優れた耐ハロゲン性と耐プラズマ・エロージョン性を発揮するという特徴がある。
【0029】
次に、上述したDLC膜および酸化物粒子含有DLC膜を形成するための装置(プラズマCVD装置)について説明する。図2は、被処理材である基材22の表面に、アモルファス状炭素・水素固形物の気相析出蒸着膜を形成するための装置を示している。この装置は、主として、接地された反応容器21と、該反応容器21内の所定の位置に配設される被処理材22に接続された導体23に、この反応容器21内に成膜用の炭化水素系ガス導入装置(図示せず)や反応容器を真空引きする真空装置(図示せず)等を介して、高電圧パルスを印加するための高電圧パルス発生電源24とを備えている。
【0030】
その他、上記の装置には、被処理材22の周囲に炭化水素系ガスプラズマを発生させるためのプラズマ発生用電源25が配設されている他、前記導体23および被処理材22に、高電圧パルスおよび高周波電圧の両方を同時に印加するために、高電圧パルス発生電源24およびプラズマ発生用電源25との間に重畳装置26が介装されている。なお、ガス導入装置および真空装置は、それぞれバルブ27aと27bを介して反応容器21に接続され、導体23は高電圧導入部を介して重畳装置26に接続されている。
【0031】
上記装置を用い、被処理材の表面に、アモルファス状炭素・水素固形物の気相析出蒸着膜を形成するには、反応容器21内の所定の位置に被処理材22を設置し、真空装置を稼動させて該反応容器21中の空気を排出して脱気したあと、ガス導入装置を使って有機系の炭化水素系ガスを該反応容器21内に導入する。次いで、プラズマ発生用電源25からの高周波電力を被処理材22に印加する。反応容器21は、アース線28によって電気的に中性状態にあるため、被処理材は、相対的に負の電位を有することになる。このため印加によって発生する、導入ガスのプラズマ中のプラスイオンは、負に帯電した被処理材22の形状に沿って発生するようになる。
【0032】
そして、高電圧パルス発生電源24からの高電圧パルス(負の高電圧パルス)を被処理材22に印加し、炭化水素系ガスプラズマ中のプラスイオンを被処理材22の表面に誘引吸着させる。この処理によって、被処理材22の表面に厚膜のアモルファス状の前記皮膜を均等に形成することができる。この炭化水素系ガスプラズマ中では、次に示すような現象が発生し、最終的には炭素と水素とからなるアモルファス状炭素・水素固形物が気相析出して被処理材22の表層部・気孔内に侵入ないし該表面を被覆するように生成して薄膜を形成するものと考えられる。
【0033】
即ち、上記プラズマCVD処理装置のアモルファス状炭素・水素固形物の層は、次のようなプロセス(イ)〜(ニ)に従って形成されるものと推定している。
(イ)導入された炭化水素系ガスのイオン化(ラジカルと呼ばれる活性な中性粒子も存在する)が起り、
(ロ)炭化水素系ガスから変化したイオンおよびラジカルは、負の電圧が印加された被処理材の面に衝撃的に衝突し、
(ハ)衝突時のエネルギーによって、結合エネルギーの小さいC−H間が切断され、その後、活性化されたCとHが重合反応を繰り返して高分子化し、炭素と水素を主成分とするアモルファス状の炭素・水素固形物を気相析出し、
(ニ)そして、上記(ハ)の反応が被処理材(基材、電気絶縁層の溶射皮膜等)の気孔内で起こると、該気孔内がアモルファス状炭素・水素固形物の微小固体粒子で充填され、一方、その表面で行われるとアモルファス炭素・水素固形物皮膜を形成することとなる。
【0034】
なお、この装置では、高電圧パルス発生電源4の出力電圧を下記(a)〜(d)のように変化させることによって、被処理材22に対して金属をふくめたイオン注入を実施することもできる。
(a)イオン注入を重点的に行う場合:10〜40kV
(b)イオン注入と薄膜形成の両方を行う場合:5〜20kV
(c)皮膜形成のみを行う場合:数百V〜数kV
(d)スパッタリングなどで重点的に行う場合:数百V〜数kV
【0035】
なお、高電圧パルス発生電源4では、
パルス幅:1μsec〜10msec、
パルス数:1〜複数回のパルスを繰り返すことも可能である。
また、プラズマ発生用電源25の高周波電力の出力周波数は数十kHzから数GHzの範囲で変化させることができる。
【0036】
反応容器21内に導入する成膜用導入ガスとしては、炭素と水素からなる有機系の炭化水素系ガスおよびこれにSi、Y、Al、Mgなどが添加したものなどである。
(イ)常温(18℃)で気相状態のもの
CH、CHCH、C、CHCHCH、CHCHCHCH
(ロ)常温で液相状態のもの
CH、CCHCH、C(CH、CH(CHCH、C12、CCl
(ハ)有機Si化合物(液相)
(CO)Si、(CHO)Si、[(CHSi]
【0037】
上記の反応容器内へ導入する有機系ガスは、常温で気相状態のものは、そのままの状態で反応容器21内に導入できるが、液相状態の化合物はこれを加熱してガス化させ、そのガス(蒸気)を反応容器内に供給する。
【0038】
電気絶縁用の溶射皮膜に対しては、基本的にはそのまま上述したアモルファス状炭素・水素固形物の気相析出蒸着膜を形成することができるが、この溶射皮膜の表面を機械的に研削・研磨したり、電子ビーム照射処理やレーザー照射処理して、表面膜を再溶融処理(2次再結晶化)したものであってもよい。
【0039】
次に、金属の超微粒子を含むDLC膜(即ち、金属粒子含有DLC膜)の形成方法と金属(合金)超微粒子の酸化物への転換方法について説明する。
この金属粒子含有DLC膜は、炭化水素系物質に金属元素を結合させた有機金属化合物のガスを用いてプラズマCVD処理することにより形成することができる。この有機金属化合物の大部分は、常温で液相状態を示すものが多い。したがって、液相状の該有機金属化合物を加熱してガス状とし、この有機金属化合物ガスを真空雰囲気の反応容器21内に導入して電圧を印加すると、基材表面には、炭素と水素ちからなる固相状態のアモルファス膜中に金属の超微粒子が共析することによって得られる。DLC膜中に混入する金属の超微粒子の大きさは、すべてナノオーダー(1×10−9m以下)であるため、光学電子顕微鏡はもとより、電子顕微鏡においても判別困難なほどである。
【0040】
この目的に使用する有機金属化合物としては、(CO)Si、(CHO)Si、(CHSi、〔(CHSi〕OなどがSi金属粒子を共析するのに好適であり、他の金属を共析させるには、前記有機化合物のSiの位置にAl、Y、Mgおよび周期律表IIIA族のランタン系列元素を付加したものを使用することによって得られる。また、ランタン系列金属の析出には、(C1119)や(C1221)基に、ランタン系金属が結合した有機金属化合物を用いることによって得られる(例えば、Sm(C1119、Yb(C1119、Sm(C1221、Gd(C1221など)。なお、2種以上の金属粒子を共析させる場合には、それぞれの有機金属化合物のガス(蒸気)を処理容器中に導入することによって得られる。
【0041】
このような方法によって得られる金属粒子含有DLC膜中の金属超微粒子の共析量は、3〜30at%の範囲が好適である。その共析量が30at%超では、品質管理が困難になるうえ、それ以上濃度を上げても格段の効果が得られないためであり、また3at%未満では、これを酸化させた際、均等な酸化膜の形成が得られないからである。なお、この共析率はSiやY、Mg、Alおよびランタン系列金属の場合、同じ範囲が適当である。
【0042】
また、金属粒子含有DLC膜中に含まれる金属の超微細粒子は、金属(合金)を次に示すような方法によって酸化物に変化させるのが好適である。
a.酸素ガスを含む雰囲気中での加熱
DLC膜が空気中または酸素ガスを含む雰囲気炉などの環境で加熱されると、このDLC膜に含まれている金属(合金)の超微粒子は膜の表面から酸化して、次第に酸化物に変化する。具体的にはSi→SiO、Al→Ai、Y→Yなど化学的に安定な酸化物に変化して、耐食性と耐プラズマ・エロージョン性を発揮することとなる。この場合の加熱温度は、上限を500℃とし、加熱時間はDLC膜中に含まれている金属超微細粒子の酸化物の変化速度によって決定される。それはDLC膜中に含まれている金属超微細粒子がすべて酸化物に変化している場合には、それ以上加熱するとDLC膜自体が熱的に劣化するおそれがあるためと、500℃以上に加熱するとDLC膜が劣化して化学的安定性が低下するからである。しかも物理的特性も低下し、場合によっては膜にクラックが発生することがある。なお、100℃以下の温度では、金属超微粒子の酸化速度が遅く生産的ではない。
b.酸素ガスプラズマによる酸化
例えば、図2のプラズマCVD装置を用い、雰囲気ガスとして酸素ガスまたはAr、Heなどに酸素ガスを含ませたガスを導入し、金属超微粒子を含むDLC膜を有する基材を負に帯電させてプラズマを発生させると、DLC膜に含まれる金属超微粒子は励起された酸素イオンの衝撃を受けて、この場合も表面から酸化物に変化する。この方法はDLC膜の形成後、直に実施できるうえ、DLC膜が過熱されるおそれがないため、加熱酸化法に比較すると、品質が安定しており、また、生産性の向上に繋がるので有利である。
【0043】
図3は、基材の表面に中間層として絶縁性を有するDLC膜を形成させた後、その上に金属Siの超微細粒子を含む酸化物粒子含有DLC膜を被覆し、これを酸素ガスプラズマ照射法によって酸化処理した本発明に特有の酸化物粒子含有DLC膜の断面を示したものである。電気絶縁性の中間層として形成したDLC膜と、SiOを含む酸化物粒子含有DLC膜との接合部は殆ど確認できないほどよく密着している。また、SiO粒子を大きさは、高倍率の電子顕微鏡で観察しても明らかでないほど微細なナノオーダー(1×10−9m以下)のものであり、これらの粒子が無数に層状に集合して耐食性を発揮している状況がわかる。
【実施例】
【0044】
(実施例1)
この実施例では、Al基材の表面に形成したDLC膜の水素含有量と基材の曲げ変形に対する抵抗およびその後の耐食性の変化について調査した。
(1)供試基材および試験片
供試基材は、Al(JIS−H4000規定の1085)とし、この基材から、寸法:幅15mm×長さ70m×厚さ1.8mmの試験片を作製した。
(2)DLC膜の形成方法およびその性状
試験片の全面にわたって、DLC膜を1.5μmm厚さに形成した。このとき、該DLC膜中の水素含有量を5at%〜50at%(残部は炭素)の範囲に制御したものを用いた。
(3)試験方法およびその条件
DLC膜を形成した試験片を、90°に曲げ変形を与え、曲げ部のDLC膜の外観状況を20倍の拡大鏡で観察した。また、JIS−Z2371に規定された塩水噴霧試験に供し、96時間曝露した。
(4)試験結果
表1に試験結果を示した。この試験結果から明らかなように、DLC膜中の水素含有量は少なく、炭素含有量の多いもの(No.1〜3)では、90°の曲げ変形を与えると、膜が剥離もしくは局部的に剥離した。一方、これらの剥離試験片を塩水噴霧試験に供すると、基材にAlが腐食され、多量の白さびが発生し、耐食性を完全に消失していることが判明した。これに対して、水素含有量が15at%以上〜40at%(No.4〜7)のDLC膜は、曲げ変形によっても剥離せず、塩水噴霧試験にもよく耐え、優れた耐食性を継持していることが確認された。
【0045】
【表1】

【0046】
(実施例2)
この実施例では、金属酸化物粒子を含むアモルファス状炭素・水素固形物の気相析出蒸着膜(酸化物粒子含有DLC)の膜厚と耐食性の関係について調査した。
(1)供試基材と皮膜
a.供試基材として、腐食作用によって赤さびを発生しやすいSS400鋼(寸法:幅30mm×長5mm×厚さ3.2mm)を用いた。
b.DLC膜:図2に示した装置を用いて、基材の全表面に対して、膜厚0.5、1.0、3.0、8.0、15.0μmのDLC膜を形成させたものと同じ膜厚の、SiO酸化物粒子を22at%含む酸化物粒子含有DLC膜を形成した2種類の供試膜を準備した。なお、SiO酸化物は酸素ガスプラズマ照射によって作成した。
(2)腐食試験条件
a.湿度95%の恒温槽(30℃)の雰囲気中に800時間放置して、DLC膜の変化を調査した。
b.JIS Z2371に規定されている塩水噴霧試験を800時間行いDLC膜の一般耐食性を調査した。
c.3mass%HCl水溶液中に48時間浸漬しDLC膜の耐酸性を調査した。
なお、上記の試験には、比較例としてそれぞれ無処理のSS400鋼試験片を同条件で試験した。
(3)試験結果
試験結果を要約し、表2に示した。この結果から明らかなように、無処理のSS400鋼試験片は、95%湿度中でも赤さびを発生し、塩水噴霧試験後では赤さびが黒変化するなど腐食が進行する一方、3%HCl水溶液中では化学的に溶出するなど極めて耐食性に乏しいことがわかる。これに対して、酸化物粒子含有DLC膜を3μm以上の厚さに形成させると、腐食性の強い3%HCl水溶液に対しても、十分な耐食性を発揮するのが確認された。また、これらの試験条件では、この酸化物粒子含有DLC膜中に含まれるSiO酸化物粒子が含まれていても優れた耐食性を示し、酸化物粒子を含まないDLC膜の耐食性に比較し、遜色のないことが判明した。
【0047】
【表2】

【0048】
〈実施例3〉
この実施例では、図1(a)に示す静電チャックの構造を想定し、電気導伝性の基材の表面に絶縁性の皮膜を施工した後、その上に酸化物粒子含有DLC膜形成したものの耐熱衝撃性を調査した。
(1)供試基材と皮膜
a.供試基材として、Al合金(JIS H4000規定6061合金)Ti合金(JIS H4600規定60種合金)Mg合金(JIS H4201規定1種合金)からそれぞれ試験片(寸法:幅30mm×長さ50mm×厚さ2.0mm)を採取した。
b.絶縁性皮膜として、供試基材の表面にA1(溶射皮膜50μm)AlN(PVD法5μm)を形成後、実施例2と同じ方法によって、これらの絶縁性皮膜の全表面をDLC膜および金属酸化物粒子を含むDLC膜によって被覆した皮膜試験片を作製した。
(2)熱衝撃試験条件
a.熱衝撃試験として、それぞれの皮膜試験片を大気中で加熱後、20℃の水道水中に投入する操作を1サイクルとして10回繰り返した後、皮膜の表面を拡大鏡を用いて観察した。
試験条件(i)200℃×15分間加熱→20℃水道水中投入
(ii)350℃×10分間加熱→20℃水道水中投入
(3)試験結果
熱衝撃試験結果を表3に要約して示した。この結果から明らかなように、従来のDLC膜に属する金属酸化物粒子を含まないDLC膜(No.1、3、5、7、9、11)は、加熱温度の比較的低い200℃→水冷の条件では健全な状態を維持したが、加熱温度が350℃に上昇するとDLC膜の一部に亀裂が発生するとともに、局部的ながら剥離する傾向が認められた。
これに対して、SiOを含む酸化物粒子含有DLC膜は、350℃→水冷の条件でも廟全な状態を維持しており、膜に亀裂はもとより剥離も認められなかった。
このような結果は、一般的なDLC膜は、成膜状態における残留応力が大きいため、熱衝撃の負荷によって亀裂を発生しやすいのに対し、SiO粒子を含むDLC膜では残留応力が小さく、熱衝撃をはじめ基材や絶縁層の物理的変化の影響を受け難い様子がうかがえる。
【0049】
【表3】

【0050】
〈実施例4〉
この実施例では、SUS316基材の表面に直接SiO酸化物粒子量の異なる酸化物粒子含有DLC膜を形成した後、これに曲げ変形を与えた試験片を作製した。その後、この試験片を用いて活性化されたハロゲンガス雰囲気中の腐食試験を行って、該酸化物粒子含有DLC膜の耐食性を調査した。
(1)供試基材と皮膜
a.供試基材として、SUS316鋼(寸法:幅10mm×長さ60mm×厚さ2.0mm)を用いた。
b.DLC膜、図2に示した装置によって、基材の全表面に対してSiO含有量が1〜32at%の範囲にある酸化物粒子含有DLC膜を被覆させた。
(2)試験方法と条件
a.曲げ試験:DLC膜を被覆した試験片の中央部を90°に曲げ変形を与え、曲げ部における皮膜の損傷の有無を拡大鏡(×5倍)を用いて観察した。
b.活性ハロゲンガス試験:この試験には図4に示す装置を用いた。この試験では、試験片41を電気炉42の中心部に設けられたステンレス鋼管43内部の設置台46上に静置した後、腐食性のガス44を左側から流した。配管途中に設けた石英放電管45に出力600Wのマイクロ波を付加させて、腐食性ガスの活性化を促した。また活性化した腐食性ガスは電気炉中に導き、試験片41を腐食した後、右側から系外に放出させた。この試験では、試験片温度200℃、腐食性ガス HCl1300ppm、NF15ppm、0100ppm残りArを75ml/minを流しつつ、30時間の腐食試験を行った。
(3)試験結果
試験結果を表4に要約した。この結果から明らかなように、曲げ試験では、金属酸化物粒子の有無にかかわらず、皮膜に割れの発生は認められなかった。しかし、曲げ試験後のDLC膜を腐食試験を行うと、SiO酸化物粒子を含まない皮膜(No.1)およびSiO含有量1at%の皮膜(No.2)の表面では、直径1〜3mm程度の丸い剥離現象が数カ所に発生した。この原因は、拡大鏡では発見できない小さなピンホールを通して、腐食性のガスが内部へ侵入し、基材を腐食することによって、DLC膜の密着性を低下させたものと考えられる。
これに対して、SiO酸化物粒子を3〜30at%含むDLC膜(No.3〜6、9〜12)では、試験後も全く異常は認められず、健全状態を維持していた。
ただ、SiO酸化物粒子を32at%含むDLC膜(No.7、13)では、表面に僅から赤さびが認められたので、皮膜に基材表面に達するピンホールもしくは割れの存在がうかがえる。この原因は、SiO酸化物粒子含有量が多くなると、曲げ変形によって皮膜が脆くなる傾向にあるためと考えられる。
【0051】
【表4】

【0052】
(実施例5)
この実施例では、Al合金基上に直接各種の金属酸化物を含む酸化物粒子含有DLC膜を形成したものと、中間層として金属酸化物粒子を含まないDLC皮膜を形成した後、その上に各種の金属酸化物粒子を含む酸化物粒子含有DLC皮膜を積層させたものの耐食性を調査した。
(1)供試基材と皮膜
a.供試基材として、Al合金(JIS H4000規定の6061)の試験片(寸法:幅30mm×長さ50mm×厚さ2mm)を用いた。
b.供試皮膜として、基材に直接、MgO、Y、Al、Yb、CeOを含む酸化物粒子含有DLC膜を5μmの厚さに形成したものと、中間層として酸化物粒子を含まないDLC膜を5μm形成後、上記酸化物粒子含有DLC膜を積層した試験片を作製した。
(2)試験条件
腐食試験条件として、次の3種類の試験を実施した。
a.活性ハロゲン試験:実施例3と同じ要領で実施
b.HCl蒸気試験:HClを300ppm含む空気中で60℃、100時間の腐食試験を実施
(3)試験結果
試験結果を表5に要約した。この結果から明らかなように、DLC膜中に金属酸化物と粒子を含まない試験片(No.1、7)では、ピンホールを通して内部に浸入した腐食成分によって基材が腐食され、皮膜の一部が剥離した。
これに対して、金属酸化物の粒子を含むDLC膜は、基材に直接またはDLC膜の中間層の上に積層した試験片(No.2〜6、8〜12)はすべて優れた耐食性を発揮し、異常は認められなかった。これらの結果から、本発明に係る金属酸化物粒子を含むDLC膜は、金属微粒子の酸化によって体積が膨張することによって、DLC膜に存在するピンホールを封孔する一方、金属酸化物自体が優れた耐食性を保有するためと考えられる。
【0053】
【表5】

【0054】
(実施例6)
この実施例では、実施例5で作製した試験片の一部とSiOを含有する酸化物粒子含有DLC膜の耐熱衝撃性を調査した。
(1)供試基材と皮膜
a.供試基材の種類と寸法は、実施例5に同じ。
b.供試皮膜の構造および厚さは、実施例4に同じ。ただし、酸化物粒子含有DLC膜に含ませる金属酸化物として膜はSiO、Y、Alの3種類とした。
(2)試験条件
熱衝撃試験条件は、実施例3に同じ。
(3)試験結果
試験結果を表6に示す。この結果から明らかなように、金属酸化物の粒子を含まないDLC膜(No.4)は残留応力が大きいため、熱衝撃を受けると剥離したが、酸化物粒子を含む酸化物粒子含有DLC膜(No.1〜3、5〜7)は、基材に直接成膜しても、またDLC膜の中間層の上に積層しても、剥離することなく、優れた耐熱衝撃性を示した。
【0055】
【表6】

【0056】
(実施例7)
この実施例では、複数の金属酸化物の粒子を含むDLC膜の耐熱衝撃性と耐ハロゲン腐食を調査した。
(1)供試基材と皮膜
a.供試基材として、市販されているグラファイト板(寸法:幅30mm×長さ50mm×厚さ5mm)を用いた。
b.供試皮膜の構造および厚は、実施例4に同じ。だだし、DLC膜に含ませる金属酸化物粒子は複数とし、その混在比を0.4〜0.5/0.6〜0.5at%比となるように成膜した。
金属酸化物の組合せ:SiO/Al、Al/Y、Y/CeO
(2)試験方法と条件
a.熱衝撃試験:大気中で350℃×10分間加熱した後、これを20℃の水道水中に投入する操作を操作を10回繰り返した。
b.活性ハロゲンガス腐食:実施例4と同じ条件で実施した。
(3)試験結果
試験結果を表7に要約した。この結果から明らかなように、グラファイト基材に対して、直接または酸化物粒子を含まないDLC膜の中間層上に、複数の酸化物粒子を含む酸化物粒子含有DLC膜を積層させても、熱衝撃試験に耐えるとともに、活性化されたハロゲン化合物のガスに対しても優れた耐食性を発揮することが確認された。
【0057】
【表7】

【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明の技術は、静電チャック部材のみに限定されず、その優れた一般耐食性と耐プラズマ・エロージョン性を利用して、半導体加工装置に組み込まれているデポシールド、バックルプレート、フォーカスリング、インシュレ一タリング、シールドリング、ベローズカバー、電極用保護膜などに適用できるほか、酸、アルカリ、医薬品などを取扱う装置・機器、液相および微小な腐食性成分が含まれる排気ガス用ポンプ類の防食用皮膜としても好適である。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】本発明に係る静電チャック部材の代表的断面図である。
【図2】プラズマCVD処理装置の略線図である。
【図3】本発明に係るSiO酸化物粒子を共析させた酸化物粒子含有DLC膜の断面を示す電子顕微鏡写真である。
【図4】ハロゲン化合物を含むガスを活性化させた腐食試験装置の略線図である。
【符号の説明】
【0060】
1 電気導伝性を有する基材
2 セラミック絶縁体
3 金属電極
4 DLC層(膜)
5 金属酸化物粒子を含むDLC層(膜)
21 反応容器
22 静電チャック用基材
23 導体
24 高電圧パルス発生電源
25 プラズマ発生用電源
26 重畳装置
27a、27b バルブ
28 アース
29 高電圧導入部
41 試験片
42 電気炉
43 ステンレス鋼管
44 腐食性ガス
45 石英放電管
46 試験片設置台

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電極層と電気絶縁層とからなる静電チャック部材の外表面に、金属酸化物の超微粒子を含み、水素含有量が15〜40at%であるアモルファ状炭素・水素固形物の気相析出蒸着膜を有することを特徴とする静電チャック部材。
【請求項2】
基材の表面に、電気絶縁層を介して電極層を配設し、その電極層ならびに電気絶縁層をアモルファス状炭素・水素固形物の気相析出蒸着膜にて覆い、かつさらにその外表面を、金属酸化物の超微粒子を含み、水素含有量が15〜40at%であるアモルファス状炭素・水素固形物の気相析出蒸着膜にて被覆してなることを特徴とする請求項1に記載の静電チャック部材。
【請求項3】
電極を兼ねる電気導伝性基材の表面に、アモルファス状炭素・水素固形物の気相析出蒸着膜が設けられ、さらにこのアモルファス状炭素・水素固形物の気相析出蒸着膜の外表面を、金属酸化物の超微粒子を含み、水素含有量が15〜40at%であるアモルファス状炭素・水素固形物の気相析出蒸着膜にて被覆してなることを特徴とする請求項1に記載の静電チャック部材。
【請求項4】
電極を兼ねる電気導伝性基材の表面に、電気絶縁層が設けられ、さらにこの電気絶縁層の外表面を、金属酸化物の超微粒子を含み、水素含有量が15〜40at%であるアモルファス状炭素・水素固形物の気相析出蒸着膜にて被覆してなることを特徴とする請求項1に記載の静電チャック部材。
【請求項5】
前記アモルファス状炭素・水素固形物の気相析出蒸着膜は、炭素含有量が85〜60at%、水素含有量が15〜40at%の微小固体粒子からなるプラズマCVD処理皮膜であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1に記載の静電チャック部材。
【請求項6】
金属酸化物の超微粒子を含有する気相析出蒸着膜は、金属酸化物のナノオーダー級超微粒子を3〜30at%含有し、残部が炭素と水素からなるアモルファス状炭素・水素固形物のプラズマCVD薄膜であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1に記載の静電チャック部材。
【請求項7】
前記金属酸化物の超微粒子を含む気相析出蒸着膜は、アモルファス状炭素・水素固形物皮膜のプラズマCVD薄膜を形成した後、そのプラズマCVD薄膜に酸素ガスプラズマを照射して、金属・合金の超微粒子の一部または全部を酸化処理して得られた膜であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1に記載の静電チャック部材。
【請求項8】
前記金属酸化物は、Si、Y、Mg、Alおよび周期律表IIIA族のランタン系列金属から選ばれる1種以上の金属・合金の酸化物であって、1×10−9m以下の大きさのナノオーダー級超微粒子であることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1に記載の静電チャック部材。
【請求項9】
前記電気絶縁層は、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、窒化硼素およびサイアロンから選ばれるセラミックスであることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1に記載の静電チャック部材。
【請求項10】
炭素と水素からなる前記アモルファス状炭素・水素固形物のプラズマCVD薄膜は、電気絶縁性を有することを特徴とする請求項1〜9のいずれか1に記載の静電チャック部材。
【請求項11】
反応容器内に保持した電極層と電気絶縁層とからなる静電チャック部材の外表面に、この反応容器内に有機金属化合物のガスを導入してプラズマCVD処理することにより、炭素と水素の固相微粒子と共に金属の微粒子を共析させ、かつ水素含有量が15〜40at%であるアモルファス状炭素・水素固形物からなる気相析出蒸着膜を形成することを特徴とする静電チャック部材の製造方法。
【請求項12】
前記静電チャック部材が、基材の表面に電気絶縁層を介して電極層を配設してなるものにおいて、その電極層ならびに電気絶縁層の外表面に、プラズマCVD処理により形成されるアモルファス状炭素・水素固形物の気相析出蒸着膜にて覆い、次いで、その外表面を、有機金属化合物ガスを用いたプラズマCVD処理により、金属の超微粒子を含み、かつ水素含有量が15〜40at%であるアモルファス状炭素・水素固形物の気相析出蒸着膜を被覆することを特徴とする請求項11に記載の静電チャック部材の製造方法。
【請求項13】
前記静電チャック部材が、電極を兼ねる電気導伝性基材によって形成されたものにおいて、その基材の表面に、プラズマCVD処理によりアモルファス状炭素・水素固形物の気相析出蒸着膜を被覆し、次いで、このアモルファス状炭素・水素固形物の気相析出蒸着膜の外表面に、有機金属化合物のガスを用いたプラズマCVD処理により、金属の超微粒子を含み、かつ水素含有量が15〜40at%であるアモルファス状炭素・水素固形物の気相析出蒸着膜を被覆することを特徴とする請求項11に記載の静電チャック部材の製造方法。
【請求項14】
前記静電チャック部材が、電極を兼ねる電気導伝性基材によって形成されたものにおいて、その基材の表面に、まず、電気絶縁層を形成し、次いでその電気絶縁層の外表面に、有機金属化合物のガスを用いたプラズマCVD処理により、金属の超微粒子を含み、かつ水素含有量が15〜40at%であるアモルファス状炭素・水素固形物の気相析出蒸着膜を被覆することを特徴とする請求項11に記載の静電チャック部材の製造方法。
【請求項15】
前記アモルファス状炭素・水素固形物の気相析出蒸着膜は、炭素含有量が85〜60at%、水素含有量が15〜40at%の微小固体粒子からなるプラズマCVD処理皮膜であることを特徴とする請求項11〜14のいずれか1に記載の静電チャック部材の製造方法。
【請求項16】
金属の超微粒子を含有するアモルファス状炭素・水素固形物の気相析出蒸着膜は、金属のナノオーダー級超微粒子を3〜30at%含有し、残部が炭素と水素からなるアモルファス状炭素・水素固形物のプラズマCVD薄膜であることを特徴とする請求項11〜15のいずれか1に記載の静電チャック部材の製造方法。
【請求項17】
前記金属は、Si、Y、Mg、Alおよび周期律表IIIA族のランタン系列金属から選ばれる1種以上の金属・合金の微粒子であって、1×10−9m以下の大きさのナノオーダー級超微粒子であることを特徴とする請求項11〜16のいずれか1に記載の静電チャック部材の製造方法。
【請求項18】
前記金属の超微粒子を含むアモルファス状炭素・水素固形物皮膜を形成した後、その皮膜に酸素ガスプラズマを照射して、前記金属・合金の超微粒子の一部または全部を、酸化物粒子にする酸化処理を行うことを特徴とする請求項11〜17のいずれか1に記載の静電チャック部材の製造方法。
【請求項19】
前記金属の超微粒子を含むアモルファス状炭素・水素固形物皮膜の酸化処理は、前記皮膜を酸素ガスを含む環境で100℃〜500℃の温度域にて加熱することによって行うことを特徴とする請求項18に記載の静電チャック部材の製造方法。
【請求項20】
前記電気絶縁層は、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、窒化硼素およびサイアロンから選ばれるセラミックスであることを特徴とする請求項14に記載の静電チャック部材の製造方法。
【請求項21】
前記電気絶縁層は、炭素と水素からなるアモルファス状炭素・水素固形物の皮膜であることを特徴とする請求項11〜20のいずれか1に記載の静電チャック部材の製造方法。
【請求項22】
前記基材は、Alおよびその合金、Tiおよびその合金、Mg合金、ステンレス鋼、等方性炭素ならびにグラファイトから選ばれるいずれか1種以上からなることを特徴とする請求項11〜21のいずれか1に記載の静電チャック部材の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−71223(P2009−71223A)
【公開日】平成21年4月2日(2009.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−240671(P2007−240671)
【出願日】平成19年9月18日(2007.9.18)
【出願人】(000109875)トーカロ株式会社 (127)
【Fターム(参考)】