説明

音声再生装置、音声再生方法、プログラム

【課題】自動車の障害物警告システムなどとして、より付加価値の高いものを提供する。
【解決手段】警告音として楽曲データA,B,C,Dの組を記憶保持しておく。これらの楽曲データは、例えば、その音声内容が異なっており、例えば楽曲データA,B,C,Dの順で緊張感が強くなる曲調とされる。そして、障害物距離センサにより障害物までの距離Disを検出し、この距離Disに応じて楽曲データA,B,C,Dのうちから対応するものを選択して再生出力するようにされる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば自動車などのようにして、運転者が運転操作を行うことで移動する移動体に備えられる音声再生装置とその方法に関する。また、このような音声再生装置が実行するプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車などに搭載される警告システムとして、自動車周囲の障害物の存在をセンサにより検知して警告音を運転者に聴こえるように出力するものが知られている。また、このような障害物警告システムとしては、センサにより検知した自動車と障害物との距離に応じて警告音のパターンを変更するようにして、運転者が障害物までのおよその距離を把握できるようにしたものが多い。
【0003】
【特許文献1】特開平5−58219号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記の警告音のパターンは、例えばビープ音などといわれる単発的な音の発音間隔や音高を設定して形成されるものであることから、運転者にとっては無機質に感じるものであり、必ずしも心地よく聴こえるものではない。そこで、上記のような警告音としての音について、警告機能を損なうことなく良好な聴感が得られるようにすれば、運転者にとっても好ましく、また、警告システムとしての付加価値も高まることになる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
そこで本発明は上記した課題を考慮して、音声再生装置として次のように構成する。
つまり、それぞれが異なる再生内容を有する複数の楽曲データを保持する楽曲データ保持手段と、この楽曲データ保持手段に保持されている楽曲データを、移動体の運転者が聴取可能なようにして音声として再生出力する楽曲再生出力手段と、運転者が行うとされる移動体の運転に応じて変化し得る所定状態を検出して得られる検出情報を入力する検出情報入力手段と、この検出情報入力手段により入力した検出情報に応じて、楽曲データ保持手段に保持されている複数の楽曲データのうちから1つの楽曲データを選択し、この選択した楽曲データを楽曲再生出力手段により所定の態様で再生出力させるようにされた楽曲再生制御手段とを備えることとした。
【0006】
また、音声再生装置として次のようにも構成することとした。
それぞれが異なる再生内容を有するとされる複数の楽曲区間部が所定順序で連結されるようにして形成される1つの楽曲データを保持する楽曲データ保持手段と、この楽曲データ保持手段に保持されている楽曲データを、移動体の運転者が聴取可能なようにして音声として再生出力する楽曲再生出力手段と、運転者が行うとされる移動体の運転に応じて変化し得る所定状態を検出して得られる検出情報を入力する検出情報入力手段と、検出情報入力手段により入力した検出情報に応じて、楽曲データ保持手段に保持されている楽曲データのうちから1つの楽曲区間部を選択し、この選択した楽曲区間部に相当するとされる楽曲データ部分を楽曲再生出力手段により所定の態様で再生出力させるようにされた楽曲再生制御手段とを備えることとした。
【0007】
なお、上記各構成における「移動体」とは、例えば自動車などをはじめとして、運転者が運転としての操作を行うことで移動することのできるものをいう。また、ここでの「所定状態」とは、例えば移動体から或る対象物までの距離などをはじめとして、運転者による移動体の運転に応じて変化し得る特定の状態を指す。
そして、上記各構成によれば、運転者による移動体の運転に応じて変化し得る所定状態について、実際に変化が生じるのに応じて、音声として再生出力される楽曲、あるいは1楽曲内における区間部分が切り換わるようにされる。つまり、所定状態の変化に応じた音声出力としては、例えばビープ音のパターンを変更するのではなく、あくまでも、楽曲としての内容を変更するようにされる。
【発明の効果】
【0008】
これにより本願発明としては、例えば移動体の運転に関して警告音を出力させるような場合に、単純なビープ音や電子音のパターンに代わり、楽曲としての音声が出力されることになるものである。これにより、運転者は、より聴き心地の良い警告音としての機能音声を聴くことができるものであり、警告音を出力するシステムとしても、これまでより高い付加価値を与えることが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本願発明を実施するための最良の形態(以下、実施の形態という)について説明を行っていくこととする。本実施の形態としては、移動体の1つである自動車の運転者に対して所定の状況、状態に応じて警告、通知を行うようにされた警告システムに対して、本願発明に基づく音声再生装置を適用した場合を例に挙げることとする。
【0010】
図1は、第1の実施の形態に対応した警告システムの構成例を示している。
この図に示される警告システムは、障害物距離センサ1とカーオーディオ装置2とから成るものとされる。
障害物距離センサ1は、例えば自動車のボディの前方及び後方における所定位置に取り付けられて、その付近に在る障害物までの距離に応じた検知信号を出力するようにされた所定数のセンサ11−1〜11−nと、これらのセンサから出力される検知信号を取り込んで、障害物までの距離を示す距離検出情報を生成して出力する検出回路12とを備える。
なお、この障害物距離センサ1による障害物までの距離を測定、検出するための構成としては、これまでに周知とされている技術が採用されればよい。例えば、センサ11−1〜11−nとしては、発信器により超音波を発信出力するとともに、この発信出力させた超音波の反射成分を受信して、その超音波の発信タイミングと受信タイミングの時間差に応じた信号を検知信号として出力するようにされる。
また、検出回路12では、センサ11−1〜11−nの各々から取り込んだ検知信号を利用して、障害物までの距離の情報を得るようにされる。このようにして取得した距離の情報が距離検出情報として外部に出力される。なお、本実施の形態の構成であれば、検出回路12としては、少なくとも、センサ11−1〜11−nのそれぞれの配置位置に応じた複数の距離検出情報を生成して出力することが可能であるが、以降における説明を簡単で分かりやすいものとするために、検出回路12は、例えばセンサ11−1〜11−nからの検知信号により検出される距離のうちで最も短いとされる距離を示す1つの距離検出情報を出力するものであることとする。
【0011】
カーオーディオ装置2は、その本来の機能としては、例えば搭乗者の娯楽のために、楽曲などとしての音源を音声として再生出力するようにされ、例えば図示するようにして、音源部21、警告用楽曲データ記憶部22、音声出力処理部23、及び制御部25を、内部バスを介して接続するようにして構成される。
【0012】
音源部21は、楽曲などとされる音源としてのオーディオ信号(オーディオデータ)を有し、例えば制御部25の制御に応じて、指定された楽曲のオーディオ信号を音声出力処理部23に対して出力するようにされる。なお、音源部21の実際としては、例えば現状であれば、HDD(Hard Disc Drive)に対してファイル単位で管理されるようにしてデジタルオーディオデータを記憶させたものの他、トラック単位あるいはファイル単位で管理されるようにしてデジタルオーディオデータが記憶されたCD(Compact Disc)、DVD(Digital Versatile Disc)などのディスクメディア、あるいは、フラッシュメモリなどのメモリメディアと、これらのメディアに対応するドライブなどとされる。
【0013】
警告用楽曲データ記憶部22は、警告音としての機能を果たすために音声として再生出力されるべき楽曲データを記憶保持している。警告用楽曲データ記憶部22に記憶される楽曲データ(オーディオデータ)は、制御部25の制御によって読み出しが行われ、例えば内部バス26を経由して音声出力処理部23に対して転送される。
なお、警告用楽曲データ記憶部22に記憶される楽曲データの内容例については後述する。また、この警告用楽曲データ記憶部22の実際としては、例えば、制御部25内において備えられるとされるROMの一部記憶領域を使用することが考えられる。あるいは、フラッシュメモリやHDDなどの不揮発性の記憶媒体などを採用しても良い。また、フラッシュメモリを採用する場合には、例えば各種設定情報やプログラムなどの記憶保存のために制御部25などがフラッシュメモリを備えていれば、これを利用することができる。また、HDDを採用する場合にも、カーオーディオ装置2が音源部21やプログラムの記憶のためにHDDを備えているのであれば、これを利用することができる。
【0014】
音声出力処理部23は、上記のようにして入力される音源部21からのオーディオデータ、あるいは警告用楽曲データ記憶部22からの楽曲データについて、例えば圧縮符号化に対する伸長処理や音質調整、音量調整などをはじめとする所定の処理を施して増幅を行い、最終的にスピーカ24から音声として出力させる。なお、音声出力処理部23の実際としては、ステレオチャンネル、あるいは5.1chサラウンドなどに代表されるいわゆるマルチチャンネルに対応した音声再生が行えるように構成されて良いものであるが、ここでは図示を簡単で分かりやすいものとすることの都合上、1チャンネル分の音声出力系統のみを示している。
【0015】
制御部25は、例えばCPU、ROM、RAMなどにより形成されるマイクロコンピュータを中心に構成されるもので、カーオーディオ装置2における各種の制御処理を実行する。
なお、実際においては、搭乗者がカーオーディオ装置2を操作するための各種操作子(あるいはリモートコントロール装置など)が設けられ、これらの操作子に対して行われた操作に応じて、制御部25が所要の制御処理を実行するようにされるのであるが、この構成については図示を省略している。
【0016】
そして、この場合の制御部25は、障害物距離センサ1(検出回路12)から出力される距離検出情報を入力するようにされている。実際にあっては、例えば障害物距離センサ1としての装置から引き出された距離検出情報出力のためのハーネス、ケーブルを、カーオーディオ装置2側における所定の入力端子などと接続するようにされる。これにより、上記入力端子から例えば所定のポートを介するようにして、制御部25(CPU)に対して距離検出情報が入力されることになる。
【0017】
そして、本実施の形態のカーオーディオ装置2では、上記のようにして障害物距離センサ1から入力される距離検出情報に基づいて、障害物までの距離に応じた警告音を出力するように構成される。このような、本実施の形態のカーオーディオ装置2による障害物警告動作の基本的な態様例について、図2を参照して説明する。
図2では、本実施の形態の警告システム(障害物距離センサ1、カーオーディオ装置2)が搭載された自動車100がバックしながら障害物101に接近していくという状況を想定している。
先ず、図2(a)に示すようにして、自動車の後端部(自動車後方のセンサ11の配置位置)から障害物101までの距離Lが2.0mを超える状態では、障害物警告のための警告音は特に出力しないこととしている。次に、図2(a)の状態からさらに自動車100が後方に進行したことにより、図2(b)に示すようにして距離Lが2.0m以内から1.5mを超える範囲にまで短くなると、この間は、警告音として楽曲Aの音声を出力するようにされる。また、例えば、一度、楽曲Aを最後まで出力した時点で、未だ、距離Lが2.0m以内から1.5mを超える範囲にあった場合には、再度、楽曲Aを先頭から音声出力する。つまり、距離Lが2.0m以内から1.5mを超える範囲とされている状態では、楽曲Aをリピートするようにして音声出力するようにされる。
また、自動車100が上記図2(b)の状態からさらに後方に進行して、図2(c)に示すようにして、距離Lが1.5m以内から1.0mを超える範囲にまで短縮されたとすると、これまで出力されていた楽曲Aに代わり、別の楽曲Bをリピート出力するようにされる。さらに、自動車100が後方に進行して、図2(d)に示すようにして、距離Lが1.0m以内から0.5mを超える範囲にまで短縮されたとすると、これまでの楽曲Bに代えて別の楽曲Cをリピート出力するようにされる。
そして、さらに自動車100が後方に進行したことで、図2(e)に示されるように、距離Lが0.5m以内になったとされると、これまでの楽曲Cに代えて、別の楽曲Dを音声出力する。ただし、この楽曲Dに関しては、リピート出力させるのではなく、曲の先頭から最後まで一通り(一回)出力させたとすると、そのまま出力を停止させるようにする。これは、図2(e)に示される距離Lは、運転者がブレーキをかけて自動車を停止させるべき距離であるとの考え方に基づいての設定とされる。つまり、楽曲Dはあくまでも障害物との距離を知らせる警告音であるから、自動車が止まったのにもかかわらず警告音を出力させていると、運転者(及び搭乗者)が不快感を覚える可能性があることを配慮して、リピート出力せずにその出力を停止させることとしているものである。
【0018】
上記図2の説明によると、第1の実施の形態の障害物警告の基本的な動作としては、警告音を出力させるべき自動車(センサ11)から障害物までの距離Lについては、例えば2.0m以内であることとしたうえで、さらに、図2(b)〜図2(e)に示すようにして距離Lについて4段階に区分し、距離Lが短縮されていく段階ごとに、順次、楽曲A、B、C、Dを音声として出力させるようにしているものである。
ここで、例えば楽曲A、B、C、Dのそれぞれを再生して聴くことのできる音声内容としては、楽曲A、B、C、Dの順番で、より緊張感、緊迫感が高まるような曲調となるようにされている。これにより、この警告音機能としての楽曲を聴いている運転者は、自動車の移動、進行に伴って障害物までの距離が短くなっていくことを、楽曲A、B、C、Dの切り換わりに応じた、曲調の緊張感、緊迫感の強まりにより知覚できることになる。
【0019】
例えば、上記のようにして、自動車から障害物までの検出距離に応じて警告音の内容を変更していくということは、これまでにも行われていることではある。しかしながら、これまでにあっては、警告音は楽曲といえるものではなく、あくまでも、ビープ音やこれに準じた単発的な音を基としており、このような単発音の発音間隔や音高などを変化させて発音パターンを形成することで、警告音の内容を変更していたものである。
これに対して、本実施の形態では、警告音の内容変更を、楽曲の変更により行うようにされている。これにより、先ず、警告音が楽曲とされていることで、従来からの単発音によるもののような聴感上の味気無さであるとか心地悪さなどを感じることがない、あるいは感じにくいようにすることができる。また、楽曲とされていることで、各曲のメロディやアレンジなどは多様に考えられるものであるから、警告音としての機能を充分に果たしながらも、例えば楽曲を鑑賞する楽しみなどの娯楽性も提供することが可能とされる。このようにして、本実施の形態の警告システムとしては、例えば従来と比較して、より付加価値の高いものを提供できるものである。
【0020】
続いて、上記図2に示した第1の実施の形態としての障害物警告動作を実現するための技出構成例について説明していくこととする。
先ず、図2による説明では、警告音として楽曲A,B,C,Dの4曲が使用され、これを音声として出力するようにされているが、これら楽曲A,B,C,Dの音源は、それぞれが、所定形式、所定構造による楽曲データとして、警告用楽曲データ記憶部22に記憶させておくようにされる。そこで、図3により、第1の実施の形態に対応して警告用楽曲データ記憶部22に記憶される楽曲データの内容例を示しておくこととする。
この図2にあっては、警告用楽曲データ記憶部22としてのデータ記憶領域において、楽曲データA,B,C,Dの4つの楽曲データが記憶されている場合が示されている。これら楽曲データA,B,C,Dは、ここでは、それぞれが所定形式によるオーディオデータとされて、例えばファイル単位により管理する。そして、楽曲データA,B,C,Dごとに、そのオーディオデータファイルを再生して得られる音声内容が、それぞれ、図2により説明した楽曲A,B,C,Dとしての再生内容を有するものとされる。
また、楽曲A,B,C,Dは障害物警告に用いられるという点で1組を成すものである、ということがいえるが、このことに応じて、これらの楽曲に対応する楽曲データA,B,C,Dも、1つの組を成すものとして管理するようにされる。ここでは、このような複数の楽曲データから成るものとされる組を楽曲データセットということにしている。
【0021】
次に、第1の実施の形態としての障害物警告動作を実現するために制御部25が実行するものとされる処理手順例を、図4のフローチャートに示す。
なお、この図に示す手順は、上記制御部25において、CPUが、ROMなどの記憶装置に記憶されているプログラムを実行することで実現される処理動作であるとみることができる。このようなプログラムは、上記のようにして、例えばROMに対して製造時などに書き込んで記憶させるほか、リムーバブルの記憶媒体に記憶させておいたうえで、この記憶媒体からインストールさせるようにしてカーオーディオ装置2におけるしかるべき記憶装置、記憶媒体に記憶させることが考えられる。また、ネットワーク上のサーバなどにおける記憶装置に記憶させておいたうえで、カーオーディオ装置2にネットワーク通信機能を持たせることとし、サーバからダウンロードして取得し、所定の記憶装置、記憶媒体にインストールさせることも考えられる。この点については、後述する図6、図8などのフローチャートについても同様である。
【0022】
先ず、前提として、図1に示される警告システムが起動しているときには、カーオーディオ装置2の制御部25は、一定時間ごとに障害物距離センサ1から距離検出情報を取り込み、この取り込んだ距離検出情報から検出距離Disとしての値を得るように動作しているものとする。このようにして得る検出距離Disとしての値は、先の障害物距離センサ1についての説明からも理解されるように、自動車(センサ11)から障害物までの距離を示していることになる。
そのうえで、図4のステップS101としては、上記のようにして得た検出距離Disの値について2.0m以下(Dis≦2.0m)であるか否かについての判別を行うこととしている。ここで否定の判別結果が得られた場合、つまり、自動車(センサ11)から障害物までの距離が2.0mを超える場合には、一旦、この図に示すルーチンを終了して、次のしかるべきタイミングで、ステップS101に戻るようにされる。これに対して、検出距離Disの値が2.0m以下であるとしてステップS101にて肯定の判別結果が得られた場合には、ステップS102以降の手順に進む。なお、ステップS101にて肯定の判別結果が得られるときとは、例えば図2(a)から図2(b)への遷移として示したように、自動車から障害物までの距離が、2.0m超から2.0以下に変化した状況に対応する。
【0023】
ステップS102においては、図3に例示した警告用楽曲データ記憶部22に記憶されている楽曲データセット(楽曲データA,B,C,D)のうちで、楽曲データAの音声再生に関する制御処理を下記のようにして実行する。
ステップS102としては、先ず、楽曲データAを再生出力中の状況にあるか否かについての判断を行うようにされる。このとき、楽曲データA以外の楽曲データB,C,Dの何れかを再生中にある、あるいは、未だ何れの楽曲データも再生していない状態にあって、楽曲データAを再生出力していないと判断した場合には、楽曲データAの再生出力が開始されるようにするための制御処理を実行する。つまり、制御部25(CPU)は、これまでにおいて楽曲データB,C,Dの何れかを再生していた場合には、その再生を中止させたうえで、警告用楽曲データ記憶部22に記憶されている楽曲データセット(楽曲データA,B,C,D)のうちから、再生対象の楽曲データとして楽曲データAを選択する。そして、この楽曲データAのオーディオデータファイルを指定して警告用楽曲データ記憶部22から読み出し、音声出力処理部23に対して入力させたうえで、この楽曲データAのオーディオデータが音声として再生出力されるように音声出力処理部23を制御する。このようにして、障害物までの距離が2.0m超から2.0m未満に変化する状況、状態となったことに応じて、警告音として楽曲Aの音声出力が開始されることになる
また、ステップS102に至った段階で既に楽曲データAを再生出力中にあったことが判断された場合には、このステップS102としては、これまでの楽曲データAの再生出力を継続させることになる。ただし、楽曲データAの再生出力を継続させた結果として、楽曲データAの終了まで一通り再生出力させたことで、1コーラス分の楽曲Aの音声出力が終了した場合には、再度、楽曲データAの先頭から再生を開始するようにして、楽曲データAの再生を継続するようにされる。つまり、楽曲Aの音声出力をリピートさせる。
【0024】
上記のようにしてステップS102としての手順により、楽曲データAの再生出力を開始させたとすると、続いては、ステップS103により、現在の検出距離Dis(単位はmとする)が示す値についての判定を行うようにされる。
上記ステップS103による判定結果として、例えば1.5<Dis≦2.0であると判定されたとする。この判定結果は、図2(b)に示した自動車100から障害物101までの距離Lとなっている状況に対応する。この判定結果となったことに応じては、ステップS102に戻ることで、楽曲データAの再生出力を開始、または継続させる。つまり、前回のステップS103による判定結果も、1.5<Dis≦2.0であるとされ、距離Lについて、1.5m超〜2.0m以下となっている状態が継続しているとされる場合は、それまでの楽曲データAの再生出力を継続させる。あるいは、前回のステップS103による判定結果が後述する1.0<Dis≦1.5とされてステップS104に至るものであった場合(ただし、ステップS103の実行タイミング(時間間隔)設定によっては、0.5<Dis≦1.0の判定結果が得られてステップS105に至る場合もあり得る)、即ち、距離Lについて、1.0m超〜1.5m以下の状態から1.5m超〜2.0m以下の状態に長くなったとする場合には、それまでの楽曲データB(あるいは楽曲データC)の再生出力を停止させたうえで、楽曲データAの再生出力を開始させるようにするものである。
【0025】
また、ステップS103により、図2(c)の距離Lの状況に対応する、1.0<Dis≦1.5であるとの判定結果が得られた場合には、ステップS104に進む。
ステップS104では、ステップS102に準じて、楽曲データBの再生出力に関する制御処理を実行する。つまり、前回のステップS103の判定結果が、1.5<Dis≦2.0、あるいは0.5<Dis≦1.0とされていたことに応じて、現時点までにおいて、楽曲データA,Cの何れかが再生出力中であって、楽曲データBが再生出力されていなかったのであれば、これまでの楽曲データの再生出力を停止させたうえで、楽曲データBの再生出力を開始させる。
また、前回のステップS103の判定結果も今回と同様に1.0<Dis≦1.5とされていたことに応じて、現時点までにおいても楽曲データBの再生出力を行っていた場合には、これまでの楽曲データBの再生出力を継続させるようにする。
【0026】
また、ステップS103により、図2(d)の距離Lの状況に対応する、0.5<Dis≦1.0であるとの判定結果が得られた場合には、ステップS105に進む。
ステップS105としても、例えばステップS102、あるいはステップS104に準じて、楽曲データCの再生出力に関する制御処理を実行する。この場合には、例えば、前回のステップS103の判定結果が、1.0<Dis≦1.5とされていたことに応じて、現時点までにおいて、楽曲データBが再生出力中であったのであれば、これまでの楽曲データの再生出力を停止させたうえで、楽曲データCの再生出力を開始させる。
また、前回のステップS103の判定結果も今回と同様に0.5<Dis≦1.0とされていたことに応じて、現時点までにおいても楽曲データCの再生出力を行っていた場合には、これまでの楽曲データCの再生出力を継続させるものである。
上記ステップS104、S105の手順を終了した後は、ステップS103による検出距離Disの値の判定に戻るようにされる。
【0027】
また、ステップS103により、図2(e)の距離Lの状況に対応する、Dis≦0.5であるとの判定結果が得られた場合には、ステップS106に進む。
ステップS106においては、例えばそれまでの楽曲データCの再生出力を停止させたうえで、楽曲データDの再生出力を開始させる。ただし、ステップS106では、リピート再生は行わずに、楽曲データDを先頭から最後まで一回再生出力させる制御処理の実行を以て完了するようにされる。これにより、図2においても説明した、楽曲Dの1コーラスを一回のみ音声出力させるという動作が得られることになる。ステップS106の手順を完了すると、ステップS103には戻ることなく、例えば一旦、この図に示す処理を抜けるようにされたうえで、所定タイミングでステップS101に戻るようにされる。
【0028】
また、ステップS103において、図2(a)の距離Lの状況に対応する、2.0<Disであることが判別された場合には、ステップS107に進む。なお、このステップS107に進む場合とは、図2においてはその状況を説明してはいなかったが、例えば検出距離Disが1.5<Dis≦2.0とされて楽曲データAを再生していたとされる状況から、再度、検出距離Disが2.0m超に戻った場合となる。
この場合には、例えば、これまで再生出力していた楽曲データAについて、その再生音声がフェードアウトするようにして音声出力処理部23を制御したうえで、再生出力を終了させる。この制御の結果、これまで出力されていた楽曲Aの音は、フェードアウトしながら消えていくようにされる。
なお、ステップS107を上記のような処理手順とするのは、次のような理由による。
ステップS107に至ったということは、自動車が障害物から徐々に離れていった結果、安全な距離Lが確保されたものであるとみてよい。そこで、これまで出力させていた警告音を停止(警告音出力を解除)させる必要が生じることになる。ただし、この場合の警告音は楽曲であることから、例えばこれまでの楽曲データの再生を即座に停止させてしまったとすると、搭乗者には、それまで室内に流れていた楽曲の音が突然途切れるようにして無くなってしまうようにして聴こえ、不快感を覚える可能性があるなどして好ましいといえない。そこで、ステップS107では、再生楽曲の停止にあたりフェードアウトを伴うようにさせているものであり、これにより、例えば楽曲の途中であっても、聴感的には自然に音声出力を終了させることができる。
また、ステップS103の実行タイミングによっては、検出距離Disが1.5<Dis≦2.0として判定される過程を飛び越えて、例えば、1.0<Dis≦1.5あるいは0.5<Dis≦1.0であるとの前回の判定結果に続き、今回の判定結果が2.0<Disとなる場合もあると考えられる.この場合には、それまでの楽曲データB、又は楽曲データCの再生を中断させて、楽曲データAを再生して所定のタイミングでフェードアウトさせるようにすればよい。
そして、上記のようにしてステップS107の手順を実行した後は、所定タイミングでステップS101に戻るようにされる。
【0029】
次に、本願発明の第2の実施の形態について説明する。なお、第2の実施の形態に対応する警告システムとしては、図1に示した構成と同様となる。但し、下記のようにして、警告用楽曲データ記憶部22に記憶されるデータ内容が、第1の実施の形態とは異なってくる。
【0030】
第2の実施の形態において、障害物警告のために警告用楽曲データ記憶部22にて記憶保持すべきデータは、第1の実施の形態に対応する1組の楽曲データセットに代わって、1つの楽曲データ(警告用楽曲データ)としてのオーディオデータファイルのみとなる。
この警告用楽曲データを再生出力して聴くことのできる楽曲(警告用楽曲)の内容例を、図5により楽譜として示す。この図に示される楽譜には、警告用楽曲の主旋律が記譜されている。
この場合の警告用楽曲は、6小節から成るものとされる。また、冒頭の第1小節と第2小節は二分音符による同じ音階パターンを持ち、第3小節は、四分音符により、第1小節及び第2小節よりも高い音程の音階パターンを持ち、第4小節は、同じ四分音符から成るが、さらに第3小節よりも高い音程の音階パターンを持っている。そして、第5小節及び第6小節により、メロディに緊張感及び終止感が与えられて1コーラスが完了するようにされている。
そのうえで、第2の実施の形態では、このような警告用楽曲の構成の全体を、第1小節及び第2小節から成る第1楽曲区間部と、第3小節のみから成る第2楽曲区間部と、第4小節のみから成る第3楽曲区間部と、第5小節及び第6小節から成る第4楽曲区間部とに分割して扱うようにされる。この警告用楽曲は、先の第1の実施の形態において、楽曲A,B,C,Dの順で、緊張感や緊迫感が高まっていくような曲調とされていたのと同様に、第1楽曲区間部、第2楽曲区間部、第3楽曲区間部、第4楽曲区間部の順で、緊張感や緊迫感が高まっていくような曲調として構成している。つまり、この場合の1楽曲データは、それぞれが異なる再生内容を有するとされる複数の楽曲区間部を所定の順序で連結するようにして形成するものとしてみることができる。
【0031】
そして、上記した警告用楽曲データの構造を前提に、第2の実施の形態としては、障害物警告動作として、検出距離Disの値に応じて、楽曲A,B,C,Dに代えて、上記警告用楽曲データを形成するとされる第1楽曲区間部、第2楽曲区間部、第3楽曲区間部、第4楽曲区間部に対応するオーディオデータをを選択して再生出力するようにされる。
つまり、第2の実施の形態としては、自動車100から障害物101までの距離Lについて、図2(b)に示すようにして2.0m≧L>1.5mとなる状態では、警告用楽曲データにおける第1楽曲区間部をリピート再生し、図2(c)に示すようにして、1.5m≧L>1.0mとなる状態では、第2楽曲区間部をリピート再生し、図2(d)に示すようにして、1.0m≧L>0.5mとなる状態では、第3楽曲区間部をリピート再生し、図2(e)に示すようにして、0.5m≧Lとなる状態では、第4楽曲区間部を一回のみ再生出力して終了させるものである。
【0032】
この第2の実施の形態としての障害物警告動作を得るために制御部25が実行するとされる手順例を、図6に示す。なお、この図において、先の第1の実施の形態に対応する図4と同様、あるいは図4に準ずるとされる手順内容については説明を省略し、ここでは、主にその相違点について説明する。
ここで、図6に示されるステップS201〜S207の手順の各々は、図4に示したステップS101〜S107に対応し、各ステップにおける制御部25の処理内容も、図4に準ずるものとなる。
但し、ステップS202においては、図4のステップS101にて楽曲データAの再生出力に関する制御を実行していたのに代わり、警告用楽曲データにおける第1楽曲区間部に対応するオーデータについての再生出力に関する制御を実行するようにされる。
このための制御部25の制御処理としては、先ず、制御部25に、警告用楽曲データ記憶部22に記憶される警告用楽曲データ(オーディオデータファイル)における第1〜第4楽曲区間部の区切りとなるデータ位置を示す情報を与えておくようにされる。この区切りデータ位置については、例えばデータファイルを、FATファイルシステムなどに準じてセクタ単位の連結として管理する態様であれば、データファイル内におけるセクタ順などにより表すことができる。また、オーディオデータファイルに再生時間情報が所定構造により埋め込まれているような形式とされているのであれば、この再生時間情報により区切りデータ位置を示すことが可能である。そのうえで、ステップS202にあっては、警告用楽曲データ記憶部22における、警告用楽曲データ内の第1楽曲区間部としてのデータにアクセスして読み出しを実行し、音声出力処理部23による音声再生が行われるように制御を実行するようにされる。
【0033】
また、ステップS204においては、ステップS104において処理対象となっていた楽曲データBに代えて、第2楽曲区間部に対応するオーディオデータについての再生出力に関する制御を実行し、ステップS205においては、ステップS105において処理対象となっていた楽曲データCに代えて、第3楽曲区間部に対応するオーディオデータについての再生出力に関する制御を実行し、ステップS206においては、ステップS106において処理対象となっていた楽曲データDに代えて、第4楽曲区間部に対応するオーディオデータについての再生出力に関する制御を実行する。また、ステップS207では、ステップS107において処理対象となっていた楽曲データAに代えて、第1楽曲区間部のオーディオデータについて、フェードアウトによる音声再生終了が行われるように制御を実行する。
【0034】
次に、本願発明における第3の実施の形態について説明する。
先ず、第3の実施の形態に対応する警告システムは、図7に示すようにして、カーナビゲーション装置3を備えて成るものとされる。
カーナビゲーション装置3は、例えば図示するようにして、表示部30、地図データ記憶部31、警報用楽曲データ記憶部32、音声出力処理部33、スピーカ34、制御部35、GPS受信部37、加速度センサ38、速度センサ39を備えて構成される。なお、この図に示す構成では、これらの機能部のうち、表示部30、地図データ記憶部31、警報用楽曲データ記憶部32、音声出力処理部33、及び制御部35を内部バス36により接続している。
【0035】
表示部30は、所定の画像表示デバイスを備えて形成されるもので、制御部35の制御に応じて、ナビゲーション用の画像や各種設定画面の画像などを始めとする所要の内容の画像が表示される部位である。
地図データ記憶部31は、上記ナビゲーション用画像の表示や、各種のナビゲーションに関する処理に用いられる、いわゆる地図データを記憶して保持するための部位される。このような地図データ記憶部31として利用されるべき記憶媒体種別や、ハードウェア・ソフトウェア構成などについて特に限定されるべきものではないが、例えば現状であれば、HDDなどが広く採用されている。あるいは、CD−R、DVD(Digital versatile Disc)、フラッシュメモリなどをはじめとする各種のリムーバブル形式による記憶媒体に地図データを記憶させたうえで、これらの記憶媒体に対応するドライブを備えるような構成とされてもよい。さらには、無線通信により提供される地図情報をリアルタイム的に受信取得する技術構成も知られ、また、利用されている状況にあるが、地図データ記憶部31に代えて、このような地図データの受信取得機能を備えるようにされてもよい。
警告用楽曲データ記憶部32は、図1の警告用楽曲データ記憶部22と同様にして、警告用の楽曲データを記憶すべき領域とされる。
また、この場合の音声出力処理部33は、例えばナビゲーション音声や、上記警告用楽曲データ記憶部32に記憶されている警告用の楽曲データの再生音声、さらにはその他の警告、通知音声などを、スピーカ24から音声として出力するためのオーディオ信号処理を、制御部35の制御に応じて実行するようにされる。
【0036】
制御部25は、例えばCPU、ROM、RAMなどにより形成されるマイクロコンピュータを中心に構成されるもので、各種の制御処理を実行する。なお、この図においても、ナビゲーション装置3を搭乗者が操作するための入力操作手段の図示は省略している。
【0037】
GPS受信部37は、GPS(Global Positioning System)の衛星から送出される電波を受信して測位演算を実行して測位情報を取得することのできる機能部位とされ、ここでは、測位情報として少なくとも現在位置(例えば、緯度/経度により表現される)の情報を取得するようにされる。
また、加速度センサ38は、例えばジャイロなどを備えることで、本実施の形態の警告システムが搭載される自動車(自車)の加速度を検出するようにされる。また、この加速度センサ38においては、地磁気センサなどを備えることで、加速度とともに、自動車の進行する方角(進行方向)を検出することも可能とされる。速度センサ39は、例えば車速センサなどを備えて構成され、自動車の走行速度を検出する。
制御部35は、ナビゲーション機能に対応して、上記GPS受信部37から取り込む測位情報(現在位置情報)と、加速度センサ38から取り込む加速度及び進行方向の検出情報、速度センサ39から取り込む走行速度の情報を用いて、例えば地図データ記憶部31に記憶される地図データ上での自動車の位置を特定するようにされる。なお、周知のようにして、自車位置は、基本的にはGPS受信部37から取り込む測位情報により特定されるのであるが、トンネルなどを長時間走行しているなどしてGPS衛星からの電波を受信できない期間は、加速度センサや速度センサなどにより得られる加速度、進行方向、及び速度などの情報を利用して、刻々変化し得る現在位置を特定するようにされる。このようにして特定される自動車の位置(自車)を利用して、例えば表示部21に対して、地図画像上に自車位置を示したナビゲーション画像を表示させるなどの、ナビゲーションに関する動作を実行するようにされる。なお、地図画像の表示にあたっては、例えば周知技術に倣い、地図データ記憶部31に地図データの一部として記憶される地図画像データを利用して行われるようにすればよい。
【0038】
そして、本実施の形態のカーナビゲーション装置3は、図7の構成を採ることで、上記したような動作をはじめとする、これまでに知られているカーナビゲーション機能としての各種動作を実行可能とされる。そのうえで、下記のような警告動作を実行するようにされる。
【0039】
図7に示すカーナビゲーション装置3の構成では、自車位置の検出のために速度センサ39を備えており、これにより自車の走行速度の情報を取得可能とされている。
そこで、第3の実施の形態の警告動作としては、上記のようにして検出される自車速度に基づいて、運転速度に対する警告音として楽曲を音声出力するようにされる。そのうえで、自車速度が所定段階で早くなっていくごとに、異なる内容(曲調)の楽曲を音声出力するようにされる。
例えば、第3の実施の形態としても、第1の実施の形態と同様にして、警告用楽曲データ記憶部32に対して楽曲データA,B,C,Dの4曲分の楽曲データセットを記憶させることとしておいて、検出される自車速度の値である検出速度Spd(km/h)について、
a>Spd
a≦Spd<b
b≦Spd<c
c≦Spd<d
d≦Spd
の5段階に分けるようにする。ここでは、a(km/h)により表される速度が、警告が必要とされる速度の下限であるとして設定されているものである。
そして、実際に得られた検出速度Spdが、a>Spdであるときには、特に警告用の楽曲データの再生出力は行わないが、a≦Spd<bであるときには、楽曲データAをリピート再生するようにされる。また、b≦Spd<cであるときには楽曲データBをリピート再生し、c≦Spd<dであるときには楽曲データCをリピート再生するようにされる。さらに、d≦Spdであるときには、楽曲データDをリピート再生するようにされる。また、一旦、Spd≧aとなった状態から、a>Spdに戻ったときには、楽曲データAがフェードアウトして再生が終了されるようにして再生する。
【0040】
また、第1の実施の形態では、楽曲データA,B,C,Dの順で、緊迫感、緊張感が高まるような曲調に変化させることで、障害物に近づいていくことについての注意がより強められるようにしていたが、この第3の実施の形態では、楽曲データA,B,C,Dの曲調としては、例えば全体にはテンポが緩やかで落ち着きのあるものとされ、さらに、楽曲データA,B,C,Dの順で、その落ち着きの度合いが増していくような曲調の変化となるようにされている。つまり、運転速度が高くなっていくのに応じて、警告音としての楽曲の音声内容は、落ち着きの増した曲調に変わっていくようにされるものである。
運転中に一定以上に速いテンポの曲を聴くと、例えば心臓の動悸が速くなったり、血圧が上昇するなどの生理的変化が生じて、運転者の危険回避動作に遅れが生じ得るために危険度が高まり、逆にスローテンポな落ち着いた曲調の曲を聴くと危険度は低くなって逆に安全性が高まる、ということがいわれている。そこで、第3の実施の形態としては、上記のようにして、速度が高くなっていくのに応じて、警告音である楽曲の曲調がより落ち着いたものとなるようにして、運転者が運転速度を落としてくれることを促すようにしている。
【0041】
上記第3の実施の形態としての速度警告動作のために制御部35が実行するとされる手順例を、図8のフローチャートに示す。なお、この図についても、先の第1の実施の形態に対応する図4と同様あるいは準ずるとされる手順内容については説明を省略する。
【0042】
この場合には、前提として、図7に示される警告システムが起動しているときには、カーナビゲーション装置3の制御部35は、速度センサ39から取り込んだとされる速度情報に基づいて、一定時間ごとに、先に説明した検出速度Spdの値を取得するようにされている。
そして、図8のステップS301にあっては、上記のようにして得た検出速度Spd(km/h)の値について時速aキロメートル以上(a≦Spd)であるか否かについての判別を行うこととしている。ここで、検出速度Spdは時速aキロメートル未満(a>Spd)であるとして、否定の判別結果が得られた場合には、一旦、この図に示すルーチンを終了して、次のしかるべきタイミングで、ステップS301に戻るようにされる。これに対して、a≦SpdであるとしてステップS301にて肯定の判別結果が得られた場合には、ステップS302以降の手順に進む。
【0043】
ステップS302においては、図3に例示した警告用楽曲データ記憶部22に記憶されている楽曲データセット(楽曲データA,B,C,D)のうちから、楽曲データAを処理対象として選択して、このの音声再生に関する制御処理を、図4にて説明したステップS102と同様にして実行する。
【0044】
次に、ステップS303によっては、現在の検出速度Spdが示す値についての判定を行うようにされる。
上記ステップS303による判定結果として、先ず、例えばa≦Spd<bと判定された場合には、ステップS302に戻ることで、楽曲データAの再生出力を再開、または継続させることになる。
また、ステップS303により、b≦Spd<cであるとの判定結果が得られた場合には、ステップS304に進み、楽曲データBについての再生開始、あるいは継続再生(リピート再生)のための制御を実行する。
【0045】
また、ステップS303により、c≦Spd<dであるとの判定結果が得られた場合には、ステップS305に進み、楽曲データCについての再生開始、あるいは継続再生(リピート再生)のための制御を実行する。
【0046】
また、ステップS303により、d≦Spdであるとの判定結果が得られた場合には、ステップS306に進む。例えば図4において、このステップS306に対応するステップS106は、自動車が停止することを考慮して、楽曲データDの再生を一回のみ実行させる手順とされていた。これに対して、ステップS306に至った場合は、最も警告度の高いとされる一定以上の速度での走行を継続している状態であることになる。そこで、ステップS306としても、ステップS304、S305と同様にして、楽曲データDについての再生開始、あるいは継続再生(リピート再生)のための制御を実行するようにされる。
そして、上記ステップS304、S305、S306の手順を実行した後は、ステップS303に戻るようにされる。
【0047】
また、検出速度Spdについて、a≦Spdとなっている状態から、a>Spdとなる状態に戻った場合には、ステップS303からステップS307の手順に進むことになる。ステップS307では、図4のステップS107に準じて、楽曲データAの再生出力をフェードアウトさせるようにして終了させるための制御処理を実行する。
【0048】
なお、この第3の実施の形態の変形として、例えば、速度に応じて警告音としての楽曲を変更するのではなく、例えば加速度センサ38により検出される加速度に応じて、警告音としての楽曲を変更するような構成も考えられる。加速度が増加しているということは、速度が高くなるようにして変化していることであるので、加速度に応じた警告も、上記第3の実施の形態と同様に、安全運転に寄与できる。
【0049】
また、これまでに説明した実施の形態については、例えば下記のような組み合わせ、変更を考えることができる。
例えば第3の実施の形態による速度警告についても、第2の実施の形態と同様にして、1つの警告用楽曲データを分割して得られる複数の楽曲区間部のデータを、検出速度Spdに応じて選択して再生出力させることができる。
また、例えば図1に示した第1、第2の実施の形態に対応する警告システムにおいて、速度センサ39等を備えることで制御部25が自車速度を検出して検出速度Spdを取得可能な構成を付加する、あるいは、逆に、図7に示した第3の実施の形態に対応する警告システム(カーナビゲーション装置3)に対して障害物距離センサ1を備えて、制御部35が検出距離Disを取得可能に構成することで、1つの警告システムにより、第1又は第2の実施の形態などとしての障害物警告動作と、第3の実施の形態としての速度警告動作とを実行可能とすることが可能である。また、この場合には、警告用楽曲データ記憶部22(32)において、障害物警告動作と速度警告動作とで、異なる楽曲データセット、あるいは警告用の楽曲データを用意して記憶保持させるようにしてよい。また、同じ障害物警告動作に使用する楽曲データセットとして複数組を用意して警告用楽曲データ記憶部22(32)に記憶させておき、例えばユーザ設定、あるいは運転時間帯、運転している地域などの判定結果に応じて、しかるべき楽曲データセットが選択されて使用されるようにしてもよい。
また、上記各実施の形態にあっては、車載機器であるカーオーディオ装置、あるいはカーナビゲーション装置を備えて警告システムを構成することとしているが、本願発明にかかる警告システムとしての動作は、これらの車載機器とは無関係に、例えば自動車に装備される機能として実現することも可能である。
また、警告システムとして、図7のカーナビゲーション装置3のようにして表示機能を備える場合には、警告動作として楽曲を音声再生しているときに、警告機能に関するなんらかの補助的な画像を表示させるようにしてもよい。
【0050】
また、上記各実施の形態において、警告音として出力させる楽曲の音源は、所定形式のオーディオデータ、つまりオーディオ信号とされ、このオーディオ信号を再生して音声出力を為すようにされている。しかしながら、楽曲を再生するための手法として、例えばMIDI(Musical Instrument Digital Interface)などのようにして、音色などが設定された音源データと、この音源データの発音タイミングを制御する発音制御データとを用意して、発音制御データに記述される発音手順に従って音源データの発音(音声出力)のタイミングをコントロールすることで、結果として楽曲が演奏されるようにしたものが知られている。本実施の形態としても、楽曲データの実体を、このような音源データと発音制御データとから成るものとして構成してよい。
また、これまでの各実施の形態にあっては、本願発明としての音声再生装置の構成を、自動車などの警告システムに適用しているが、本願により得られる、運転操作による状態変化に応じて楽曲内容を変更して出力するという動作は、安全のための警告以外に、例えば娯楽的な用途などにも適用することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】本願発明の第1又は第2の実施の形態に対応する警告システムの構成例を示す図である。
【図2】第1の実施の形態としての障害物警告動作の例を模式的に示す図である。
【図3】第1の実施の形態に対応して警告用楽曲データ記憶部に記憶される楽曲データの内容例を示す図である。
【図4】第1の実施の形態としての障害物警告動作を実現するための処理手順例を示すフローチャートである。
【図5】第2の実施の形態において用いる警告用楽曲データの内容例を示す図である。
【図6】第2の実施の形態としての障害物警告動作を実現するための処理手順例を示すフローチャートである。
【図7】第3の実施の形態に対応する警告システムの構成例を示す図である。
【図8】第3の実施の形態としての速度警告動作を実現するための処理手順例を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0052】
1 障害物距離センサ、2 カーオーディオ装置、3 カーナビゲーション装置、11−1〜11−n センサ、12 検出回路、21 音源部、22・32 警告用楽曲データ記憶部、23・33 音声出力処理部、24・34 スピーカ、25・35 制御部、30 表示部、31 地図データ記憶部、37 GPS受信部、38 加速度センサ、39 速度センサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれが異なる再生内容を有する複数の楽曲データを保持する楽曲データ保持手段と、
上記楽曲データ保持手段に保持されている上記楽曲データを、上記移動体の運転者が聴取可能なようにして音声として再生出力する楽曲再生出力手段と、
運転者が行うとされる移動体の運転に応じて変化し得る所定状態を検出して得られる検出情報を入力する検出情報入力手段と、
上記検出情報入力手段により入力した検出情報に応じて、上記楽曲データ保持手段に保持されている複数の楽曲データのうちから1つの楽曲データを選択し、この選択した楽曲データを上記楽曲再生出力手段により所定の態様で再生出力させるようにされた楽曲再生制御手段と、
を備えることを特徴とする音声再生装置。
【請求項2】
上記検出情報入力手段は、上記所定状態としての上記移動体からその周囲に在るとされる障害物までの距離を検出して得られる検出情報を入力するものとされている、
ことを特徴とする請求項1に記載の音声再生装置。
【請求項3】
上記検出情報入力手段は、上記所定状態としての上記移動体の速度を検出して得られる検出情報を入力するものとされている、
ことを特徴とする請求項1に記載の音声再生装置。
【請求項4】
それぞれが異なる再生内容を有するとされる複数の楽曲区間部が所定順序で連結されるようにして形成される1つの楽曲データを保持する楽曲データ保持手段と、
上記楽曲データ保持手段に保持されている上記楽曲データを、上記移動体の運転者が聴取可能なようにして音声として再生出力する楽曲再生出力手段と、
運転者が行うとされる移動体の運転に応じて変化し得る所定状態を検出して得られる検出情報を入力する検出情報入力手段と、
上記検出情報入力手段により入力した検出情報に応じて、上記楽曲データ保持手段に保持されている上記楽曲データのうちから1つの楽曲区間部を選択し、この選択した楽曲区間部に相当するとされる楽曲データ部分を上記楽曲再生出力手段により所定の態様で再生出力させるようにされた楽曲再生制御手段と、
を備えることを特徴とする音声再生装置。
【請求項5】
それぞれが異なる再生内容を有する複数の楽曲データを保持する楽曲データ保持手段に保持されている上記楽曲データを、上記移動体の運転者が聴取可能なようにして音声として再生出力する楽曲再生出力手順と、
運転者が行うとされる移動体の運転に応じて変化し得る所定状態を検出して得られる検出情報を入力する検出情報入力手順と、
上記検出情報入力手順により入力した検出情報に応じて、上記楽曲データ保持手段に保持されている複数の楽曲データのうちから1つの楽曲データを選択し、この選択した楽曲データを上記楽曲再生出力手順により所定の態様で再生出力させるようにされた楽曲再生制御手順と、
を実行することを特徴とする音声再生方法。
【請求項6】
それぞれが異なる再生内容を有するとされる複数の楽曲区間部が所定順序で連結されるようにして形成される1つの楽曲データを保持する楽曲データ保持手段に保持されている上記楽曲データを、上記移動体の運転者が聴取可能なようにして音声として再生出力する楽曲再生出力手順と、
運転者が行うとされる移動体の運転に応じて変化し得る所定状態を検出して得られる検出情報を入力する検出情報入力手順と、
上記検出情報入力手順により入力した検出情報に応じて、上記楽曲データ保持手段に保持されている上記楽曲データのうちから1つの楽曲区間部を選択し、この選択した楽曲区間部に相当するとされる楽曲データ部分を上記楽曲再生出力手順により所定の態様で再生出力させるようにされた楽曲再生制御手順と、
を備えることを特徴とする音声再生方法。
【請求項7】
それぞれが異なる再生内容を有する複数の楽曲データを保持する楽曲データ保持手段に保持されている上記楽曲データを、上記移動体の運転者が聴取可能なようにして音声として再生出力する楽曲再生出力手順と、
運転者が行うとされる移動体の運転に応じて変化し得る所定状態を検出して得られる検出情報を入力する検出情報入力手順と、
上記検出情報入力手順により入力した検出情報に応じて、上記楽曲データ保持手段に保持されている複数の楽曲データのうちから1つの楽曲データを選択し、この選択した楽曲データを上記楽曲再生出力手順により所定の態様で再生出力させるようにされた楽曲再生制御手順と、
を音声再生装置に実行させるプログラム。
【請求項8】
それぞれが異なる再生内容を有するとされる複数の楽曲区間部が所定順序で連結されるようにして形成される1つの楽曲データを保持する楽曲データ保持手段に保持されている上記楽曲データを、上記移動体の運転者が聴取可能なようにして音声として再生出力する楽曲再生出力手順と、
運転者が行うとされる移動体の運転に応じて変化し得る所定状態を検出して得られる検出情報を入力する検出情報入力手順と、
上記検出情報入力手順により入力した検出情報に応じて、上記楽曲データ保持手段に保持されている上記楽曲データのうちから1つの楽曲区間部を選択し、この選択した楽曲区間部に相当するとされる楽曲データ部分を上記楽曲再生出力手順により所定の態様で再生出力させるようにされた楽曲再生制御手順と、
を音声再生装置に実行させるプログラム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2008−71058(P2008−71058A)
【公開日】平成20年3月27日(2008.3.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−248253(P2006−248253)
【出願日】平成18年9月13日(2006.9.13)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】