説明

高さ位置検出装置およびレーザー加工機

【課題】チャックテーブルに保持された被加工物の高さ位置を正確に検出することができる高さ位置検出装置および高さ位置検出装置を装備したレーザー加工機を提供する。
【解決手段】発光源81と、強度分布を整形するNDフィルター83と、集光して被加工物Wに照射する集光器7と、第1の経路と第2の経路に導く第1のビームスプリッター84と、第3の経路と第4の経路に分光する第2のビームスプリッター86と、第3の経路に分光された反射光を受光する第1のホトデテクター88aと、第4の経路の反射光を帯状に通過させるスリット891を備えたマスク89と、マスクを通過した反射光を受光する第2のホトデテクター88bと、第1のホトデテクターによって受光した光量と第2のホトデテクターによって受光した光量との比率を求め、比率に基づいてチャックテーブル36に保持された被加工物の高さ位置を求める制御手段とを具備している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザー加工機等の加工機に装備されるチャックテーブルに保持された半導体ウエーハ等の被加工物の高さ位置を検出する高さ位置検出装置およびレーザー加工機に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイス製造工程においては、略円板形状である半導体ウエーハの表面に格子状に配列されたストリートと呼ばれる分割予定ラインによって複数の領域が区画され、この区画された領域にIC、LSI等のデバイスを形成する。そして、半導体ウエーハをストリートに沿って切断することによりデバイスが形成された領域を分割して個々の半導体デバイスを製造している。
【0003】
上述した半導体ウエーハ等のストリートに沿って分割する方法として、ウエーハに対して透過性を有するパルスレーザー光線を用い、分割すべき領域の内部に集光点を合わせてパルスレーザー光線を照射するレーザー加工方法が試みられている。このレーザー加工方法を用いた分割方法は、ウエーハの一方の面側から内部に集光点を合わせてウエーハに対して透過性を有する例えば波長が1064nmのパルスレーザー光線を照射し、ウエーハの内部にストリートに沿って改質層を連続的に形成し、この改質層が形成されることによって強度が低下したストリートに沿って外力を加えることにより、被加工物を分割するものである。(例えば、特許文献1参照。)このように被加工物に形成されたストリートに沿って内部に改質層を形成する場合、被加工物の上面から所定の深さ位置にレーザー光線の集光点を位置付けることが重要である。
【0004】
また、半導体ウエーハ等の板状の被加工物を分割する方法として、被加工物に形成されたストリートに沿ってパルスレーザー光線を照射することによりレーザー加工溝を形成し、このレーザー加工溝に沿ってメカニカルブレーキング装置によって割断する方法が提案されている。(例えば、特許文献2参照。)このように被加工物に形成されたストリートに沿ってレーザー加工溝を形成する場合にも、被加工物の所定高さ位置にレーザー光線の集光点を位置付けることが重要である。
【0005】
しかるに、半導体ウエーハ等の板状の被加工物にはウネリがあり、その厚さにバラツキがあるため、均一なレーザー加工を施すことが難しい。即ち、ウエーハの内部にストリートに沿って改質層を形成する場合、ウエーハの厚さにバラツキがあるとレーザー光線を照射する際に屈折率の関係で所定の深さ位置に均一に改質層を形成することができない。また、ウエーハに形成されたストリートに沿ってレーザー加工溝を形成する場合にもその厚さにバラツキがあると、均一な深さのレーザー加工溝を形成することができない。
【0006】
上述した問題を解消するために、チャックテーブルに保持された半導体ウエーハ等の被加工物の上面高さを確実に検出することができる高さ位置検出装置が下記特許文献3に開示されている。下記特許文献3に開示された高さ位置検出装置は、検出用レーザー光線を集光レンズを通してチャックテーブルに保持された被加工物の表面に照射し、その反射光の面積に基いてチャックテーブルに保持された被加工物の高さ位置を検出する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第3408805号公報
【特許文献2】特開平10−305420号公報
【特許文献3】特開平2008−12566号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
而して、上記特許文献3に開示された高さ位置検出装置は、検出用レーザー光線を集光レンズを通してチャックテーブルに保持された被加工物の表面に照射し、その反射光がマスクのスリットを通過した量の光強度に基いてチャックテーブルに保持された被加工物の高さ位置を検出する。しかるに、上記反射光の光強度は中心部が高く外周に向かって低くなる。従って、マスクのスリットを通過する反射光の光強度は、高さ位置が対物集光レンズの焦点距離に近づくと2次関数的に急激に高くなるため、正確な高さ位置を検出することができないという問題がある。
【0009】
本発明は上記事実に鑑みてなされたものであり、その主たる技術的課題は、チャックテーブルに保持された半導体ウエーハ等の被加工物の高さ位置を正確に検出することができる高さ位置検出装置および高さ位置検出装置を装備したレーザー加工機を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記主たる技術課題を解決するため、本発明によれば、チャックテーブルに保持された被加工物の高さ位置を検出する高さ位置検出装置において、
所定の波長領域を有する光を発する発光源と、
該発光源が発する光の光強度を中央部が高く稜線を形成し裾野に渡り緩やかに低下する強度分布となるように整形するNDフィルターと、
該NDフィルターによって光強度分布が整形された光を集光して該チャックテーブルに保持された被加工物に照射する集光器と、
該NDフィルターと該集光器との間に配設され該NDフィルターによって光強度分布が整形された光を該集光器に導く第1の経路に導くとともに該チャックテーブルに保持された被加工物で反射した反射光を第2の経路に導く第1のビームスプリッターと、
該第2の経路に導かれた反射光を第3の経路と第4の経路に分光する第2のビームスプリッターと、
該第3の経路に分光された反射光を受光する第1のホトデテクターと、
該第4の経路に配設され該第4の経路に分光された反射光の両側を遮光して中央部の反射光を帯状に通過させるスリットを備えたマスクと、
該マスクを通過した反射光を受光する第2のホトデテクターと、
該第1のホトデテクターによって受光した光量と該第2のホトデテクターによって受光した光量との比率を求め、該比率に基づいてチャックテーブルに保持された被加工物の高さ位置を求める制御手段と、を具備している、
ことを特徴とする高さ位置検出装置が提供される。
【0011】
また、本発明によれば、被加工物を保持する被加工物保持面を備えたチャックテーブルと、該チャックテーブルに保持された被加工物をレーザー加工するための加工用レーザー光線を発振する加工用レーザー光線発振手段と該レーザー光線発振手段によって発振された加工用レーザー光線を集光する集光器とを有するレーザー光線照射手段と、該レーザー光線照射手段を該該チャックテーブルの該被加工物保持面に対して垂直な方向に移動し該集光器によって集光される該加工用レーザー光線の集光点位置を調整する集光点位置調整手段と、該チャックテーブルと該レーザー光線照射手段を加工送り方向(X軸方向)に相対的に移動せしめる加工送り手段と、該チャックテーブルと該レーザー光線照射手段を加工送り方向(X軸方向)と直交する割り出し送り方向(Y軸方向)に相対的に移動せしめる割り出し送り手段と、該チャックテーブルに保持された被加工物の高さ位置を検出する高さ位置検出装置と、を具備するレーザー加工機において、
該高さ位置検出装置は、所定の波長領域を有する光を発する発光源と、該発光源が発する光の光強度を中央部が高く稜線を形成し裾野に渡り緩やかに低下する強度分布となるように整形するNDフィルターと、該NDフィルターによって光強度分布が整形された光を集光して該チャックテーブルに保持された被加工物に照射する集光器と、該NDフィルターと該集光器との間に配設され該NDフィルターによって光強度分布が整形された光を該集光器に導く第1の経路に導くとともに該チャックテーブルに保持された被加工物で反射した反射光を第2の経路に導く第1のビームスプリッターと、該第2の経路に導かれた反射光を第3の経路と第4の経路に分光する第2のビームスプリッターと、該第3の経路に分光された反射光を受光する第1のホトデテクターと、該第4の経路に配設され該第4の経路に分光された反射光の両側を遮光して中央部の反射光を帯状に通過させるスリットを備えたマスクと、該マスクを通過した反射光を受光する第2のホトデテクターと、を具備し、該第1のホトデテクターによって受光した光量と該第2のホトデテクターによって受光した光量との比率を求め、該比率に基づいてチャックテーブルに保持された被加工物の高さ位置を求める制御手段と、を具備している、
ことを特徴とするレーザー加工機が提供される。
【発明の効果】
【0012】
本発明による高さ位置検出装置は以上のように構成され、第4の経路に分光された反射光におけるマスクに形成されたスリットに沿った稜線から裾野に渡り光強度が緩やかに低下するように、発光源からの光強度を整形するNDフィルターが発光源と第1のビームスプリッターとの間に配設されているので、チャックテーブルに保持された被加工物の上面の高さ位置が集光器の焦点距離に近づいても第2のホトデテクターに受光される光量が急激に高くなることはないため、チャックテーブルに保持された被加工物の上面高さ位置を正確に検出することができる。
また、本発明によるレーザー加工機は上記高さ位置検出装置を装備しているので、チャックテーブルに保持された被加工物の上面位置を基準とした所定の位置に正確にレーザー加工を施すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明に従って構成されたレーザー加工機の斜視図。
【図2】図1に示すレーザー加工機に装備されるレーザー光線照射手段および高さ位置検出装置の構成を示すブロック図。
【図3】図2に示す高さ位置検出装置の検査用レーザー光線をチャックテーブルに保持された被加工物の上面に照射した状態を示す説明図。
【図4】図2に示す高さ位置検出装置の検査用レーザー光線の照射位置により照射面積が変化する状態を示す説明図。
【図5】図2に示す高さ位置検出装置の第1のホトデテクターから出力される電圧値(V1)と第2のホトデテクターから出力される電圧値(V2)との比と、チャックテーブルに保持された被加工物の高さとの関係を示す制御マップ。
【図6】図1に示すレーザー加工機に装備される制御手段を示すブロック図。
【図7】被加工物としての半導体ウエーハの斜視図。
【図8】図7に示す半導体ウエーハが図1に示すレーザー加工機のチャックテーブルの所定位置に保持された状態における座標位置との関係を示す説明図。
【図9】図1に示すレーザー加工機に装備された高さ位置検出装置によって実施される高さ位置検出工程の説明図。
【図10】図1に示すレーザー加工機によって図7に示す半導体ウエーハに改質層を形成するレーザー加工工程の説明図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明に従って構成された高さ位置検出装置およびレーザー加工機の好適な実施形態について、添付図面を参照して、更に詳細に説明する。
【0015】
図1には、本発明に従って構成された高さ位置検出装置を装備したレーザー加工機の斜視図が示されている。図1に示すレーザー加工機は、静止基台2と、該静止基台2に矢印Xで示す加工送り方向に移動可能に配設され被加工物を保持するチャックテーブル機構3と、静止基台2に上記矢印Xで示す方向(X軸方向)と直角な矢印Yで示す割り出し送り方向(Y軸方向)に移動可能に配設されたレーザー光線照射ユニット支持機構4と、該レーザー光線ユニット支持機構4に矢印Zで示す方向(Z軸方向)に移動可能に配設されたレーザー光線照射ユニット5とを具備している。
【0016】
上記チャックテーブル機構3は、静止基台2上に矢印Xで示す加工送り方向に沿って平行に配設された一対の案内レール31、31と、該案内レール31、31上に矢印Xで示す加工送り方向に(X軸方向)移動可能に配設された第一の滑動ブロック32と、該第1の滑動ブロック32上に矢印Yで示す割り出し送り方向(Y軸方向)に移動可能に配設された第2の滑動ブロック33と、該第2の滑動ブロック33上に円筒部材34によって支持されたカバーテーブル35と、被加工物保持手段としてのチャックテーブル36を具備している。このチャックテーブル36は多孔性材料から形成された吸着チャック361を具備しており、吸着チャック361上に被加工物である例えば円盤状の半導体ウエーハを図示しない吸引手段によって保持するようになっている。このように構成されたチャックテーブル36は、円筒部材34内に配設された図示しないパルスモータによって回転せしめられる。なお、チャックテーブル36には、後述する環状のフレームを固定するためのクランプ362が配設されている。
【0017】
上記第1の滑動ブロック32は、その下面に上記一対の案内レール31、31と嵌合する一対の被案内溝321、321が設けられているとともに、その上面に矢印Yで示す割り出し送り方向に沿って平行に形成された一対の案内レール322、322が設けられている。このように構成された第1の滑動ブロック32は、被案内溝321、321が一対の案内レール31、31に嵌合することにより、一対の案内レール31、31に沿って矢印Xで示す加工送り方向に移動可能に構成される。図示の実施形態におけるチャックテーブル機構3は、第1の滑動ブロック32を一対の案内レール31、31に沿って矢印Xで示す加工送り方向に移動させるための加工送り手段37を具備している。加工送り手段37は、上記一対の案内レール31と31の間に平行に配設された雄ネジロッド371と、該雄ネジロッド371を回転駆動するためのパルスモータ372等の駆動源を含んでいる。雄ネジロッド371は、その一端が上記静止基台2に固定された軸受ブロック373に回転自在に支持されており、その他端が上記パルスモータ372の出力軸に伝動連結されている。なお、雄ネジロッド371は、第1の滑動ブロック32の中央部下面に突出して設けられた図示しない雌ネジブロックに形成された貫通雌ネジ穴に螺合されている。従って、パルスモータ372によって雄ネジロッド371を正転および逆転駆動することにより、第一の滑動ブロック32は案内レール31、31に沿って矢印Xで示す加工送り方向(X軸方向)に移動せしめられる。
【0018】
図示の実施形態におけるレーザー加工機は、上記チャックテーブル36のX軸方向位置を検出するためのX軸方向位置検出手段374を備えている。X軸方向位置検出手段374は、案内レール31に沿って配設されたリニアスケール374aと、第1の滑動ブロック32に配設され第1の滑動ブロック32とともにリニアスケール374aに沿って移動する読み取りヘッド374bとからなっている。このX軸方向位置検出手段374の読み取りヘッド374bは、図示の実施形態においては1μm毎に1パルスのパルス信号を後述する制御手段に送る。そして後述する制御手段は、入力したパルス信号をカウントすることにより、チャックテーブル36のX軸方向位置を検出する。
【0019】
上記第2の滑動ブロック33は、その下面に上記第1の滑動ブロック32の上面に設けられた一対の案内レール322、322と嵌合する一対の被案内溝331、331が設けられており、この被案内溝331、331を一対の案内レール322、322に嵌合することにより、矢印Yで示す割り出し送り方向(Y軸方向)に移動可能に構成される。図示の実施形態におけるチャックテーブル機構3は、第2の滑動ブロック33を第1の滑動ブロック32に設けられた一対の案内レール322、322に沿って矢印Yで示す割り出し送り方向(Y軸方向)に移動させるための第1の割り出し送り手段38を具備している。第1の割り出し送り手段38は、上記一対の案内レール322と322の間に平行に配設された雄ネジロッド381と、該雄ネジロッド381を回転駆動するためのパルスモータ382等の駆動源を含んでいる。雄ネジロッド381は、その一端が上記第1の滑動ブロック32の上面に固定された軸受ブロック383に回転自在に支持されており、その他端が上記パルスモータ382の出力軸に伝動連結されている。なお、雄ネジロッド381は、第2の滑動ブロック33の中央部下面に突出して設けられた図示しない雌ネジブロックに形成された貫通雌ネジ穴に螺合されている。従って、パルスモータ382によって雄ネジロッド381を正転および逆転駆動することにより、第2の滑動ブロック33は案内レール322、322に沿って矢印Yで示す割り出し送り方向(Y軸方向)に移動せしめられる。
【0020】
図示の実施形態におけるレーザー加工機は、上記第2の滑動ブロック33のY軸方向位置を検出するためのY軸方向位置検出手段384を備えている。Y軸方向位置検出手段384は、案内レール322に沿って配設されたリニアスケール384aと、第2の滑動ブロック33に配設され第2の滑動ブロック33とともにリニアスケール384aに沿って移動する読み取りヘッド384bとからなっている。このY軸方向位置検出手段384の読み取りヘッド384bは、図示の実施形態においては1μm毎に1パルスのパルス信号を後述する制御手段に送る。そして後述する制御手段は、入力したパルス信号をカウントすることにより、チャックテーブル36のY軸方向位置を検出する。
【0021】
上記レーザー光線照射ユニット支持機構4は、静止基台2上に矢印Yで示す割り出し送り方向(Y軸方向)に沿って平行に配設された一対の案内レール41、41と、該案内レール41、41上に矢印Yで示す方向に移動可能に配設された可動支持基台42を具備している。この可動支持基台42は、案内レール41、41上に移動可能に配設された移動支持部421と、該移動支持部421に取り付けられた装着部422とからなっている。装着部422は、一側面に矢印Zで示す方向に延びる一対の案内レール423、423が平行に設けられている。図示の実施形態におけるレーザー光線照射ユニット支持機構4は、可動支持基台42を一対の案内レール41、41に沿って矢印Yで示す割り出し送り方向(Y軸方向)に移動させるための第2の割り出し送り手段43を具備している。第2の割り出し送り手段43は、上記一対の案内レール41、41の間に平行に配設された雄ネジロッド431と、該雄ネジロッド431を回転駆動するためのパルスモータ432等の駆動源を含んでいる。雄ネジロッド431は、その一端が上記静止基台2に固定された図示しない軸受ブロックに回転自在に支持されており、その他端が上記パルスモータ432の出力軸に伝動連結されている。なお、雄ネジロッド431は、可動支持基台42を構成する移動支持部421の中央部下面に突出して設けられた図示しない雌ネジブロックに形成された雌ネジ穴に螺合されている。このため、パルスモータ432によって雄ネジロッド431を正転および逆転駆動することにより、可動支持基台42は案内レール41、41に沿って矢印Yで示す割り出し送り方向(Y軸方向)に移動せしめられる。
【0022】
図示の実施形態のおけるレーザー光線照射ユニット5は、ユニットホルダ51と、該ユニットホルダ51に取り付けられたレーザー光線照射手段52を具備している。ユニットホルダ51は、上記装着部422に設けられた一対の案内レール423、423に摺動可能に嵌合する一対の被案内溝511、511が設けられており、この被案内溝511、511を上記案内レール423、423に嵌合することにより、矢印Zで示す焦点位置調整方向(Z軸方向)に移動可能に支持される。
【0023】
図示の実施形態におけるレーザー光線照射ユニット5は、ユニットホルダ51を一対の案内レール423、423に沿って矢印Zで示す焦点位置調整方向(Z軸方向)に移動させるための集光点位置調整手段53を具備している。集光点位置調整手段53は、一対の案内レール423、423の間に配設された雄ネジロッド(図示せず)と、該雄ネジロッドを回転駆動するためのパルスモータ532等の駆動源を含んでおり、パルスモータ532によって図示しない雄ネジロッドを正転および逆転駆動することにより、ユニットホルダ51およびレーザー光線照射手段52を案内レール423、423に沿って矢印Zで示す集光点位置調整方向(Z軸方向)に移動せしめる。なお、図示の実施形態においてはパルスモータ532を正転駆動することによりレーザー光線照射手段52を上方に移動し、パルスモータ532を逆転駆動することによりレーザー光線照射手段52を下方に移動するようになっている。
【0024】
図示の実施形態におけるレーザー光線照射ユニット5は、レーザー光線照射手段52のZ軸方向位置を検出するためのZ軸方向位置検出手段55を具備している。Z軸方向位置検出手段55は、上記案内レール423、423と平行に配設されたリニアスケール551と、上記ユニットホルダ51に取り付けられユニットホルダ51とともにリニアスケール551に沿って移動する読み取りヘッド552とからなっている。このZ軸方向位置検出手段55の読み取りヘッド552は、図示の実施形態においては1μm毎に1パルスのパルス信号を後述する制御手段に送る。
【0025】
図示のレーザー光線照射手段52は、実質上水平に配置された円筒形状のケーシング521を含んでいる。このケーシング521内には図2に示すように加工用パルスレーザー光線発振手段6が配設されており、ケーシング521の先端には加工用パルスレーザー光線発振手段6が発振する加工用パルスレーザー光線を上記チャックテーブル36に保持される被加工物に照射せしめる集光器7が配設されている。加工用パルスレーザー光線発振手段6は、被加工物であるウエーハに対して透過性を有する波長の加工用パルスレーザー光線LB1を発振する。この加工用パルスレーザー光線発振手段6は、例えば波長が1040nmである加工用パルスレーザー光線LB1を発振するYVO4パルスレーザー発振器或いはYAGパルスレーザー発振器を用いることができる。
【0026】
上記集光器7は、上記加工用パルスレーザー光線発振手段6から発振された加工用パルスレーザー光線LB1を図2において下方に向けて方向変換する方向変換ミラー71と、該方向変換ミラー71によって方向変換された加工用パルスレーザー光線LB1を集光する対物集光レンズ72を具備している。
【0027】
図2を参照して説明を続けると、図示の実施形態におけるレーザー加工機は、チャックテーブルに保持された被加工物の上面高さ位置を検出するための高さ位置検出装置8を具備している。高さ位置検出装置8は、所定の波長領域を有する光を発する発光源としての検出用レーザー光線を発振する検出用レーザー光線発振手段81と、上記加工用パルスレーザー光線発振手段6と集光器7との間の経路に配設され検出用レーザー光線発振手段81から発振された検出用レーザー光線を集光器7に向けて反射せしめるダイクロイックミラー82と、検出用レーザー光線発振手段81とダイクロイックミラー82とを結ぶ第1の経路80aに配設され検出用レーザー光線発振手段81から発振された検出用レーザー光線の光強度を整形するNDフィルター83と、第1の経路80aにおけるNDフィルター83とダイクロイックミラー82との間に配設された第1のビームスプリッター84を具備している。
【0028】
検出用レーザー光線発振手段81は、上記加工用パルスレーザー光線発振手段6から発振される加工用パルスレーザー光線の波長と異なり被加工物であるウエーハに対して反射性を有する波長の例えば波長が632nmの検出用レーザー光線LB2を発振するHe-Neレーザー発振器を用いることができる。なお、検出用レーザー光線発振手段81から発振される検出用レーザー光線LB2の出力は、図示の実施形態においては10mWに設定されている。ダイクロイックミラー82は、加工用パルスレーザー光線LB1は通過するが検出用レーザー光線発振手段81から発振された検出用レーザー光線を集光器7に向けて反射せしめる。NDフィルター83は、検出用レーザー光線発振手段81から発振された検出用レーザー光線LB2の光強度を中央部が高く稜線810aを形成し裾野に渡り緩やかに低下する強度分布810となるように整形する。上記第1のビームスプリッター84は、NDフィルター83によって光強度が整形された検出用レーザー光線LB2を上記ダイクロイックミラー82に導くとともに、ダイクロイックミラー82によって反射された後述する反射光を第2の経路80bに導く。
【0029】
図示の実施形態における高さ位置検出装置8は、第2の経路80bに配設され第1のビームスプリッター84によって反射された反射光のうち検出用レーザー光線LB2の波長(図示の実施形態においては632nm)に対応する反射光のみを通過せしめるバンドパスフィルター85と、該バンドパスフィルター85を通過した反射光を第3の経路80cと第4の経路80dに分光する第2のビームスプリッター86を具備している。第3の経路80cには、第2のビームスプリッター86によって分光された反射光を100%集光する第1の集光レンズ87aと、該第1の集光レンズ87aによって集光された反射光を受光する第1のホトデテクター88aが配設されている。なお、上記第1のホトデテクター88aは、受光した光量に対応した電圧信号を後述する制御手段に送る。また、上記第4の経路80dには、第2のビームスプリッター86によって分光された反射光を集光する第2の集光レンズ87bと、該第2の集光レンズ87bによって集光された反射光の両側を遮光して中央部の反射光を帯状に通過させるスリット891を備えたマスク89と、該スリット891を通過した反射光を受光する第2のホトデテクター88bが配設されている。なお、マスク89に設けられたスリット891は、紙面に垂直な方向に細長い形状に形成されている。また、上記第2のホトデテクター88bは、受光した光量に対応した電圧信号を後述する制御手段に送る。
【0030】
図2に示す実施形態における高さ位置検出装置8は以上のように構成されており、以下その作用について説明する。
検出用レーザー光線発振手段81から発振された検出用レーザー光線LB2は、NDフィルター83によって光強度を中央部が高く稜線810aを形成し裾野に渡り緩やかに低下する強度分布810となるように整形される。なお、図示の実施形態におけるNDフィルター83は、光強度の稜線810aが紙面に垂直な方向となるように整形される。NDフィルター83によって光強度が整形された検出用レーザー光線LB2は、第1のビームスプリッター84、ダイクロイックミラー82を介して集光器7に導かれる。集光器7に導かれた検出用レーザー光線LB2は、方向変換ミラー71によって対物集光レンズ72に導かれ、対物集光レンズ72により集光されてチャックテーブル36に保持された被加工物Wの上面に照射される。チャックテーブル36に保持された被加工物Wの上面に照射された検出用レーザー光線LB2は、被加工物Wの表面(上面)に照射される面積で反射する。例えば、図3に示すようにチャックテーブル36に保持された被加工物Wに検査用レーザー光線LB2を照射する場合、検査用レーザー光線LB1は被加工物Wの表面(上面)に照射される面積Sで反射する。
【0031】
チャックテーブル36に保持された被加工物Wの上面で反射された検出用レーザー光線LB2の反射光は、対物集光レンズ72、方向変換ミラー71、ダイクロイックミラー82、第1のビームスプリッター84を介してバンドパスフィルター85に導かれる。
バンドパスフィルター85は上述したように検出用レーザー光線LB2の波長(図示の実施形態においては632nm)に対応する反射光のみを通過せしめるように構成されているので、室内の蛍光灯等の光はバンドパスフィルター85によって遮断される。従って、検出用レーザー光線LB2の反射光だけがバンドパスフィルター85を通過し、第2のビームスプリッター86に達する。
【0032】
第2のビームスプリッター86に達した加工用パルスレーザー光線LB1の反射光は、該第2のビームスプリッター86によって第3の経路80cと第4の経路80dに分光される。第3の経路80cに分光された検出用レーザー光線LB2の反射光は、第1の集光レンズ87aによって集光され第1のホトデテクター88aに100%受光される。そして、第1のホトデテクター88aは、受光した光量に対応した電圧値(V1)を後述する制御手段に送る。一方、第4の経路80dに分光された検出用レーザー光線LB2の反射光は、第2の集光レンズ87bによって集光される。このように第2の集光レンズ87bによって集光された検出用レーザー光線LB2の反射光は、マスク89のスリット891を通過した一部が第2のホトデテクター88bに受光される。そして第2のホトデテクター88bは、受光した光量に対応した電圧値(V2)を後述する制御手段に送る。従って、第2のホトデテクター88bから出力される電圧値(V2)は、検査用レーザー光線LB2の集光点Pの被加工物に対する位置によって変化する。なお、検出用レーザー光線LB2の反射光の光強度分布810は中央部が高く稜線810aを形成し裾野に渡り緩やかに低下するように整形されており、マスク89に設けられたスリット891が光強度分布810の稜線810aと一致するように位置付けられているので、光強度分布810における光強度の高い稜線810a部は常にスリット891を通過する。従って、第2のホトデテクター88bによって受光される光量は、マスク89によって遮断される量によって緩やかに変化する。このため、高さ位置が対物集光レンズ72の焦点距離に近づいても第2のホトデテクター88bに受光される光量が急激に高くなることはない。
【0033】
ここで、第1のホトデテクター88aと第2のホトデテクター88bによって受光される検査用レーザー光線LB2の反射光の受光量について説明する。
第1のホトデテクター88aに受光される反射光は、上述したように100%受光されるので受光量は一定であり、第1のホトデテクター88aから出力される電圧値(V1)は一定(例えば10V)となる。一方、第2のホトデテクター88bによって受光される反射光は、第2の集光レンズ87bによって集光された後にマスク89によって一部が遮蔽されて第2のホトデテクター88bに受光されるので、図3に示すように検査用レーザー光線LB2が被加工物Wの上面に照射される際に、集光器7の対物集光レンズ72から被加工物Wの上面までの距離、即ち被加工物Wの高さ位置(厚み)によって第2のホトデテクター88bの受光量は変化する。従って、第2のホトデテクター88bから出力される電圧値(V2)は、検査用レーザー光線LB2が照射される被加工物Wの上面高さ位置によって変化する。
【0034】
例えば、図4の(a)に示すように被加工物Wの高さ位置が低く(被加工物Wの厚みが薄く)集光器7の対物集光レンズ72から被加工物Wの上面までの距離(H)が大きい場合には、検査用レーザー光線LB2は被加工物Wの上面に照射されるスポットS1で反射する。この反射光は上述したように第2のビームスプリッター86によって第3の経路80cと第4の経路80dに分光されるが、第3の経路80cに分光されたスポットS1の反射光は第1の集光レンズ87aによって集光され、反射光の全ての光量が第1のホトデテクター88aに受光される。一方、第2のビームスプリッター86によって第4の経路80dに分光されたスポットS1の反射光は、第2の集光レンズ87bによって集光された後、上述したようにマスク89によって一部が遮蔽されて第2のホトデテクター88bによって受光されることになる。従って、第2のホトデテクター88bに受光される反射光の光量は上述した第1のホトデテクター88aに受光される光量より少なくなる。
【0035】
次に、図4の(b)に示すように被加工物Wの高さ位置が高く(被加工物Wの厚みが厚く)集光器7の対物集光レンズ72から被加工物Wの上面までの距離(H)が小さい場合には、検査用レーザー光線LB2は被加工物Wの上面に照射されるスポットS2で反射する。この環状のスポットS2は上記スポットS1より大きい。このスポットS2の反射光は上述したように第2のビームスプリッター86によって第3の経路80cと第4の経路80dに分光されるが、第3の経路80cに分光されたスポットS2の反射光は第1の集光レンズ87aによって集光され、反射光の全ての光量が第1のホトデテクター88aに受光される。一方、第2のビームスプリッター86によって第4の経路80dに分光されたスポットS2の反射光は、第2の集光レンズ87bによって集光された後、上述したようにマスク89によって一部が遮蔽されて第2のホトデテクター88bによって受光されることになる。反射光のスポットS2は上記スポットS1より大きいのでマスク89によって遮蔽される割合が多くなる。従って、第2のホトデテクター88bによって受光される光量は、上記図4の(a)に示す場合より少なくなる。このように第2のホトデテクター88bに受光される反射光の光量は、集光器7の対物集光レンズ72から被加工物Wの上面までの距離(H)、即ち被加工物Wの高さ位置が低い(被加工物Wの厚みが薄い)程多く、集光器7の対物集光レンズ72から被加工物Wの上面までの距離(H)、即ち被加工物Wの高さ位置が高い(被加工物Wの厚みが厚い)程少なくなる。
【0036】
ここで、上記第1のホトデテクター88aから出力される電圧値(V1)と第2のホトデテクター88bから出力される電圧値(V2)との比と、集光器7の対物集光レンズ72から被加工物Wの上面までの距離(H)、即ち被加工物Wの高さ位置との関係について、図5に示す制御マップを参照して説明する。なお、図5において横軸は集光器7の対物集光レンズ72の焦点距離(集光点位置までの距離)を基準値(0)として対物集光レンズ72から被加工物Wの上面までの基準値に対する変位量を示し、縦軸は第1のホトデテクター88aから出力される電圧値(V1)と第2のホトデテクター88bから出力される電圧値(V2)との比(V2/ V1)を示している。図5から判るように対物集光レンズ72から被加工物Wの上面までの上記基準値に対する変位量が大きくなる程(被加工物Wの厚みが厚く、チャックテーブルに保持された被加工物Wの高さ位置が高くなる程)、電圧値の比(V2/ V1)が小さくなる。従って、上述したように第1のホトデテクター88aから出力される電圧値(V1)と第2のホトデテクター88bから出力される電圧値(V2)との比(V2/ V1)を求め、この電圧値の比(V2/ V1)を図5に示す制御マップに照合することにより、上記基準値からの変位量を求めることができ、この変位量を対物集光レンズ72の焦点距離(集光点位置までの距離)から減算することにより集光器7の対物集光レンズ72から被加工物Wの上面までの距離(H)を求めることができる。なお、図5に示す制御マップは、後述する制御手段のメモリに格納される。
【0037】
図1に戻って説明を続けると、上記レーザー光線照射手段52を構成するケーシング521の先端部には、レーザー光線照射手段52によってレーザー加工すべき加工領域を検出する撮像手段9が配設されている。この撮像手段9は、可視光線によって撮像する通常の撮像素子(CCD)の外に、被加工物に赤外線を照射する赤外線照明手段と、該赤外線照明手段によって照射された赤外線を捕らえる光学系と、該光学系によって捕らえられた赤外線に対応した電気信号を出力する撮像素子(赤外線CCD)等で構成されており、撮像した画像信号を後述する制御手段に送る。
【0038】
図示の実施形態におけるレーザー加工機は、図6に示す制御手段10を具備している。制御手段10はコンピュータによって構成されており、制御プログラムに従って演算処理する中央処理装置(CPU)101と、制御プログラム等を格納するリードオンリメモリ(ROM)102と、演算結果等を格納する読み書き可能なランダムアクセスメモリ(RAM)103と、入力インターフェース104および出力インターフェース105とを備えている。制御手段10の入力インターフェース104には、上記X軸方向位置検出手段374、Y軸方向位置検出手段384、集光点位置調整手段53、第1のホトデテクター88a、第2のホトデテクター88bおよび撮像手段9等からの検出信号が入力される。そして、制御手段10の出力インターフェース105からは、上記パルスモータ372、パルスモータ382、パルスモータ432、パルスモータ532、加工用パルスレーザー光線発振手段6、検出用レーザー光線発振手段81等に制御信号を出力する。なお、上記ランダムアクセスメモリ(RAM)103は、上述した図5に示す制御マップを格納する第1の記憶領域103a、後述する被加工物の設計値のデータを記憶する第2の記憶領域103b、後述する光デバイスウエーハ10の高さ位置を記憶する第3の記憶領域103cや他の記憶領域を備えている。
【0039】
図示の実施形態におけるレーザー加工機は以上のように構成されており、以下その作用について説明する。
図7にはレーザー加工される被加工物として半導体ウエーハ20の斜視図が示されている。図7に示す半導体ウエーハ20は、シリコンウエーハからなっており、その表面20aに格子状に配列された複数のストリート201によって複数の領域が区画され、この区画された領域にIC、LSI等のデバイス202が形成されている。
【0040】
上述したレーザー加工機を用い、上記半導体ウエーハ20の分割予定ライン201に沿ってレーザー光線を照射し、半導体ウエーハ20の内部にストリート201に沿って改質層を形成するレーザー加工の実施形態について説明する。なお、半導体ウエーハ20の内部に改質層を形成する際に、半導体ウエーハ20の厚さにバラツキがあると、上述したように屈折率の関係で所定の深さに均一に改質層を形成することができない。そこで、レーザー加工を施す前に、上述した高さ位置検出装置8によってチャックテーブル36に保持された半導体ウエーハ20の高さ位置を計測する。
即ち、先ず上述した図1に示すレーザー加工機のチャックテーブル36上に半導体ウエーハ20の裏面20bを上にして載置し、該チャックテーブル36上に半導体ウエーハ20を吸引保持する。半導体ウエーハ20を吸引保持したチャックテーブル36は、加工送り手段37によって撮像手段9の直下に位置付けられる。
【0041】
チャックテーブル36が撮像手段9の直下に位置付けられると、撮像手段9および制御手段10によって半導体ウエーハ20のレーザー加工すべき加工領域を検出するアライメント作業を実行する。即ち、撮像手段9および制御手段10は、半導体ウエーハ20の所定方向に形成されているストリート201と、該ストリート201に沿って半導体ウエーハ20の高さを検出する高さ位置検出装置8の集光器7との位置合わせを行うためのパターンマッチング等の画像処理を実行し、アライメントを遂行する。また、半導体ウエーハ20に形成されている所定方向と直交する方向に形成されているストリート201に対しても、同様にアライメントが遂行される。このとき、半導体ウエーハ20のストリート201が形成されている表面20aは下側に位置しているが、撮像手段9が上述したように赤外線照明手段と赤外線を捕らえる光学系および赤外線に対応した電気信号を出力する撮像素子(赤外線CCD)等で構成された撮像手段を備えているので、裏面20bから透かしてストリート201を撮像することができる。
【0042】
上述したようにアライメントが行われると、チャックテーブル36上の半導体ウエーハ20は、図8の(a)に示す座標位置に位置付けられた状態となる。なお、図8の(b)はチャックテーブル36即ち半導体ウエーハ20を図8の(a)に示す状態から90度回転した状態を示している。
【0043】
なお、図8の(a)および図8の(b)に示す座標位置に位置付けられた状態における半導体ウエーハ20に形成された各ストリート201の送り開始位置座標値(A1,A2,A3・・・An)と送り終了位置座標値(B1,B2,B3・・・Bn)および送り開始位置座標値(C1,C2,C3・・・Cn)と送り終了位置座標値(D1,D2,D3・・・Dn)は、上記ランダムアクセスメモリ(RAM)103の第2に記憶領域103bに格納されている。
【0044】
上述したようにチャックテーブル36上に保持されている半導体ウエーハ20に形成されているストリート201を検出し、高さ検出位置のアライメントが行われたならば、チャックテーブル36を移動して図8の(a)において最上位のストリート201を集光器7の直下に位置付ける。そして、更に図9で示すようにストリート201の一端(図9において左端)である送り開始位置座標値(A1)(図8の(a)参照)を集光器7の直下に位置付ける。そして、高さ位置検出装置8を作動するとともに、チャックテーブル36を図9において矢印X1で示す方向に移動し、送り終了位置座標値(B1)まで移動する(高さ位置検出工程)。この結果、半導体ウエーハ20の図9の(a)において最上位のストリート201における高さ位置(集光レンズ72から被加工物Wの上面までの距離(H))を上述したように検出することができる。この検出された高さ位置(集光レンズ72から被加工物Wの上面までの距離(H))は、上記ランダムアクセスメモリ(RAM)103の第2に記憶領域103bに格納されている座標値に対応して第3の記憶領域103cに格納される。このようにして、半導体ウエーハ20に形成された全てのストリート201に沿って高さ位置検出工程を実施し、各ストリート201における高さ位置を上記ランダムアクセスメモリ(RAM)103の第3の記憶領域103cに格納する。
【0045】
上述した高さ位置検出工程においては、上述したようにチャックテーブル36に保持された半導体ウエーハ20の上面(裏面)の高さ位置が集光器7の対物集光レンズ72の焦点距離に近づいても第2のホトデテクター88bに受光される光量が急激に高くなることはないので、チャックテーブル36に保持された半導体ウエーハ20の上面(裏面)の高さ位置を正確に検出することができる。
【0046】
以上のようにして半導体ウエーハ20に形成された全てのストリート201に沿って高さ位置検出工程を実施したならば、半導体ウエーハ20の内部にストリート201に沿って改質層を形成するレーザー加工を実施する。
レーザー加工を実施するには、先ずチャックテーブル36を移動して図8の(a)において最上位のストリート201を集光器7の直下に位置付ける。そして、更に図10の(a)で示すようにストリート201の一端(図10の(a)において左端)である送り開始位置座標値(A1)(図10の(a)参照)を集光器7の直下に位置付ける。制御手段10は、集光点位置調整手段53を作動して集光器7から照射される加工用パルスレーザー光線LB1の集光点Paを半導体ウエーハ20の裏面20b(上面)から所定の深さ位置に合わせる。次に、制御手段10は、加工用パルスレーザー光線発振手段6を作動し、集光器7から加工用パルスレーザー光線LB1を照射しつつチャックテーブル36を矢印X1で示す方向に所定の加工送り速度で移動せしめる(レーザー加工工程)。そして、図10の(b)で示すように集光器7の照射位置がストリート201の他端(図10の(b)において右端)に達したら、パルスレーザー光線の照射を停止するとともに、チャックテーブル36の移動を停止する。この加工工程においては、制御手段10はランダムアクセスメモリ(RAM)103の第3の記憶領域103cに格納されている半導体ウエーハ20のストリート201におけるX座標値に対応した高さ位置に基いて、集光点位置調整手段53のパルスモータ532を制御し、図10の(b)で示すように集光器7を半導体ウエーハ20のストリート201における高さ位置に対応して上下方向に移動せしめる。この結果、半導体ウエーハ20の内部には、図10の(b)で示すように裏面20b(上面)から所定の深さ位置に裏面20b(上面)と平行に改質層210が形成される。
【0047】
なお、上記レーザー加工工程における加工条件は、例えば次のように設定されている。
レーザー :YVO4 パルスレーザー
波長 :1040nm
繰り返し周波数 :200kHz
平均出力 :1W
集光スポット径 :φ1μm
加工送り速度 :300mm/秒
【0048】
以上のようにして、半導体ウエーハ20の所定方向に延在する全てのストリート201に沿って上記レーザー加工工程を実行したならば、チャックテーブル36を90度回動せしめて、上記所定方向に対して直角に延びる各ストリート201に沿って上記レーザー加工工程を実行する。このようにして、半導体ウエーハ20に形成された全てのストリート201に沿って上記レーザー加工工程を実行したならば、半導体ウエーハ20を保持しているチャックテーブル36は、最初に半導体ウエーハ20を吸引保持した位置に戻され、ここで半導体ウエーハ20の吸引保持を解除する。そして、半導体ウエーハ20は、図示しない搬送手段によって分割工程に搬送される。
【0049】
以上、本発明によるチャックテーブルに保持された被加工物の高さ位置検出装置をレーザー加工機に適用した例を示したが、本発明はチャックテーブルに保持された被加工物を加工する種々の加工機に適用することができる。
【符号の説明】
【0050】
2:静止基台
3:チャックテーブル機構
36:チャックテーブル
37:加工送り手段
374:X軸方向位置検出手段
38:第1の割り出し送り手段
384:Y軸方向位置検出手段
4:レーザー光線照射ユニット支持機構
42:可動支持基台
43:第2の割り出し送り手段
5:レーザー光線照射ユニット
6:加工用パルスレーザー光線発振手段
7:集光器
71:方向変換ミラー
72:対物集光レンズ
8:高さ位置検出装置
81:検出用レーザー光線発振手段
82:ダイクロイックミラー
83:NDフィルター
84:第1のビームスプリッター
85:バンドパスフィルター
86:第2のビームスプリッター
87a:第1の集光レンズ
87b:第2の集光レンズ
88a:第1のホトデテクター
88b:第2のホトデテクター
89:マスク
9:撮像手段
10:制御手段
20:半導体ウエーハ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
チャックテーブルに保持された被加工物の高さ位置を検出する高さ位置検出装置において、
所定の波長領域を有する光を発する発光源と、
該発光源が発する光の光強度を中央部が高く稜線を形成し裾野に渡り緩やかに低下する強度分布となるように整形するNDフィルターと、
該NDフィルターによって光強度分布が整形された光を集光して該チャックテーブルに保持された被加工物に照射する集光器と、
該NDフィルターと該集光器との間に配設され該NDフィルターによって光強度分布が整形された光を該集光器に導く第1の経路に導くとともに該チャックテーブルに保持された被加工物で反射した反射光を第2の経路に導く第1のビームスプリッターと、
該第2の経路に導かれた反射光を第3の経路と第4の経路に分光する第2のビームスプリッターと、
該第3の経路に分光された反射光を受光する第1のホトデテクターと、
該第4の経路に配設され該第4の経路に分光された反射光の両側を遮光して中央部の反射光を帯状に通過させるスリットを備えたマスクと、
該マスクを通過した反射光を受光する第2のホトデテクターと、
該第1のホトデテクターによって受光した光量と該第2のホトデテクターによって受光した光量との比率を求め、該比率に基づいてチャックテーブルに保持された被加工物の高さ位置を求める制御手段と、を具備している、
ことを特徴とする高さ位置検出装置。
【請求項2】
被加工物を保持する被加工物保持面を備えたチャックテーブルと、該チャックテーブルに保持された被加工物をレーザー加工するための加工用レーザー光線を発振する加工用レーザー光線発振手段と該レーザー光線発振手段によって発振された加工用レーザー光線を集光する集光器とを有するレーザー光線照射手段と、該レーザー光線照射手段を該チャックテーブルの該被加工物保持面に対して垂直な方向に移動し該集光器によって集光される該加工用レーザー光線の集光点位置を調整する集光点位置調整手段と、該チャックテーブルと該レーザー光線照射手段を加工送り方向(X軸方向)に相対的に移動せしめる加工送り手段と、該チャックテーブルと該レーザー光線照射手段を加工送り方向(X軸方向)と直交する割り出し送り方向(Y軸方向)に相対的に移動せしめる割り出し送り手段と、該チャックテーブルに保持された被加工物の高さ位置を検出する高さ位置検出装置と、を具備するレーザー加工機において、
該高さ位置検出装置は、所定の波長領域を有する光を発する発光源と、該発光源が発する光の光強度を中央部が高く稜線を形成し裾野に渡り緩やかに低下する強度分布となるように整形するNDフィルターと、該NDフィルターによって光強度分布が整形された光を集光して該チャックテーブルに保持された被加工物に照射する集光器と、該NDフィルターと該集光器との間に配設され該NDフィルターによって光強度分布が整形された光を該集光器に導く第1の経路に導くとともに該チャックテーブルに保持された被加工物で反射した反射光を第2の経路に導く第1のビームスプリッターと、該第2の経路に導かれた反射光を第3の経路と第4の経路に分光する第2のビームスプリッターと、該第3の経路に分光された反射光を受光する第1のホトデテクターと、該第4の経路に配設され該第4の経路に分光された反射光の両側を遮光して中央部の反射光を帯状に通過させるスリットを備えたマスクと、該マスクを通過した反射光を受光する第2のホトデテクターと、を具備し、該第1のホトデテクターによって受光した光量と該第2のホトデテクターによって受光した光量との比率を求め、該比率に基づいてチャックテーブルに保持された被加工物の高さ位置を求める制御手段と、を具備している、
ことを特徴とするレーザー加工機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−72796(P2013−72796A)
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−213131(P2011−213131)
【出願日】平成23年9月28日(2011.9.28)
【出願人】(000134051)株式会社ディスコ (2,397)
【Fターム(参考)】