説明

高分子化合物

【課題】次世代の微細加工用のホトレジスト組成物に用いることのできる高い透明性を有する高分子化合物を提供する。
【解決手段】耐エッチング性を確保するために側鎖部分に脂環式基を持たせるとともに、この脂環式基の環上の水素原子を高度にフッ素化することによって、波長157nmの光に対して吸収係数3.0μm−1以下の透明性を確保する。脂環式基として、好ましくは多環式とし、フッ素による高度な置換は、望ましくは環上の水素原子のすべての置換、すなわちパーフルオロ脂環式基とする。この高分子化合物をベースポリマーとしてレジスト組成物を構成し、さらには該高分子化合物から溶解制御剤を構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リソグラフィーによる半導体集積回路のパターニングに用いられる化学増幅型レジスト組成物のベースポリマーや該レジスト組成物に必要に応じて添加される溶解制御剤などの酸に反応してアルカリ可溶化あるいはアルカリ不溶化する樹脂化合物として好適な透明性に優れた高分子化合物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
半導体集積回路パターンの微細化は、光リソグラフィーおよびその周辺技術の進歩により達成されてきたといっても過言ではない。この光リソグラフィーは、周知のように、大きく分けて2つの技術に支えられている。一つは、ステッパーと呼ばれる縮小投影露光装置の露光波長や開口数であり、他の一つは、前記ステッパーによってマスクパターンが転写されることになるホトレジスト組成物の転写解像性を主体としたレジスト特性である。これらが車の両輪のように作用し合って光リソグラフィーによる半導体集積回路パターンの加工精度を向上させてきた。
【0003】
ステッパーに用いられる光源は、回路パターンの高解像度化の要請を受けて、ますます短波長化されている。一般に、レジスト解像性約0.5μmでは水銀ランプの主要スペクトルが436nmのg線が、約0.5〜0.30μmでは同じく水銀ランプの主要スペクトルが365nmのi線が用いられ、約0.30〜0.15μmでは248nmのKrFエキシマレーザー光が用いられ、約0.15μm以下では193nmのArFエキシマレーザー光が用いられており、さらなる微細化のために157nmのFエキシマレーザー光や126nmのArエキシマレーザー光の使用が検討されている。
【0004】
一方、ホトレジスト組成物について見てみると、現在では、有機または無機反射防止膜との組み合わせや照明系の工夫もあり、KrFエキシマレーザー光を用いたリソグラフィーにおいて、KrF用ホトレジストの延命化がなされ、λ/2以下の約110nmを視野に入れたホトレジスト組成物の開発が行われている。また、ArFエキシマレーザー光を用いたリソグラフィーにおいて、将来の約90nmノード以下の量産に向けて、好適なArF用ホトレジスト組成物の提供が望まれている。そして、前記Fエキシマレーザーを用いたリソグラフィーは、将来の約65nm以下の微細加工技術を担うものとして注目されており、このFエキシマレーザーを用いたリソグラフィーによる微細加工にも十分に適用可能なホトレジスト組成物の開発が進められている。
【0005】
周知のように、リソグラフィーでは、実現しようとする半導体集積回路パターンの陰画または陽画パターンを反映したマスクを介して、短波長光を積層半導体基板上に塗布したホトレジスト層に照射する(露光)。ホトレジスト組成物は、照射光に反応してアルカリに対して不溶化(ネガ)もしくは溶解可能になる(ポジ)感光性ポリマーを主成分として含有しており、パターン光の照射後、露光によるレジスト層の反応を確実にするための加熱(post exposure bake)焼成を行い、続いて、現像して溶解可能な部分が除去されることにより、実現しようとする回路パターンを正確に反映したホトレジストパターン層を積層半導体基板上に形成する。この後、パターン化したホトレジスト層を加熱(post bake)により十分に硬化させて次工程のエッチングへの耐性を持たせることもある。エッチング工程では、パターン化したホトレジスト層をマスクとして積層半導体基板の表面層あるいは上部層をパターンに沿ってドライエッチングする。
【0006】
したがって、ホトレジスト組成物に要求される最も重要な特性は、まず、解像性を得ることであり、そのためには、レジスト層の表面部分ばかりでなく基板側の底面部分にまでパターン照射光(露光光)が届き、照射部分のレジスト層を底面部分まで十分に感光させることができるような「照射光に対する透明性」を有することである。
【0007】
周知のように、前述のようなリソグラフィーの微細化の要求を実現するために、最近のレジスト組成物は、いわゆる化学増幅型のレジスト組成物が主流となっている。この化学増幅型のレジスト組成物は、酸に対して反応性の高い基を有する高分子化合物と露光により酸を発生する酸発生剤とこれらを溶解する溶媒とを少なくとも含有する。このレジスト組成物の塗膜にパターン光が照射されると、露光部に存在する酸発生剤から酸が露光部分に放出され、露光部分のベースポリマー(上記高分子化合物)に作用する。ポジ型レジスト組成物では、そのベースポリマーは、酸の触媒的作用により、保護基(酸解離性溶解抑制基ともいう)が脱離してアルカリ可溶となるので、アルカリ現像液により一部潜像させたレジスト層を現像することによって、マスクパターンに対してポジ型のレジストパターンが得られる。一方、ネガ型レジスト組成物では、現像液可溶型のポリマーを用いており、前記酸の触媒的作用により、露光部分が現像液不溶型となる。また、この化学増幅型レジスト組成物には、他の高分子成分として、溶解制御剤が必要に応じて添加される。この溶解制御剤は、分子量5000あるいは3000以下の比較的分子量の低い高分子化合物であり、酸発生剤から生じた酸の作用により保護基が脱離してアルカリ現像液に対する溶解性が増大する、すなわち、露光によりレジスト膜のうち不溶部として残る部分(未露光部)ではアルカリ現像液による溶解性を抑止するとともに、可溶部分(露光部)ではアルカリ現像液による溶解性を促進する作用を発揮する。
【0008】
したがって、化学増幅型のレジスト組成物の露光光に対する透明性を向上させるためには、ベースポリマーと、必要に応じて添加される溶解制御剤に用いるポリマーとを露光光に対して高い透明性を有する高分子化合物から構成する必要があることになる。
【0009】
次世代のステッパーの光源となるFエキシマレーザー光によるリソグラフィーに用いることのできるレジスト組成物のベースポリマーや溶解制御剤の樹脂成分には、Fエキシマレーザー光の主要スペクトルである157nmに高い透明性が必要となる。この波長157nmの露光によるレジスト膜の所望とされる透明度については、十分なパターン転写解像性を得るために、膜厚を正規化したレジスト膜の吸収係数(光学定数)を3.0(μm−1)以下とする必要があることが判明している(非特許文献1)。
【0010】
これに対して、既存のレジスト材料は、まさに、この波長157nmに吸収を持つため、すなわち、波長157nmの照射光に対する透明性が低いため、既存のレジスト材料から次世代のレジスト組成物を得ることはできない。
【0011】
このように、ホトレジスト組成物を提供する技術分野では、現在、この波長157nmに高い透明性を有する高分子化合物の開発が課題となっている。現在までのところ、フッ素(F)やシリコン(Si)を導入することによって波長157nmを主要スペクトルとする照射光に対する透明性を確保するとともに、露光後の現像特性を左右するアルカリ可溶性や、パターン転写解像性、そして耐エッチング性といったレジスト性能を兼ね備えた新規なポリマーの開発が進められている。しかしながら、どのような組成の高分子のどのような部位に、どの程度のフッ素やシリコンを導入すれば、耐ドライエッチング性等の他の特性を維持しつつ、露光光に対する透明性を目的とするレベル以上に向上させることができるのかは、明らかになっていない。
【0012】
ArFエキシマレーザーによる露光光に対する透明性を追求したレジスト組成物用ベースポリマーとして、従来、開示されているものとしては、脂環基構造とアンドロステロン誘導体に結合したδ−ラクトン構造とを有するアクリル酸エステル系モノマーの共重合体(特許文献1)や、α位に電子吸引基を持つアクリル酸とシクロペンタジエンまたはジシクロペンタジエンをディールスアルダー反応させて多環式不飽和カルボン酸を得、この不飽和カルボン酸の水酸基の水素原子を酸解離性溶解抑制基で置換した多環式不飽和炭化水素誘導体の重合体(特許文献2)や、環内に重合性炭素−炭素二重結合を有する脂環式炭化水素から導かれる重合単位と(メタ)アクリロニトリルから導かれる重合単位を有する共重合体(特許文献3)や、ビニル基にラクトン構造が結合されたモノマーを重合単位として有する重合体(特許文献4)や、α位にフッ素原子を導入したアクリル酸エステル系モノマーとビニルエーテル誘導体の共重合体(特許文献5)などが、挙げられる。特許文献1に開示の共重合体では透明性を向上するためにフッ素原子の導入は行われていない。特許文献2に開示の重合体では重合単位の一部もしくは側鎖環の一部にフッ素が導入されているが、その導入と透明性との関係は明確ではない。特許文献3に開示の共重合体では側鎖環の末端保護基の一部にフッ素が導入されているが、その導入と透明性との関係は明確ではない。特許文献4に開示の重合体では透明性を向上するためにフッ素の導入は行われていない。特許文献5に開示の共重合体では側鎖環の環上の水素原子の一部もしくは約半数がフッ素置換されたものが例示されているが、その置換と透明性との関係は明確ではない。
【0013】
このように、現在、波長200nm以下の露光光に対する透明性を向上させるために様々な高分子化合物が提案されているが、どのような組成の高分子のどのような部位に、どの程度のフッ素を導入すれば、耐ドライエッチング性等の他の特性を維持しつつ、露光光に対する透明性を目的とするレベル以上に向上させることができるのかは、明らかになっていない。
【非特許文献1】M. K. Crawford, et al., “New Material for 157 nm Photoresists: Characterization and Properties” Proceedings of SPIE, Vol. 3999, (2000) pp.357−364
【特許文献1】特開2001−174993号公報
【特許文献2】特開2001−328964号公報
【特許文献3】特開2002−196495号公報
【特許文献4】特開2002−278069号公報
【特許文献5】特開2002−293840号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明は、前記事情に鑑みてなされたもので、次世代の微細加工用のホトレジスト組成物に用いることのできる高い透明性を有する高分子化合物に関するもので、さらに詳しくは波長157nmの露光光に対して吸収係数3.0μm−1以下の透明性を有する高分子化合物に関するものである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明者らは、前記課題を解決するために鋭意研究を重ねたところ、耐エッチング性を確保するために側鎖部分に脂環式基を持たせるとともに、この脂環式基の環上の水素原子が過半数以上の任意の数だけフッ素原子にて置換されれば、波長157nmの光に対して吸収係数3.0μm−1以下の透明性を確保できることを、知見するに至った。また、前記脂環式基は、多環式基が好ましく、フッ素による高度な置換は、望ましくは環上の水素原子の全ての置換、すなわちパーフルオロ脂環式基であることが望ましいことも、判明した。
【0016】
本発明は、かかる知見に基づいてなされたもので、本発明にかかる高分子化合物は、脂環式基を側鎖有する重合性単位を有する高分子化合物であって、前記脂環式基が高度にフッ素化され、波長157nmの光に対して吸収係数3.0μm−1以下の透明性を有していることを特徴とする。
【0017】
本明細書におけるレジスト組成物は、前記高分子化合物を含有することを特徴とする。このレジスト組成物には、前記高分子化合物をベースポリマーとして含有していてもよく、必要に応じて添加される溶解制御剤として含有していてもよく、これらを同時に用いる系であってもよい。ただし、レジスト組成物のベースポリマーとして用いる場合は、重量平均分子量1,000〜20,000、好ましくは3,000〜20,000であり、溶解制御剤として用いる場合は、1,000〜5,000が好ましい。
【0018】
前述のように、本発明にかかる高分子化合物は、脂環式基を側鎖に有する重合性単位を有する高分子化合物であって、前記脂環式基が高度にフッ素化され、波長157nmの光に対して吸収係数3.0μm−1以下の透明性を有していることを特徴とするものである。かかる高分子化合物を一般式にて表現してみると、以下の一般式(1)に表される重合単位を有する重合体として示すことができる。
【0019】
【化1】

【0020】
前記一般式(1)において、nは任意の整数、Xはカルボン酸のエステル基、
【化2】

、エーテル基(−O−)、−CH−O−またはアルキリデン基
【化3】

であり、丸で囲んだZは高度にフッ素化された脂環式基で、好ましくは多環式基であり、R、R,R,R,R,およびRは、それぞれ独立して、水素原子、低級アルキル基、フッ素原子、またはフッ化低級アルキル基から選択される1種であり、lは0〜3の整数であり、Rは水酸基である。
【0021】
前記一般式(1)に丸で囲んだZで表される脂環式基は、好ましくは三環性脂環式炭化水素基であるアダマンチル基であり、その環上の水素原子が高度にフッ素化されていることが望ましく、さらに望ましくはパーフルオロである。
【発明の効果】
【0022】
本発明にかかる高分子化合物は、脂環式基を有する重合性単位を含んでなる高分子化合物であって、前記脂環式基が高度にフッ素化され、波長157nmの光に対して吸収係数3.0μm−1以下の透明性を有していることを特徴とする。
【0023】
したがって、本発明によれば、次世代の微細加工用のホトレジスト組成物に用いることのできる高い透明性を有する高分子化合物、該高分子化合物を有するレジスト組成物および溶解制御剤を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
前述のように、本発明にかかる高分子化合物は、脂環式基を側鎖に有する重合性単位を有する高分子化合物であって、前記脂環式基が高度にフッ素化され、波長157nmの光に対して吸収係数3.0μm−1以下の透明性を有していることを特徴とするものである。
【0025】
かかる構成において、前記脂環式基は、その環上の水素原子の全てがフッ素化されていることが望ましい。ただし、環上に水素原子以外の親水性の置換基(例えば、水酸基)を有するときは、該置換基はフッ素化されない。また、前記脂環式基は多環式基であることが望ましい。
【0026】
また、前記脂環式基には親水性基が含まれていても良い。この親水基の存在により、この高分子化合物をレジスト組成物のベースポリマーや溶解制御剤に使用した場合に、基板上に塗膜を形成したときのレジスト膜やレジストパターンの基板への密着性向上が期待できる。
【0027】
また、前記脂環式基としては、これまでArFレジストの脂環式、特には、多環式基としては、知られているものから任意に用いることができる。例えば、ビシクロアルカン、トリシクロアルカン、テロラシクロアルカンなどから1個の水素元素を除いた基などを例示できる。具体的には、アダマンタン、ノルボルナン、イソボルナン、トリシクロデカン、テトラシクロドデカンなどのポリシクロアルカンから1個の水素原子を除いた基などが挙げられる。これらの中でもアダマンチル基、ノルボルニル基、テトラシクロドデカニル基が工業上好ましい。特には、アダマンチル基が好適である。アダマンチル基は、300nm以下の波長光ばかりでなく300nm以上の波長光に対しても透明性が高いので、レジスト組成物に用いるには、汎用性が高く、好ましい。
【0028】
また、前記重合性単位としては、アクリル酸エステルまたはメタクリル酸エステルやビニルエーテル、アリルエーテルのエチレン性二重結合が開裂して誘導される単位を好適に用いることができる。
【0029】
さらに、本発明の高分子化合物は、共重合体が好ましい。すなわち、さらに第2の重合性単位を含有していてもよい。第2の重合性単位を含有させれば、この第2の重合性単位に酸に対する感受性のある置換基を結合させ、それによって、高分子化合物の酸触媒作用によるアルカリ可溶化もしくはアルカリ不溶化の制御を行うことができ、酸触媒に対する感受性設定の自由度を上げることができる。すなわち、前記第2の重合性単位が酸解離性基を有していてもよく、酸に対する不溶基を有していてもよい。
【0030】
また、前記第2の重合性単位としては、アクリル酸エステルまたはメタクリル酸エステルから誘導される重合性単位や、テトラフルオロエチレン等のエチレン性二重結合が開裂して誘導される単位を好適に用いることができる。
【0031】
前記重合性単位に好適なアクリル酸エステルまたはメタクリル酸エステルとしては、例えば、下記構造の化合物を挙げることができる。
【0032】
【化4】

【0033】
また、前記重合性単位として好適なビニルエーテルとしては、例えば、下記構造の化合物を挙げることができる。
【0034】
【化5】

【0035】
また、前記重合性単位として好適なアリルエーテルとしては下記構造の化合物を用いることができる。
【0036】
【化6】

【0037】
前記脂環式基として好適なアダマンチル基を含む重合性単位を有する重合体の好適な具体例としては、下記一般式(2)に表される重合性単位を有してなる1−パーフルオロアダマンチルメタアクリレートや、一般式(3)に表される重合性単位を有してなる3−ヒドロキシ−1−パーフルオロアダマンチルアクリレートから誘導される単位を有する重合体を挙げることができる。なお、m、nは任意の整数である。
【0038】
【化7】

【0039】
【化8】

【0040】
前記1−パーフルオロアダマンチルメタアクリレートと、3−ヒドロキシ−1−パーフロオロアダマンチルアクリレートは、例えば、概略以下のような合成法によって得ることができる。1−ヒドロキシパーフルオロアダマンタンまたはパーフルオロアダマンタンジオールをそれぞれ1当量とトリエチルアミン1.2当量とをジエチルエーテルに溶解させた後、その溶液に氷冷下でアクリル酸クロライドまたはメタクリル酸クロライド1当量をゆっくり滴下する。反応終了後、水を加えてジエチルエーテルで抽出した後、有機層を硫酸マグネシウムで乾燥させる。硫酸マグネシウムを濾別した後、得られたジエチルエーテル溶液を濃縮後、カラム分離すれば、1−パーフルオロアダマンチル(メタ)アクリレートまたは3−ヒドロキシ−1−パーフルオロアダマンチル(メタ)アクリレートが得られる。これらのモノマーが得られれば、公知の例えばアゾビスイソブチロニトリル(AIBN)などの重合開始剤を用いたラジカル重合法等により、その単位を有する高分子化合物を得ることができる。
【0041】
また、前記第2の重合性単位に好適なアクリル酸エステルまたはメタクリル酸エステルから誘導される重合性単位を有する化合物としては、例えば、下記構造の化合物を挙げることができる。
【0042】
【化9】

【0043】
また、前記第2の重合性単位に好適な他のビニル性二重結合が開裂して誘導される重合性単位を有する化合物としては、例えば、下記構造の化合物を挙げることができる。
【0044】
【化10】

【0045】
また、これらに加えて、特開2002−90997号公報に開示のフッ素含有単環式重合性単位を用いることも可能である。この特開2002−90997号公報に開示のフッ素含有単環式重合体は、式:CH=CH−Y−CH=CHで示される化合物またはその誘導体からなるジエン系モノマー(a)のモノマー単位と、含フッ素ビニルモノマー(b)のモノマー単位とが環化反応した環状構造の繰り返し単位を含み、かつ含フッ素ビニルモノマーに由来するブロック化された酸性基を有するフッ素含有単環式ポリマーである。なお、上記式中、Yはメチレン基または酸素原子を表す。また、前記(a)の誘導体には、アルキル置換体および水酸基置換体を含み、置換アルキル基は炭素数1ないし4の低級アルキル基が好ましい、とされている。これらの第2の重合性単位は、ポジ型レジストに用いるときは、酸解離性溶解抑制基を持つ単位を必須とし、ネガ型レジストに用いるときは、酸に対する不溶基を持つ単位を必須とする。さらに、基板とレジストパターンの密着性を高めるために、γ−ブチロラクトン基を持つ単位や、より透明性を向上させるテトラフルオロエチレン等、本発明の高分子化合物を必要に応じ、三元、四元または五元の共重合体とするため二種以上適宜組み合わせて用いてもよい。なお、本発明の高分子化合物の具体例を示す構造式は下記のようである。
【0046】
【化11】

【0047】
【化12】

【0048】
また、前記酸解離性溶解抑制基としては、これまで化学増幅型ポジレジストのそれとして提案されているものであれば、限定されないが、特には、第三級アルキル基、より具体的にはtert−ブチル基、tert−アミル基などの鎖状アルキル基からなるもの、2−メチル−2−アダマンチル基、2−エチル−2−アダマンチル基などの環状アルキル基と鎖状アルキル基からなるもの等を挙げることができる。
【0049】
さらに、前記酸に対する不溶基としては、上記特許文献1に記載されているようなδ−ヒドロキシカルボン酸のようなヒドロキシカルボン酸が酸の作用によりラクトンを形成し得るもの等を挙げることができる。
【0050】
本発明の高分子化合物は、上記した高度にフッ素化された脂環式基を有する重合性単位を含み、好ましくはこれと第2の重合性単位を有するものである。そして、該高分子化合物は化学増幅型のレジストのベースポリマーとしてもまた溶解制御剤としても用いることができる。溶解制御剤として用いる場合は、前記したポジ型レジストのベースポリマーとして用いるときのように酸解離性溶解抑制基を必須とし、その重量平均分子量を2,000〜5,000程度として用いればよい。その際、本発明の高分子化合物と併用して用いてもよいし、他の公知のベースポリマーと組み合わせて用いてもよい。
【0051】
また、本発明の高分子化合物は、公知の重合方法、典型的にはラジカル重合によって容易に製造することができる。例えば、テトラヒドロフラン、酢酸エチル、メチルイソブチルケトン、及びメチルエチルケトンなどのような溶剤に必要なモノマーを溶解し、ラジカル重合開始剤を加え、加熱すればよい。該重合開始剤としては、アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)(使用温度60〜90℃)、2,2’−アゾビス−(2,4−ジメチルバレロニトリル(使用温度45〜70℃))、2,2’−アゾビス−(2−メチルイソブチロニトリル)(使用温度60〜95℃)、tert−ブチルパーオクトエート(使用温度75〜100℃)、1,1’−アゾビス−(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)(使用温度80〜110℃)、1−[(1−ジアゾ−1−メチルエチル)アゾ]ホルムアミド(温度95〜120℃)等を挙げることができ、それぞれ、単独または混合して用いることができる。特に、AIBNは、汎用的な重合開始剤として好ましく用いられる。
【0052】
その後は、このようにして得られた高分子化合物を含有する反応液を、イソプロパノール、メタノール、水、n−ヘプタン、n−ヘキサンなどの多量の貧溶媒中に滴下して、高分子化合物を析出させる。その後、得られた析出物を濾別、乾燥することにより、本発明の高分子化合物(樹脂)を得ることができる。この工程は、場合により不要であることもあるが、反応液中に残存する未反応の単量体や重合開始剤等を取り除くのに有効である。これらの未反応物がそのまま残存しているとレジスト性能に悪影響を及ぼす可能性があるため、取り除いた方が好ましい。そして、レジスト組成物を調製するには、酸発生剤成分を同時に配合する必要がある。
【0053】
本明細書のレジスト組成物における、酸発生剤成分としては、従来、化学増幅型レジストにおける酸発生剤として公知のものの中から任意のものを適宜選択して用いることができる。
【0054】
該酸発生剤の例としては、ジフェニルヨードニウムトリフルオロメタンスルホネート、(4−メトキシフェニル)フェニルヨードニウムトリフルオロメタンスルホネート、ビス(p−tert−ブチルフェニル)ヨードニウムトリフルオロメタンスルホネート、トリフェニルスルホニウムトリフルオロメタンスルホネート、(4−メトキシフェニル)ジフェニルスルホニウムトリフルオロメタンスルホネート、(4−メチルフェニル)ジフェニルスルホニウムノナフルオロブタンスルホネート、(p−tert−ブチルフェニル)ジフェニルスルホニウムトリフルオロメタンスルホネート、ジフェニルヨードニウムノナフルオロブタンスルホネート、ビス(p−tert−ブチルフェニル)ヨードニウムノナフルオロブタンスルホネート、トリフェニルスルホニウムノナフルオロブタンスルホネートなどのオニウム塩などが挙げられる。これらのなかでもフッ素化アルキルスルホン酸イオンをアニオンとするオニウム塩が好ましい。
【0055】
該酸発生剤成分として、1種の酸発生剤を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0056】
該酸発生剤成分の使用量は、ベースポリマー100質量部に対し、0.5〜30質量部、好ましくは1〜10質量部とされる。0.5質量部未満ではパターン形成が十分に行われないし、30質量部を超えると均一な溶液が得られにくく、保存安定性が低下する原因となるおそれがある。
【0057】
本明細書におけるレジスト組成物は、前記ベースポリマーと前記酸発生剤成分と、場合により、前記溶解制御剤、さらには、後述する任意の成分を、有機溶剤に溶解させて製造することができる。
【0058】
有機溶剤としては、前記各成分を溶解し、均一な溶液とすることができるものであればよく、従来、化学増幅型レジストの溶剤として公知のものの中から任意のものを1種又は2種以上適宜選択して用いることができる。
【0059】
例えば、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、メチルイソアミルケトン、2−ヘプタノンなどのケトン類や、エチレングリコール、エチレングリコールモノアセテート、ジエチレングリコール、ジエチレングリコールモノアセテート、プロピレングリコール、プロピレングリコールモノアセテート、ジプロピレングリコール、又はジプロピレングリコールモノアセテートのモノメチルエーテル、モノエチルエーテル、モノプロピルエーテル、モノブチルエーテル又はモノフェニルエーテルなどの多価アルコール類及びその誘導体や、ジオキサンのような環式エーテル類や、乳酸メチル、乳酸エチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、ピルピン酸メチル、ピルピン酸エチル、メトキシプロピオン酸メチル、エトキシプロピオン酸エチルなどのエステル類などを挙げることができる。これらの有機溶剤は単独で用いてもよく、2種以上の混合溶剤として用いてもよい。
【0060】
特に、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)やプロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)が好ましく、さらには、これらと乳酸エチル(EL)、γ−ブチロラクトン等のヒドロキシ基やラクトンを有する極性溶剤との混合溶剤は、レジスト組成物の保存安定性が向上するため、好ましい。
【0061】
また、本明細書におけるレジスト組成物には、レジストパターン形状、引き置き経時安定性などを向上させるために、さらに任意の成分として公知のアミン成分、好ましくは第2級低級脂肪族アミンや第3級低級脂肪族アミンを含有させることができる。
【0062】
ここで、低級脂肪族アミンとは炭素数5以下のアルキルまたはアルキルアルコールのアミンを言い、この第2級や第3級アミンの例としては、トリメチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、ジ−n−プロピルアミン、トリ−n−プロピルアミン、トリベンチルアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミンなどが挙げられるが、特にトリエタノールアミンのようなアルカノールアミンが好ましい。
【0063】
これらは単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、これらのアミンは、ベースポリマー成分に対して、通常0.01〜1質量%の範囲で用いられる。
【0064】
本明細書におけるレジスト組成物には、さらに所望により混和性のある添加剤、例えばレジスト膜の性能を改良するための付加的樹脂、塗布性を向上させるための界面活性剤、溶解抑制剤、可塑剤、安定剤、着色剤、ハレーション防止剤などを適宜、添加含有させることができる。
【0065】
(パターン形成方法)
次に、レジストパターン形成方法について説明する。
まず、シリコンウェーハ等の基板上に、本発明のレジスト組成物をスピンナーなどで塗布した後、プレベークを行う。次いで、露光装置などを用い、レジスト組成物の塗膜に対して、所望のマスクパターンを介して選択的に露光を行った後、PEB(露光後加熱)を行う。続いて、アルカリ現像液を用いて現像処理した後、純水を用いて水リンスを行う。これらの一連の操作によりレジスト組成物の塗膜がマスクパターンに応じた形状にパターニングされ、レジストパターンが得られる。
【0066】
露光に用いる波長は、特に限定されず、ArFエキシマレーザー、KrFエキシマレーザー、Fエキシマレーザー、EUV(極紫外線)、VUV(真空紫外線)、電子線、X線、軟X線などの放射線を用いて行うことができる。特に本発明のレジスト組成物は、Fエキシマレーザーに対して有効である。
【0067】
なお、基板とレジスト組成物の塗膜との間に、有機系または無機系の反射防止膜を設けることもできる。
【0068】
また、本発明の高分子化合物は、その脂環式基を側鎖に有する高度にフッ素化された重合性単位の単独重合体でもよいし、第2の重合性単位との共重合体でもよい。共重合体の場合、前者の単位は5〜40モル%、好ましくは10〜35モル%、第2の重合性単位は60〜95モル%、好ましくは65〜90モル%の範囲が好ましい。なお、第2のモノマーは2種以上を適宜組み合わせて用いてもよい。
【実施例】
【0069】
以下、本発明の実施例を説明するが、これら実施例は、本発明を好適に説明するための例示に過ぎず、なんら本発明を限定するものではない。
【0070】
(樹脂合成例1)
5.0gの1−パーフルオロアダマンチルメタアクリレートを20mLのテトラヒドロフランに溶解し、0.1gのアゾビスイソブチロニトリルを加えた。70℃で5時間加熱還流した後、500mLのメタノールに滴下した。析出した樹脂を濾別、減圧乾燥を行い、白色の粉状樹脂を得た。この樹脂は前記一般式(2)に示すような重合単位を有する高分子化合物であった。この樹脂の収量は1gであった。また、この樹脂の重量平均分子量(Mw)は8,000であり、分散度(Mw/Mn)は1.6であった。以下、この樹脂を樹脂1と記す。
【0071】
(樹脂合成例2)
10.0gの3−ヒドロキシ−1−パーフルオロアダマンチルアクリレートを50mLのテトラヒドロフランに溶解し、0.1gのアゾビスイソブチロニトリルを加えた。70℃で5時間加熱還流した後、1Lのn−ヘプタンに滴下した。析出した樹脂を濾別、減圧乾燥を行い、樹脂を得た。この樹脂は前記一般式(3)に示すような重合単位を有する高分子化合物であった。この樹脂の収量は5.1gであった。また、この樹脂の重量平均分子量(Mw)は4800であり、分散度(Mw/Mn)は1.28であった。以下、この樹脂を樹脂2と記す。
【0072】
(樹脂合成例3)
4.40gの2−メチル−2−アダマンチルアクリレート、3.12gのγブチロラクトンアクリレート、および4.74gの3−ヒドロキシパーフルオロアダマンチルアクリレートを50mLのテトラヒドロフランに溶解し、0.61gのアゾビスイソブチロニトリルを加えた。70℃で5時間加熱還流した後、1Lのn−ヘプタンに滴下した。析出した樹脂を濾別、減圧乾燥を行い、樹脂を得た。この樹脂は下記一般式(4)および(5)と、前記一般式(3)にそれぞれ表される3種の重合単位を有する高分子化合物であった。この樹脂の収量は7.0gであった。また、この樹脂の重量平均分子量(Mw)は5100であり、分散度(Mw/Mn)は2.37であった。以下、この樹脂を樹脂3と記す。なお、下記一般式(4)、(5)においてpおよびqは任意の整数を示す。なお、この高分子化合物はポジ型レジストのベースポリマーや溶解制御剤として有用である。
【0073】
【化13】

【0074】
【化14】

【0075】
(樹脂合成例4)
2.8gのラクトンモノマー、および2.4gの3−ヒドロキシパーフルオロアダマンチルアクリレートを90mLのテトラヒドロフランに溶解し、0.15gのアゾビスイソブチロニトリルを加えた。70℃で5時間加熱還流した後、1Lのn−ヘプタンに滴下した。生じた固形物を濾過した後、40℃で3時間真空乾燥した。得られた樹脂3.0gを100mLのテトラヒドロフランに溶解し、110gのTMAH(テトラメチルアンモニウムヒドロキシド)を加えた。室温で6時間撹拌した後、0.04NのHClで中和した。加水分解された樹脂を酢酸エチルにて抽出した。有機層を純水にて洗浄後、1Lのn−ヘプタンに滴下した。析出した樹脂を濾別、30℃で2時間真空乾燥を行い、樹脂を得た。この樹脂は下記一般式(6)と前記化学式(3)に示す2種の重合単位を有する高分子化合物であった。この樹脂の収量は1.5gであった。また、この樹脂の重量平均分子量(Mw)は1200であり、分散度(Mw/Mn)は1.79であった。以下、この樹脂を樹脂4と記す。なお、下記一般式(6)において、rは任意の整数である。なお、この高分子化合物はネガ型レジストのベースポリマーとして有用である。
【0076】
【化15】

【0077】
(比較樹脂合成例1)
10.0gの1−アダマンチルメタアクリレートを50mLのテトラヒドロフランに溶解し、0.5gのアゾビスイソブチロニトリルを加えた。70℃で5時間加熱還流した後、1Lのメタノールに滴下した。析出した樹脂を濾別、減圧乾燥を行い、樹脂を得た。この樹脂は下記一般式(7)に示す重合単位を有する高分子化合物であった。この樹脂の収量は8.0gであった。また、この樹脂の重量平均分子量(Mw)は6,000であり、分散度(Mw/Mn)は1.5であった。以下、この樹脂を比較樹脂1と記す。
【0078】
【化16】

【0079】
(比較樹脂合成例2)
10.0gの3−ヒドロキシ−1−アダマンチルアクリレートを50mLのテトラヒドロフランに溶解し、0.5gのアゾビスイソブチロニトリルを加えた。70℃で5時間加熱還流した後、1Lのメタノールに滴下した。析出した樹脂を濾別、減圧乾燥を行い、白色の粉状樹脂を得た。この樹脂は下記一般式(8)に示す重合単位を有する高分子化合物であった。この樹脂の収量は8.0gであった。また、この樹脂の重量平均分子量(Mw)は6100であり、分散度(Mw/Mn)は2.8であった。以下、この樹脂を比較樹脂2と記す。
【0080】
【化17】

【0081】
(実施例1)
樹脂の透明性(吸収係数)の測定
樹脂1と比較樹脂1をそれぞれトルエンに溶解し、樹脂2と比較樹脂2をそれぞれPGME(プロピレングリコールモノメチルエーテル)に溶解し、これらの4種の樹脂溶液を、フッ化マグネシウムウエハー上に、乾燥後の膜厚が0.1μmとなるように、それぞれ塗布した。これら塗布膜を、それぞれ130℃で60秒間、ダイレクトホットプレート上にてプリベーク(Pre Bake)して、4種の樹脂膜を形成させた。このようにして形成した各樹脂膜の波長157nmおよび193nmの各光に対する透明性(吸収係数)を、真空紫外分光光度計(日本分光株式会社製)を用いて測定した。その結果を表1に示す。
【0082】
【表1】

【0083】
表1から明らかなように、本発明にかかる高分子化合物は、従来透明性の確保が困難であった波長157nmのFエキシマレーザー光に対する透明性が大変高く、次世代レジスト組成物用のベースポリマーや溶解抑制剤を構成するポリマーに用いるに好適であることが理解される。
【0084】
(実施例2)
ArFポジ型露光による解像性の確認
3−ヒドロキシ−1−パーフルオロアダマンチルアクリル酸エステルを重合単位として含有した樹脂3をベースポリマーに用いて、以下に示すように、酸発生剤としてトリフェニルスルフォニウムパーフルオロブタンスルホネート(TPS−PFBS)とクエンチャーとしてトリエタノールアミンとを添加し、PGMEA(プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート)を溶剤として、ポジ型レジスト組成物を調製した。
【0085】
樹脂3 100重量部
酸発生剤:TPS−PFBS 2.5重量部
クエンチャー:トリエタノールアミン 0.2重量部
溶剤:PGMEA 900重量部
【0086】
このポジ型レジスト組成物を膜化したポジ用レジストの解像性を、ArFエキシマレーザー光による露光にて確認した。測定された解像力と露光量とを下記の表2に示す。
【0087】
(実施例3)
ArFネガ型露光による解像性の確認
3−ヒドロキシ−1−パーフルオロアダマンチルアクリルエステルを重合性単位として含有した樹脂4をベースポリマーに用いて、以下に示すように、酸発生剤としてトリフェニルスルホニウムパーフルオロメタンスルホネート(TPS−PFMS)およびトリフェニルスルフォニウムパーフルオロブタンスルホネート(TPS−PFBS)とクエンチャーとして4−フェニルピリジンとを添加し、PGMEと純水を溶剤として、ネガ型レジスト組成物を調製した。
【0088】
樹脂4 100重量部
酸発生剤:TPS−PFMS 1.0重量部
酸発生剤:TPS−PFBS 0.68重量部
クエンチャー:4−フェニルピリジン 0.2重量部
溶剤:PGME 1000重量部
純水 80重量部
【0089】
このネガ型レジスト組成物を膜化したネガ用レジストの解像性を、ArFエキシマレーザー光による露光にて確認した。測定された解像力と露光量とを下記の表2に示す。なお、表中、PBは露光前に行う予備加熱処理(Pre Bake)を意味し、PEBは露光後に行う加熱処理(Post Exposure Bake)を意味する。
【0090】
【表2】

【0091】
表2に示すように、本発明の高分子化合物を含有するレジスト組成物は、優れた解像力と露光感度を有しており、これら特性はベースポリマーとして用いている本発明の高分子化合物のArFエキシマレーザー光に対する優れた透明性に由来するものであることが理解される。このことからFエキシマレーザーにおいても同様な効果が得られることは明らかである。
【0092】
なお、前記実施例では、本発明の高分子化合物をレジスト組成物のベースポリマーとして用いた例を示したが、重量平均分子量をより小さく制御したものを、レジスト組成物に必要に応じて添加する溶解制御剤に使用することも可能であることは明らかである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アダマンチル基を側鎖に有し、かつ、アクリル酸エステルまたはメタクリル酸エステルから誘導される第1の重合性単位と、該第1の重合性単位とは異なる第2の重合性単位とを有する高分子化合物であって、
前記アダマンチル基の環上の水素原子の半数以上がフッ素化され、波長157nmの光に対して吸収係数3.0μm−1以下の透明性を有していることを特徴とする高分子化合物。
【請求項2】
前記アダマンチル基の環上の水素原子の全てがフッ素化されていることを特徴とする請求項1に記載の高分子化合物。
【請求項3】
前記アダマンチル基が環上に水酸基を有することを特徴とする請求項1または2に記載の高分子化合物。
【請求項4】
前記第2の重合性単位が酸解離性基を有することを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の高分子化合物。
【請求項5】
前記第2の重合性単位が酸の作用によりラクトンを形成するヒドロキシカルボン酸構造を有する基を有することを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の高分子化合物。
【請求項6】
前記第2の重合性単位がアクリル酸エステルまたはメタクリル酸エステルから誘導される重合性単位であることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の高分子化合物。
【請求項7】
前記第2の重合性単位がビニル性二重結合から誘導される重合性単位であることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の高分子化合物。
【請求項8】
下記一般式(1)
【化1】

(式中、nは任意の整数、Xはカルボン酸のエステル基、
【化2】

、エーテル基(−O−)、−CH−O−またはアルキリデン基
【化3】

であり、丸で囲んだZは環上の水素原子の半数以上がフッ素化されたアダマンチル基であり、R,R,R,R,R,およびRは、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1〜5のアルキル基、フッ素原子、または炭素数1〜5のフッ化アルキル基から選択される1種であり、lは0〜3の整数であり、Rは水酸基である。)
で表される第1の重合性単位と、該第1の重合性単位とは異なる第2の重合性単位とを有し、波長157nmの光に対して吸収係数3.0μm−1以下の透明性を有していることを特徴とする高分子化合物。
【請求項9】
前記アダマンチル基がパーフルオロアダマンチル基であることを特徴とする請求項8に記載の高分子化合物。

【公開番号】特開2009−41039(P2009−41039A)
【公開日】平成21年2月26日(2009.2.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−291180(P2008−291180)
【出願日】平成20年11月13日(2008.11.13)
【分割の表示】特願2002−349167(P2002−349167)の分割
【原出願日】平成14年11月29日(2002.11.29)
【出願人】(000220239)東京応化工業株式会社 (1,407)
【Fターム(参考)】