説明

高圧電源車両

【課題】高圧電源とインバータとを接続する電力ケーブルが損傷しにくい高圧電源車両を提供する。
【解決手段】フロアパネル13下に配置された燃料電池スタック11と、車両の前側のモータ室24に配置された駆動モータ21と、駆動モータ21の上に固定され、燃料電池スタック11からの電力を制御し、駆動モータ21に供給するPDU31と、燃料電池スタック11とPDU31とを接続する電力ケーブル32、32と、モータ室24の前側に配置され、燃料電池スタック11を経由した冷媒と外気とを熱交換させるラジエータ41と、燃料電池スタック11をラジエータ41とを接続する第1冷媒ホース51と、を備える燃料電池車両1であって、電力ケーブル32は、駆動モータ21の後方を通るように配索され、第1冷媒ホース51は、駆動モータ21の後方において、駆動モータ21と電力ケーブル32との間を通るように配索されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池スタック等の高圧電源を搭載する高圧電源車両に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、燃料電池車両や、ハイブリッド車両等の車両が注目されている。そして、このような車両では、車両の前側のモータ室(ボンネット)内に、駆動力を発する駆動モータを固定し、この駆動モータの上に、三相交流電流を発生させ駆動モータに供給するPDU(Power Drive Unit、インバータ)を固定する技術が提案されている(特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特開2006−219020号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、特許文献1の車両において、例えば、燃料電池スタック(高圧電源)をフロアパネル下に配置すると、燃料電池スタックとPDUとを高圧の電力ケーブルで電気的に接続する必要がある。このように接続する場合、電力効率を高めると共に、ノイズを抑えるため、電力ケーブルを短くすることが好ましく、電力ケーブルが駆動モータの後方に配索されることになる。
【0005】
しかしながら、このように電力ケーブルが駆動モータの後方に配索されると、衝突によって、駆動モータが後方に移動した場合、駆動モータと電力ケーブルとが接触し、電力ケーブルが損傷する虞がある。
【0006】
そこで、本発明は、高圧電源とインバータとを接続する電力ケーブルが損傷しにくい高圧電源車両を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するための手段として、本発明は、フロアパネル下に配置された高圧電源と、車両の前側のモータ室に配置され、前記車両を駆動させる駆動モータと、前記駆動モータの上に固定され、前記高圧電源からの電力を制御し、当該駆動モータに供給するインバータと、前記高圧電源と前記インバータとを接続する電力ケーブルと、前記モータ室の前側に配置され、前記高圧電源を経由した冷媒と外気とを熱交換させるラジエータと、前記高圧電源と前記ラジエータとを接続する冷媒ホースと、を備える高圧電源車両であって、前記電力ケーブルは、前記駆動モータの後方を通るように配索され、前記冷媒ホースは、前記駆動モータの後方において、当該駆動モータと前記電力ケーブルとの間を通るように配索されていることを特徴とする高圧電源車両である。
【0008】
このような高圧電源車両によれば、電力ケーブルが駆動モータの後方を通るように配索されるので、電力ケーブルを短くでき、電力効率を高めると共に、ノイズを抑えることができる。
また、冷媒ホースが、駆動モータと電力ケーブルとの間を通るように配索されているので、衝突によって、駆動モータが後方に移動したとしても、駆動モータは冷媒ホースに接触し、電力ケーブルに接触しにくくなる。これにより、電力ケーブルが損傷、つまり、外皮を構成する絶縁被膜の損傷による導線の露出や、断線を防止できる。
【0009】
また、前記冷媒ホースは、前記駆動モータの動きに追従するように、当該駆動モータに固定されていることを特徴とする高圧電源車両である。
ここで、「冷媒ホースは、駆動モータの動きに連動するように、駆動モータに固定されている」とは、冷媒ホースが駆動モータに直接固定される場合だけでなく、後記する実施形態のように、冷媒ホースがブラケット、マウント等を介して駆動モータに固定されている場合を含む。
【0010】
このような高圧電源車両によれば、駆動モータの動きに冷媒ホースが追従するので、駆動モータがさらに電力ケーブルに接触しにくくなり、電力ケーブルを確実に保護できる。
【0011】
また、車幅方向において、前記高圧電源の冷媒入口と前記ラジエータの冷媒出口とは、反対側に配置されており、前記高圧電源の冷媒出口と前記ラジエータの冷媒入口とは、反対側に配置されていることを特徴とする高圧電源車両である。
【0012】
このような高圧電源車両によれば、高圧電源の冷媒入口とラジエータの冷媒出口とを接続する第1冷媒ホースと、高圧電源の冷媒出口とラジエータの冷媒入口とを接続する第2冷媒ホースとを、複雑に配索する必要はなく、短くできる。すなわち、駆動モータの後方に配索されるように、第1冷媒ホース及び/又は第2ホースを、車幅方向において往復させる必要はなく、簡易な構成とできる。
【0013】
また、前記冷媒ホースを2本備え、前記2本の冷媒ホースの一方は、前記駆動モータの後方において、当該駆動モータと前記電力ケーブルとの間を通るように配索されており、前記2本の冷媒ホースの他方は、前記電力ケーブルとダッシュボードパネルとの間を通るように配索されていることを特徴とする高圧電源車両である。
【0014】
このような高圧電源車両によれば、電力ケーブルが、2本の冷媒ホースの一方と、2本の冷媒ホースの他方とで挟まれていることにより、電力ケーブルをさらに好適に保護できる。また、衝突によって、電力ケーブルが後方に移動したとしても、電力ケーブルは、2本の冷媒ホースの他方に接触するので、ダッシュボードパネルに接触して損傷することはない。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、高圧電源とインバータとを接続する電力ケーブルが損傷しにくい高圧電源車両を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
まず、本発明の一実施形態について、図1から図3を参照して説明する。
【0017】
≪燃料電池車両の構成≫
本実施形態に係る燃料電池車両1(高圧電源車両)は、燃料電池スタック11(高圧電源)と、駆動モータ21と、PDU31(インバータ)と、ラジエータ41と、第1冷媒ホース51と、第2冷媒ホース52とを備えている。
【0018】
燃料電池スタック11は、固体高分子型の単セルが複数積層されることで構成された積層体であり、前後方向に延びる一対のサイドフレーム(図示しない)に固定されたサブフレーム12上に固定されると共に、フロアパネル13下のセンタートンネル内に配置されている。そして、水素タンク(図示しない)から水素が、コンプレッサ(図示しない)から酸素を含む空気が供給されると、燃料電池スタック11は発電するようになっている。
【0019】
また、燃料電池スタック11の過昇温を防止するため、燃料電池スタック11を経由するように冷媒が通流し、燃料電池スタック11における冷媒入口14はその前右側に、冷媒出口15はその前左側に形成されている(図2参照)。
【0020】
駆動モータ21は、燃料電池車両1を駆動させる動力源であり、サイドフレーム(図示しない)に固定されたサブフレーム22上に、3つのマウント23、23、23を介して固定されると共に、車両の前側のモータ室24(ボンネット)内に配置されている。なお、サブフレーム22は、燃料電池車両1が前方から衝突した場合、サイドフレーム(図示しない)から脱落し、後下側に移動するようになっている(図3参照)。これにより、サブフレーム22に固定された駆動モータ21等も、後下側に移動するようになっている。
【0021】
そして、駆動モータ21は、PDU31、電力ケーブル32、コンタクタボックス33を介して、燃料電池スタック11の出力端子(図示しない)に電気的に接続されている。
なお、コンタクタボックス33は、燃料電池スタック11と駆動モータ21を含む外部負荷との電気的接続をON/OFFするコンタクタを収容している。また、電力ケーブル32は、コンタクタボックス33の前側上部に接続されており、水等から保護されるようになっている。
【0022】
PDU31は、図示しないECU(Electronic Control Unit、電子制御装置)からの指令に従って、燃料電池スタック11からの直流電力を制御して、三相交流電流を発生させ、この三相交流電流を駆動モータ21に供給するインバータである。そして、PDU31は、駆動モータ21の上に、マウント(図示しない)を介して固定されている。
【0023】
電力ケーブル32は、PDU31と燃料電池スタック11(コンタクタボックス33)とを電気的に接続するものである。そして、電力ケーブル32は、駆動モータ21の後方を通るように配索されており(図1、図2参照)、その長さは短く構成されている。このように電力ケーブル32が短いため、電力効率を高めると共に、ノイズを抑えることが可能となっている。
【0024】
ラジエータ41は、燃料電池スタック11を経由することで高温となった冷媒と、外気とを熱交換させる熱交換器であり、モータ室24の前側であって、バンパ(図示しない)裏に配置されている。そして、ラジエータ41の冷媒入口42はその右側に、冷媒出口43はその左側にそれぞれ配置されている(図2参照)。
【0025】
第1冷媒ホース51及び第2冷媒ホース52は、可撓性を有する材料(例えばゴム)から形成されている。第1冷媒ホース51(冷媒ホースの一方)は、燃料電池スタック11の冷媒入口14と、ラジエータ41の冷媒出口43とを接続しており、第2冷媒ホース52(冷媒ホースの他方)は、燃料電池スタック11の冷媒出口15と、ラジエータ41の冷媒入口42とを接続している。そして、第1冷媒ホース51の途中に設けられた冷媒ポンプ53が作動すると、冷媒が、燃料電池スタック11とラジエータ41との間で循環するようになっている。なお、冷媒ポンプ53は、マウント(図示しない)を介して、駆動モータ21の上に固定されている。
【0026】
また、車幅方向において、燃料電池スタック11の冷媒入口14とラジエータ41の冷媒出口43とは反対側に配置されており、さらに、燃料電池スタック11の冷媒出口15とラジエータ41の冷媒入口42とも反対側に配置されている。そして、第1冷媒ホース51と第2冷媒ホース52とは、平面視において、交差するように配索されている。これにより、第1冷媒ホース51及び第2冷媒ホース52を短くできるようになっている。すなわち、車幅方向において、第1冷媒ホース51及び第2冷媒ホース52が、略U字形に往復されることなく、駆動モータ21の後方に配索されており、簡易な構成となっている。
【0027】
第1冷媒ホース51は、取付具54A及び取付具54Bを介して、駆動モータ21の後方のマウント23に固定されると共に、電力ケーブル32、32と駆動モータ21との間に配索されている。すなわち、第1冷媒ホース51は、取付具54A及び取付具54B、マウント23を介して、駆動モータ21に固定されており、駆動モータ21の後方における第1冷媒ホース51の部分は、衝突した場合において駆動モータ21が後方に移動した場合、この駆動モータ21に追従するようになっている(図3参照)。
また、第1冷媒ホース51の燃料電池スタック11側の部分は、取付具54Cを介してコンタクタボックス33に固定されている(図2参照)。
【0028】
第2冷媒ホース52は、図示しない取付具を介して、駆動モータ21、サブフレーム22等に固定され、前後方向において、電力ケーブル32、32とダッシュボードパネル55との間に配索されている。すなわち、電力ケーブル32、32は、前後方向において、第1冷媒ホース51と第2冷媒ホース52とで挟まれている。
【0029】
≪燃料電池車両の作用、効果≫
次に、燃料電池車両1の作用効果を、図3を参照して説明する。
燃料電池車両1が前方から衝突すると、サブフレーム22がサイドフレーム(図示しない)から脱落し、サブフレーム22及び駆動モータ21が、後下側に移動する(矢印A1参照)。これと共に、PDU31も後下側に移動し、電力ケーブル32、32が撓む。また、取付具54A、54Bに把持された第1冷媒ホース51も、駆動モータ21の動きに追従して、後下側に移動し(矢印A2参照)、衝突後においても、駆動モータ21と電力ケーブル32との間に、第1冷媒ホース51が介在する。これにより、駆動モータ21が電力ケーブル32に接触することはなく、電力ケーブル32は好適に保護される。
【0030】
また、電力ケーブル32とダッシュボードパネル55との間に、第2冷媒ホース52が配置されているので、衝突後に撓んだ電力ケーブル32が、ダッシュボードパネル55に接触することはなく、電力ケーブル32が損傷することはない。
【0031】
以上、本発明の好適な一実施形態について説明したが、本発明は前記実施形態に限定されず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、例えば次のように変更することができる。
【0032】
前記した実施形態では、第2冷媒ホース52が、電力ケーブル32、32とダッシュボードパネル55との間に配索されると共に、電力ケーブル32、32及び第1冷媒ホース51の下方で配索された後、燃料電池スタック11の冷媒出口15に接続された構成を例示したが(図1、図2参照)、図4、図5に示すように、第2冷媒ホース52が、電力ケーブル32、32とダッシュボードパネル55との間であって、電力ケーブル32、32及び第1冷媒ホース51を跨ぐように配索された構成でもよい(符号P部分)。このような構成にすれば、衝突した場合において、第1冷媒ホース51と電力ケーブル32との接触部分の後方に、第2冷媒ホース52が確実に配索されることになり、電力ケーブル32が撓み、後方に移動したとしても、電力ケーブル32は第2冷媒ホース52に接触し、ダッシュボードパネル55に接触することはない。
【0033】
前記した実施形態では、第1冷媒ホース51と第2冷媒ホース52とで電力ケーブル32を挟む構成を例示したが、その他の冷媒ホース、例えば、第1冷媒ホース51又は第2冷媒ホース52と、冷媒がラジエータ41をバイパスするように設けられた第3冷媒ホース(図示しない)とで、電力ケーブル32を挟むように構成してもよい。なお、このような構成としても、本発明の技術的範囲に含まれることは言うまでもない。
【0034】
前記した実施形態では、高圧電源が燃料電池スタック11である構成を例示したが、その他に例えば、高圧電源がフロアパネル13下に配置された高圧バッテリである構成でもよい。また、高圧電源車両が燃料電池車両でなく、その他に例えば、ハイブリッド車でもよい。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本実施形態に係る燃料電池車両の側面図である。
【図2】本実施形態に係る燃料電池車両の平面図である。
【図3】本実施形態に係る燃料電池車両の衝突後の側面図である。
【図4】変形例に係る燃料電池車両の側面図である。
【図5】変形例に係る燃料電池車両の平面図である。
【符号の説明】
【0036】
1 燃料電池車両(高圧電源車両)
11 燃料電池スタック(高圧電源)
13 フロアパネル
14 冷媒入口
15 冷媒出口
21 駆動モータ
22 サブフレーム
24 モータ室
31 PDU(インバータ)
32 電力ケーブル
41 ラジエータ
42 冷媒入口
43 冷媒出口
51 第1冷媒ホース
52 第2冷媒ホース
55 ダッシュボードパネル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フロアパネル下に配置された高圧電源と、
車両の前側のモータ室に配置され、前記車両を駆動させる駆動モータと、
前記駆動モータの上に固定され、前記高圧電源からの電力を制御し、当該駆動モータに供給するインバータと、
前記高圧電源と前記インバータとを接続する電力ケーブルと、
前記モータ室の前側に配置され、前記高圧電源を経由した冷媒と外気とを熱交換させるラジエータと、
前記高圧電源と前記ラジエータとを接続する冷媒ホースと、
を備える高圧電源車両であって、
前記電力ケーブルは、前記駆動モータの後方を通るように配索され、
前記冷媒ホースは、前記駆動モータの後方において、当該駆動モータと前記電力ケーブルとの間を通るように配索されている
ことを特徴とする高圧電源車両。
【請求項2】
前記冷媒ホースは、前記駆動モータの動きに追従するように、当該駆動モータに固定されている
ことを特徴とする請求項1に記載の高圧電源車両。
【請求項3】
車幅方向において、
前記高圧電源の冷媒入口と前記ラジエータの冷媒出口とは、反対側に配置されており、
前記高圧電源の冷媒出口と前記ラジエータの冷媒入口とは、反対側に配置されている
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の高圧電源車両。
【請求項4】
前記冷媒ホースを2本備え、
前記2本の冷媒ホースの一方は、前記駆動モータの後方において、当該駆動モータと前記電力ケーブルとの間を通るように配索されており、
前記2本の冷媒ホースの他方は、前記電力ケーブルとダッシュボードパネルとの間を通るように配索されている
ことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の高圧電源車両。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2009−303465(P2009−303465A)
【公開日】平成21年12月24日(2009.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−158443(P2008−158443)
【出願日】平成20年6月17日(2008.6.17)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】