説明

高極性プレポリマー及びそれを含む感光性樹脂組成物

【課題】耐溶剤性に優れるプレポリマーを用いることにより、耐溶剤性に優れるポリマーを製造し、さらに、これを利用して印刷精度や印刷耐久性の向上した印刷版や印刷原版を提供すること。また、高精度で導電性層を製造する方法を提供すること、高精度で有機発光層を製造する方法を提供すること、高精度で有機薄膜太陽電池用光電変換層を製造する方法を提供すること、高精度で薄膜半導体パターン層を製造する方法を提供すること、高精度で電子写真感光体の感光層を製造する方法を提供すること、高精度で光センサー用光起電力素子を構成する電子受容性有機物層及び/又は電子供与性有機物層を製造する方法を提供すること、高精度で光スイッチング素子のポリシラン薄膜を製造する方法を提供すること、並びに高精度で照明、表示装置、表示装置用バックライト、インテリア、エクステリア、面発光光源用有機発光層を製造する方法を提供すること。
【解決手段】溶解度パラメーターが20J1/2/cm3/2以上の繰り返し単位からなる印刷版又は印刷原版製造用プレポリマー、および当該プレポリマーから製造されるポリマー(a)を含む印刷版又は印刷原版製造用感光性樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐溶剤性に優れる新規なポリマー、並びに、耐溶剤性に優れ、印刷版又は印刷原版を製造するのに特に適したプレポリマー、それから製造される印刷版又は印刷原版製造用に特に適したポリマー、このポリマーを含む感光性樹脂組成物及び印刷原版又は印刷版に関する。
特に、フレキソ印刷用などのインクに含有される各種溶剤に対し卓越した耐久性を有し、印刷精度や印刷耐久性を大幅に向上させることに資するプレポリマー、それから製造されるポリマー、このポリマーを含む感光性樹脂組成物及び印刷原版又は印刷版に関する。
また、本発明は、耐溶剤性に優れる本発明の印刷版を用い、導電性層、有機発光層、有機薄膜太陽電池用光電変換層、薄膜半導体パターン層、電子写真感光体の感光層、光センサー用光起電力素子を構成する電子受容性有機物層及び/又は電子供与性有機物層、光スイッチング素子のポリシラン薄膜並びに照明、表示装置、表示装置用バックライト、インテリア、エクステリア、面発光光源用有機発光層を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、印刷分野では、樹脂製の印刷版がよく用いられている。特に、柔軟な印刷版を用いることを特徴とし、各種印刷方式の中でその比重を高めつつあるフレキソ印刷では、専ら樹脂製の印刷版が用いられている。
印刷用のインクには、用途に応じて様々な有機溶剤が用いられるが、印刷版が樹脂製の場合、有機溶剤に対する耐久性が往々にして不足し、印刷精度が不足したり、印刷版自身の耐久性が不足するなどの問題が生じる。そのため、樹脂製の印刷版や印刷原版には各種溶剤に対する優れた耐溶剤性が望まれる。
【0003】
[導電性層の製造方法について]
高周波識別(RFID)タグは、在庫品を追跡したり、商品の有効性を確認するのに使用され、またその他の製品を追跡及び認証する目的のために使用される。該RFIDタグには、無線でデータを送受信するためにアンテナが必要になる。このアンテナは埋め込み巻き線を埋め込む方法、導電性インクを用いた印刷法、導電性薄膜をエッチングする方法、メッキ方式などの手法により形成されている。
印刷法によるRFIDタグは従来からあるその対応品に比べて製造に費用がかからない。さらに、見た目に美しい意匠を与えることができる。このことは、小売商品の追跡に使用するための印刷インクアンテナを使用することを考慮するときに特に重要である。なぜなら、印刷インクアンテナを使用することによって製造されたより装飾的なタグとは対照的に、一般の小売商品追跡装置は大形の目障りなタグを使用しているからである。
【0004】
特許文献1にはスクリーン法を用いたRFIDタグの製造方法についての記載がある。
また、電磁波シールド用途においても、例えば、特許文献2には銀粒子を含有させた導電性インクを用いて、透明基材上にグラビア印刷法又はグラビアオフセット印刷法で、電磁波シールドパターンを印刷して、電磁波シールド部材を形成したものなどがある。
【0005】
[有機発光層の製造方法について]
有機エレクトロルミネッセンス(以下、「有機EL」と略記する)素子は、二つの対向する電極の間に有機発光材料からなる有機発光層を形成し、有機発光層に電流を流すことで発光させるものであるが、効率よく発光させるには発光層の膜厚が重要であり、100nm程度の薄膜にする必要がある。さらに、これをディスプレイ化するには高詳細にパターニングする必要がある。
有機発光材料には、低分子材料と高分子材料があり、一般に低分子材料は抵抗加熱蒸着法などにより薄膜形成し、この時に微細パターンのマスクを用いてパターニングするが、この方法では基板が大型化すればするほどパターニング精度が出にくいという問題がある。
そこで、最近では、有機発光材料に高分子材料を用い、有機発光材料を溶剤に溶かして塗工液にし、これをウエットコーティング法で薄膜形成する方法が試みられるようになってきている。薄膜形成するためのウエットコーティング法としては、スピンコート法、バーコート法、突出コート法、ディップコート法などがあるが、高精細にパターニングしたり、RGB3色に塗り分けしたりするためには、これらのウエットコーティング法では難しく、塗り分け、パターニングを得意とする印刷法による薄膜形成が最も有効であると考えられる。
しかし、グラビア印刷法のように金属製の印刷版などの硬い版を用いる方法は、有機ELディスプレイの基板であるガラス基板や樹脂基板へのダメージが大きく不向きであり、弾性を有するゴムブランケットを用いるオフセット印刷法や、同じく弾性を有するゴム版や感光性樹脂版を用いる凸版印刷法(フレキソ印刷法)が好適である。実際にこれらの印刷法による試みとして、特許文献3にはオフセット印刷による方法が、特許文献4には凸版印刷による方法などが提唱されている。
一方、高分子有機発光材料は、水、アルコール系の溶剤に対する溶解性が悪く、塗工液化するには、有機溶剤を用いて溶解、分散させる必要があり、中でも、トルエンやキシレンなどの芳香族有機溶剤が好適である。そのため、有機発光材料のインク(以下、「有機発光インク」と記す)には、芳香族有機溶剤含有インクがよく用いられる。
ところが、オフセット印刷に用いるゴムブランケットは、トルエンやキシレンなどの芳香族有機溶剤によって膨潤や変形を起こしやすいという問題がある。オフセット印刷は、パターンが形成されている版に塗工液を付け、その塗工液を、弾性を持つブランケットに転移させ、さらにブランケットから印刷基材に塗工液を転写することで印刷する方式であるが、塗工液の転移を仲介するブランケットは弾性をもつことが要求され、一般にゴム製のものが使用される。使用されるゴムの種類は、オレフィン系のゴムからシリコーン系のゴムまで多様であるが、いずれのゴムもトルエン、キシレンといった芳香族系有機溶剤により膨潤や変形が起こりやすい。フレキソ印刷に用いられるゴムや感光性樹脂などの版も、概して、有機溶剤に対する耐久性が乏しいという問題があった。
特許文献5には、凸版印刷法において、水現像タイプの感光性樹脂凸版を用いると、ポリアミド系の感光性樹脂が親水性樹脂を多く含む材料からなるため、有機溶剤に対する耐性が高く、有機発光インクを用いても質量変化や変形の少ない版が得られることが記載されている。
【0006】
近年、感光性樹脂表面にブラックレイヤーという薄い光吸収層を設け、これにレーザー光を照射し感光性樹脂板に直接マスク画像を形成後、そのマスクを通して光を照射し架橋反応を起こさせた後、光の非照射部分の非架橋部分を現像液で洗い落とす、いわゆるフレキソCTP(Computer to Plate)という技術が開発され、印刷製版の効率改善効果から、採用が進みつつある。
また、現像不要の方法として、直接レーザーで印刷原版を彫刻する方法が挙げられる。この方法で凸版印刷版やスタンプを作製することは既に行われており、それに用いられている材料も知られている。その一例として、特許文献6には、円筒形支持体上に、加熱溶融させた感光性樹脂を、押し出し成形装置を用いて押し出し、その後カレンダー装置により形成する方法が記載されている。
【0007】
[有機薄膜太陽電池用光電変換層の製造方法について]
薄膜太陽電池としては、Si、GaAs、CuInGaSe薄膜などを用いた無機薄膜太陽電池が開発されてきた。しかしながら、それらの製造においては高価な半導体製造設備を必要とするために製造コストが高くなり、トータルコストでは一般の電気代と同等以下程度の発電コストを実現することが困難であるという問題があった。
そこで、前記問題を解決するために、近年、高価な半導体製造設備を必要とせずに低い製造コストを実現することができる有機薄膜太陽電池の開発が積極的に進められている。
このような有機薄膜太陽電池の一般的な構造については、非特許文献1及び2に開示されている。
有機薄膜太陽電池は、有機薄膜を電子供与性及び電子受容性の機能を有する光電変換層として、2つの異種電極間に配置してなる太陽電池である。有機薄膜太陽電池は、Si、GaAs、CuInGaSe薄膜などを用いた無機薄膜太陽電池に比べ製造工程が簡素であり、かつ低コストで大面積化に対応可能であると考えられている。
【0008】
特許文献7には、簡単な構成で高い光電変換効率を有する光電変換素子について開示されている。ここで光電変換層の製造方法として用いられているのは、スピンコート法である。
特許文献8には、光電変換層の製造方法として、ダイコート法、ロールコート法、スプレーコート法などの方法が開示されている。
【0009】
[薄膜半導体パターン層の製造方法について]
近年、電子ペーパーやRFIDタグなどが注目されている。これらには、半導体が必要である。しかし、現在のトランジスタ製造プロセスでは真空プロセスとフォトプロセスが必要であり、その製造コストは高い。このため、これらを現実のものとするには、従来のトランジスタよりも安価かつ大量に生産する必要がある。またフレキシブル基板上にトランジスタを形成することも求められている。
【0010】
このため、印刷法を用いたトランジスタ、特には有機トランジスタが注目されている(特許文献9)。
有機トランジスタを製造する場合には、半導体を低温で加工することが可能であるので被印刷基板に樹脂フィルムを用いることが可能であり、また、半導体が有機物であるので、これを溶剤に溶解した溶液を印刷インクと同様に用いた印刷法での加工が可能であると考えられている。
【0011】
[電子写真感光体の感光層の製造方法について]
複写機やプリンターなどの電子写真法は、感光体ドラム上の感光層を全面帯電した後、潜像形成部で原稿などの電荷潜像を形成し、ついでこの潜像を現像部で帯電トナーにより顕像化した後、転写部で普通紙などの記録媒体に転写し、定着部で加熱溶着してハードコピーを得るものである。この方式においては、感光体は、帯電時における帯電量の向上、露光時の光減衰効果の付与、又は現像時のバイアス電極として利用するために、通常導電層を介して接地される。
電子写真感光体の感光層には、従来、セレン、セレン−テルル合金、硫化カドミウム、酸化亜鉛などの無機光導電性物質からなる感光性材料が広く用いられてきた。近年、合成が容易で、適当な波長域に光導電性を示すなどの特徴をもつ有機光導電性物質の研究が進められている。
【0012】
例えば、特許文献10には、感光体ドラムとしてはアルミニウムのドラムを用い、電荷発生層用塗液を浸漬塗布した後電荷輸送層を浸漬塗布し、さらに耐久性を向上させる手段として感光層の保護層を設ける電子写真感光体が開示されている。
また、特許文献11には、非金属フレキシブル導電性支持体と該導電性支持体上に形成された電荷発生層を含む複数の薄膜からなる感光層とを具備する電子写真感光体についての開示がある。薄膜化する方法としては蒸着法、共蒸着法、スプレー塗布法、ブレード塗布法、キャスティング法、スピナーコーティング法、ビードコーティング法、ワイヤーバーコーティング法、ローラー塗布法、カーテン塗布法などの塗布法について開示されている。
さらに、特許文献12においても、光導電性組成物を電子写真などの感光体に使用する場合の薄膜化方法として、スピンコーティング法、キャスティング法、ディッピング法、バーコート法、ロールコート法などの塗布法について開示されている。
【0013】
[光センサー用光起電力素子を構成する電子受容性有機物層及び/又は電子供与性有機物層の製造方法について]
従来、光起電力素子の製造には、単結晶、多結晶、アモルファスのSiが用いられてきた。安価で毒性の少ない光起電力素子を開発するために、有機物材料を用いた光起電力素子の開発が進められてきている。
有機物材料を用いた光起電力素子としては、ショットキー接合、MIS接合、n型無機半導体/p型有機半導体接合を利用したヘテロpn接合などにより生じる内部電界を利用したものが知られている。光起電力素子は、光エネルギーを電気エネルギー(電圧×電流)に変換する素子であるため、高いエネルギー変換効率が求められるが、前記接合による光起電力素子は、高い変換効率を望めるものではなかった。
【0014】
このような前記光起電力素子の問題点を解決するために、有機/有機へテロpn型接合を利用した光起電力素子が開発されている(非特許文献3)。この光起電力素子は、電子受容性有機物層と電子供与性有機物層を接合したときに生じる電界を利用したものであり、透明電極からの光照射が行え、また、2種の有機物材料により光電荷生成が可能であるため、前記光起電力素子に比して、分光感度を上げることができるなど利点があることが知られている。
有機/有機へテロpn型接合を利用した光起電力素子を構成する電子受容性有機物層と電子供与性有機物層の製造方法として用いられているのは、真空蒸着プロセスによる方法(特許文献13及び14)や、湿式成膜法としてスピンコート法である(特許文献36)。
【0015】
[光スイッチング素子のポリシラン薄膜の製造方法について]
従来、光スイッチング素子は、LB法により製造されてきた。しかしながら、光スイッチング素子をLB法により製造すると、非常に長時間を有するとともに、微細なパターンを有する素子を高集積化することが困難であるため、素子を実用的に製造するには問題があることが知られている。
【0016】
そこで、前記問題を解決するために、特許文献15には、基板上に形成されたポリシランの薄膜の一部に選択的に形成された光スイッチング部を有し、ポリシロキサン及びフォトクロミック材料からなり、より簡単な製造工程で、通常の光源で動作する光スイッチング素子について開示されている。ここでポリシランの薄膜化の製造方法として、スピンコーティング法が採用されている。
【0017】
前述のように、有機EL素子に含まれる基板に発光層や正孔輸送層を形成する方法として、高分子系材料が使用される場合には各種印刷法による発光層や正孔輸送層の製造方法が知られている。特許文献16にはオフセット印刷法による方法が、特許文献17及び42には凸版印刷法による方法が開示されている。そして、特許文献18には、凸版印刷法において、水現像タイプの感光性樹脂凸版を用いると、ポリアミド系の感光性樹脂が親水性樹脂を多く含む材料からなるため、有機溶剤に対する耐性が高く、有機発光インクを用いても質量変化や変形の少ない版が得られることが開示されている。
高分子系材料を使用して印刷法により有機発光層を製造する場合には、高分子系材料などを含有する有機発光インク中の溶剤として、トルエンやキシレンなどの芳香族有機溶剤などを用いる必要がある。
【特許文献1】特開2003−223626号公報
【特許文献2】特開2004−277688号公報
【特許文献3】特開2001−93668号公報
【特許文献4】特開2001−155858号公報
【特許文献5】特開2006−252787号公報
【特許文献6】特開平9−169060号公報
【特許文献7】特開2005−116617号公報
【特許文献8】特開2006−245073号公報
【特許文献9】特開2003−249656号公報
【特許文献10】特開平6−123992号公報
【特許文献11】特開平8−190209号公報
【特許文献12】特許第3146296号公報
【特許文献13】特開平5−21823号公報
【特許文献14】特開2005−93572号公報
【特許文献15】特開平11−72808号公報
【特許文献16】特開2001−93668号公報
【特許文献17】特開2001−155858号公報
【特許文献18】特開2006−252787号公報
【非特許文献1】MATERIALS STAGE,vol.2,No.9、2002,p.37−42,中村潤一ら著「有機薄膜太陽電池−ドナー・アクセプター相互作用の活用−」
【非特許文献2】応用物理,第71巻,第4号,2002,p.425−428,昆野昭則著「有機太陽電池の現状と展望」
【非特許文献3】C.Tang:Appl.Phys.Lett.,48,183(1986)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
従来技術では、印刷版や印刷原版に関し、構成ポリマーの構造と耐溶剤性との関係について検討されておらず、耐溶剤性の向上も達成されていない。まして従来技術では、印刷版の耐溶剤性とレーザー彫刻性の両立は達成されていない。
【0019】
[導電性層の製造方法について]
特許文献1には、スクリーン印刷法が有する一般的な問題解決に関しては何ら触れられていない。すなわち、現在、主として行われているスクリーン印刷法により導電性インクを用いた印刷を基板上に行う場合、導電経路を短絡させるインクブリードが発生するという問題点があった。RFIDアンテナの能力を最大限に発揮させるためには、長い途切れの無い導電経路が有利であるが、インクブリードは、この長い導電経路において発生しやすいといった問題があり解決が望まれていた。
特許文献2に開示されたグラビア印刷やグラビアオフセット印刷に用いる凹版は、銅、42アロイ、ガラスなどからなるシリンダーや平板の表面に、写真製版やレーザーなどの手法を用いて製版することにより作製したものであり、版の耐久性に優れ、大ロットの印刷に適するが、版の加工に高度な技術が必要であり、小ロット印刷には適さないし、印刷基板に制約があった。
以上のように、特許文献1及び2に開示された方法は、印刷技術のスキルが必要であり、電子デバイスへの応用は限られた印刷会社のみにとどまっているのが現状であった。
【0020】
[有機発光層の製造方法について]
特許文献5に開示されたポリアミド系の感光性樹脂から製造された版は、概して硬く、基材へのダメージが大きいという問題がある。また、この技術も露光、現像工程を経てパターンを形成するフォトリソグラフィーを用いる方法であるため、印刷製版の効率の点で問題がある。さらに、この方法では露光工程での硬化収縮や現像工程での未硬化成分現像液中への抽出により、光硬化したパターンの中央部の厚さが薄くなるカッピングによる版の厚みむらが発生することや、版外周部が反る版反りの問題がある。厚み精度の低い印刷版を用いると、印刷で得られるパターンの膜厚が不均一になり、得られる有機発光層、該有機発光層を含む有機EL素子、及び有機ELディスプレイの性能も不均一になってしまう。
前記フレキソCTPという技術も現像工程が残るなど、効率改善効果が限られたものであり、レーザーを使って直接印刷原版上にレリーフ画像を形成し、しかも現像不要である技術の開発が求められていた。
特許文献6に開示された技術では、フレキソ印刷分野で用いられている熱可塑性エラストマーからなる感光性樹脂を加熱溶融させるのに、少なくとも温度を100℃以上にする必要があり、押し出し機を装備するなど極めて大掛かりな装置が必要であった。また、押し出し機の先端に装着されているダイスから押し出される溶融樹脂の膜厚を自由にコントロールするのは難しいという問題があった。
【0021】
[有機薄膜太陽電池用光電変換層の製造方法について]
特許文献7に開示された光電変換層の製造方法では、連続プロセス(ロール・トゥ・ロールプロセス)による高効率生産が不可能であることに加え、パターン形成して製造することも不可能であり、高精度な有機薄膜太陽電池用光電変換層の製造は望めない。
また、特許文献8に開示された光電変換層の製造方法では、いずれの方法においてもパターン形成して製造することは困難である。特許文献8には、印刷法の一種であるインクジェット法が例示されているものの、インクジェット法では生産速度が限られるため、光電変換層を高効率で製造することは困難であり、高効率で高精度な有機薄膜太陽電池用光電変換層の製造は望めない。
以上のように、従来技術では、効率よく高精度で有機薄膜太陽電池用光電変換層を製造する方法は知られていなかった。
【0022】
[薄膜半導体パターン層の製造方法について]
特許文献9では、従来から行われているスピンコート法や真空蒸着法により有機トランジスタが作製されており、印刷法については具体的に開示されていない。また、印刷法を用いて有機トランジスタを製造する場合に、印刷インクに用いられる溶剤に対して、実用的に十分な耐溶剤特性を示す印刷版は知られていなかった。
【0023】
[電子写真感光体の感光層の製造方法について]
従来技術において、実生産においてより有利と考えられる印刷法による電子写真感光体の感光層の製造については開示されていない。そして、特許文献10〜12に開示された方法では、連続プロセス(ロール・トゥ・ロールプロセス)による高効率生産が不可能であることに加え、パターン形成して製造することも不可能であり、高精度な電子写真感光体の感光層の製造は望めなかった。
【0024】
[光センサー用光起電力素子を構成する電子受容性有機物層及び/又は電子供与性有機物層の製造方法について]
特許文献13及び14に開示された方法による光起電力素子の電子受容性有機物層と電子供与性有機物層の製造法では、多量生産や大面積化が容易ではない。
また、特許文献13及び14に開示された方法では、連続プロセス(ロール・トゥ・ロールプロセス)による高効率生産が不可能であることに加え、パターン形成して製造することも不可能であり、高精度な光起電力素子の電子受容性有機物層と電子供与性有機物層の製造は望めなかった。
【0025】
[光スイッチング素子のポリシラン薄膜の製造方法について]
特許文献15に開示されたスピンコーティング法では、連続プロセス(ロール・トゥ・ロールプロセス)による高効率生産が不可能であることに加え、パターン形成して製造することも不可能であり、高精度な光スイッチング素子のポリシラン薄膜の製造は望めなかった。
【0026】
また、オフセット印刷に用いるゴムブランケットには、弾性をもつことが必要であるのでオレフィン系やシリコーン系のゴムなどが使用されている。該ゴムなどは、トルエンやキシレンなどの芳香族有機溶剤によって質量変化や変形を起こしやすいという問題があった。
さらに、フレキソ印刷に用いられるゴムや感光性樹脂などの版も、概して、有機溶剤に対する耐久性が乏しいという問題があった。
そして、ポリアミド系の感光性樹脂から製造された版は、概して硬く、基材へのダメージが大きいというという問題があった。また、この技術も露光、現像工程を経てパターンを形成するフォトリソグラフィーを用いる方法であるため、印刷製版の効率の点で問題があった。さらに、この方法では露光工程での硬化収縮や現像工程での未硬化成分現像液中への抽出により、光硬化したパターンの中央部の厚さが薄くなるカッピングによる版の厚みむらが発生することや、版外周部が反るという版反りの問題がある。厚み精度の低い印刷版を用いると、印刷で得られるパターンの膜厚が不均一になり、得られる有機発光層、該有機発光層を含む有機EL素子、及び有機ELディスプレイの性能においても不均一になってしまう。
以上のように、従来技術では、効率よく高精度で照明、表示装置、表示装置用バックライト、インテリア、エクステリア、面発光光源用有機発光層を製造する方法は知られていなかった。
【0027】
本発明は、耐溶剤性に優れるプレポリマーを用いることにより、耐溶剤性に優れるポリマーを製造し、さらに、これを利用して印刷精度や印刷耐久性の向上した印刷版や印刷原版を提供することを目的とする。
また、本発明は、高精度で導電性層を製造する方法を提供すること、高精度で有機発光層を製造する方法を提供すること、高精度で有機薄膜太陽電池用光電変換層を製造する方法を提供すること、高精度で薄膜半導体パターン層を製造する方法を提供すること、高精度で電子写真感光体の感光層を製造する方法を提供すること、高精度で光センサー用光起電力素子を構成する電子受容性有機物層及び/又は電子供与性有機物層を製造する方法を提供すること、高精度で光スイッチング素子のポリシラン薄膜を製造する方法を提供すること並びに高精度で照明、表示装置、表示装置用バックライト、インテリア、エクステリア、面発光光源用有機発光層を製造する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0028】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、特定の構造を有するプレポリマーや、このプレポリマーから製造されるポリマーがインクなどに用いられる各種溶剤に対して優れた耐久性を示すこと、さらに、これらのポリマーを含む感光性樹脂組成物から製造される印刷版や印刷原版は、印刷精度や印刷耐久性が大幅に向上することを見出し、本発明を完成した。
また、本発明者らは、前記耐溶剤性に優れる印刷版を用いることによって、高精度で導電性層を製造できること、高精度で有機発光層を製造できること、高精度で有機薄膜太陽電池用光電変換層を製造できること、高精度で薄膜半導体パターン層を製造できること、高精度で電子写真感光体の感光層を製造できること、高精度で光センサー用光起電力素子を構成する電子受容性有機物層及び/又は電子供与性有機物層を製造できること、高精度で光スイッチング素子のポリシラン薄膜を製造できること、並びに高精度で照明、表示装置、表示装置用バックライト、インテリア、エクステリア、面発光光源用有機発光層を製造できることを見出し、本発明を完成した。
【0029】
すなわち、本発明は、以下の[1]〜[37]の特定の構造を有するプレポリマー、該プレポリマーから製造されるポリマー、該ポリマーを含有する感光性樹脂組成物から製造される印刷版及び印刷原版、並びに導電性層などの製造方法に関する。
[1] 繰り返し単位の溶解度パラメーターが20J1/2/cm3/2以上であり、且つ両末端に活性水素基を有するプレポリマーと、当該プレポリマーの末端活性水素基の当量未満のイソシアナート基当量のポリイソシアナート化合物と、が共有結合により重合して得られるポリマーであって、
該重合しているプレポリマーの残存する末端活性水素基と、イソシアナトアルキルアクリレート及び/又はイソシアナトアルキルメタクリレートと、が共有結合により結合している上記ポリマー。
[2] 前記プレポリマーの数平均分子量が300〜50,000である、[1]に記載のポリマー。
[3] 前記ポリイソシアナート化合物がジイソシアナート化合物である、[1]又は[2]に記載のポリマー。
[4] 前記ポリイソシアナート化合物が芳香族ジイソシアナートである、[1]〜[3]のいずれか一項に記載のポリマー。
[5] 下記式(1)で表される、[1]〜[4]のいずれか一項に記載のポリマー。
【化1】

(式中、Rは、各々独立して、[1]記載のプレポリマーから両末端活性水素基を除いた残基を表し、Rは、ジイソシアナート化合物からイソシアナート基を除いた残基を表し、Rは、イソシアナトアルキルアクリレート及び/又はイソシアナトアルキルメタクリレートのアルキル部分を表し、R、Rは、各々独立して、メチル基又は水素原子を表し、Lは、1以上の整数を表す。)
[6] [1]記載のプレポリマーと、該プレポリマーの末端活性水素基の当量未満のイソシアナート基当量のポリイソシアナート化合物と、イソシアネートアルキルアクリレート及び/又はイソシアネートアルキルメタクリレートと、を反応させることを含む、[1]〜[5]のいずれか一項に記載のポリマーの製造方法。
[7] 溶解度パラメーターが20J1/2/cm3/2以上の繰り返し単位からなる印刷版又は印刷原版製造用プレポリマー。
[8] 数平均分子量が300〜50,000である、[7]に記載の印刷版又は印刷原版製造用プレポリマー。
[9] [7]又は[8]に記載のプレポリマーと、該プレポリマーの末端水酸基の当量を超えるイソシアナート基当量のポリイソシアナート化合物と、が共有結合により重合して得られる印刷版又は印刷版製造用ポリマーであって、
該重合しているポリイソシアナート化合物の残存するイソシアナート基と、ヒドロキシアルキルアクリレート及び/又はヒドロキシアルキルメタクリレートと、がウレタン結合により結合している上記ポリマー。
[10] 前記ポリイソシアナート化合物がジイソシアナート化合物である、[9]に記載のポリマー。
[11] 前記ポリイソシアナート化合物が芳香族ジイソシアナートである、[9]又は[10]に記載のポリマー。
[12] 下記式(2)で表される[9]〜[11]のいずれか一項に記載のポリマー。
【化2】

(式中、Rは、各々独立して、[1]記載のプレポリマーから両末端活性水素基を除いた残基を表し、Rは、ジイソシアナート化合物からイソシアナート基を除いた残基を表し、Rは、ヒドロキシアルキルアクリレート及び/又はヒドロキシアルキルメタクリレートのアルキル部分を表し、R、Rは、各々独立して、メチル基又は水素原子を表し、mは、1以上の任意の整数を表す。)
[13] [7]又は[8]に記載のプレポリマーと、該プレポリマーの末端活性水素基の当量を超えるイソシアナート基当量のポリイソシアナート化合物と、ヒドロキシアルキルアクリレート及び/又はヒドロキシアルキルメタクリレートと、を反応させることを含む、[9]〜[12]のいずれか一項に記載のポリマーの製造方法。
[14] [7]又は[8]に記載のプレポリマーから製造されるポリマー(a)を含む印刷版又は印刷原版製造用感光性樹脂組成物。
[15] 前記ポリマー(a)が、前記プレポリマーの末端活性水素基と他の化合物との間で形成された共有結合を有するポリマーであって、重合性不飽和基を含むポリマーである、[14]に記載の感光性樹脂組成物。
[16] 前記共有結合がウレタン結合である、[15]に記載の感光性樹脂組成物。
[17] 前記重合性不飽和基が二重結合である、[15]又は[16]に記載の感光性樹脂組成物。
[18] 前記ポリマー(a)が、[1]〜[5]及び[9]〜[12]のいずれか一項に記載のポリマーである、[14]〜[17]のいずれか一項に記載の感光性樹脂組成物。
[19] 前記ポリマー(a)の数平均分子量が1,000〜100,000である、[14]〜[18]のいずれか一項に記載の感光性樹脂組成物。
[20] 重合性不飽和基を有し、数平均分子量が5,000未満である有機化合物(b)をさらに含む、[14]〜[19]のいずれか一項に記載の感光性樹脂組成物。
[21] 無機系微粒子(c)をさらに含む、[14]〜[20]のいずれか一項に記載の感光性樹脂組成物。
[22] 光重合開始剤(d)をさらに含む、[14]〜[21]のいずれか一項に記載の感光性樹脂組成物。
[23] ポリマー(a)が、[7]又は[8]に記載のプレポリマーと、芳香族ジイソシアナートとから製造された付加重合物を含有する、[14]〜[22]のいずれか一項に記載の感光性樹脂組成物。
[24] レーザー彫刻用印刷原版製造用である、[14]〜[23]のいずれか一項に記載の感光性樹脂組成物。
[25] [7]又は[8]のいずれかに記載のプレポリマーから製造されるポリマー(a)を含む印刷版又は印刷原版。
[26] [14]〜[24]のいずれか一項に記載の感光性樹脂組成物を用いて製造される印刷版又は印刷原版。
[27] [14]〜[24]のいずれか一項に記載の感光性樹脂組成物をシート状又は円筒状に成形する工程と、
該成形した感光性樹脂組成物を光又は電子線の照射により架橋硬化せしめる工程と、
を含む方法によって製造される印刷版又は印刷原版。
[28] レーザー彫刻用である、[25]〜[27]のいずれか一項に記載の印刷版又は印刷原版。
[29] フレキソ印刷版又はフレキソ印刷原版である、[25]〜[28]のいずれか一項に記載の印刷版又は印刷原版。
[30] 印刷版上の導電性インクを被印刷基板上に転写し、転写された前記導電性インク中の溶剤を乾燥除去して、又は転写された該導電性インクに光を照射して硬化させて、該被印刷基板上に該導電性インクを固定化することを含む導電性層を製造する方法であって、
前記印刷版が、[25]〜[29]のいずれか一項に記載の印刷版である、上記方法。
[31] 印刷版上の有機発光インクを被印刷基板上に転写し、転写された該有機発光インク中の溶剤を乾燥除去して、又は転写された該有機発光インクに光を照射して硬化させて、該被印刷基板上に該有機発光インクを固定化することを含む有機発光層を製造する方法であって、
該印刷版が、[25]〜[29]のいずれか一項に記載の印刷版である、上記方法。
[32] 印刷版上の有機薄膜太陽電池用光電変換層用インクを被印刷基板上に転写し、転写された該有機薄膜太陽電池用光電変換層用インク中の溶剤を乾燥除去して、又は転写された該有機薄膜太陽電池用光電変換層用インクに光を照射して硬化させて、該被印刷基板上に該有機薄膜太陽電池用光電変換層用インクを固定化することを含む有機薄膜太陽電池用光電変換層を製造する方法であって、
該印刷版が、[25]〜[29]のいずれか一項に記載の印刷版である、上記方法。
[33] 印刷版上の薄膜半導体パターン形成用インクを被印刷基板上に転写し、転写された該薄膜半導体パターン形成用インク中の溶剤を乾燥除去して、又は転写された該薄膜半導体パターン形成用インクに光を照射して硬化させて、該被印刷基板上に該薄膜半導体パターン形成用インクを固定化することを含む薄膜半導体パターン層を製造する方法であって、
該印刷版が、[25]〜[29]のいずれか一項に記載の印刷版である、上記方法。
[34] 印刷版上の電子写真感光体の感光層を形成するインクを被印刷基板上に転写し、転写された該インク中の溶剤を乾燥除去して、又は転写された該インクに光を照射して硬化させて、該被印刷基板上に該インクを固定化することを含む電子写真感光体の感光層を製造する方法であって、
該印刷版が、[25]〜[29]のいずれか一項に記載の印刷版である、上記方法。
[35] 光センサー用光起電力素子を構成する電子受容性有機物層及び/又は電子供与性有機物層を製造する方法において、
印刷版上の電子受容性有機物層用インク及び/又は電子供与性有機物層用インクを被印刷基板上に転写し、転写された該電子受容性有機物層用インク及び/又は電子供与性有機物層用インクの溶剤を乾燥除去して、又は転写された該電子受容性有機物層用インク及び/又は電子供与性有機物層用インクに光を照射して硬化させて、該被印刷基板上に該電子受容性有機物層用インク及び/又は電子供与性有機物層用インクを固定化することを含む電子受容性有機物層及び/又は電子供与性有機物層を製造する方法であって、
該印刷版が、[25]〜[29]のいずれか一項に記載の印刷版である、上記方法。
[36] 印刷板上の光スイッチング素子のポリシラン薄膜を形成するポリシラン溶液を被印刷基板上に転写し、転写された該ポリシラン溶液中の溶剤を乾燥除去して該被印刷基材上に該ポリシラン溶液を固定化することを含む、光スイッチング素子のポリシラン薄膜を製造する方法であって、
前記印刷版が、[25]〜[29]のいずれか一項に記載の印刷版である、上記方法。
[37] 印刷版上の有機発光インクを被印刷基板上に転写し、転写された該有機発光インク中の溶剤を乾燥除去して、又は転写された該有機発光インクに光を照射して硬化させて、該被印刷基板上に該有機発光インクを固定化することを含む、照明、表示装置、表示装置用バックライト、インテリア、エクステリア、及び面発光光源用有機発光層を製造する方法であって、
該印刷版が、[25]〜[29]のいずれか一項に記載の印刷版である、上記方法。
【発明の効果】
【0030】
本発明により、耐溶剤性に優れたプレポリマーやポリマーを提供することができる。そして、このプレポリマーやポリマーを用いることにより、インクに含有される各種溶剤に対し卓越した耐久性を有し、印刷精度や印刷耐久性が大幅に向上した印刷版や印刷原版を提供することが可能となる。
また、本発明によれば、水性インクによる印刷においても高品位の印刷物を与える優れた印刷版や印刷原版を提供することが可能となる。
さらに、本発明の製造方法によれば、高精細かつ膜厚均一のパターンを有する導電性層を製造すること、該導電性層を含む導電回路を提供すること、高精細かつ膜厚均一のパターンを有する有機発光層を製造すること、該有機発光層を含む有機EL素子と該有機EL素子を用いる有機ELディスプレイ、照明、表示装置、表示装置用バックライト、インテリア、エクステリア、面発光光源、玩具、化粧品、ノベルティー・グッズなどを提供すること、高精度で有機薄膜太陽電池用光電変換層を製造すること、該有機薄膜太陽電池用光電変換層を含む有機薄膜太陽電池を提供すること、高精度で薄膜半導体パターン層を製造すること、高精度で電子写真感光体の感光層を製造すること、該感光層を含む電子写真感光体を提供すること、高精度で光センサー用光起電力素子を構成する電子受容性有機物層及び/又は電子供与性有機物層を製造すること、該電子受容性有機物層及び/又は該電子供与性有機物層を含む光センサー用光起電力素子及び光センサーを提供すること、高精度で光スイッチング素子のポリシラン薄膜を製造すること、該ポリシラン薄膜を含む光スイッチング素子を提供すること、並びに高精度で照明、表示装置、表示装置用バックライト、インテリア、エクステリア、面発光光源用有機発光層を製造すること、が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
以下、本発明を実施するための最良の形態(以下、単に「本実施の形態」という)について詳細に説明する。ただし、本実施の形態は以下の実施形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
【0032】
本実施の形態のプレポリマーについて説明する。
本実施の形態のプレポリマーは、繰り返し単位の溶解度パラメーターが20J1/2/cm3/2以上であり、且つ両末端に活性水素基を有することが必須要件であり、印刷版又は印刷原版の製造に用いられるものである。
各種溶剤に対し卓越した耐溶剤性を発現させるために、プレポリマーの繰り返し単位の溶解度パラメーターが20J1/2/cm3/2以上であることが必要である。好ましくは、20J1/2/cm3/2以上40J1/2/cm3/2以下である。40J1/2/cm3/2を超えるとプレポリマーの工業的製造が困難になる。
本発明において、プレポリマーの繰り返し単位の溶解度パラメーターは、Fedorの推算法(小林秀樹 著「SP値 基礎・応用と計算方法」(情報機構)、p.66)により計算される値(δ[J1/2/cm3/2]を意味する。すなわち、プレポリマーの繰り返し単位を構成する各官能基につき、凝集エネルギー密度の合計(ΣEcoh[J/mol])とモル分子容の合計(ΣV[cm/mol])をそれぞれ求め、δ=(ΣEcoh/ΣV)1/2を求める。
本発明のプレポリマーは、繰り返し単位の溶解度パラメーターが20J1/2/cm3/2以上であれば、その構造に制限はない。たとえば、ポリエステル、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリエーテルなどが挙げられる。また、脂肪族、芳香族、直鎖状、分岐状のいずれであってもよい。工業的製造の容易性の観点からポリエステル又はポリエーテルポリエステルが好ましい。
本発明において、プレポリマーの繰り返し単位の溶解度パラメーターは20J1/2/cm3/2以上であることが必須要件であるが、耐溶剤性の観点より、20.5J1/2/cm以上であることがより好ましく、もっとも好ましくは21.0J1/2/cm以上である。
本発明のプレポリマーは、両末端活性水素基を有することが必須要件である。活性水素基に制限はなく、たとえば、水酸基、カルボキシル基、アミノ基、チオール基などが挙げられるが、イソシアネートとの反応性の観点から、水酸基、カルボキシル基、アミノ基が好ましく、もっとも好ましくは水酸基又はカルボキシル基である。
【0033】
前記プレポリマーは、数平均分子量が300〜50,000であることが好ましい。数平均分子量が300以上であることが、耐溶剤性の観点から好ましい。数平均分子量が50,000以下であることにより、プレポリマーの工業的製造を良好に行うことができる。
次に、前記プレポリマーから製造される本実施の形態のポリマー(a)について説明する。
本実施の形態のポリマー(a)は、前記プレポリマーから製造されるものであれば特に制限はされないが、プレポリマーの末端活性水素基と他の化合物との間で共有結合の形成を伴って製造されるポリマーであって、かつ重合性不飽和基を含むポリマーであることが好ましい。共有結合及び重合性不飽和基の種類に特に制限はされないが、共有結合としては、ウレタン結合などが好ましく、重合性不飽和基としては、ラジカル重合又は付加重合に関与し得る二重結合などが好ましい。印刷版又は印刷原版を製造するに際し、ポリマー(a)が様々な分子と連結することができることから、ポリマー(a)が重合性不飽和基を有することが好ましい。
【0034】
前記ポリマー(a)は、数平均分子量が1,000〜100,000であることが好ましい。数平均分子量が1,000以上であることが、耐溶剤性の観点から好ましい。数平均分子量が100,000以下であることが、製造の簡便性の観点から好ましい。
【0035】
ポリマー(a)としては、プレポリマーと、ポリイソシアナート化合物及びイソシアナトアルキル(メタ)アクリレートとを反応させて製造したポリマーや、プレポリマーと、ポリイソシアナート化合物及びヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートとを反応させて製造したポリマーであることが好ましく、(メタ)アクリル基などの重合性不飽和基を有するポリマーであることが好ましい。
【0036】
ポリマー(a)の好ましい第1の例は、繰り返し単位の溶解度パラメーターが20J1/2cm3/2以上であり、且つ両末端に活性水素基を有するプレポリマーと、当該プレポリマーの末端水酸基の当量未満のイソシアナート基当量のポリイソシアナート化合物と、が重合し、前記重合しているプレポリマーの残存する末端活性水素基と、イソシアナトアルキルアクリレート及び/又はイソシアナトアルキルメタクリレートと、が結合しているポリマーが挙げられる。
【0037】
前記第1の例のポリマー(a)は、前記プレポリマーの末端活性水素基を、当該プレポリマーの末端活性水素基の当量未満のイソシアナート基当量のポリイソシアナート化合物と、イソシアナトアルキルアクリレート及び/又はイソシアナトアルキルメタクリレートと、を反応させることにより製造される。
【0038】
本実施の形態におけるポリイソシアナート化合物としては、1分子中にイソシアナート基を2個以上有する化合物であれば制限はないが、例えば、ジイソシアナート化合物を例示すると、芳香族ジイソシアナートとしては、ジフェニルメタンジイソシアナート、トリレンジイソシアナート、テトラメチルキシリレンジイソシアナート、キシリレンジイソシアナート、ナフチレンジイソシアナート、トリジンジイソシアナート、p−フェニレンジイソシアナートなど;脂肪族又は脂環式ジイソシアナートとしては、ヘキサメチレンジイソシアナート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアナート、イソホロンジイソシアナート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアナート、シクロヘキシレンジイソシアナート、水素化キシリレンジイソシアナートなどが挙げられる。トリイソシアナート化合物を例示すると、トリフェニルメタントリイソシアナート、トリ(イソシアナトフェニル)トリホスフェートなどが挙げられ、多官能ポリイソシアナート化合物を例示すると、ポリメリック(ジフェニルメタンジイソシアナート)などが挙げられる。印刷版又は印刷原版の耐溶剤性の観点から、ジイソシアナート化合物が好ましく、芳香族ジイソシアナートがより好ましく、トリレンジイソシアナートがさらに好ましい。
【0039】
プレポリマーの末端活性水素基の当量未満のイソシアナート基当量とは、ポリイソシアナート化合物のイソシアナート基の当量(mol)が、プレポリマーの末端活性水素基の当量(mol)未満であることを意味する。該イソシアナート基当量としては、プレポリマーの末端活性水素基の当量未満であれば制限はされないが、プレポリマーの末端活性水素基の当量の50〜95%当量であることが好ましく、60〜90%当量であることがより好ましい。
【0040】
イソシアナトアルキルアクリレート及び/又はイソシアナトアルキルメタクリレートとしては、例えば、該アクリレート化合物中のアルキル部分が炭素数2〜10のアルキレン基などである化合物が好ましく、炭素数2又は3のアルキレン基などである化合物がより好ましい。イソシアナトアルキルアクリレート及び/又はイソシアナトアルキルメタクリレートの具体例としては、イソシアナトエチル(メタ)アクリレート、イソシアナトプロピル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0041】
このようなポリマー(a)の中でも、下記式(1)で表されるポリマーが、極めて優れた耐溶剤性を示すことから好ましい。
【0042】
【化3】

(式中、Rは、各々独立して、前記プレポリマーから両末端活性水素基を除いた残基を表し、Rは、ジイソシアナート化合物からイソシアナート基を除いた残基を表し、Rは、イソシアナトアルキルアクリレート及び/又はイソシアナトアルキルメタクリレートのアルキル部分を表し、R、Rは、各々独立して、メチル基又は水素原子を表し、Lは、1以上の整数を表す。)
【0043】
ポリマー(a)の好ましい第2の例は、繰り返し単位の溶解度パラメーターが20J1/2/cm3/2以上であり、且つ両末端に活性水素基を有するプレポリマーと、当該プレポリマーの末端活性水素基の当量のポリイソシアナート化合物と、が重合し、前記重合しているポリイソシアナート化合物の残存するイソシアナート基と、ヒドロキシアルキルアクリレート及び/又はヒドロキシアルキルメタクリレートと、がウレタン結合により結合しているポリマーが挙げられる。
【0044】
前記第2の例のポリマー(a)は、前記プレポリマーの末端活性水素基を、当該プレポリマーの末端活性水素基の当量を超えるイソシアナート基当量のポリイソシアナート化合物と、ヒドロキシアルキルアクリレート及び/又はヒドロキシアルキルメタクリレートとを反応させることにより製造される。
【0045】
本実施の形態におけるポリイソシアナート化合物としては、1分子中にイソシアナート基を2個以上有する化合物であれば制限はないが、例えば、ジイソシアナート化合物を例示すると、芳香族ジイソシアナートとしては、ジフェニルメタンジイソシアナート、トリレンジイソシアナート、テトラメチルキシリレンジイソシアナート、キシリレンジイソシアナート、ナフチレンジイソシアナート、トリジンジイソシアナート、p−フェニレンジイソシアナートなど;脂肪族又は脂環式ジイソシアナートとしては、ヘキサメチレンジイソシアナート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアナート、イソホロンジイソシアナート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアナート、シクロヘキシレンジイソシアナート、水素化キシリレンジイソシアナートなどが挙げられる。トリイソシアナート化合物を例示すると、トリフェニルメタントリイソシアナート、トリ(イソシアナトフェニル)トリホスフェートなどが挙げられ、多官能ポリイソシアナート化合物を例示すると、ポリメリック(ジフェニルメタンジイソシアナート)などが挙げられる。印刷版又は印刷原版の耐溶剤性の観点から、ジイソシアナート化合物が好ましく、芳香族ジイソシアナートがより好ましく、トリレンジイソシアナートがさらに好ましい。
【0046】
プレポリマーの末端活性水素基の当量を超えるイソシアナート基当量とは、ポリイソシアナート化合物のイソシアナート基の当量(mol)が、プレポリマーの末端活性水素基の当量(mol)を超えることを意味する。該イソシアナート基当量としては、プレポリマーの末端活性水素基の当量を超えていれば制限はされないが、プレポリマーの末端活性水素基の当量の105〜150%当量であることが好ましく、110〜140%当量であることがより好ましい。
【0047】
ヒドロキシアルキルアクリレート及び/又はヒドロキシアルキルメタクリレートとしては、例えば、該アクリレート化合物中のアルキル部分が炭素数2〜10のアルキレン基などである化合物が好ましく、炭素数2又は3のアルキレン基などである化合物がより好ましい。ヒドロキシアルキルアクリレート及び/又はヒドロキシアルキルメタクリレートの具体例としては、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0048】
このようなポリマー(a)の中でも、下記式(2)で表されるポリマーが、極めて優れた耐溶剤性を示すことから好ましい。
【0049】
【化4】

(式中、Rは、各々独立して、前記プレポリマーから両末端活性水素基を除いた残基を表し、Rは、ジイソシアナート化合物からイソシアナート基を除いた残基を表し、Rは、ヒドロキシアルキルアクリレート及び/又はヒドロキシアルキルメタクリレートのアルキル部分を表し、R、Rは、各々独立して、メチル基又は水素原子を表し、mは、1以上の任意の整数を表す。)
【0050】
前記式(1)及び式(2)において、Rとしては、例えば、ジフェニルメタンジイソシアナート、トリレンジイソシアナート、テトラメチルキシリレンジイソシアナート、キシリレンジイソシアナート、ナフチレンジイソシアナート、トリジンジイソシアナート、p−フェニレンジイソシアナートなどの芳香族ジイソシアナート;ヘキサメチレンジイソシアナート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアナート、イソホロンジイソシアナート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアナート、シクロヘキシレンジイソシアナート、水素化キシリレンジイソシアナートなどの脂肪族又は脂環式ジイソシアナートからイソシアナート基を除いた残基が挙げられるが、これらの中でも芳香族ジイソシアナートからイソシアナート基を除いた残基が好ましく、もっとも好ましくはトリレンジイソシアナートからイソシアナート基を除いた残基である。
【0051】
前記式(1)及び式(2)において、Rr、としては、炭素数2〜10のアルキレン基が好ましく、より好ましくは、炭素数2〜5のアルキレン基であり、さらに好ましくは、エチレン基又はプロピレン基であり、よりさらに好ましくはエチレン基である。
【0052】
ポリマー(a)の製造方法としては、特に制限はされないが、例えば、以下の方法などによりポリマー(a)を製造することができる。前記プレポリマーと、該プレポリマー(末端活性水素基として水酸基を有する)の末端水酸基の当量未満のイソシアナート基当量のポリイソシアナート化合物と、ウレタン化触媒とを50〜90℃で1〜5時間反応させた後、イソシアナトアルキル(メタ)アクリレートとウレタン化触媒とを加え、50〜90℃で1〜5時間反応させることにより、ポリマー(a)を製造することができる。
また、前記プレポリマーと、該プレポリマー(末端活性水素基として水酸基を有する)の末端水酸基の当量を超えるイソシアナート基当量のポリイソシナネート化合物と、ウレタン化触媒とを50〜90℃で1〜5時間反応させた後、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートとウレタン化触媒とを加え、50〜90℃で1〜5時間反応させることにより、ポリマー(a)を製造することができる。
【0053】
次に、本実施の形態の感光性樹脂組成物について説明する。
本実施の形態の感光性樹脂組成物は、各種溶剤に対し卓越した耐溶剤性を発現させるために、前記プレポリマーから製造される前記ポリマー(a)を含むことが必須要件であり、印刷版又は印刷原版の製造に用いられるものである。
本実施の形態の感光性樹脂組成物において、ポリマー(a)は、前記プレポリマーから製造される前記ポリマーであれば特に制限はないが、前記ポリプレポリマーの末端水酸基と他の化合物との間の共有結合の形成を伴って製造されるポリマーであって、かつ重合性不飽和基を含むポリマーであることが好ましい。共有結合及び重合性不飽和基の種類に特に制限はないが、共有結合としては、ウレタン結合が好ましく、重合性不飽和基としては、二重結合が好ましい。本実施の形態の感光性樹脂組成物において、ウレタン結合の形成を伴って製造されるポリマー(a)としては、プレポリマー(末端活性水素基として水酸基を有する)と、芳香族ジイソシアナートと、から製造されるウレタン化プレポリマーを含有するポリマーであることが好ましい。また、感光性樹脂組成物を用いて印刷版又は印刷原版を製造するに際し、ポリマー(a)が様々な分子と連結することができることから、ポリマー(a)が重合性不飽和基を有することが好ましい。
【0054】
具体的には、ポリマー(a)は、前記プレポリマー(末端活性水素基として水酸基を有する)と、当該プレポリマーの末端水酸基の当量未満のイソシアナート基当量のジイソシアナート化合物と、イソシアナトアルキルアクリレート及び/又はイソシアナトアルキルメタクリレートと、を反応させて製造されるポリマー、又は、前記プレポリマー(末端活性水素基として水酸基を有する)と、当該プレポリマーの末端水酸基の当量を超えるイソシアナート基当量のジイソシアナート化合物と、ヒドロキシアルキルアクリレート及び/又はヒドロキシアルキルメタクリレートと、を反応させて製造されるポリマーであることが好ましい。
また、ポリマー(a)は、重合性不飽和基を有することが好ましい。重合性不飽和基を有すると、印刷原版などを製造するに際し、様々な分子と連結するのに好都合である。
さらに、ポリマー(a)としては、前記式(1)又は式(2)で表されるポリマーが、耐溶剤性に極めて優れていることから好ましい。
【0055】
本実施の形態の感光性樹脂組成物は、重合性不飽和基を有し、数平均分子量が5,000未満である有機化合物(b)をさらに含有することが好ましい。
本実施の形態における重合性不飽和基とは、ラジカル重合又は付加重合反応に関与する不飽和基を意味する。ラジカル重合反応に関与する重合性不飽和基としては、例えば、アクリル基、メタクリル基が好ましく、付加重合反応に関与する重合性不飽和基としては、例えば、エポキシ基、オキセタン基、ビニルエーテル基が好ましい。
【0056】
有機化合物(b)の具体例としては、エチレン、プロピレン、スチレン、ジビニルベンゼンなどのオレフィン類;(メタ)アクリル酸及びその誘導体;ハロオレフィン類;アクリルニトリルなどの不飽和ニトリル類;(メタ)アクリルアミド及びその誘導体;アリルアルコール、アリルイソシアナートなどのアリル化合物;無水マレイン酸、マレイン酸、フマール酸などの不飽和ジカルボン酸及びその誘導体;酢酸ビニル類;N−ビニルピロリドン;N−ビニルカルバゾールなどが挙げられる。
有機化合物(b)として、目的に応じて1種又は2種以上の有機化合物を併用して用いることができる。
【0057】
有機化合物(b)としては、例えば、(メタ)アクリル酸又はその誘導体が好ましい。(メタ)アクリル酸の誘導体の例としては、例えば、以下のアルコール性水酸基を有する化合物などとのエステルなどが挙げられる。該化合物としては、シクロアルキルアルコール、ビシクロアルキルアルコール、シクロアルケニルアルコール、ビシクロアルケニルアルコールなどの脂環式の骨格を有する化合物;ベンジルアルコール、フェノール、フルオレニルアルコールなどの芳香族の骨格を有する化合物;アルキルアルコール、ハロゲン化アルキルアルコール、アルコキシアルキルアルコール、フェノキシアルキルアルコール、ヒドロキシアルキルアルコール、アミノアルキルアルコール、テトラヒドロフルフリルアルコール、アリルアルコールなどが挙げられる。また、(メタ)アクリル酸の誘導体の例としては、グリシドール、アルキレングリコール、ポリオキシアルキレングリコール、(アルキル/アリルオキシ)ポリアルキレングリコールやトリメチロールプロパンなどの多価アルコールなどとのエステルなども挙げられる。また、(メタ)アクリル酸の誘導体が芳香族の骨格を有する化合物とのエステルである化合物の場合には、窒素、硫黄などをヘテロ原子として含有した複素芳香族化合物とのエステルなどである有機化合物も挙げられる。
有機化合物(b)の具体例として、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールブチルエーテル(メタ)アクリレート、エチレングリコールフェニルエーテル(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパン(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0058】
有機化合物(b)として、開環付加重合反応するエポキシ基を有する化合物が好ましい。開環付加反応するエポキシ基を有する化合物としては、種々のジオールやトリオールなどのポリオールにエピクロルヒドリンを反応させて得られる化合物、分子中のエチレン結合に過酸を反応させて得られるエポキシ化合物などが挙げられる。
【0059】
具体的には、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ジエチレングリコールジグリシジルエーテル、トリエチレングリコールジグリシジルエーテル、テトラエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、グリセリンジグリシジルエーテル、
グリセリントリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、ビスフェノールFジグリシジルエーテル、ビスフェノールSプロピレンオキシドジグリシジルエーテル、水添化ビスフェノールAジグリシジルエーテル、ビスフェノールAにエチレンオキシド又はプロピレンオキシドが付加した化合物のジグリシジルエーテル、ポリテトラメチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリ(プロピレングリコールアジペート)ジオールジグリシジルエーテル、ポリ(エチレングリコールアジペート)ジオールジグリシジルエーテル、ポリ(カプロラクトン)ジオールジグリシジルエーテル、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3’,4’−エポキシシクロヘキシルカルボキシレート、1−メチル−3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−1’−メチル−3’,4’−エポキシシクロヘキシルカルボキシレート、アジピン酸ビス[1−メチル−3,4−エポキシシクロヘキシル]エステル、ビニルシクロヘキセンジエポキシド、ポリブタジエンやポリイソプレンなどのポリジエンに過酢酸を反応させて得られるポリエポキシ化合物、エポキシ化大豆油などが挙げられる。
【0060】
本実施の形態における感光性樹脂組成物は、印刷原版又は印刷版とした場合、各種溶剤に対する優れた耐溶剤性に加え、レーザーで直接レリーフ画像を形成する手法において重要な特性である、レーザー彫刻性に優れるという特徴を併せ持つ。レーザー彫刻性をより向上させるためには、樹脂組成物が、さらに無機系微粒子(c)を含有することが好ましい。無機系微粒子(c)の材質、形態などに制限はされないが、粒子中に微小細孔又は微小な空隙を有するものがより好ましい。無機系微粒子(c)には、印刷原版がレーザーによって分解されて発生する液状ガスを効果的に吸収除去する働きがあるので、感光性樹脂組成物に無機系微粒子(c)を含有させることにより、レーザー彫刻によるレリーフ画像の精度が向上するのみならず、レーザー彫刻後の洗浄操作が極めて簡便になる。
【0061】
無機系微粒子(c)の大きさに制限はされないが、平均粒子径が0.01〜100μmであることが好ましく、より好ましくは0.1〜20μmであり、さらに好ましくは1〜10μmである。無機系微粒子(c)の平均細孔径に制限はされないが、1〜1,000nmであり、より好ましくは2〜200nmであり、さらに好ましくは2〜50nmである。無機系微粒子(c)の細孔容積に制限はされないが、0.01〜10ml/gが好ましく、より好ましくは0.1〜5ml/gである。無機系微粒子(c)の比表面積に制限はされないが、1〜1,500m/gが好ましく、より好ましくは10〜800m/gである。
【0062】
無機系微粒子(c)の形状に制限はされないが、球状、扁平状、針状、無定形、又は表面に突起のある粒子などを使用することができる。また、粒子の内部が空洞になっている粒子、シリカスポンジなどの均一な細孔径を有する球状顆粒体なども使用することができる。無機系微粒子としては、多孔質無機微粒子、無孔質無機微粒子のいずれも使用することができ、例えば、多孔質シリカ、メソポーラスシリカ、シリカ−ジルコニア多孔質ゲル、メソポーラスモレキュラーシーブ、ポーラスアルミナ、多孔質ガラス、アルミナ、シリカ、酸化ジルコニウム、チタン酸バリウム、チタン酸ストロンチウム、酸化チタン、窒化ケイ素、窒化ホウ素、炭化ケイ素、酸化クロム、酸化バナジウム、酸化錫、酸化ビスマス、酸化ゲルマニウム、ホウ素酸アルミニウム、酸化ニッケル、酸化モリブデン、酸化タングステン、酸化鉄、酸化セリウムなどを用いることができる。また、層状粘土化合物などのように、層間に数nm〜100nmの空隙が存在するものも無機系微粒子として用いることができる。
【0063】
本実施の形態における感光性樹脂組成物は、さらに、光重合開始剤を含有することが好ましい。光重合開始剤は公知のものから適宜選択すればよく、例えば、高分子学会編「高分子データ・ハンドブック−基礎編」(1986年、培風館発行)に例示されているラジカル重合、カチオン重合、アニオン重合などの重合開始剤などを使用することができる。
【0064】
光重合開始剤を用いて光重合により感光性樹脂組成物の架橋を行うことは、貯蔵安定性を保ちながら、生産性よく印刷原版又は印刷版を製造する方法として有用である。
【0065】
光重合開始剤として使用することのできる公知の重合開始剤としては、ベンゾイン、ベンゾインエチルエーテルなどのベンゾインアルキルエーテル類;2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオフェノン、4’−イソプロピル−2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、ジエトキシアセトフェノンなどのアセトフェノン類;1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルホリノ−プロパン−1−オン、フェニルグリオキシル酸メチル、ベンゾフェノン、ベンジル、ジアセチル、ジフェニルスルフィド、エオシン、チオニン、アントラキノン類などの光ラジカル重合開始剤;光を吸収して酸を発生する芳香族ジアゾニウム塩、芳香族ヨードニウム塩、芳香族スルホニウム塩などの光カチオン重合開始剤;光を吸収して塩基を発生する光アニオン重合開始剤などを例示することができる。
【0066】
感光性樹脂組成物の組成に制限はされないが、印刷原版又は印刷版の耐溶剤性の観点から、前記プレポリマーから製造されるポリマー(a)100質量部に対して、重合性不飽和基を有する有機化合物(b)は5〜200質量部、無機系微粒子(c)は1〜100質量部であることが好ましい。また、印刷版の耐溶剤性の観点から、前記プレポリマーから製造されるポリマー(a)100質量部に対して、重合性不飽和基を有する有機化合物(b)は10〜180質量部、無機系微粒子(c)は1〜80質量部であることがより好ましい。さらに、印刷原版製造の効率の観点から、光重合開始剤を1〜100質量部含むことが好ましく、印刷版の耐溶剤性の観点から、光重合開始剤を1〜80質量部含むことがより好ましい。
【0067】
感光性樹脂組成物には、用途や目的に応じて重合禁止剤、紫外線吸収剤、染料、滑剤、界面活性剤、可塑剤、香料などを添加することができる。その総添加量は感光性樹脂組成物100質量部に対して10質量部以下の範囲であることが好ましい。
【0068】
次に、本実施の形態の印刷版及び印刷原版について説明する。
本実施の形態の印刷原版及び印刷版は、前記プレポリマーから製造される前記ポリマー(a)を含むものであれば制限はないが、前記感光性樹脂組成物から製造されるものであることが好ましい。印刷原版及び印刷版は、例えば、前記プレポリマーから製造される前記ポリマー(a)を含有する樹脂組成物を硬化して得られ、好ましくは、印刷原版及び印刷版は、前記樹脂組成物を含む樹脂組成物層を硬化した樹脂硬化物層を含む。印刷原版及び印刷版は、前記感光性樹脂組成物をシート状又は円筒状に成形し、成形した当該感光性樹脂組成物を光又は電子線の照射により架橋硬化せしめることを含む方法によって製造されるものであることがより好ましい。
【0069】
本実施の形態の感光性樹脂組成物をシート状又は円筒状に成形する方法に制限はなく、既存の樹脂の成形方法を用いることができる。例えば、ポンプや押し出し機などの機械で樹脂をノズルやダイスから押し出し、ブレードで厚みを合わせる方法(注型法);ロールによりカレンダー加工して厚みを合わせる方法などが例示できる。樹脂の性能を落とさない範囲で加熱しながら成形を行うことも可能である。また、必要に応じて圧延処理、研削処理などを施してもよい。通常は、PET(ポリエチレンテレフタレート)やニッケルなどの素材からなるバックフィルムといわれる下敷きの上に樹脂組成物を成形するが、印刷機のシリンダー上に直接成形することもできる。その場合、継ぎ目のないシームレススリーブを成形することができる。また、スリーブ成形・彫刻装置(液状の感光性樹脂組成物を円筒状支持体上に塗布し、光を照射して液状感光性樹脂組成物を架橋硬化させる装置内に、レーザー彫刻用のレーザー光源を組み込んだもの)を用いて印刷原版を成形することもできる。このような装置を用いた場合、スリーブを成形した後に直ちにレーザー彫刻して印刷版を成形することができるので、成形加工に数週間の期間を必要としていた従来のゴムスリーブでは到底考えられない短時間加工が実現可能となる。
本実施の形態における印刷版は、印刷原版表面に印刷パターンをレーザー彫刻することにより得られる印刷版であることが好ましい。
本実施の形態の印刷版の様式に制限はなく、フレキソ版、樹脂凸版、又はオフセット、ドライオフセット、反転オフセット又はグラビアオフセットに用いるブランケットなど、あらゆる印刷版として使用可能であるが、とくにフレキソ版として好適に用いられる。
【0070】
本実施の形態において、前記プレポリマーから製造される印刷版又は印刷原版は、溶解度パラメーターが20J1/2/cm3/2未満の溶剤に対し優れた耐溶剤性を示す。例えば、以下のような溶剤が例示できる(括弧内は溶解度パラメーター[J1/2/cm3/2]を示す)。炭化水素類としては、ヘキサン(14.9)、ヘプタン(15.0)、オクタン(15.3)など、エーテル類としては、ジエチレングリコールジエチルエーテル(16.4)、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(17.8)、エチレングリコールモノブチルエーテル(18.4)など、エステル類としては、酢酸ブチル(17.4)、酢酸プロピル(17.9)、酢酸エチル(18.6)など、ケトン類としては、メチルエチルケトン(19.0)、アセトン(19.2)など、芳香族類としては、トルエン(18.2)、キシレン(18.0)、メシチレン(19.0)、シクロヘキシルベンゼン(17.1)、アニソール(19.2)などに対し特に優れた耐溶剤性を示す。なお、本発明における溶剤の溶解度パラメーターは、物性値から推算した値若しくは分子構造から推算した値である(小林秀樹 著「SP値 基礎・応用と計算方法」(情報機構)、p.51)。
【0071】
[導電性層の製造方法について]
【0072】
本実施の形態において導電回路とは、導電性インクを転写・固定化することにより得られる導電性物質を含有する薄膜(導電性層)をパターン化して形成されたものを指す。導電回路が適する用途としては、特に制限されるものではないが、例えば、建築物の窓若しくは壁、又はブラウン管(CRT)、プラズマディスプレイパネル(PDP)、液晶パネルなどにおける電磁波シールド、又はRFIDタグなどが挙げられる。
【0073】
本実施の形態において導電性インクは特に制限されるものではなく、導電性物質とバインダー成分、溶剤、その他必要に応じて添加される各種添加剤からなる、一般に使用されている固着タイプのものが用いられる。固着タイプには、一般に蒸発乾燥型、紫外線硬化型、酸化重合型などがあり、導電性インクはこれらのいずれのタイプであってもよいが、生産性の観点からは、蒸発乾燥型あるいは紫外線硬化型であるのが好ましい。
バインダー成分は、これらのタイプに応じた樹脂が用いられる。インクが蒸発乾燥型である場合、インクには前記の導電性物質及びバインダー成分に加えて溶剤が含まれる。
【0074】
導電性物質としては、例えば、金、銀、銅、白金、パラジウム、ロジウム、ルテニウム、インジウム、ニッケル、アルミニウム、ケイ素などの金属元素及び/又は金属酸化物、金属窒化物、金属ハロゲン化物、金属硫化物、金属炭化物などの粉末あるいは微粒子などが挙げられる。
【0075】
バインダー成分としては、例えば、ロジン樹脂、ブチラール樹脂、マレイン酸樹脂、ポリアミド樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、アルキド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリスチレン樹脂、エチルセルロース樹脂、ニトロセルロース樹脂、酢酸ビニル樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ゴムなどが挙げられる。必要に応じてこれらの2種以上が含まれていてもよい。
【0076】
また、溶剤としては、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、トルエン、キシレンなどの炭化水素系溶剤、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、安息香酸メチル、安息香酸エチルなどのエステル系溶剤、テトラヒドロフラン、オキシラン、ジブチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテルなどのエーテル系溶剤、クロロホルム、ジクロロエタン、テトラクロロエチレン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼンなどのハロゲン系溶剤、メチルピロリドン、ピリジンなどの含窒素系溶剤、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、イソブチルアルコール、ジアセトンアルコールなどのアルコール系溶剤、アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン系溶剤などが挙げられる。
溶剤系インク中の溶剤は、溶剤系インク中のポリマー成分の溶解性や印刷工程中での乾燥性などにより決定されるが、エステル系溶剤、エーテル系溶剤、炭化水素系溶剤、ハロゲン系溶剤、含窒素系溶剤の中から選ばれる少なくとも1種類の溶剤成分を、溶剤全体量の20質量%以上100質量%以下含有していることが好ましい。前記溶剤成分の含有量が20質量%以上100質量%以下であれば、電子材料用途で用いられる芳香族化合物を十分に溶解又は分散することができる。
【0077】
導電性インクが紫外線硬化型である場合、バインダー成分としては、ラジカル重合性の化合物に、添加剤として紫外線照射により活性カチオン種を発生し得るカチオン重合開始剤を配合したものが、好適に用いられる。
【0078】
本実施の形態で用いる導電性インクには、印刷品位、生産性、チキソトロピー性などの向上のために、必要に応じて、前記の導電性物質、バインダー成分及び溶剤以外に、添加剤が含まれていてもよい。この添加剤としては、例えば、クエン酸及びその誘導体、アニリン及びその誘導体などの分散剤;カーボンブラック、酸化鉄などの黒色剤;シリカのようなチキソトロピー性付与剤;マイカ、スメクタイト、セルロースのような増粘剤;シランカップリング剤、レベリング剤、ワックス、カチオン重合開始剤などの重合開始剤などが挙げられる。
【0079】
導電性層の膜厚としては、1nm以上10μm以下であり、好ましくは5nm以上5μm以下、より好ましくは10nm以上1μm以下である。膜厚が1nm以上であれば、導体の機能を発現させることができ、また、10μm以下であれば、インク中の溶剤成分の除去を容易に行うことができる。
【0080】
本実施の形態における印刷版及び印刷原版の導電性インクに含有される溶剤に対する耐溶剤性は、溶剤浸漬膨潤テストにて評価し、前記溶剤への浸漬前後における印刷原版の質量変化率が10質量%以下であることが好ましく、5質量%以下であることがより好ましい。
本実施の形態における溶剤浸漬膨潤テストは、テストサンプルを室温において24時間、溶剤に浸漬して実施される。浸漬前後で印刷原版の質量変化率が10質量%以下であれば、印刷版の寸法変化が小さく、微細なパターンの印刷や、導電性層の均一塗布も可能となるだけではなく、印刷版の寸法安定性を確保でき、印刷版の耐久性も良好となり、繰り返しの印刷工程に耐えることができる。
【0081】
レーザー彫刻により印刷原版表面に印刷パターンを形成する場合には、形成されるパターンの深さは、1μm以上1,000μm以下であることが好ましい。より好ましくは5μm以上700μm以下であり、さらに好ましくは20μm以上500μm以下である。印刷パターンの深さが1μm以上あれば、印刷版から転写される導電性インクを被印刷基板上に保持することができ、1,000μm以下であれば印刷パターンが印刷工程中に変形したり、破壊されたりすることがないため好ましい。
【0082】
本実施の形態の導電性層の製造方法は、印刷版上の導電性インクを被印刷基板上に転写し、転写された導電性インク中の溶剤を乾燥除去して、又は転写された導電性インクに光を照射して硬化させ、被印刷基板上に導電性インクを固定化することを含む導電性層を製造する方法であって、
前記プレポリマーから製造されるポリマー(a)を含有する感光性樹脂組成物を硬化して得られる印刷版を用いて導電性インクを被印刷基板上に転写する、上記方法である。
【0083】
本実施の形態の製造方法においてフレキソ印刷方式を用いる場合、フレキソ印刷版上の導電性インクを被印刷基板上に転写する方法としては、特に制限はされないが、凹凸のあるフレキソ印刷版の凸部の表面に、インキ供給ロールなどで前記インクを供給し、次に、フレキソ印刷版を被印刷基板に接触させて、凸部表面の前記インクを被印刷基板に転移させて行う方法などが挙げられる。
【0084】
本実施の形態の製造方法における、被印刷基板上に導電性インクを固定化する方法の第1の態様は、前記方法により転写された前記インク中の溶剤を乾燥除去して、被印刷基板上に導電性インクを固定化する方法である。
前記インク中の溶剤を乾燥除去して、前記インクを固定化させる方法としては、例えば、窒素ガスなどの不活性ガスの存在下で熱処理することにより、前記溶剤を蒸気化して乾燥する方法などが挙げられる。
【0085】
本実施の形態の製造方法における、被印刷基板上に導電性インクを固定化する方法の第2の態様は、前記方法により転写された前記インクに光を照射して硬化させて、被印刷基板上に導電性インクを固定化する方法である。
前記インクに光を照射して硬化させて固定化させる方法としては、例えば、前記インクに配合した(メタ)アクリル酸誘導体などの光重合性モノマーを光で硬化させる方法などが挙げられる。
【0086】
[有機発光層の製造方法について]
本実施の形態における有機EL素子とは、有機発光体を含有する有機発光インクを転写・固定化して製造される薄膜(有機発光層)がパターン化して形成されたものを指す。より詳しくは、電極を形成した基板の上に、正孔輸送層と発光層、さらに陰極層を順次形成して得られる。また、本実施の形態における有機ELディスプレイパネルとは、このようにして得られた有機EL素子を外部の酸素や水分から保護するために、ガラスキャップで密閉封止したものである。
【0087】
有機発光インクは、特に制限されるものではなく、有機発光材料とバインダー樹脂成分、溶剤、その他必要に応じて添加される各種添加剤からなるものを用いることができる。
【0088】
有機発光材料としては、例えば、低分子型の有機発光材料と高分子型の有機発光材料に分けられるが、低分子型の有機発光材料は蒸着法のような真空プロセスによって形成されることが多く、形成された薄膜に微細パターンをパターニングするが、この方法では基板が大型化すればするほどパターニング精度が出難いという問題がある。また、真空中で成膜するためにスループットが悪いという問題もある。そこで、最近では高分子材料を溶剤に溶かして塗工液にし、これをウェットコーティング法で薄膜形成する方法が試みられている。
したがって、本実施の形態では高分子型の有機発光材料が好ましく用いられる。例えば、クマリン系、ペリレン系、ピラン系、アンスロン系、ポリフィレン系、キナクリドン系、N、N’−ジアルキル置換キナクリドン系、ナフタルイミド系、N,N’−ジアリール置換ピロロピロール系、イリジウム錯体系などの発光性色素をポリスチレン、ポリメチルメタクリレート、ポリビニルカルバゾールなどの高分子中に分散させたものや、ポリアリーレン系、ポリアリーレンビニリレン系やポリフルオレンといった高分子材料などが挙げられる。
【0089】
溶剤としては、トルエン、キシレン、アセトン、アニソール、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンなどの単独又はこれらの混合溶媒が挙げられる。中でも、トルエン、キシレン、アニソールといった芳香族系有機溶剤が有機発光材料の溶解性の面から好適である。
【0090】
本実施の形態の有機発光インクには、印刷品位、生産性、チキソトロピー性などの向上のために、必要に応じて、前記の有機発光インク、バインダー樹脂成分及び溶剤以外に、添加剤が含まれていてもよい。
【0091】
有機発光インク中の溶剤は、該インク中のポリマー成分の溶解性や印刷工程中での乾燥性などにより決定され、芳香族有機溶剤の中から選ばれる少なくとも1種類の溶剤成分を、溶剤全体量の20質量%以上100質量%以下含有していることが好ましい。前記溶剤成分の含有量が20質量%以上100質量%以下であれば、有機発光インク用途で用いられる有機発光材料を十分に溶解又は分散することができる。
【0092】
本実施の形態で用いる有機発光インクが紫外線硬化型である場合、バインダー樹脂成分としては、ラジカル重合性の化合物に、紫外線照射により活性カチオン種を発生し得るカチオン重合開始剤を配合したものが、好適に用いられる。
【0093】
本実施の形態における有機発光層の厚さは、有機発光インク中の溶剤成分を乾燥除去した後は、1nm以上10μm以下であることが好ましい。より好ましくは5nm以上5μm以下、さらに好ましくは10nm以上1μm以下である。該厚さが1nm以上であれば、有機発光インクの機能を発現させることができ、また、10μm以下であれば、有機発光インク中の溶剤成分の除去を容易に行うことができる。
【0094】
本実施の形態における印刷版及び印刷原版の有機発光インクに含有される溶剤に対する耐溶剤性は、溶剤浸漬膨潤テストにて評価し、前記溶剤への浸漬前後の質量変化率が10質量%以下であることが好ましく、5質量%以下であることがより好ましい。
本実施の形態における溶剤浸漬膨潤テストは、テストサンプルを室温において24時間、溶剤に浸漬して実施される。浸漬前後で印刷原版の質量変化率が10質量%以下であれば、印刷版の寸法変化が小さく、微細なパターンの印刷や、薄膜の均一塗布も可能となるだけではなく、印刷版の寸法安定性を確保でき、印刷版の耐久性も良好となり、繰り返しの印刷工程に耐えることができる。
【0095】
レーザー彫刻により印刷原版表面に印刷パターンを形成する場合には、形成されるパターンの深さは、1μm以上1,000μm以下であることが好ましい。より好ましくは5μm以上700μm以下であり、さらに好ましくは20μm以上500μm以下である。印刷パターンの深さが1μm以上あれば、印刷版から転写される有機発光インクを被印刷基板上に保持することができ、1,000μm以下であれば印刷パターンが印刷工程中に変形したり、破壊されたりすることがないため好ましい。
【0096】
本実施の形態の有機発光層の製造方法は、印刷版上の有機発光インクを被印刷基板上に転写し、転写された有機発光インク中の溶剤を乾燥除去して、又は転写された有機発光インクに光を照射して硬化させて、被印刷基板上に有機発光インクを固定化することによって有機発光層を製造する方法であって、
前記プレポリマーから製造されるポリマー(a)を含有する感光性樹脂組成物を硬化して得られる印刷版を用いて有機発光インクを被印刷基板上に転写する、方法である。
【0097】
本実施の形態の製造方法においてフレキソ印刷方式を用いる場合、フレキソ印刷版上の有機発光インクを被印刷基板上に転写する方法としては、特に制限はされないが、凹凸のあるフレキソ印刷版の凸部の表面に、インキ供給ロールなどで前記インクを供給し、次に、フレキソ印刷版を被印刷基板に接触させて、凸部表面の前記インクを被印刷基板に転移させて行う方法などが挙げられる。
【0098】
本実施の形態の製造方法における、被印刷基板上に有機発光インクを固定化する方法の第1の態様としては、前記方法により転写された前記インク中の溶剤を乾燥除去して、被印刷基板上に有機発光インクを固定化する方法である。
前記インク中の溶剤を乾燥除去して、前記インクを固定化させる方法としては、例えば、窒素ガスなどの不活性ガスの存在下で熱処理することにより、前記溶剤を蒸気化して乾燥する方法などが挙げられる。
【0099】
本実施の形態の製造方法における、被印刷基板上に有機発光インクを固定化する方法の第2の態様としては、前記方法により転写された前記インクに光を照射して硬化させて、被印刷基板上に有機発光インクを固定化する方法である。
前記インクに光を照射して硬化させて固定化させる方法としては、例えば、前記インクに配合した(メタ)アクリル酸誘導体などの光重合性モノマーを光で硬化させる方法などが挙げられる。
【0100】
[有機薄膜太陽電池用光電変換層の製造方法について]
本実施の形態における有機薄膜太陽電池用光電変換層とは、有機薄膜太陽電池の電荷分離に寄与し、生じた電子及び正孔を各々反対方向の電極に向かって輸送させる機能を有する部材を意味する。具体的にはこのような光電変換層としては、電子供与体として機能する正孔輸送層又は電子受容体として機能する電子輸送層の少なくとも一方を有する光電変換層や、電子供与体及び電子受容体の両方の機能を有する電子正孔輸送層からなる光電変換層などを挙げることができる。有機薄膜太陽電池の具体例としては、制限はされないが、電子供与性又は電子受容性のいずれか一方の機能を有する、すなわち、前記電子輸送層又は正孔輸送層のいずれか一方である光電変換層が、第一電極層及び第二電極層間に配置されており、電極とそのような光電変換層とのショットキー障壁を利用したショットキー型の有機薄膜太陽電池、又は電子受容性及び電子供与性の機能を一組として、pn接合を利用したヘテロ接合型の有機薄膜太陽電池などを挙げることができる。
【0101】
(a)ショットキー型の有機薄膜太陽電池
光電変換層を、電子供与性又は電子受容性のいずれか一方の機能を有する層、すなわち、電子輸送層又は正孔輸送層のいずれか一方とすることにより、そのような光電変換層と電極との界面において形成されるショットキー障壁を利用して光電流を得るショットキー型有機薄膜太陽電池とすることができる。例えば、光電変換層を正孔輸送層とした場合には、第一電極層及び第二電極層のうち仕事関数が小さい方の電極との界面にショットキー障壁が形成されるため、その界面において光電荷分離を生じさせることができる。一方、光電変換層を電子輸送層とした場合には、第一電極層及び第二電極層のうち仕事関数が大きい方の電極との界面で光電流を生じさせることができる。
【0102】
このようにショットキー型の有機薄膜太陽電池とした場合に、光電変換層を形成する材料は、電子供与性又は電子受容性の性質を有する材料であれば特に制限はされない。具体的には、ペンタセンなどの有機単結晶、ポリ−3−メチルチオフェン、ポリアセチレン、ポリフェニレン及びその誘導体、ポリフェニレンビニレン及びその誘導体、ポリシラン及びその誘導体、ポリアルキルチオフェン及びその誘導体などの導電性高分子及びその誘導体、ポリフィリン誘導体、フタロシアニン誘導体、メロシアニン誘導体、クロロフィルなどの合成色素、有機金属ポリマーなどを挙げることができる。
【0103】
光電変換層の膜厚としては、0.1nm〜1,500nmの範囲内の膜厚とすることが好ましい。光電変換層の膜厚を1,500nm以下とすることが、膜抵抗の観点から好ましい。また、光電変換層の膜厚を0.1nm以上とすることにより、第一電極層及び第二電極層の短絡を生じないようにできる。光電変換層の膜厚としては、総合的性能の観点から、5nm〜300nmの範囲内であることがより好ましい。
【0104】
(b)ヘテロ接合型の有機薄膜太陽電池
ヘテロ接合型有機薄膜太陽電池は、バイレイヤー型とバルクヘテロ接合型とに分けることができる。
【0105】
i.バイレイヤー型の有機薄膜太陽電池
バイレイヤー型の有機薄膜太陽電池は、光電変換層として、電子受容性の機能を有する電子輸送層及び電子供与性の機能を有する正孔輸送層を各々別個に形成し、それらの界面において形成されるpn接合を利用して光電荷分離を生じさせ、光電流を得る有機薄膜太陽電池である。
このような光電変換層として、電子輸送層及び正孔輸送層の膜厚は特に制限はされないが、具体的には、各々の膜厚が0.1nm〜1,500nmの範囲内の膜厚とすることが好ましい。光電変換層の膜厚を1,500nm以下とすることが、膜抵抗の観点から好ましい。また、光電変換層の膜厚を0.1nm以上とすることにより、第一電極層及び第二電極層の短絡を生じないようにできる。光電変換層の膜厚としては、総合的性能の観点から、5nm〜300nmの範囲内であることがより好ましい。
【0106】
電子輸送層を形成する材料としては、電子受容体としての機能を有するものであれば特に制限はされない。具体的には、CN−ポリ(フェニレン−ビニレン)、MEH−CN−PPV,−CN基又は−CF基含有ポリマー、それらの−CF置換ポリマー、ポリ(フルオレン)誘導体、C60などのフラーレン誘導体、カーボンナノチューブ、ペリレン誘導体、多環キノン、キナクリドンなどの材料を挙げることができる。中でも、電子の移動度が高い材料であることが好ましい。
一方、正孔輸送層を形成する材料としては、電子供与体としての機能を有するものであれば特に制限はされない。具体的には、ポリフェニレン及びその誘導体、ポリフェニレンビニレン及びその誘導体、ポリシラン及びその誘導体、ポリアルキルチオフェン及びその誘導体、ポリフィリン誘導体、フタロシアニン誘導体、有機金属ポリマーなどを挙げることができる。中でも正孔の移動度が高い材料であることが好ましい。
【0107】
ii.バルクヘテロ接合型の有機薄膜太陽電池
バルクヘテロ接合型の有機薄膜太陽電池は、光電変換層として、電子受容性及び電子供与性の両方の機能を有する電子正孔輸送層とし、電子正孔輸送層内で形成されるpn接合を利用して光電化分離を生じさせ、光電流を得る太陽電池である。
このような電子正孔輸送層の膜厚としては、一般的にバルクヘテロ接合型において採用されている膜厚であれば特に制限はされないが、具体的には、0.2nm〜3,000nmの範囲内の膜厚とすることが好ましい。電子正孔輸送層の膜厚を3,000nm以下とすることが、膜抵抗の観点から好ましい。また、電子正孔輸送層の膜厚を0.2nm以上とすることにより、第一電極層及び第二電極層の短絡を生じないようにできる。電子正孔輸送層の膜厚としては、総合的性能の観点から、10nm〜600nmの範囲内であることがより好ましい。
【0108】
さらに、電子正孔輸送層を形成する材料としては、一般的に、バルクヘテロ接合型の有機薄膜太陽電池において用いられているものであれば特に制限はされないが、具体的には、電子供与性の材料及び電子受容性の材料の両方の材料を均一に分散させたものを挙げることができる。また、電子供与性材料及び電子受容性材料の混合比は、用いる材料により最適な混合比を適宜調整する。
例えば、電子受容性の材料としては、具体的には、CN−ポリ(フェニレン−ビニレン)、MEH−CN−PPV,−CN基又は−CF基含有ポリマー、それらの−CF置換ポリマー、ポリ(フルオレン)誘導体、C60誘導体、カーボンナノチューブ、ペリレン誘導体、多環キノン、キナクリドンなどの材料を挙げることができる。中でも、電子の移動度が高い材料であることが好ましい。
一方、電子供与体性の材料としては、そのような機能を有するものであれば特に制限はされない。具体的には、ポリフェニレン及びその誘導体、ポリフェニレンビニレン及びその誘導体、ポリシラン及びその誘導体、ポリアルキルチオフェン及びその誘導体、ポルフィリン誘導体、フタロシアニン誘導体、有機金属ポリマーなどを挙げることができる。中でも正孔の移動度が高い材料であることが好ましい。また、最終的に得られる有機薄膜太陽電池において、電子正孔輸送層の数は、一層であってもよく、複数層であってもよい。
【0109】
有機薄膜太陽電池用光電変換層用インクに用いる溶剤としては、上述した電子供与性の材料及び電子受容性の材料を、両方溶解させることができるものであれば特に制限はされないが、具体的には、トルエン、キシレン、メシチレン、テトラリン、デカリン、n−ブチルベンゼンなどの炭化水素系溶剤、メチルエチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン系溶剤、四塩化炭素、クロロホルム、ジクロロメタン、ジクロロエタン、クロロブタン、ブロモブタン、クロロペンタン、ブロモペンタン、クロロヘキサン、ブロモヘキサン、クロロシクロヘキサン、ブロモシクロヘキサンなどのハロゲン系溶剤、テトラヒドロフランなどのエーテル系溶剤などが挙げられる。電子供与性の材料及び電子受容性の材料の化学構造や分子量にもよるが、通常はこれらの溶剤に0.1質量%以上の該材料を溶解させることができる。これらの溶剤は、単独又は2種以上の溶剤を混合して使用することができる。
【0110】
有機薄膜太陽電池用光電変換層用インクを光を照射させて硬化させる場合には、該インク中に、光重合性モノマーを含有させてもよい。光重合性モノマーとしては、例えば、ウレタンアクリレートやエポキシアクリレートなどが挙げられる。
【0111】
本実施の形態における印刷版及び印刷原版の有機薄膜太陽電池用光電変換層用インクに含有される溶剤に対する耐溶剤性は、溶剤浸漬膨潤テストにて評価することができる。前記溶剤への浸漬前後における印刷原版の質量変化率が10質量%以下であることが好ましく、5質量%以下であることがより好ましい。
溶剤浸漬膨潤テストは、テストサンプルを室温において24時間、溶剤に浸漬して実施される。浸漬前後で印刷原版の質量変化率が10質量%以下であれば、印刷版の寸法変化が小さく、微細なパターンの印刷及び有機薄膜の均一塗布が可能となる。また、質量変化率が10質量%以下であれば、印刷版の寸法安定性を確保でき、印刷版の耐久性も良好となるので、繰り返しの印刷工程に耐えることができる。
【0112】
レーザー彫刻により印刷原版表面に印刷パターンを形成する場合には、形成されるパターンの深さは、1μm以上1,000μm以下であることが好ましい。より好ましくは5μm以上700μm以下であり、さらに好ましくは20μm以上500μm以下である。印刷パターンの深さが1μm以上あれば、印刷版から転写される有機薄膜太陽電池用光電変換層用インクを被印刷基板上に保持することができ、1,000μm以下であれば印刷パターンが印刷工程中に変形したり、破壊されたりすることがないため好ましい。
【0113】
本実施の形態の有機薄膜太陽電池用光電変換層の製造方法は、印刷版上の有機薄膜太陽電池用光電変換層用インクを被印刷基板上に転写し、転写された有機薄膜太陽電池用光電変換層用インク中の溶剤を乾燥除去して、又は転写された有機薄膜太陽電池用光電変換層用インクに光を照射して硬化させて、被印刷基板上に有機薄膜太陽電池用光電変換層用インクを固定化することを含む有機薄膜太陽電池用光電変換層を製造する方法であって、
前記プレポリマーから製造されるポリマー(a)を含有する感光性樹脂組成物を硬化して得られる印刷版を用いて有機薄膜太陽電池用光電変換層用インクを被印刷基板上に転写する、上記方法である。
【0114】
本実施の形態の製造方法においてフレキソ印刷方式を用いる場合、フレキソ印刷版上の有機薄膜太陽電池用光電変換層用インクを被印刷基板上に転写する方法としては、特に制限はされないが、凹凸のあるフレキソ印刷版の凸部の表面に、インキ供給ロールなどで前記インクを供給し、次に、フレキソ印刷版を被印刷基板に接触させて、凸部表面の前記インクを被印刷基板に転移させて行う方法などが挙げられる。
【0115】
本実施の形態の製造方法における、被印刷基板上に有機薄膜太陽電池用光電変換層用インクを固定化する方法の第1の態様は、前記方法により転写された前記インク中の溶剤を乾燥除去して、被印刷基板上に有機薄膜太陽電池用光電変換層用インクを固定化する方法である。
前記インク中の溶剤を乾燥除去して、前記インクを固定化させる方法としては、例えば、窒素ガスなどの不活性ガスの存在下で熱処理することにより、前記溶剤を蒸気化して乾燥する方法などが挙げられる。
【0116】
本実施の形態の製造方法における、被印刷基板上に有機薄膜太陽電池用光電変換層用インクを固定化する方法の第2の態様は、前記方法により転写された前記インクに光を照射して硬化させて、被印刷基板上に有機薄膜太陽電池用光電変換層用インクを固定化する方法である。
前記インクに光を照射して硬化させて固定化させる方法としては、例えば、前記インクに配合した(メタ)アクリル酸誘導体などの光重合性モノマーを光で硬化させる方法などが挙げられる。
【0117】
[薄膜半導体パターン層の製造方法について]
本実施の形態における薄膜半導体パターン形成用インクに用いられる有機半導体材料に特に制限はされないが、π共役系材料などが用いられる。例えば、ポリピロール、ポリ(N−置換ピロール)、ポリ(3−置換ピロール)、ポリ(3,4−二置換ピロール)などのポリピロール類、ポリチオフェン、ポリ(3−置換チオフェン)、ポリ(3,4−二置換チオフェン)、ポリベンゾチオフェンなどのポリチオフェン類、ポリイソチアナフテンなどのポリイソチアナフテン類、ポリチェニレンビニレンなどのポリチェニレンビニレン類、ポリ(p−フェニレンビニレン)などのポリ(p−フェニレンビニレン)類、ポリアニリン、ポリ(N−置換アニリン)、ポリ(3−置換アニリン)、ポリ(2,3−置換アニリン)などのポリアニリン類、ポリアセチレンなどのポリアセチレン類、ポリジアセチレンなどのポリジアセチレン類、ポリアズレンなどのポリアズレン類、ポリピレンなどのポリピレン類、ポリカルバゾール、ポリ(N−置換カルバゾール)などのポリカルバゾール類、ポリセレノフェンなどのポリセレノフェン類、ポリフラン、ポリベンゾフランなどのポリフラン類、ポリ(p−フェニレン)などのポリ(p−フェニレン類)、ポリインドールなどのポリインドール類、ポリピリタジンなどのポリピリタジン類、ナフタセン、ペンタセン、ヘキサセン、ヘプタセン、ジベンゾペンタセン、テトラベンゾペンタセン、ピレン、ジベンゾピレン、クリセン、ペリレン、コロネン、テリレン、オバレン、クオテリレン、サーカムアントラセンなどのポリアセン類及びポリアセン類の炭素の一部をN、S、Oなどの原子、カルボニル基などの官能基に置換した誘導体(トリフェノジオキサン、トリフェノジチアジン、ヘキサセン−6,15−キノンなど)、ポリビニルカルバゾール、ポリフェニレンスルフィド、ポリビニレンスルフィドなどのポリマーや特開平11−195790号公報に開示された多環縮合体などを用いることができる。
また、これらのポリマーと同じ繰り返し単位を有する、例えばチオフェン6量体であるα−セクシチオフェン、α、ω−ジヘキシル−α−セクシチオフェン、α、ω−ジヘキシル−α−キンケチオフェン、α、ω−ビス(3−ブトキシプロピル)−α−セクシチオフェン、スチリルベンゼン誘導体などのオリゴマーも好適に用いることができる。
さらに銅フタロシアニンや特開平11−251601号公報に開示されたフッ素置換銅フタロシアニンなどの金属フタロシアニン類、ナフタレン1,4,5,8−テトラカルボン酸ジイミド、N,N’−ビス(4−トリフルオロメチルベンジル)ナフタレン1,4,5,8−テトラカルボン酸ジイミドとともに、N,N’−ビス(1H,1H−ペルフルオロオクチル)、N、N’−ビス(1H,1H−ペルフルオロブチル)及びN,N’−ジオクチルナフタレン−1,4,5,8−テトラカルボン酸ジイミド誘導体、ナフタレン−2,3,6,7−テトラカルボン酸ジイミドなどのナフタレンテトラカルボン酸ジイミド類、及びアントラセン−2,3,6,7−テトラカルボン酸ジイミドなどのアントラセンテトラカルボン酸ジイミド類などの縮合環テトラカルボン酸ジイミド類、C60、C70、C76、C78、C84などフラーレン類、SWNTなどのカーボンナノチューブ、メロシアニン色素類、ヘミシアニン色素類などの色素などが挙げられる。
【0118】
これらのπ共役系材料のうちでも、チオフェン、ビニレン、チェニレンビニレン、フェニレンビニレン、p−フェニレン、これらの置換体又はこれらの2種以上を繰り返し単位とし、かつ繰り返し単位の数nが4〜10であるオリゴマー若しくは該繰り返し単位の数nが20以上であるポリマー、ペンタセンなどの縮合多環芳香族化合物、フラーレン類、縮合環テトラカルボン酸ジイミド類、金属フタロシアニンよりなる群から選ばれた少なくとも1種が好ましい。
【0119】
また、その他の有機半導体材料としては、テトラチアフルバレン(TTF)−テトラシアノキノジメタン(TCNQ)錯体、ニスエチレンテトラチアフルバレン(BEDTTTF)−過塩素酸錯体、BEDTTTF−ヨウ素錯体、TCNQ−ヨウ素錯体、などの有機分子錯体も用いることができる。さらにポリシラン、ポリゲルマンなどのσ共役系ポリマーや特開2000−260999号公報に開示された有機・無機混成材料も用いることができる。
【0120】
薄膜半導体に、例えば、アクリル酸、アセトアミド、ジメチルアミノ基、シアノ基、カルボキシル基、ニトロ基などの官能基を有する材料や、ベンゾキノン誘導体、テトラシアノエチレン及びテトラシアノキノジメタンやそれらの誘導体などのように電子を受容するアクセプターとなる材料や、例えば、アミノ基、トリフェニル基、アルキル基、水酸基、アルコキシ基、フェニル基などの官能基を有する材料、フェニレンジアミンなどの置換アミン類、アントラセン、ベンゾアントラセン、置換ベンゾアントラセン類、ピレン、置換ピレン、カルバゾール及びその誘導体、テトラチアフルバレンとその誘導体などのように電子の供与体であるドナーとなるような材料を含有させ、いわゆるドーピング処理を施してもよい。
【0121】
前記ドーピング処理とは、電子授与性分子(アクセプター)又は電子供与性分子(ドナー)をドーパントとして本実施の形態における薄膜半導体に導入することを意味する。従って、ドーピング処理が施された薄膜半導体は、前記縮合多環芳香族化合物などの有機半導体材料とドーパントを含有する薄膜半導体である。ドーパントとしてアクセプター、ドナーのいずれも使用可能であり、公知の材料、プロセスを用いることができる。
【0122】
薄膜半導体パターン形成用インクに用いる溶剤としては、有機半導体材料の種類によって異なるが、有機半導体材料を溶解させるものであれば特に制限されるものではないが、例えば、トルエン、キシレン、メシチレン、テトラリン、デカリン,n−ブチルベンゼンなどの炭化水素系溶剤、メチルエチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン系溶剤、四塩化炭素、クロロホルム、ジクロロメタン、ジクロロエタン、クロロブタン、ブロモブタン、クロロペンタン、ブロモペンタン、クロロヘキサン、ブロモヘキサン、クロロシクロヘキサン、ブロモシクロヘキサンなどのハロゲン系溶剤、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピランなどのエーテル系溶剤などが挙げられる。有機半導体材料の化学構造や分子量にもよるが、通常はこれらの溶剤に0.1質量%以上の該材料を溶解させることができる。これらの溶剤は、単独又は2以上の溶剤を混合して使用することができる。
【0123】
薄膜半導体パターン形成用インクを光を照射させて硬化させる場合には、該インク中に、光重合性モノマーを含有させてもよい。光重合性モノマーとしては、例えば、ウレタンアクリレートやエポキシアクリレートなどが挙げられる。
【0124】
本実施の形態における薄膜半導体パターン層の膜厚は、特に制限はされないが、得られたトランジスタの特性は、有機半導体材料からなる活性層の膜厚に大きく左右される場合が多い。その膜厚は、有機半導体材料により異なるが、一般に、1μm以下、好ましくは10〜300nmである。
【0125】
本実施の形態における印刷版及び印刷原版の薄膜半導体パターン形成用インクに含有される溶剤に対する耐溶剤性は、溶剤浸漬膨潤テストにて評価することができる。前記溶剤への浸漬前後における印刷原版の質量変化率が10質量%以下であることが好ましく、5質量%以下であることがより好ましい。
溶剤浸漬膨潤テストは、テストサンプルを室温において24時間、溶剤に浸漬して実施される。浸漬前後で印刷原版の質量変化率が10質量%以下であれば、印刷版の寸法変化が小さく、微細なパターンの印刷及び薄膜半導体パターンの均一塗布が可能となる。また、質量変化率が10質量%以下であれば、印刷版の寸法安定性を確保でき、印刷版の耐久性も良好となり、繰り返しの印刷工程に耐えることができる。
【0126】
レーザー彫刻により印刷原版表面に印刷パターンを形成する場合には、形成される印刷パターンの深さは、1μm以上1,000μm以下が好ましい。より好ましくは
5μm以上700μm以下であり、さらに好ましくは20μm以上500μm以下である。印刷パターンの深さが1μm以上であれば、印刷版から転写される薄膜半導体パターン形成用インクを被印刷基板上に保持することができ、印刷パターンの深さが1000μm以下であれば、印刷パターンが印刷工程中に変形したり破壊されたりすることがないため好ましい。
【0127】
本実施の形態の薄膜半導体パターン層の製造方法は、印刷版上の薄膜半導体パターン形成用インクを被印刷基板上に転写し、転写された薄膜半導体パターン形成用インク中の溶剤を乾燥除去して、又は転写された薄膜半導体パターン形成用インクに光を照射して硬化させて、被印刷基板上に薄膜半導体パターン形成用インクを固定化することを含む、薄膜半導体パターン層を製造する方法であって、
前記プレポリマーから製造されるポリマー(a)を含有する感光性樹脂組成物を硬化して得られる印刷版を用いて薄膜半導体パターン形成用インクを被印刷基板上に転写する、上記方法である。
【0128】
本実施の形態の製造方法においてフレキソ印刷方式を用いる場合、フレキソ印刷版上の薄膜半導体パターン形成用インクを被印刷基板上に転写する方法としては、特に制限はされないが、凹凸のあるフレキソ印刷版の凸部の表面に、インキ供給ロールなどで前記インクを供給し、次に、フレキソ印刷版を被印刷基板に接触させて、凸部表面の前記インクを被印刷基板に転移させて行う方法などが挙げられる。
【0129】
本実施の形態の製造方法における、被印刷基板上に薄膜半導体パターン形成用インクを固定化する方法の第1の態様は、前記方法により転写された前記インク中の溶剤を乾燥除去して、被印刷基板上に薄膜半導体パターン形成用インクを固定化する方法である。
前記インク中の溶剤を乾燥除去して、前記インクを固定化させる方法としては、例えば、窒素ガスなどの不活性ガスの存在下で熱処理することにより、前記溶剤を蒸気化して乾燥する方法などが挙げられる。
【0130】
本実施の形態の製造方法における、被印刷基板上に薄膜半導体パターン形成用インクを固定化する方法の第2の態様は、前記方法により転写された前記インクに光を照射して硬化させて、被印刷基板上に薄膜半導体パターン形成用インクを固定化する方法である。
前記インクに光を照射して硬化させて固定化させる方法としては、例えば、前記インクに配合した(メタ)アクリル酸誘導体などの光重合性モノマーを光で硬化させる方法などが挙げられる。
【0131】
[電子写真感光体の感光層の製造方法について]
本実施の形態における電子写真感光体に用いられる導電性支持体は、従来から知られている導電性を有するものであればよく、アルミニウム、アルミニウム合金などの金属板及び金属ドラム、酸化スズ、酸化インンジウムなどの金属酸化物からなる板、又はそれらの金属及び金属酸化物などを真空蒸着、スパッタリング、ラミネート、塗布などによって付着させ導電性処理した各種プラスティックフィルム、紙などである。
【0132】
電子写真感光体の感光層としては、電荷輸送層と電荷発生層からなる積層型の感光層や電荷輸送層と電荷発生層とを積層化するのではなく混合して得られる感光層などが挙げられる。積層型の感光層の具体例としては、例えば、特許文献32及び33に開示された感光層が挙げられ、混合型の感光層の具体例としては、例えば、特許文献34に開示された感光層が挙げられる。
【0133】
電子供与性物質からなる電荷輸送層と、電子受容性物質からなる電荷発生層とを積層してなる、積層型の感光層を有する電子写真感光体に関して詳細に説明する。
【0134】
感光層を形成する電荷輸送層に用いる電子供与性物質としては、アルキル基、アルコキシ基、アミノ基、イミド基などの電子供与性基を有する化合物、アントラセン、ピレン、フェナントレンなどの多環芳香族化合物及びそれらを含む誘導体、インドール、オキサゾール、オキサジアゾール、カルバゾール、チアゾール、ピラゾリン、イミダゾール、トリアゾールなどの複素環化合物及びそれらを含む誘導体、ポリフェニレン及びその誘導体、ポリフェニレンビニレン及びその誘導体、ポリシラン及びその誘導体、ポリアルキルチオフェン及びその誘導体などが挙げられる。電子供与性物質を適当な溶剤に溶解又は分散させて、本実施の形態における印刷版を用いて印刷・乾燥し電荷輸送層を形成する。電子供与性物質により形成される感光層の電荷輸送層にはバインダー樹脂などを混合することが好ましいが、電子供与性物質が高分子化合物の場合はバインダー樹脂を混合せずに単独で電荷輸送層を形成してもよい。
【0135】
感光層を形成する電荷発生層に用いる電子受容性物質としては、フタロシアニン系、アゾ系、スクエアリリウム系、シアニン系、ペリレン系などの各種顔料又は染料、ポリ(フルオレン)誘導体、C60などのフラーレン誘導体、カーボンナノチューブなどが挙げられる。電子受容性物質を適当な溶剤に溶解又は分散させて作製した電子写真感光体の感光層を形成するインクを本実施の形態における印刷版を用いて、印刷・乾燥して電荷発生層を形成してもよい。電子写真感光体の感光層を形成する電荷発生層には、電子受容性物質とバインダー樹脂などを混合して用いることが好ましい。
バインダー樹脂としては、ポリスチレン、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体、ポリエステル、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリ酢酸ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリアクリレート樹脂、フェノキシ樹脂、ポリカーボネート、酢酸セルロース樹脂、エチルセルロース樹脂、ポリビニルブチラール、ポリビニルホルマール、ポリビニルトルエン、ポリ−N−ビニリカルバゾール、アクリル樹脂、シリコン樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、ウレタン樹脂、フェノール樹脂、アルキッド樹脂などの熱可塑性又は熱硬化性樹脂が挙げられる。
【0136】
電荷輸送層の膜厚としては、5μm〜100μmが好ましく、より好ましくは5μm〜50μmである。
電荷発生層の膜厚としては、0.05μm〜2μmが好ましく、より好ましくは0.1μm〜1μmである。
【0137】
電子供与性物質と電子受容性物質とを混合してなる、混合型の感光層を有する電子写真感光体に関して詳細に説明する。
電子供与性物質と電子受容性物質とを混合して、両者を溶解する溶剤に溶解して作製した感光層を形成するインクを用いて電子写真感光体を製造するに際して、該感光層を形成するインクを本実施の形態における印刷版を用いて印刷・乾燥し、感光層を形成する。また、混合型の感光層の機械的な特性を向上させるために、高分子化合物を溶液に混合して成膜してもよい。混合する高分子化合物としては、キャリア輸送を極度に阻害しないものが好ましく、また可視光に対する吸収が強くないものが好適に用いられる。例えば、ポリ(p−フェニレンビニレン)及びその誘導体、ポリカーボネート、ポリメチルアクリレート、ポリメチルメタクリレート、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリシロキサンなどが例示される。
【0138】
感光層の膜厚は、少なくともピンホールが発生しないような厚みが必要であり、その膜厚は5nm〜300μmであり、好ましくは10nm〜100μm、さらに好ましくは50nm〜50μmである。
【0139】
電子写真感光体の感光層を形成するインク溶剤としては、特に制限はされないが、トルエン、キシレン、メシチレン、テトラリン、デカリン、n−ブチルベンゼンなどの炭化水素系溶剤、メチルエチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン系溶剤、四塩化炭素、クロロホルム、ジクロロメタン、ジクロロエタン、クロロブタン、ブロモブタン、クロロペンタン、ブロモペンタン、クロロヘキサン、ブロモヘキサン、クロロシクロヘキサン、ブロモシクロヘキサンなどのハロゲン化不飽和炭化水素系溶剤、テトラヒドロフランなどのエーテル系溶剤などが挙げられる。
【0140】
電子写真感光体の感光層を形成するインクを光を照射させて硬化させる場合には、該インク中に、光重合性モノマーを含有させてもよい。光重合性モノマーとしては、例えば、ウレタンアクリレートやエポキシアクリレートなどが挙げられる。
【0141】
本実施の形態における印刷版及び印刷原版の電子写真感光体の感光層を形成するインクに含有される溶剤に対する耐溶剤性は、溶剤浸漬膨潤テストにて評価することができる。前記溶剤への浸漬前後の印刷原版の質量変化率が10質量%以下であることが好ましく、5質量%以下であることがより好ましい。
溶剤浸漬膨潤テストは、テストサンプルを室温において24時間、溶剤に浸漬して実施される。浸漬前後で印刷原版の質量変化率が10質量%以下であれば、印刷版の寸法変化が小さく、微細なパターンの印刷及び電子写真感光体の感光層の均一塗布も可能となるだけではなく、印刷版の寸法安定性を確保でき、印刷版の耐久性も良好となり、繰り返しの印刷工程に耐えることができる。
【0142】
レーザー彫刻により印刷原版表面に印刷パターンを形成する場合には、形成される印刷パターンの深さは、1μm以上1,000μm以下であることが好ましい。より好ましくは5μm以上700μm以下であり、さらに好ましくは20μm以上500μm以下である。印刷パターンの深さが1μm以上であれば印刷版から転写される、電子受容性有機物層用インクと電子供与性有機物層用インクなどを保持することができ、印刷パターンの深さが1,000μm以下であれば、印刷パターンが印刷工程中に変形したり破壊されたりすることがないため好ましい。
【0143】
本実施の形態の電子写真感光体の感光層の製造方法は、印刷版上の電子写真感光体の感光層を形成するインクを被印刷基板上に転写し、転写された前記インク中の溶剤を乾燥除去して、又は転写された前記インクに光を照射して硬化させて、被印刷基板上に電子写真感光体の感光層を形成するインクを固定化することを含む電子写真感光体の感光層を製造する方法であって、
前記プレポリマーから製造されるポリマー(a)を含有する感光性樹脂組成物を硬化して得られる印刷版を用いて電子写真感光体の感光層を形成するインクを被印刷基板上に転写する、上記方法である。
【0144】
本実施の形態の製造方法においてフレキソ印刷方式を用いる場合、フレキソ印刷版上の電子写真感光体の感光層を形成するインクを被印刷基板上に転写する方法としては、特に制限はされないが、凹凸のあるフレキソ印刷版の凸部の表面に、インキ供給ロールなどで前記インクを供給し、次に、フレキソ印刷版を被印刷基板に接触させて、凸部表面の前記インクを被印刷基板に転移させて行う方法などが挙げられる。
【0145】
本実施の形態の製造方法における、被印刷基板上に電子写真感光体の感光層を形成するインクを固定化する方法の第1の態様は、前記方法により転写された前記インク中の溶剤を乾燥除去して、被印刷基板上に電子写真感光体の感光層を形成するインクを固定化する方法である。
前記インク中の溶剤を乾燥除去して、前記インクを固定化させる方法としては、例えば、窒素ガスなどの不活性ガスの存在下で熱処理することにより、前記溶剤を蒸気化して乾燥する方法などが挙げられる。
【0146】
本実施の形態の製造方法における、被印刷基板上に電子写真感光体の感光層を形成するインクを固定化する方法の第2の態様は、前記方法により転写された前記インクに光を照射して硬化させて、被印刷基板上に電子写真感光体の感光層を形成するインクを固定化する方法である。
前記インクに光を照射して硬化させて固定化させる方法としては、例えば、前記インクに配合した(メタ)アクリル酸誘導体などの光重合性モノマーを光で硬化させる方法などが挙げられる。
【0147】
[光センサー用光起電力素子を構成する電子受容性有機物層及び/又は電子供与性有機物層の製造方法について]
本実施の形態における光センサー用光起電力素子は、少なくとも一方が透光性である2つの電極の間に、接合により内部電界を生じる電子受容性有機物層と電子供与性有機物層が積層されたものである。光起電力素子が光起電力能(すなわち光センサーとしても機能する)理由は、電子受容性有機物層と電子供与性有機物層の界面で両層のフェルミレベルの違いによって生じる局所的な内部電界に起因している。この内部電界が働いている部分に光が吸収されることによりキャリアが発生する。これが最終的に外部に電流として取り出される。従って、この界面にいかに多くの光が到達し吸収されるか、電子受容性有機物層と電子供与性有機物層の間に生ずる内部電界の大きさなどのキャリア発生能と電子受容性有機物層、電子供与性有機物層の電子及び正孔の移動能並びに注入性などが光起電力素子の変換効率の大きな因子となる。これらは電子受容性有機物層、電子供与性有機物層に使用される材料に大きく左右されるものである。
【0148】
本実施の形態における光起電力素子を製造するに際し、使用する各種材料、製法について説明する。
使用する透明絶縁支持体としては、ガラス、プラスティックフィルムなどが挙げられる。
使用する透明電極としては、酸化スズインジウム(ITO)、酸化スズ、酸化インジウム、酸化亜鉛、半透明Auなどが挙げられる。透明電極の厚さは10nm〜1,000nmであることが好ましい。
【0149】
電子受容性有機物層の有機物材料としては、例えば、CN−(ポリフェニレンビニレン)、C60などのフラーレン誘導体、ペリレン系顔料(Pigment Red(以下PR)179、PR190,PR149、PR189、PR123、Pigment Brown26など)、ペリノン系顔料(Pigment Orange 43,PR194など)、アントラキノン系顔料(PR168,PR177,Vat Yellow4など)、フラバンスロンなどの含キノン黄色顔料、クリスタルバイオレット、メチルバイオレット、マラカイトグリーンなどの染料フルオレノン、2,4,7トリニトロフルオレノン、テトラシアノキノジメタン、テトラシアノエチレンなどのアクセプター化合物を挙げることができる。
電子受容性有機物層の膜厚としては、5nm〜300nmの範囲内の膜厚とすることが好ましい。電子受容性有機物層の膜厚を300nm以下とすることが、膜抵抗の観点から好ましい。また、電子受容性有機物層の膜厚を5nm以上とすることにより、第一電極層及び第二電極層に短絡が生じないようにできる。電子受容性有機物層の膜厚としては、総合的性能の観点から、10nm〜250nmの範囲内であることがより好ましい。
【0150】
電子供与性有機物層の有機物材料としては、ポリチオフェン、ポリピロール、ポリフラン、ポリピリジン、ポリカルバゾール、フタロシアニン系顔料(中心金属がCu,Zn,Co,Ni,Pb,Pt,Fe,Mgなどの2価のもの、無金属フタロシアニン、アルミニウムクロルフタロシアニン、インジウムクロルフタロシアニン、インジウムブロムフタロシアニン、ガリウムクロルフタロシアニンなどのハロゲン原子が配位した3価金属のフタロシアニン、塩素化銅フタロシアニン、塩素化亜鉛フタロシアニン、その他バナジルフタロシアニン、チタニルフタロシアニンなどの酸素が配位したフタロシアニン)、インジゴ、チオインジゴ系顔料(Pigment Blue 66,Pigment Violet 36など)、キナクリドン系顔料(Pigment Violet 19,Pigment Red 122など)、メロシアニン化合物、シアニン化合物、スクアリウム化合物などの染料の他、特許文献36(特開2005−93572号公報)に開示された化合物などが挙げられる。中でも、下記式(3)で表される化合物が好ましい。
【化5】

【0151】
電子供与性有機物層の膜厚としては、5nm〜300nmの範囲内の膜厚とすることが好ましい。電子供与性有機物層の膜厚を300nm以下とすることが、膜抵抗の観点から好ましい。また、電子供与性有機物層の膜厚を5nm以上とすることにより、第一電極層及び第二電極層に短絡が生じないようにできる。電子供与性有機物層の膜厚としては、総合的性能の観点から、10nm〜250nmの範囲内であることがより好ましい。
【0152】
また、印刷法による電子受容性有機物層及び/又は電子供与性有機物層の製造性の向上及び光起電力素子にピンホールを生じにくくし、かつ高い変換効率を与えることを目的として、電子供与性有機物層中に以下のような特許文献において開示されている特定の構成単位を有する高分子有機物材料を含有させてもよい。
(1)特開2005−93572号公報に開示されている有機半導体、
(2)ポリーN−ビニルカルバゾール誘導体、ポリ−γ−カルバゾリルエチルグルタメート誘導体、ピレン−ホルムアルデヒド縮合物誘導体、ポリビニルピレン、ポリビニルフェナントレン、オキサゾール誘導体、イミダゾール誘導体、ジスチリルベンゼン誘導体、ジフェネチルベンゼン誘導体(特開平9−127713号公報)、
(3)α−フェニルスチルベン誘導体(特開平9−297419号公報)
(4)ブタジエン誘導体(特開平9−80783号公報)
(5)水素化ブタジエン(特開平9−80784号公報)
(6)ジフェニルシクロヘキサン誘導体(特開平9−80772号公報)
(7)ジスチリルトリフェニルアミン誘導体(特開平9−222740号公報)
(8)ジフェニルジスチリルベンゼン誘導体(特開平9−265197号公報、特開平9−265201号公報)
(9)スチルベン誘導体(特開平9−211877号公報)
(10)m−フェニレンジアミン誘導体(特開平9−304956号公報、特開平9−304957号公報)
(11)レゾルシン誘導体(特開平9−329907号公報)
(12)トリアリールアミン誘導体(特開昭64−9964号公報、特開平7−199503号公報、特開平8−176293号公報、特開平8−208820号公報、特開平4−11627号公報、特開平4−316543号公報、特開平5−310904号公報、特開平7−56374号公報、特開平8−62864号公報、米国特許第5,428,090号明細書、米国特許第5,486,439号明細書)
【0153】
さらに、光電変換効率の向上を目的として、従来公知の低分子型電子供与性有機物材料を前記高分子有機物材料と共に又は前記高分子有機物材料に代えて含有させてもよい。従来公知の低分子型電子供与性有機物材料とは、
(a)ヒドラゾン誘導体(特開昭55−154955号、特開昭55−156954号公報、特開昭55−52063号公報、特開昭56−81850号公報)
(b)アントラセン誘導体(特開昭51−94829号公報)
(c)オキサゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体(特開昭52−139065号公報、特開昭52−139066号公報)
(d)イミダゾール誘導体、トリフェニルアミン誘導体(特開平3−285960号公報)
(e)ベンジジン誘導体(特公昭58−32372号公報)
(f)スチリル誘導体(特開昭56−29245号公報、特開昭58−198043号公報)
(g)カルバゾール誘導体(特開昭58−58552号公報)
などの特許文献において開示された低分子有機物材料が挙げられる。
【0154】
また、背面電極としては、Au,Pt,Ni,Pd、Cu,Cr,Agなどの仕事関数の高い金属が用いられる。背面電極の厚さは5〜300nmが好ましい。
【0155】
本実施の形態における電子受容性有機物層用インクと電子供与性有機物層用インクに用いる溶剤としては、前述した電子供与性の有機物材料及び電子受容性の有機物材料を、一方又は双方を溶解させることができるものであれば特に制限はされないが、具体的には、例えば、トルエン、キシレン、メシチレン、テトラリン、デカリン、n−ブチルベンゼンなどの炭化水素系溶剤、四塩化炭素、クロロホルム、ジクロロメタン、ジクロロエタン、クロロブタン、ブロモブタン、クロロペンタン、ブロモペンタン、クロロヘキサン、ブロモヘキサン、クロロシクロヘキサン、ブロモシクロヘキサンなどのハロゲン系溶剤、テトラヒドロフランなどのエーテル系溶剤、メチルエチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン系溶剤などが挙げられる。電子受容性有機物材料と電子受容性有機物材料の化学構造や分子量にもよるが、通常はこれらの溶剤に0.1質量%以上の該有機物材料を溶解させることができる。これらの溶剤は、単独又は2種以上の溶剤を混合して使用することができる。
【0156】
電子受容性有機物層用インク及び/又は電子供与性有機物層用インクを光を照射させて硬化させる場合には、該インク中に、光重合性モノマーを含有させてもよい。光重合性モノマーとしては、例えば、ウレタンアクリレートやエポキシアクリレートなどが挙げられる。
【0157】
本実施の形態における印刷版及び印刷原版の光センサー用光起電力素子を構成する電子受容性有機物層用インク及び/又は電子供与性有機物層用インクに含有される溶剤に対する耐溶剤性は、溶剤浸漬膨潤テストにて評価することができる。前記溶剤への浸漬前後の印刷原版の質量変化率が10質量%以下であることが好ましく、5質量%以下であることがより好ましい。
溶剤浸漬膨潤テストは、テストサンプルを室温において24時間、溶剤に浸漬して実施される。質量変化率が10質量%以下であれば、レーザー彫刻印刷版の寸法変化が小さく、微細なパターンの印刷が可能となり、また、電子受容性有機物層及び/又は電子供与性有機物層の均一塗布も可能となるだけではなく、印刷版の寸法安定性を確保でき、印刷版の耐久性も良好となり、繰り返しの印刷工程に耐えることができる。
【0158】
レーザー彫刻により印刷原版表面に印刷パターンを形成する場合には、形成される印刷パターンの深さは、1μm以上1,000μm以下であることが好ましい。より好ましくは5μm以上700μm以下であり、さらに好ましくは20μm以上500μm以下である。印刷パターンの深さが1μm以上であれば印刷版から転写される、電子受容性有機物層用インク及び/又は電子供与性有機物層用インクなどを保持することができ、印刷パターンの深さが1,000μm以下であれば、印刷パターンが印刷工程中に変形したり破壊されたりすることがないため好ましい。
【0159】
本実施の形態の光センサー用光起電力素子を構成する電子受容性有機物層及び/又は電子供与性有機物層の製造方法は、印刷版上の電子受容性有機物層用インク及び/又は電子供与性有機物層用インクを被印刷基板上に転写し、転写された前記インク中の溶剤を乾燥除去して、又は転写された前記インクに光を照射して硬化させて、被印刷基板上に電子受容性有機物層用インク及び/又は電子供与性有機物層用インクを固定化することを含む電子受容性有機物層及び/又は電子供与性有機物層を製造する方法であって、
前記プレポリマーから製造されるポリマー(a)を含有する感光性樹脂組成物を硬化して得られる印刷版を用いて電子受容性有機物層用インク及び/又は電子供与性有機物層用インクを被印刷基板上に転写する、上記方法である。
【0160】
本実施の形態の製造方法においてフレキソ印刷方式を用いる場合、印刷版上の電子受容性有機物層用インク及び/又は電子供与性有機物層用インクを被印刷基板上に転写する方法としては、特に制限はされないが、凹凸のあるフレキソ印刷版の凸部の表面に、インキ供給ロールなどで前記インクを供給し、次に、フレキソ印刷版を被印刷基板に接触させて、凸部表面の前記インクを被印刷基板に転移させて行う方法などが挙げられる。
【0161】
本実施の形態の製造方法における、被印刷基板上に電子受容性有機物層用インク及び/又は電子供与性有機物層用インクを固定化する方法の第1の態様は、前記方法により転写された前記インク中の溶剤を乾燥除去して、被印刷基板上に電子受容性有機物層用インク及び/又は電子供与性有機物層用インクを固定化する方法である。
前記インク中の溶剤を乾燥除去して、前記インクを固定化させる方法としては、例えば、窒素ガスなどの不活性ガスの存在下で熱処理することにより、前記溶剤を蒸気化して乾燥する方法などが挙げられる。
【0162】
本実施の形態の製造方法における、被印刷基板上に電子受容性有機物層用インク及び/又は電子供与性有機物層用インクを固定化する方法の第2の態様は、前記方法により転写された前記インクに光を照射して硬化させて、被印刷基板上に電子受容性有機物層用インク及び/又は電子供与性有機物層用インクを固定化する方法である。
前記インクに光を照射して硬化させて固定化させる方法としては、例えば、前記インクに配合した(メタ)アクリル酸誘導体などの光重合性モノマーを光で硬化させる方法などが挙げられる。
【0163】
[光スイッチング素子のポリシラン薄膜の製造方法について]
本実施の形態における光スイッチング素子は、以下のようにして製造することができる。まず、基板上に、繰り返し単位を有する光スイッチング素子のポリシラン薄膜を形成するポリシラン溶液を印刷版を用いて印刷・乾燥してポリシラン薄膜を形成する。
このポリシラン薄膜の一部に、マスクを通して、例えば、水銀ランプの波長250〜360nmの紫外線を照射し、選択的に露光することにより、繰り返し単位を有するポリシロキサンに変換する。ポリシロキサンは多孔質であり、フォトクロミック材料の溶液を含浸し乾燥することにより、フォトクロミック材料を含有する光スイッチング部を形成することができる。
【0164】
本実施の形態における光スイッチング素子のポリシラン薄膜を形成するポリシラン溶液のポリシランとしては特に制限はされないが、水銀ランプで露光することにより効率よくポリシロキサンに変換できることから、ポリシランのケイ素に結合する置換基がメチル基及びフェニル基であるポリメチルフェニルシラン並びに水素及びフェニル基であるポリフェニルヒドロシランなどが好ましい。ポリシランの分子量は、総合的性能の観点から、1,000〜20,000であることが好ましく、1,300〜1,700であることがより好ましい。
【0165】
ポリシランを溶解させる溶剤としては、ポリシランを溶解させることができる溶剤であれば特に制限はされないが、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、メシチレン、テトラリン、n−ブチルベンゼンなどの芳香族炭化水素系溶剤、メチルエチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン系溶剤、四塩化炭素、クロロホルム、ジクロロメタン、ジクロロエタン、クロロブタン、ブロモブタン、クロロペンタン、ブロモペンタン、クロロヘキサン、ブロモヘキサン、クロロシクロヘキサン、ブロモシクロヘキサンなどのハロゲン系溶剤、テトラヒドロフラン、ジブチルエーテルなどのエーテル系溶剤などが挙げられる。ポリシラン溶液の濃度は、印刷性の観点から、1〜20質量%であることが好ましい。
【0166】
ポリシラン薄膜の膜厚は特に制限はされないが、具体的には、0.1μm〜10μmの範囲の膜厚とすることが好ましい。ポリシラン薄膜の膜厚を10μm以下とすることが、光スイッチング素子の性能の観点から好ましい。また、ポリシラン薄膜の膜厚を0.1μm以上とすることが、光スイッティング素子の安定生産の観点から好ましい。ポリシラン薄膜の膜厚としては、総合的性能の観点から、0.5μm〜8μmの範囲内であることがより好ましい。
【0167】
光スイッチング素子の構造は、透過型でもよいし光導波路型でもよい。
透過型の素子は、例えば、ガラスからなる透明基板上にポリシラン薄膜を形成し、その一部を選択的に露光し、フォトクロミック材料の溶液を含浸させることにより製造することができる。フォトクロミック材料を含有するポリシロキサンからなる光スイッチング部の膜面に垂直にモニター光を入射し、透過する光を検出する。このとき、光スイッチング部の膜面に垂直に制御光を照射することにより、フォトクロミック材料の吸収スペクトルを変化させ、モニター光をスイッチングする。
光導波路型の素子は、反射面を有する基板(ガラスなどの透明基板上に金属反射層を形成したもの、又は金属基板)上にポリシランの薄膜を形成し、所定の光導路波パターンが形成されるように選択的に露光し、フォトクロミック材料の溶液を含浸させることにより製造することができる。フォトクロミック材料の溶液を含有するポリシロキサンからなる光スイッチング部(光導波路)の一端から膜面に沿って光を入射し、他端から出射する光を検出する。このとき、光スイッチング部(光導波路)の所定位置で膜面に垂直に制御光を照射することにより、フォトクロミック材料の吸収スペクトルを変化させ、モニター光をスイッチングする。
【0168】
フォトクロミック材料としては、例えば、スピロピラン誘導体、キサンテン、オキサジン、フルギド、ジヒドロピレン、チオインジゴ、ビピリジン、アジリディン、芳香族多環化合物、アゾベンゼン、サリチリデンアニリン、シクロファン化合物、スピロオキサジン化合物、ジアリールエテン化合物、カルコン化合物などが挙げられる。
フォトクロミック材料を溶解させる溶剤としては特に制限されるものではないが、例えば、四塩化炭素、クロロホルム、ジクロロメタン、ジクロロエタン、クロロブタン、ブロモブタン、クロロペンタン、ブロモペンタン、クロロヘキサン、ブロモヘキサン、クロロシクロヘキサン、ブロモシクロヘキサンなどのハロゲン系溶剤などが挙げられる。
【0169】
本実施の形態における印刷版の光スイッチング素子のポリシラン薄膜を形成するポリシラン溶液に含有される溶剤に対する耐溶剤性は、溶剤浸漬膨潤テストにて評価することができる。前記溶剤への浸漬前後における印刷原版の質量変化率が10質量%以下であることが好ましく、5質量%以下であることがより好ましい。
溶剤浸漬膨潤テストは、テストサンプルを室温において24時間、溶剤に浸漬して実施される。浸漬前後で印刷原版の質量変化率が10質量%以下であれば、印刷版の寸法変化が小さく、微細なパターンの印刷及びポリシラン薄膜の均一塗布が可能となる。また、質量変化率が10質量%以下であれば、印刷版の寸法安定性を確保でき、印刷版の耐久性も良好となるので、繰り返しの印刷工程に耐えることができる。
【0170】
レーザー彫刻により印刷原版表面に印刷パターンを形成する場合には、形成されるパターンの深さは、1μm以上1,000μm以下であることが好ましい。より好ましくは5μm以上700μm以下であり、さらに好ましくは20μm以上500μm以下である。印刷パターンの深さが1μm以上あれば、印刷版から転写される光スイッチング素子のポリシラン薄膜を形成するポリシラン溶液を被印刷基板上に保持することができ、1,000μm以下であれば印刷パターンが印刷工程中に変形したり、破壊されたりすることがないため好ましい。
【0171】
本実施の形態の光スイッチング素子のポリシラン薄膜の製造方法は、印刷版上の光スイッチング素子のポリシラン薄膜を形成するポリシラン溶液を被印刷基板上に転写し、転写された前記ポリシラン溶液中の溶剤を乾燥除去して被印刷基板上に前記ポリシラン溶液を固定化することを含む、光スイッチング素子のポリシラン薄膜を製造する方法であって、
前記プレポリマーから製造されるポリマー(a)を含有する感光性樹脂組成物を硬化して得られる印刷版を用いて光スイッチング素子のポリシラン薄膜を形成するポリシラン溶液を被印刷基板上に転写する、上記方法である。
【0172】
本実施の形態の製造方法においてフレキソ印刷方式を用いる場合、フレキソ印刷版上の光スイッチング素子のポリシラン薄膜を形成するポリシラン溶液を被印刷基板上に転写する方法としては、特に制限はされないが、凹凸のあるフレキソ印刷版の凸部の表面に、溶液供給ロールなどで前記ポリシラン溶液を供給し、次に、フレキソ印刷版を被印刷基板に接触させて、凸部表面の前記ポリシラン溶液を被印刷基板に転移させて行う方法などが挙げられる。
【0173】
本実施の形態の製造方法における、被印刷基板上に前記ポリシラン溶液を固定化する方法は、前記方法により転写された前記ポリシラン溶液中の溶剤を乾燥除去して、被印刷基板上に光スイッチング素子のポリシラン薄膜を形成するポリシラン溶液を固定化する方法である。
前記ポリシラン溶液中の溶剤を乾燥除去して、前記インクを固定化させる方法としては、例えば、窒素ガスなどの不活性ガスの存在下で熱処理することにより、前記溶剤を蒸気化して乾燥する方法などが挙げられる。
【0174】
本実施の形態における有機発光インクとして、特に制限されるものではないが、有機発光材料とバインダー成分、溶剤よりなるものを用いることができる。印刷品位、生産性、チキソトロピー性などの向上のために、必要に応じて各種添加剤を添加して用いてもよい。
有機発光材料としては、高分子型の有機発光材料が用いられ、例えば、クマリン系、ペリレン系、ピラン系、アンスロン系、ポリフィレン系、キナクリドン系、N、N’−ジアルキル置換キナクリドン系、ナフタルイミド系、N,N’−ジアリール置換ピロロピロール系、イリジウム錯体系などの発光性色素をポリスチレン、ポリメチルメタクリレート、ポリビニルカルバゾールなどの高分子中に分散させたものや、ポリアリーレン系、ポリアリーレンビニリレン系やポリフルオレンといった高分子系材料などが挙げられる。
有機発光インクが紫外線硬化型である場合、バインダー樹脂成分としては、ラジカル重合性の化合物に、紫外線照射により活性カチオン種を発生しうるカチオン重合開始剤を配合したものが、好適に用いられる。
【0175】
また、有機発光インク中の溶剤としては、前述した高分子系材料を溶解させることができるものであれば特に制限されるものではないが、トルエン、キシレン、アニソールなどの芳香族系溶剤、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン系溶剤などが挙げられ、これらの溶剤を単独で用いてもよく、これらの混合溶媒を用いてもよい。中でも、トルエン、キシレン、アニソールといった芳香族系溶剤が有機発光材料の溶解性の面から好ましい。
有機発光インク中の溶剤は、ポリマー成分の溶解性や印刷工程中での乾燥性などにより決定される。芳香族系溶剤の中から選ばれる少なくとも1種類の溶剤成分を、溶剤全体量の20質量%以上100質量%以下含有していることが好ましい。前記溶剤成分の含有量が質量%以上100質量%以下であれば、有機発光インク用途で用いられる有機発光材料を十分に溶解又は分散することができる。
【0176】
照明、表示装置、表示装置用バックライト、インテリア、エクステリア、面発光光源用有機発光層の膜厚は特に制限はされないが、具体的には、1nm〜10μmの範囲の膜厚とすることが好ましい。該有機発光層の膜厚を10μm以下とすることが、生産性の観点から好ましい。また、該有機発光層の膜厚を1nm以上とすることが、総合的性能の観点から好ましい。該有機発光層の膜厚としては、総合的性能の観点から、5nm〜5μmの範囲内であることがより好ましい、10nm〜1μmの範囲内であることがさらに好ましい。
【0177】
本実施の形態における印刷版の有機発光インクに含有される溶剤に対する耐溶剤性は、溶剤浸漬膨潤テストにて評価することができる。前記溶剤への浸漬前後における印刷原版の質量変化率が10質量%以下であることが好ましく、5質量%以下であることがより好ましい。
溶剤浸漬膨潤テストは、テストサンプルを室温において24時間、溶剤に浸漬して実施される。浸漬前後で印刷原版の質量変化率が10質量%以下であれば、印刷版の寸法変化が小さく、微細なパターンの印刷及び有機発光インクの均一塗布が可能となる。また、質量変化率が10質量%以下であれば、印刷版の寸法安定性を確保でき、印刷版の耐久性も良好となるので、繰り返しの印刷工程に耐えることができる。
【0178】
レーザー彫刻により印刷原版表面に印刷パターンを形成する場合には、形成されるパターンの深さは、1μm以上1,000μm以下であることが好ましい。より好ましくは5μm以上700μm以下であり、さらに好ましくは20μm以上500μm以下である。印刷パターンの深さが1μm以上あれば、印刷版から転写されるバンク形成用組成物や有機発光インクを被印刷基板上に保持することができ、1,000μm以下であれば印刷パターンが印刷工程中に変形したり、破壊されたりすることがないため好ましい。
本実施の形態の照明、表示装置、表示装置用バックライト、インテリア、エクステリア、面発光光源用有機発光層の製造方法は、印刷版上の有機発光インクを被印刷基板上に転写し、転写された有機発光インク中の溶剤を乾燥除去して、又は転写された有機発光インクに光を照射して硬化させて、被印刷基板上に有機発光インクを固定化することを含む照明、表示装置、表示装置用バックライト、インテリア、エクステリア、面発光光源用有機発光層を製造する方法であって、
前記プレポリマーから製造されるポリマー(a)を含有する感光性樹脂組成物を硬化して得られる印刷版を用いて有機発光インクを被印刷基板上に転写する、上記方法である。
【0179】
本実施の形態の製造方法における、印刷版上の有機発光インクを被印刷基板上に転写する方法としては、特に制限はされないが、例えば、凹凸のある印刷版の凸部の表面に、溶液供給ロールなどで有機発光インクを供給し、次に、印刷版を被印刷基板に接触させて、凸部表面の有機発光インクを被印刷基板に転移させて行う方法などが挙げられる。
【0180】
本実施の形態の製造方法における、被印刷基板上に有機発光インクを固定化する方法の第1の態様は、前記方法により転写された有機発光インク中の溶剤を乾燥除去して、被印刷基板上に有機発光インクを固定化する方法である。
有機発光インク中の溶剤を乾燥除去して、有機発光インクを固定化させる方法としては、例えば、窒素ガスなどの不活性ガスの存在下で熱処理することにより、前記溶剤を蒸気化して乾燥する方法などが挙げられる。
【0181】
本実施の形態の製造方法における、有機発光インクを固定化する方法の第2の態様は、前記方法により転写された有機発光インクに光を照射して硬化させて、被印刷基板上に有機発光インクを固定化する方法である。
有機発光インクに光を照射して硬化させて固定化させる方法としては、例えば、有機発光インクに配合した(メタ)アクリル酸誘導体などの光重合性モノマーを光で硬化させる方法や有機発光インクに配合したラジカル重合性の化合物に、紫外線照射して硬化させる方法などが挙げられる。
【実施例】
【0182】
本実施の形態をさらに詳細に説明するために、以下に、実施例及び比較例を示すが、これらの実施例は本実施の形態の説明及びそれによって得られる効果などを具体的に示すものであって、本実施の形態を何ら制限するものではない。なお、以下の実施例及び比較例における諸特性は、下記の方法に従って測定した。
【0183】
<測定方法>
1.印刷原版の質量変化率
印刷原版を1cm×2cmに切り、常温の各溶剤中に24hr浸漬させ、下記計算式(iii)を用いて質量変化率を求めた。
質量変化率(%)={(浸漬後の質量−浸漬前の質量)/浸漬前の質量}×100
(iii)
【0184】
2.印刷原版のレーザー彫刻性
炭酸ガスレーザー彫刻機(出力12ワット、商標Laser Pro Venus、GCC社製)を用いて印刷原版のレーザー彫刻を行った。彫刻は、200μm幅の凸線による線画を含むパターンを作成して実施した。彫刻深さ(レリーフ深度)は400μmとした。レーザー彫刻による粘稠性液状カス発生の有無及び線画の鮮明性を目視判定した。
【0185】
〔合成例1〕
プレポリマーとして、ポリ(オキシエチレンオキシプロパンジオイル)(poly(oxyethyleneoxypropanedioyl))を公知の方法で合成した。繰り返し単位の溶解度パラメーター(Fedorの推算法による)と数平均分子量(Mn)を表1に示す。
撹拌機を備えた300mlのセパラブルフラスコに、このプレポリマー74.8g、トリレンジイソシアナート4.63g、2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール0.07g、アジピン酸0.01g、及びジ−n−ブチルスズジラウレート0.001gを加えて、乾燥空気雰囲気で、80℃で3時間撹拌した。その後、2−メタクリロイルオキシエチルイソシアナート2.77g、及びジ−n−ブチルスズジラウレート0.001gを加えて、乾燥空気雰囲気で、80℃で2時間撹拌した。この段階で、プレポリマーの末端活性水素基が共有結合により連結され、かつ二重結合を有するポリマーが得られたことを、赤外分光分析により確認した。
その後、ヒドロキシエチルメタクリレート10.74g、トリメチロールプロパントリメタクリレート5.96g、シリカゲルC−1504(富士シリシア化学株式会社)5.55g、シリコーンオイルKF−410(信越化学工業株式会社)1.21g、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン0.72g、ベンゾフェノン1.21g、2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール0.72g、リン酸トリフェニル2.17g、及びサノールLS−785(三共株式会社)1.21gを加えて80℃で撹拌しながら、13kPaに減圧して脱泡し、室温で粘稠な液体状の感光性樹脂組成物を得た。
〔合成例2〕
プレポリマーとして、ポリ(オキシオキサリルオキシエチレン)(poly(oxyoxalyloxyethylene))を公知の方法で合成した。繰り返し単位の溶解度パラメーター(Fedorの推算法による)と数平均分子量(Mn)を表1に示す。
撹拌機を備えた300mlのセパラブルフラスコに、このプレポリマー78.7g、トリレンジイソシアナート4.63g、2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール0.07g、アジピン酸0.01g、及びジ−n−ブチルスズジラウレート0.001gを加えて、乾燥空気雰囲気で、80℃で3時間撹拌した。その後、2−メタクリロイルオキシエチルイソシアナート2.77g、及びジ−n−ブチルスズジラウレート0.001gを加えて、乾燥空気雰囲気で、80℃で2時間撹拌した。この段階で、プレポリマーの末端活性水素基が共有結合により連結され、かつ二重結合を有するポリマーが得られたことを、赤外分光分析により確認した。
その後、ヒドロキシエチルメタクリレート10.74g、トリメチロールプロパントリメタクリレート5.96g、シリカゲルC−1504(富士シリシア化学株式会社)5.55g、シリコーンオイルKF−410(信越化学工業株式会社)1.21g、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン0.72g、ベンゾフェノン1.21g、2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール0.72g、リン酸トリフェニル2.17g、及びサノールLS−785(三共株式会社)1.21gを加えて80℃で撹拌しながら、13kPaに減圧して脱泡し、室温で粘稠な液体状の感光性樹脂組成物を得た。
〔合成例3〕
プレポリマーとして、ポリ(オキシエチレンオキシエチレンオキシマロニル)(poly(oxyethyleneoxyethyleneoxymalonyl))を公知の方法で合成した。繰り返し単位の溶解度パラメーター(Fedorの推算法による)と数平均分子量(Mn)を表1に示す。
撹拌機を備えた300mlのセパラブルフラスコに、このプレポリマー73.4g、トリレンジイソシアナート4.63g、2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール0.07g、アジピン酸0.01g、及びジ−n−ブチルスズジラウレート0.001gを加えて、乾燥空気雰囲気で、80℃で3時間撹拌した。その後、2−メタクリロイルオキシエチルイソシアナート2.77g、及びジ−n−ブチルスズジラウレート0.001gを加えて、乾燥空気雰囲気で、80℃で2時間撹拌した。この段階で、プレポリマーの末端活性水素基が共有結合により連結され、かつ二重結合を有するポリマーが得られたことを、赤外分光分析により確認した。
その後、ヒドロキシエチルメタクリレート10.74g、トリメチロールプロパントリメタクリレート5.96g、シリカゲルC−1504(富士シリシア化学株式会社)5.55g、シリコーンオイルKF−410(信越化学工業株式会社)1.21g、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン0.72g、ベンゾフェノン1.21g、2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール0.72g、リン酸トリフェニル2.17g、及びサノールLS−785(三共株式会社)1.21gを加えて80℃で撹拌しながら、13kPaに減圧して脱泡し、室温で粘稠な液体状の感光性樹脂組成物を得た。
〔合成例4〕
トリレンジイソシアナートの代わりにヘキサメチレンジイソシアナートを用いた以外は、合成例3と同様にして感光性樹脂組成物を合成した。
〔合成例5〕
プレポリマーとして、ポリ(オキシエチレンオキシブタ−2−エンジオイル)(poly(oxyethyleneoxybut−2−enedioyl))を公知の方法で合成した。繰り返し単位の溶解度パラメーター(Fedorの推算法による)と数平均分子量(Mn)を表1に示す。
撹拌機を備えた300mlのセパラブルフラスコに、このプレポリマー78.2g、トリレンジイソシアナート4.63g、2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール0.07g、アジピン酸0.01g、及びジ−n−ブチルスズジラウレート0.001gを加えて、乾燥空気雰囲気で、80℃で3時間撹拌した。その後、2−メタクリロイルオキシエチルイソシアナート2.77g、及びジ−n−ブチルスズジラウレート0.001gを加えて、乾燥空気雰囲気で、80℃で2時間撹拌した。この段階で、プレポリマーの末端活性水素基が共有結合により連結され、かつ二重結合を有するポリマーが得られたことを、赤外分光分析により確認した。
その後、ヒドロキシエチルメタクリレート10.74g、トリメチロールプロパントリメタクリレート5.96g、シリカゲルC−1504(富士シリシア化学株式会社)5.55g、シリコーンオイルKF−410(信越化学工業株式会社)1.21g、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン0.72g、ベンゾフェノン1.21g、2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール0.72g、リン酸トリフェニル2.17g、及びサノールLS−785(三共株式会社)1.21gを加えて80℃で撹拌しながら、13kPaに減圧して脱泡し、室温で粘稠な液体状の感光性樹脂組成物を得た。
〔比較合成例1〕
poly(oxyethyleneoxypropanedioyl)の代わりに、公知の方法で合成したポリ(オキシブタン−1,4−ジイルオキシヘキサトリアコンタンジオイル)(poly(oxybutane−1,4−diyloxyhexatriacontanedioyl))(Mn:2210)78.0gを用いた以外は合成例1と同様にして感光性樹脂組成物を得た。
〔比較合成例2〕
poly(oxyethyleneoxypropanedioyl)の代わりにポリ(テトラメチレンオキシド)(poly(tetramethylene oxide))(Mn:2010、和光純薬工業(株)製)71.0gを用いた以外は合成例1と同様にして感光性樹脂組成物を得た。
〔比較合成例3〕
poly(oxyethyleneoxypropanedioyl)の代わりにポリプロピレングリコール(polypropylene glycol)(Mn:2000、和光純薬工業(株)製)70.6gを用いた以外は合成例1と同様にして感光性樹脂組成物を得た。
【0186】
〔実施例1〜5、比較例1〜3〕
合成例1〜5、比較合成例1〜3で得られた感光性樹脂組成物の各々を用いて、下記の方法で印刷原版を作製した。なお、合成例1〜5の感光性樹脂組成物を用いて実施例1〜5を、比較合成例1〜3の感光性樹脂組成物を用いて比較例1〜3を、それぞれ実施した。
12×11×0.3cmのガラス板にジエチレングリコールを薄く塗布した後、PETフィルムを乗せ、ヘラでこすり密着させた。そのフィルム上に両面シールにより固定させたスポンジ枠で作成した1辺10cmの四角枠と、その枠外の四隅に厚さ3mmのアルミスペーサーを置いた。この作成した治具を約90℃のホットプレート上に置いた。
治具の枠内に前記各樹脂組成物を注いだ後、ジエチレングリコールを塗布しPETフィルムを乗せたガラス板を、PETフィルム面が樹脂組成物に接触するようにかぶせた。その後に上下のガラス板をクリップで挟み固定した。
この治具について高圧水銀灯(HC−98、センエンジニアリング株式会社)を用いて、500mJ/cm(照度33.7mW/cm、時間14.8秒)露光した後、治具面を逆にし、更に500mJ/cm露光した。これを両面もう一度ずつ行い、トータルで2000mJ/cm露光して印刷原版を作成した。
【0187】
各実施例及び比較例の印刷原版について、レーザー彫刻性、各溶剤に対する質量変化率を測定した結果を表1に示す。
【0188】
【表1】

【0189】
実施例の印刷原版は、溶解度パラメーターが20J1/2/cm3/2未満の各種溶剤に対する質量変化率が、繰り返し単位の溶解度パラメーターが20J1/2/cm3/2未満である比較例の印刷原版に比して低く、当該溶剤に対する耐溶剤性に優れるものであった。
さらに、印刷原版を製造する際に、ポリイソシアナート化合物として芳香族ジイソシアナートを用いた場合、脂肪族ジイソシアナートを用いた場合に比べ、耐溶剤性やレーザー彫刻性に関し、より良好な性能を有する印刷原版が得られた。
【0190】
[導電性層の製造方法について]
〔実施例6〜9〕
(導電性層の印刷評価)
合成例1〜3及び5で得られた感光性樹脂組成物を用いて実施例1〜3及び5とそれぞれ同様にして印刷原版を作成した。当該印刷原版のレーザー彫刻性を表2に示す。当該印刷原版にレーザー彫刻によりパターンを描画した印刷版を用いて、導電性インクの印刷評価を実施した。印刷にはフレキソ用印刷適性テスター(アイジーティ・テスティングシステムズ社製IGT−F1)を用い、版胴上に前記印刷版を、両面テープを用いて貼り付けた。表面が易接着性処理されたポリエチレンテレフタレート(厚み100μm)の易接着処理面に、銀の微粒子(平均粒子径7nm)を分散させた導電性インクとして、銀ナノペースト(商標)(ハリマ化成社製)100質量部にキシレン30質量部を添加して作製した導電性インクを使用して、焼成後のインクの膜厚が、1μmとなるように印刷、乾燥、焼成を行った。結果を表2に示す。
(質量変化率の測定)
前記印刷原版から作製した試験サンプルを、前記導電性インクで用いたキシレン中に、20℃、24時間浸漬後、表面に付着した液滴をふき取り、質量増加量を測定することにより、前記質量変化率測定法により質量変化率を求めた。結果を表2に示す。
【0191】
〔比較例4〜6〕
(導電性層の印刷評価)
比較合成例1〜3で得られた感光性樹脂組成物を用いて比較例1〜3とそれぞれ同様にして印刷原版を作成した。当該印刷原版のレーザー彫刻性を表2に示す。当該印刷原版にレーザー彫刻によりパターンを描画した印刷版を用いて、実施例6〜9と同様にして印刷、乾燥、焼成を行った。結果を表2に示す。
(質量変化率の測定)
前記印刷原版から作製した試験サンプルを、前記導電性インクで用いたキシレン中に、20℃、24時間浸漬後、表面に付着した液滴をふき取り、質量増加量を測定することにより、前記質量変化率測定法により質量変化率を求めた。結果を表2に示す。
【表2】

【0192】
表2の結果から、繰り返し単位の溶解度パラメーターが20J1/2/cm3/2未満である比較例4〜6では、溶解度パラメーターが20J1/2/cm3/2未満の溶剤に対する質量変化率が高く、導電性層の精度が劣ることが判明した。
また、実施例の印刷版を用いると、溶剤膨潤による印刷版の厚み変動を減少させることができるので、被印刷物である導電性層の厚み変動を縮小させることができる。実施例の印刷版により導電回路性能と直結する導電性層の厚みを高精度で制御することが可能である。
【0193】
[有機発光層の製造方法について]
〔実施例10〜13〕
(有機発光層の印刷評価)
合成例1〜3及び5で得られた感光性樹脂組成物を用いて実施例1〜3及び5とそれぞれ同様にして印刷原版を作成した。当該印刷原版のレーザー彫刻性を表3に示す。当該印刷原版にレーザー彫刻によりパターンを描画した印刷版を用いて、有機発光層の印刷評価を実施した。印刷にはフレキソ用印刷適性テスター(アイジーティ・テスティングシステムズ社製IGT−F1)を用い、版胴上に前記印刷版を、両面テープを用いて貼り付けた。被印刷体としては、厚さ0.7mmのガラス基板(ソーダライムガラス)の表面に、真空蒸着法によって厚さ0.1μmのITO膜(陽極)を形成後、UV−オゾン洗浄を施し、有機物などの付着物を除去した後、当該機材のITO膜側の表面にスピンコート法により正孔輸送材料として、ポリエチレンジオキシチオフェンを含有するコーティング液(ポリエチレンジオキシチオフェン−ポリスチレンスルフォネート(PEDT/PSS)、バイエル社製、商品名「Baytron P」)を塗布し、70〜80℃で乾燥させることにより正孔輸送層を作製した。有機高分子発光体にはポリ(9,9−ジアルキルフルオレン(PDAF)を用い、固形分濃度が2質量%となるように溶剤(キシレン)で中に溶解させて、発光層形成用のインク(有機発光インク)として使用し、印刷を行った。結果を表3に示す。
(質量変化率の測定)
前記印刷原版から作製した試験サンプルを、前記有機発光インクで用いたキシレン中に、20℃、24時間浸漬後、表面に付着した液滴をふき取り、質量増加量を測定することにより、前記質量変化率測定法により質量変化率を求めた。結果を表3に示す。
〔比較例7〜9〕
(有機発光層の印刷評価)
比較合成例1〜3で得られた感光性樹脂組成物を用いて比較例1〜3とそれぞれ同様にして印刷原版を作成した。当該印刷原版のレーザー彫刻性を表3に示す。当該印刷原版にレーザー彫刻によりパターンを描画した印刷版を用いて、実施例10〜13と同様にして印刷、乾燥、焼成を行った。結果を表3に示す。
(質量変化率の測定)
前記印刷原版から作製した試験サンプルを、前記有機発光インクで用いたキシレン中に、20℃、24時間浸漬後、表面に付着した液滴をふき取り、質量増加量を測定することにより、前記質量変化率測定法により質量変化率を求めた。その結果を表3に示す。
【表3】

【0194】
表3の結果から、繰り返し単位の溶解度パラメーターが20J1/2/cm3/2未満である比較例7〜9では、溶解度パラメーターが20J1/2/cm3/2未満の溶剤に対する質量変化率が高く、有機発光層の精度が劣ることが判明した。
また、実施例の印刷版を用いると、溶剤膨潤による印刷版の厚み変動を減少させることができるので、被印刷物である有機発光層の厚み変動を縮小させることができる。実施例の印刷版により有機EL素子性能と直結する有機発光層の厚みを高精度で制御することが可能である。
【0195】
[有機薄膜太陽電池用光電変換層の製造方法について]
〔実施例14〜17〕
(有機薄膜太陽電池用光電変換層の印刷評価)
正孔輸送層形成材料として分子量57,000の立体規性ポリ−3−ドデシルチオフェン(立体規則性90%)と、電子輸送層形成材料としてフラーレン誘導体(PCBM:[6,6]−フェニル−C61ブチリックアシッドメチルエステル)を1:1の質量比となるように秤量し、これに脱水キシレンを添加し、2.5質量%となるように有機薄膜太陽電池用光電変換層用インクを作製した。
合成例1〜3及び5で得られた感光性樹脂組成物を用いて実施例1〜3及び5とそれぞれ同様にして印刷原版を作成した。当該印刷原版のレーザー彫刻性を表4に示す。当該印刷原版にレーザー彫刻によりパターンを描画した印刷版を用いて、前記インクの印刷評価を実施した。印刷にはフレキソ用印刷適性テスター(アイジーティ・テスティングシステムズ社製IGT−F1)を用い、版胴上に前記印刷版を、両面テープを用いて貼り付けた。被印刷体としては、厚さ1.0mmの無アルカリガラス基板を用いた。前記インクを印刷した後、窒素雰囲気下、120℃で10分間乾燥を行い、有機薄膜太陽電池用光電変換層を形成した。結果を表4に示す。
(質量変化率の測定)
前記印刷原版から作製した試験サンプルを、キシレン中に、20℃、24時間浸漬後、表面に付着した液滴をふき取り、浸漬前後の質量増加量を測定することにより、質量変化率を求めた。結果を表4に示す。
【0196】
〔比較例10〜12〕
(有機薄膜太陽電池用光電変換層の印刷評価)
比較合成例1〜3で得られた感光性樹脂組成物を用いて比較例1〜3とそれぞれ同様にして印刷原版を作成した。当該印刷原版のレーザー彫刻性を表4に示す。当該印刷原版にレーザー彫刻によりパターンを描画した印刷版を用い、実施例14〜17と同様にして印刷、乾燥を行った。結果を表4に示す。
(質量変化率の測定)
前記印刷原版から作製した試験サンプルを、キシレン中に、20℃、24時間浸漬後、表面に付着した液滴をふき取り、浸漬前後の質量増加量を測定することにより、質量変化率を求めた。結果を表4に示す。
【表4】

【0197】
表4の結果から、繰り返し単位の溶解度パラメーターが20J1/2/cm3/2未満である比較例10〜12では、溶解度パラメーターが20J1/2/cm3/2未満の溶剤に対する質量変化率が高く、有機薄膜太陽電池用光電変換層の精度が劣ることが判明した。
また、実施例の印刷版を用いると、溶剤膨潤による印刷版の厚み変動を減少させることができるので、被印刷物である光電変換層の厚み変動を縮小させることができる。実施例の印刷版により太陽電池性能と直結する有機薄膜太陽電池用光電変換層の厚みを高精度で制御することが可能である。
【0198】
[薄膜半導体パターン層の製造方法について]
〔実施例18〜21〕
(薄膜半導体パターン層の印刷評価)
ポリ(3−ヘキシルチオフェン)を1.0質量%の濃度で脱水キシレンに溶解し、薄膜半導体パターン形成用インクを作製した。
合成例1〜3及び5で得られた感光性樹脂組成物を用いて実施例1〜3及び5とそれぞれ同様にして印刷原版を作成した。当該印刷原版のレーザー彫刻性を表5に示す。当該印刷原版にレーザー彫刻によりパターンを描画した印刷版を用いて、前記インクの印刷評価を実施した。印刷にはフレキソ用印刷適性テスター(アイジーティ・テスティングシステムズ社製IGT−F1)を用い、版胴上に前記印刷版を、両面テープを用いて貼り付けた。被印刷基板としては、厚さ1.0mmの無アルカリガラス基板を用いた。前記インクを印刷した後、140℃で20分間乾燥して、薄膜半導体パターン層を製造した。結果を表5に示す。
(質量変化率の測定)
前記印刷原版から作製した試験サンプルを、キシレン中に、20℃、24時間浸漬後、表面に付着した液滴をふき取り、質量増加量を測定することにより、質量変化率を求めた。結果を表5に示す。
〔比較例13〜15〕
(薄膜半導体パターン層の印刷評価)
比較合成例1〜3で得られた感光性樹脂組成物を用いて比較例1〜3とそれぞれ同様にして印刷原版を作成した。当該印刷原版のレーザー彫刻性を表5に示す。当該印刷原版にレーザー彫刻によりパターンを描画した印刷版を用い、実施例18〜21と同様にして印刷、乾燥を行った。結果を表5に示す。
(質量変化率の測定)
前記印刷原版から作製した試験サンプルを、キシレン中に、20℃、24時間浸漬後、表面に付着した液滴をふき取り、質量増加量を測定することにより、質量変化率を求めた。結果を表5に示す。
【0199】
【表5】

【0200】
表5の結果から、繰り返し単位の溶解度パラメーターが20J1/2/cm3/2未満である比較例13〜15では、溶解度パラメーターが20J1/2/cm3/2未満の溶剤に対する質量変化率が高く、薄膜半導体パターン層の精度が劣ることが判明した。
また、実施例の印刷版を用いると、溶剤膨潤による印刷版の厚み変動を減少させることができるので、被印刷物である薄膜半導体パターン層の厚み変動を縮小させることができる。実施例の印刷版によりトランジスタ性能と直結する薄膜半導体パターン層の厚みを高精度で制御することが可能である。
【0201】
[電子写真感光体の感光層の製造方法について]
〔実施例22〜25〕
(電子写真感光体の感光層の印刷評価)
ポリ(2,5−ジオクチルオキシ−p−フェニレンビニレン)とフラーレンC60の混合物を、0.5質量%の濃度で脱水キシレンに分散させ、感光層形成用インクを作製した。なお、置換ポリ(p−フェニレンビニレン)の繰り返し単位に対するフラーレンC60の混合割合は、5mol%とした。
合成例1〜3及び5で得られた感光性樹脂組成物を用いて実施例1〜3及び5とそれぞれ同様にして印刷原版を作成した。当該印刷原版のレーザー彫刻性を表6に示す。当該印刷原版にレーザー彫刻によりパターンを描画した印刷版を用いて、前記インクの印刷評価を実施した。印刷にはフレキソ用印刷適性テスター(アイジーティ・テスティングシステムズ社製IGT−F1)を用い、版胴上に前記印刷版を、両面テープを用いて貼り付けた。被印刷基板としては、厚さ0.7mmのガラス基板(ソーダーライムガラス)の表面に、真空蒸着法によって厚さ0.1μmのITO膜を形成後、UV−オゾン洗浄を施し、有機物などの付着物を除去したものを用いた。該ITO薄膜電極を有するガラス板上に、前記感光層形成用インクを印刷した後、窒素雰囲気下、120℃で10分間乾燥して、電子写真感光体の感光層を製造した。結果を表6に示す。
(質量変化率の測定)
前記印刷原版から作製した試験サンプルを、キシレン中に、20℃、24時間浸漬後、表面に付着した液滴をふき取り、質量増加量を測定することにより、質量変化率を求めた。結果を表6に示す。
〔比較例16〜18〕
(電子写真感光体の感光層の印刷評価)
比較合成例1〜3で得られた感光性樹脂組成物を用いて比較例1〜3とそれぞれ同様にして印刷原版を作成した。当該印刷原版のレーザー彫刻性を表6に示す。当該印刷原版にレーザー彫刻によりパターンを描画した印刷版を用い、実施例22〜25と同様にして印刷、乾燥を行った。結果を表6に示す。
(質量変化率の測定)
前記印刷原版から作製した試験サンプルを、キシレン及びメチルエチルケトン中に、20℃、24時間浸漬後、表面に付着した液滴をふき取り、質量増加量を測定することにより、質量変化率を求めた。結果を表6に示す。
【表6】

表6の結果から、繰り返し単位の溶解度パラメーターが20J1/2/cm3/2未満である比較例16〜18では、溶解度パラメーターが20J1/2/cm3/2未満の溶剤に対する質量変化率が高く、感光層の精度が劣ることが判明した。
また、実施例の印刷版を用いると、溶剤膨潤による印刷版の厚み変動を減少させることができるので、被印刷物である電子写真感光体の感光層の厚み変動を縮小させることができる。実施例の印刷版により電子写真感光体性能と直結する電子写真感光体の感光層の厚みを高精度で制御することが可能である。
【0202】
[光センサー用光起電力素子を構成する電子受容性有機物層及び/又は電子供与性有機物層の製造方法について]
〔実施例26〜29〕
(電子供与性有機物層の印刷評価)
数平均分子量17,000の下記式(3)で表される重合体を0.5質量%の濃度で脱水キシレンに溶解し、電子供与性有機物層用インクを作製した。
【化6】

合成例1〜3及び5で得られた感光性樹脂組成物を用いて実施例1〜3及び5とそれぞれ同様にして印刷原版を作成した。当該印刷原版のレーザー彫刻性を表7に示す。当該印刷原版にレーザー彫刻によりパターンを描画した印刷版を用いて、前記インクの印刷評価を実施した。印刷にはフレキソ用印刷適性テスター(アイジーティ・テスティングシステムズ社製IGT−F1)を用い、版胴上に前記印刷版を、両面テープを用いて貼り付けた。被印刷基板としては、厚さ1.0mmの無アルカリガラス基板を用いた。前記インクを印刷した後、窒素雰囲気下、120℃で10分間乾燥して、電子供与性有機物層を製造した。結果を表7に示す。
(質量変化率の測定)
前記印刷原版から作製した試験サンプルを、キシレン中に、20℃、24時間浸漬後、表面に付着した液滴をふき取り、質量増加量を測定することにより、質量変化率を求めた。結果を表7に示す。
〔比較例19〜21〕
(電子供与性有機物層の印刷評価)
比較合成例1〜3で得られた感光性樹脂組成物を用いて比較例1〜3とそれぞれ同様にして印刷原版を作成した。当該印刷原版のレーザー彫刻性を表7に示す。当該印刷原版にレーザー彫刻によりパターンを描画した印刷版を用い、実施例26〜29と同様にして印刷、乾燥を行った。結果を表7に示す。
(質量変化率の測定)
前記印刷原版から作製した試験サンプルを、キシレン及びメチルエチルケトン中に、20℃、24時間浸漬後、表面に付着した液滴をふき取り、質量増加量を測定することにより、質量変化率を求めた。結果を表7に示す。
【表7】

表7の結果から、繰り返し単位の溶解度パラメーターが20J1/2/cm3/2未満である比較例19〜21では、溶解度パラメーターが20J1/2/cm3/2未満の溶剤に対する質量変化率が高く、電子供与性有機物層の精度が劣ることが判明した。
また、実施例の印刷版を用いると、溶剤膨潤による印刷版の厚み変動を減少させることができるので、被印刷物である光センサー用光起電力素子を構成する電子受容性有機物層及び/又は電子供与性有機物層の厚み変動を縮小させることができる。実施例の印刷版により光起電力素子性能と直結する光センサー用光起電力素子を構成する電子受容性有機物層及び/又は電子供与性有機物層の厚みを高精度で制御することが可能である。
【0203】
[光スイッチング素子のポリシラン薄膜の製造方法について]
〔実施例30〜33〕
(ポリシラン薄膜の印刷評価)
ポリメチルフェニルシラン(分子量3,000)を脱水キシレンに20質量%の濃度で溶解したポリシラン溶液を調製した。
合成例1〜3及び5で得られた感光性樹脂組成物を用いて実施例1〜3及び5とそれぞれ同様にして印刷原版を作成した。当該印刷原版のレーザー彫刻性を表8に示す。当該印刷原版にレーザー彫刻によりパターンを描画した印刷版を用いて、前記溶液の印刷評価を実施した。印刷にはフレキソ用印刷適性テスター(アイジーティ・テスティングシステムズ社製IGT−F1)を用い、版胴上に前記印刷版を、両面テープを用いて貼り付けた。被印刷基板としては、厚さ0.7mmのガラス基板(ソーダーライムガラス)を用いた。前記溶液を印刷した後、窒素雰囲気下、120℃で10分間乾燥して、ポリシラン薄膜を製造した。結果を表8に示す。
(質量変化率の測定)
前記印刷原版から作製した試験サンプルを、キシレン中に、20℃、24時間浸漬後、表面に付着した液滴をふき取り、質量増加量を測定することにより、質量変化率を求めた。結果を表8に示す。
【0204】
〔比較例22〜24〕
(ポリシラン薄膜の印刷評価)
比較合成例1〜3で得られた感光性樹脂組成物を用いて比較例1〜3とそれぞれ同様にして印刷原版を作成した。当該印刷原版のレーザー彫刻性を表8に示す。当該印刷原版にレーザー彫刻によりパターンを描画した印刷版を用い、実施例30〜33と同様にして印刷、乾燥を行った。結果を表8に示す。
(質量変化率の測定)
前記印刷原版から作製した試験サンプルを、キシレン及びメチルエチルケトン中に、20℃、24時間浸漬後、表面に付着した液滴をふき取り、質量増加量を測定することにより、質量変化率を求めた。結果を表11に示す。
【表8】

【0205】
表8の結果から、繰り返し単位の溶解度パラメーターが20J1/2/cm3/2未満である比較例21及び比較例22では、溶解度パラメーターが20J1/2/cm3/2未満の溶剤に対する質量変化率が高く、ポリシラン薄膜の精度が劣ることが判明した。
また、実施例の印刷版を用いると、溶剤膨潤による印刷版の厚み変動を減少させることができるので、被印刷物であるポリシラン薄膜の厚み変動を縮小させることができる。実施例の印刷版により光スイッチング素子性能と直結する光スイッチング素子のポリシラン薄膜の厚みを高精度で制御することが可能である。
【0206】
〔実施例34〕
(照明用有機発光層の印刷評価)
燐光発光性高分子(芳香族アミン(ホール輸送材料)とホウ素系分子(電子輸送材料)とイリジウム錯体(燐光発光色素)の三元系高分子:poly[viTPD−viTMB−viIr(ppy)(acac)])を脱水キシレンに添加し、3.0質量%となるように照明用有機発光インクを作製した。
合成例1〜3及び5で得られた感光性樹脂組成物を用いて実施例1〜3及び5とそれぞれ同様にして印刷原版を作成した。当該印刷原版にレーザー彫刻によりパターンを描画した印刷版を用いて、前記インクの印刷評価を実施した。印刷にはフレキソ用印刷適性テスター(アイジーティ・テスティングシステムズ社製IGT−F1)を用い、版胴上に前記印刷版を、両面テープを用いて貼り付けた。被印刷体としては、ITO付基板に中間層としてバイエル社製「バイトロンP」を予め塗布したものを用いた。前記インクを印刷した後、窒素雰囲気下、100℃で30分間乾燥を行い、照明用有機発光層を形成した。当該発光層の膜厚は90±3nmという高い平滑性を有していた。
(質量変化率の測定)
前記印刷原版から作製した試験サンプルを、キシレン中に、20℃、24時間浸漬後、表面に付着した液滴をふき取り、質量増加量を測定することにより、質量変化率を求めた。質量変化率は0.6質量%であった。
【0207】
〔実施例35〕
(照明用有機発光層の印刷評価)
実施例34と同様にして照明用有機発光インクを作製した。
合成例1〜3及び5で得られた感光性樹脂組成物を用いて実施例1〜3及び5とそれぞれ同様にして印刷原版を作成した。当該印刷原版をブランケットロール(オフセットロール)として用い、グラビアオフセット印刷機(アイジーティ・テスティングシステムズ社製IGT−F1において、版胴をブランケットロールに変更し、アニロックスロールをグラビア版に変更)により、前記発光インクの印刷評価を実施した。被印刷体としては、ITO付基板に中間層としてバイエル社製「バイトロンP」を予め塗布したものを用いた。前記インクを印刷した後、窒素雰囲気下、100℃で30分間乾燥を行い、照明用有機発光層を形成した。当該発光層の膜厚は90±5nmという高い平滑性を有していた。
【0208】
〔実施例36〕
(照明用有機発光層の印刷評価)
実施例34と同様にして照明用有機発光インクを作製した。
実施例34でのレーザー彫刻による印刷版パターン形成の代わりに、フォトリソグラフィー法によりパターン形成した以外は、実施例34と同様にして印刷評価を実施した。すなわち、合成例1で得られた感光性樹脂組成物をガラス板上に均一塗膜し、厚さ3mmの塗膜を形成した。当該塗膜に対し、フォトマスクを介して高圧水銀灯露光し潜像を形成した後、現像することにより、レリーフパターンを有する印刷版を作成した。当該印刷版を用いて、前記インクの印刷評価を実施した。印刷にはフレキソ用印刷適性テスター(アイジーティ・テスティングシステムズ社製IGT−F1)を用い、版胴上に前記印刷版を、両面テープを用いて貼り付けた。被印刷体としては、ITO付基板に中間層としてバイエル社製「バイトロンP」を予め塗布したものを用いた。前記インクを印刷した後、窒素雰囲気下、100℃で30分間乾燥を行い、照明用有機発光層を形成した。当該発光層の膜厚は90±6nmという高い平滑性を有していた。
【0209】
〔比較例25〕
(照明用有機発光層の印刷評価)
比較合成例1で得られた感光性樹脂組成物を用いて比較例1と同様にして印刷原版を作成した。当該印刷原版にレーザー彫刻によりパターンを描画した印刷版を用い、実施例34と同様にして印刷、乾燥、焼成を行った結果、印刷、乾燥を行った結果、乾燥後の有機発光層の膜厚は約90±20nmと極めて不均一であった。
【0210】
(質量変化率の測定)
前記印刷原版から作製した試験サンプルを、キシレン中に、20℃、24時間浸漬後、表面に付着した液滴をふき取り、質量増加量を測定することにより、質量変化率を求めた。質量変化率は、それぞれ39質量%及び78質量%であった。
【0211】
繰り返し単位の溶解度パラメーターが20J1/2/cm3/2未満である比較例25では、溶解度パラメーターが20J1/2/cm3/2未満の溶剤に対する質量変化率が高く、有機発光層の精度が劣ることが判明した。
また、実施例の印刷版を用いると、溶剤膨潤による印刷版の厚み変動を減少させることができるので、被印刷物である有機発光層の厚み変動を縮小させることができる。実施例の印刷版により照明、表示装置、表示装置用バックライト、インテリア、エクステリア、面発光光源性能と直結する有機発光層の厚みを高精度で制御することができる。
【産業上の利用可能性】
【0212】
本発明のプレポリマー、これから製造されるポリマーは、耐溶剤性に優れるので、溶剤にさらされる可能性のある、例えば、衣料品、電子部品などの様々な用途に用いることができ、特に、溶剤含有インクを用いる可能性のある印刷、例えば、フレキソ印刷、活版印刷などの凸版印刷;オフセット印刷などの平版印刷;グラビア印刷などの凹版印刷;スクリーン印刷などの孔版印刷などの各種印刷、のための印刷版や印刷原版を製造することが可能である。
特に、本発明のプレポリマー、これから製造されるポリマー、このポリマーを含む感光性樹脂組成物は、レーザーによる彫刻により画像形成して印刷版を形成するレーザー彫刻用印刷原版の製造に適している。
本発明の導電性層の製造方法により、高精細かつ膜厚均一のパターンを有する導電性層を製造することが可能である。また、該導電性層を含む導電回路を提供することが可能である。特に、該導電回路は、高精度の導電性層を含むことにより、電磁波シールド又はRFIDタグなどに好適に用いることが可能である。
本発明の有機発光層の製造方法により、高精細かつ膜厚均一のパターンを有する有機発光層を製造することが可能である。また、該有機発光層を含む有機EL素子と該有機EL素子を用いた有機ELディスプレイ、照明、表示装置、表示装置用バックライト、インテリア、エクステリア、面発光光源、玩具、化粧品、ノベルティー・グッズなどを提供することが可能である。
本発明の有機薄膜太陽電池用光電変換層の製造方法により、高精度で有機薄膜太陽電池用光電変換層を製造することが可能である。また、該有機薄膜太陽電池用光電変換層を含む有機薄膜太陽電池を提供することが可能である。
本発明の薄膜半導体パターン層の製造方法により、高精度で薄膜半導体パターン層を製造することが可能である。
本発明の電子写真感光体の感光層の製造方法により、高精度で電子写真感光体の感光層を製造することが可能である。また、該感光層を含む電子写真感光体を提供することが可能である。
本発明の光センサー用光起電力素子を構成する電子受容性有機物層及び/又は電子供与性有機物層の製造方法により、高精度で電子受容性有機物層及び/又は電子供与性有機物層を製造することが可能である。また、該電子受容性有機物層及び/又は該電子供与性有機物層を含む光センサー用光起電力素子及び光センサーを提供することが可能である。
本発明の光スイッチング素子のポリシラン薄膜の製造方法により、高精度で光スイッチング素子のポリシラン薄膜を製造することが可能である。また、該ポリシラン薄膜を含む光スイッチング素子を提供することが可能である。
本発明の照明、表示装置、表示装置用バックライト、インテリア、エクステリア、面発光光源用有機発光層の製造方法により、高精度で有機発光層を製造する方法を提供することが可能である。また、該有機発光層を含む照明、表示装置、表示装置用バックライト、インテリア、エクステリア、面発光光源、玩具、化粧品、ノベルティー・グッズなどを提供することが可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
繰り返し単位の溶解度パラメーターが20J1/2/cm3/2以上であり、且つ両末端に活性水素基を有するプレポリマーと、当該プレポリマーの末端活性水素基の当量未満のイソシアナート基当量のポリイソシアナート化合物と、が共有結合により重合して得られるポリマーであって、
該重合しているプレポリマーの残存する末端活性水素基と、イソシアナトアルキルアクリレート及び/又はイソシアナトアルキルメタクリレートと、が共有結合により結合している上記ポリマー。
【請求項2】
前記プレポリマーの数平均分子量が300〜50,000である、請求項1に記載のポリマー。
【請求項3】
前記ポリイソシアナート化合物がジイソシアナート化合物である、請求項1又は2に記載のポリマー。
【請求項4】
前記ポリイソシアナート化合物が芳香族ジイソシアナートである、請求項1〜3のいずれか一項に記載のポリマー。
【請求項5】
下記式(1)で表される、請求項1〜4のいずれか一項に記載のポリマー。
【化1】

(式中、Rは、各々独立して、請求項1記載のプレポリマーから両末端活性水素基を除いた残基を表し、Rは、ジイソシアナート化合物からイソシアナート基を除いた残基を表し、Rは、イソシアナトアルキルアクリレート及び/又はイソシアナトアルキルメタクリレートのアルキル部分を表し、R、Rは、各々独立して、メチル基又は水素原子を表し、Lは、1以上の整数を表す。)
【請求項6】
請求項1記載のプレポリマーと、該プレポリマーの末端活性水素基の当量未満のイソシアナート基当量のポリイソシアナート化合物と、イソシアネートアルキルアクリレート及び/又はイソシアネートアルキルメタクリレートと、を反応させることを含む、請求項1〜5のいずれか一項に記載のポリマーの製造方法。
【請求項7】
溶解度パラメーターが20J1/2/cm3/2以上の繰り返し単位からなる印刷版又は印刷原版製造用プレポリマー。
【請求項8】
数平均分子量が300〜50,000である、請求項7に記載の印刷版又は印刷原版製造用プレポリマー。
【請求項9】
請求項7又は8に記載のプレポリマーと、該プレポリマーの末端水酸基の当量を超えるイソシアナート基当量のポリイソシアナート化合物と、が共有結合により重合して得られる印刷版又は印刷版製造用ポリマーであって、
該重合しているポリイソシアナート化合物の残存するイソシアナート基と、ヒドロキシアルキルアクリレート及び/又はヒドロキシアルキルメタクリレートと、がウレタン結合により結合している上記ポリマー。
【請求項10】
前記ポリイソシアナート化合物がジイソシアナート化合物である、請求項9に記載のポリマー。
【請求項11】
前記ポリイソシアナート化合物が芳香族ジイソシアナートである、請求項9又は10に記載のポリマー。
【請求項12】
下記式(2)で表される請求項9〜11のいずれか一項に記載のポリマー。
【化2】

(式中、Rは、各々独立して、請求項1記載のプレポリマーから両末端活性水素基を除いた残基を表し、Rは、ジイソシアナート化合物からイソシアナート基を除いた残基を表し、Rは、ヒドロキシアルキルアクリレート及び/又はヒドロキシアルキルメタクリレートのアルキル部分を表し、R、Rは、各々独立して、メチル基又は水素原子を表し、mは、1以上の任意の整数を表す。)
【請求項13】
請求項7又は8に記載のプレポリマーと、該プレポリマーの末端活性水素基の当量を超えるイソシアナート基当量のポリイソシアナート化合物と、ヒドロキシアルキルアクリレート及び/又はヒドロキシアルキルメタクリレートと、を反応させることを含む、請求項9〜12のいずれか一項に記載のポリマーの製造方法。
【請求項14】
請求項7又は8に記載のプレポリマーから製造されるポリマー(a)を含む印刷版又は印刷原版製造用感光性樹脂組成物。
【請求項15】
前記ポリマー(a)が、前記プレポリマーの末端活性水素基と他の化合物との間で形成された共有結合を有するポリマーであって、重合性不飽和基を含むポリマーである、請求項14に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項16】
前記共有結合がウレタン結合である、請求項15に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項17】
前記重合性不飽和基が二重結合である、請求項15又は16に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項18】
前記ポリマー(a)が、請求項1〜5及び9〜12のいずれか一項に記載のポリマーである、請求項14〜17のいずれか一項に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項19】
前記ポリマー(a)の数平均分子量が1,000〜100,000である、請求項14〜18のいずれか一項に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項20】
重合性不飽和基を有し、数平均分子量が5,000未満である有機化合物(b)をさらに含む、請求項14〜19のいずれか一項に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項21】
無機系微粒子(c)をさらに含む、請求項14〜20のいずれか一項に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項22】
光重合開始剤(d)をさらに含む、請求項14〜21のいずれか一項に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項23】
ポリマー(a)が、請求項7又は8に記載のプレポリマーと、芳香族ジイソシアナートとから製造された付加重合物を含有する、請求項14〜22のいずれか一項に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項24】
レーザー彫刻用印刷原版製造用である、請求項14〜23のいずれか一項に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項25】
請求項7又は8のいずれかに記載のプレポリマーから製造されるポリマー(a)を含む印刷版又は印刷原版。
【請求項26】
請求項14〜24のいずれか一項に記載の感光性樹脂組成物を用いて製造される印刷版又は印刷原版。
【請求項27】
請求項14〜24のいずれか一項に記載の感光性樹脂組成物をシート状又は円筒状に成形する工程と、
該成形した感光性樹脂組成物を光又は電子線の照射により架橋硬化せしめる工程と、
を含む方法によって製造される印刷版又は印刷原版。
【請求項28】
レーザー彫刻用である、請求項25〜27のいずれか一項に記載の印刷版又は印刷原版。
【請求項29】
フレキソ印刷版又はフレキソ印刷原版である、請求項25〜28のいずれか一項に記載の印刷版又は印刷原版。
【請求項30】
印刷版上の導電性インクを被印刷基板上に転写し、転写された前記導電性インク中の溶剤を乾燥除去して、又は転写された該導電性インクに光を照射して硬化させて、該被印刷基板上に該導電性インクを固定化することを含む導電性層を製造する方法であって、
前記印刷版が、請求項25〜29のいずれか一項に記載の印刷版である、上記方法。
【請求項31】
印刷版上の有機発光インクを被印刷基板上に転写し、転写された該有機発光インク中の溶剤を乾燥除去して、又は転写された該有機発光インクに光を照射して硬化させて、該被印刷基板上に該有機発光インクを固定化することを含む有機発光層を製造する方法であって、
該印刷版が、請求項25〜29のいずれか一項に記載の印刷版である、上記方法。
【請求項32】
印刷版上の有機薄膜太陽電池用光電変換層用インクを被印刷基板上に転写し、転写された該有機薄膜太陽電池用光電変換層用インク中の溶剤を乾燥除去して、又は転写された該有機薄膜太陽電池用光電変換層用インクに光を照射して硬化させて、該被印刷基板上に該有機薄膜太陽電池用光電変換層用インクを固定化することを含む有機薄膜太陽電池用光電変換層を製造する方法であって、
該印刷版が、請求項25〜29のいずれか一項に記載の印刷版である、上記方法。
【請求項33】
印刷版上の薄膜半導体パターン形成用インクを被印刷基板上に転写し、転写された該薄膜半導体パターン形成用インク中の溶剤を乾燥除去して、又は転写された該薄膜半導体パターン形成用インクに光を照射して硬化させて、該被印刷基板上に該薄膜半導体パターン形成用インクを固定化することを含む薄膜半導体パターン層を製造する方法であって、
該印刷版が、請求項25〜29のいずれか一項に記載の印刷版である、上記方法。
【請求項34】
印刷版上の電子写真感光体の感光層を形成するインクを被印刷基板上に転写し、転写された該インク中の溶剤を乾燥除去して、又は転写された該インクに光を照射して硬化させて、該被印刷基板上に該インクを固定化することを含む電子写真感光体の感光層を製造する方法であって、
該印刷版が、請求項25〜29のいずれか一項に記載の印刷版である、上記方法。
【請求項35】
光センサー用光起電力素子を構成する電子受容性有機物層及び/又は電子供与性有機物
層を製造する方法において、
印刷版上の電子受容性有機物層用インク及び/又は電子供与性有機物層用インクを被印刷基板上に転写し、転写された該電子受容性有機物層用インク及び/又は電子供与性有機物層用インクの溶剤を乾燥除去して、又は転写された該電子受容性有機物層用インク及び/又は電子供与性有機物層用インクに光を照射して硬化させて、該被印刷基板上に該電子受容性有機物層用インク及び/又は電子供与性有機物層用インクを固定化することを含む電子受容性有機物層及び/又は電子供与性有機物層を製造する方法であって、
該印刷版が、請求項25〜29のいずれか一項に記載の印刷版である、上記方法。
【請求項36】
印刷板上の光スイッチング素子のポリシラン薄膜を形成するポリシラン溶液を被印刷基板上に転写し、転写された該ポリシラン溶液中の溶剤を乾燥除去して該被印刷基材上に該ポリシラン溶液を固定化することを含む、光スイッチング素子のポリシラン薄膜を製造する方法であって、
該印刷版が、請求項25〜29のいずれか一項に記載の印刷版である、上記方法。
【請求項37】
印刷版上の有機発光インクを被印刷基板上に転写し、転写された該有機発光インク中の溶剤を乾燥除去して、又は転写された該有機発光インクに光を照射して硬化させて、該被印刷基板上に該有機発光インクを固定化することを含む、照明、表示装置、表示装置用バックライト、インテリア、エクステリア、及び面発光光源用有機発光層を製造する方法であって、
該印刷版が、請求項25〜29のいずれか一項に記載の印刷版である、上記方法。

【公開番号】特開2009−235295(P2009−235295A)
【公開日】平成21年10月15日(2009.10.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−85196(P2008−85196)
【出願日】平成20年3月28日(2008.3.28)
【出願人】(309002329)旭化成イーマテリアルズ株式会社 (771)
【Fターム(参考)】